結論
BlueMemeは、OutSystemsなどのローコード技術を使い、企業の基幹業務システムを短期間で開発する会社である。筆者の結論は「割高」だ。預金を多く持つものの、10年間の工数商売の縮小と株主に届く現金の不確実性を考えると、今の時価総額には十分な安全域がない。
2026年3月期の訂正後売上は約33億円だが、営業利益は0.47億円にすぎない。過去の成長が利益の積み上がりになっていない。2026年10月23日には東証が、過去の虚偽開示と上場時の問題を理由に改善報告書と960万円の違約金を求めた。単なる会計ミスではなく、過去の経営トップの関与が認定された問題である。
会社は2029年3月期に売上48億円、営業利益3億円を目指す。AIを使った設計やレガシー刷新が新たな需要を生む余地はある。ただし、開発の省力化は売上を人月で得る会社には逆風でもある。ローコード製品の販売権も自社独占の基盤ではない。
中立の2036年3月期には、受託工数が減る代わりに利益率がある程度戻り、10年後の時価総額は約17億円とみる。中立では運転資金の回収と保有資産の換価も進むが、稼ぐ力そのものは強くない。悲観時の換価資産の床は現在の純現金水準以上と見込むが、債権の回収が条件となる。資金調達による希薄化も考慮する。現金の残余価値と強い筋書きも加えた確率加重の現在価値は約10.4億円で、基準時価総額約16.3億円を約36%下回る。値下がりした株価だけを根拠に割安とは呼べない。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主にとって、技術が新しいことと株式が安いことは別である。BlueMemeは国内企業が抱える古い業務システムを直す技能を持つ。高位のパートナー資格や案件実績には価値があるが、その技能を十分な利益率と、顧客から継続的に現金を受け取る仕組みに変えられているかがまだ見えない。
オーナー利益は会計上の純利益から事業維持に必要な支出を引いて考えたい。技術者の採用・育成、品質管理、研究開発は、競争に残るために欠かせない。2026年3月期は営業利益0.47億円に対し、営業キャッシュフローも約0.59億円だった。売掛金・契約資産が約20億円あるため、売上の増加が直ちに現金になるわけではない。
純現金が時価総額に匹敵する点は魅力だが、少数株主が預金を自由に払い戻せるわけではない。今後の調査費用、預り金や契約損失、買収や開発への再投資を控除し、余った資金の株主への戻り方も慎重に考えるべきだ。過去に無配が続き、取得株式の値段も適切だったか疑問が残るため、現金を額面どおりすぐ還元するとみなさない。
会計不正は、とりわけ信頼を要する長期保有の審査に重い。東証が2026年10月23日に示した認定内容は、単なる会計方法の相違ではない。顧客離れが進まず、新経営陣が内部統制を立て直し、受託工数の縮小下でも資本コストを上回る利益を数年続けて初めて、現在の低い利益倍率より高い評価を検討できる。今は安全域が不足する。
何で稼ぐ会社か
事業の中心は、顧客企業のシステム改修を引き受けるプロフェッショナルサービスである。業務分析、設計、開発、テスト、運用支援を少人数の開発チームで回し、技術者の作業と外部協力会社への発注を収益に変える。研修も同じく人の時間を売る商売だ。2026年3月期の売上は受託開発26.77億円、研修0.40億円だった。
もう一つはOutSystemsなどのソフトウェアライセンス販売で、同年度の売上は5.82億円である。顧客の利用が続けば更新の取引を期待できるが、ソフトウェアの中核的な知的財産は提携先が握る。BlueMemeの価値は国内導入・開発・研修と運用上の助言にあり、独占的な料金設定権とは異なる。
会社はDX事業の単一報告セグメントである。本分析では、AIによる代替のされ方が違うため、受託・研修とライセンス販売を二つに分けた。前者の数量は請求可能な人月、後者は年間の契約顧客数として捉える。ただし会社は両者の人月総量と有効契約社数を開示していないので、数量と単価は売上実績、在籍人員、累計顧客数からの推計である。
同社はOutSystemsのアジア初のプレミアパートナーに認定され、累計約660社の取引と約5400件の開発サービス実績を公表する。ただし累計は現在課金中の顧客数ではない。マイクロコートの買収、AIコンサル子会社の設立、持株会社への移行計画によって事業を広げようとしているが、買収や社内再編そのものは株主の利益を増やさない。
優良さと弱いところ
顧客の業務を理解して設計に落とす力は、単純なプログラミングより模倣されにくい。BlueMemeはOutSystemsの高位パートナー資格を持ち、販売管理や製造、物流など多分野の導入事例を積み重ねてきた。既存システムを作り直す顧客には移行リスクもあるため、経験のある担当者を選びたい理由がある。
しかし、これを強い堀、すなわち競合を継続的に退けて値上げできる仕組みとはまだ呼べない。値上げの定量的な実績、低い解約率、規制による継続利用義務、自社が管理する独自データの蓄積を十分には確認できない。OutSystemsの契約・製品戦略が変われば、販売代理店と導入支援会社は条件を受け入れざるを得ない。
最大の弱みは、売上が増えても利益が残りにくいことである。2024年3月期には営業利益約2.5億円を稼いだが、2026年3月期は売上が増えながら0.47億円へ低下した。大型案件の品質問題で受注損失引当金が約0.89億円に膨らみ、研究開発と採用費も重い。余剰現金は存続を支えるが、増分投下資本から資本コストを超す利益を恒常的に得た証拠ではない。
加えて、東証は2020年3月期の利益を黒字に見せた虚偽開示と、それに関わる内部統制の不備を認定した。新経営陣の再発防止策は評価の出発点であって、解決済みの証拠ではない。ガバナンス不安は資本コストに重ねず、弱い筋書きの重みと現金の換価可能性に反映する。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内ITサービス市場は2025年に約7.5兆円という業界推計があり、レガシー刷新やデータ活用の需要は続く。BlueMemeの2026年3月期売上約33億円は、この広い市場の約0.044%にすぎない。これはローコード市場のシェアではなく、正確なローコード受託開発市場の国内分母と同社シェアは公表資料から特定できない。
競争相手はNRI、TIS、NTTデータなどの大手受託開発会社だけではない。低コード基盤ではMendix、Microsoft Power Apps、ServiceNow、Salesforceなどが用途を奪い合う。ソフトウェアを一から作るためのコード生成をAIエージェントが担えば、顧客の情報システム部門による内製化も競合になる。大手のシェアは分野により異なり、BlueMemeが開示した累計取引社数だけから国内シェアを導くことはできない。
会社の中期計画では、世界のローコード関連技術市場を2024年約301億ドル、2029年約582億ドルとする調査を引用している。ただしこれは製品や海外需要を含む名目市場で、日本の導入支援会社が請求できる人月の増加とは別の話だ。業界全体のソフトウェア利用が増えても、技術者一人当たりの生産性が高まれば工数売上は減りうる。
AIエージェント代替を二つの型で織り込む。受託開発・コンサル・研修は人月型で、中立の2036年の数量は現在の65%、単価は名目125%とする。ライセンス販売は、操作画面や利用人数に依存する業務ソフトの型で、契約数量80%、単価110%とする。いずれも会社が記録の正本を押さえると認めるだけの二つ以上の証拠がないため、永久に市場と同じ速度で伸びるとは扱わない。
資本政策と M&A
2026年9月に公表した中期計画は、2027年3月期の売上26億円・営業利益0.3億円から、2028年3月期に34億円・1.6億円、2029年3月期に48億円・3億円への回復を掲げる。受注残の目標は順に6.3億円、8億円、13.5億円だ。2031年3月期の売上83億円・営業利益7億円、2032年3月期の売上100億円はさらに遠い構想であり、達成を前提にしない。
計画のプロフォーマEBITDA率は2029年3月期11.5%だが、計算上は研究開発費や技術者の採用・教育費まで足し戻す。現金を使わずに稼げる利益ではない。ROE、配当性向、DOE、総還元性向、自社株買い額については数字の約束なし。2026年3月期も無配で、2027年3月期の予想も無配である。
一方、2025年3月期に約0.71億円、2026年3月期に約0.76億円の自社株買いを実施した。二期で約1.47億円という額は、両年度の累計純利益より大きい。株式を取得した後に株価が大きく下がったこともあり、資本配分の成果は厳しく検証する必要がある。
2025年にマイクロコートを買収し、2026年には事業会社を持株会社の傘下に置く構想を示した。将来の提携や買収で技術を補う余地はあるが、資金を投じる前に買収後の利益と投下資本利益率を確かめたい。2027年3月期には調査関連費用約3.94億円が見込まれ、先に資産の毀損を止めるのが株主にとっての優先課題である。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
大企業の古いシステムは放置できない。販売、生産、物流の業務知識は、コード生成が速くなっても顧客ごとに確認しなければならない。BlueMemeはOutSystemsのアジア初のプレミアパートナーで、累計約660社の取引と約5400件の開発実績を持つ。顧客と共に要件を整理し、監査可能な運用に移す人材は、単純なプログラマーとは違う。
2026年9月の中期計画が示したデジタルエージェントの事例では、従来の開発期間と作業時間を減らす効果がうたわれている。こうした技術を自ら活用すれば、競合より少ない人員で多くの案件をこなせる。既存顧客の深い業務理解と新しい自動化技術を組み合わせられれば、請求人月が減っても、粗利と顧客満足を守る道はある。
2026年3月期の現預金は約17億円、有利子負債は軽い。損失案件の終結や会計管理の刷新が進み、調査費用が一過性で終われば、資産の力で再挑戦する時間を確保できる。2025年のマイクロコート買収と新設のAIコンサル子会社が地方や新しい用途の顧客を増やす可能性もある。中期計画は売上48億円・営業利益3億円を目指しており、立て直しが成功すれば2036年の営業利益が過去の水準を超える余地がある。
慎重な見方
2026年3月期は売上高が約4割増えたにもかかわらず、営業利益率は1%台にとどまった。大口プロジェクトの赤字と調査対応で組織の余裕が失われている。顧客は一度開発を外注しても、生成AIによる設計・実装・テストの自動化が進めば、次の更新を社内で進められる。人月単価が少し上がっても、請求できる月数が大幅に減れば固定費を賄えない。
ライセンス販売は自社製ソフトの経済性とは異なる。OutSystemsやCreatioなど供給元の値付け、代理店政策、AI機能の搭載に収益が左右される。Microsoft Power AppsやMendixのような代替基盤もある。顧客側で既存の画面をAIエージェントが操作しなくなれば、人数や画面利用に結びつく料金体系に値下げ圧力がかかる。
最大の問題はガバナンスだ。東証は、過去に当時の経営トップが取引の証拠を隠し、2020年3月期の赤字を黒字と偽るなどしたことを認定した。2025年11月の疑義把握後の監査役会の対応も問題視された。これは利益率の予想以前に、今後の決算の信頼性を問う。2027年3月期に約4億円の純損失が見込まれる以上、預金をいつまでも余裕資金とみなすこともできない。親会社再編や買収が問題を複雑にし、修正計画が遅れれば、残る価値は稼ぐ力でなく換価可能な現金に近づくだろう。
どちらに重みを置いたか
実装力と純現金は評価するが、現段階では慎重な見方が強い。2036年の中立でも人月は65%、ライセンス契約数量は80%に減り、利益率回復によって事業が持ちこたえる程度を想定する。やや悲観と悲観を合わせて40%、強気側を29%とした。下に寄せる理由はAI代替を確率で重ねるためではなく、2026年の会計不正認定、顧客契約損失、2027年の多額の調査費用という固有の事実にある。下値は現金だけでなく売掛金・契約資産を回収する価値から再計算し、企業全体の悲観の床を16億円台に引き上げた。ただし再建増資で既存株主の取り分は小さくなりうる。上振れ時の利益と資産回収の条件を併せて測っても、10年価値は現在の時価総額を大きく下回る。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 666 円22 億円(+ 還元の換算額還元の合計 14 円0 億円)。 今の値に割り戻すと 218 円7 億円、今との差 −50.4%、 期待の年率 +4.5%(資本コスト 12.3%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 11% | 1,475 円49 億円 | 45 円2 億円 | +246.2% | +13.5% | 167 円6 億円 |
| やや楽観 | 18% | 873 円29 億円 | 30 円1 億円 | +105.6% | +7.6% | 162 円5 億円 |
| 中立 | 31% | 502 円17 億円 | 12 円0 億円 | +17.1% | +1.6% | 159 円5 億円 |
| やや悲観 | 25% | 499 円17 億円 | 0 円0 億円 | +13.7% | +1.3% | 125 円4 億円 |
| 悲観 | 15% | 444 円15 億円 | 0 円0 億円 | +1.1% | +0.1% | 67 円2 億円 |
| 加重平均 | 100% | 666 円22 億円 | 14 円0 億円 | +55.0% | +4.5% | 680 円23 億円 |
今の株価時価総額 439 円15 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 11% 品質と統制の再建に成功し、AI活用で採算が戻る 利益 4 億円 · PER 12.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,475 円49 億円
2027年3月期の調査対応を終えた後、取引先の信頼を取り戻し、受注損失案件の再発を防ぐ。会社が持つOutSystemsの高位パートナー資格と豊富な導入経験を生かし、COBOLなど古い基幹系からの移行を獲得する。AIで実装やテストの時間を減らしながらも、顧客の要件確認と業務統制を担当するため、請求人月を現在と同程度に保つことができる。
ただし、AIだけで仕事が際限なく増えるとは見ない。受託・研修の実質数量は現在を上限とし、単価は物価上昇程度の改善に限る。ライセンスも契約社数は増えないが、複雑な開発案件に対応する付加価値で年間単価は上がる。新設のAIコンサル子会社とマイクロコートの営業連携が機能し、売上高は43億円程度、営業利益は5億円程度へと回復する。
経営陣は無理な買収を避け、段階的な株主還元も始める。とはいえ、自前で法規制の記録基盤を保有したわけではないので、長期の超過成長までは認めない。過去の会計問題が実効的に解消され、10年後にようやく資本コストを少し超えるROEが見込める、達成難度の高い筋書きである。
- プロフェッショナルサービス(受託・研修):数量 1,400(年間請求可能人月(外注を含む換算値・推計))× 価格 0.03(請求人月当たり売上(億円/人月・名目、研修を含む))→ 売上 36 億円・営業利益 8 億円。2026年3月期実質人月の100%、名目単価1.34倍。AIによる工数代替を数量に反映。
- ソフトウェアライセンス販売:数量 60.0(年間有効契約顧客社数(推計))× 価格 0.12(1契約顧客の年間売上(億円/社・名目))→ 売上 7 億円・営業利益 1 億円。2026年3月期有効契約社数の100%、名目契約単価1.20倍。席・画面依存と代理店競争を反映。
倍率:AIエージェント代替を反映した10年超の名目g=0%、資本コストk=8.25%。堀は弱くRONICの超過利回りは3分の1しか残らないが、g=0%なので正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)=12.12倍となる。現金8億円から生じる税後利息0.112億円は純利益から控除し、その後の事業利益×12.12倍に8億円×戻り方0.75を足す。市場のPERから決めない。資本の道筋は直近の親会社自己資本24.56億円から、2027年3月期の純損失4.0億円、2028~2036年3月期の累計純利益約18.45億円、10年の還元1.5億円を差し引き・加算した約37.51億円である。
確率:過去の高い開発技術評価が採算に結びつき、会計統制まで立て直す必要がある。数量の上限を守っても採算改善幅が大きく、達成確率は11%にとどめる。
やや楽観 18% レガシー刷新需要を取って利益率が改善 利益 2 億円 · PER 12.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 873 円29 億円
大企業のレガシーシステム刷新は続き、同社も顧客の業務整理や段階的な移行を担う。OutSystemsの国内導入で蓄積した経験が案件獲得を支え、会計不正後に失った信用も数年かけて回復する。マイクロコートの地域顧客とAIコンサル子会社が、受託開発以外の相談窓口になる。
AIエージェントと顧客の内製化によって請求人月は現在の80%へ減少する。単価は物価に近い水準で上がるが、昔の人月売上のすべては戻らない。ソフトウェアライセンスは契約社数の小幅減を更新単価の改善で補う。総売上は約35億円、営業利益は約2.8億円になり、低収益期を抜ける。
2029年3月期の計画を完全に延長できるほどの独占力はなく、長期の利益には限界がある。新経営陣が研究開発費と案件管理の費用を厳格に管理し、小幅な自社株買いを続ける。資本効率はなお高くないが、主力の業務知識を保ち、会社としては十分に存続する筋書きである。
- プロフェッショナルサービス(受託・研修):数量 1,120(年間請求可能人月(外注を含む換算値・推計))× 価格 0.03(請求人月当たり売上(億円/人月・名目、研修を含む))→ 売上 29 億円・営業利益 5 億円。2026年3月期実質人月の80%、名目単価1.32倍。AIによる工数代替を数量に反映。
- ソフトウェアライセンス販売:数量 57.0(年間有効契約顧客社数(推計))× 価格 0.11(1契約顧客の年間売上(億円/社・名目))→ 売上 6 億円・営業利益 1 億円。2026年3月期有効契約社数の95%、名目契約単価1.15倍。席・画面依存と代理店競争を反映。
倍率:AIエージェント代替を反映した10年超の名目g=0%、資本コストk=8.25%。堀は弱くRONICの超過利回りは3分の1しか残らないが、g=0%なので正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)=12.12倍となる。現金8億円から生じる税後利息0.112億円は純利益から控除し、その後の事業利益×12.12倍に8億円×戻り方0.75を足す。市場のPERから決めない。資本の道筋は直近の親会社自己資本24.56億円から、2027年3月期の純損失4.0億円、2028~2036年3月期の累計純利益約9.55億円、10年の還元1.0億円を差し引き・加算した約29.11億円である。
確率:業務要件や移行支援の需要は根強いが、外部ソフトの代理店条件とAIによる工数減少は避けにくい。統制再建が一定程度進む18%の可能性とした。
中立 31% 人月減少と限定的な採算回復がつり合う 利益 1 億円 · PER 12.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 502 円17 億円
古い基幹システムの改修はなくならないが、顧客のIT部門はAIエージェントで要件整理、実装、テストの多くを内製化する。BlueMemeは難しい移行案件やプロジェクト管理を請け負い続けるものの、受託・研修の請求人月は現在の65%となる。単価は名目で25%上がるが、物価3%が続く世界では実質的な値上げ力は弱い。
OutSystemsなどの契約顧客数も80%へ減り、ライセンスの平均単価は10%程度しか上がらない。国内のローコード関連市場そのものは大きくても、Microsoft Power AppsやMendixとの競争と製品会社の代理店政策で同社のシェアは拡大しない。2029年3月期に掲げた売上48億円は持続的な実力としては達成しない。
一方、赤字案件の処理が終わり、採用・研究開発の重さが適正化することで、売上高約27億円でも営業利益約1.1億円は残る。2027年の調査費用は一時的な純損失として受け止めるが、その後の利益は大きくない。豊富な現金が事業の存続を助ける一方、株主還元は細く、ROEは資本コストに届かない。売上が小さくなる過程で売掛金と買掛金の差額を圧縮し、一部の投資有価証券を現金化できれば、当初は事業用に拘束されていた資産が株主に帰属する余剰現金へ移る。ただし、契約資産の回収に失敗すればこの追加価値は消える。
- プロフェッショナルサービス(受託・研修):数量 910(年間請求可能人月(外注を含む換算値・推計))× 価格 0.02(請求人月当たり売上(億円/人月・名目、研修を含む))→ 売上 22 億円・営業利益 4 億円。2026年3月期実質人月の65%、名目単価1.25倍。AIによる工数代替を数量に反映。
- ソフトウェアライセンス販売:数量 48.0(年間有効契約顧客社数(推計))× 価格 0.11(1契約顧客の年間売上(億円/社・名目))→ 売上 5 億円・営業利益 1 億円。2026年3月期有効契約社数の80%、名目契約単価1.10倍。席・画面依存と代理店競争を反映。
倍率:AIエージェント代替により10年超の名目g=0%、資本コストk=8.25%。ROEがkを下回るため、新規投資の超過利回りを計上しない稼ぐ力のPER上限1÷k=12.1212倍をそのまま使う。2026年3月期の売掛金・契約資産約20億円と買掛金約13.3億円を確認し、売上規模の縮小と回収条件改善で運転資金約2.5億円を現金化すると想定する。同年度の投資有価証券約1.54億円のうち約1億円の換価を想定し、当初の余剰現金8億円に加え2036年の余剰現金11.5億円とする。同現金の税後利息0.161億円を純利益0.836億円から除き、(0.836-0.161)×12.1212+11.5×0.75=約16.81億円と計算する。自己資本は2026年3月期の親会社株主持分24.56億円から、2027年3月期の純損失4.0億円、2028~2036年3月期の累計純利益1.95億円、還元0.4億円を反映し22.11億円になる。投資有価証券と回収した運転資金は自己資本の新規利益ではなく資産の現金化であり、資産価値を重複加算していない。
確率:案件の需要が残ることと請求可能な工数が減ることを同時に反映した中心像。2026年の低採算、2027年の特別費用、実現していない独自課金への転換を踏まえて31%とする。
やや悲観 25% 内製化と取引先の警戒で営業赤字が残る 利益 −1 億円 · PBR 0.7 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 499 円17 億円
大手顧客がAIを使って小規模な改修を内製化し、まとまった外注はNRIやTISなどの大手へ寄せられる。過去の虚偽開示に伴う品質や統制への不安も契約更新の交渉材料となる。BlueMemeはOutSystems案件の経験を生かして残るが、請求人月は現在の56%、名目単価は15%増にとどまる。
ライセンスの契約顧客も約7割へ減り、既存顧客が更新を見送る。売上は約22億円に縮小し、技術者の育成と案件監督の固定費を賄えなくなる。短期の調査費用とは別に通常業務でも営業赤字が残り、税効果の回収は見込まない。利益から高い株式価値を正当化できない。
一度は案件管理を改め、2028年から2035年にかけて小幅な純利益を確保するが、終盤に顧客の内製化が加速して赤字へ転じる。事業再編と人員調整で資金流出を抑え、残存現金だけでなく売掛金・契約資産を回収した残余が主な価値となる。PBRの基準は2036年の留保利益で膨らませず、訂正後の親会社自己資本を使う。資産回収と費用の圧縮が実現しなければ、この下値も守れない。
- プロフェッショナルサービス(受託・研修):数量 784(年間請求可能人月(外注を含む換算値・推計))× 価格 0.02(請求人月当たり売上(億円/人月・名目、研修を含む))→ 売上 17 億円・営業利益 2 億円。2026年3月期実質人月の56%、名目単価1.15倍。AIによる工数代替を数量に反映。
- ソフトウェアライセンス販売:数量 42.0(年間有効契約顧客社数(推計))× 価格 0.10(1契約顧客の年間売上(億円/社・名目))→ 売上 4 億円・営業利益 1 億円。2026年3月期有効契約社数の70%、名目契約単価1.05倍。席・画面依存と代理店競争を反映。
倍率:黒字が一度戻っても2036年には営業赤字となり、赤字年の利益を永続価値にはできない。過去の市場の谷のPBRを用いず、2026年3月期の親会社自己資本24.56億円を分母にして換価可能資産の床を測る。連結純資産25.15億円から非支配持分0.59億円、のれん0.18億円、繰延税金資産0.53億円、翌期調査関連費用3.94億円、債権回収損2.1億円、資産処分等の追加費用1.11億円を除くと約16.7億円である。稼ぐ力が赤字であるためこの床を上限・下限として、16.7÷24.56=PBR約0.68倍。過去の市場倍率を参照しない。自己資本の道筋は24.56-2027年損失4.0+2028~2035年の一時的な累計利益4.88-2036年損失0.88-還元0=24.56億円であり、資産基準の分母を利益留保で積み上げていない。
確率:AI代替だけで悲観の確率を重ねない。下に寄せる理由:2026年の取引不正認定と大口案件の損失引当、顧客が発注先を見直すリスクがあるため25%とする。
悲観 15% 信用を失い、外注開発が構造的に半減 利益 −2 億円 · PBR 0.7 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 444 円15 億円
AIによるコード生成と顧客内製化が広がるだけでなく、東証が求めた内部統制の改善にも時間がかかる。大口顧客は不正会計の再発を懸念し、要件整理を含む重要案件を別の開発会社へ移す。高位の技術認定は残っても、特定の顧客や開発基盤に選ばれる理由を十分に守れない。
請求人月は現在の45%まで落ち、ライセンス契約も半分になる。価格面でも、受託単価の上昇は5%にとどまり、ライセンスの単価は名目で下落する。売上は約16億円となり、維持に必要な開発管理・統制費が重荷となって、営業赤字は2億円を超える。税効果の確実な回収は想定せず、赤字はおおむねそのまま純損失にも及ぶ。研究開発や新規買収を抑え、事業を縮小または売却する方向に追い込まれる。
2027年の調査費用後、しばらくは小幅な黒字を確保するものの、2030年代に重要顧客の移管が重なって赤字が再燃する。事業整理の資金を得るため第三者割当で約37万株を発行し、既存株主の持分は約90%へ下がる。清算や事業譲渡を迅速に実行できるとは仮定しないが、現預金だけでなく、回収できる売掛金・契約資産から仕入債務や調査費用等を差し引く資産の床を見込む。この床が保てても超過利益は生まれず、企業全体の床と既存株主が受け取る取り分は別である。
- プロフェッショナルサービス(受託・研修):数量 630(年間請求可能人月(外注を含む換算値・推計))× 価格 0.02(請求人月当たり売上(億円/人月・名目、研修を含む))→ 売上 13 億円・営業利益 1 億円。2026年3月期実質人月の45%、名目単価1.05倍。AIによる工数代替を数量に反映。
- ソフトウェアライセンス販売:数量 30.0(年間有効契約顧客社数(推計))× 価格 0.09(1契約顧客の年間売上(億円/社・名目))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。2026年3月期有効契約社数の50%、名目契約単価0.95倍。席・画面依存と代理店競争を反映。
倍率:2036年には外注開発が構造的に細り、営業赤字2億円超が続く。利益の資本化価値はゼロに近いので、市場の過去PBRでなく親会社の現在自己資本24.56億円に対する換価可能資産から値付けする。帳簿にある非支配持分・のれん・繰延税金資産を除き、調査費用、債権回収損、事業整理費を織り込んだ床は16.5億円。PBRは16.5÷24.56=約0.67182倍となり、やや悲観および中立より低い。2027年純損失4.0億円、2028~2035年の一時的な累計純利益4.865億円、2036年純損失2.365億円と仮定する。さらに第三者割当による資本払込約1.5億円を受け、還元は0とすると24.56-4.0+4.865-2.365+1.5=24.56億円である。増資で得る資金は再編・運転資金に使うとし、換価床に重複加算しない。
確率:顧客喪失、代理店経済性の悪化、再発防止の遅延が同時に進む複合的な下振れ。現金の厚さにより直ちに倒産はしないとみて15%とする。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
プロフェッショナルサービス(受託・研修)
OutSystems等を使うコンサルティング、基幹システム受託開発、技術者向け研修。AI代替区分は「人月・工数で売る」。
| 数量年間請求可能人月(外注を含む換算値・推計) | 価格請求人月当たり売上(億円/人月・名目、研修を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,400 | 0.02 | 27 | 3 |
| 10 年後 中立 | 910 | 0.02 | 22 | 4 |
取り方:2026年9月30日公表の訂正決算短信の収益認識注記では、受託開発26.77044億円・研修0.40180億円で計27.17224億円。会社は年間人月を公表していない。従業員約167~184名と協力会社利用を考慮し、月平均117人相当×12か月=約1400請求人月と推計し、売上÷1400で約194万円/人月とする。人月と単価は逆算した仮定であり実測ではない。営業利益2.717億円は本社共通費配賦前の分析用10%寄与で、会社の報告部門利益ではない。
ソフトウェアライセンス販売
OutSystems、Creatioなど他社製ローコード基盤を販売・更新支援する。AI代替区分は「席・画面中心の業務ソフト」であり、自社保有の記録の正本ではない。
| 数量年間有効契約顧客社数(推計) | 価格1契約顧客の年間売上(億円/社・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 60.0 | 0.10 | 6 | 1 |
| 10 年後 中立 | 48.0 | 0.11 | 5 | 1 |
取り方:2026年9月30日公表の訂正決算短信の収益認識注記にソフトウェアライセンス販売5.81615億円と記載。会社は同年度の有効契約社数・ID数と年間単価を未開示。累計取引社数約660社はストックでなく累計と区別し、60有効契約社×年約969万円という仮の構成で売上を説明する。会社公表の内訳ではない。営業利益0.582億円は本社費配賦前10%の分析用寄与であり、全社調整−2.82477億円を引いて営業利益0.47423億円に一致させる。
リスクと懸念
会計不正の再発と上場規律
東証は2026年10月23日、虚偽開示と上場審査時の不実記載に関して改善報告書の提出と960万円の違約金を求めた。過去の社長による取引証憑の隠蔽が認定され、内部通報制度と監査役会の機能も問われた。是正が遅れれば取引先の与信、監査費用、将来の資金調達条件に影響する。上場廃止が現在決定したとの情報ではなく、まず改善状況を追う。
AIエージェント代替による人月減少
設計・プログラミング・テストをAIエージェントが自動化すれば、同じ成果に要する請求人月が減る。顧客が内製化できる範囲が広がれば、外部開発の契約そのものが小さくなる。受託・コンサル・研修を人月型として2036年の中立数量を65%に抑え、利益率回復だけで高成長を期待しない。
ライセンス基盤の他社支配
主力のOutSystemsは同社独自の知的財産ではなく、ライセンス価格や代理店条件、プラットフォームの進化を製品会社が決める。Microsoft Power Apps、Mendix、ServiceNow等との競争が強まり、顧客がAIで画面を直接操作しなくなると、利用人数を基礎とする売上と更新単価の双方が圧迫される。
長期案件の赤字と運転資金
2026年3月末の受注損失引当金は約0.89億円、売掛金・契約資産は約20億円と大きい。検収の遅れや品質問題が生じると、売上の計上と入金の間にずれが生まれる。預金の存在だけで営業キャッシュフローが安全とは限らず、さらに調査関連費用が予定より増える可能性もある。下値の資産評価も債権回収を前提とするため、回収率が大幅に下がれば16億円台の資産の床を維持できない。
新計画・持株会社化とM&Aの実行
2029年3月期の売上48億円・営業利益3億円は、受託工数主体から継続課金や独自技術への転換を含む計画である。2025年のマイクロコート買収や新設子会社、持株会社化が増分利益を生まなければ本社費だけが重くなる。買収価格、のれん、関連投資の減損と株式の希薄化を追う必要がある。
純現金の帰属と少数株主の還元
2026年3月末の現預金約17.02億円から少額の借入金を引いても資金は厚いが、2027年に約3.94億円の調査関連費用が予定される。契約負債や損失案件への支払いも必要だ。利益が十分でない中の自己株買いが最適かは疑問で、少数株主が現金の全額を迅速に受け取れるとは限らない。
今後の分かれ目
- 2026年11月24日の改善報告書と監査人の後続評価で内部統制の実効性が確認できたら
- ガバナンス起因で厚くした悲観側の確率を見直す。ただしAIによる工数減少と製品の代理店リスクは残す。
- 2029年3月期までに売上48億円・営業利益3億円へ近づき、営業キャッシュフローも利益に追随したら
- 利益率と再投資利回りの改善を実証したとして、やや楽観・楽観側の確率を引き上げる。
- 受託の請求人月が減っても、成果報酬や独自AI製品の有償受注額が継続的に開示されたら
- 人月型から新しい収益型へ移る実額だけを分けて再評価する。単なるAI活用の実証事例だけでは数量予測を増やさない。
- ソフトウェアライセンスの有効契約数・解約率・単価が開示され、解約率5%未満などが継続したら
- 現状の席課金・代理店型という扱いを再点検する。記録の正本としての規制対応や移行費用の別の証拠も必要だ。
- 大型受託案件の追加損失や調査費用の増額で現預金が大幅に減ったら
- 余剰現金と売掛金・契約資産の回収可能額を再計算し、悲観の床と中立の現金化想定を同時に引き下げる。単なる資産簿価を下値保証とはみなさない。
- 再編後に買収・設備投資が続くのにROEが資本コスト8.25%を下回り続けたら
- 再投資を通じた成長価値を付けず、分配可能な現金と既存事業の稼ぐ力を中心に評価する。
見ておくもの
- 東証への改善報告書提出とその後の改善状況報告書、監査人の意見
- 受注残高、受注損失引当金、大型案件の検収遅延
- 受託の有償請求人月と実現単価、AI関連の独立した受注金額
- ライセンスの有効契約社数、解約率、更新価格、代理店条件
- 営業キャッシュフローと売掛金・契約資産、2027年調査関連費用の最終額
- マイクロコートとAI子会社の投下資本利益率、配当と自己株買いの実績
- 2026年3月期の売掛金・契約資産約20億円の入金状況と、大型債権の回収不能額
倍率と資本コストの決め方
添付の基準株価・株数による比較時価総額は16.26642億円。受託・研修とライセンスの開示売上を起点に、未開示の人月・有効契約数は仮置きと明記し、AIエージェント代替を数量に、物価と競争を単価に反映した。資本コスト8.25%と長期成長率0%から正当化PERは12.1212倍。中立は規模縮小で運転資金2.5億円を解放し、投資有価証券約1億円の換価を足して、余剰現金11.5億円とした。これを事業利益と分け、戻り方0.75で評価する。悲観は今の親会社自己資本24.56億円を起点に債権回収損・調査費・換価費用を除き、16.5億円の床を求めた。第三者割当による既存株主の持分0.90を最後に掛ける。現在の株価と過去の市場倍率には合わせない。新リース基準の表示変更は賃料費用を揃えて比較する。
資本コスト 12.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。国債3%と株式リスクプレミアム4.5%から基準7.5%、事業の循環+0.5%、値決め力+0.5%、厚い純現金−0.25%の合計で8.25%。規模・βの補正や不祥事の個別上乗せは使わない。