結論
キーウェアソリューションズは、公共・運輸・医療や企業の基幹システムを作り、運用まで支える中堅ITサービス会社である。筆者の判断は「やや割高」である。営業の立て直しと財務の強さは認めるが、売上の大半を占める受託開発やシステム導入の工数が、10年後も今と同じ値段で売れるとは考えにくい。
会社は2026年3月期に増収と営業増益を達成した。とりわけERPの導入を担うSI事業は利益率が高く、請負案件の管理や単価の改善には進歩がある。純現金も約34億円に達する。ただし、2027年3月期の第1四半期は本社移転費用などで営業赤字となり、収益力の定着はまだ試されている。
10年後に残るのは、単にコードを書く仕事ではなく、顧客の業務と責任を引き受け、複数の仕組みを安全につなぐ能力だろう。医療のMedlasや公共・運輸の経験には残る価値があるが、解約率、規制対応の継続収益、独自データの優位を数字で裏づける開示は乏しい。AIエージェントが開発、画面操作、保守の多くを代行する世界では、その違いを厳しく見分ける必要がある。
現金と段階的な増配は下値を支える。それでも、投資家が受け取る利益と還元を資本コストで割り戻すと、現在の約97億円の時価総額には十分な余白を見いだしにくい。買収や提携が飛躍につながる筋書きは残すが、それを当然の未来として支払わない。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主なら、来期の受注よりも「顧客が10年先にも何に対して金を払うか」を先に問うだろう。キーウェアは社会の仕組みを支える仕事をしている。だが、社会に不可欠なシステムと、その開発を請け負う会社の経済的な堀は同じではない。発注者がAIを使いこなせば、必要なシステムは残っても外部の人月は消えていく。
保有する価値のある資産は、人員そのものよりも顧客が任せ続ける理由だ。鉄道・公共・医療の業務理解、ERPを止めずに移行する経験、障害時に責任を取る組織がそれに当たる。ただし顧客に「替えられない」と言わせる証拠が足りない。受注先や製品提供者の力の方が強いなら、過去の利益率が改善しただけで高い永続成長を買うべきではない。
投資家に帰属する利益も慎重に測る必要がある。採用・教育・セキュリティ投資や不採算案件の損失は、会計上の純利益とは別に現金を使う。社員を抱える会社は急な受注減でも固定費をすぐには減らせず、更新投資と人件費がオーナー利益を圧迫する。利益を残して自社開発ソフトに投資するなら、その投下資本の利回りが7%台の資本コストを上回った証拠を求めたい。
良い面は、経営が赤字時代を経て採算を改善し、財務を立て直してきたことだ。純現金は株主にとって失敗をやり直す時間を買う。しかし非事業用の現金を丸ごと足し、同じ現金が生む受取利息にも永久の倍率を掛ければ二重計算になる。配当と条件付き優待を受け取りながら持つ価値はあるが、本質価値に対する十分な安全域が今の値段にあるとは言い切れない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心はシステム開発事業である。2026年3月期の外部売上は約134億円、連結の約59%を占める。官公庁、運輸、医療、IoTなどの業務ソフトを大手企業や顧客から受託し、仕様変更や試験も含めて仕上げる。ここには長年の現場知識が蓄積する一方、価値のかなりの部分が技術者の工数に結びつく。日本電気とNECソリューションイノベータの2社で連結売上の約23%を占め、元請けと下請けの交渉力の差も無視できない。
SI事業は約68億円、売上の30%を占める。SAP、Biz∫、IFSなどのERPを顧客の現場に合わせて導入し、会計・販売・調達などの仕組みをつなぐ。直接顧客と契約するプライム案件を増やし、独自テンプレートやクラウドを使ってゼロから作る部分を減らすのが経営方針だ。2026年3月期のセグメント利益率は約9%で、開発事業の約4%より高いが、ERP自体の利用料の大半を所有する立場ではない。
その他事業の売上は約25億円で、運用・保守、サポート、機器とパッケージの販売、新規事業が混在する。キーウェアメディカルが承継した電子カルテ周辺のMedlas、農業ICT、デジタル金融、サイバーセキュリティへの挑戦もある。ただし、自社製品のライセンス数、契約件数、継続率、売上内訳は十分に公表されていない。従って、これを独立した高成長ソフトウェア事業として別格に評価しない。
売上を支える連結人員は1,300人で、そのうちシステム開発746人、SI285人、その他144人である。予測の数量は、この実際の人員数を基にした年換算の提供人月を使う。単価には請負費用、外注先への支払い、製品販売分も混ざるため、請求書上の厳密な人月単価ではない。会社の価値は人員を増やすだけでなく、人月から成果物と継続契約へ収益を移せるかにかかる。
優良さと弱いところ
この会社の強みは、顧客の複雑な運用を理解し、失敗が許されにくい業務を長く支えてきたことだ。宇宙・運輸・医療・公共のシステム経験は新規参入者に簡単には買えない。ERPの導入から保守までを一社で受けられる点も、顧客が事業者を変更する際の手間になる。しかし、手間がかかることと、同じ価格で永続的に受注できることは別だ。
営業利益率は長く低迷してきたが、2026年3月期には約5%まで回復した。請負案件の管理改善や高付加価値案件の受注が寄与している一方、過去には開発損失や赤字の年度も複数あった。増分の資本利益率が継続して高いと証明されたわけではない。技術者が増えても外注費、採用費、案件の検収遅れで利益が残らない危険がある。
財務は実際に強い。2026年3月末の自己資本は約80億円、純有利子負債はマイナス約34億円である。直近の金利上昇は借金の痛みより、預金の受取利息を少し増やす方向に働く。ただし現金の一部は給料と外注費の支払いに必要で、全額を遊休資産と見ることはできない。
もっとも気になるのは、強い堀の証拠が足りないことだ。Medlasなどの医療システムにも、解約率5%未満、年単位の移行実績、法改正のたびに値上げできた実績、独自データの排他性といった定量的な証明が複数そろわない。受注単価が改善した事実は評価するが、物価を超える恒常的な値上げ権とは区別する。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内ITサービス市場は2025年に約7兆5,663億円だった。IDCの2026年公表予測では2030年に10兆円を超える。官公庁の基幹更新、金融機関の近代化、企業のクラウド移行が支える。キーウェアの連結売上は市場全体の概算0.3%で、システム開発約0.18%、SI約0.09%、その他約0.03%に相当する。ただし各セグメントに独立した公表市場があるわけではないため、同じ市場を共通分母にした参考値であり、厳密な製品シェアではない。
競合にはNECとNECソリューションイノベータ、TIS、SCSK、BIPROGY、NSDなどがいる。大手は顧客のシステム全体を押さえ、技術者の調達とセキュリティ対応にも規模の利点がある。キーウェアが市場を独占できる立場ではなく、NEC系列への売上集中は需要の入口を確保する半面、発注仕様と価格を相手が決めるリスクを生む。
ここで市場予測の名目成長と、株主が得る工数の成長を分けたい。生成AIとAIエージェントは設計、プログラム生成、試験、移行、保守、ERP画面の操作を少ない人手で済ませる。市場全体の支出が増えても、客が買う人月は減りうる。さらにSAPなどの製品側がAI機能を標準化すれば、導入会社が取れる追加工数は小さくなる。中立では人月の実質数量を10年で約3〜4割減らし、値段も物価ほどは上げられないと考える。
一方、医療記録の整合性や公共系の安全運用、情報セキュリティの最終責任は自動化し切れない。市場に残る需要はあるが、それを会社独自の値決め力に変えられるかが難所だ。競争が技術者の頭数から、AIを使った成果物の責任、顧客データへの権限、運用の品質保証へ移る10年になる。
資本政策と M&A
中期経営計画「Vision2026」は2023年3月期から2027年3月期までの5年間を対象とする。開始時は最終年度に売上240億円、営業利益14億円、利益率約6%を掲げた。その後、会社が示す2027年3月期の目標は売上240億円、営業利益12億円となった。本社移転費、人材育成、情報セキュリティの投資を織り込んだ計画であり、当初の利益目標がそのまま維持されたわけではない。ROEと自社株買い額の明確な数値約束は確認できない。
配当方針は引き上げられ、2027年3月期には配当性向35%以上を維持するという具体的な目標がある。2026年3月期の配当総額は約2.84億円で配当性向35.4%。2027年3月期の業績予想に基づく配当性向は約41.3%である。株主優待も続けており、一定期間保有する300株以上の株主に年間6,000円相当を贈る。2027年3月末の権利分から品目はデジタルギフトへ変わる。全保有者が対象ではないため、予測では対象約1,500人、年間費用約0.09億円を暫定的に還元へ加えている。
事業提携は活発だ。JR東日本情報システム、キヤノンマーケティングジャパン、岩手銀行などと関係を築き、2026年9月には兼松エレクトロニクスからグローバルセキュリティエキスパートへ60万株が移った。これは既存株の相対譲渡であり、TOBや発行済株式の増加ではない。2025年3月期には関係会社株式の売却益が純利益を押し上げていた。投資先の整理と現金回収は良いが、短期の売却益を永続する稼ぐ力には含めない。
過去5年で配当は増えたものの、配当性向の中央値は50%に達せず、株数も一方向に大きく減少していない。長期に積み上がる余剰現金が株主へ戻る割合は75%と考える。大型買収があるなら、支払額と買収後の増分利益が資本コストを超えるかを案件ごとに問うべきだ。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
同社を単純な技術者派遣とみなすのは過小評価だ。公共交通や医療のシステムには、間違いが社会的な損失になる仕事が多い。仕様を読み、旧設備との接続を確認し、顧客の責任者と交渉して稼働まで仕上げる力は、コードを自動生成するだけでは代わらない。日本電気やJR東日本情報システムなどとの長い取引、Medlasを通じた医療現場の経験は案件獲得の入口になる。
2026年3月期のシステム開発は売上が二桁伸び、SIは高い利益率を維持した。高付加価値のERP導入、クラウド、業務テンプレートが増えれば、同じ従業員数でも請求できる成果は大きくなる。AIは労働を奪うだけでなく、不採算な繰り返し作業を減らし、顧客へ提案できる社員を増やす手段にもなる。岩手銀行との地域DX、グローバルセキュリティエキスパートとの提携は、これまで届かなかった顧客へ進む道を開く。
現金が潤沢なことも見逃せない。給与と外注費の資金繰りに窮さず新規事業を試せるうえ、配当性向35%以上を目標とする還元が続く。もし同社がプライム契約の比率を伸ばし、AIで節約した時間を成果報酬や自社製品の収益に変えれば、売上の拡大以上に利益が伸びる。長期の価値は工数削減だけを見た予測を超える。
慎重な見方
会社の強みは実際には受託した開発の管理と、ERP製品の導入という人手の束だ。2026年3月期には売上の約9割がシステム開発とSI事業であり、これらの多くは工数と人員に収益が連動する。顧客はAIエージェントで要件からコード・テスト・運用まで進めるようになり、IT投資総額を増やしても人月の発注を減らせる。SAPなどの製品が業務操作を自動化すれば、外側で構築する画面や手順も簡素になる。
大口の日本電気とNECソリューションイノベータだけで売上の約23%を占める。発注元自身がAIで生産性を高めた場合、協力会社に発注する仕事は真っ先に再計算される。医療システムに切り替え費用はあるが、会社が独占するデータや解約率の証拠は乏しい。大手競合には販路とクラウド製品の両方で差があり、価格競争に巻き込まれる余地が大きい。
直近の利益率が歴史的な高水準に戻ったことも、永続的な優位の証拠ではない。2027年3月期の第1四半期は受注が増えながら赤字で、本社移転費用のような固定費を先に負担する構造が見えた。現金は豊富でも、今までの自己資本を新規事業や持ち合いの維持に使えば株主に戻らない。長期の営業利益が細れば、簿価よりも稼ぐ力と税引き後に売れる資産で評価するしかない。
どちらに重みを置いたか
医療・運輸・公共の経験と手元現金は確かな強みであり、即座に事業が消える見通しには同意しない。ただし、利益率を改善した年に元請けへの依存も高く、自社製品の継続率も見えない。AIで減る工数は中立の数量へすでに織り込み、さらに同じ理由で資本コストを上げていない。そのうえで、顧客への直販転換に失敗する会社固有の不確実性を反映し、楽観側27%に対して下側39%へ確率を寄せた。厚い現金を考慮しても現在の値段に十分な安全域はなく、判断はやや割高となる。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 1,524 円128 億円(+ 還元の換算額還元の合計 296 円25 億円)。 今の値に割り戻すと 965 円81 億円、今との差 −5.7%、 期待の年率 +6.6%(資本コスト 7.2%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 9% | 3,022 円253 億円 | 514 円43 億円 | +245.6% | +14.7% | 318 円27 億円 |
| やや楽観 | 18% | 2,418 円202 億円 | 418 円35 億円 | +177.2% | +11.9% | 510 円43 億円 |
| 中立 | 34% | 1,652 円138 億円 | 334 円28 億円 | +94.2% | +7.6% | 676 円57 億円 |
| やや悲観 | 25% | 750 円63 億円 | 215 円18 億円 | −5.6% | −0.6% | 241 円20 億円 |
| 悲観 | 14% | 478 円40 億円 | 48 円4 億円 | −48.6% | −6.7% | 74 円6 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,524 円128 億円 | 296 円25 億円 | +77.8% | +6.6% | 1,819 円152 億円 |
今の株価時価総額 1,023 円86 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 9% プライム化が軌道に乗り工数減を吸収 利益 16 億円 · PER 13.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 3,022 円253 億円
公共・運輸の既存案件が安定し、元請けから直接顧客への転換が進む。日本電気系の発注は維持されるが、同時に岩手銀行経由の地域DXや新しいセキュリティ提案が受注につながる。医療のキーウェアメディカルはMedlasの導入・保守を広げ、既存顧客の乗り換え負担を生かす。
AIがプログラム生成や検証を簡素化しても、その節約分を請負単価の全面値下げに奪われず、顧客の複雑な移行業務や保証責任として回収できる。ERPのテンプレートと現場理解に付加価値を認められ、売る人月はわずかな減少で済む。物価による契約価格の改定も大部分を通せる。
製品を買収して急拡大するより、提携先との共同案件を地道に増やす。収益性の高いSIの比率が上がり、開発の手戻りも減る。これは人月型でAIの逆風を克服する最良に近い道筋だが、未公表のAI製品売上を先取りする話ではない。
- システム開発事業:数量 8,773(年間提供可能な自社技術者換算人月(746人×12か月、外注・非稼働は単価に内包))× 価格 0.02(自社技術者換算人月当たりの実現売上(億円、人件費・外注や完成請負を含む))→ 売上 176 億円・営業利益 11 億円。2026年の換算人月×0.98、実現単価×1.34。AIエージェント代替と元請け交渉力を数量・単価へ反映。
- SI事業:数量 3,249(年間提供可能な自社技術者換算人月(285人×12か月、外注・販売分は単価に内包))× 価格 0.03(自社技術者換算人月当たりの実現売上(億円、ERP製品・ライセンス再販も混在))→ 売上 87 億円・営業利益 9 億円。2026年の換算人月×0.95、実現単価×1.34。AIエージェント代替と元請け交渉力を数量・単価へ反映。
- その他事業(運用保守・製品販売等):数量 1,676(年間提供可能な自社人員換算人月(144人×12か月、機器・保守契約の実数は非開示))× 価格 0.02(自社人員換算人月当たりの混合売上(億円、保守・販売・研修を含む))→ 売上 32 億円・営業利益 2 億円。2026年の換算人月×0.97、実現単価×1.34。AIエージェント代替と元請け交渉力を数量・単価へ反映。
倍率:AIエージェント代替のため10年後以降の名目成長g=0%、k=7.25%。ROEがkを上回る場合でも新規投下資本の超過利潤は弱い堀として3分の1だけ残るが、g=0の式は1/k=13.79倍となる。上限そのものを採用する。既存余剰現金12.0億円の利息税後相当1.4%を利益から除き、帳簿価額の75%だけを加算する。将来の留保超過現金は自動計算で別途扱う。
確率:会社が既存顧客との価格改善を示し、直販・製品型への転換方針もあるので成功可能性はある。ただし工数型の数量が10年ほぼ減らず、営業利益率が高まる条件は厳しい。
やや楽観 18% 高度ERPと直接契約が工数減を緩和 利益 12 億円 · PER 13.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 2,418 円202 億円
既存の公共交通・官公庁・基幹系の顧客には更新需要が続き、SAPやBiz∫の導入には一定の人の判断が残る。キーウェアが提案から運用まで請け負う案件が増え、直接契約では継続保守や新機能導入の相談が入りやすくなる。医療の専門子会社とセキュリティの提携も小さく利益を積む。
AIエージェントによるコード作成と操作自動化で必要な工数は減るが、残る高難度案件で物価に近い単価改定を実現する。システム開発の提供人月は10年で17%、SIは15%減る。それでも二重開発の削減と固定価格案件の採算管理で利益率が底上げされる。
大型買収で株式を増やすことはなく、配当を保ちつつ余剰現金を一部蓄える。市場の値付けが無理に高まらなくても、会社が残す利益は足元を超える。ただしSAP等の主要製品から独立した収益源への転換は部分的にとどまる。
- システム開発事業:数量 7,430(年間提供可能な自社技術者換算人月(746人×12か月、外注・非稼働は単価に内包))× 価格 0.02(自社技術者換算人月当たりの実現売上(億円、人件費・外注や完成請負を含む))→ 売上 148 億円・営業利益 8 億円。2026年の換算人月×0.83、実現単価×1.33。AIエージェント代替と元請け交渉力を数量・単価へ反映。
- SI事業:数量 2,907(年間提供可能な自社技術者換算人月(285人×12か月、外注・販売分は単価に内包))× 価格 0.03(自社技術者換算人月当たりの実現売上(億円、ERP製品・ライセンス再販も混在))→ 売上 77 億円・営業利益 7 億円。2026年の換算人月×0.85、実現単価×1.33。AIエージェント代替と元請け交渉力を数量・単価へ反映。
- その他事業(運用保守・製品販売等):数量 1,469(年間提供可能な自社人員換算人月(144人×12か月、機器・保守契約の実数は非開示))× 価格 0.02(自社人員換算人月当たりの混合売上(億円、保守・販売・研修を含む))→ 売上 27 億円・営業利益 1 億円。2026年の換算人月×0.85、実現単価×1.30。AIエージェント代替と元請け交渉力を数量・単価へ反映。
倍率:AIエージェント代替のため10年後以降の名目成長g=0%、k=7.25%。ROEがkを上回る場合でも新規投下資本の超過利潤は弱い堀として3分の1だけ残るが、g=0の式は1/k=13.79倍となる。上限そのものを採用する。既存余剰現金12.0億円の利息税後相当1.4%を利益から除き、帳簿価額の75%だけを加算する。将来の留保超過現金は自動計算で別途扱う。
確率:工数の減少を抑えながら契約単価を高めるには、ERP高付加価値化と安定した顧客更新が必要。現在の営業改善が半分程度持続する余地を評価した。
中立 34% AIに押される工数と残る基幹需要 利益 8 億円 · PER 13.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,652 円138 億円
企業や官公庁の基幹システムはなくならない。医療や運輸では安全な移行に責任を取る会社が必要であり、日本電気グループとの協業や既存ERPの保守案件も続く。しかし、新しく作るプログラムと画面は大幅に減り、AIを使う発注元は従来より少ない人月を買う。
システム開発の換算人月は10年で35%減り、SIは30%、その他は28%減る。価格は名目では上がるが物価上昇34%には届かず、AIによる作業短縮が値下げ圧力となる。自社製品の保守収入は役立つものの、全社の「正本」と呼べるほどの独占・継続率の証拠はそろわない。
経営は請負案件の赤字を抑え、SAP等の高難度導入を残すため、大幅な赤字転落は避ける。2026年3月期の利益改善を全て失うわけではないが、利益の成長は止まる。配当性向35%程度で還元し、現金を守りながら小規模な医療・セキュリティ案件を続ける。
- システム開発事業:数量 5,819(年間提供可能な自社技術者換算人月(746人×12か月、外注・非稼働は単価に内包))× 価格 0.02(自社技術者換算人月当たりの実現売上(億円、人件費・外注や完成請負を含む))→ 売上 114 億円・営業利益 5 億円。2026年の換算人月×0.65、実現単価×1.30。AIエージェント代替と元請け交渉力を数量・単価へ反映。
- SI事業:数量 2,394(年間提供可能な自社技術者換算人月(285人×12か月、外注・販売分は単価に内包))× 価格 0.03(自社技術者換算人月当たりの実現売上(億円、ERP製品・ライセンス再販も混在))→ 売上 61 億円・営業利益 5 億円。2026年の換算人月×0.70、実現単価×1.28。AIエージェント代替と元請け交渉力を数量・単価へ反映。
- その他事業(運用保守・製品販売等):数量 1,244(年間提供可能な自社人員換算人月(144人×12か月、機器・保守契約の実数は非開示))× 価格 0.02(自社人員換算人月当たりの混合売上(億円、保守・販売・研修を含む))→ 売上 22 億円・営業利益 1 億円。2026年の換算人月×0.72、実現単価×1.22。AIエージェント代替と元請け交渉力を数量・単価へ反映。
倍率:AIエージェント代替のため10年後以降の名目成長g=0%、k=7.25%。ROEがkを下回るため再投資に超過価値を認めず、稼ぐ力の上限1/k=13.79倍を採用する。既存余剰現金12.0億円の利息税後相当1.4%を利益から除き、帳簿価額の75%だけを加算する。将来の留保超過現金は自動計算で別途扱う。
確率:公共・運輸・医療の顧客基盤が残りつつ、価格と工数の交渉力が発注者へ移る中心像。人月・工数型の指定範囲で数量を0.65〜0.72倍、価格を1.22〜1.30倍とした。
やや悲観 25% AI内製化と大口発注縮小で採算悪化 利益 4 億円 · PER 11.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 750 円63 億円
NECグループを含む大手顧客が開発手順を標準化し、自社内のAIエージェントでテストと保守を進める。キーウェアは公共・医療などで一定の案件を維持するが、保守や運用の単純作業が大幅に減る。SAPを含むERP製品の標準機能も増え、導入工程の発注単位が小さくなる。
残る仕事は複雑で、人月当たりの給料・教育・セキュリティ費用は重い。単価は10年かけても物価上昇ほど伸びず、会社は採算を守るため採用や協力会社の発注を絞る。それでも既存社員の稼働率と受注単価が下がり、営業利益は現状の半分以下になる。
経営は大型M&Aに踏み切らず、保有現金から改革費用を支出する。利益が減るので配当総額も抑え、株主優待の支出も部分的に縮める。社会的に必要なシステムを作り続けても、長く持つ株主の取り分は小さくなる。
- システム開発事業:数量 4,924(年間提供可能な自社技術者換算人月(746人×12か月、外注・非稼働は単価に内包))× 価格 0.02(自社技術者換算人月当たりの実現売上(億円、人件費・外注や完成請負を含む))→ 売上 85 億円・営業利益 3 億円。2026年の換算人月×0.55、実現単価×1.15。AIエージェント代替と元請け交渉力を数量・単価へ反映。
- SI事業:数量 1,881(年間提供可能な自社技術者換算人月(285人×12か月、外注・販売分は単価に内包))× 価格 0.02(自社技術者換算人月当たりの実現売上(億円、ERP製品・ライセンス再販も混在))→ 売上 44 億円・営業利益 3 億円。2026年の換算人月×0.55、実現単価×1.17。AIエージェント代替と元請け交渉力を数量・単価へ反映。
- その他事業(運用保守・製品販売等):数量 1,037(年間提供可能な自社人員換算人月(144人×12か月、機器・保守契約の実数は非開示))× 価格 0.02(自社人員換算人月当たりの混合売上(億円、保守・販売・研修を含む))→ 売上 16 億円・営業利益 0 億円。2026年の換算人月×0.60、実現単価×1.10。AIエージェント代替と元請け交渉力を数量・単価へ反映。
倍率:工数需要が損なわれ、ROEが資本コスト7.25%に届かず、将来の再投資に超過価値を認めない。稼ぐ力の上限1/k=13.79倍に対し、追加の案件採算悪化を反映し11.0倍とした。既存余剰現金は12億円の75%である9億円の利息税後相当1.4%を利益から除き、帳簿価額の75%だけを加算する。将来の留保超過現金は自動計算で別途扱う。
確率:2大顧客への集中と独自ライセンス売上の薄さは需要変化を遅れて受けやすい。単価改定が遅れるケースを想定し、中立より大きな数量減を見込む。
悲観 14% 基幹開発の外注そのものが半減 利益 −2 億円 · PBR 0.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 478 円40 億円
大手顧客がAIエージェントで開発から運用まで内製化し、受託先の再編を進める。NECグループで契約の統廃合が起き、キーウェアは従来の開発工数の半分以上を失う。ERP導入でも製品ベンダーの標準AI機能に置き換えられ、医療の一部顧客は標準化された電子カルテ基盤へ移る。
売上は現在の半分弱まで縮み、給料、拠点費、システム保守の固定費を吸収できない。管理職や熟練者を短期間で削るのは難しく、受注を取りにいくほど値引きと不採算の危険が増す。会社は縮小と再編に費用を使い、2036年時点では営業赤字となる。
再建の過程で医療やセキュリティ事業の売却・統合、または大手からの買収提案はありうるが、特定の買付価格を前提にしない。後半は配当を止め、初期のわずかな還元だけが残る。株主にとっては継続企業としての稼ぎよりも、今ある現金と回収可能な債権・資産の処分価値が重要になる。
- システム開発事業:数量 3,760(年間提供可能な自社技術者換算人月(746人×12か月、外注・非稼働は単価に内包))× 価格 0.02(自社技術者換算人月当たりの実現売上(億円、人件費・外注や完成請負を含む))→ 売上 59 億円・営業利益 −1 億円。2026年の換算人月×0.42、実現単価×1.04。AIエージェント代替と元請け交渉力を数量・単価へ反映。
- SI事業:数量 1,505(年間提供可能な自社技術者換算人月(285人×12か月、外注・販売分は単価に内包))× 価格 0.02(自社技術者換算人月当たりの実現売上(億円、ERP製品・ライセンス再販も混在))→ 売上 31 億円・営業利益 0 億円。2026年の換算人月×0.44、実現単価×1.03。AIエージェント代替と元請け交渉力を数量・単価へ反映。
- その他事業(運用保守・製品販売等):数量 864(年間提供可能な自社人員換算人月(144人×12か月、機器・保守契約の実数は非開示))× 価格 0.01(自社人員換算人月当たりの混合売上(億円、保守・販売・研修を含む))→ 売上 12 億円・営業利益 0 億円。2026年の換算人月×0.50、実現単価×1.00。AIエージェント代替と元請け交渉力を数量・単価へ反映。
倍率:営業赤字のためPERで事業を資本化しない。2026/03の自己資本80億円に対して0.50倍=40億円。10年後の帳簿自己資本68億円には床の倍率を掛けず、純現金と回収可能資産の税後清算価値40億円を根拠とする。過去のPBR安値は参照しない。
確率:自動化による人月の消失とNEC経由の案件統廃合が重なる非連続の負け筋。下に寄せる理由:大口発注先の集中と低い自社製品の開示水準を踏まえ、一定の確率を残した。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
システム開発事業
公共、運輸、医療、IoTなどの受託ソフトウェア開発。売上の大半は人月・工数型であり、AIエージェントがコードと検証を代替する。
| 数量年間提供可能な自社技術者換算人月(746人×12か月、外注・非稼働は単価に内包) | 価格自社技術者換算人月当たりの実現売上(億円、人件費・外注や完成請負を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 8,952 | 0.02 | 134 | 5 |
| 10 年後 中立 | 5,819 | 0.02 | 114 | 5 |
取り方:2026/03有報のシステム開発セグメント在籍746名と外部売上134.39475億円を起点に、746×12=8952人月、134.39475÷8952=0.015014億円/人月を推定。実績の請求人月は非開示で、外注費・稼働率・固定価格案件は実現単価に含む。AIエージェント代替の人月・工数型で、中立数量0.65倍、価格1.30倍、g_long名目0%。市場の参考分母はIDC国内ITサービス2025年7兆5663億円、広義の売上相当シェア約0.18%。
SI事業
SAP、Biz∫、IFS等のERP導入、基幹システム刷新と直接顧客向けの構築。売上の中心は人月・工数型で、操作画面や導入作業がAIの代替対象となる。
| 数量年間提供可能な自社技術者換算人月(285人×12か月、外注・販売分は単価に内包) | 価格自社技術者換算人月当たりの実現売上(億円、ERP製品・ライセンス再販も混在) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 3,420 | 0.02 | 68 | 6 |
| 10 年後 中立 | 2,394 | 0.03 | 61 | 5 |
取り方:2026/03有報のSIセグメント285名と外部売上68.15536億円から、285×12=3420人月、売上÷換算人月=0.01993億円と推定。元請け比率・ERPライセンス単価・案件数の開示がないため実際の顧客請求単価ではない。記録の正本に当たる独占的データや低解約率の証明が二つ以上なく、AI代替の人月・工数型に分類。中立数量0.70倍、価格1.28倍。国内ITサービス市場を参考分母とした広義の売上相当シェアは約0.09%。
その他事業(運用保守・製品販売等)
運用・保守サポート、機器・パッケージの販売、コンサルティング、新規領域が混ざる。成果や管理の自動化と席課金の圧力を受け、部分的な規制対応の強みだけでは強い堀とみなさない。
| 数量年間提供可能な自社人員換算人月(144人×12か月、機器・保守契約の実数は非開示) | 価格自社人員換算人月当たりの混合売上(億円、保守・販売・研修を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,728 | 0.01 | 25 | 1 |
| 10 年後 中立 | 1,244 | 0.02 | 22 | 1 |
取り方:2026/03有報のその他事業144人と外部売上24.69895億円から144×12=1728人月換算、1人月当たり0.01429億円と逆算。保守契約件数、販売台数、機器単価は非開示であり、数量は業務提供能力の代理指標。保守運用・コンサル中心の人月型と一部UI型・再販の混合。中立数量0.72倍、価格1.22倍(価格が物価1.34倍に届かないのはAIによる運用・画面の値下げ圧力)。広義市場での売上相当シェアは約0.03%。
リスクと懸念
AIエージェント代替による人月需要の消失
コード生成、テスト、移行、ヘルプデスク、ERPの操作をエージェントが行うと、従来の人月契約は売上ではなく削減対象になる。売上の約9割を占める開発とSIで発注工数が減れば、物価で単価を引き上げても数量減を埋められない。自社AI製品の有償導入実績が金額で示されるまでは、AIを成長材料として二重に数えない。
NECグループに集中する大口発注
日本電気とNECソリューションイノベータの2社で2026年3月期の連結売上の約22.8%を占める。発注元が基幹更新を先送りしたり、AI導入で協力会社への開発工数を減らしたりすると、社内の稼働率に直接響く。長年の取引は参入障壁になるが、発注条件を自社で決められるという意味ではない。
ERPベンダーとクラウド基盤への依存
SIの中心はSAP、Biz∫、IFSなど他社製品の実装である。メーカーが移行ツールやAIエージェント機能を標準提供すると、手作業の導入や画面設定の対価は下がる。直販顧客を増やしても、ソフトウェアの権利や利用料を同社が保有しなければ、成果から取れる利益の上限は限られる。
小規模な自社製品に過度な堀を認める危険
Medlasなど医療システムの経験は評価できるが、製品売上、ライセンス数、契約継続率、法令改正ごとの値上げ実績が十分に開示されていない。医療情報の標準化が進めば、接続のしやすさがむしろ乗り換えの容易さを高める可能性もある。強い堀と認めるには独立した証拠が必要だ。
固定費と不採算請負による利益率の振れ
自社技術者を抱えるため、受注減少時も給与と育成費は急には下がらない。2027年3月期第1四半期は本社移転費用の影響も重なって営業赤字になった。案件検収の遅延、仕様の変更、外注単価上昇が重なれば、年間営業利益率5%前後は簡単に失われる。2028年3月期以降の新リース会計による表示変更にも注意する。
現金・政策保有株と資本配分の効率
純現金約34億円は安心材料だが、給与と外注費を払う運転資金が含まれる。政策保有株、関係会社への出資、買収や新規領域への投資が資本コストを上回るかは別問題である。2026年9月の株主間譲渡は自社株買いではなく、その資金が既存株主に戻ったわけではない。現金の二重計上を避ける必要がある。
今後の分かれ目
- システム開発とSIの人月数が減っても、成果報酬・自社製品売上が金額で増え続けたら
- AI代替による数量縮小を緩め、10年以降の成長率も見直す。ただし売上への実寄与と粗利益を確認してから楽観側の確率を引き上げる。
- 日本電気・NECソリューションイノベータ向けの合計売上比率が大きく低下し、直販受注が増えたら
- 取引集中による下振れを減らし、SIの数量維持と交渉力を改善する。直販の粗利益率が伴うことを条件とする。
- Medlasなどの解約率・移行期間・独自データ収益・法令対応による値上げが複数定量開示されたら
- 実際に立証された部分だけを記録の正本型に分け、価格の伸びと長期のgを引き上げる。会社全体の受託開発には流用しない。
- 営業利益率が複数年連続で6%を超え、元請け案件の粗利益率も上昇したら
- 固定価格案件の管理と直接契約の成功と判断し、中立の営業利益率を上方修正する。単年の検収の偏りだけでは変更しない。
- 受注残が縮み、同時に技術者の稼働率とSIの単価が下がったら
- AI代替が需要の中身に及び始めた可能性を重く見て、やや悲観・悲観の数量へ近づける。人件費の削減余地も同時に確かめる。
- 配当性向35%以上を維持しつつ、純現金から継続的な自社株買い・増配を行ったら
- 余剰現金の株主への帰属を75%から100%に近づけて再評価する。単発の持ち合い株譲渡だけでは変更しない。
見ておくもの
- 事業別受注高と売上高、技術者数からみた実質の受注人月と単価
- NECとNECソリューションイノベータの売上構成比と発注方針
- ERPプライム案件比率、請負型開発の粗利益率、不採算案件の発生件数
- Medlas・キーウェアメディカルの自社製品売上、契約継続率、価格改定実績
- GSX提携によるセキュリティ領域の有償売上・受注額と付加価値
- 配当性向35%以上の実行、自己株式数、純現金と政策保有株の増減
- AIエージェントによる工数削減が実際の契約条件に反映された割合
倍率と資本コストの決め方
最初に2026/03の3事業の実人員と外部売上から数量・実現単価を作り、当面の受託開発・ERP導入の実質人月がAIで縮む5通りの道筋を積み上げた。強気でも売る人月は現状以下とし、発表済みの金額を伴うAIエージェント外販がない限り楽観にAI売上を足していない。資本コストは7.25%、弱い堀の残存超過利潤は3分の1だが、10年より先のgを0%としたため楽観から中立の正当化PERは利益÷kの約13.79倍である。足元のPERと同業PERから倍率を作っていない。
純現金のうち12億円だけを非事業用とし、その税後利息相当を純利益の倍率から外して戻り方75%で加えた。将来蓄積する余剰現金は自己資本と二重に掛けず、指定の自動加算に委ねる。悲観40億円は将来の自己資本ではなく、今の売却可能な資産から負債・回収損・閉鎖費用を控除した床に相当する。2028/03期からの新リース基準は負債と利益表示を変えるため、比較の利益は現在の賃料費用計上ベースで統一する。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。無リスク金利3%、株式リスクプレミアム4.5%、品質−0.25%。赤字事業の継続などの窮迫状態にはないため追加上乗せは0。