結論
Faber Companyは、SEO支援ツール「ミエルカ」を中心に、企業のデジタルマーケティングを支える会社である。筆者の結論は「やや割高」だ。豊富な現金と黒字の既存事業には価値があるが、AIエージェントの普及で従来の仕事の一部が不要になるリスクを考えると、長期株主が払える値段には限界がある。
同社の魅力は、20年以上にわたって築いた検索マーケティングの専門性と顧客接点にある。2026年6月時点で約1,600社との取引があり、高単価顧客への複数商材の販売も進んでいる。AI検索対策の新製品「ミエルカGEO」は50社超の受注を獲得した。検索の仕組みが変わっても、企業が自社の商品を見つけてもらいたいという需要は残る。
ただし、需要が残ることと、今の収益構造が残ることは別だ。AIが検索分析、記事制作、サイト改善、広告運用まで実行する時代には、顧客が人手や従来型の分析画面に払う金額は減りやすい。独自データと運用ノウハウは強みだが、解約率や継続的な値上げ実績など、長期の価格決定力を裏付ける数字は十分に開示されていない。
もう一つの分かれ目は、バックオフィス向けソフトを販売するディストリビューション事業だ。2026年9月期第3四半期累計では、売上が約0.16億円に対して営業損失は約1.19億円だった。将来の収益源となる可能性はあるものの、2030年の大きな目標を現時点の企業価値にそのまま織り込めない。
5つの筋書きから求める現在の本質価値は約19.8億円で、基準時価総額25.3億円を約22%下回る。純現金が株価の下支えになるため極端な割高とは見ないが、現金の使い方とAIへの適応が確認できるまでは十分な安全域がない。
バリュー投資の観点から
長期株主の立場では、Faber Companyを単なる小型SaaS企業として評価しない。独自ソフトに加え、専門家の知識と顧客との関係が利益を生む会社である。その価値は、顧客が毎年使い続ける理由を持ち、他社への乗り換えをためらうほど成果を出せるかで決まる。
現在のミエルカには一定の強みがある。専門家とソフトを組み合わせる体制は、広告代理店や単機能ソフトとの差別化につながる。既存顧客への追加販売も実際に成果を出している。しかし、これはまだ強い独占力を意味しない。値上げしても契約が続く実績や低い解約率が十分に示されていないため、高い永続成長率を認める根拠にはならない。
オーナー利益を考えると、会計上の純利益だけでは不十分だ。人件費や製品開発費は事業を維持するために欠かせず、AIの進歩に追随するための開発も続く。買収によって見かけの売上が増えても、買収費用とのれん、追加の運転資金を差し引いた後にどれだけ現金が残るかを見なければならない。
最大の資産は厚い現金であり、これは株主にとって重要な安全装置である。ただし、現金を持っている会社の株主が、いつでもその現金を自分のものにできるわけではない。収益率の低い買収や新規事業への投資が続けば、現金の帳簿価値と株主に帰属する価値は離れていく。
この会社を10年保有する判断は、ミエルカがAI検索時代にも顧客の成果を生み続けることと、経営陣が余剰資本を高い利回りで使えることの二つに依存する。現在の株価にはその成功を一部織り込んだ評価が残り、十分な安全域があるとは判断しない。
何で稼ぐ会社か
同社の主力であるミエルカ事業は、企業が検索やWebサイトを通じて顧客を獲得し、購買につなげる仕事を支援する。ミエルカSEOは検索順位や競合を分析し、ミエルカヒートマップはサイト内の利用者行動を可視化する。ローカルミエルカは店舗集客を支え、ミエルカコネクトは専門人材の不足を補う。2026年には、AI検索での自社ブランドの言及や引用を測定するミエルカGEOも加わった。
顧客の小さな困りごとを入口にして取引を始め、別の製品や専門家による支援を追加する仕組みが特徴である。2026年9月期第3四半期には、月売上40万円以上の顧客が111社、4万〜40万円の顧客が883社、4万円未満の顧客が613社だった。高単価層の四半期売上は3.12億円に達し、既存顧客の深掘りが収益を支えている。
同社が公表する継続型売上比率は80%を超える。ただし、この数字は過去1年間に6か月以上売上が発生した顧客からの収入割合であり、一般的なSaaSの解約率や純売上継続率とは異なる。継続性を示す材料ではあるが、将来の契約維持を保証する数字ではない。
分析上はミエルカ事業を、比較的低単価のツール中心顧客と、高単価の複合サービス顧客に分ける。前者は操作画面や分析機能をAIエージェントに置き換えられるリスクが大きい。後者は個別コンサルティングやコンテンツ制作、人材支援を含み、人が提供する作業そのものの価格が下がるリスクを持つ。両者の厳密な製品別売上は非開示のため、顧客単価別の開示から収益構造を推定している。
新規のディストリビューション事業「DXミエルカ」は、外部企業のバックオフィスや営業支援ソフトを販売し、導入を支援する。2026年6月末には契約98社、保有ARR1.41億円まで拡大した。ただし、保有ARRは同社経由で契約された他社サービスの年間契約総額であり、Faber Company自身の売上高ではない。販売手数料など、実際に会社に残る収益を区別することが不可欠である。
事業の本質は、独自ソフトだけでなく、専門家、営業力、顧客接点を組み合わせる点にある。一方、AIによる業務自動化とソフトウェア企業の直接販売が進めば、この組み合わせを維持するための人件費が利益を圧迫する可能性もある。
優良さと弱いところ
ミエルカの競争上の強みは、検索マーケティングの専門知識と営業接点の蓄積である。専門家による支援、複数の製品、勉強会やカンファレンスを通じて顧客と接点を持ち続けられる。2026年にはAI検索対策の大型カンファレンスも開催しており、見込み客を集める仕組みを自社で持つことは、小規模な競合との差になる。
2024年9月期から2026年9月期第3四半期まで、高単価層の顧客数は88社から111社へ増えた。月売上4万〜40万円の層も733社から883社へ増加している。売上を伸ばす手段が新規契約だけでなく、既存顧客への追加販売にもある点は評価できる。ただし、2026年の高単価層は前年同期からほぼ横ばいで、成長が無制限に続く兆候ではない。
弱点は、顧客がサービスを乗り換えられないほど強い仕組みが存在しないことだ。SEOツールにはAhrefs、Semrush、Keywordmapなどの競合があり、無料のGoogle Search ConsoleやMicrosoft Clarityもある。AI検索の測定や分析でも、新しい競合が短期間で参入できる。特許や専門家の評価だけで10年後の価格決定力が保証されるわけではない。
AIエージェント代替の判定では、ミエルカのツール部分を「操作画面が価値の中心の業務ソフト」、専門家・制作支援を「人月・工数で売るサービス」、DXミエルカを「販売・導入支援を伴う業務ソフトの流通」とする。いずれも置き換えの影響を受ける。規制対応や記録の正本に当たる事業は確認できないため、強い堀の型にはしない。
財務は強い。2025年9月期の自己資本は23.8億円、純現金は約21.2億円で、営業赤字の年度も確認されていない。とはいえ、純資産が増える一方でROEは近年低下している。資金を追加投資した結果、利益が資本コスト以上に増えるかが、今後の企業価値を左右する。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
日本のデジタル広告・マーケティング市場は大きい。電通の調査によれば、2025年のインターネット広告費は4兆459億円だった。ただし、これは広告媒体費や制作費を含む市場であり、ミエルカのSEOツールやコンサルティングの直接の市場規模ではない。SEO・GEO支援だけを対象とした信頼できる国内市場規模と各社シェアは十分に開示されておらず、会社の売上を広告市場で割った数字を市場シェアと呼ぶべきではない。
競合は国内のKeywordmap、SEARCH WRITE、AIアナリストなどに加え、海外のAhrefs、Semrush、Similarwebなど幅広い。さらに、GoogleやMicrosoftが無料で提供する分析機能も競争相手になる。今後10年で比較すべきは検索順位の分析機能だけでなく、企業がAI経由の購買行動を把握し、実際の顧客獲得に結びつけられるかどうかである。
AI検索市場は伸びる可能性が高いが、測定市場が拡大しても既存の検索ツール市場が同じだけ拡大するとは限らない。検索結果を人が一覧から選ぶ機会が減れば、従来型SEOの重要性は下がる。反対に、AIの回答で自社商品が正しく推薦されているかを調べる需要は新しく生まれる。ミエルカGEOの50社超の受注は、その需要が実在する初期の証拠である。
国内企業向けソフト市場については、富士キメラ総研が2025年度約3.0兆円、2030年度約4.48兆円という見通しを公表した。この市場にはバックオフィスや営業支援など幅広いソフトが含まれる。DXミエルカの保有ARR1.41億円は、その市場に比べて極めて小さい。現在の1社当たり保有ARR約144万円が変わらなければ、2030年の36億円達成には約2,500社が必要になる。98社からの飛躍であり、販売員を増やすだけで達成できるとは考えにくい。
10年後には、企業向けAIエージェントがソフトの操作とマーケティング業務の一部を統合している可能性がある。基幹システムの記録や決済は残っても、そこへ顧客を紹介し、導入画面を案内する仕事は減りうる。市場の名目金額が増加しても、Faber Companyが獲得できる顧客数と手数料率は別に検討する必要がある。
長期的には、ツールの機能競争から、独自データ、実行成果、顧客との継続的な関係をめぐる競争へ移ると見る。ミエルカはその変化に参加できるが、現時点で業界全体を支配する市場シェアを持つわけではない。
資本政策と M&A
資本配分の中心は、既存製品の強化、新規事業への投資、M&Aである。2025年にはSEO分野の専門人材を持つso.laを子会社化した。2026年3月にはコンテンツ制作会社XINOBIXの株式70%を取得し、制作業務の内製化を進めている。買収対象との相乗効果は理解できるが、コンテンツ制作そのものがAIによる自動化圧力を受けるため、買収後の利益が長く続くかを検証する必要がある。
会社は2026年9月期の通期業績として、売上高28.17億円、営業利益3.00億円、純利益2.10億円を予想している。営業利益の減少は、主にディストリビューション事業への1.2億〜1.5億円程度の先行投資を織り込んだものである。既存事業では投資前の営業利益4.2億〜4.5億円を目指す説明がされている。
中期的な数値目標は、2030年9月末のディストリビューション事業の保有ARR36億円である。さらに2028年9月末までにエンゲージメントアカウント10万人という構想を掲げている。ただし、保有ARRは販売先ソフトの契約総額であり、連結売上や利益の目標とは異なる。全社の2030年売上高、営業利益、ROEについて、同等の確定的な数値目標は確認できない。
株主還元では2025年9月期に配当を開始し、普通配当と記念配当を合わせた配当を実施した。2026年9月期も年間配当30円を予定する。方針は配当性向20%を目安とし、財務状況に大きな変化がなければ累進配当を志向するというもので、自社株買い額や総還元性向について具体的な数値の約束はない。
会社は必要現預金を月商約2か月分の5億円とし、余剰資金や借入をM&Aに使う考えを示している。中期的にはD/Eレシオ0.5〜1倍を視野に入れているため、現在の無借金に近い財務が続くとは限らない。上位10株主の保有比率が高く創業者側の影響力も強いが、配当を開始していることを評価し、余剰現金の株主への戻り方は75%とする。過去5年の高い総還元実績を確認できないため100%とはしない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
Faber Companyの魅力は、検索という巨大な情報流通の変化に20年以上向き合ってきたことにある。従来の検索エンジン最適化は変わっても、企業が顧客に発見されたいという経済的な動機はなくならない。AIが購買の入口になれば、ブランドが回答に現れるか、競合とどう比較されるかを測定する必要性はむしろ強まる。ミエルカGEOはその変化に早期に対応した製品であり、受注50社超という実績もある。
高単価顧客へのクロスセルは実績のある成長手段だ。大手企業は単に検索順位を知りたいのではなく、集客した顧客の購買まで改善したい。SEO、ヒートマップ、Web接客、専門家支援をまとめて提供できれば、単機能の安価なツールより高い顧客単価を維持できる可能性がある。顧客の仕事が複雑になるほど、販売から運用までを伴走できる会社の存在意義も残る。
財務面では、純現金が時価総額の大部分を占めている。既存のミエルカ事業は黒字であり、現在の投資を除けば営業利益を生み出している。DXミエルカの採算が改善し、M&Aで獲得した専門人材との相乗効果が実現すれば、株主が受け取る利益は大きく増える。多額の設備を持たない事業なので、利益率を改善する余地もある。
それでも成功の条件を甘くしてはいけない。AIエージェントそのものの商用収益額は十分に開示されていないため、楽観の筋書きでも、従来の操作画面や人手による支援の数量が現在を大きく上回るとは考えない。成功とは市場全体の成長を独占することではなく、残った需要から高い利益率を得ることにある。
慎重な見方
既存のミエルカ事業は、AIエージェントが置き換える対象と重なる部分が大きい。検索分析、記事制作、競合調査、サイト改善の提案は、これまで専門家が時間をかけて行っていた仕事だ。AIが実行まで担うなら、分析画面を開くための月額料金や、人の作業を買うための予算は減少しやすい。既存のSEO会社がAI検索対策へ名称を変えるだけでは、失われる需要を取り戻せない。
競争相手は、もはや同じ規模のSEOツール会社だけではない。Google、Microsoft、Adobe、Salesforceなどの大手ソフトウェア企業が、自社のサービスにAI分析機能を組み込めば、個別ツールへの支払いを減らせる。生成AIの回答内容は外部のモデル提供企業に依存しており、測定手法やデータ取得の仕様が変われば、ミエルカGEO自身も作り直しが必要になる。
顧客の数字にも警戒材料がある。2026年9月期第3四半期の高単価顧客は前年同期からほとんど増えていない。低単価層は減り、全取引顧客数も縮小している。大手顧客への集中は採算改善に役立つ反面、限られた顧客への依存を高める。値上げ力が確認できないまま人件費が増えると、売上が横ばいでも利益は圧迫される。
さらにDXミエルカの現状は、売上より費用がはるかに大きい。2030年の保有ARR36億円を目指して営業体制を拡大する計画だが、外部ソフトの紹介・導入支援はAIによる直接販売や自動導入と競合する。顧客獲得費用が回収できなければ、利益ではなく損失を積み上げることになる。
純現金は確かに多い。しかし、経営陣はそれを買収や成長投資に使う方針であり、現在の現金がそのまま10年後の株主価値になる保証はない。買収先の技術や制作業務が陳腐化すれば、のれんの減損と利益率の悪化が重なる。長期的には、現金を持つという強みだけでは、衰退する事業を高く評価できない。
どちらに重みを置いたか
現時点では慎重な見方の論拠がやや強い。ミエルカの顧客基盤と財務は評価できるが、AI検索製品の実績はまだ初期段階で、DXミエルカの採算改善も確認されていない。確率は楽観側27%、中立30%、悲観側43%とした。下側に寄せた理由はAI代替を確率で重ねて数えたためではなく、新規事業の実際の赤字規模と、現金を使うM&Aの成果が未検証であるためだ。厚い現金が倒産リスクを抑えても、投資採算の悪化まで防ぐわけではない。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/09 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 1,202 円33 億円(+ 還元の換算額還元の合計 219 円6 億円)。 今の値に割り戻すと 721 円20 億円、今との差 −21.8%、 期待の年率 +4.8%(資本コスト 7.8%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 2,130 円58 億円 | 328 円9 億円 | +166.5% | +11.3% | 246 円7 億円 |
| やや楽観 | 17% | 1,665 円46 億円 | 309 円9 億円 | +114.2% | +8.8% | 336 円9 億円 |
| 中立 | 30% | 1,239 円34 億円 | 295 円8 億円 | +66.3% | +5.9% | 460 円13 億円 |
| やや悲観 | 27% | 783 円22 億円 | 146 円4 億円 | +0.7% | +0.1% | 251 円7 億円 |
| 悲観 | 16% | 772 円21 億円 | 36 円1 億円 | −12.3% | −1.3% | 129 円4 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,202 円33 億円 | 219 円6 億円 | +54.2% | +4.8% | 1,421 円39 億円 |
今の株価時価総額 922 円25 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 10% AI検索への転換に成功し高収益を維持 利益 4 億円 · PER 15.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 2,130 円58 億円
検索マーケティングの変化に対応し、ミエルカGEOが既存製品群に自然に組み込まれる。企業は検索順位だけでなく、AIが商品をどう引用し推薦するかを継続的に確認するようになる。Faber Companyは、SEOとGEOを組み合わせて販売することで、ツールの利用社数を維持しながら収益単価を高める。
高単価の大手・中堅顧客では、複数の分析ツールと専門家による支援を組み合わせる。顧客の社内業務も自動化されるが、複雑な判断や施策の調整を外部に委ねる需要は残る。大手ソフトウェア会社との競争は続くものの、国内企業への支援体制と専門知識を生かして単価を維持する。
so.laやXINOBIXとの連携によって外注費が抑えられ、既存事業の利益率が改善する。DXミエルカは大規模な拡張よりも採算の取れる契約を選別し、営業損失から脱する。買収先ののれんを大きく減損する事態も避けられ、余剰資本の一部は配当を通じて株主へ戻る。
AIを理由とした無制限の契約社数増加は見込まない。それでも既存顧客の課金を守り、費用を効率化できれば、現在を上回る営業利益を生み出すことができる。
- ミエルカ事業・ツール中心の中小口顧客:数量 1,586(年間平均の取引社数。月売上4万〜40万円の顧客と4万円未満の顧客の合計)× 価格 0.01(1社当たり年間売上高(億円・名目))→ 売上 16 億円・営業利益 4 億円。AIエージェント代替を受けながら顧客数を維持。価格は現在の1.15倍でSaaS型の楽観上限。
- ミエルカ事業・高単価複合サービス顧客:数量 110(年間平均の月売上40万円以上の取引社数)× 価格 0.14(1社当たり年間売上高(億円・名目))→ 売上 16 億円・営業利益 2 億円。高単価顧客数は維持。複合提案と一部専門業務の値上げで年間単価1.34倍。
- ディストリビューション事業・DXミエルカ:数量 98.0(四半期末の保有契約社数)× 価格 0.00(1社当たりの年間会社売上高(億円・手数料等の推定))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。販売契約数は現時点を維持し、低採算営業を整理。ARR目標の全面達成は織り込まない。
倍率:資本コストk=7.75%、長期名目成長g=-0.5%、弱い堀の残存割合1/3を使用。余剰現金15億円の税後利息0.21億円を除いた事業純利益3.69億円、余剰現金を除いた事業ROE約11.25%からRONIC約8.92%。正当化事業PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)=約12.80倍。事業価値約47.24億円と余剰現金の株主帰属価値15×0.75=11.25億円を合計した58.49億円を採用。表示PER15.00倍は現金込みの時価総額÷全社純利益であり、事業PER12.80倍とは異なる。AI代替を倍率の割引率に重ねない。
確率:GEO関連の実際の受注と、既存顧客へのクロスセル実績は強み。ただし、AIエージェントの商用売上金額が十分に示されておらず、従来の顧客数を増加させなくても利益率を高められる場合に限る。
やや楽観 17% 顧客の質を改善しながら既存事業を維持 利益 3 億円 · PER 16.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,665 円46 億円
ミエルカの既存製品はAI検索環境に対応し、従来のSEO専用ツールから、検索とAIによる商品推薦の双方を分析する製品へ変わる。低単価顧客の一部は無料ツールやAIエージェントへ移るが、専門知識や継続的な改善を必要とする中堅企業が残る。製品の単価は小幅に改善し、売上の減少を部分的に補う。
高単価顧客は一定数減るものの、契約のある企業からの収益は比較的安定する。企業のマーケティング責任者が成果を判断する仕事は残るため、専門家による支援を全面的には失わない。XINOBIXの制作能力も、AIで代替しにくい企画や品質管理を中心に再編される。
ディストリビューション事業は、販売手数料率への圧力から大きな利益源には育たない。ただし、営業人員を抑え、契約維持と紹介案件に重点を移すことで赤字を解消する。M&Aでも大型案件を避け、既存事業と顧客を共有できる小規模な買収が中心となる。
10年後の売上規模は現在と大きく変わらないが、ツールと専門サービスの組み合わせを維持し、適切な費用管理で一定の利益を残す。純現金と配当が株主価値を支え、事業が衰退するほどの深刻な状態には至らない。
- ミエルカ事業・ツール中心の中小口顧客:数量 1,427(年間平均の取引社数。月売上4万〜40万円の顧客と4万円未満の顧客の合計)× 価格 0.01(1社当たり年間売上高(億円・名目))→ 売上 14 億円・営業利益 3 億円。契約社数は約0.90倍。単価は1.12倍で、物価より弱い価格決定力を反映。
- ミエルカ事業・高単価複合サービス顧客:数量 94.0(年間平均の月売上40万円以上の取引社数)× 価格 0.13(1社当たり年間売上高(億円・名目))→ 売上 13 億円・営業利益 2 億円。契約社数は約0.85倍、単価1.27倍。複数商材の販売が部分的に維持される。
- ディストリビューション事業・DXミエルカ:数量 88.0(四半期末の保有契約社数)× 価格 0.00(1社当たりの年間会社売上高(億円・手数料等の推定))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。導入支援を縮小し、ほぼ損益均衡まで改善。大幅な契約数増加は採用しない。
倍率:k=7.75%、g_long=-0.5%、弱い堀の残存割合1/3。余剰現金16億円の税後利息0.224億円を除く事業純利益2.626億円、事業自己資本27.3億円からROE約9.62%、RONIC約8.37%。正当化事業PERは約12.85倍。事業価値33.73億円に、余剰現金16億円の75%である12億円を加えた45.73億円。表示PER16.05倍は現金込みの実効倍率である。
確率:高単価顧客への複数商材販売が持続し、GEOサービスが既存製品の減少を補う可能性はある。一方、営業費用の増加と海外・国内の競合を考慮して、顧客数の減少を一部認める。
中立 30% AI代替で既存需要が縮み、新規事業も選別 利益 2 億円 · PER 16.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,239 円34 億円
ミエルカはAI検索への対応を続けるものの、従来のSEOツールを人が操作する仕事は徐々に減る。分析、改善案の作成、コンテンツ制作の相当部分が自動化され、顧客は以前ほど多くのツールや外部専門家を必要としなくなる。新しいGEOサービスは売上を補うが、従来の全収益を置き換えるまでには成長しない。
低単価のツール中心顧客は10年間で約2割減少し、月額利用料の上昇も限定的となる。高単価顧客はより大きく減るが、残った顧客では複合契約が続く。既存顧客の支援実績や専門家との関係は一定の役割を果たし、価格競争のため利益率が全面的に崩れるわけではない。
DXミエルカは、バックオフィス向けソフト市場自体が拡大しても、販売代理という立場から十分な利益を獲得できない。外部ベンダーの直販やAIによる導入自動化が進み、営業投資の規模は縮小する。2030年の大きな保有ARR目標は達成できず、残る顧客への支援を細く続ける形となる。
買収先の人材と顧客は一部維持されるが、追加投資が高い増分利益を生むとは限らない。純利益は現在より減り、自己資本が増えることでROEも下がる。配当の継続と現金が下値を支える一方、10年間の資本配分に高い経済的な価値を認めるほどの成果は得られない。
- ミエルカ事業・ツール中心の中小口顧客:数量 1,269(年間平均の取引社数。月売上4万〜40万円の顧客と4万円未満の顧客の合計)× 価格 0.01(1社当たり年間売上高(億円・名目))→ 売上 12 億円・営業利益 2 億円。AIエージェント代替のSaaS型。数量0.80倍、価格1.10倍。
- ミエルカ事業・高単価複合サービス顧客:数量 72.0(年間平均の月売上40万円以上の取引社数)× 価格 0.13(1社当たり年間売上高(億円・名目))→ 売上 10 億円・営業利益 1 億円。人月・工数型。数量約0.65倍、価格1.25倍。高単価案件の一部が自動化される。
- ディストリビューション事業・DXミエルカ:数量 69.0(四半期末の保有契約社数)× 価格 0.00(1社当たりの年間会社売上高(億円・手数料等の推定))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。販売・導入支援の案件数約0.70倍、手数料単価は横ばい。事業整理後にも残る固定費を反映。
倍率:k=7.75%、g_long=-0.5%。余剰現金14億円の税後利息0.196億円を除く事業純利益1.824億円、事業自己資本22.7億円から事業ROE約8.04%。弱い堀の残存割合1/3によるRONICは約7.85%、正当化事業PERは約12.89倍。事業価値約23.52億円と余剰現金の戻り価値14×0.75=10.5億円の合計34.02億円。表示PER16.84倍は現金込みの実効倍率であり、事業純利益の正当化PERを引き上げたものではない。
確率:2026年時点の顧客基盤と黒字の既存事業は残るが、従来のSEO分析・制作・導入支援はAIに代替される。高単価顧客への追加販売とGEO需要が下支えになり、事業全体が消滅するほどの縮小にはならない中心ケース。
やや悲観 27% 価格競争と新規事業の失敗が利益を圧迫 利益 1 億円 · PBR 0.9 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 783 円22 億円
企業のSEO分析やコンテンツ制作は、社内AIエージェントで実行できる仕事が増えていく。既存ミエルカの顧客は、専門的な支援が必要な一部企業を除いて契約規模を縮小する。外部ソフトを使い続ける企業も、分析画面ごとに料金を払うより、複数の業務を統合して実行するAIサービスを選ぶようになる。
ツール中心の契約数は10年間で3割ほど減少し、単価は名目で上がらない。高単価顧客も約半数に縮み、個別コンサルティングや人材支援で売上を補うことが難しくなる。専門家の知見は残るが、同じ仕事に投入する人員が減るため、外部支援の市場そのものが縮小する。
DXミエルカは人員投入に見合う契約獲得ができず、販売経路を縮小する。ソフトウェアベンダーによる直接販売やAIを用いた自動導入が進むことで、仲介する会社に残る収益が少なくなる。採算の悪い事業を整理する過程で費用が残り、利益を圧迫する。
会社には多額の現金が残るため、資金繰り危機には直結しない。しかし買収した事業も高い利益成長を実現できず、ROEは資本コストを大きく下回る。保有する現金と売却可能資産が価値の中心となり、事業の収益力に対して大きな評価を与えられない会社になる。
- ミエルカ事業・ツール中心の中小口顧客:数量 1,110(年間平均の取引社数。月売上4万〜40万円の顧客と4万円未満の顧客の合計)× 価格 0.01(1社当たり年間売上高(億円・名目))→ 売上 10 億円・営業利益 1 億円。数量約0.70倍、単価据え置き。無償・低価格AI分析との競争が強まる。
- ミエルカ事業・高単価複合サービス顧客:数量 61.0(年間平均の月売上40万円以上の取引社数)× 価格 0.11(1社当たり年間売上高(億円・名目))→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。数量約0.55倍、単価据え置き。人的支援の需要が構造的に細る。
- ディストリビューション事業・DXミエルカ:数量 54.0(四半期末の保有契約社数)× 価格 0.00(1社当たりの年間会社売上高(億円・手数料等の推定))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。小規模な契約基盤だけが残り、撤退・維持管理の固定費が発生。
倍率:ROEは0.88÷34.8=約2.5%で資本コスト7.75%を下回る。事業の利益をkと長期縮小率で評価しても、余剰現金を加えた稼ぐ力の価値は現在の売却可能資産を下回るため、資産の床を優先する。現在の自己資本23.8億円を基準にPBR約0.903倍とした21.5億円。将来の自己資本34.8億円に床の倍率を掛けていない。
確率:既存製品が無料・低価格のAI機能に置き換わり、DXミエルカの営業採算も十分に改善しない場合。現実に大きな先行投資負担が発生しているため、無視できない確率とした。
悲観 16% AI代替が進み既存の強みを構造的に失う 利益 0 億円 · PBR 0.9 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 772 円21 億円
検索マーケティングの大部分が、AIエージェントと大手プラットフォームの標準機能に組み込まれる。利用者は検索結果の個別ページを訪れず、AIの推薦に従って購買する機会が増える。企業も分析から改善の実行までを少数のAIサービスに任せるため、専用SEOツールと外部制作会社への需要が大きく減る。
ミエルカの契約数は低価格帯でも大きく減り、高単価顧客は現在の半数以下となる。残った契約でも単価を維持できず、サービス価格は名目で下落する。顧客の成果を支える独自データは一定程度残るが、他社が再現しにくいほど強い基盤には育たない。
DXミエルカも、外部ソフトウェア会社によるAIを用いた直販・導入に押される。採用と営業に投入した費用は十分に回収されず、事業整理に伴う損失が発生する。買収先の人員・制作機能も需要が減るため、シナジーは得られず、利益剰余金の積み上がりは限定的となる。
既存事業全体の営業利益はほぼ消滅するが、会社は多額の現金と流動資産を持つため、破綻を前提としない。株主に残る価値は、新しい利益を生み出す力ではなく、残存資産の保全と株主への還元に依存する。この筋書きでは、かつての専門性やブランドに高い倍率を払う理由がなくなる。
- ミエルカ事業・ツール中心の中小口顧客:数量 900(年間平均の取引社数。月売上4万〜40万円の顧客と4万円未満の顧客の合計)× 価格 0.01(1社当たり年間売上高(億円・名目))→ 売上 7 億円・営業利益 0 億円。契約数量約0.57倍、単価0.86倍。従来型SEOツールの収益が大幅に縮小。
- ミエルカ事業・高単価複合サービス顧客:数量 45.0(年間平均の月売上40万円以上の取引社数)× 価格 0.09(1社当たり年間売上高(億円・名目))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。契約数量約0.41倍、単価0.84倍。人的支援の需要が半分以下となる。
- ディストリビューション事業・DXミエルカ:数量 30.0(四半期末の保有契約社数)× 価格 0.00(1社当たりの年間会社売上高(億円・手数料等の推定))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。販売契約の大部分を失い、撤退関連の管理費用が売上を上回る。
倍率:営業赤字に近く、金融収益を加えても純利益は0.05億円にとどまる。利益にPERを掛ける方式では事業の永続価値を認められないため、資産の床を使用する。現在の自己資本23.8億円×0.891倍≒21.2億円。悲観時に増えた自己資本27.3億円にPBRを掛けていない。将来利益の積み上がりは床に加えず、のれん等も実体資産として評価しない。
確率:SEO分析と人手の制作支援が広範囲に代替され、買収先も十分な収益力を維持できない複合的な場合。会社の流動性は厚いため倒産までは想定しないが、事業価値がほぼ失われる可能性を考慮する。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
ミエルカ事業・ツール中心の中小口顧客
ミエルカSEO、ヒートマップ、ローカルミエルカ、GEOなどのツールを中心とする、月額売上40万円未満の取引顧客群。実際には一部コンサルティング等も含むため、完全な製品別セグメントではなく分析上の区分である。
| 数量年間平均の取引社数。月売上4万〜40万円の顧客と4万円未満の顧客の合計 | 価格1社当たり年間売上高(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 1,586 | 0.01 | 14 | 3 |
| 10 年後 中立 | 1,269 | 0.01 | 12 | 2 |
取り方:2025年9月期第3四半期資料の顧客数800社+786社=1,586社を採用。同四半期の月売上40万円未満層の売上は300百万円+38百万円=338百万円。全社の2025年9月期売上25.6億円を、第3四半期の当該層338百万円と高単価層281百万円の実際の売上構成比で配分し、13.98億円と推定した。営業利益2.5億円はツール収益性を考慮した分析上の配賦であり会社非開示。AIエージェント代替では操作画面中心SaaSの型を適用する。市場シェアは製品別売上と国内SEOツール市場の統一定義が非開示のため算定不能。
ミエルカ事業・高単価複合サービス顧客
月額売上40万円以上の顧客への、SEO・GEO分析、コンサルティング、コンテンツ制作、専門人材支援などの複合提案。ツール部分も含むが、人的サービスへの依存が相対的に高い顧客群として扱う。
| 数量年間平均の月売上40万円以上の取引社数 | 価格1社当たり年間売上高(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 110 | 0.11 | 12 | 1 |
| 10 年後 中立 | 72.0 | 0.13 | 10 | 1 |
取り方:2025年9月期第3四半期の月売上40万円以上の平均契約社数110社、当該層の四半期売上281百万円を使用。売上構成比281÷619を2025年9月期の全社売上25.6億円に適用して11.62億円と推定した。年間単価は約1,056万円。営業利益1.3億円は人件費・個別対応コストを考慮した推定で会社開示ではない。人月・工数型のコンサルティング、制作、人的支援のリスクを主として適用する。高単価層全額が人月売上という意味ではなく、実際の製品構成比は非開示。
ディストリビューション事業・DXミエルカ
外部ベンダーが提供するバックオフィス・営業支援ソフトウェアの販売、契約獲得、導入支援。保有ARRは外部サービスの契約総額であり、会社が認識する販売収益とは区別する。
| 数量四半期末の保有契約社数 | 価格1社当たりの年間会社売上高(億円・手数料等の推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 98.0 | 0.00 | 0 | −2 |
| 10 年後 中立 | 69.0 | 0.00 | 0 | 0 |
取り方:2026年9月期第3四半期短信で、ディストリビューション事業の9か月累計売上16,462千円、営業損失118,772千円を確認。12か月換算した売上0.22億円、営業損失1.58億円を暫定的な年率として使用する。期末契約社数98社、保有ARR1.41億円は会社資料による。保有ARR1.41億円をFaberの売上高とは扱わない。2025年9月期の区分別実績は再作成困難と会社が開示しているため、この区分のみ2026年6月の最新の稼働基盤を起点とする。2025年9月期の主力2区分との単純合計は当期実績ではない。AIエージェント代替では販売・導入の人月型と、外部業務SaaSの席課金への圧力を併せて考慮する。
リスクと懸念
AIエージェント代替
検索分析、コンテンツ制作、SEO改善、Web接客の設定、外部ソフトの導入支援などがAIエージェントに代替される。既存の契約社数だけでなく、顧客がツールの操作画面や人の作業に支払う単価そのものが下落するおそれがある。特にミエルカの人的支援とDXミエルカの販売・導入支援は影響が大きい。
ディストリビューション事業の投資回収
2026年9月期第3四半期のディストリビューション事業は売上0.16億円に対して営業損失1.19億円を計上した。営業人員の増加が契約の積み上がりを上回ると、費用回収期間が長引く。保有ARRの増加が、そのまま同社の認識売上や営業利益になるわけではない点に注意が必要である。
検索プラットフォームへの依存
ミエルカSEOとミエルカGEOは、Googleの検索仕様やChatGPT、Geminiなどの回答の仕組みに依存する。主要なAI・検索提供企業がデータ取得を制限したり、分析機能を標準サービスとして提供したりすれば、ミエルカの差別化や価格決定力が失われる。
M&Aによる資本効率の悪化
so.laやXINOBIXの買収で専門人材と制作能力を得ているが、制作や分析はAIの普及で単価が下がる可能性がある。買収費用を正当化できる追加利益が得られなければ、のれんの減損やROICの低下につながる。借入や新株発行による追加買収が行われれば財務と既存株主の取り分にも影響する。
大手顧客への集中と継続率の不透明さ
高単価顧客の売上は伸びているが、契約社数は直近で横ばいである。大型契約が解約された際の影響は大きく、継続型売上比率80%超も厳密な解約率を意味しない。顧客がAIを内製化する、あるいは複数商材を統合する場合、売上と利益の双方に影響する可能性がある。
現金の使い方とガバナンス
厚い純現金は安全性を支える一方、会社は余剰資金をM&Aと新規事業に積極投資する方針だ。創業者側の影響力が強く、少数株主が現金の使途を直接決められるわけではない。現金が帳簿上存在することと、株主にその全額の価値が戻ることを同一視しない。
今後の分かれ目
- ミエルカGEOの有料契約数だけでなく独立した売上高、ARR、解約率が継続開示され、既存SEO売上の減少を十分に補ったら
- AI検索対応を既存事業の延命ではなく新しい収益基盤として評価する。ツール中心顧客の数量と単価の前提を見直し、楽観側の確率を引き上げる。
- DXミエルカの保有ARRが増えても、会社認識売上に対する営業赤字が縮まらなかったら
- 会社の目標ARRではなく、実際の営業利益と回収期間で評価する。新規事業の価値を引き下げ、成長投資に使う現金の期待収益率を厳しく見直す。
- 月売上40万円以上の顧客数が継続的に増加し、1社当たり売上も高水準で安定したら
- クロスセルと専門家支援による差別化が残っている証拠とする。高単価顧客の数量維持率と営業利益率を上方修正する。
- 月売上4万〜40万円の顧客層まで減少に転じ、平均単価も下落したら
- 低価格AIツールとの競争が中核顧客に波及したと判断する。中立の売上と営業利益を引き下げ、悲観側の確率を増やす。
- 大型M&Aや公募増資の実施が決まり、買収後の利益とキャッシュフローが資本コストを下回る見通しになったら
- 増資後の既存株主の取り分を改めて計算し、余剰現金と増分ROICを見直す。売上の増加だけで企業価値が増えたとは判断しない。
- 配当性向の引き上げや継続的な自社株買いが明文化され、実際に株主への還元が増えたら
- 余剰現金の戻り方を75%から100%へ見直す余地が生まれる。事業の収益予測を変えなくても、株主に帰属する現金価値は上方修正される。
見ておくもの
- ミエルカ事業の月売上40万円以上、4万〜40万円、4万円未満の顧客数と売上構成
- ミエルカGEOの有料契約数、売上高、ARR、解約率、既存SEOからの移行率
- ディストリビューション事業の保有ARRと会社認識売上高の差、営業損益、顧客獲得費用
- DXミエルカの営業人員数、契約社数、1社当たり保有ARR、LTV/CAC
- M&Aの取得費用、のれん残高、取得後の営業利益と投資キャッシュフロー
- 純現金と投資有価証券の残高、配当総額、自己株式数の変化
- AI検索の普及に伴うミエルカ既存契約の解約・減額・単価改定の実績
倍率と資本コストの決め方
評価は2025年9月期の売上高25.6億円、純利益2.6億円、自己資本23.8億円を財務の起点とした。2026年9月期第3四半期の最新資料から契約社数、ディストリビューション事業の損益、M&A、現金残高を確認したが、2026年通期の未発表実績は使用していない。ミエルカ事業の売上は顧客単価帯別の実績から配分し、10年後の数量と価格をAIエージェント代替の型に従って推計した。2030年の保有ARR36億円は会社の目標であって、会社の売上36億円ではないため、直接価値に算入していない。
資本コスト7.75%と2035年以降の名目成長率−0.5%、弱い堀の残存割合1/3を使い、事業の正当化PERを計算した。現金が多いため、会社全体の表示PERは事業の正当化PERより高くなるが、事業利益の倍率を恣意的に上乗せしたものではない。純現金から必要運転資金を差し引き、現金の戻り方は75%とした。将来の余剰現金はM&A等の使用を考慮した額で明示し、帳簿に残る利益を無条件に重複加算していない。
10年間の自己資本は各筋書きで純利益累計から配当・還元を差し引いた流れとそろえた。悲観側のPBRは将来増加した自己資本ではなく現在の自己資本23.8億円を基準としている。日本基準の新リース会計基準による表示変更があっても、事業価値は現在と比較可能な費用構造で評価する。2026年10月23日時点の基準時価総額約25.27億円との比較は、以上の事業価値を求めた後に行った。確率加重した現在の本質価値は約19.80億円、差は約−21.6%であり、判定は「やや割高」である。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。無リスク金利3%と株式リスクプレミアム4.5%の基本7.5%に、事業の循環・値決め力・借金・寿命の評価を合計した+0.25%を加えた7.75%。AI代替の収益縮小は数量・価格とg_longで扱い、資本コストに重ねて上乗せしない。