結論
Aimingはスマートフォン向けゲームを企画・開発・運営し、人気作品への課金と他社からの制作受託で稼ぐ会社だ。10年持つ株主としては、厚い純現金を評価しても、現状の時価総額は本質価値をやや上回ると判断する。強みは、作品を発売して終わりにせず、季節催事や新キャラクターを重ねて長く運営する能力にある。『剣と魔法のログレス』の長寿運営と『ドラゴンクエストタクト』などの共同事業が、その実績を裏付ける。
しかし、ゲームが好きな人を長く囲い込めることと、株主が永続的に高い利回りを得られることは別だ。ヒット作の権利はスクウェア・エニックスやレベルファイブなど外部の版権元に帰属する部分が大きい。継続率や課金単価の実数も非開示で、ヒットの採算を外から正確に測るのは難しい。2025年は営業黒字に戻ったが、過去には赤字と増資を繰り返しており、単年の利益を永久に続くものと見るべきではない。
2026年6月の『イナズマイレブン クロス』配信開始は明るい材料で、100万ダウンロードも開示された。だが、累計ダウンロードは継続課金者数ではない。10年後にいくつの主力作品が残るか、契約更新で取り分を守れるか、受託開発の値段を維持できるかが価値を左右する。純現金があるため破綻を中心に考える必要はない一方、現金が株主に戻る制度的な約束もない。楽観の成功余地を認めながら、値段にはもう少し安全域が欲しい。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社には『理解できる部分』と『予測できない部分』がはっきり分かれている。既存ゲームの月次運営、イベントごとの売上反応、開発人員の規模は把握できる。だが、2035年にどの原作が人気を保ち、新作何本が成功し、版権元との利益配分がどの程度残るかは外部株主には読み切れない。だから好調な一年を基準に、高い成長を永続価値として買うことは避けたい。
長い運営履歴は評価する。『ログレス』の存続は流行の移り変わりを越える技術がある証拠であり、『イナズマイレブン クロス』の初速も新しい提携を生むかもしれない。ただしこれは原作そのものを所有する企業の堀ではない。課金価格を引き上げた後も退会率が低いといった、恒久的な値決め力の数字は提示されていない。真のオーナー利益を測るには、新作を作るための先行費用、運営の人件費、版権料、将来の失敗作を均して差し引く必要がある。
純現金が時価総額の半分超という安全性は大きい。だが、現金をただ持ち続ければ、10年後の株主にそのまま戻るわけではない。配当や自社株買いが乏しく、過去に増資があった以上、使途の規律を実績で確かめたい。基準ケースの事業価値は極端に低いわけではないものの、全体の期待価値は少数の大当たりに依存する。安全域の薄さが残る今の値段では、長期保有に必要な確信をまだ持てない。
何で稼ぐ会社か
会計上の報告セグメントはオンラインゲーム事業の一つだが、稼ぎ方は二種類に分かれる。2025年の配信サービス売上は112.1億円で、売上の約71%を占める。アプリストアや外部決済を通じたアイテム課金、他社へのライセンス提供が主な収益で、アクティブユーザー数に課金率と課金者単価を掛けたものが土台となる。『ドラゴンクエストタクト』『陰の実力者になりたくて!マスターオブガーデン』『剣と魔法のログレス』など、発売後の運営で寿命を延ばす作品が支える。
もう一つの制作・運営受託は46.1億円、約29%である。版権元や配信会社から開発・運営を請け負い、契約金と成果に応じた対価を受け取る。受託には一括請負や成功報酬も含まれるため、全売上を人月単価と見なせるわけではないが、開発者の工数が経済価値の大きな部分を占める。制作中の費用は人件費や外注費として先行し、配信側にも運営費、広告宣伝費、権利元へのロイヤリティ、プラットフォーム手数料が掛かる。
権利の持ち方も重要だ。スクウェア・エニックスやマーベラスとの共同事業では、ヒットを単独所有するのではなく、原作や配信上の取り分を分け合う。2026年の『イナズマイレブン クロス』も有力IPの恩恵を受けるが、成功すれば版権元にも利益が渡る。2025年の有報ではApple、Google、SBペイメントサービス経由の課金売上が多い。ただし、これは決済の相手方であり、少数の企業にゲームを販売する事業という意味ではない。
2026年上半期には配信サービスの売上が約52.8億円、受託が約15.9億円へ変化した。新作投入や製作委員会の解散による収益区分の変更でも比率が動くので、配信の伸びだけを新規利用者の増加と取り違えない。営業利益率も外部権利料や広告費の時期で大きく振れ、利益を生むのは売上の単純な積み上げではなく、継続率と制作原価の管理である。
優良さと弱いところ
Aimingの優位は、長期運営の経験と、日本の有力IPの権利元から共同開発を任せられる関係にある。『ログレス』は10年以上続き、『ドラゴンクエストタクト』も長期運営に入った。これらの実績は新たな発注や共同制作に効くが、ユーザーに価格を自由に上げても離れない力があるとまでは証明しない。ゲームの課金は他社の新作に容易に移るし、原作の権利を持つのは多くの場合パートナーだ。堀、つまり模倣しづらい超過利益の源泉は細く、会社に固定された資産というより運営チームの技能である。
利益の振れは見過ごせない。2015年や2020年は高収益だった一方、2017~2019年と2023~2024年には営業赤字を出した。2025年の営業利益20.8億円、自己資本約69億円という黒字局面だけでは、再投資の利回りを断言できない。新作の広告費とロイヤリティを払い切った後で利益が継続するかが、増分ROICを測る本当の試験になる。数年ごとに制作費を積み増し、成功しなければ回収できない構造である。
財務には確かな強みがある。2025年末の純現金は約54億円で、自己資本比率も約75%だった。2026年6月には資金の厚みを保ちながら借入も増やしており、現金の全額が余剰とは言えない。大型の店舗・工場を抱えないため構造改革はしやすいが、開発者と広告の固定的支出は急には止められない。資金の安全性と事業の競争優位を混同しないことが、この会社を評価する出発点となる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内ゲーム市場は大きいが、スマートフォン向けは成熟産業に入った。『ファミ通ゲーム白書2026』による2025年の国内ゲーム市場は約2.59兆円で、世界は約32.1兆円に達する。一方、国内モバイルゲーム市場は『ファミ通モバイルゲーム白書2026』に基づく約1.66兆円で、2024年の約1.75兆円から縮んだ。家庭用ゲーム機の更新による市場全体の拡大を、そのままAimingの課金需要増とみなすことはできない。2024年の国内モバイルゲーム人口はCESAによれば約4278万人である。
競争相手は特定の開発会社だけではない。収益ランキングではバンダイナムコエンターテインメント、KONAMI、サイバーエージェント系のタイトルに加え、『ラストウォー』『Fate/Grand Order』『モンスターストライク』のような作品が可処分時間を争う。Sensor Towerによる2026年上半期のパブリッシャー順位でも前記の国内大手が上位にある。個社別の国内課金市場シェアは統一条件で公表されていないため、Aimingの2025年配信売上を国内市場で割った約0.67%は、海外売上やライセンス収入を含む粗い比較値に過ぎない。
10年ではモバイル人口の微減を想定する。その一方で、物価と課金者の深まりにより一人当たり名目課金額は増えうる。Aimingが数量を伸ばすには市場成長では足りず、成功した新作を継続させて自社の取り分を上げる必要がある。海外勢の大作やAI生成コンテンツが作品の供給量を増やせば、利用者獲得費の上昇と作品寿命の短期化が起こる。
Apple・Googleの手数料制度、アプリ外決済の普及、未成年課金や景品表示への規制も利益率を変える。手数料が下がっても値下げや販促に吸収される可能性があり、すべて株主利益になるとは限らない。生成AIは絵やコードの費用を下げるが、競合にも同じ武器を渡す。純粋なゲーム配信を『人月代替』と同列には扱わず、受託だけに別の縮小前提を課す。
資本政策と M&A
資本政策の評価は慎重だ。2025年は無配で、2023~2025年にも配当実績がない。2021年と2022年には少額の配当を行ったが、利益の変動に応じて継続的に現金を返す仕組みにはなっていない。株数は2015年、2020年、2024年に大きく増えており、資本調達が既存株主の取り分を薄めてきた。今後も新株発行を永久にしないと約束できる会社ではない。
2024年のコロプラとの資本業務提携は、運営力と開発資金を補う協業と評価できる一方、IPや成果を分け合う相手が増えるという面もある。2025年のBetimo関連投資は出資額8.1億円、持分比率42.85%と開示され、2026年上半期には持分法投資損失が利益を押し下げた。ゲーム以外の事業への資本配分が成果を上げるかは、なお検証段階にある。
2026年7月の『事業計画及び成長可能性に関する事項』には、新作投入、ライセンス展開、運営の高度化、資本効率の改善が描かれる。ただし中期の売上、営業利益、ROEの目標値も、配当性向・DOE・総還元性向・自社株買い額の数値目標も公表されていない。すなわち『数字の約束なし』である。成長資金を優先する経営なので、余剰現金は簿価の全額ではなく、少数株主に戻る蓋然性を考慮する必要がある。2026年10月のスタンダード市場への区分変更は上場廃止ではなく、企業価値を自動的に高めるものでもない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
Aimingには、大手パブリッシャーが簡単には内製しきれない長期運営の技術がある。『ログレス』を10年以上支えたチームは、単にゲームを作るだけでなく、イベント、ゲーム内の経済、プレイヤー同士の関係を維持してきた。『ドラゴンクエストタクト』や『陰の実力者になりたくて!』で原作の魅力を課金へ変えてきた経験もある。2026年の『イナズマイレブン クロス』の100万ダウンロードと初動ランキングは、旧作に依存せず新作を投入できることを示す。
市場全体の人口が横ばいでも、課金する時間は勝ち残った作品へ集中する。Aimingの国内配信収入は市場の約0.7%に相当する小さな規模で、人気IPを追加できれば数ポイントの奪い合いの中でも大きく伸びる。スマートフォン以外の端末に作品を出せば、既存技術を横展開できる。外部決済の比率が上がり、アプリストア手数料が下がれば、同じ課金額から残る利益が増える可能性もある。
これまで蓄えた現金は、大手に対抗して広告費や新作開発費を機動的に出せる強みだ。大型の借金に追われるわけではなく、失敗した企画を止める選択肢もある。コロプラなどとの提携を通じて、今の保有タイトルに次ぐ柱が二つ、三つ育てば利益は急増しうる。10年間で本当に大きなヒットを複数回生み出す会社なら、現在の規模に対して市場の期待はむしろ慎重だ。
慎重な見方
長く遊ばれるゲームを持っていることと、その作品の利益が永遠にAimingへ帰属することは違う。『ドラゴンクエストタクト』や『イナズマイレブン クロス』は有力な原作IPに依存し、契約終了、共同制作の終了、版権条件の変化を自力で止められない。ゲーム内イベントが成功しても、版権元やストアへの支払いが増えれば株主利益は伸びない。新作の宣伝費は先に出る一方、失敗の回収は不可能だ。
営業利益は2015年と2020年に大きく増えたが、2017~2019年、2023~2024年には赤字を繰り返した。この長い履歴は、ヒットを再現性のある増分ROICに変えたと判断できないことを示す。2025年も事業の黒字化に比べて最終利益は小さく、出資先の損失が経常段階で効く。2026年上半期の受託売上は前年同期より減り、新作がない期間の売上の弱さを埋められなかった。
AIエージェントがゲーム制作の定型コード、テスト、素材加工を代替すれば、工数で売る受託サービスの数量は大きく削られる。AIで制作費が下がるとしても、大手版権元も開発を内製化でき、受託料の単価を押し下げる。ゲーム配信でもAIによる作品供給の増加が広告獲得単価を上げる。国内の競争相手はバンダイナムコやKONAMIだけでなく、膨大な広告費を投じる海外勢でもある。
現金は価値の支えだが、その使途を決めるのは少数株主ではない。過去の無配、増資、社外投資を踏まえると、純現金があるから株主価値が必ず額面まで戻るとは言えない。利益を伴わない売上拡大を続ければ、10年後には現金も減り、版権と人材に依存する小さな事業だけが残る。
どちらに重みを置いたか
長期運営の技能と財務の厚さでは積極的な見方に根拠がある。しかし、過去10年の赤字と増資、他社IPの取り分、受託の縮小圧力は、利益の持続性を厳しく見る理由になる。上側の確率は23%、下側は42%とし、中立は35%にした。下に寄せたのはAIの損失を確率で重複計上したためではなく、ヒットの再現性と資本配分の不確実さによる。余剰現金の蓄積と戻り方を評価しても、本質価値は現在の時価総額を一割強下回る。結論は『やや割高』である。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 372 円174 億円(+ 還元の換算額還元の合計 13 円6 億円)。 今の値に割り戻すと 177 円83 億円、今との差 −16.3%、 期待の年率 +6.3%(資本コスト 8.3%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 1,277 円596 億円 | 75 円35 億円 | +537.9% | +21.4% | 95 円44 億円 |
| やや楽観 | 16% | 736 円343 億円 | 32 円15 億円 | +262.3% | +14.2% | 123 円57 億円 |
| 中立 | 35% | 341 円159 億円 | 9 円4 億円 | +65.0% | +5.2% | 122 円57 億円 |
| やや悲観 | 25% | 111 円52 億円 | 0 円0 億円 | −47.8% | −6.3% | 28 円13 億円 |
| 悲観 | 17% | 106 円49 億円 | 0 円0 億円 | −50.1% | −6.7% | 18 円8 億円 |
| 加重平均 | 100% | 372 円174 億円 | 13 円6 億円 | +81.9% | +6.3% | 386 円180 億円 |
今の株価時価総額 212 円99 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 7% 新作ヒットが連続し配信シェアを倍増 利益 39 億円 · PER 13.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,277 円596 億円
強いゲーム運営力が続き、2026年の『イナズマイレブン クロス』の利用者が長期に定着する。さらに版権元との共同企画が数本成功し、『ログレス』や『ドラゴンクエストタクト』の既存収益に新しい柱が重なる。2035年の国内モバイル人口が4300万人であっても、換算シェアを約1.2%まで伸ばす。海外展開は権利元との取り分を調整しつつ上乗せとなり、スマートフォン以外の端末にも制作技術を横展開する。
プラットフォーム手数料の負担は改善し、新作投資が複数年の課金で回収される。受託はAIエージェント代替の波を受けるものの、企画統括と高度な運営を選ばれることで、推定人月の95%を保つ。コロプラとの提携で開発網を広げ、無理な大型買収を避ける。新しい事業にも利益が生まれ、配当と自社株買いが徐々に増える。過去のヒット年並みの高い売上利益率には届かないが、毎年の損益変動が小さくなり、現金を積み上げられる10年である。
- オンラインゲーム配信・ライセンス:数量 520,000(国内モバイルゲーム市場シェア換算年間利用者(人、実質。実際の自社アクティブ利用者ではない))× 価格 53,000(国内モバイル市場の利用者1人当たり年間課金額(円、名目))→ 売上 276 億円・営業利益 50 億円。国内換算市場4300万人×シェア約1.21%。一人当たり年間名目5.3万円。
- ゲーム制作・運営受託:数量 3,985(年間換算有償開発・運営人月(人月。実工数の開示なし))× 価格 0.01(開発・運営1人月当たりの契約収入(億円・名目。成功報酬込みの換算))→ 売上 58 億円・営業利益 8 億円。受託換算人月は現在の0.95倍、単価は1.32倍。AIによる自動化を管理業務で補う。
倍率:資本コスト8.25%、堀は弱く超過ROEの残存率1/3。2035年の余剰現金155億円を自己資本から除き、同額の税後受取利息1.4%を純利益から除くと事業ROEは約43.2%となる。新規資本利回りRONICは19.9%、2035年より先の名目成長率gは1%。正当化PER=(1−g/RONIC)/(k−g)=13.10倍の上限そのものを使用。時価総額=(純利益38.8億−余剰現金155億×1.4%)×PER+現金155億×戻り方0.75。市場の過去のPERは使わない。
確率:国内競争と外部IP契約の条件を考えると、複数の大型成功が同時に続く確度は低い。だが2026年新作の初動と長期運営実績から可能性をゼロにはしない。
やや楽観 16% 版権作品の更新で既存収益を伸ばす 利益 22 億円 · PER 12.9 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 736 円343 億円
『ドラゴンクエストタクト』をはじめとする長寿作品の落ち込みを、数年ごとの新作で埋めていく。『イナズマイレブン クロス』は爆発的な初動の後も一定の利用者を残し、次の提携に結びつく。国内モバイル人口4200万人に対する換算シェアは約0.95%となり、2025年より広い顧客の財布を取れるようになる。版権料や広告費を払っても、売上総利益が複数タイトルに分散するため利益は安定する。
受託開発の工数はAIエージェント代替で減るが、開発の難しい案件と運営成果報酬へ契約を移し、減少は現在の85%程度で止まる。単価の上昇も物価を完全に下回る範囲で、無理にAIで成長することを前提にしない。コロプラ等との提携で開発人員の稼働を調整し、持分法投資先の赤字も次第に縮小する。経営は利益の一部を小規模な株主還元に振り向けるが、設備を持たない成長投資を優先し続ける10年になる。
- オンラインゲーム配信・ライセンス:数量 400,000(国内モバイルゲーム市場シェア換算年間利用者(人、実質。実際の自社アクティブ利用者ではない))× 価格 52,000(国内モバイル市場の利用者1人当たり年間課金額(円、名目))→ 売上 208 億円・営業利益 29 億円。国内換算市場4200万人×シェア約0.95%、年間名目5.2万円。
- ゲーム制作・運営受託:数量 3,550(年間換算有償開発・運営人月(人月。実工数の開示なし))× 価格 0.01(開発・運営1人月当たりの契約収入(億円・名目。成功報酬込みの換算))→ 売上 50 億円・営業利益 5 億円。受託人月は今の約0.85倍、単価は約1.27倍。成果報酬への転換を一部認める。
倍率:資本コスト8.25%、堀は弱く超過ROEの残存率1/3。2035年の余剰現金105億円を自己資本から除き、同額の税後受取利息1.4%を純利益から除くと事業ROEは約29.4%となる。新規資本利回りRONICは15.3%、2035年より先の名目成長率gは1%。正当化PER=(1−g/RONIC)/(k−g)=12.89倍の上限そのものを使用。時価総額=(純利益22億−余剰現金105億×1.4%)×PER+現金105億×戻り方0.75。市場の過去のPERは使わない。
確率:長期運営と外部IPの共同事業実績を素直に評価する。複数本の成功が必要だが、独占IPでないため楽観ほどの確信は置けない。
中立 35% 新作で旧作の減衰を補うが取り分は限定 利益 9 億円 · PER 12.4 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 341 円159 億円
『ログレス』『ドラゴンクエストタクト』の既存顧客は高齢化や競合作品への移動で減り、新作がその穴を埋める。『イナズマイレブン クロス』も単発の初動では終わらないが、10年間ずっと主力であり続けるとは考えない。国内モバイル人口は4000万人まで緩やかに減り、換算シェアは約0.55%に落ち着く。市場全体の単価は物価を反映して上がるが、Aimingの実質的な値決め力は大きく改善しない。
受託はAIエージェント代替により、作業時間で請け負う数量が約69%に縮む。単価は人件費を反映して名目上は上がるものの、物価上昇を下回り、受託売上は現在より小さくなる。広告とロイヤリティは売上に連動し、本社費は物価や人材費で増えるので、2025年の好採算を永久の基準には使えない。Betimoの持分法損失は縮小して最終利益の下押しは薄れるが、新たな高収益事業には育たない。
配当は約束されないままで、10年間の還元は限られる。純利益の大半が社内に残るため、必要な運転資金を超える現金は積み上がるが、全額を株主へ返すとは見ない。ROEは長年の赤字期から改善しても、利益の低成長と現金蓄積で高水準にはならない。
- オンラインゲーム配信・ライセンス:数量 220,000(国内モバイルゲーム市場シェア換算年間利用者(人、実質。実際の自社アクティブ利用者ではない))× 価格 52,000(国内モバイル市場の利用者1人当たり年間課金額(円、名目))→ 売上 114 億円・営業利益 13 億円。国内換算市場4000万人×シェア0.55%、年間名目5.2万円。
- ゲーム制作・運営受託:数量 2,900(年間換算有償開発・運営人月(人月。実工数の開示なし))× 価格 0.01(開発・運営1人月当たりの契約収入(億円・名目。成功報酬込みの換算))→ 売上 39 億円・営業利益 3 億円。受託の工数0.69倍、価格1.23倍。AI代替の「人月・工数」型の中立帯に収まる。
倍率:資本コスト8.25%、堀は弱く超過ROEの残存率1/3。2035年の余剰現金80億円を自己資本から除き、同額の税後受取利息1.4%を純利益から除くと事業ROEは約14.0%となる。新規資本利回りRONICは10.2%、2035年より先の名目成長率gは1%。正当化PER=(1−g/RONIC)/(k−g)=12.44倍の上限そのものを使用。時価総額=(純利益9.1億−余剰現金80億×1.4%)×PER+現金80億×戻り方0.75。市場の過去のPERは使わない。
確率:2025年の配信売上減少と2026年の新作効果の双方を踏まえ、長寿作品は残るが国内シェアは大きく改善しない中心像。下振れは赤字の履歴で別に扱う。
やや悲観 25% 主力の課金が弱まり受託の値段も下がる 利益 1 億円 · PBR 0.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 111 円52 億円
複数の主力ゲームで課金者が減り、運営イベントを重ねても以前ほど売上が戻らない。新作の投入は続くが、版権元への分配と広告費に利益を奪われる。国内モバイル人口3800万人に対する換算シェアは約0.36%へ落ち、年間課金額も物価上昇ほど増えない。利益率の高い作品ほどユーザー減が大きく、配信を続けること自体が利益の保証にはならない。
受託開発ではAIエージェントを取り込んだ発注者が定型業務を内製化する。換算人月は約56%へ縮み、契約単価も10年間で約8%しか上がらない。新しい大型の共同事業や買収は行わず、広告や人員を削って資金流出を防ぐ。営業利益はほぼ消え、最後は持分法関連の費用も含めて薄い最終利益にとどまる。先に稼いだ利益によって自己資本は一定残るが、継続企業としての収益価値より現金の回収可能性が株主価値を支える10年となる。
- オンラインゲーム配信・ライセンス:数量 135,000(国内モバイルゲーム市場シェア換算年間利用者(人、実質。実際の自社アクティブ利用者ではない))× 価格 48,000(国内モバイル市場の利用者1人当たり年間課金額(円、名目))→ 売上 65 億円・営業利益 4 億円。国内換算市場3800万人×シェア約0.36%。既存IPの課金力が衰える。
- ゲーム制作・運営受託:数量 2,350(年間換算有償開発・運営人月(人月。実工数の開示なし))× 価格 0.01(開発・運営1人月当たりの契約収入(億円・名目。成功報酬込みの換算))→ 売上 28 億円・営業利益 1 億円。AI代替で人月は0.56倍、単価は1.08倍。低採算案件の整理を優先。
倍率:営業利益がほぼ消えるため、今後の配当成長を見込むPERを用いない。悲観側のPBRはSCHEMA §1-3に従い、2035年の積み上がった自己資本90億円ではなく、基準期2025年末の自己資本68.8億円に掛ける。現在の自己資本68.8億円×PBR0.75=51.6億円であり、純現金と回収可能資産から見積もった床49億円を上回る。2035年の自己資本90億円は利益留保後の財務残高とROEを測るための値であり、悲観の評価倍率の分母には使用しない。事業の収益力が資本コストを下回るため、簿価からの減価を認める。過去の市場PBRから倍率を決めていない。
確率:過去の赤字と主力IPの契約上の脆さから低収益化は十分起こりうる。下に寄せる理由:大手版権元と比べて自主IPが弱く、過去の好業績が安定しなかった。
悲観 17% 版権作品の競争力を失い縮小再建 利益 −2 億円 · PBR 1.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 106 円49 億円
主力ゲームの権利契約が相次いで終わるか不利に改定され、新作も広告費を回収できない。国内モバイル人口3600万人に対する換算シェアは約0.22%へ下がり、配信売上は現在の3分の1程度になる。制作受託でも定型プログラミングやテストがAIエージェントに移り、発注者の内製化で換算人月が現在の約4割へ縮む。単価もほぼ据え置きとなり、物価分の値上げさえ通らない。
経営は大規模な新作開発を止め、既存タイトルの整理やスタジオ縮小で現金流出を抑える。コロプラ等との提携も新たな利益源に育たず、Betimoへの投資は回収の遅れを生む。年間営業利益は赤字となるが、早い段階で固定費を削るため10年間の累計損失は現金と自己資本をすべて使い切るほどではない。旧来の高い収益性は失われ、稼ぐ力には事実上ほとんど価値を付けず、現金と回収できる資産の床で評価する。
- オンラインゲーム配信・ライセンス:数量 80,000(国内モバイルゲーム市場シェア換算年間利用者(人、実質。実際の自社アクティブ利用者ではない))× 価格 48,000(国内モバイル市場の利用者1人当たり年間課金額(円、名目))→ 売上 38 億円・営業利益 1 億円。国内換算市場3600万人×シェア約0.22%。ゲーム収益の大半を失う。
- ゲーム制作・運営受託:数量 1,660(年間換算有償開発・運営人月(人月。実工数の開示なし))× 価格 0.01(開発・運営1人月当たりの契約収入(億円・名目。成功報酬込みの換算))→ 売上 18 億円・営業利益 0 億円。受託人月約0.40倍、単価は現在と同じ。コスト削減後も営業赤字。
倍率:恒常的な赤字事業には正のPERを使わず、保有する現金と事業縮小で売却できる資産の回収価値を優先する。2035年の縮小後自己資本52億円×0.95=49.4億円で、現在の純現金約54億円と2026年6月の約49億円を目安に、資産回収コストを考慮した保守的な床49億円を僅かに上回る。過去PBRではない。
確率:タイトルの失速と契約終了が重なり、受託も縮小する複合悪化。下に寄せる理由:過去に数年間の赤字継続と希薄化が実際に起きているため、構造的な負け筋の確率を軽視しない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
オンラインゲーム配信・ライセンス
自社配信と共同事業によるアプリ内課金、版権作品の運営、他社へのライセンス提供。
| 数量国内モバイルゲーム市場シェア換算年間利用者(人、実質。実際の自社アクティブ利用者ではない) | 価格国内モバイル市場の利用者1人当たり年間課金額(円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 288,362 | 38,883 | 112 | 17 |
| 10 年後 中立 | 220,000 | 52,000 | 114 | 13 |
取り方:2025年有報で配信売上112.12292億円。角川アスキー総合研究所「ファミ通モバイルゲーム白書2026」由来の2025年国内モバイル市場1兆6634億円を使用。CESAの2024年モバイル人口4278万人(2025年人口の代用)で割った約3.888万円/人・年を平均価格とし、配信売上÷同単価で約28.84万人という市場シェア換算量を得る。約0.674%は国内外の販売・ライセンスを含む粗い上限的な比較であり、実際のAiming利用者数、課金率、ARPPUは会社非開示。課金実人数を捏造しない。営業利益17億円は全社営業利益20.8億円を受託5.8億円と共通費−2億円へ配分した分析用推定で、会社の部門利益開示ではない。出典:2025年有報、CESAゲーム産業レポート2025、ファミ通モバイルゲーム白書2026、2026年7月会社資料。
ゲーム制作・運営受託
他社ゲームの制作や継続運営を請け負い、人員の開発工数、納品、運営成果に応じた契約収入を得る。
| 数量年間換算有償開発・運営人月(人月。実工数の開示なし) | 価格開発・運営1人月当たりの契約収入(億円・名目。成功報酬込みの換算) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 4,194 | 0.01 | 46 | 6 |
| 10 年後 中立 | 2,900 | 0.01 | 39 | 3 |
取り方:2025年有報の制作・運営受託売上46.13931億円を正とする。契約別人月と成果報酬が非開示なので、ゲーム開発受託の仮置き単価110万円/人月(0.011億円)で割り、4194人月・約350人年の換算仕事量を作った推定で、実際の請求人月でも所属社員数でもない。中立2035年はAIエージェント代替の「人月・工数」型を適用し、数量を約0.69倍に抑え、単価は物価10年1.34倍未満の約1.23倍とする。長期gは0%。営業利益5.8億円は部門利益非開示につき共通費と配信利益から逆算した配賦推定である。出典:2025年有報、2026年7月会社説明資料、PROMPT_AI_RISK。
リスクと懸念
有力IPのライセンス更新と取り分
『ドラゴンクエストタクト』や『イナズマイレブン クロス』のような有力作品には原作と共同事業の相手が存在する。契約終了や分配条件の改定が起きれば、プレイヤーが残ってもAimingの利益だけが減る。自社が永久に独占できる権利と、外部から借りる権利を区別して見る必要がある。
AI エージェント代替
開発・運営受託の作業には仕様書からのコード作成、テスト、定型素材生成、運用作業が含まれる。AIエージェントがこの工数を削れば、受託先の内製化と人月単価への圧力が同時に進む。中立の受託数量を10年で約7割、長期成長率を0%とした。ゲーム自社配信は利用者獲得型であり、受託と同率には縮めていない。
新作への先行支出と長い赤字履歴
開発者の人件費や広告宣伝費はサービス開始前から必要で、失敗作の制作費は戻らない。2017~2019年や2023~2024年に営業赤字となった実績は、単年度の高い営業利益率の持続を疑う根拠になる。製作委員会の解散やタイトル中止も収入と費用の認識を大きく変える。
プラットフォーム規制と課金人口
Apple、Googleや外部決済会社を通る課金の取り分は手数料制度に左右される。日本のモバイルゲーム人口は既に成熟しており、未成年課金規制や景品表示に関する規制強化も売上を押し下げうる。手数料引き下げが起きても獲得広告費との競争で利益は全額残らない。
現金を株主に戻さない資本配分
過去3期に配当がなく、2015年、2020年、2024年の株数増加は既存株主を希薄化させた。2025年のBetimoへの出資も、本業と違う分野での資本効率を問う案件である。純現金を価値に含めても、配当や買い戻しで確実に返す制度的な約束はないため、帳簿額の75%しか株主価値に算入していない。
悲観時の清算価値と運転資金
手元資金には運営費、契約負債、払い戻し、開発中タイトルへの支出があり、全額を余剰と数えることはできない。2026年6月の新規借入と持分法投資損失も確認が必要だ。赤字が長期化した場合はタイトル閉鎖と人員縮小が現金を守れるかが床の成否を分け、現金価値がそのまま保証されるわけではない。
今後の分かれ目
- 『イナズマイレブン クロス』が配信1年を過ぎても月次課金と継続率を維持し、運営利益が開示されたら
- 一時的な累計ダウンロードではなく長期利益の証拠と捉え、配信の換算シェアとやや楽観側の確率を上方修正する。
- 人気IPの契約更新に伴ってロイヤリティ負担が重くなり、配信売上が増えても利益率が低下したら
- 自社に残る堀が薄い証拠として中立の配信利益率を下げ、悲観側の重みを増やす。
- 受託部門の売上が人員削減より速く減り、ゲーム開発の内製化やAIによる単価下落が確認されたら
- AIエージェント代替の受託数量を人月の縮小レンジ下限へ寄せ、価格も物価未満へ引き下げる。
- 出資先の持分法損失が止まり、純利益と営業利益の差が縮まったら
- 営業成果が株主利益へ届く改善として中立の純利益を見直す。出資簿価と利益を二重に足さない。
- 累積の自社株買いが発行株の5%以上になるか、利益の半分以上を定常的に還元する方針が示されたら
- 株主へ戻る余剰現金の係数を0.75から1.0へ改める検討をし、ただし実施額を優先して確認する。
- 複数期連続で営業赤字となり純現金が運転に必要な水準を割り込んだら
- 悲観の資産床を取り直し、増資と既存株主の希薄化まで含めて価値を再評価する。
見ておくもの
- 主力タイトルごとの月次AU・課金率・ARPPUと継続期間(数値開示の有無も含む)
- 配信サービスと制作・運営受託サービスの四半期別売上と利益率
- 広告宣伝費・ロイヤリティ・プラットフォーム手数料の売上高比率
- イナズマイレブン クロスの初動後1年の維持率と新作の配信本数
- 出資先Betimoの持分法損益、純現金と開発投資の推移
- 配当・自社株買い・株数増減、コロプラ等の資本提携の変更
- AI制作ツール導入に伴う受託契約の単価・工数・成果報酬への移行
倍率と資本コストの決め方
現在の時価総額約96億円や過去のPERから目標時価総額を決めていない。配信は国内モバイル人口とシェア換算数量、受託は推定人月と契約単価に分け、物価は価格だけへ入れた。2035年の利益は各事業の営業利益と共通費、持分法損失等を経て作り、自己資本は期首68.8億円から10年の損益と還元で積んだ。現金は事業に必要な分を除き、その後の累積分を各筋書きの余剰現金に移し、利息相当を事業利益から控除した。価値の式は資本コスト8.25%、長期名目成長1%、弱い堀の新規資本利回りから導き、楽観~中立では上限そのもの、悪化時は稼ぐ力と回収可能資産を用いた。やや悲観のPBRは2035年の自己資本90億円ではなく、現在の自己資本68.8億円を評価母数とした。リース会計の表示変更が将来あっても費用を二重計上せず比較する。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。無リスク金利3%と株式プレミアム4.5%の基本7.5%に事業の質+0.75%を加えた。βや小型株プレミアムを用いず、黒字と純現金があり破綻懸念の上乗せはしない。