結論
ベースは金融機関や大手システム会社の開発・保守を担う、高収益の受託ソフトウェア企業だ。筆者の結論は「やや割高」である。仕事を任せられる人材と長年の信頼は確かに強みだが、10年先も顧客が同じ量の人月を買うとは考えにくい。AIエージェントが設計・実装・試験・保守の工数を圧縮するため、名目のIT投資市場が拡大しても、ベースに流れる外注費が同じ速度で増えるとは限らない。
会社は2017年から2025年にかけて売上を約4倍に増やし、営業利益率を26%台にまで高めた。富士通、みずほ証券、野村総合研究所、NTTデータとの取引が長く、プロジェクト品質と動員力が継続受注を生んでいる。2026年には新組織とAI推進室を設け、従来の開発工数から顧客の課題解決への転換を急いでいる。ただし上期には組織移行による受注停滞が現れ、利益を守りながら事業の形を変える難しさも示した。
財務面の下支えは厚い。2025年末の純現金は約129億円で、継続的な増配と自社株買いの実績がある。これは10年間に受け取る還元の価値を高めるが、事業自体の値決め力やAIへの耐性を保証しない。中立では人月数量が縮むことで10年後の純利益は約29億円となる。五つの筋書きと還元を資本コストで割り引いた価値は約437億円で、基準時価総額約584億円を約25%下回る。強い製品の独占ではなく、実行力で稼ぐ良い会社として慎重に評価したい。
バリュー投資の観点から
長期保有で最も魅力的なのは、顧客が安心して重要システムを任せられる会社に少ない資本で育ったことだ。高い利益率を上げながら借金を増やさず、稼ぎの多くを株主に返している。新しい工場や大規模な設備を常に建てる必要がないため、かつては追加の技術者と顧客関係への投資が高い収益を生んだ。増分の投下資本利益率も過去の業績だけを見れば資本コストを大きく上回ってきた。
それでも、将来のオーナー利益は過去の純利益をそのまま延長しては測れない。AIエージェントが同じシステムを少ない工数で作るなら、顧客が支払う総額は小さくなり、技術者の数を増やす従来の再投資は以前ほど稼がない。高ROEは将来の売上成長の原因ではなく、これまでの事業の結果である。長く続く利益を守るには、作業時間ではなく顧客が達成した結果に料金を結び付ける必要がある。
同社が計画する「ラストワンマイル」、つまり顧客の業務を理解して最後まで実装を担う役割には価値がある。金融・SAP領域では特に経験者の知識と責任が残るはずだ。しかし、独自データや共同利用プラットフォームを所有する事業とは違い、ベースの顧客は同じAIを別の開発会社や自社内でも利用できる。移行できたかを受注の絶対額と利益率で確認するまでは、永続的な成長に高い値段を払えない。
現金と還元を厳密に数えることも大切だ。純現金のうち約90億円は運転資金を超える余力とみなし、事業利益とは別に価値を与える。一方、将来の利益から還元した金額は10年後の自己資本に再度足さない。現状では事業の質は良くても、支払う価格と慎重な10年価値の間に十分な安全域はない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、技術者と開発チームを顧客の業務に組み込み、システムを作り、稼働後も維持することにある。法定の報告セグメントは「ソフトウェア受託開発」の一つだが、会社が示す事業ラインはシステム開発が約65%、ソリューションが約35%である。前者は証券・銀行・カード・流通などの新規開発、改修、運用保守、顧客先での社員支援を含む。要件を理解して開発者を動員できることが受注の条件となり、一定の業務は繰り返し発生する。
ソリューションはSAPの導入・移行・保守、ERPやCRMの周辺開発、BPOなどが中心だ。SAPの会計データ自体を所有する会社ではなく、SAP製品を使う顧客のために導入と変更を実行する立場にある。自社サイトにはe-KYCのサービスも載るが、独自の記録基盤としての売上、解約率、値上げ実績は示されていない。そのためソリューションも全体としては工数で対価を得る事業として扱う。中国子会社のBCHは売上の約3%であり、独立した市場で大きな地位を持つとの証拠はない。
2025年実績の売上約218億円を会社の開示比率に沿って三つの事業ラインへ推計配分した。社員約1,200人と稼働する協力会社約670人という2025年上期の動員規模を照らし、国内開発は請求人月1万2,000、ソリューションは6,000、中国は720と推定する。平均請求単価は国内で月当たりおよそ115万〜123万円となり、実際の単価開示ではない。技術者の人数と売る工数を混同しないよう、間接部門や非稼働を差し引いた請求可能な人月である。
取引先では富士通グループ、みずほ証券、野村総合研究所グループ、NTTデータグループの四つが売上の約6割を占める。最大顧客は3割前後であり、品質事故や発注方針の変更が業績に直結する。他方、この集中が現場密着と継続受注を可能にし、顧客側の業務に詳しい人材を育ててきた。
優良さと弱いところ
強みは派手な自社製品ではなく、大手顧客の現場に根を張る実行力である。富士通との取引は創業期に始まり、みずほ証券や野村総合研究所などとの仕事も長い。金融システムでは障害を避けることが優先され、業務を理解した担当者や開発チームを交代させる手間は小さくない。NECや日立システムズなどによるパートナー認定も、実務上の信頼の傍証となる。
ただし、その強みを独占的な堀と呼ぶには慎重でありたい。開発されたプログラムや顧客の業務データの正本は原則として顧客側にあり、ベースが他社を排除できる知的財産ではない。四大顧客だけで売上の約6割に達することは、切り替えにくさと同時に相手方の交渉力の強さも示す。人月単価を毎年物価以上に上げ続けた客観的な開示は見つからず、過去の利益率の高さをそのまま値決め力と取り違えるべきではない。
資本効率は際立つ。2025年のROEは約30%、自己資本比率は約75%で、純現金の厚さもある。会社が部門長に損益責任を持たせ、現場の採算を把握してきたことは低い販管費率につながった。だが、AI導入で必要工数そのものが減ると、同じ人数を維持しながら同じ利益率を得ることは難しくなる。新しいAI人材の育成や成果課金への移行は始まっているが、工数から独立した収益がすでに利益の柱になったという証拠はない。
堀は通常水準と判断する。顧客との関係が利益を守る力は認めるものの、値上げが自動で通る仕組み、移行が年単位で必要な共同利用基盤、解約率の数値、独自データの継続蓄積という複数の強い証拠はそろわない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内ITサービスの需要そのものは強い。添付の業種前提では2025年の市場規模は約7.5兆円、2030年まで名目年6%前後の拡大が見込まれる。レガシーシステムの刷新、金融取引の高度化、SAP移行、人材不足への対応が発注を支える。ベースの2025年売上はその約0.29%に相当するが、これは市場の定義が広いため厳密なシェアではなく規模の目安である。
競争相手はTIS、野村総合研究所、BIPROGY、DTS、NSDなどの国内SI企業だけではない。顧客でもある富士通やNTTデータは元請けであり、外注比率を引き下げればベースの仕事は減る。参考として国内市場7.5兆円と各社の連結売上を機械的に比べると、野村総合研究所は約11%、TISは約8%、BIPROGYは約6%の売上規模に相当する。海外売上、機器販売、共同利用型サービスを含むため、これらは正式な国内受託開発シェアではない。ベースの規模はその一段下にある。
各事業ラインの市場を厳密に分けた統計は見つからない。市場全体の約6割を開発・保守系、約2割をERPなどのソリューション系とする暫定的な物差しなら、ベースの該当売上比はそれぞれ約0.31%、約0.49%となる。中国子会社の比較可能な市場シェアは算定できない。10年後も市場総額が成長していても、人間の工数が売買される部分ではAIエージェントが仕事を奪い、ベースの数量シェアは低下しうる。
最大の構造変化は、開発者の供給制約が価値の源泉ではなくなる可能性だ。AIが仕様書作成、コード生成、試験、既存システムの移行を加速すれば、同じ案件に必要な人月は減る。反対に、システム障害の責任、金融規制への対応、顧客業務の調整は完全な自動化が難しい。そこで残る仕事を高単価の成果提供に変えられるかが、10年後の競争を分ける。
資本政策と M&A
資本配分には評価できる実績がある。会社は営業利益100億円の達成を当面の目標とし、それまでは連結配当性向50%を目安とする。2024年には約10億円、2025年には約12億円の自社株買いも行い、総還元性向はそれぞれ約77%、79%だった。2026年は創立記念配当が加わる一方、同年上期時点で新しい自社株買いは公表されていない。記念配当を通常年に恒久化せず、平時の配当と買い戻しを合わせた総還元率を概ね75%と考える。
「BASE2030」は人月中心の開発から、AIを用いた知識集約型サービスへの転換を掲げる。2026年には四本部から六統括部へ組織を改め、AI推進室と豊洲開発センターを動かし始めた。ただし経営者自身が中期計画の詳細を公表していないと説明しており、2030年の売上高、営業利益、ROEに期限つきの数値約束はない。営業利益100億円は期限を定めない当面の目標であり、配当性向50%は具体的な還元方針である。
大きな買収で利益を押し上げた履歴は見当たらず、成長の中心は人材育成と顧客の深掘りだった。政策保有株式は原則持たない方針で、資本の滞留を相対的に抑えている。安定株主の存在には注意するが、連続増配と自社株買いの実績から、現金が少数株主に戻らない会社だとは評価しない。10年の還元は中立で約267億円を見込み、事業の失速時には買い戻しを減らす。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
金融システムはAIが進んでも止められない。証券決済や顧客資産の記録には責任と監査が伴い、富士通やみずほ証券が長年使ってきた信頼できる開発会社を一斉に入れ替える理由は薄い。ベースは現場に責任者を置き、開発から運用まで同じチームで支援する。そのため開発の自動化で時間が浮いた分を、より多くの案件と高単価の設計・品質保証へ振り向ける余地がある。既存顧客だけでなくNECや日立系からもパートナーとして認められ、発注先の分散は進みつつある。
2026年のAI推進室設置は単なる宣伝ではない。会社はAIの商談件数が前下期比で約7倍となり、受注金額も2倍になったと説明している。金融の会計基幹システムやCOBOLからJavaへの移行で具体的な受注があり、AIを使う側に回る準備は進む。知識集約型の運用サービスへ転換できれば、開発人月の減少を高付加価値の仕事で埋められる。利益率も過去の最高水準を超える可能性がある。
さらに財務には純現金があり、2024〜2025年の自社株買いと継続増配が実行された。新規の大型設備を必要としない会社が配当と買い戻しを続けるなら、10年後の企業価値に加えて保有期間中の受取額も大きい。楽観の道筋でも独立したAI製品の金額がまだ開示されないため、人月数量を現在より増やすことまでは見込まない。それでも顧客関係を保ち、物価並みの価格転嫁と高稼働を維持できれば、事業は十分な株主価値を生み続ける。
慎重な見方
受託開発の「顧客のシステムを熟知した人」を価値の中心に据えること自体が危うくなる。AIエージェントは最初、開発者の補助として使われても、10年後には仕様調査、コード変換、テスト、障害一次対応を横断して進めうる。金融向けに品質確認の人は残るが、人月として請求できる作業ははるかに少なくなる。運用保守も反復作業が多く、長期契約というだけで利益が守られるわけではない。
ベースには自社の会計データや決済網を支配する強みがない。SAPで仕事をしていても、その顧客が使うSAP製品やデータを持っているわけではない。大手顧客はAIによる効率化を導入する主体であり、ベースが減らした工数を従来どおり請求することを認めるとは限らない。最大顧客への売上比率が約3割という集中は、交渉力が顧客に偏る弱点にもなる。
2026年上期の営業減益は、組織再編があれば発注活動が一時的に詰まることを示した。新しい開発部門を作り、AI人材を教育しながら既存の常駐要員を維持すれば、工数の減少が売上より先に利益を削る局面が来る。過去に26%まで高まった営業利益率も、固定人件費の下で一桁に落ち込む可能性がある。現金が厚いことは倒産の不安を和らげるが、事業が稼がなくなった時に株主がその全額を自由に回収できる保証にはならない。
どちらに重みを置いたか
大手顧客との関係と還元実績は確かな強みだが、どちらも人月の数量を保証しない。AI案件の受注増という反証はあるものの、独立したサービス収益の金額はまだ確認できない。中立を工数縮小の道筋とし、やや悲観と悲観に合計36%を配した。強気二つの31%よりわずかに重いのは、顧客上位四グループへの依存と2026年の受注停滞を踏まえたためである。ただしAIの影響はすでに各筋書きの数量と長期成長率に含めており、資本コストや確率で同じ理由を重ねて罰していない。本質価値は現在の時価総額を約25%下回る。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 2,853 円518 億円(+ 還元の換算額還元の合計 1,406 円255 億円)。 今の値に割り戻すと 2,408 円437 億円、今との差 −21.7%、 期待の年率 +4.0%(資本コスト 7.2%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 11% | 5,443 円988 億円 | 2,122 円385 億円 | +146.0% | +11.5% | 832 円151 億円 |
| やや楽観 | 20% | 4,257 円773 億円 | 1,824 円331 億円 | +97.7% | +8.6% | 1,216 円221 億円 |
| 中立 | 33% | 2,888 円524 億円 | 1,469 円267 億円 | +41.7% | +4.3% | 1,438 円261 億円 |
| やや悲観 | 24% | 1,574 円286 億円 | 949 円172 億円 | −18.0% | −2.4% | 606 円110 億円 |
| 悲観 | 12% | 606 円110 億円 | 795 円144 億円 | −54.5% | −10.0% | 168 円31 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,853 円518 億円 | 1,406 円255 億円 | +38.5% | +4.0% | 4,260 円773 億円 |
今の株価時価総額 3,075 円558 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 11% 顧客との関係を保ちAI案件に移る 利益 61 億円 · PER 13.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 5,443 円988 億円
金融機関では監査や障害対応の責任が残り、富士通、野村総合研究所、みずほ証券などの重要案件でベースの技術者が引き続き選ばれる。AIは設計と実装の工数を削るが、浮いた能力を高度な品質管理やシステム統合へ振り向けることで請求人月をほぼ維持する。SAP移行やレガシー刷新は継続し、顧客業務を深く理解したチームの単価は物価並みに上昇する。
六統括部制とAI推進室が機能し、富士通・NTTデータだけでなくNECや日立系の大型案件も増える。30年の業務ノウハウを使った案件管理で非稼働を減らし、営業利益率は足元を少し超える。ただしAIプロダクト単体の実売上が示されていないため、非線形成長を既成事実にはしない。高収益と株主還元が並走し、10年後の自己資本は厚いままでも、利益を生む仕事の量を守れている筋書きである。
- 国内システム開発・運用保守・社員支援:数量 11,880(年間の有償請求人月(人月・実質、社員と協力会社の稼働を含む))× 価格 0.02(平均請求人月単価(億円/人月・名目))→ 売上 182 億円・営業利益 52 億円。請求人月は現在比0.99倍、名目単価は現在比1.34倍。営業利益率28.5%。
- 国内SAP・ERP・その他ソリューション:数量 5,880(年間の有償請求人月(人月・実質、SAP/BPO等を含む))× 価格 0.02(平均請求人月単価(億円/人月・名目))→ 売上 97 億円・営業利益 29 億円。請求人月は現在比0.98倍、名目単価は現在比1.34倍。営業利益率30.0%。
- 中国子会社BCHの受託開発:数量 680(年間の有償請求人月(人月・実質))× 価格 0.01(平均請求人月単価(億円/人月・名目換算))→ 売上 8 億円・営業利益 0 億円。請求人月は現在比0.94倍、名目単価は現在比1.34倍。営業利益率3.0%。
倍率:k=7.25%、AIエージェント代替後のg_long=0%、堀は通常で超過ROEの残存比率は1/2。2035年の事業純利益は全社純利益60.51億円から余剰現金190億円の税後利息1.4%を除いた57.85億円。RONIC=k+0.5×(事業ROE−k)としても、gが0%なので正当化PER=(1−g/RONIC)/(k−g)=1/k=13.79倍。上限をそのまま使い、現金は別に戻り方1.0で足す。営業利益率の改善はAIによる内部生産性と稼働率向上を前提にするが、実証された恒久的な独占ではない。
確率:金融システムの複雑性と責任の重さが、人による業務理解と最終検証を残す可能性を評価する。ただし独立AI製品の売上金額は開示されていないため、楽観でも従来の有償人月を現在以上には増やさない。
やや楽観 20% 高付加価値業務で工数減を吸収 利益 46 億円 · PER 13.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 4,257 円773 億円
金融と基幹系のモダナイゼーション需要が続き、ベースは従来の大口顧客の維持に成功する。AIが標準工程の工数を減らしても、顧客の業務への適合、決済障害を避ける検証、SAPの移行後運用を担当する専門人材には引き続き発注がある。ソリューションの数量減は開発より浅く、顧客単価は人材不足と物価を背景に上がる。
顧客の柱は四社から増え、最大顧客への依存も少し和らぐ。AI人材育成と品質管理が採算を支えるものの、同じ設計・実装を少人数でこなせるため請求人月は開発で約1割、SAP等でも約1割強減少する。利益率は最高期よりやや低くなるが、投資負担を抑えたまま還元は続く。自社データの独占ではなく、関係の強さで競争に残る10年である。
- 国内システム開発・運用保守・社員支援:数量 10,800(年間の有償請求人月(人月・実質、社員と協力会社の稼働を含む))× 価格 0.01(平均請求人月単価(億円/人月・名目))→ 売上 158 億円・営業利益 40 億円。請求人月は現在比0.90倍、名目単価は現在比1.28倍。営業利益率25.0%。
- 国内SAP・ERP・その他ソリューション:数量 5,160(年間の有償請求人月(人月・実質、SAP/BPO等を含む))× 価格 0.02(平均請求人月単価(億円/人月・名目))→ 売上 83 億円・営業利益 22 億円。請求人月は現在比0.86倍、名目単価は現在比1.30倍。営業利益率26.5%。
- 中国子会社BCHの受託開発:数量 620(年間の有償請求人月(人月・実質))× 価格 0.01(平均請求人月単価(億円/人月・名目換算))→ 売上 7 億円・営業利益 0 億円。請求人月は現在比0.86倍、名目単価は現在比1.29倍。営業利益率-1.0%。
倍率:k=7.25%、AIエージェント代替後のg_long=0%、堀は通常で超過ROEの残存比率は1/2。2035年の事業純利益は全社純利益46.07億円から余剰現金170億円の税後利息1.4%を除いた43.69億円。RONIC=k+0.5×(事業ROE−k)としても、gが0%なので正当化PER=(1−g/RONIC)/(k−g)=1/k=13.79倍。上限をそのまま使い、現金は別に戻り方1.0で足す。薄い堀でも開発チームの品質で受注維持が進む場合の上振れである。
確率:AI案件の受注増、SAPに関する専門知識、元請けSIerからの高い評価から、一定の仕事の置換に耐えられる可能性は高い。一方、人月から成果報酬への転換の定量実績はまだ限られる。
中立 33% 人月の縮小を高単価業務と還元で補う 利益 29 億円 · PER 13.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 2,888 円524 億円
顧客の金融システムは残るが、同じ仕事に要る技術者の時間は減る。AIによるコード生成、試験、SAP移行の自動化が進み、システム開発の有償工数は現状の約3分の2となる。ソリューションは業務知識が必要なためやや粘るが、人月収入である限り約3割減る。国内ITサービス市場の名目支出は拡大しても、その増分はAI基盤や独自サービスの売上へ移り、ベースの現在の事業ラインの取り分は細る。
富士通、みずほ証券、野村総合研究所、NTTデータとの取引は大部分を維持する。会社は新しい統括部体制とAI人材の育成で重要案件を守るが、価格は上げても物価上昇を十分には取り切れない。営業利益率は採用と品質管理の固定費に押されて20%前後に低下する。中国子会社は採算が悪い状態で小規模に残り、大型買収による成長はない。利益は縮むが、現金と配当・自社株買いが10年の株主価値を下支えする。
- 国内システム開発・運用保守・社員支援:数量 7,800(年間の有償請求人月(人月・実質、社員と協力会社の稼働を含む))× 価格 0.01(平均請求人月単価(億円/人月・名目))→ 売上 114 億円・営業利益 22 億円。請求人月は現在比0.65倍、名目単価は現在比1.28倍。営業利益率19.0%。
- 国内SAP・ERP・その他ソリューション:数量 4,200(年間の有償請求人月(人月・実質、SAP/BPO等を含む))× 価格 0.02(平均請求人月単価(億円/人月・名目))→ 売上 68 億円・営業利益 16 億円。請求人月は現在比0.70倍、名目単価は現在比1.32倍。営業利益率23.5%。
- 中国子会社BCHの受託開発:数量 430(年間の有償請求人月(人月・実質))× 価格 0.01(平均請求人月単価(億円/人月・名目換算))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。請求人月は現在比0.60倍、名目単価は現在比1.25倍。営業利益率-5.0%。
倍率:k=7.25%、AIエージェント代替後のg_long=0%、堀は通常で超過ROEの残存比率は1/2。2035年の事業純利益は全社純利益28.93億円から余剰現金155億円の税後利息1.4%を除いた26.76億円。RONIC=k+0.5×(事業ROE−k)としても、gが0%なので正当化PER=(1−g/RONIC)/(k−g)=1/k=13.79倍。上限をそのまま使い、現金は別に戻り方1.0で足す。2025年の営業利益率26.4%から下がる。過去に未達が少なかったとしても、コスト固定と工数減少が同時に進む10年は違う。
確率:会社固有の高い採算力と顧客との長期関係を評価しつつ、AIエージェントによる工数圧縮を中心的な現象とする。市場自体の名目成長率をベースの人月売上成長率に直結させない。
やや悲観 24% 外注工数の縮小で利益率が崩れる 利益 15 億円 · PER 9.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,574 円286 億円
富士通やNTTデータなどの元請けはAI開発標準を内製し、パートナー会社への発注を作業量ではなく完成物で比較する。ベースが担当する品質確認や顧客との調整は残っても、従来の開発者が請求できる時間は半減する。SAPの案件も一部は標準ツールや顧客自身の移行作業に移り、国内ソリューションの数量が大きく減る。大手顧客の一社で外注比率が下がり、会社の新規開拓はその穴を埋めきれない。
社員と協力会社の稼働率を高めようとしても、固定人件費と訓練費が先に残る。技術者の減員、部署の統廃合、開発拠点の縮小が必要になり、営業利益率は低い二桁にとどまる。配当性向50%は守るが自社株買いは小さくなり、総還元率も平時を下回る。会社は存続するものの、優良な人月受託会社という評価を失う筋書きである。
- 国内システム開発・運用保守・社員支援:数量 6,000(年間の有償請求人月(人月・実質、社員と協力会社の稼働を含む))× 価格 0.01(平均請求人月単価(億円/人月・名目))→ 売上 81 億円・営業利益 11 億円。請求人月は現在比0.50倍、名目単価は現在比1.18倍。営業利益率13.0%。
- 国内SAP・ERP・その他ソリューション:数量 3,300(年間の有償請求人月(人月・実質、SAP/BPO等を含む))× 価格 0.01(平均請求人月単価(億円/人月・名目))→ 売上 48 億円・営業利益 8 億円。請求人月は現在比0.55倍、名目単価は現在比1.17倍。営業利益率16.0%。
- 中国子会社BCHの受託開発:数量 302(年間の有償請求人月(人月・実質))× 価格 0.01(平均請求人月単価(億円/人月・名目換算))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。請求人月は現在比0.42倍、名目単価は現在比1.15倍。営業利益率-6.0%。
倍率:k=7.25%、AIエージェント代替後のg_long=0%、堀は通常で超過ROEの残存比率は1/2。2035年の事業純利益は全社純利益15.23億円から余剰現金170億円の税後利息1.4%を除いた12.85億円。構造的な失注で優良さが傷むため、事業継続の稼ぐ力を上限の13.79倍から9倍へ低く評価する。
確率:元請け側のAI導入が速く、既存顧客が内製する範囲が広がる場合を考える。2026年の組織変更で受注が停滞した実績も、同社が人材と発注調整に依存していることを示す。
悲観 12% 人月商売の優位を失い資産価値が中心に 利益 6 億円 · PBR 0.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 606 円110 億円
設計からテスト、既存システム移行までをAIエージェントが大きく自動化し、顧客は必要な専門家だけを少数残して作業の大半を内製する。長い取引歴があっても請求できる人月は守れず、国内の開発数量は現在の半分以下になる。SAPも汎用的な移行部分が置き換わり、顧客先常駐という従来の組織形態が収益上の重荷となる。中国子会社の仕事も縮む。
会社は固定費を削る一方、事業を保つための人材育成とシステム更新費用を払う。開発分野の利益率は一桁となり、ソリューションも高収益を維持できない。顧客関係の多くは残っても、かつての高ROE企業ではない。配当は業績に応じて減額され、過去の利益で積み上がった帳簿資本の全額が少数株主の価値になるわけではない。10年後の評価では稼ぐ力に高い倍率を掛けず、非拘束の現金と回収できる資産を優先する。
- 国内システム開発・運用保守・社員支援:数量 5,400(年間の有償請求人月(人月・実質、社員と協力会社の稼働を含む))× 価格 0.01(平均請求人月単価(億円/人月・名目))→ 売上 69 億円・営業利益 3 億円。請求人月は現在比0.45倍、名目単価は現在比1.12倍。営業利益率5.0%。
- 国内SAP・ERP・その他ソリューション:数量 2,520(年間の有償請求人月(人月・実質、SAP/BPO等を含む))× 価格 0.01(平均請求人月単価(億円/人月・名目))→ 売上 34 億円・営業利益 3 億円。請求人月は現在比0.42倍、名目単価は現在比1.10倍。営業利益率10.0%。
- 中国子会社BCHの受託開発:数量 252(年間の有償請求人月(人月・実質))× 価格 0.01(平均請求人月単価(億円/人月・名目換算))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。請求人月は現在比0.35倍、名目単価は現在比1.05倍。営業利益率-15.0%。
倍率:2035年末時点で事業に拘束されない現金約80億円と回収可能な売掛・短期資産の税後約30億円を床とし、今の自己資本約142.5億円に約0.772倍を掛けた110億円で評価。将来の帳簿資本238.6億円に倍率を掛けていない。清算が速やかに実施されるとは限らないため、これ以上の帳簿価値を保証しない。
確率:主要顧客によるAI内製化と外注契約の再編が重なる尾部の事象である。受託市場が消えるわけではないが、従来の会社の強みが高収益に結び付かなくなる事態を明確に残す。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
国内システム開発・運用保守・社員支援
証券・銀行・カード・流通などの受託開発と運用保守。顧客現場への技術者支援を含むため、AIエージェント代替では「人月・工数」の型。
| 数量年間の有償請求人月(人月・実質、社員と協力会社の稼働を含む) | 価格平均請求人月単価(億円/人月・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 12,000 | 0.01 | 137 | 37 |
| 10 年後 中立 | 7,800 | 0.01 | 114 | 22 |
取り方:2025年連結売上217.9億円のうち、中国子会社が約3%とする2026年上期の説明を当てはめ、国内分97%に単体の開発65%を参考にして約137.4億円へ割り当てた推定である。2025年上期の社員約1200人とBP月平均約670人、2026年上期の単体社員1356人という開示から、間接要員・非稼働とソリューションの配員を除いた開発1000人相当×12か月=12000請求人月を仮定し、平均人月単価を114.5万円と逆算。人数・単価とも会社の直接開示ではない。国内ITサービス市場7.5兆円の6割を開発保守市場とする暫定配分では同社の当該売上相当のシェアは約0.31%。2025年営業利益57.5億円の事業別利益は非開示のため、人件費と外注費の比率を参照し事業別に推計配分。AIエージェント代替の人月型につき中立数量は0.65倍、価格は1.28倍とし、物価分は数量に含めない。
国内SAP・ERP・その他ソリューション
SAP導入・移行・改修、ERP・CRM・BPOなど。独自の記録基盤や席課金製品の大きな比率は示されず、導入・運用の工数が収益の主体とみる。
| 数量年間の有償請求人月(人月・実質、SAP/BPO等を含む) | 価格平均請求人月単価(億円/人月・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 6,000 | 0.01 | 74 | 20 |
| 10 年後 中立 | 4,200 | 0.02 | 68 | 16 |
取り方:2026年上期の会社説明による単体ソリューション約35%を、2025年連結売上の国内分約97%に当てはめ74.0億円と概算。会社は2025年上期には28%と説明しており、通期2025年の正式な事業別売上ではない。導入・運用を担当する人材約500人相当×12か月=6000人月を推定し平均単価を約123.3万円と逆算。市場は国内ITサービス7.5兆円の2割をERP・業務ソリューション等の暫定母集団と置くとシェア約0.49%。独自DBの蓄積・解約率・法改正時の値上げのうち二つ以上の裏付けがなく、記録の正本型にはしない。AIエージェント代替の人月型で中立数量0.70倍、価格1.32倍。
中国子会社BCHの受託開発
中国市場の顧客向けソフトウェア開発・保守。2026年上期に人員調整が続き、収益規模は連結全体の約3%と小さい。AI代替では人月型。
| 数量年間の有償請求人月(人月・実質) | 価格平均請求人月単価(億円/人月・名目換算) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 720 | 0.01 | 7 | 0 |
| 10 年後 中立 | 430 | 0.01 | 5 | 0 |
取り方:2026年上期の経営者説明にある中国子会社売上約3%と社員約76〜80人を、2025年の連結売上に仮に適用した6.5億円の推定。年間60人分の有償稼働720人月を仮定し、月当たり約90万円の売上を逆算した。実績人月も市場シェアも公表されておらず、中国の統計から比較可能な金融IT受託市場の分母を作れないためシェアは不明。AIエージェント代替の人月型に加え現地の受注縮小をみて中立数量約0.60倍、価格約1.25倍。為替は共通前提の150円で動かさない。
リスクと懸念
AIエージェント代替
設計、コード生成、テスト、SAP移行、保守の反復業務が自動化されると、顧客は同じ成果のために少ない人月しか購入しなくなる。ベースは導入支援を売る立場であり、データの正本や業界共通基盤を握っていない。AI商談と受注の増加が独立した売上と利益になるまで、数量減を中心に評価する。
主要顧客への高い依存
富士通、みずほ証券、野村総合研究所、NTTデータの四グループで売上の約6割、最大一社で3割前後を占める。長い取引歴は信用の証拠だが、元請けの内製化や外注方針の変更、案件の統廃合が一度起これば営業力だけで補うのは難しい。顧客ポートフォリオの分散が実収益に現れるかを追う。
利益率の巻き戻り
2025年の営業利益率は約26%と高いが、開発要員を十分に稼働させることが前提である。AI効率化が単価転嫁より先に起き、社員給与や外注単価の物価上昇が続けば利益率は下がる。2026年上期の組織変更による減益は、受注稼働が少し乱れるだけでも利益が削られることを示した。
SAP移行需要の一巡と顧客内製化
SAP S/4HANAへの移行や旧システムの更新は当面の追い風だが、切り替えが完了すれば同じ大規模導入案件が毎年繰り返されるわけではない。AIが仕様変換を容易にし、SAPやクラウド事業者と顧客自身が開発工程を内製化すると、技術者を投入する収入に下押しが生じる。
資本配分と支配株主
安定株主の存在は長期投資を進めやすくするが、少数株主が余剰現金の処分を決められるわけではない。2024〜2025年の自己株買いは評価できる一方、AI事業への不採算投資や高値買収が起きれば現金が利益を生まない資産に変わる。年ごとの総還元性向と大型投資の回収を確認したい。
中国事業と固定費・リース
BCHはグループ売上の約3%と小さいが、2026年上期には中国での受注低迷と人員調整費用が生じた。日本の開発拠点も拡張しており、賃料や常勤社員の給与は受注が細っても残る。2028年12月期からの新リース会計で負債の表示が増えても、賃料を二重に費用にしないよう見る必要がある。
今後の分かれ目
- AI関連の売上・営業利益が金額で開示され、従来の人月縮小を上回る受注と継続課金が確認できたら
- 独立した成果型収益の数量と単価を切り出し、楽観側の確率を増やす。単なる商談件数や受注額の伸び率だけでは数量上振れを認めない。
- 富士通など従来の四大顧客の売上比率が合計50%未満へ低下しつつ総売上と利益が伸びたら
- 集中リスクの改善を確認し、中立の顧客維持率と利益率の見込みを上げる。新規顧客が既存の利益率を維持できるかも併せて見る。
- 国内の有償人月が前年同期比で継続的に減り、単価上昇でも売上の減少を止められなくなったら
- 中立の数量を0.55倍側へ下げ、やや悲観・悲観の蓋然性を再評価する。採用人数ではなく請求可能工数を確認する。
- システム開発とソリューションで定常的な成果報酬・保守契約の独立売上比率が開示されたら
- 事業を新たなセグメントに分け、価格の交渉力と解約率を測り直す。継続的で乗り換えにくい売上には人月型とは別の長期成長率を検討する。
- 配当性向50%と総還元性向75%前後の実行が途切れ、余剰現金が不採算投資に使われたら
- 現金の株主への戻り方を引き下げ、事業の成長がなくても高くなるはずの株主還元価値を再計算する。
- 2026年の六統括部体制への移行後も新規受注の停滞と利益率の低下が複数期続いたら
- 一時的な組織移行ではなく採算構造の変化と判断し、中立・やや悲観の営業利益率を下方修正する。
見ておくもの
- 四大顧客の売上比率と最大顧客比率、既存三大SIer以外の売上割合
- 単体のシステム開発65%・ソリューション35%の比率と両事業の売上金額
- 請求可能な稼働人月・単価・社員とBPの人員比率・離職率
- AI商談ではなくAI案件の受注金額、売上と営業利益、成果課金・継続サービスの比率
- 営業利益率の推移、総還元性向、自社株買いと現預金の残高
- BCHの縮小・撤退・黒字化、国内拠点の稼働率と賃料負担
倍率と資本コストの決め方
株価から事業の売上やPERを逆算していない。数量は会社の開示する人員とBPの規模を基にした請求人月、価格は逆算した人月単価で、物価上昇を価格のみに入れた。会社は法定上は単一セグメントなので事業ライン別の売上と利益は推定だと明示した。AIエージェント代替は中立の数量縮小と10年より先の名目成長率0%に反映し、資本コストの寿命には重ねていない。
kは7.25%、高収益でも独占的な堀は認めず、10年より先のgが0%なので、楽観から中立の正当化PERは1÷kの約13.79倍となる。純利益から余剰現金の税後利息1.4%を引いた事業利益に掛け、各筋書きで積み上がる余剰現金を別に足した。やや悲観は9倍、悲観は稼ぐ力ではなく売れる資産の床で測った。新リース会計による表示の変化は収益価値と混ぜず、賃料は営業費用に含めたまま見た。基準時価総額との比較は計算の最後だけに行った。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。国債3%と株式リスクプレミアム4.5%による基礎7.5%から、過去の財務が示す純現金の強さ0.25ポイントのみを引いた7.25%。顧客集中やAI代替を上乗せせず、数量・利益率・長期成長に織り込む。