結論
SYSホールディングスは、製造業の組込み制御と金融・鉄道などの基幹システムを支える名古屋発の情報サービス企業だ。筆者の結論は「割高」である。小規模企業を繰り返し買収し、技術者と顧客を増やした足跡は確かだが、その売上の大半は人が開発する工数と引き換えに受け取るものだからだ。AIエージェントが設計、実装、試験、保守の流れを変える10年に、過去の売上成長をそのまま延ばすわけにはいかない。
2026年7月期は売上約157億円、営業利益約8億円となり、長年の成長を裏付けた。一方、当初計画に対して売上は7%、営業利益は約24%不足した。会社が明かした退職者の増加、赤字案件、技術者の稼働減少は、人員を買い足せば自動的に利益が増えるわけではないことを示す。金融・社会基盤の顧客との長い付き合いは強みだが、案件の切り替えに手間がかかることと、課金の単位を守れることは別問題である。
純現金は厚く、倒産を心配する会社ではない。現金・流動有価証券から借入金を引くと約27億円ある。ただし買収、給与、運転資金にも使われ、少数株主へ即時に全額が渡る資産ではない。10年先の5つの筋書きを利益と還元で測ると、現在の約59億円の時価総額には安全域が見えない。確率加重後の現在価値は約41億円で、現在の時価総額を約30%下回る。逆転の条件は、開発者の人数ではなく顧客が得る成果で値付けし、AIによる省力化の利益を自社に残せるようになることだ。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主が買うのは、将来の売上高ではなく自由に使える現金である。SYSホールディングスは2026年に営業活動から約6億円の現金を稼いだ。しかし採用、教育、賃上げ、買収、拠点の整備に継続的に資金が必要となる。のれん償却は非現金費用だが、その元となる買収代金は現実に支払われている。高い売上成長を実現しても、稼ぎを維持するため買収が不可欠なら、自由に配れるオーナー利益は会計上の利益より小さくなる。投下した買収資金に対して、既存顧客の仕事を増やせるかを追わねばならない。
顧客の現場を深く知る能力には価値がある。車載制御や鉄道システムの改修は失敗の許されない仕事であり、長年の品質実績が次の受注を生む。ただし、その強みを価格へ転嫁できるかは別の話だ。現在の資料には顧客が他社へ移れないほどの独自製品や、法令改正のたびに値上げできる共通基盤の証拠がない。堀は顧客ごとの信頼に依存し、大型案件の失注や技術者の退職で目減りする。
AIの導入によって設計や検証を効率化し、従来の半分の工数で同じ案件を納める世界が来ても、それは社会全体には良いことだ。しかし発注側が節約した時間を代金から差し引くなら、受注側の株主利益は増えない。経営が成果物の責任を引き受け、価格の決め方を変えられるかを確かめる必要がある。
純現金に厚みがあり財務的な安全性は高い。だが、不足した堀を資産の多さだけで補い、資本コストを大きく超える利益が永遠に続くと見なすことはできない。現時点での安全域は乏しく、利益率よりむしろ顧客単位の契約の質と現金の還元を見極めたい。
何で稼ぐ会社か
売上を支えるのは総合情報サービスの単一報告セグメントだが、開示上は三つのソリューションに分かれる。グローバル製造業向けは自動車の電子制御、搬送機、鉄鋼、産業機械などの制御・組込み開発が中心で、2026年7月期の売上は約58億円だった。社会情報インフラ向けは約96億円と最大で、金融、鉄道、エネルギー、官公庁向けの業務システム開発や運用を担う。モバイル向けは約3億円で、アプリの受託開発、製品の個別改修、保守・利用料を組み合わせる。
中核のエスワイシステムのほか、組込み技術を持つ総合システムリサーチやSYIなど、専門性の異なる子会社を束ねている。2026年7月末のグループ従業員は約1,685人で、顧客に割り当てる技術者と外部協力会社の工数が売上の土台となる。元請けに近づき、仕事を細分化した二次請けから、プロジェクト全体の責任を負う側へ進めるほど付加価値が上がる。ただし技術者稼働月数、平均請求単価、各分野の営業利益は開示していないため、数量と単価は従業員規模と実際の分野別売上から推計している。
モバイルには少額の利用料・保守料が含まれるが、開示からは繰り返し課金の割合や解約率を特定できない。製造業の監視制御ソフト「Ignition」の認定インテグレーター事業も、顧客の工場に入り込む足場にはなるものの、自社が記録の正本を握る独占的な製品ではない。ここを製品企業として評価せず、まず受託・人月型の性質から出発する。
優良さと弱いところ
競争力の源泉は、長年の受託で蓄積した顧客固有の仕様と、買収先を含む技術者集団を案件に合わせて動かす力にある。製造ラインの制御や金融・鉄道の基幹業務は停止が許されず、新しい業者へ一斉に切り替えるには検証と引き継ぎが要る。会社は元請け比率が過半に達したことを開示しており、単なる人員供給から責任ある開発への移行には進展がある。2026年までに多数の小規模買収を重ね、領域を広げながら長期黒字を維持した点も軽視できない。
しかし、堀、つまり顧客が多少高くても取引を続ける理由は狭い。価格改定を毎年通した実績、顧客別解約率5%未満、独占的な共通基盤、固有データの排他性は確認できなかった。製造業も社会情報インフラも、実質的には他社の仕様と予算に沿って人の仕事を売る。大手のTIS、日鉄ソリューションズ、NSD、システナに対して、グループ全体の規模と自社製品比率では優位とは言いにくい。
2026年の売上は増えたものの、退職者増と不採算案件が利益率を押し下げた。こうした採用、配置、品質管理の失敗は、積み上げた資本の稼ぐ力を損なう。ROEの長期中央値は約12%だが、買収に使う1円が同じ利回りを生む保証はない。現金余力は強い半面、のれんの未償却残高は約6億円あり、取得先が伸びなければ株主資本の質が薄くなる。再投資の上手さは買収社数ではなく、既存事業の生産性と買収後の現金収益で判定したい。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内ITサービス市場は、IDC Japanによれば2024年に約7兆円、2029年に約9兆7千億円へ拡大する予測である。金融の基幹システム更改、企業の老朽システム刷新、公共分野のデジタル化が当面の追い風になる。富士通、日立製作所、NEC、NTTデータなどが上位を占め、SYSホールディングスの売上は同市場全体の約0.2%に過ぎない。製造業向けの一部には、矢野経済研究所が2025年約8,766億円と推計した国内車載ソフトウェア市場が重なるが、同社の製造業向け全売上をそこに含めることはできない。市場全体の高い成長率は、小さな受託会社のシェア上昇を約束しない。
最も大きい転換点はAIエージェントである。ソフト開発の設計書作成、コード生成、検証、運用監視を自動化できるほど、顧客は同じ成果のために買う人月を減らせる。社員を新規案件へ再配置できれば会社には好機となるが、成果を顧客が安く発注できるなら人数増による売上成長は鈍る。受託と人員供給に近い二つの事業区分は、10年間の中立的な請求工数が現在の6〜7割になる構図を中心に考える。単価も物価並みの上昇が上限であり、値上げによる利益拡大を前提にしない。
車載の組込み制御は安全性と実機検証が必要で、一般事務のソフトより置換は遅くなろう。半面、大手自動車メーカーと部品メーカーが開発ツールを統一し内製化を進めれば、中小受託会社の工程は減る。社会インフラでも運用継続の責任は残るが、定型改修や試験の工数は削られる。2036年まで需要がなくなるとは考えないものの、必要なシステムが増えることと請求できる工数が増えることは切り分けるべきだ。
資本政策と M&A
資本配分の中心は小型M&Aである。2025年にはHTCやアイビーシステムなどをグループに加え、2026年2月にはサンライジングコーポレーションを取得した。会社は26社の買収が成功したと説明するが、その基礎資料には未監査の社内管理数値が含まれる。2026年7月期だけでも子会社株式取得に約3億円を使い、のれん償却は約1.5億円だった。買収後売上の拡大と、株主に残る増分利益は区別する必要がある。
中期経営計画「SYSTarget2028」は2028年7月期に売上220億円、営業利益15億円、純利益9.2億円、ROE17.3%を掲げ、2030年売上300億円も目指す。しかし計画初年度の2026年は売上・利益とも当初想定を下回り、2027年予想も計画策定時の数値より低い。配当は2024年以降も増額し、2027年も連続増配を見込むが、計画に連結配当性向、DOE、総還元性向、買戻し額の数値約束はない。足元の配当性向は約15%で、利益の大部分が内部に残る。
上位株主の集中度は高い一方、過去5年は増配が続いているため、余剰現金を半額しか株主価値に算入しない極端な支配株主割引にはしない。それでも自社株買いの規模は小さく、将来の現金をすべて還元すると断定できない。持続可能な買収価格と、開発現場の離職率を下げる人材投資の利回りが最も重要な配分判断である。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
同社には見かけ以上に根強い顧客基盤がある。金融や鉄道、製造設備の制御ソフトは継続して更新され、問題が起きた時に原因を追える開発会社への信頼は簡単に失われない。案件の大型化に伴い、単純な派遣会社が受注の上流から外れる一方、子会社を束ねたSYSホールディングスは受託の全体責任を持つ機会を増やせる。製造と社会基盤の双方に顧客を持つ構成も、一つの業種の設備投資が止まった時の緩衝材になる。
M&Aの履歴には独自の意味がある。小型案件を繰り返し統合してきた経験、技術者の採用・育成制度、主要拠点の顧客との関係は、新しい参入者が一夜で複製できない。子会社ごとの営業を共同化し、外部パートナーを柔軟に使えば、AIで効率化した工程を成長する案件へ振り向けられる。会社が掲げる大型案件の責任受託への転換が進めば、人員数が増えなくても管理利益とプロジェクト当たりの単価が上がる。
また、27億円前後の純現金は時価総額の大きな部分を占め、景気後退時の採用と買収を支えられる。投資回収の規律を強め、手元資金を還元へ振り向ければ、現在の本質価値が上振れる道もある。成長計画自体は強気だが、顧客の技術的な制約は長期間残るため、一律に小規模SI事業が消えるわけではない。
慎重な見方
事業の過去の拡大は、多数の事業会社を買い、そこにいる技術者の稼働を合算するモデルだった。これは工数課金が続く限りは働くが、顧客が自社のAIエージェントで設計、修正、テスト、監視を回すようになれば、買収した技術者の人数がそのまま請求の源泉になるとは限らない。日本のITサービス市場が名目で伸びても、内製化と自動化によって外部の開発工数が減る可能性がある。名目成長する市場で売上が減ることは、少数の顧客に依存する開発会社では十分に起こり得る。
2026年には現実に退職増と赤字プロジェクトが発生し、当初利益計画を大きく下回った。将来の大型案件ほど責任範囲が広がり、仕様変更と不具合の費用を自社で負う。2028年の中期目標は魅力的でも、達成できなかった1年を説明せず、そのまま2036年へ成長線を伸ばすことはできない。買収先の統合が難航すれば、教育費と管理費だけが増え、のれんを減損する。
資本政策も評価を難しくする。大株主への集中が進み、配当性向は依然低く、自社株買いも限定的だ。純現金の額を少数株主が自由に引き出すことはできず、その現金が将来の割高な買収に変われば帳簿の安全域は小さくなる。AIを活用する経営姿勢と、AIを商品として高額に売れるという証明は別物である。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方をやや重く評価する。会社の買収経験と継続顧客には実績があり、破綻リスクは低い。しかし、2026年の計画未達、離職による稼働減少、買収後の収益の検証難という会社固有の問題がある。AI代替による中立の工数縮小は既に数量に含めたので、確率でもう一度同じ理由を引かない。上側29%に対して下側40%としたのは経営の実行と資本配分の不確実性のためである。10年先の現金利益を現在に割り戻すと、時価総額を約3割下回り、割高との結論になる。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/07 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 664 円70 億円(+ 還元の換算額還元の合計 86 円9 億円)。 今の値に割り戻すと 391 円41 億円、今との差 −29.7%、 期待の年率 +3.3%(資本コスト 7.2%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 11% | 1,507 円160 億円 | 170 円18 億円 | +201.7% | +12.6% | 185 円20 億円 |
| やや楽観 | 18% | 1,089 円115 億円 | 132 円14 億円 | +119.7% | +8.8% | 220 円23 億円 |
| 中立 | 31% | 633 円67 億円 | 85 円9 億円 | +29.1% | +2.8% | 223 円24 億円 |
| やや悲観 | 26% | 279 円29 億円 | 52 円6 億円 | −40.5% | −5.4% | 86 円9 億円 |
| 悲観 | 14% | 242 円26 億円 | 28 円3 億円 | −51.4% | −7.3% | 38 円4 億円 |
| 加重平均 | 100% | 664 円70 億円 | 86 円9 億円 | +35.0% | +3.3% | 751 円79 億円 |
今の株価時価総額 556 円59 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 11% 大型責任受託への転換が実る 利益 11 億円 · PER 13.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,507 円160 億円
製造業と金融・社会基盤で顧客のシステム更新が続く。SYSホールディングスは子会社の技術を束ね、大手企業から大型案件を一括して請け負うようになる。AIが単純な実装や試験を代替しても、複雑な要件の整理と実機検証を含む成果物への責任で対価を受け取る。製造向けと社会インフラ向けの請求工数は現在より少し減るが、物価並みの単価上昇を維持し、契約範囲の拡大で採算が改善する。
2026年に露呈した離職と赤字案件の問題も立て直す。買収先の採用・営業を共同化し、サンライジングコーポレーションなどの組込み開発力を既存顧客へ横展開できる。国内のITサービス市場の拡大で大手が受け切れない専門案件を取り、ニッチな市場での占有率は小幅に改善する。ただし工数の数量が現在を上回るほどのAI関連新商品売上は開示されていないため、強気でも仕事量自体の大幅拡大は想定しない。増益で配当は徐々に増え、財務の強さが続く。
- グローバル製造業ソリューション:数量 5,200(年間の顧客向け請求人月(自社・協力会社合算、推定))× 価格 0.01(請求人月当たり売上高(億円、人件費・外注費を含む総額請求単価))→ 売上 74 億円・営業利益 6 億円。工数は現在の0.95倍。実機検証を含む責任受託が増え、利益率が改善する。AIの自社新商品による数量成長は証明されていないので1.0倍以下。
- 社会情報インフラ・ソリューション:数量 8,850(年間の顧客向け請求人月(自社・協力会社合算、推定))× 価格 0.01(請求人月当たり売上高(億円、名目))→ 売上 125 億円・営業利益 10 億円。2026年実績に対し数量0.98倍、名目単価1.33倍。営業利益は事業別非開示の推定。
- モバイル・ソリューション:数量 39.0(年間の有償案件・契約件数(利用・保守・個別改修を束ねた推定等価件数))× 価格 0.08(年間一案件・契約当たり売上高(億円、名目))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。2026年実績に対し数量0.98倍、名目単価1.15倍。営業利益は事業別非開示の推定。
倍率:PER上限はg_long=0%、k=7.25%による1÷k=13.793倍。高ROEでも追加成長を倍率に織り込まず、余剰現金10億円の税後利息1.4%控除と株主への帰属率0.75を別計算する。
確率:既存の顧客関係を生かして責任受託へ転じる上振れ。人月の実質減少は避けられなくても名目単価と案件利益率が伸びるには品質と稼働管理が同時に改善する必要があり、実現確率は小さめ。
やや楽観 18% 顧客基盤と採算の改善が続く 利益 8 億円 · PER 13.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,089 円115 億円
金融・鉄道・製造の基幹システムは10年後も運用と更改が必要である。SYSホールディングスは元請け比率を高め、案件の仕様決定や管理工程を担うことで顧客との関係を保つ。実装・試験の人月は現在の8割程度へ縮み、受託単価は物価におおむね沿って上がる。案件数の維持と単価改善で、名目売上は今を上回るものの、過去10年のような買収を伴う高成長には届かない。
経営は赤字プロジェクトの見積もり改善と技術者の定着に成功し、収益率が会社の中期目標に近づく。小規模買収は続くが、実質的な仕事量が増えない部分の買収を控え、収益性の高い顧客に集中する。主要な競争相手である大手SIとの差は残るが、産業分野に根付いた中堅企業として存続する。内部留保が積み上がるためROEは低下するが、配当は増益に沿って増えていく。
- グローバル製造業ソリューション:数量 4,500(年間の顧客向け請求人月(自社・協力会社合算、推定))× 価格 0.01(請求人月当たり売上高(億円、人件費・外注費を含む総額請求単価))→ 売上 63 億円・営業利益 4 億円。工数は現在の0.82倍。顧客の大規模更改と買収先統合で売上の一部を維持するが、人月減少を免れる前提にはしない。
- 社会情報インフラ・ソリューション:数量 7,300(年間の顧客向け請求人月(自社・協力会社合算、推定))× 価格 0.01(請求人月当たり売上高(億円、名目))→ 売上 103 億円・営業利益 7 億円。2026年実績に対し数量0.81倍、名目単価1.32倍。営業利益は事業別非開示の推定。
- モバイル・ソリューション:数量 35.0(年間の有償案件・契約件数(利用・保守・個別改修を束ねた推定等価件数))× 価格 0.07(年間一案件・契約当たり売上高(億円、名目))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。2026年実績に対し数量0.88倍、名目単価1.13倍。営業利益は事業別非開示の推定。
倍率:g_long=0%、k=7.25%でPER上限13.793倍。資産価値の二重計上を防ぎ、余剰現金10億円の利息控除後の利益にPERを掛け、現金の75%を足す。
確率:買収会社の管理が進み、既存の長期顧客を維持できる一方、人月がAIで減る効果を一部しか補えない展開。技術面の対応は十分あり得るが、利益率上昇の実績はまだ限定的。
中立 31% 人月需要が縮み、会社は小さく安定する 利益 4 億円 · PER 13.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 633 円67 億円
金融、鉄道、工場のシステムを維持する仕事そのものは消えない。しかし顧客がAIエージェントで日常の開発と保守を進めるようになり、SYSホールディングスが顧客へ請求する人月は減る。製造業向けは現在の7割弱、社会情報インフラ向けは6割強まで減る。名目単価は人件費と物価に近いペースで上昇するが、請求できる実質工数の減少を埋め切れない。モバイルの保守も操作画面の自動化で単価が伸びにくい。
会社は買収の一部を縮小し、品質管理と人材育成に資金を振り向ける。大型の責任受託は確保するものの、大手SIに対する明確な価格決定力は得られず、利益率は現在に近い水準にとどまる。2028年の強い計画に比べ2036年の名目売上は小さく、投下利益よりも内部留保の蓄積が先行する。それでも無理な借入はせず事業は続き、利益から細く配当を出し続ける。株主の価値は高い成長期待ではなく、残る顧客と現金が支える。
- グローバル製造業ソリューション:数量 3,750(年間の顧客向け請求人月(自社・協力会社合算、推定))× 価格 0.01(請求人月当たり売上高(億円、人件費・外注費を含む総額請求単価))→ 売上 52 億円・営業利益 3 億円。AI代替の人月型を適用し製造工数0.682倍、社会0.628倍、モバイル案件相当0.75倍。単価はそれぞれ約1.29、1.28、1.12倍で、物価3%に及ばない部分は価格競争のため。
- 社会情報インフラ・ソリューション:数量 5,650(年間の顧客向け請求人月(自社・協力会社合算、推定))× 価格 0.01(請求人月当たり売上高(億円、名目))→ 売上 77 億円・営業利益 4 億円。2026年実績に対し数量0.63倍、名目単価1.28倍。営業利益は事業別非開示の推定。
- モバイル・ソリューション:数量 30.0(年間の有償案件・契約件数(利用・保守・個別改修を束ねた推定等価件数))× 価格 0.07(年間一案件・契約当たり売上高(億円、名目))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。2026年実績に対し数量0.75倍、名目単価1.12倍。営業利益は事業別非開示の推定。
倍率:基準期の自己資本42.42億円から10年の累積利益約49.4億円と配当・買戻し約9億円を通して自己資本約82.8億円。ROE約5.4%はk7.25%以下のため、倍率上限は利益の稼ぐ力1÷k=13.793倍。余剰現金の利息を控除して二重加算を防ぐ。
確率:現在の売上の約98%が受託型で、AIエージェントが定型開発と試験の工数を減らす。中立はこの構造変化を数量で直接織り込み、需要が消えずに顧客の重要案件だけが残る見通し。
やや悲観 26% 内製化と案件採算の悪化が重なる 利益 2 億円 · PER 13.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 279 円29 億円
大手顧客はシステム更改を続けるが、AIを取り込んだ社内チームと大手SIが上流工程を押さえる。SYSホールディングスは既存プロジェクトの定型部分を失い、専門人材の退職によって難度の高い仕事まで受け切れない。製造業の工数は約半分、社会インフラの工数も半分程度となり、値上げは物価より遅れる。継続案件はあるので会社は存続するが、固定的な研修費や拠点費が薄い売上を圧迫する。
経営は採用を抑えて稼働率を立て直すものの、過去の買収で取得した技術と顧客の維持に費用がかかる。競合の大手と価格競争が続き、利益率は3%未満まで落ちる。余剰現金の一部は事業の再編に使われ、将来の還元は縮む。既存の取引関係と現金は会社を支えるが、資本を増やすほどROEが悪化する。弱い案件の撤退と小規模ののれん減損が自己資本の増加を抑える。
- グローバル製造業ソリューション:数量 2,970(年間の顧客向け請求人月(自社・協力会社合算、推定))× 価格 0.01(請求人月当たり売上高(億円、人件費・外注費を含む総額請求単価))→ 売上 37 億円・営業利益 1 億円。受託案件の顧客内製化が進み製造工数0.54倍、社会0.49倍。物価に負ける単価と採用調整の遅れから全社利益率は3%未満。
- 社会情報インフラ・ソリューション:数量 4,450(年間の顧客向け請求人月(自社・協力会社合算、推定))× 価格 0.01(請求人月当たり売上高(億円、名目))→ 売上 53 億円・営業利益 2 億円。2026年実績に対し数量0.49倍、名目単価1.11倍。営業利益は事業別非開示の推定。
- モバイル・ソリューション:数量 22.0(年間の有償案件・契約件数(利用・保守・個別改修を束ねた推定等価件数))× 価格 0.07(年間一案件・契約当たり売上高(億円、名目))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。2026年実績に対し数量0.55倍、名目単価0.99倍。営業利益は事業別非開示の推定。
倍率:ROEは2.05÷63.0=3.3%で資本コストを下回るためPERは上限13.79倍以下とする。事業の継続リスクで13.0倍を用い、残余現金5億円について1.4%の税後利息相当を控除後、戻り方75%で加算する。
確率:案件管理の失敗や退職率の悪化は2026年に既に確認されたため、中立のAI工数縮小以上に顧客への受託競争で劣後する恐れを無視できない。下に寄せる理由:中期計画初年度の未達と買収先統合の不透明さ。
悲観 14% 人月モデルの構造的な敗北 利益 −1 億円 · PBR 0.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 242 円26 億円
顧客は新しいシステムを使い続けるが、開発の大部分をAIエージェントと自社部門で進め、外部委託の工数を根本的に減らす。SYSホールディングスの受託は残存する維持案件に偏り、製造業・社会インフラの両分野で請求人月が現在の4割程度に落ちる。新しい受託競争では大手SIに重要な顧客を奪われ、価格は物価に追いつかない。モバイルのカスタマイズも顧客が自力で実施し、売上は全社で現在の半分弱に縮む。
過去の小型買収が利益に結び付かず、のれんの償却・減損と人員整理が続く。薄い売上に対して顧客対応や固定費を急に減らせず、営業損益は赤字へ転じる。株主資本も減損で減るが、預金と流動有価証券の一部は残り、すぐに倒産する状況ではない。事業の稼ぐ力による価格は見込めないため、負債と事業継続の必要資金を差し引いた換金可能資産を価値の床とする。
- グローバル製造業ソリューション:数量 2,300(年間の顧客向け請求人月(自社・協力会社合算、推定))× 価格 0.01(請求人月当たり売上高(億円、人件費・外注費を含む総額請求単価))→ 売上 26 億円・営業利益 0 億円。請求工数は現在の0.42倍。営業赤字に転じるため稼ぐ力のPERではなく、資産売却で回収可能な最低限の価値を採用する。
- 社会情報インフラ・ソリューション:数量 3,600(年間の顧客向け請求人月(自社・協力会社合算、推定))× 価格 0.01(請求人月当たり売上高(億円、名目))→ 売上 42 億円・営業利益 0 億円。2026年実績に対し数量0.40倍、名目単価1.11倍。営業利益は事業別非開示の推定。
- モバイル・ソリューション:数量 18.0(年間の有償案件・契約件数(利用・保守・個別改修を束ねた推定等価件数))× 価格 0.06(年間一案件・契約当たり売上高(億円、名目))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。2026年実績に対し数量0.45倍、名目単価0.91倍。営業利益は事業別非開示の推定。
倍率:のれん約5.63億円は換金不可。将来の買収の失敗による追加のれん・無形資産の減損や累積損益を反映して2036年の自己資本を32億円へ減らし、その0.80倍の25.60億円を資産型評価とする。床25.50億円は2026年の現預金40.01+流動有価証券2.80−有利子借入15.46=純現金27.35億円から、給与・履行義務に最低限必要な約1.85億円を控除して求め、回収不確実な売掛金やのれんを二重算入しない。
確率:需要の消滅ではなく、工程自動化・顧客内製化・失敗した買収が同時に起きる厳しい筋書き。過去の大きな売上拡大と同じ割合で企業価値が保たれるとは考えない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
グローバル製造業ソリューション
自動車ECU、搬送機、鉄鋼、工作機械などの組込み・制御系開発。開示上は外部売上58.45億円で、顧客契約と技術者の請求工数が中心。
| 数量年間の顧客向け請求人月(自社・協力会社合算、推定) | 価格請求人月当たり売上高(億円、人件費・外注費を含む総額請求単価) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/07 | 5,500 | 0.01 | 58 | 3 |
| 10 年後 中立 | 3,750 | 0.01 | 52 | 3 |
取り方:2026年7月期短信の実売上5,844,948千円を出発点とする。顧客別実請求人月と平均単価は非開示。2026年7月末の連結社員1,685人、外部パートナー活用、製造分野売上構成37.3%を突き合わせ、製造分野の稼働を年間約5,500請求人月、1人月約106.3万円と仮定した推計であり、従業員数そのものを請求月数と混同しない。営業利益3.4億円は全社利益7.98億円を顧客案件の原価構造で推定配分したもので非開示。2025年国内車載ソフト市場8,766億円(矢野経済研究所、https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/4105)は内製部分を含み、同社売上の一部しか対象にしないため厳密なシェアを導けない。AIエージェント代替型は人月・工数であり、中立請求数量0.68倍、価格1.29倍、長期g0%。
社会情報インフラ・ソリューション
金融・鉄道・エネルギー・官公庁等の基幹システム受託開発と運用。2026年7月期売上95.66億円で全社の61.0%を占める。
| 数量年間の顧客向け請求人月(自社・協力会社合算、推定) | 価格請求人月当たり売上高(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/07 | 9,000 | 0.01 | 96 | 5 |
| 10 年後 中立 | 5,650 | 0.01 | 77 | 4 |
取り方:2026年7月期短信の実売上9,565,860千円と全社1,685名を照合し、金融・社会基盤案件の年間請求量を約9,000人月(自社+協力会社の請求換算)と推定。平均約106.3万円/人月は売上との整合を確認した推定値で、会社公表の単価ではない。競争市場の比較母集団はIDC国内ITサービス2024年7兆205億円(https://smb-cloud.org/?p=1765)、うち金融・公共・インフラの対象市場は公表値がないため市場全体を参考にする。同社の合算市場シェアは約0.2%、当部門単独のシェアは厳密に不明。利益4.5億円は全社利益からの推計配分である。AIエージェント代替型は人月・工数。規制の正本となる独自DBや解約率など堀の証拠が二つないため、中立数量0.63倍、価格1.28倍、長期g0%。
モバイル・ソリューション
モバイルアプリの受託開発、カスタマイズ、保守と製品利用料。売上2.63億円の小事業。
| 数量年間の有償案件・契約件数(利用・保守・個別改修を束ねた推定等価件数) | 価格年間一案件・契約当たり売上高(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/07 | 40.0 | 0.07 | 3 | 0 |
| 10 年後 中立 | 30.0 | 0.07 | 2 | 0 |
取り方:2026年7月期の外部売上262,890千円を基礎に、利用料・保守と個別カスタマイズを合わせた年間約40案件・契約、1件あたり657万円と仮に換算。実契約数、席数、解約率、保守売上比率は非公表であり市場シェアも算出不可。売上の大部分が受託開発と確認できる一方、少額の利用・保守課金は席・操作画面型の代替圧力を受けるため、中立契約相当数0.75倍、価格1.12倍、長期g0%。堀の条件を満たす記録の正本ではない。利益0.078億円は非開示の推計値。
リスクと懸念
AIエージェント代替と工数課金の構造変化
売上の98%超に相当する製造・社会インフラの二部門は、実質的に人月と請負工数で稼ぐ。AIがコード、試験、運用の作業量を減らすと、顧客のシステム投資が増えても発注工数は減り得る。中立では二部門の請求数量が10年で約6〜7割になる影響を既に売上とgに反映しており、資本コストの寿命で二重に差し引かない。
人材の離職と不採算プロジェクト
2026年上期には長期間続いた総稼働数の増加が途切れ、社員の純減、赤字案件の発生が説明された。2026年通期も予算を下回り、売上の伸びが利益へ直結しない。大型の責任受託へ進むほど、見積もり不足や納期遅延の損失を自社で負うため、採用数だけでなく稼働率、契約採算、検収の品質を追う必要がある。
M&A依存、のれんと投下資本の利回り
過去の成長には買収先の連結が大きく寄与した。2026年には子会社取得支出が約3億円、のれん残高が約6億円となり、回収できない買収は現金と自己資本の両方を傷つける。会社側の「成功」評価には未監査の管理数値も含まれ、各買収の買付対価と累積オーナー利益を比較した収益率は十分に開示されていない。
顧客内製化・大手SIとの価格競争
自動車メーカーが開発環境を統一し、銀行や鉄道会社がAI付きツールで内製するほど外部受託は選別される。富士通、NEC、TIS、日鉄ソリューションズなど大手は大型案件の責任範囲を広く取れる。一次請け比率が上がっても、会社固有のデータ・ライセンスを押さえない限り高単価を長く維持できるとは限らない。
現金の用途と少数株主への還元
貸借対照表は純現金だが、買収と給与・案件運転資金に回る分は自由に配れる現金ではない。上位株主の保有が集中し、自社株買いの実績は限定的で、配当性向も足元で約15%にとどまる。株主が受け取るのは、会社が現金を残し続けた事実だけでなく、その現金が将来生む利益と実際の還元である。
物価高と金利上昇のすれ違い
人件費と外注費は物価上昇を受けるが、顧客単価を同じペースで改定できる保証はない。借入は約15億円あり、3.5〜5%水準で借り換われば利息が増える半面、現預金の受取利息も上がる。純現金会社でも移転費、リース固定費、教育費の増加が営業利益に先行すれば、利益率は下がる。
今後の分かれ目
- 2027〜2028年の決算で計画どおり営業利益率6%台後半に改善し、退職減と受注単価上昇が同時に確認できたら
- 案件の取り方と人材投資の効果が定着した証拠となる。中立の利益率を上方修正する。ただし、単価上昇が人数増ではなく顧客への成果価値に由来するかを確認する。
- 請求稼働人月が3年続けて減少し、売上も買収分を除いて前年割れしたら
- 人月課金の縮小が想定より早いと判断し、中立数量をやや悲観へ寄せる。契約単価が上がっても相殺できないかに注目する。
- 顧客別の解約率、成果報酬比率、独自製品の年間経常売上と単価改定実績が新たに開示されたら
- 顧客固有の知識が独立した価格決定力へ変わったか再評価し、確証が二つ以上あれば該当部分のみAI代替の型と長期成長率を見直す。
- 今後の買収でのれん・取得対価の回収率が改善し、買収を除いた有機的成長が再加速したら
- 増分資本利益率が資本コストを上回る見通しが強まり、強気側の営業利益と確率を引き上げる。
- 配当性向の数値目標やまとまった自己株取得を決議し、余剰現金の株主還元が確認できたら
- 今と将来に積もる現金の戻り方を0.75から1.0へ引き上げる余地がある。株式の希薄化も合わせて点検する。
- 不採算案件の損失が累積し、買収先ののれんに大きな減損を計上したら
- ROEの低下と悲観の清算価値の減少として反映する。帳簿の自己資本全額を床と誤認せず、純現金と換金可能な資産に戻って評価する。
見ておくもの
- 連結請求稼働人月・社員稼働率・外部協力会社への支払い動向(会社が開示する範囲)
- 製造業・社会情報インフラ・モバイル別の受注高と売上高、元請け比率
- M&A除外ベースの増収率、取得対価、のれん償却、買収後の営業CF
- 不採算案件数、受注損失引当金、開発技術者の離職率と採用数
- SYSTarget2028の進捗と2028年7月期営業利益15億円の達否
- 配当性向と自社株買いの実行額、期末純現金と流動有価証券
- 顧客企業の開発AI導入状況、成果報酬型契約への切替、利用料・保守の解約率
倍率と資本コストの決め方
価値の作り方は現在の株価から独立している。製造と社会インフラは2026年実売上から年間請求人月と平均請求単価を推計し、中立の人月をそれぞれ現在の約0.68倍、0.63倍とした。モバイルは契約相当数で見た。名目単価へ物価と競争の差を入れ、売上と案件構成から営業利益、税後利益を求めた。
資本コストは過去の利益変動−0.5%、受託の値決め力+0.5%、純現金−0.25%、寿命0%の合計で7.25%とした。2036年より先の名目成長率はAI代替のため0%とするので、楽観〜中立のPER上限は(1−g÷RONIC)÷(k−g)=13.79倍であり、手加減による追加割引はしていない。悲観側は現在の換金可能な純現金を点検した床で評価した。
2026年の確定決算を2025年の添付業績より優先して使用した。一方、株価と現在株数は添付の基準562、10,580,716株を固定し、直近決算短信の10,581,711株との差995株は約0.01%と軽微である。日本基準の新リース会計導入後も、家賃等を営業費用に含める2026年基準にそろえて比較する。現在の時価総額は59.46億円、5シナリオの確率加重現在価値は41.35億円、差は約−30.46%で「割高」と判定した。市場のPERや現在の時価総額から将来価値を逆算していない。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%に過去の利益変動、単価決定力、純現金、事業寿命の4要素の合計−0.25%を反映した。企業規模と株価βによる上乗せは行わない。