結論
すららネットは、児童生徒が自分の理解度に合わせて学べるデジタル教材を、学校、学習塾、家庭に提供する会社だ。筆者の結論は割高である。教育支援そのものは10年後も必要とされるが、その需要を同社が十分な利益に変えられるかについて、現在の株価にはまだ安全域がない。
かつては高い営業利益率を誇った。ところが2020年12月期の営業利益5.4億円は、2025年12月期には0.7億円まで減った。2026年12月期はさらに2.8億円の営業赤字が予想される。公立学校向けの利用IDは2025年末の約19.7万から2026年6月末には約12.9万へ減り、前年度の契約終了を新規受注で埋められていない。
強みは、基礎学力に不安のある子どもや不登校の子どもに寄り添ってきた教材と運用経験にある。しかし、生成AIが問題の説明、理解度判定、個別指導を低価格で担う時代には、操作画面と学習問題だけで以前の利益率を保つのは難しい。2026年に投入したSurala-iも、現時点では追加収益を生む競争優位が証明された段階ではない。
2025年末の純現金約7.7億円は大切な支えだ。ただし、ソフトウェア開発投資が重く、現金の全額を株主に返せるわけではない。10年後の収益力と換金可能な資産から求めた現在価値は約8.7億円で、基準時点の時価総額約15.6億円を約44%下回る。上場維持基準への対応も含め、事業の回復と少数株主への価値の帰属は分けて考えたい。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主の見方では、最初に問うべきことは「子どもが学ぶために、この会社だけが提供できるものは何か」である。学び直し、不登校への対応、発達特性に応じた支援は、10年後も必要だろう。しかし必要なサービスであることと、提供会社が高い利益を上げ続けられることは同じではない。AIが問題の説明や個別指導を安く提供するほど、この区別は重要になる。
独自教材と学校での運用経験は評価する。大きな教育企業には手が届きにくい子どもの課題に対応してきた実績もある。ただし、いったん利用した学校が長く離れないという証拠は弱い。公共向け契約の減少は、更新時に顧客が別の選択をできることを示した。価格を上げても離れない力が証明されるまでは、堀の幅を広く見積もらない。
次に問うのは、利益がどれだけ株主の自由になる現金へ変わるかである。ソフトウェア開発費は、会計上の費用と現金支出の時期が一致しない。研究開発と保守を止めれば競争に負けるため、利益のすべてが配当や自社株買いに使えるわけではない。近年の利益低下と開発投資の増加を見る限り、将来の増分資本利益率を高く想定する根拠は足りない。
会社が保有する現金と、自己株式取得をしてきた姿勢には価値がある。それでも、低いROEが続けば現金を事業に使うたびに資本の価値が薄れる。株式を長く保有する理由は、株価が過去の高値から下がったことではなく、収益が確実に積み上がる見通しと、その見通しに対する十分な安全域にある。現状では後者が不足している。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心は、無学年式の学習教材「すらら」と、学校向けの「すららドリル」などの利用料である。教材は理解できないところまで戻って学び直せる。学校や塾には授業外での学力補充や個別支援の仕組みを提供し、家庭には教材と「すららコーチ」による学習支援を届ける。不登校、発達特性、外国ルーツの児童生徒への対応も重要な用途になっている。
会計上はeラーニング関連事業が連結売上高の9割以上を占めるため、詳細な報告セグメントは省略されている。ただし経営資料には顧客経路別の売上がある。2025年12月期は私立学校等向けが6.52億円、公共向けが1.99億円、学習塾など民間教育向けが6.18億円、家庭向けが3.62億円、海外向けが0.13億円だった。これらの合計と連結売上高との差額約0.88億円は、子会社の外販や連結調整を含む残差として別に扱う。
数量の手掛かりは利用IDと導入校舎数である。2025年末には公共向け約19.7万ID、私立学校等向け約4.7万ID、民間教育向け約1.7万ID、家庭向け約3,300IDがあった。公共向けでは学校単位や自治体単位の契約が多く、年度をまたぐ更新や補助事業の終了が利用数を大きく動かす。2026年上期の急減は、需要が毎年自動的に積み上がる定額サービスではないことを示した。
子会社Fantamstickは知育アプリや受託開発を手掛ける。こちらには技術資産だけでなく、人が設計し制作する工数を売る性格がある。AIによる開発工程の自動化は、親会社の教材とは別の経路で収益を圧迫する。海外ではカンボジアの「Surala Math」や日本語教育の展開があるが、現状の売上規模は小さく、国内事業の減速を埋める柱には育っていない。
ソフトウェア企業だから設備負担が軽いとも言い切れない。次世代教材の開発費は先行して発生し、一部は無形固定資産に計上される。2026年上期だけでも無形固定資産の取得に約3.74億円を支出した。教材を更新し続けなければ顧客が離れる一方、更新に投じた資金が次の売上や価格に結び付く保証はない。
優良さと弱いところ
同社の競争力は、難しい問題を解く技術そのものより、勉強につまずいた子どもが学び続けられる仕組みにある。約20万問規模の教材資産、学習履歴の蓄積、学校や家庭での運用経験は簡単に一から作れない。不登校や発達特性への支援では、先生や保護者の理解を得て使われることにも価値がある。ただし、これらが顧客の解約を確実に防ぐほど強い堀になっているかは別問題だ。
値決め力は強くない。公共市場では自治体の予算、調達方式、補助金の有無が導入と更新を左右する。学校向けにはベネッセのミライシードなど、販売網と支援体制を備えた競合がいる。低解約率の継続開示や、価格改定を繰り返し通した実績も確認できない。学習履歴や問題集は独自資産だが、他社に移せない規制上の記録の正本とは評価しない。
過去のROEの中央値は14.4%だが、それを将来の普通の姿とはしない。2020年から2025年に自己資本が大きく増えたのに、営業利益は減少した。再投資した資本が利益を押し上げていない現状では、増分の資本利益率が資本コストを上回るという証拠が弱い。新しい教材に投資するたびに、旧教材の価値が薄れる可能性もある。
借金に追われる財務ではない点は評価できる。2025年末の純現金は自己資本の約35%に当たる。ただし2026年上期には5億円の短期借入れを実行し、開発投資も続いた。残った現金だけを見て財務余力が不変だと判断するのは危険だ。教育上の社会的価値を認めながら、株主の取り分となる利益については慎重に評価する。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の教育需要は、一律の授業から個別最適な学習支援へ移っている。文部科学省の調査では小中学校の不登校児童生徒は35万人を超え、日本語指導を必要とする子どもへの対応も課題になっている。すららネットが得意とする学び直しには追い風だ。しかし少子化によって学習者の母数は減り、教材への支出が増えても、その利益をどの企業が得るかは競争で決まる。
矢野経済研究所による2025年度の国内eラーニング市場は約3,924億円である。法人向け約1,294億円、個人向け約2,630億円という内訳だ。ただし企業研修、語学、資格、補習などを含む広い市場であり、これをそのまま同社の学校教材の対象市場とみなしてはならない。学校向けの比較には、児童生徒数、学校数、自治体の採択数を使う方が実態に近い。
公立小中学校約3万校を比較母数とした場合、2025年末の公共向け導入1,652校は約5.5%、2026年6月末の1,015校は約3.4%に相当する。厳密には学校種別や導入範囲の違いがあり、独占的な市場シェアではない。一方、ベネッセのミライシードは2026年4月時点で約1万2,000校、410万人以上の利用を公表している。自治体向けでは、この規模と販売網の差を無視できない。
私立学校、通信制高校、学習塾、フリースクールでは市場の切り方が異なる。私立学校等向け274校、民間教育向け1,261校舎という実績は足場にはなるが、競合を含めた同一定義の契約数と料金が公表されておらず、売上シェアを正確には出せない。atama plus、スタディサプリ、ベネッセ系教材や既存の塾向けシステムが選択肢となり、同じ生徒が複数教材を使うこともある。
今後10年の大きな変化はAIである。問題を生成し、解法を説明し、学習履歴を読み、次の課題を提案するまでをAIエージェントが担えば、利用者が特定の教材画面を操作する価値は下がる。矢野経済研究所も知識伝達だけでは差別化しにくいと指摘する。人による伴走、不登校支援、教育効果の検証まで提供できる企業には機会が残るが、それを利益率の高い事業にできるかが勝負になる。
資本政策と M&A
配当は会社設立以来実施しておらず、2026年12月期も無配予想である。一方、近年は自己株式取得を行ってきた。2026年6月末の自己株式は株式給付信託保有分を含め約38.5万株で、2021年末との比較では流通株数が5%以上減っている。赤字期にも一律の配当を約束せず、利益や現金の状況を見ながら買い戻す形である。
2026年3月に示した中期方針では、2028年度までに公共向けIDを70万規模にする目標を掲げた。中期的な営業利益率二桁への回復も目指している。ただし、2028年の連結売上高、営業利益額、ROEについて拘束力のある数値目標は確認できず、配当性向、DOE、総還元性向、自社株買い額についても数字の約束なしである。しかも2026年8月には同年度の売上と利益予想が大幅に下方修正された。目標の高さより、契約の積み上がりを確かめたい。
資本配分で最も重いのは開発投資だ。Surala-iへの資金投入は将来の競争力を守るために必要だが、既存サービスからの移行が遅れれば減価償却や減損が株主利益を削る。子会社Fantamstickのアプリ事業も、内製化やAI開発の進展を踏まえて投資採算を監視する必要がある。大規模買収によって利益を回復する前提は採らない。
株主優待には自社教材や子育て支援サービスの割引受講がある。実際の利用者数と費用は非開示なので、将来の還元額には年50万円程度という小さな費用見合いを仮置きした。余剰現金の株主への戻り方は、過去の買戻し実績から100%とするが、事業に必要な開発資金は余剰に含めない。
もう一つの論点は上場の維持だ。会社は2027年12月末を判定日とする時価総額40億円の基準に現状では届いておらず、改善期間を経ても基準を満たせなければ上場廃止となる可能性を有報に記載している。2026年10月時点で上場廃止が決定したわけではないが、少数株主にとって無視できない資本政策上の分岐点だ。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
学力格差や不登校は解決が進んでいない。学校に通えない子どもや、集団授業では理解が追いつかない子どもに、無学年式の学習教材を届ける意義は大きい。すららネットは単に問題を画面に出すだけではなく、保護者や先生が子どもの学習を支える運用方法を育ててきた。長年蓄積した教材と学習履歴は、新規参入企業が短期間で模倣しにくい資産である。
2026年に投入したSurala-iが従来より使いやすくなり、理解度予測などの機能が学校の成果につながれば、契約の再獲得も可能だ。公共向けでは大規模自治体への営業を強め、会社は2028年度に70万ID規模を目指している。現時点の減少は大型契約の更新時期と先行投資が重なった一時的な谷かもしれない。私立学校や通信制高校は新しい導入先となり、民間教育でも不登校対応の需要が広がる。
海外ではカンボジアの行政機関との協力や日本語教育の展開が進んでいる。現在は小規模だが、国内で作った教材を他国へ届けられる可能性はある。また、現金を保有し、株式数を減らしてきた点も見逃せない。回復した利益が開発費を上回れば、将来の買戻し余力が増える。
最も良い10年では、公共向けIDを2025年末の水準まで戻し、他の顧客層も維持する。単価についても教育効果に見合う小幅な上昇を実現する。10年後の売上は約22.4億円、営業利益は約3.9億円となり、利益から測った時価総額は約38.7億円に達する。この場合には、現在の値段を上回る価値が生まれる。
慎重な見方
公共向けIDの急減は、顧客の粘着性が予想以上に弱いことを示している。学校に導入されたという事実だけでは継続契約にならない。自治体は数年ごとに予算や調達方法を見直し、競合教材を採用できる。大手のベネッセは学校への販売網や教員研修の体制を持ち、同じ市場で圧倒的に大きい顧客基盤を築いている。
技術面でも環境は厳しい。生成AIは説明文、類題、個別のヒントを即座に作る。AIエージェントが既存の学習システムを操作せずに児童生徒と対話するようになれば、利用IDに料金を払う理由は薄れる。既存教材を全面的に置き換えられなくても、比較対象が安くなるだけで値上げは難しくなる。子会社の受託アプリ開発にも、同じAIによる工数削減が及ぶ。
すららネット自身、増えた自己資本を十分な利益に変えられていない。2025年の営業利益は過去の最良期から大きく落ち、2026年には営業赤字が見込まれる。新教材の開発で無形固定資産が膨らみ、投資回収が進まなければ減損が必要になる。借入れによって現金残高が増えた部分を、自由に配れる資産と誤認することもできない。
さらに、時価総額40億円の上場維持基準は、現状の株価からは大きな隔たりがある。事業が緩やかに立ち直っても、上場市場の変更、追加投資、株式政策が株主価値に影響する可能性が残る。構造的な敗北では、売上は約8.3億円まで細り、営業赤字が続く。帳簿上のソフトウェア資産が換金できなければ、最後に頼れるのは純現金と回収可能な流動資産だけになる。
どちらに重みを置いたか
教育課題に対する製品の適合性は評価するが、収益を守る力については慎重な見方が勝る。公共向けの実際の契約減少、2026年の赤字予想、開発投資の負担、強い競合という会社固有の事実が重い。楽観とやや楽観の確率を合計29%、やや悲観と悲観を41%とし、下側へ12ポイント寄せた。中立の数量にはAI代替による縮みをすでに織り込んでおり、確率や資本コストで同じ理由を重ねて引いていない。株価の安さに見える部分の相当額は純現金と過去の利益が支えているが、今後の利益を確信できるほどの安全域には届かない。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 254 円16 億円(+ 還元の換算額還元の合計 37 円2 億円)。 今の値に割り戻すと 146 円9 億円、今との差 −34.6%、 期待の年率 +2.9%(資本コスト 7.8%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 11% | 646 円41 億円 | 125 円8 億円 | +245.8% | +14.9% | 85 円5 億円 |
| やや楽観 | 18% | 364 円23 億円 | 63 円4 億円 | +91.5% | +7.4% | 77 円5 億円 |
| 中立 | 30% | 246 円16 億円 | 32 円2 億円 | +24.7% | +2.4% | 83 円5 億円 |
| やや悲観 | 26% | 113 円7 億円 | 8 円1 億円 | −45.3% | −6.0% | 32 円2 億円 |
| 悲観 | 15% | 92 円6 億円 | 0 円0 億円 | −58.5% | −8.4% | 14 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 254 円16 億円 | 37 円2 億円 | +30.4% | +2.9% | 291 円19 億円 |
今の株価時価総額 223 円14 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 11% 教育支援で再評価され、既存規模を取り戻す 利益 3 億円 · PER 12.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 646 円41 億円
Surala-iの学習成果が学校現場で評価され、不登校や基礎学力保障に強い教材として採用が回復する。公共向けでは大型自治体の失注を新規契約で補い、2035年に利用IDが2025年末の約19.7万へ戻る。2026年6月末から見れば大きな再獲得だが、会社が掲げた2028年度70万IDの達成までは前提にしない。
私立学校では通信制高校や専門学校を開拓し、学習塾でも個別指導の補助教材として使われ続ける。家庭向けは学習支援を重視する顧客が残り、顧客数を2025年並みに維持する。AIを自社の教材制作と指導支援に取り込み、価格を守る。ただしAIエージェント単独の有償売上が未確認なので、各ID型事業の数量は2025年を上回らせない。
営業利益率は17%台まで回復し、再投資した開発費が利益となって返り始める。利益が戻れば自己株買いも続き、10年間の累積純利益約16.1億円から約8.1億円を株主へ還元する。大型買収は行わず、既存教材の改良と海外の小規模展開に集中する。
- 公共ソリューション・公立学校:数量 196,565(年度末の公共向け課金対象利用ID数)× 価格 0.00(利用ID1件当たりの年間売上換算額(億円、導入時の費用等を含む実効単価))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。公共IDは2025年水準へ回復、実効単価は15%上昇。導入支援費を含む。
- 私立学校・通信制高校等:数量 47,427(年度末の私立学校等向け課金対象利用ID数)× 価格 0.00(利用ID1件当たりの年間売上換算額(億円、校舎固定費等込み))→ 売上 7 億円・営業利益 2 億円。私学・通信制向けは2025年のIDを維持し、単価は15%上昇。
- 民間教育・学習塾・フリースクール等:数量 17,109(年度末の民間教育向け課金対象利用ID数)× 価格 0.00(利用ID1件当たりの年間売上換算額(億円、校舎基本料や支援費を含む))→ 売上 7 億円・営業利益 2 億円。塾・フリースクールの利用IDを維持し、単価15%上昇。
- 家庭向け直接販売:数量 3,286(年度末の家庭向け課金対象利用ID数)× 価格 0.00(家庭向け利用ID1件当たりの年間売上換算額(億円、指導支援等込み))→ 売上 4 億円・営業利益 1 億円。家庭向けIDを維持し、支援サービスの価値で単価15%上昇。
- 海外・日本語教育:数量 3,901(年度末の海外課金対象利用ID数)× 価格 0.00(海外利用ID1件当たりの年間売上換算額(億円、実効単価))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。海外IDは2025年並み、価格15%上昇。小規模黒字化。
- アプリ・受託開発等の連結残差:数量 88.0(外部向け開発・制作の換算人月(推定))× 価格 0.01(人月当たりの外販売上換算額(億円))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。受託工数は増えず、専門性の高い開発の名目単価が32%上昇。
倍率:k7.75%、2035年ROE約9.87%、moat weakによる超過利益の残存率3分の1からRONIC約8.46%。AI代替による長期成長gは名目-0.5%。正当化PER=(1-g÷RONIC)÷(k-g)の上限約12.84倍。余剰現金1.0億円の税後利息1.4%を純利益から控除して事業価値を求め、余剰現金1.0億円を足す。自己資本は2025年末21.9億円+2026~2035年累積純利益約16.05億円-還元約8.05億円=29.9億円。
確率:公共契約を再獲得し、次世代教材が教育効果の面で差別化に成功する場合。2026年の失注からの立ち直りに加え、複数の顧客経路で長期間競争に勝つ必要があるため、上振れの確率を11%にとどめる。
やや楽観 18% 私学と民間教育が踏みとどまり、利益が回復 利益 2 億円 · PER 12.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 364 円23 億円
公共向けの営業を組み直し、Surala-iの自治体導入が進む。2026年上期に失った契約の一部を取り戻すが、ベネッセなどの大手にすべての案件で勝てるわけではない。2035年の公共IDは約17.7万とし、2025年末をなお下回る。
私立学校や通信制高校では、学力補充と個別支援を組み合わせた提案が続く。学習塾や家庭向けの利用はやや細るものの、既存顧客への教材更新と支援サービスで実効単価を守る。AIは画面課金に下押し圧力をかけるが、先生や保護者が運用する用途では全面的な置き換えを免れる。
開発費の先行負担が一巡し、営業利益率は14%台へ戻る。受託開発はAIにより数量が減るため、子会社の拡大による上振れは見込まない。10年間の累積純利益は約9.1億円で、約4.1億円が株主に還元される。収益の回復は実現するものの、自己資本に対する利益率はまだ資本コストに届かない。
- 公共ソリューション・公立学校:数量 176,908(年度末の公共向け課金対象利用ID数)× 価格 0.00(利用ID1件当たりの年間売上換算額(億円、導入時の費用等を含む実効単価))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。公共IDは2025年比90%、単価12%上昇。
- 私立学校・通信制高校等:数量 45,056(年度末の私立学校等向け課金対象利用ID数)× 価格 0.00(利用ID1件当たりの年間売上換算額(億円、校舎固定費等込み))→ 売上 7 億円・営業利益 2 億円。学校ID95%、単価13%上昇。通信制需要が下支え。
- 民間教育・学習塾・フリースクール等:数量 15,398(年度末の民間教育向け課金対象利用ID数)× 価格 0.00(利用ID1件当たりの年間売上換算額(億円、校舎基本料や支援費を含む))→ 売上 6 億円・営業利益 1 億円。塾等のID90%、単価13%上昇。
- 家庭向け直接販売:数量 2,826(年度末の家庭向け課金対象利用ID数)× 価格 0.00(家庭向け利用ID1件当たりの年間売上換算額(億円、指導支援等込み))→ 売上 3 億円・営業利益 1 億円。家庭ID86%、単価12%上昇。
- 海外・日本語教育:数量 3,511(年度末の海外課金対象利用ID数)× 価格 0.00(海外利用ID1件当たりの年間売上換算額(億円、実効単価))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。海外ID90%、単価12%上昇。
- アプリ・受託開発等の連結残差:数量 70.0(外部向け開発・制作の換算人月(推定))× 価格 0.01(人月当たりの外販売上換算額(億円))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。外販換算人月は約80%、単価30%上昇。
倍率:k7.75%、2035年ROE約6.02%。ROEが資本コスト以下なので10年以降の再投資による超過利益は認めず、g_long-0.5%を反映した稼ぐ力の上限1÷(k-g)=12.12倍。全社純利益から余剰現金1.0億円の税後利息を除き、余剰現金を帳簿額で加算。自己資本は21.9億円+累積純利益約9.05億円-還元4.05億円=26.9億円。
確率:2026年の公共向け失注から一定の回復が起きる一方、学校と家庭では競合の圧力が残る筋書き。教材の教育上の役割と開発体制の回復を認めるが、完全な数量回復は求めない。
中立 30% 中立:個別支援は残るが、利用IDと利益率は縮む 利益 1 億円 · PER 12.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 246 円16 億円
2035年も、基礎学力の補充や不登校支援には学校と家庭の需要がある。ただし、公立学校では次世代教材の選択肢が増え、すららネットが以前の契約数をすべて回復することはない。公共向けIDは約13.8万とし、2026年上期の水準からは少し戻るが、2025年末より大幅に少ない。
私立学校向けは2025年の約85%、民間教育と家庭向けは約75%の利用IDが残る。AIエージェントが問題の解説や学習の進行を直接担うため、通常の物価上昇を料金へ転嫁しにくい。それでも、学校側が必要とする運用支援や保護者との連携には一定の対価が残る。海外事業は小規模なままで、受託開発の工数は自動化によって縮む。
次世代教材の開発負担を抑え、収益性は2025年より改善する。だが、10年後の営業利益は約1.6億円にとどまり、自己資本利益率は約4.6%となる。積み上がった資本に見合う超過利益は生まれず、株主還元は累積約2.1億円という控えめな規模になる。会社は存続するが、高収益の成長企業ではなくなる10年だ。
- 公共ソリューション・公立学校:数量 137,596(年度末の公共向け課金対象利用ID数)× 価格 0.00(利用ID1件当たりの年間売上換算額(億円、導入時の費用等を含む実効単価))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。2025年比ID70%、単価106%。2026年半ばからは小幅回復。
- 私立学校・通信制高校等:数量 40,313(年度末の私立学校等向け課金対象利用ID数)× 価格 0.00(利用ID1件当たりの年間売上換算額(億円、校舎固定費等込み))→ 売上 6 億円・営業利益 1 億円。学校ID85%、単価110%。AIの価格競争で物価を転嫁できない。
- 民間教育・学習塾・フリースクール等:数量 12,832(年度末の民間教育向け課金対象利用ID数)× 価格 0.00(利用ID1件当たりの年間売上換算額(億円、校舎基本料や支援費を含む))→ 売上 5 億円・営業利益 1 億円。塾・フリースクールID75%、単価109%。
- 家庭向け直接販売:数量 2,464(年度末の家庭向け課金対象利用ID数)× 価格 0.00(家庭向け利用ID1件当たりの年間売上換算額(億円、指導支援等込み))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。家庭向けID75%、単価108%。
- 海外・日本語教育:数量 3,043(年度末の海外課金対象利用ID数)× 価格 0.00(海外利用ID1件当たりの年間売上換算額(億円、実効単価))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。海外ID78%、単価110%。小規模赤字が残る。
- アプリ・受託開発等の連結残差:数量 57.0(外部向け開発・制作の換算人月(推定))× 価格 0.01(人月当たりの外販売上換算額(億円))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。AIエージェント代替で外販換算工数65%、単価124%。
倍率:k7.75%、2035年ROE約4.60%。成長再投資の収益率は資本コスト以下なので、PERは長期縮小率g-0.5%を反映した1÷(k-g)=12.12倍の上限そのもの。余剰現金1.0億円について税後受取利息1.4%を営業以外の純利益から控除し、残額を別途加算する。自己資本は2025年末21.9億円+2026~2035年累積純利益約4.05億円-還元2.05億円=23.9億円。過去の市場PERは使用しない。
確率:公共向け契約の落ち込みと2026年の損失を出発点に、AI代替下でも不登校・学力補充の用途が残る中心的な見込み。収益構造の一部は回復するが、2020~2022年の高収益期への復帰は前提にしない。
やや悲観 26% 教材の汎用品化で規模が縮み、薄い黒字にとどまる 利益 1 億円 · PER 12.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 113 円7 億円
自治体は大手教材とAIを搭載した教育システムを組み合わせ、すららネットの単独導入は減っていく。公共向けIDは約11.4万へ細る。私立学校では専門的な学び直しに使われ続けるものの、競合との値段の比較が厳しくなる。学習塾や家庭向けでは、AIエージェントが通常の問題演習と解説を担うため、新規顧客の獲得費用が上がる。
会社は開発対象を絞り込み、既存教材の保守と一部の個別支援に集中する。校舎や家庭の利用数は2025年の約6割に落ちるが、人件費を抑え、開発費の支出を見直すことで、連結営業利益は小幅ながら黒字にとどまる。海外事業は固定費を吸収できず、子会社の外販工数も減る。
営業利益率は約6%となり、純利益は約0.55億円に縮む。資本コストを十分に稼げないため、積み上がった自己資本には高い倍率を認めない。株主への還元も優待費用見合いを含めて10年合計約0.54億円にとどまる。事業そのものは残るが、株主が将来の成長に期待できる余地は小さい。
- 公共ソリューション・公立学校:数量 114,008(年度末の公共向け課金対象利用ID数)× 価格 0.00(利用ID1件当たりの年間売上換算額(億円、導入時の費用等を含む実効単価))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。公共ID58%、単価103%。採択の減少が続く。
- 私立学校・通信制高校等:数量 36,045(年度末の私立学校等向け課金対象利用ID数)× 価格 0.00(利用ID1件当たりの年間売上換算額(億円、校舎固定費等込み))→ 売上 5 億円・営業利益 1 億円。学校ID76%、単価105%。
- 民間教育・学習塾・フリースクール等:数量 10,608(年度末の民間教育向け課金対象利用ID数)× 価格 0.00(利用ID1件当たりの年間売上換算額(億円、校舎基本料や支援費を含む))→ 売上 4 億円・営業利益 1 億円。塾等ID62%、単価103%。固定費圧縮で利益率を維持。
- 家庭向け直接販売:数量 1,906(年度末の家庭向け課金対象利用ID数)× 価格 0.00(家庭向け利用ID1件当たりの年間売上換算額(億円、指導支援等込み))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。家庭ID58%、単価102%。
- 海外・日本語教育:数量 2,497(年度末の海外課金対象利用ID数)× 価格 0.00(海外利用ID1件当たりの年間売上換算額(億円、実効単価))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。海外ID64%、単価104%。
- アプリ・受託開発等の連結残差:数量 48.0(外部向け開発・制作の換算人月(推定))× 価格 0.01(人月当たりの外販売上換算額(億円))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。受託換算工数55%、単価115%。
倍率:ROE約2.59%がk7.75%を下回るため、稼ぐ力は1÷(k-g)=12.12倍が上限。余剰現金は基準1.0億円の75%だけ残るとみて、0.75億円の利息を純利益から除き、0.75億円を加算した。計算上の時価総額約7.29億円は換金可能資産の床5.9億円を上回り、稼ぐ力と資産のいずれにも矛盾しない。自己資本は21.9億円+累積純利益約-0.16億円-還元0.54億円=21.2億円。
確率:公共契約の失注が続き、塾や家庭でも無料・低価格AIへの移行が進む場合。現実に確認された公共IDの急減と競争環境の変化から、起こり得る幅のある下振れとして26%を配分した。
悲観 15% AIと大手教材に置き換えられ、換金可能資産が価値の中心になる 利益 −2 億円 · PBR 0.3 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 92 円6 億円
学校現場では大手教育企業の統合システムが標準となり、AIエージェントが学習者の理解度に応じて課題と解説を生成する。すららネットの教材を単独で採用する理由が薄れ、公共向けIDは2025年の約35%に縮む。私立学校でも既存の顧客の半数を失い、学習塾と家庭の利用はさらに細る。
会社は事業の縮小に合わせて人員と開発費を削減するが、ソフトウェアの保守、情報セキュリティー、営業管理の固定費が残る。受託アプリ開発もAIによる内製化と単価競争にさらされる。売上高は約8.3億円となり、営業赤字は約1.9億円に達する。新教材への追加投資は十分な成果を生まず、無形固定資産の減損も検討せざるを得ない。
この状態では赤字の事業に利益倍率を掛けない。価値は、現在の現金から借入金その他の負債を控除し、回収できる流動資産を加えた額を中心に測る。上場維持への対応や外部資本との提携を迫られる可能性もあるが、TOBによる買付価格の上振れを確約された価値とは扱わない。過去の高ROEを再び取り戻す期待が失われる10年になる。
- 公共ソリューション・公立学校:数量 68,798(年度末の公共向け課金対象利用ID数)× 価格 0.00(利用ID1件当たりの年間売上換算額(億円、導入時の費用等を含む実効単価))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。公共ID35%、単価横ばい。採択基盤を喪失。
- 私立学校・通信制高校等:数量 23,714(年度末の私立学校等向け課金対象利用ID数)× 価格 0.00(利用ID1件当たりの年間売上換算額(億円、校舎固定費等込み))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。学校ID50%、単価横ばい。
- 民間教育・学習塾・フリースクール等:数量 7,186(年度末の民間教育向け課金対象利用ID数)× 価格 0.00(利用ID1件当たりの年間売上換算額(億円、校舎基本料や支援費を含む))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。塾等ID42%、単価横ばい。
- 家庭向け直接販売:数量 1,249(年度末の家庭向け課金対象利用ID数)× 価格 0.00(家庭向け利用ID1件当たりの年間売上換算額(億円、指導支援等込み))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。家庭ID38%、実効単価96%。AI直販との価格競争。
- 海外・日本語教育:数量 1,950(年度末の海外課金対象利用ID数)× 価格 0.00(海外利用ID1件当たりの年間売上換算額(億円、実効単価))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。海外ID50%、単価横ばい。
- アプリ・受託開発等の連結残差:数量 31.0(外部向け開発・制作の換算人月(推定))× 価格 0.01(人月当たりの外販売上換算額(億円))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。受託工数35%、単価108%。AIにより案件が大幅減。
倍率:営業赤字が続くためPERは使用しない。床となる現在の換金可能資産5.9億円を、2025年末の自己資本21.9億円で割ったPBR約0.27倍を用いる。2035年の自己資本14.9億円に掛けるのではなく、現在の自己資本を床の分母とする。現在の純現金と回収可能流動資産から負債を控除した額を超える事業価値は認めない。自己資本の道筋は21.9億円+累積純損失約-6.97億円-還元0.03億円=14.9億円。
確率:公教育の大型更新で競争力を失い、家庭と塾でもAIエージェントが代替する構造的敗北。単なる景気の谷ではなく製品の収益寿命が縮む事態であり、現在の失注と開発資産の重さを踏まえ15%とする。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
公共ソリューション・公立学校
自治体と公立学校に提供する「すららドリル」などの学習教材。契約更新や補助事業の終了が利用IDを大きく動かす。
| 数量年度末の公共向け課金対象利用ID数 | 価格利用ID1件当たりの年間売上換算額(億円、導入時の費用等を含む実効単価) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 196,565 | 0.00 | 2 | 0 |
| 10 年後 中立 | 137,596 | 0.00 | 1 | 0 |
取り方:会社の2025年決算説明資料にある公共ソリューション売上199百万円と2025年末ID196,565件を使用した。実効単価は年約1,012円であり、実際の自治体向け契約料金ではない。年度末IDを年平均利用数の代理にしたため、導入・解約時期で誤差が出る。2026年6月末には129,294ID、導入1,015校へ減少。公立小中学校約3万校を母数にした導入校数比率は2025年末約5.5%、2026年6月末約3.4%。競合ミライシード約12,000校とは採択校数で比較できるが、複数教材の併用があるため売上シェアには置き換えない。営業利益はチャネル別非開示のため推計配分。AI代替区分は操作画面・ID課金型。
私立学校・通信制高校等
私立小中高、通信制・定時制高校、専門学校等における基礎学力補充と個別学習支援。
| 数量年度末の私立学校等向け課金対象利用ID数 | 価格利用ID1件当たりの年間売上換算額(億円、校舎固定費等込み) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 47,427 | 0.00 | 7 | 1 |
| 10 年後 中立 | 40,313 | 0.00 | 6 | 1 |
取り方:2025年の学校ソリューション売上652百万円を年度末47,427IDで割り、年間実効単価を約13,747円とした。学校数は274校で、2026年6月末にはID51,025件、272校。私立小中高校だけでなく専門学校なども含むため、私立学校の全国校数だけを使った単純なシェアは不正確。競合はミライシード、スタディサプリ、atama plusなど。導入校数の共通分母や他社の同一定義の利用IDは公表されておらず、売上シェアは未確認。営業利益は推計。AI代替区分はID課金・操作画面型。
民間教育・学習塾・フリースクール等
学習塾、フリースクール、放課後等デイサービスなどに教材と学習運用の支援を提供する。
| 数量年度末の民間教育向け課金対象利用ID数 | 価格利用ID1件当たりの年間売上換算額(億円、校舎基本料や支援費を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 17,109 | 0.00 | 6 | 1 |
| 10 年後 中立 | 12,832 | 0.00 | 5 | 1 |
取り方:2025年の民間教育向け売上618百万円と年度末17,109IDを使用した。実効単価は年約36,121円だが、校舎基本料や教育運用支援も含むため、教材IDの公表価格ではない。導入は1,261校舎、2026年6月末は1,313校舎となった一方、IDは16,225件に減少し、校舎当たり利用人数が細った。全国の学習塾市場には対面授業料も含まれ、デジタル教材の導入可能校舎数と競合シェアを直接測れる統計はない。営業利益は推計。売上の主軸はID課金型で、付随する導入・運用支援は人月型AI代替リスクを併せ持つ。
家庭向け直接販売
家庭用の「すらら」、保護者向け学習支援、子育て支援サービス等。
| 数量年度末の家庭向け課金対象利用ID数 | 価格家庭向け利用ID1件当たりの年間売上換算額(億円、指導支援等込み) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 3,286 | 0.00 | 4 | 0 |
| 10 年後 中立 | 2,464 | 0.00 | 3 | 0 |
取り方:会社資料の2025年BtoC売上362百万円と年度末3,286IDから、年約110,164円の実効売上を計算した。利用月数、入会金、コーチングサービスの構成が分からないため、これは月額料金の12倍とは限らない。2026年6月末IDは3,130件。比較対象はスタディサプリ、通信教育、家庭教師、無料のAI学習支援であり、広義の個人向けeラーニング市場2,630億円をそのまま小中高の学習支援市場とみなさない。営業利益は推計。主にID・画面型AI代替リスクを持つ。
海外・日本語教育
カンボジアなどでの「Surala Math」と、日本語指導を含む教育サービス。
| 数量年度末の海外課金対象利用ID数 | 価格海外利用ID1件当たりの年間売上換算額(億円、実効単価) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 3,901 | 0.00 | 0 | 0 |
| 10 年後 中立 | 3,043 | 0.00 | 0 | 0 |
取り方:2025年決算説明資料の海外売上13百万円と年度末3,901IDから年約3,332円を算定。2026年6月末の海外IDは3,055件、海外導入校数は95校。現地の公教育支出、通貨、助成金、導入形態が国内と異なるため、国内ID単価を当てはめない。カンボジアの約2万人への普及構想は売上確約ではなく、海外市場の同一定義の母数と競合シェアも未確認。営業利益は展開費用を含む推計。教材利用はID型AI代替に該当する。
アプリ・受託開発等の連結残差
子会社Fantamstickの外部向けアプリ開発等と、主力チャネル売上との連結調整残差をまとめた推計部分。
| 数量外部向け開発・制作の換算人月(推定) | 価格人月当たりの外販売上換算額(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 88.0 | 0.01 | 1 | 0 |
| 10 年後 中立 | 57.0 | 0.01 | 1 | 0 |
取り方:連結売上19.32億円から、公表された五つのeラーニング経路の合計18.44億円を控除した残差0.88億円を使用した。Fantamstickの連結消去前売上をそのまま外販とみなすことはしない。外販の実人月・受託単価は非開示のため、便宜上年88人月×月100万円という感応度用の換算量で表した。実際の雇用人数や契約単価を確認した数値ではない。主に受託・制作工数型のAIエージェント代替を適用する。営業利益も推計。
リスクと懸念
AIエージェント代替
売上の主力である利用ID型教材は、画面上で問題を解き、解説を受け、学習履歴を見る仕組みに依存する。AIエージェントがその一連の操作を直接担えば、教材会社へ席数に応じた料金を支払う理由が薄くなる。子会社の受託アプリ開発にも工数削減が及ぶ。2035年中立ではID数量を2025年の70~85%、実効単価を106~110%程度に抑え、受託工数は65%とした。10年より先の縮みはg_longに入れ、資本コストの寿命項目には重ねていない。
公教育の契約更新と補助金依存
公共向けは2025年末の1,652校から2026年6月末に1,015校へ減った。自治体が次年度の契約を更新しない場合、少数の大型案件だけで利用IDが大きく動く。会社は大型自治体の獲得に力を入れるが、学校での教育効果と入札での採択は別である。NEXT GIGA関連の需要があっても、その予算が同社に帰属するとは限らない。
ソフトウェア資産と開発投資の回収
新しい教材の開発は現金支出が先行する。2026年上期の無形固定資産取得だけで約3.74億円に達し、営業利益と比べても負担が大きい。資産計上された開発費は将来の償却費となり、想定した利用者数を獲得できなければ減損が必要になる。会計上の利益だけでなく、営業キャッシュ・フローからソフトウェア投資を差し引いた後の資金を見る必要がある。
大手教育企業との競争と少子化
ベネッセのミライシードは約1万2,000校に導入され、学校現場での運用支援や販売網に規模の強みがある。スタディサプリやatama plusなども競争相手となる。小中学校の児童生徒数が減る中で、学校向けの導入費用や家庭の教育支出を奪い合う構図は続く。不登校支援の需要が増えても、同社のシェアや利益が自動的に増えるわけではない。
上場維持基準と少数株主の流動性
会社は2027年12月末を判定日とする時価総額40億円の上場維持基準について、現状では基準を下回り、改善期間を経ても適合できなければ上場廃止となる可能性を開示している。現在の時価総額は約15.6億円で、基準との隔たりがある。上場廃止が決定したわけではないが、市場変更、資本提携、株式政策などの対応は既存株主の換金性や取り分に影響し得る。
学習データの安全性と教育現場での信頼
利用者には未成年者が多く、学習履歴や個別の支援情報を扱う。情報漏えいや教材の障害、不適切なAI回答が起きれば、学校・保護者からの信頼を失う。生成AIを教材に組み込む際には回答の正確性、個人情報、児童生徒への配慮が必要になり、安価なAIを使えば直ちに開発費を削減できるわけではない。
資本配分と子会社の採算
過去の高収益期に生んだ利益は自己資本を厚くしたが、近年の営業利益は大きく減った。次世代教材への投資やFantamstickの事業維持が、将来の利益を生まないまま続けば、内部留保は株主の価値を増やさない。2026年には短期借入れも行っており、余剰現金と開発のために確保すべき資金を分ける必要がある。将来の買収は採算を確認できるまでは価値の上振れに含めない。
今後の分かれ目
- 公共向けの課金IDが2027年末までに20万を超え、翌年度の更新でも維持されたら
- 失注が一過性だった可能性が高まる。公共向け数量と利益率を上方修正し、やや楽観以上の筋書きに重みを移す。ただし会社目標70万IDを直ちに中立へ取り込まない。
- 公共向けIDが10万を下回り、主要自治体の解約が続いたら
- 学校導入による乗換え障壁が弱いと判断する。やや悲観と悲観の確率を上げ、公共売上の減少に応じて開発費の回収可能性も見直す。
- Surala-iの有償売上、更新率、AI機能に対する追加料金が開示され、実績で継続的な増収が確認できたら
- AI代替の負の影響を緩和する。実際にAIを売り物として追加収益を得た部分に限り、楽観側の利用数量や長期成長率を再検討する。
- 2027年以降に営業利益率が二桁へ戻り、ソフトウェア投資後のフリーキャッシュ・フローも黒字になったら
- 会計利益だけでなく資本効率の改善が確認できる。中立の営業利益率、増分資本利益率、株主還元余力を引き上げる。
- 新教材の追加開発、減損、短期借入れの増加が続き、現金と有利子負債の差が縮小したら
- 余剰現金1.0億円の認定を取り消し、悲観側の換金可能資産も再計算する。赤字が継続する場合は資本コストへのdistress加算を再検討する。
- 2027年の上場維持基準への対応として市場変更、公開買付け、株式交換、増資などが正式発表されたら
- 公表された条件と既存株主の取り分を先に確認する。TOBや上場廃止が決定した場合は、この長期の独立企業評価をそのまま利用しない。増資ならholder_shareを見直す。
見ておくもの
- 四半期・期末の公共向け課金ID数、採択自治体数、導入校数、前年契約からの更新率
- 私立学校・民間教育・家庭向けそれぞれのIDと実効単価、校舎当たり利用者数
- Surala-iの有償導入件数、既存契約からの切替率、生成AI機能による追加売上
- 営業利益に対する無形固定資産取得額、償却費、減損、フリーキャッシュ・フロー
- 現金残高と短期借入れの差、ソフトウェア資産の残高と開発費の推移
- 2027年12月末のグロース市場上場維持基準への適合状況と会社の対応
- 自己株式取得・株式給付信託・新株発行による実質株式数の変化
- ベネッセのミライシードなど競合の採択校数、AI教材の価格と学校側の調達方法
- カンボジア・日本語教育事業で補助事業に依存しない継続的な有償売上が生まれるか
倍率と資本コストの決め方
数量は2025年の顧客経路別利用IDと売上から組み立てた。年度末IDと年間売上の組合せなので、実効単価には契約期間と導入費用の誤差がある。AIエージェント代替が当てはまるID課金型については、中立の数量を0.70~0.85倍、価格を1.06~1.10倍とし、物価3%を機械的に上乗せしていない。受託工数型も中立数量0.65倍である。楽観でもAIの追加収益が未確認のため、数量は2025年を上回らせない。
倍率は現在や過去の株価、同業のPER・PBRを使わず、資本コスト7.75%、ROE、超過利益の残る割合3分の1、長期成長率-0.5%から求めた。楽観のPERは約12.84倍、それ以外の黒字筋書きは約12.12倍である。悲観のPBR0.27倍は将来積み上がる自己資本ではなく、現在の自己資本21.9億円に掛けて換金可能資産の床5.9億円を表している。事業の赤字に高い倍率を掛けていない。
2026年6月末の公式短信では発行済株式6,694,764株、自己株式385,146株で、差引6,309,618株となる。一方、添付factsの指定する基準株数は6,424,364株で約1.8%の差がある。今回は依頼で指定された添付の株数と株価を固定し、この資料間の不一致を明記した。自己株式の二重控除はしない。新リース会計基準によって将来の貸借対照表の表示が変わっても、賃借料の実質負担を利益から二重に控除しない。市場価格が2倍でも半分でも、同じ事業前提なら算定する本質価値は変えない。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。無リスク金利3%と株式リスクプレミアム4.5%による基本7.5%に、事業の質による0.25%を加えた。2026年の営業赤字予想は重いが、現段階では財務存続への直接的な疑義がなく、distressの上乗せは行わず筋書きに反映する。