結論
サスメドは、医師が処方する治療用アプリと、製薬会社の臨床試験を効率化するシステムを開発する医療IT企業である。筆者の結論は「割高」だ。2026年に不眠障害治療用アプリ「Medcle」の保険適用と販売開始を実現した意義は大きいが、まだ継続的に利益を生み出す会社になったわけではない。
長く持つ株主にとって最大の論点は、医療機器として承認された技術が、実際に医師から処方され続ける商品になるかどうかである。2026年6月期の事業収益は約5億円だったが、プロダクト事業の収益約3.4億円は、主に杏林製薬とあすか製薬から受け取った開発進捗報酬だった。商品が毎年売れて積み上がった売上と同じように評価してはいけない。
さらに2026年8月、Medcleの販売を担う予定だった塩野義製薬との独占販売提携が終了した。保険適用に伴う2億円の報酬は確定したものの、その後の販売網と営業費用は自社で引き受けることになった。会社は採用医療機関1,000施設、月間処方2,000回という目標を維持しているが、その達成はまだ実績で確認できない。
財務面には救いがある。2026年6月末の純現金は約37億円で、有利子負債への依存はほぼない。しかし同年度の営業・投資キャッシュフローを合わせた流出は約7億円であり、2027年6月期も赤字拡大の会社予想である。現金をすべて株主に返せる資産とみなすこともできない。
2036年6月期の中立的な筋書きでは、処方の定着と一部の開発案件の成功によって黒字化するものの、資本コストに見合う資本効率には届かない。五つの筋書きの確率と既存株主の希薄化を考慮した現在の本質価値は約16.0億円で、基準時点の時価総額約59.7億円を約73%下回る。革新的な医療技術を持つことと、株主が十分な利益を受け取れることは、分けて考える必要がある。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、まず「10年後に顧客が必ず必要とする製品か」を考える。Medcleは医療機器承認と保険適用を得たため、一般の健康管理アプリより事業の位置は強い。しかし医療機関が継続して採用し、患者が実際に使い、再現性のある売上が生まれて初めて、長期にわたり保有する価値が明確になる。今の段階では、技術の成功と商売の成功を同じものとして扱えない。
もう一つの問いは、研究開発に投じた一円が、将来いくらの利益を生むかである。耳鳴りや月経前症候群の案件では製薬会社から達成報酬が入ったが、次の治験にも資金が必要となる。成功した製品のロイヤリティーが次の研究開発費を継続的に賄い、残る現金を株主に返せる状態になれば、研究開発型企業としての価値は大きく変わる。反対に、試験の節目ごとに資金を受け取りながら研究費を使い続けるだけでは、売上の伸びは所有者の利益にならない。
現金37億円も、それ自体が十分な安全域を保証しない。今の経営方針では、現金は研究開発、営業体制、承認申請に使うための資本である。少数株主は清算や配当を自由に決められず、使われた後の現金を再び受け取れるとは限らない。長期の価値を見るには、帳簿に載る資金と、株主に実際に帰属する価値を区別しなければならない。
筆者が高く評価したいのは、臨床試験から保険診療まで製品を運んだ実行力である。一方で、Medcleの処方数量、製品一件当たりの実際の利益、SUSMED SourceDataSyncの解約率、値上げの実績は十分に見えていない。投資対象として理解できる範囲はまだ狭く、将来の成功を先払いするには慎重であるべきだ。
何で稼ぐ会社か
事業の柱は二つある。DTxプロダクト事業では、病気の治療を支援するソフトウェアを医療機器として開発し、保険診療での販売収入、製薬会社との開発契約に基づく達成報酬、発売後の販売連動ロイヤリティーを得る。DTxプラットフォーム事業では、臨床試験のデータ収集や照合作業を効率化するシステムと、機械学習による解析サービスを提供する。
Medcleは、不眠障害の患者に認知行動療法を提供する9週間の治療用アプリである。2023年に製造販売承認を取得し、追加の承認手続きを経て、2026年6月から保険診療での販売を開始した。公定の償還価格は一処方2万4,100円だが、この金額をそのままサスメドの売上単価と考えることはできない。医療機関への診療報酬とメーカー収入は別であり、実際のメーカー手取り額や処方実績は十分に開示されていない。
開発パイプラインでは、杏林製薬と耳鳴り向け、あすか製薬と月経前症候群・月経前不快気分障害向けの治療用アプリを進めている。前者は検証的試験に入り、後者は特定臨床研究の結果を踏まえて次の開発段階へ向かっている。このほか、慢性腎臓病、進行がん患者の意思決定支援、乳がん患者の運動療法、慢性めまいなどの案件がある。Medcleを除く開発パイプラインは11件だが、11件すべてが承認され、販売収入を生むという意味ではない。
プラットフォームの中核は、SUSMED SourceDataSyncと呼ぶ臨床試験システムである。患者データの記録と照合を効率化し、治験の監査可能性を高める。2026年9月には、このシステムを利用した治験の結果に基づく医薬品の製造販売承認が発表された。技術の実用性を示す重要な実績だが、それだけで市場を独占できるわけではない。
2026年6月期の事業収益は、プロダクト約3.40億円、プラットフォーム約1.57億円だった。両事業のセグメント利益は合計約1.80億円の黒字だが、研究開発費や本社費など約5.11億円を差し引くと、全社の営業損失は約3.30億円になる。治療用アプリの開発費を負担し続けながら、処方収入をどこまで育てられるかが経済的な本質である。
優良さと弱いところ
サスメドの最大の強みは、単なる健康管理アプリではなく、臨床試験を経て医療機器として承認され、保険適用に至った製品を持つことだ。治療効果を検証した臨床データ、薬事申請の経験、医療機関との関係、保険制度への対応には時間と費用がかかる。一般的なアプリ開発会社が短期間で模倣できない参入障壁である。
ただし、許認可は価格決定力そのものではない。Medcleの償還価格は公的制度に依存し、将来の改定によって下がりうる。医師には睡眠薬、対面の認知行動療法、睡眠衛生指導という選択肢がある。患者にも9週間の治療を続けてもらう必要があり、承認を得たことと大量に処方されることの間には大きな距離が残る。
SUSMED SourceDataSyncには、実際の治験と製造販売承認につながった実績がある。規制当局に提出するデータの信頼性が求められる領域なので、一定の切り替え費用は期待できる。一方、年間解約率5%未満、法令改正に伴う継続的な値上げ、業界共通基盤としての広範な利用といった、強い堀を数字で裏付ける開示は確認できない。技術的な先進性を、そのまま永続的な超過利益に読み替えるのは早い。
資本効率は現時点では低い。2020年6月期から2026年6月期まで営業赤字が続き、2026年6月期のROEもマイナスだった。2026年には全社資産の減損も発生している。研究開発が将来の価値につながるかはまだ検証途中であり、追加投資の利益率が株主の資本コストを上回った実績はない。
経営陣には医療とソフトウェアの専門性があり、製薬会社や医療機関との共同開発も積み上げてきた。しかし、少人数の組織で開発、薬事対応、販売、システム提供を同時に進める負荷は大きい。長期保有に値する強い事業になる可能性はあるが、現在はその強さを証明する段階にある。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
処方型デジタル治療は、医療費の抑制や医療従事者不足への対応という長期的な追い風を持つ。特に不眠症の認知行動療法は、薬物療法とは異なる治療上の役割がある。しかし国内の医療需要は、患者が必要とするだけでは売上にならない。医療機器承認、保険適用、医師による採用、患者の継続利用という複数の関門を通って初めて処方が増える。
会社はMedcleの国内ターゲット市場を約420億円、より広い潜在市場を約3,940億円と推計している。これは不眠症患者数や利用意向をもとに組み立てた潜在需要であり、現在の実売市場ではない。対照的に、保険適用審議時に示された販売予測は、発売7年度目のピーク販売額が約5億円という規模だった。この大きな隔たりを無視して、市場規模の一部を獲得するだけで高利益になるとは考えない。
Medcleは国内で保険適用された不眠障害向け治療アプリとして先行するが、不眠治療市場全体でのシェアはまだ小さい。競争相手は同種のアプリだけではなく、既存の睡眠薬、医師による治療、今後登場する低価格のデジタル支援である。CureAppなど他疾患で治療用アプリの事業化を進める企業もあり、医療機器開発の競争は広がる。一方、同じ不眠症治療アプリ市場に限定した主要競合の販売数量やシェアは、比較可能な形では公表されていない。
臨床試験システムでは、Medidata、Oracle Life Sciences、Veevaなどの製品や、既存のCROが持つ業務基盤と競う。国内CRO市場は年間2,000億円を超える規模とされるが、その全額がSUSMEDのシステムを購入する市場ではない。2026年6月期のプラットフォーム売上1.57億円は市場全体と比べればごく小さく、業界全体の売上を分母にした比率を実際のソフトウェアシェアと呼ぶこともできない。
AIエージェントは、この事業を二方向から変える。治験の入力、照合、モニタリングや定型的な解析では、既存ソフトの画面を人が操作する必要が減るため、席数や導入支援単価には下押し圧力がかかる。逆に処方型治療は、一般的な対話AIだけでは医療機器承認、臨床上の有効性、診療報酬への適合を代替できない。ただしAIを使った低価格の治療支援が臨床試験と承認を得れば、Medcleの優位は縮みうる。
資本政策と M&A
資本配分の中心は配当や自社株買いではなく、治療用アプリの研究開発と販売体制の構築にある。2026年6月期の研究開発費は約2.47億円で、臨床試験システムのソフトウェア資産化や本社移転関連の投資も行った。同年度の営業キャッシュフローは約4.74億円の流出、投資キャッシュフローは約2.28億円の流出だった。2027年6月期には事業収益8.38億円、営業損失4.61億円、純損失5.41億円を会社が見込んでいる。
2026年9月公表の事業計画は、Medcleの採用施設数や処方数、開発案件の進捗を重視している。上場時調達資金の使途も研究開発費、人材採用費、本社関連費用に配分されている。一方、数年後の売上高、営業利益、ROEについて確約された中期目標は確認できない。配当性向、DOE、総還元性向、自社株買い額についても数字の約束なしであり、2027年6月期の配当予想もゼロである。
過去10年の大型買収による成長実績はなく、製薬会社との共同研究開発・販売提携が事業拡大の主要な手段となってきた。杏林製薬やあすか製薬との契約は、開発資金と商業化の知見を確保する一方、達成報酬が試験結果や承認時期に左右される。塩野義製薬との販売提携終了は、相手に販売を任せる戦略が契約変更によって崩れうることを示した。
株主構成にも注意が要る。2026年6月末時点で筆頭株主は約41%、上位10株主は約70%を保有する。配当や実質的な自社株買いの実績が乏しく、余剰現金が株主に戻る確度を高く評価しにくい。新株予約権による潜在株式約85万株に加え、譲渡制限付株式報酬による新株発行もある。将来の黒字化だけでなく、一株当たりの株主持分がどれほど残るかも重要である。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
Medcleは、単なる医療IT製品の試作品ではない。臨床試験を行い、製造販売承認を取得し、2026年6月には保険適用まで実現した。医薬品を使わずに不眠障害の改善を支援できる点には治療上の価値があり、対面で認知行動療法を提供できる専門職が限られる日本では、普及する余地が大きい。会社の推計する国内ターゲット市場約420億円は潜在需要だが、その一部分を獲得するだけでも、現在の売上規模からは大きな成長になる。
塩野義製薬との提携終了は短期的には痛手だが、自社販売によって処方収入を直接獲得できる構造にも変わった。製薬会社に販売利益の一部を渡す形ではなくなり、営業体制の立ち上げに成功すれば、処方件数の増加がそのまま収益性の改善につながりやすい。2027年6月期の採用施設1,000、月間処方2,000という目標を早期に達成し、その後も医師の紹介と患者の治療成績によって利用が広がる可能性がある。
開発パイプラインもMedcleだけではない。杏林製薬との耳鳴り治療用アプリは検証的試験に進み、あすか製薬との月経前症候群関連アプリでは有効な研究結果を受けて達成報酬が発生した。これらが承認されれば、販売ロイヤリティーという継続収入を生み、次の開発案件を自己資金で賄える。臨床試験システムについても、実際の医薬品承認につながった導入事例は新たな顧客への有力な営業材料になる。
財務面では、有利子負債に依存せず約37億円の現金がある。開発失敗による即時の財務破綻を避けながら、複数の治療領域に挑戦できる余地がある。医療機器承認、保険収載、製薬会社との共同開発という経験は簡単には買えず、今後の新製品開発でも蓄積が効く。複数の承認と販売拡大が重なれば、現在の会社規模からは想像しにくい利益成長を実現できる。
慎重な見方
Medcleの承認は技術上の成功だが、投資家が必要とするのは利益の実績である。2026年6月期の売上約5億円の相当部分は、複数の開発契約に伴う一時的な達成報酬だった。肝心の不眠障害治療用アプリについては、発売直後の処方件数も、メーカーが実際に受け取る単価も確認できない。保険適用審議時のピーク販売予測が約5億円であることを考えると、会社の潜在市場推計から大きな売上を直接期待するのは危険だ。
塩野義製薬が販売提携を終了した事実は重い。返還義務のない既受領報酬や確定した2億円は会社に残るが、当初想定した大手製薬会社の営業網は使えなくなった。自前で医療機関への周知、採用手続き、処方定着を進めなければならない。アプリの開発に強い会社が、保険診療の販売にも強いとは限らない。今後の営業費用が増え、処方数が伸びなければ、売上が増えても損失は縮まらない。
他の開発案件にはさらに長い時間がかかる。耳鳴りや月経前症候群のアプリは、臨床試験、承認申請、保険適用、上市という工程を残している。製薬会社から示された最大達成報酬は、開発が成功した場合の条件付き上限であって、確定した売上ではない。治験の不成功や制度変更が重なれば、数年の研究費を費やしても収入が得られない。
プラットフォーム事業も安定した独占事業とは言い切れない。契約案件数は2026年6月期に15件で、前年から減っている。MedidataやVeevaなどの既存基盤に加え、AIエージェントがデータ入力や照合作業を自動化すれば、利用席数や業務支援単価への圧力は強まる。現金は厚いように見えて、2026年6月期には営業活動と投資活動で約7億円が流出した。赤字が長引けば、株主に還元される前に現金を使い切り、増資によって既存株主の取り分が薄まるおそれがある。
どちらに重みを置いたか
承認・保険収載という技術面の進歩は明確に評価する。ただし2026年8月の販売提携終了と、7期続く営業赤字によって、商業化の不確実性の方が現時点では大きい。中立では2036年に黒字化すると考えるものの、資本コストを超えるROEまでは見込まない。
確率は楽観側25%、中立30%、悲観側45%とした。下に寄せる理由は、Medcleの販売数量がまだ確証されず、大手製薬会社の販売網を失い、承認待ちの製品が多く残るためである。AIエージェントによるプラットフォーム数量・単価の圧縮は中立の事業数値に既に反映しており、同じ理由だけで確率を重ねて下げてはいない。成功時の上振れは大きいが、その利益に対して現在の時価総額が十分に安いとは言えない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/06 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 218 円37 億円(+ 還元の換算額還元の合計 7 円1 億円)。 今の値に割り戻すと 95 円16 億円、今との差 −70.5%、 期待の年率 −3.5%(資本コスト 9.3%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 1,088 円183 億円 | 45 円8 億円 | +251.9% | +13.8% | 91 円15 億円 |
| やや楽観 | 17% | 393 円66 億円 | 23 円4 億円 | +29.0% | +2.7% | 71 円12 億円 |
| 中立 | 30% | 119 円20 億円 | 0 円0 億円 | −62.9% | −9.4% | 36 円6 億円 |
| やや悲観 | 27% | 79 円13 億円 | 0 円0 億円 | −75.6% | −13.1% | 21 円4 億円 |
| 悲観 | 18% | 40 円7 億円 | 0 円0 億円 | −87.4% | −18.7% | 7 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 218 円37 億円 | 7 円1 億円 | −29.9% | −3.5% | 226 円38 億円 |
今の株価時価総額 322 円54 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 8% Medcleが広く定着し、複数の治療アプリが商業化 利益 17 億円 · PER 11.4 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,088 円183 億円
Medcleは塩野義製薬との契約終了後、自社販売体制を立ち上げる。採用した医療機関での治療効果の評判が広がり、年間処方は11万件に達する。保険診療の枠内で償還価格の大幅な上昇は望めないものの、営業効率が改善し、処方一件ごとの利益が積み上がる。治療用アプリが日常診療の選択肢として定着し、最初の承認取得の価値が長期の売上へ結び付く。
杏林製薬との耳鳴り治療、あすか製薬との月経前症候群関連の開発が成功し、さらに別の治療領域でも製薬会社との新契約が成立する。上市後のロイヤリティーと新しい開発達成報酬が重なり、年による売上の凸凹は残っても、収益基盤は複数の製品へ広がる。買収に依存せず、自社研究開発と共同開発から継続的に新製品を生み出せる。
臨床試験プラットフォームでは、承認取得につながった利用実績を営業に生かす。ただしAIエージェントによって既存画面や人手による支援の需要が減るため、契約案件数を際限なく増やすことは想定しない。臨床試験の規制対応という付加価値に集中することで単価を維持する。2030年代には十分な利益が残り、研究開発を続けながら初めてまとまった株主還元を行える。
- Medcle不眠障害治療用アプリの処方販売:数量 110,000(年間の新規処方コース数(件・実数))× 価格 0.00(一処方当たりサスメド実現売上(億円・名目))→ 売上 25 億円・営業利益 19 億円。年間11万処方。実現単価2.3万円で、現行公定償還価格2.41万円を下回る。処方普及により販売・製品維持の固定費が薄まり、セグメント利益率75%を達成する強い成功例。
- 共同開発マイルストン・製品ロイヤリティー:数量 6.0(年間のマイルストン・ロイヤリティー換算収益単位(件・相当))× 価格 3.00(一収益単位当たり受取額(億円・名目))→ 売上 18 億円・営業利益 12 億円。年6件相当の上市後ロイヤリティーと大型マイルストンの合計。追加の共同開発契約と複数製品の承認成功が必要で、現存11パイプラインすべてが成功するとの前提ではない。
- 臨床試験・医療データ解析プラットフォーム:数量 15.0(契約案件数(件・会社開示の契約案件数を採用))× 価格 0.13(一契約案件当たり年間平均事業収益(億円・名目))→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円。AIエージェント代替を受けながらも、規制対応を伴う契約15件を維持。単価上昇は高度な治験案件への構成変化によるもので、AI製品の未実証売上は織り込まない。
倍率:k9.25%、2036年の事業利益16.29億円(全社純利益16.5億円から余剰現金15億円に対する税後利息0.21億円を控除)、事業自己資本71億円より事業ROE22.94%。強い堀とは認定せず、超過収益が半分残るとしてRONIC=9.25%+0.5×(22.94%−9.25%)=約16.10%。g_long1%から正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)=約11.37倍。現在・同業・過去の市場PERは参照しない。
確率:医師の採用、患者の継続利用、耳鳴り・月経前症候群など複数領域の承認が順調に重なる必要がある。開発力は評価するが、実際の処方拡大と販売網構築の実績がまだ乏しいため8%とした。
やや楽観 17% Medcleが主力となり、共同開発から利益が生まれる 利益 6 億円 · PER 11.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 393 円66 億円
Medcleの採用医療機関は増え、医師が薬物療法の補完として処方する利用が定着する。年間処方は5万2,000件となり、保険収載審議時の販売予測を明確に上回る。ただし公的な償還価格の改定があるため、単価は物価上昇ほど伸びず、収益拡大の中心は処方数量である。販売提携を終了した影響は、自社営業の効率化によって徐々に解消する。
杏林製薬とあすか製薬の案件の一部が承認・上市へ進み、販売連動ロイヤリティーが発生する。新たな共同開発契約も少数成立し、製品ごとの開発収入の谷を埋められるようになる。一方、臨床試験で期待した結果が得られない案件もあり、開発費と上市収入の時期は一致しない。小さな買収や提携の追加はあり得るが、全社利益の主因にはしない。
SUSMED SourceDataSyncは治験実績を生かして一定の契約を維持するが、AIエージェントによる入力・照合の省力化で契約案件数の伸びは限定される。開発人員と販売管理費は増加するものの、製品事業の拡大がそれを上回る。2036年には安定黒字となり、一部を株主に戻しながら、次の治療用アプリへ再投資できる会社になる。
- Medcle不眠障害治療用アプリの処方販売:数量 52,000(年間の新規処方コース数(件・実数))× 価格 0.00(一処方当たりサスメド実現売上(億円・名目))→ 売上 11 億円・営業利益 8 億円。年間5万2,000処方、実現単価2.2万円。現行公定価格を下回り、名目単価上昇も物価上昇より小さい。
- 共同開発マイルストン・製品ロイヤリティー:数量 4.0(年間のマイルストン・ロイヤリティー換算収益単位(件・相当))× 価格 2.50(一収益単位当たり受取額(億円・名目))→ 売上 10 億円・営業利益 7 億円。既存案件の承認成功と追加共同開発から、年間4件相当のマイルストン・ロイヤリティー収入。
- 臨床試験・医療データ解析プラットフォーム:数量 14.0(契約案件数(件・会社開示の契約案件数を採用))× 価格 0.12(一契約案件当たり年間平均事業収益(億円・名目))→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円。案件数は現状15件の0.93倍。単価は高度案件の構成改善を織り込むが、AI代替により名目上昇を限定。
倍率:余剰現金12億円の税後利息0.168億円を外した事業純利益5.732億円、事業自己資本40億円で事業ROE14.33%。k9.25%、堀の残存割合2分の1からRONIC11.79%。2036年以降のg1%で正当化PER11.093倍を採用。市場で過去に付いた成長倍率は使わず、利益の質はkとRONICに一度だけ反映した。
確率:保険収載製品を持つ強みはあるが、販売網の再構築と複数の臨床試験成功が必要である。楽観ほど広範な普及を要しないため17%とした。
中立 30% 保険診療への定着は緩やかで、ようやく安定黒字 利益 2 億円 · PER 10.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 119 円20 億円
Medcleは保険診療の選択肢として残るが、医師の採用は地域や診療科によって差が出る。9週間にわたる治療の継続が必要であり、睡眠薬に慣れた患者のすべてが切り替わるわけではない。2036年の年間処方は2万5,000件とし、保険適用審議時の販売予測に近い水準から小幅に普及する。償還価格は制度上の制約が強いため、メーカー実現単価は実質的に低下する。
杏林製薬との耳鳴り治療用アプリとあすか製薬との共同開発は、時間を要しながら一部が実用化へ進む。これに新規案件を加えて、年間3件相当の開発達成報酬・ロイヤリティー収入を得る。ただし個々の収入は均等ではなく、実際には承認年に集中する。失敗した治験や契約終了も発生し、研究開発費を完全になくすことはできない。
臨床試験プラットフォームではAIエージェント代替が進み、契約案件数は現在の約8割まで減る。医薬品承認に必要な監査証跡やデータの信頼性を提供できるため事業は残るが、操作画面や人手の支援は値上げしにくい。物価上昇に合わせて全社の研究開発費と管理費も増える。2036年には小幅な黒字を確保するものの、株主還元を始めるだけの余裕は限られ、資本コストを超えるROEには届かない。
- Medcle不眠障害治療用アプリの処方販売:数量 25,000(年間の新規処方コース数(件・実数))× 価格 0.00(一処方当たりサスメド実現売上(億円・名目))→ 売上 5 億円・営業利益 4 億円。年間2万5,000処方、メーカー実現単価2万円。公定価格据え置きと将来改定のため、物価3%による単価上昇を当然視しない。
- 共同開発マイルストン・製品ロイヤリティー:数量 3.0(年間のマイルストン・ロイヤリティー換算収益単位(件・相当))× 価格 2.20(一収益単位当たり受取額(億円・名目))→ 売上 7 億円・営業利益 4 億円。既存11件の開発パイプラインの一部と将来の新規契約から、年間3件相当のマイルストン・ロイヤリティーが発生。価格は2026年の一件平均の約1.29倍で、10年間の物価1.34倍以内。
- 臨床試験・医療データ解析プラットフォーム:数量 12.0(契約案件数(件・会社開示の契約案件数を採用))× 価格 0.11(一契約案件当たり年間平均事業収益(億円・名目))→ 売上 1 億円・営業利益 1 億円。AIエージェント代替の席課金・操作画面型として数量は15件の0.80倍、単価は約1.07倍。長期gはこの部分では名目0%程度。規制対応の強い堀を未立証のため特別扱いしない。
倍率:kは9.25%。余剰現金8億円の税後利息0.112億円を控除した事業純利益は1.588億円、事業自己資本は28億円で事業ROE5.67%。ROEがk以下のため、超過利益の成長を価値に加算せず、稼ぐ力の上限1÷k=10.81081倍を使用する。これは市場PERや類似企業の倍率から置いた数字ではない。利益が小さいため、端数の税・金利収支による価値の感応度は大きい。
確率:承認済み製品と複数の開発案件がある一方、処方数量は未確認である。Medcleの年間2万5,000処方は保険適用審議時のピーク予測約2万件をやや上回る水準で、過度な普及成功とはしない。下に寄せる理由:大手製薬会社の販売網を失い、他の収入も臨床試験の節目に左右されるため。
やや悲観 27% 処方が伸びず、研究開発を絞って縮小均衡 利益 −1 億円 · PBR 0.4 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 79 円13 億円
Medcleは医療機器として市場に残るが、採用施設の拡大が止まり、処方件数は年間6,000件にとどまる。認知行動療法への需要は存在しても、医療現場の説明負担、患者の利用継続、償還価格改定への懸念が普及を阻む。販売規模に対して営業経費が重く、自社販売に切り替えた効果は十分に表れない。
耳鳴りや月経前症候群の開発では、試験の遅延や追加検証が生じる。既存契約の一部は継続するものの、大きな達成報酬は不定期となり、年平均の収入は小さい。複数の開発案件を一度に維持できなくなり、経営陣は臨床試験の中止、外部委託費の削減、人員とオフィス費用の見直しを進める。大型の企業買収は行わず、保有現金を守ることが優先される。
SUSMED SourceDataSyncは、既存の規制対応機能を必要とする顧客だけが残る。AIエージェントが記録の整理、照合、レポート作成を自動化し、操作席数と案件単価を圧迫する。事業規模が縮むので研究開発と本社費用も大幅に削るが、維持費用を完全になくすことはできず、2036年も赤字が残る。過去に調達した現金の多くが使われ、株主還元は行われない。
- Medcle不眠障害治療用アプリの処方販売:数量 6,000(年間の新規処方コース数(件・実数))× 価格 0.00(一処方当たりサスメド実現売上(億円・名目))→ 売上 1 億円・営業利益 1 億円。年間6,000処方に低迷。制度改定や販売先への経済条件によりメーカー実現単価1.7万円。
- 共同開発マイルストン・製品ロイヤリティー:数量 1.0(年間のマイルストン・ロイヤリティー換算収益単位(件・相当))× 価格 0.90(一収益単位当たり受取額(億円・名目))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。大型契約の継続的な達成報酬は期待できず、年1件相当の小規模収入だけが残る。
- 臨床試験・医療データ解析プラットフォーム:数量 9.0(契約案件数(件・会社開示の契約案件数を採用))× 価格 0.11(一契約案件当たり年間平均事業収益(億円・名目))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。AIエージェント代替と既存基盤との競争で契約案件数は9件、単価は名目で横ばい。
倍率:営業赤字が残るため利益に正のPERを掛けない。2026年6月末の自己資本39.8億円を基準に、研究開発の大幅縮小後に残る換金可能な資産の価値を評価する。過去の市場PBRの底値から決めた倍率ではない。現金の累計消費と売却資産を積み上げた床13.5億円を下回らない約13.93億円とし、将来の自己資本17億円にPBRを掛けて水増ししない。
確率:Medcleの臨床的な価値があっても、販路開拓に失敗して処方が低調となり、製薬会社との契約報酬も途切れやすい。会社の足元の赤字拡大予想から、研究開発の選別が避けられない可能性を重く見る。
悲観 18% 商業化に失敗し、現金の大半を消費 利益 −2 億円 · PBR 0.2 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 40 円7 億円
Medcleは承認を維持しても、医療現場で日常的に処方される商品にならない。睡眠薬を中心とする従来の治療が続き、患者向けの低価格なデジタル支援も広がる。公定価格が見直される一方で導入費用はかかり、年間処方は1,000件に縮小する。独自の販売網に投じた費用を回収できず、新規販売活動は大幅に停止する。
杏林製薬とあすか製薬の共同開発から新たな大型達成報酬が生まれず、他のパイプラインも遅延または中止となる。保有する臨床試験データや知的財産について売却や提携を模索するが、研究開発費に見合う対価を得られない。SUSMED SourceDataSyncも大手システムとAIエージェントに押され、少数の既存案件の維持に縮小する。研究開発組織を大幅に整理し、将来の成長を狙う会社から残存資産を守る会社へ変わる。
事業の失敗は段階的に進むため、直ちに清算できるとは限らない。2027年6月期に見込む大幅赤字に続き、複数の治験費用、販売費、契約整理費用が現金を減らす。2036年には残存現金と換金できる運転資産がわずかに残る状態となり、株主還元はできない。資金調達が必要になれば追加の希薄化もあり得るが、現在の株主に高い残余価値が戻るとは想定しない。
- Medcle不眠障害治療用アプリの処方販売:数量 1,000(年間の新規処方コース数(件・実数))× 価格 0.00(一処方当たりサスメド実現売上(億円・名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。年間1,000処方に縮小し、実現単価は1.5万円。追加開発を停止した後の製品維持に限られる。
- 共同開発マイルストン・製品ロイヤリティー:数量 0.0(年間のマイルストン・ロイヤリティー換算収益単位(件・相当))× 価格 0.20(一収益単位当たり受取額(億円・名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。共同開発の大型マイルストンと商業化ロイヤリティーが途絶える。単価欄は参考水準で、数量ゼロのため売上はゼロ。
- 臨床試験・医療データ解析プラットフォーム:数量 6.0(契約案件数(件・会社開示の契約案件数を採用))× 価格 0.10(一契約案件当たり年間平均事業収益(億円・名目))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。契約案件数は現状の4割まで減少。AIエージェントによる操作・解析の代替と大手基盤の競争により名目単価も低下。
倍率:継続赤字の事業にPERを掛けず、残存する換金可能な資産を評価する。2026年6月末の自己資本39.8億円に対する0.18倍は約7.16億円で、過去の市場PBRとは無関係。床の資産価値6.8億円をわずかに上回る水準であり、事業再建への大きな期待は入れない。将来の自己資本8億円を増幅する方法も採用しない。
確率:Medcleの普及が極端に弱く、開発案件の承認も進まず、資金を投入しても収益化できない構造的な敗北を想定した。現在は無借金に近いため直ちに破綻する可能性は低いが、複数年にわたる現金流出の実績があるため18%を割り当てる。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
Medcle不眠障害治療用アプリの処方販売
医師が処方する9週間の不眠障害治療用アプリの製造販売収益。2026年6月に保険適用と販売を開始した。
| 数量年間の新規処方コース数(件・実数) | 価格一処方当たりサスメド実現売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 0.0 | 0.00 | 0 | 0 |
| 10 年後 中立 | 25,000 | 0.00 | 5 | 4 |
取り方:2026年6月1日に発売したが、年度末までの処方数量とメーカー実現単価は個別開示されていない。開示上のDTxプロダクト事業売上3.40234億円のほぼ全額が杏林製薬2.4億円とあすか製薬1.0億円の開発達成報酬で説明できるため、処方販売の基準数量は未確認としてモデル上ゼロとし、未開示の実販売数量が実際にゼロだったとは主張しない。償還価格2万4,100円は公定価格であり、会社の実現売上とは異なる。実現単価2万円は将来推定用の仮定で、確定実績ではない。
共同開発マイルストン・製品ロイヤリティー
製薬会社との共同開発契約に基づく試験進捗や承認の達成報酬、将来の上市製品からの販売連動収入。
| 数量年間のマイルストン・ロイヤリティー換算収益単位(件・相当) | 価格一収益単位当たり受取額(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 2.0 | 1.70 | 3 | 1 |
| 10 年後 中立 | 3.0 | 2.20 | 7 | 4 |
取り方:2026年6月期には杏林製薬から2.4億円、あすか製薬から1.0億円の達成報酬が発生した。件数は2件で、金額の平均は1.7億円。プロダクト事業の報告売上3.40234億円との差0.00234億円は処方販売とその他の細目が未分離のため、当セグメントに含めた。利益1.03418億円は会社開示のDTxプロダクト事業セグメント利益で、研究開発費や全社費用のすべてを負担した最終利益ではない。将来の収益単位には承認後ロイヤリティーの年間相当額も含め、単純な承認件数とは区別する。
臨床試験・医療データ解析プラットフォーム
SUSMED SourceDataSync、機械学習自動分析システム、治験関連のシステム提供・開発支援。
| 数量契約案件数(件・会社開示の契約案件数を採用) | 価格一契約案件当たり年間平均事業収益(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 15.0 | 0.10 | 2 | 1 |
| 10 年後 中立 | 12.0 | 0.11 | 1 | 1 |
取り方:2026年6月期のDTxプラットフォーム事業売上1.56977億円、セグメント利益0.76958億円を使用。会社の開示する契約案件数15件で売上を割ると一件当たり約0.10465億円となる。ただし15件すべてが均等に年間売上を生むという意味ではなく、異なる期間・料金体系の案件を一つの平均単位にした概算である。席課金と受託支援の内訳が非開示のため、AIエージェント代替に保守的な分類を採用する。
リスクと懸念
Medcleの処方定着が進まない
保険収載は処方の自動的な増加を保証しない。患者は9週間の治療に取り組む必要があり、医師には対象患者の選定や使用指導の負担がある。睡眠薬による治療が既に普及しているため、認知行動療法の医学的な意義だけでは利用が広がらない。採用施設数と実際の処方件数を分けて確認する必要がある。
塩野義製薬との販売提携終了
2026年8月に大手製薬会社との独占販売提携が終了した。既に確定した2億円の報酬は得られるが、以後の販売活動と収益拡大を自社で進める必要がある。販売網を再構築する費用が増え、処方数量が計画に届かなければ、事業収益が増えても全社の損失は縮まらない。他の会社との再提携は可能性にすぎず、確定収益として数えない。
臨床試験の失敗とマイルストンの不連続性
杏林製薬やあすか製薬との契約で受け取る達成報酬は、臨床試験の進行と結果に左右される。最大受取可能額は、すべての試験と承認が成功した場合の条件付き金額である。開発の遅延や追加試験が発生すれば、収益が入る前に研究開発費だけが積み上がる。営業利益率の予測では、一時的な大型報酬を定期契約売上と同じ扱いにしない。
AIエージェント代替
DTxプラットフォーム事業には、操作画面を使う臨床試験ソフト、データ入力・照合、解析と開発支援が含まれる。AIエージェントがこれらの作業を直接実行できるようになると、契約数と単価は圧迫される。SUSMED SourceDataSyncの規制対応実績は評価するが、低解約率、価格改定実績、業界共通基盤としての普及という複数の堀の証拠は確認できない。中立で数量0.8倍、単価1.07倍、長期成長0%程度という前提に反映した。
現金消費と株式の希薄化
純現金約37億円は財務の余裕だが、2026年6月期の営業・投資キャッシュフロー合計は約7億円の流出だった。2027年6月期も純損失約5.41億円が予想されている。処方の立ち上がりが遅れれば、研究開発費と販売費に現金を消費し、資金調達や追加の新株発行が必要になる。新株予約権に加え株式報酬もあるため、会社の将来価値と既存株主に帰属する価値は一致しない。
保険償還制度・医療機器規制の変更
Medcleの収益は公的な保険償還価格と適正使用の条件に依存する。医療費抑制の観点から価格が改定されたり、対象患者や算定条件が見直されたりすれば、処方件数が同じでも売上は減る。医療機器の承認は参入障壁になる反面、製品更新や新しい治療領域への進出に時間と費用を要する。保険適用後も制度との適合を維持し続ける必要がある。
共同開発先・専門人材への依存
治療用アプリは製薬会社、医療機関、大学との協力によって開発が進む。提携先の研究開発方針が変わると、試験計画や上市時期、販売体制が変わる可能性がある。また、医療機器の薬事申請、臨床試験、ソフトウェア開発を担う専門人材の確保は容易ではない。小規模な組織のため、主要人材の離脱や複数案件の同時進行が収益化を遅らせるおそれがある。
今後の分かれ目
- Medcleの実処方が2027年6月期末に月間2,000回へ到達し、その後も増加したら
- 自社販売の立ち上がりが実績で裏付けられるため、中立の処方数量と黒字化時期を上方修正する。ただし医療機関への販売費とメーカー実現単価を同時に確認する。
- 採用医療機関数だけが増え、施設当たりの処方がほとんど伸びなかったら
- 普及の見かけと実需が乖離していると判断し、やや悲観の確率を高める。保険収載済みという理由だけで評価を維持しない。
- 杏林製薬の耳鳴り治療用アプリが検証的試験を成功裏に終え、承認申請へ進んだら
- 開発成功確率を引き上げ、将来のマイルストンと上市後ロイヤリティーを見直す。ただし承認と保険適用を経るまで販売収益は確定させない。
- 営業・投資キャッシュフローの流出が年5億円超で継続し、手元現金が20億円を割ったら
- 増資または研究開発縮小の可能性を強く意識し、悲観の床に残す現金を引き下げる。株式の追加発行が決まれば既存株主の取り分を再計算する。
- SUSMED SourceDataSyncの契約案件数と案件単価がともに増え、低解約率や値上げ実績が開示されたら
- AIエージェント代替に対する抵抗力が実証された範囲で、プラットフォームの数量・価格と長期成長率を上方修正する。規制対応という名称だけではなく、数字の証拠を条件とする。
- 診療報酬改定によってMedcleの償還価格または使用条件が厳しくなったら
- 処方一件当たりの実現単価を下げ、医療機関の採用ペースを点検する。医療制度の変更による減収とAI代替の影響を区別して扱う。
- 国内外の製薬会社による提携、事業取得、TOBが正式に発表されたら
- 条件と少数株主への対価を確認し、独立企業としての10年価値評価を見直す。現時点では正式な買付け条件のない再編期待を価値に加算しない。
見ておくもの
- Medcleの月次処方件数、採用医療機関数、施設当たり処方件数
- Medcleのメーカー実現単価と保険償還価格改定
- 自社販売費用とMedcleの処方一件当たり利益
- 杏林製薬の耳鳴り治療用アプリの検証的試験と承認申請
- あすか製薬との共同開発案件の試験段階とマイルストン受領
- DTxプラットフォームの契約案件数、案件単価、継続率
- AIエージェントによる治験データ入力・照合の代替実績
- 四半期ごとの営業キャッシュフローと現預金残高
- 新株予約権の行使、譲渡制限付株式の発行、株式数の変化
- 新たな販売提携、共同開発契約、正式な資本提携・公開買付けの開示
倍率と資本コストの決め方
数量の起点は会社の2026年6月期実績と契約案件数、医療機器の償還価格、保険適用審議時の販売予測である。会社推計の潜在市場420億円をそのまま売上にせず、Medcleは処方件数とメーカー実現単価から計算した。AIエージェント代替はプラットフォームの中立数量0.8倍、単価約1.07倍、長期成長の低さに反映し、寿命と確率で機械的に重ねていない。
2036年の楽観から中立までの倍率は、資本コスト9.25%と事業ROE、超過収益の残る割合、名目長期成長率1%による正当化PERから求めた。悲観側は現在の自己資本39.8億円と、現金消費後の売却可能資産の床を使った。会社が現在どんなPERやPBRで売買されているかは倍率の根拠にしていない。2027年以後のリース会計の表示変更があっても、賃借料などの事業費用は同じ経済的負担として比較する。
五つのシナリオを既存株主持分95.19%で調整し、時価総額は10年後から、途中の還元は平均5年後から割り引くと、本質価値は約16.0億円となる。現在の時価総額約59.7億円との差は約マイナス73%で、結論は割高である。現在の株価に近づけるために処方数量や倍率を逆算していない。
資本コスト 9.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5% + 上乗せ 1.0%。基本7.5%、事業の質に関する補正プラス0.75%、継続赤字による上乗せ1%の合計で9.25%。βや時価総額の小ささは加算しない。