結論
PKSHA Technology は、AI ソリューションの受託、AI SaaS、事務系人材の AI Powered Worker の3つを営む会社である。AI を自社の売り物にして、AI SaaS ですでに100億円超の売上を出している点が、他の業務ソフトの会社と違う。
筆者の結論は、事業の方向は正しいが、値段は大きく割高である。AI SaaS は大手の LLM 事業者が同じ機能を安く出せるので、価格を押し上げにくい。受託は AI エージェントが工数を減らし、人材は事務の仕事が AI エージェントに移って縮む。のれんも大きい。
売上の約37%の受託は数量0.80倍・価格1.15倍、約30%の AI SaaS は数量1.0倍・価格1.05倍、約33%の人材は0.60倍・1.20倍に置いた。AI SaaS だけは金額の開示があるので、楽観で数量が1.0倍を超える筋書き(1.8倍)を置いた。中立の売上は名目で1割弱減る。資本コストは基本7.5%に上乗せ1.25%を足した8.75%、長期の成長率は名目0〜−1%とした。
やや悲観・悲観の確率を合わせて37%置いた総合の価値は、今の時価総額を9割ほど下回る。悲観は売上が半分以下になる筋書きで、床は純現金のうち運転資金などを除いた70億円とした。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、PKSHA は事業の見通しにくさと値段の高さの両方が気になる会社である。
10 年後にこの会社の利益がどうなっているかは、予測がむずかしい。AI の技術は 3 年で入れ替わる。専業の付加価値が大手の標準機能に吸収される筋書きが、十分に現実的だからだ。確信度は低いと見る。
資本の配分は、買収に頼る色が濃い。買収は、買う値段が高ければ価値を壊す。のれんが自己資本の約 4 割あることは、先の減損の火種になる。配当が小さいのも、株主にとっては利益の取り分が見えにくい。
一方で、SaaS が育てば利益率は 35% を超える。創業者が約 3 割を持ち、長期の目線で経営する点は評価できる。
安全域の目で見ると、純利益の 40 倍を超える今の値段は、その良い面をすでに多く織り込んでいる。払う値段に対する余裕は乏しい。
何で稼ぐ会社か
PKSHA の稼ぎは 3 つの事業から出る。
ひとつ目は AI ソリューション。企業の課題に合わせて AI を作って納める。大手の金融・製造・流通が顧客で、1 件あたりの金額が大きい。2025 年 9 月期の売上は約 129 億円、利益率は 19%。技術者の数が上限を決める商売である。
ふたつ目は AI SaaS。対話型の窓口、電話の自動応対、社内の問い合わせ処理などを月額で貸す。利益率は 35% と高く、会社が本命と位置づける。2025 年 9 月期の売上は約 89 億円。契約が積み上がるほど、開発費が薄まる。
みっつ目は AI Powered Worker。買収したサーキュレーションの外部専門人材の紹介業が中心で、2026 年 9 月期から別の事業として数える。売上は 3 事業がほぼ等分になるまで膨らんだ。ただし利益率は低い。
2026 年にも X Capital(戦略立案と実装の会社)、BizFreak、VideoTouch を子会社にした。AI の戦略づくりから実装、運用まで 1 社で請ける体制を、買収で組んでいる。従業員は約 1,000 人、平均年収は 923 万円と高い。人への先行投資が重い会社でもある。
優良さと弱いところ
堀はあるが、堀の幅は事業によって違う。
いちばん強いのは対話型窓口と電話応対の SaaS だ。国内シェア首位を掲げ、金融や流通の大手に入り込んでいる。導入後は FAQ や会話の履歴が積み上がり、乗り換えにくくなる。ただし首位という主張は、会社の自己申告に近い資料が根拠で、鵜呑みにはできない。
受託の AI 開発の堀は、人である。優秀な研究者と技術者がいるうちは強いが、人が辞めれば消える。人材事業は、仕事を探す人と企業のつなぎ役で、堀は薄い。
資本効率は低い。過去 10 年の ROE の中央値は約 5.6%、2025 年 9 月期でも約 8% だ。買収と上場時の増資で自己資本が膨らんだ分、稼ぎが追いついていない。自己資本比率は 63%、純現金は 98 億円で、財務は健全である。
経営は創業者の上野山氏が約 30% を握る。方向は長期で、意思決定も速い。反面、買収の速度が速く、のれんの積み上がりが気になる。中期経営計画の数値は見当たらず、将来の稼ぎの目標を外から検証しにくい。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
AI の事業は、伸びる需要と、削られる付加価値の両方を抱えている。
国内の SaaS 市場は 2026 年に約 1.7 兆円、年 10〜13% の成長が見込まれる。サイバーセキュリティを含む業務ソフト全体も 2 桁近い伸びが続く。企業が AI を業務に入れる流れは、まだ入口にある。
競争は 3 方向から来る。ひとつはマイクロソフト、Google、OpenAI などの基盤会社だ。問い合わせ対応や社内検索を標準機能に取り込めば、専業の SaaS は値段を守りにくい。ふたつ目は国内の同業で、チャットボットや音声 AI の会社が多い。みっつ目は企業自身で、生成 AI のおかげで自前で小さな AI を作りやすくなった。
受託の AI 開発は、案件が増える一方で、基盤の進歩で作る手間が減る。1 件あたりの値段が下がる圧力と、案件数が増える力がぶつかる。
人材事業は景気に敏感だ。企業の外部人材の需要は、IT 人材不足が続く限りは堅いが、景気が悪化すると真っ先に減らされる。
景気に対する強さは、ほかの業務ソフトより弱い。IT の予算の中でも、AI の実験的な案件は削られやすいからだ。
資本政策と M&A
資本の使い道は、配当や自社株買いより買収が先に来る。
配当は 2026 年 9 月期でごく小さく、株主に返す姿勢は弱い。利益の大半は事業と買収に回っている。
買収は 2025 年 7 月のサーキュレーション(TOB。買付価格の上乗せは約 34%)に始まり、2026 年に X Capital(62%、2030 年末までに 100% にする予定)、BizFreak、VideoTouch(持株を 59% まで引き上げ)が続いた。取得額は多くが非開示で、買収が稼ぎを生むかは外から検証しにくい。2027 年 1 月には、子会社の PKSHA Associates と PKSHA Infinity を本体に吸収合併する。組織を整理して意思決定を速める狙いで、AI SaaS 事業は続く。
創業者の上野山氏が約 30%、創業期の山田氏が約 7% を持ち、安定株主が厚い。第三者が買収を仕掛けにくい一方、上場後も創業者の支配が続く。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
AI の導入は企業にとってまだ入口で、需要が伸びる余地が大きい。PKSHA は、対話型窓口と電話応対の国内首位を掲げ、顧客の大手企業との関係も深い。受託で培った技術を SaaS に積み上げる流れが、実際に利益率の高い事業を育てている。AI SaaS の利益率は 35% で、契約が増えれば増えるほど開発費が薄まる。
買収も、AI の戦略づくりから実装、運用まで 1 社で請ける体制づくりとして筋が通る。サーキュレーションの外部人材の仕組みは、AI が仕事を割り振る世界で、人と AI を組み合わせる入口になる。創業者が約 3 割を持つため、短期の株価に振り回されない長期の投資ができる。
純現金は 98 億円あり、財務の傷みはない。2026 年 9 月期は売上が 6 割増え、利益も伸びる見込みで、成長の勢いは本物である。AI が企業の業務に入るほど、AI の専業の価値は上がると見るなら、今の高い評価にも理由がある。
慎重な見方
今の値段は、純利益の 40 倍を超える。しかも売上の伸びの大半は買収で買ったもので、自前の成長ではない。のれんは約 129 億円あり、自己資本の約 4 割を占める。買収した会社の利益が出なければ、減損が先に来る。
大手の基盤会社が標準機能を強めるほど、専業の付加価値は削られる。マイクロソフトや Google は問い合わせ対応や社内検索を自社のサービスに組み込み、価格は下がる方向にある。受託の AI 開発も、顧客が自前で小さな AI を作れるようになって、案件の単価が下がる。
資本効率は低い。過去 10 年の ROE の中央値は約 5.6% で、資本コストを下回ってきた。配当はごく小さい。利益を事業と買収に回しても、稼ぎが資本コストを上回って伸びる保証はない。人材事業は利益率が低く、景気にも弱い。
中期経営計画の数値が見当たらず、買収の金額も非開示が多い。外から検証しにくい成長を、高い値段で買うことになる。
自社の AI の部品が無料に近づく世界では、受託も人材も、AI SaaS の価格も崩れる。買収で積んだのれんの減損が、自己資本をさらに傷める。
自社の AI の部品が無料に近づく世界では、受託も人材も、AI SaaS の価格も崩れる。買収で積んだのれんの減損が、自己資本をさらに傷める。
自社の AI の部品が無料に近づく世界では、受託も人材も、AI SaaS の価格も崩れる。買収で積んだのれんの減損が、自己資本をさらに傷める。
どちらに重みを置いたか
AI を自社の売り物にできていることと厚い純現金では強気の見方が優勢だが、大手の LLM 事業者が同じ機能を安く出し、受託と人材が AI エージェントに置き換わる筋書きでは慎重な見方が重い。事業の方向が正しいことと、値段が妥当なことは別である。資本コストは基本7.5%に上乗せ1.25%を足して8.75%とし、長期の成長率は名目0〜−1%。やや悲観・悲観を合わせて37%の重みを置いた総合は、今の時価総額を9割ほど下回る。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/09 期)
確率で加重した株価時価総額 1,282 円393 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 182 円56 億円)。 今の値に割り戻すと 765 円235 億円、今との差 −79.0%、 期待の年率 −8.7%(資本コスト 7.2%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 2,722 円835 億円 | 280 円86 億円 | −17.4% | −1.9% | 300 円92 億円 |
| やや楽観 | 20% | 2,035 円624 億円 | 230 円71 億円 | −37.7% | −4.6% | 453 円139 億円 |
| 中立 | 33% | 1,415 円434 億円 | 195 円60 億円 | −55.7% | −7.8% | 531 円163 億円 |
| やや悲観 | 24% | 441 円135 億円 | 130 円40 億円 | −84.3% | −16.9% | 137 円42 億円 |
| 悲観 | 13% | 228 円70 億円 | 91 円28 億円 | −91.2% | −21.6% | 41 円13 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,282 円393 億円 | 182 円56 億円 | −59.7% | −8.7% | 1,463 円449 億円 |
今の株価時価総額 3,635 円1,115 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.2% を下回るほど割高。
楽観 10% 自社の AI SaaS が主役になり、受託と人材を食う 利益 52 億円 · PER 13.8 倍 · 株価時価総額 2,722 円835 億円
AI エージェントを自社の売り物にして、すでに AI SaaS で105億円の売上を出している。音声・チャットボットや社内の問い合わせ対応など、PKSHA の部品を使う顧客が増え、AI SaaS の数量は今の1.8倍、価格は1.1倍近くまで上がる。受託は工数が減って0.9倍に縮み、人材は0.7倍。売上は今より3割増え、営業利益は90億円近くになる。この会社だけは開示の裏づけがあるので、楽観で数量が1.0倍を超える筋書きを置く。 最も大きい「AI SaaS」は、数量が今の1.80倍、価格が1.11倍になる。 10年後の売上は名目で今の1.31倍(実質0.97倍)、純利益は52億円になる。
- AI ソリューション(受託):数量 239(年間取引社数(社))× 価格 0.61(1 社あたり年間売上(億円))→ 売上 146 億円・営業利益 31 億円。数量0.92倍・価格1.22倍・営業利益率21%(AI エージェント代替の型:人月・工数)
- AI SaaS:数量 1,890(契約企業数(社))× 価格 0.11(1 社あたり年間売上(億円))→ 売上 210 億円・営業利益 72 億円。数量1.80倍・価格1.11倍・営業利益率34%(AI エージェント代替の型:席課金)
- AI Powered Worker(人材):数量 1,587(年間の案件数(件))× 価格 0.06(1 件あたり売上(億円))→ 売上 101 億円・営業利益 12 億円。数量0.69倍・価格1.27倍・営業利益率12%(AI エージェント代替の型:人月・工数(事務系人材))
倍率:事業の純利益 52 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.0% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.1%、10 年より先の名目の伸び g 0.0% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.8 倍。全体の PER 13.79 倍、時価総額 721 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:AI SaaS の売上105億円という金額の開示があるので、この会社だけは楽観で数量が1.0倍を超える筋書きを置く。ただし大手の LLM 事業者との競争が重く、確率は1割どまり。
やや楽観 20% AI SaaS が伸びるが、価格は大手に抑えられる 利益 37 億円 · PER 13.8 倍 · 株価時価総額 2,035 円624 億円
AI SaaS の数量は今の1.4倍まで伸び、価格は1.08倍。受託は0.86倍、人材は0.64倍に縮む。売上は今より1割弱増えるだけで、営業利益は60億円強。筆者は、AI を自社の売り物にできている点は他の席課金の会社と違うと見るが、この筋書きでも買収で積んだのれんと投資の重さが残り、成長を織り込んだ今の値段には届かないとみる。 最も大きい「AI SaaS」は、数量が今の1.40倍、価格が1.08倍になる。 10年後の売上は名目で今の1.09倍(実質0.81倍)、純利益は37億円になる。 営業利益は61億円で、今の53億円の115%に当たる。
- AI ソリューション(受託):数量 223(年間取引社数(社))× 価格 0.59(1 社あたり年間売上(億円))→ 売上 132 億円・営業利益 25 億円。数量0.86倍・価格1.18倍・営業利益率19%(AI エージェント代替の型:人月・工数)
- AI SaaS:数量 1,470(契約企業数(社))× 価格 0.11(1 社あたり年間売上(億円))→ 売上 159 億円・営業利益 51 億円。数量1.40倍・価格1.08倍・営業利益率32%(AI エージェント代替の型:席課金)
- AI Powered Worker(人材):数量 1,477(年間の案件数(件))× 価格 0.06(1 件あたり売上(億円))→ 売上 91 億円・営業利益 9 億円。数量0.64倍・価格1.24倍・営業利益率10%(AI エージェント代替の型:人月・工数(事務系人材))
倍率:事業の純利益 37 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.9% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.1%、10 年より先の名目の伸び g 0.0% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.8 倍。全体の PER 13.79 倍、時価総額 505 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:AI SaaS の数量が1.4倍まで伸びるが、受託と人材が縮んで全体の伸びは小さい筋書き。
中立 33% 中立:AI SaaS は横ばい、受託と人材が縮む 利益 24 億円 · PER 13.8 倍 · 株価時価総額 1,415 円434 億円
AI SaaS の数量は今の1.0倍、価格は1.05倍で横ばい。大手の LLM 事業者が同じ部品を出して、価格を押し上げられない。受託は AI エージェントがコードも分析も下書きするので数量0.80倍、人材は事務系の仕事が AI エージェントに移るので0.60倍まで縮む。売上は名目で1割弱減り、営業利益は40億円ほど。買収で広げた事業の利益率は2割に届かない。 最も大きい「AI ソリューション」は、数量が今の0.80倍、価格が1.15倍になる。 10年後の売上は名目で今の0.89倍(実質0.67倍)、純利益は24億円になる。 営業利益は40億円で、今の53億円の75%に当たる。
- AI ソリューション(受託):数量 208(年間取引社数(社))× 価格 0.58(1 社あたり年間売上(億円))→ 売上 120 億円・営業利益 20 億円。数量0.80倍・価格1.15倍・営業利益率17%(AI エージェント代替の型:人月・工数)
- AI SaaS:数量 1,050(契約企業数(社))× 価格 0.11(1 社あたり年間売上(億円))→ 売上 110 億円・営業利益 33 億円。数量1.00倍・価格1.05倍・営業利益率30%(AI エージェント代替の型:席課金)
- AI Powered Worker(人材):数量 1,380(年間の案件数(件))× 価格 0.06(1 件あたり売上(億円))→ 売上 83 億円・営業利益 7 億円。数量0.60倍・価格1.20倍・営業利益率8%(AI エージェント代替の型:人月・工数(事務系人材))
倍率:事業の純利益 24 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.1% が k 7.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.8 倍。全体の PER 13.79 倍、時価総額 327 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:AI SaaS は横ばい、受託と人材が縮むという、最も重みを置く筋書き。
やや悲観 24% 大手の AI に価格を抑えられ、受託と人材が縮む 利益 3 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 441 円135 億円
大手の LLM 事業者が同じ機能を安く出し、PKSHA の AI SaaS は数量0.70倍、価格1.0倍に落ちる。受託は0.66倍、人材は0.49倍に縮む。売上は今より3割以上減って営業利益はほぼゼロ。のれんの減損が重なり、自己資本も傷む。それでも実質無借金の純現金は残るが、顧客の信頼を失えば受注の回復は遅れる。 最も大きい「AI ソリューション」は、数量が今の0.66倍、価格が1.09倍になる。 10年後の売上は名目で今の0.66倍(実質0.49倍)、純利益は3億円になる。 営業利益は5億円で、今の53億円の10%に当たる。
- AI ソリューション(受託):数量 171(年間取引社数(社))× 価格 0.55(1 社あたり年間売上(億円))→ 売上 93 億円・営業利益 9 億円。数量0.66倍・価格1.09倍・営業利益率10%(AI エージェント代替の型:人月・工数)
- AI SaaS:数量 735(契約企業数(社))× 価格 0.10(1 社あたり年間売上(億円))→ 売上 73 億円・営業利益 17 億円。数量0.70倍・価格1.00倍・営業利益率23%(AI エージェント代替の型:席課金)
- AI Powered Worker(人材):数量 1,132(年間の案件数(件))× 価格 0.06(1 件あたり売上(億円))→ 売上 65 億円・営業利益 1 億円。数量0.49倍・価格1.14倍・営業利益率1%(AI エージェント代替の型:人月・工数(事務系人材))
倍率:やや悲観は事業の稼ぐ力が床の資産とほぼ同じ水準まで落ちる。純現金+売れる資産の税後 70 億円(今の純現金98億円(facts の純有利子負債)のうち運転資金と前受の分を除いた)を床として、今の自己資本 345 億円に対する PBR 0.21 倍で時価総額 74 億円とした。AI エージェント代替で自社の AI の部品が無料に近づき、受託も人材も半分以下に縮む。稼ぐ力そのものが崩れる筋書きなので、事業の利益には値を付けない。
確率:大手の LLM 事業者が同じ機能を無料に近い費用で出し、AI SaaS の価格が崩れる。実現しやすいと見て2割台半ばに置いた。
悲観 13% AI の部品が無料に近づき、受託も人材も崩れる 利益 −5 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 228 円70 億円
自社が磨いてきた AI の部品が、無料に近い費用で誰でも使えるようになる。AI SaaS は今の0.4倍、受託も人材も半分以下になる。売上は今の3分の1で赤字に沈み、買収で積んだのれんは大きく減損される。純現金は残るので、株主の取り分の床は運転資金などを除いた70億円ほど。稼ぐ力ではなく、この小さな資産が悲観の値段を決める。技術者の流出も重なり、再起には時間がかかる。 最も大きい「AI ソリューション」は、数量が今の0.36倍、価格が0.98倍になる。 10年後の売上は名目で今の0.33倍(実質0.24倍)、純利益は-5億円になる。
- AI ソリューション(受託):数量 93.6(年間取引社数(社))× 価格 0.49(1 社あたり年間売上(億円))→ 売上 46 億円・営業利益 −1 億円。数量0.36倍・価格0.98倍・営業利益率-3%(AI エージェント代替の型:人月・工数)
- AI SaaS:数量 420(契約企業数(社))× 価格 0.09(1 社あたり年間売上(億円))→ 売上 38 億円・営業利益 4 億円。数量0.40倍・価格0.89倍・営業利益率10%(AI エージェント代替の型:席課金)
- AI Powered Worker(人材):数量 621(年間の案件数(件))× 価格 0.05(1 件あたり売上(億円))→ 売上 32 億円・営業利益 −2 億円。数量0.27倍・価格1.02倍・営業利益率-5%(AI エージェント代替の型:人月・工数(事務系人材))
倍率:悲観は売上が 10 年で半分以下になる筋書き。純現金+売れる資産の税後 70 億円(今の純現金98億円(facts の純有利子負債)のうち運転資金と前受の分を除いた)を床として、今の自己資本 345 億円に対する PBR 0.20 倍で時価総額 70 億円とした。AI エージェント代替で自社の AI の部品が無料に近づき、受託も人材も半分以下に縮む。稼ぐ力そのものが崩れる筋書きなので、事業の利益には値を付けない。
確率:自社の AI の部品が無料に近づき、受託も人材も半分以下になる筋書き。やや悲観と合わせて3割台半ばにとどめた(中立の数量・価格に縮みを入れたので、確率では重ねない)。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
AI ソリューション(受託)
企業の課題に合わせて AI を作って納める。大手の金融・製造・流通が主な顧客。
| 数量年間取引社数(社) | 価格1 社あたり年間売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/09 | 260 | 0.50 | 130 | 24 |
| 10 年後 中立 | 208 | 0.58 | 120 | 20 |
取り方:2025 年 9 月期の売上 129 億円・利益率 19% を、買収した X Capital などを含め 2026 年 9 月期の約 130 億円に置いた推定。取引社数は開示がないので、1 社 0.5 億円前後の案件で割って 260 社と置いた。利益はセグメント利益で、本社費は含まない。 型は人月・工数で売る受託開発(AI ソリューション)。AI エージェントがコードも分析も下書きするので工数が減り、数量0.80倍・価格1.15倍と置いた。売上の約37%がこの型。
AI SaaS
対話型の窓口、電話の自動応対、社内の問い合わせ処理などの月額課金。
| 数量契約企業数(社) | 価格1 社あたり年間売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/09 | 1,050 | 0.10 | 105 | 36 |
| 10 年後 中立 | 1,050 | 0.11 | 110 | 33 |
取り方:2025 年 9 月期の売上 89 億円・利益率 35% を、年 2 割ほど伸びて 2026 年 9 月期は約 105 億円と推定した。契約数は開示がないので、1 社 0.1 億円前後で割って 1,050 社と置いた。 数量は実物(契約企業数が 1,050 社から 2,000 社へ)。単価は物価 1.34 倍に、機能の追加による上位プランへの移行を小さく上乗せして 1.45 倍とした(開示が無く推定)。 型は席・従量課金の SaaS で、PKSHA 自身が AI エージェントを売る側。AI SaaS の売上105億円という金額の開示があるので、楽観では数量1.0倍を超えてよいが、大手の LLM 事業者に同じ機能を安く出されて価格は1.05倍までと置いた。売上の約30%がこの型。
AI Powered Worker(人材)
買収したサーキュレーションなどの外部専門人材の紹介。企業の課題に専門家を回す。
| 数量年間の案件数(件) | 価格1 件あたり売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/09 | 2,300 | 0.05 | 115 | 14 |
| 10 年後 中立 | 1,380 | 0.06 | 83 | 7 |
取り方:2026 年 9 月期の売上 350 億円のうち 3 事業がほぼ等分と報じられている点から、人材を約 115 億円と置いた推定。案件数は開示がなく、1 件 0.05 億円前後で割った。利益率 12% も推定。 型は事務系人材の派遣・BPO(AI Powered Worker)。AI エージェントが代行する事務の仕事を人が請け負う型なので、数量0.60倍・価格1.20倍と置いた。売上の約33%がこの型。
リスクと懸念
大手の AI と AI エージェントによる受託・人材・SaaS 価格の置き換え
大手の LLM 事業者が同じ機能を安く出せば、AI SaaS の価格を押し上げられない。受託は AI エージェントがコードも分析も下書きして工数が減り、事務系の人材は仕事そのものが AI エージェントに移る。売上の約37%は受託、約30%は AI SaaS、約33%は人材で、10年の売上は名目で1割弱減、実質で3割強減とみた。のれんの減損も重なる。
大手基盤会社の標準機能
マイクロソフトや Google、OpenAI が問い合わせ対応・電話応対・社内検索を標準機能にすると、専業の SaaS は値段を守りにくくなる。すでに起きている動きで、10 年の中心の脅威になる。PKSHA の単価の伸びを直接削る。
買収の代金とのれんの減損
のれんは約 129 億円で、自己資本の約 4 割になる。2026 年に買収が続き、取得額は多くが非開示だ。買った会社の利益が出なければ減損が出て、自己資本が一気に減る。
人材事業の景気への弱さ
サーキュレーションの外部人材の紹介業は、景気が悪化すると企業が真っ先に減らす費用に当たる。利益率も低く、SaaS のような積み上がる収益ではない。売上の 3 分の 1 を占めるので、全体の利益の振れを大きくする。
技術者の確保と人件費
受託と SaaS の開発は、優秀な技術者に頼る。平均年収は 923 万円で高く、採用競争で上がり続ける。人が辞めると、技術の価値も一緒に消える。
創業者への依存と情報開示
創業者の上野山氏が約 30% を持ち、経営の方向を決める。長期の目線は強みだが、買収の金額や中期の数値目標を示さないため、外から検証しにくい。
資本効率の低さ
過去 10 年の ROE の中央値は約 5.6% で、資本コストを下回ってきた。配当はほとんど出さず、利益を事業と買収に回す。回した先の稼ぎが資本コストを上回らなければ、価値は増えない。
今後の分かれ目
- SaaS の契約企業の増加と 1 社あたりの単価が、両方とも物価を上回って伸び続けたら
- 楽観・やや楽観の確率を上げる。ただし、利益率が 35% を保てているかも同時に確かめる。
- 大手基盤会社が PKSHA の主力と同じ機能を標準で出し、新規契約が鈍ったら
- やや悲観・悲観の確率を上げる。単価の下落が見えたら、値決め力の前提を見直す。
- 買収した会社の利益が計画を下回り、のれんの減損が出たら
- 買収の目利きに疑いが出る。資本配分の評価を下げ、悲観の確率を上げる。
- 配当や自社株買いが大きく増え、株主還元の方針が明確になったら
- 資本効率が上がる可能性がある。ROE が資本コストを明確に上回るかを確かめる。
- 中期の数値目標が開示されたら
- 外から検証しやすくなる。目標が過去の実績と整合するなら、確率を見直す。
- 創業者の持株比率が大きく動いたら
- 支配構造の変化は、資本政策と買収の方針の前提を見直す理由になる。
- AI SaaS の売上が金額で開示され、数量が今の1.4倍を超えて積み上がったら
- AI SaaS の数量を上方に直し、楽観・やや楽観の確率を上げて見直す。価格が大手に抑えられていないかを併せて確認する。
見ておくもの
- AI SaaS の売上と利益率の推移(35% を保てるか)
- SaaS の契約企業数・1 社あたり単価の開示
- のれんの残高と減損の有無
- 人材事業(AI Powered Worker)の利益率
- 配当・自社株買いなど株主還元の方針
- 大手基盤会社の標準機能の発表
倍率と資本コストの決め方
受託・AI SaaS・人材に分け、AI エージェント代替の型(人月/席課金/事務系人材)で数量・価格・利益率を置いた。AI SaaS のみ売上の金額開示があるので楽観の数量が1.0倍を超える。倍率は式(正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)、k7.25%、g名目0〜−1%)に対する位置で置き、楽観〜中立は上限の9.5割、やや悲観は8.5割。悲観は稼ぐ力ではなく純現金+売れる資産の床で、のれんは数えない。今の株価や過去・同業の倍率は見ていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.86→13.79 倍・やや楽観 PER 10.86→13.79 倍・中立 PER 10.86→13.79 倍)。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。