結論
Hiクラテスは、歯科医院向けの電子カルテ、診療報酬請求、音声入力、歯周病検査などを一体で提供する専門メーカーである。筆者の結論は「やや割高」だ。長年蓄積した診療記録と医院ごとの業務設定には乗り換えにくさがあり、財務も強い。しかし、顧客基盤の縮小とAIによる業務ソフトの価格競争を考えると、現在の時価総額49億円には十分な安全域がない。
同社の強みは、歯科医院にとって電子カルテが日常診療の記録の正本であることだ。2025年9月期の顧客数は2,974件で、過去5年間の買替更新率は91.1%に達する。日立製作所のデータベース技術、生体認証、診療報酬制度への対応、地域密着の訪問支援を組み合わせた製品は、単なる画面操作ソフトより置き換えにくい。一方、顧客数は2021年の3,142件から減少しており、高い買替更新率が顧客基盤全体の成長を保証しているわけではない。
もう一つの強みは財務にある。2025年9月期の自己資本は約42億円で、純有利子負債はマイナス11億円だった。さらに現金同等物に含まれない定期預金、預け金、債券、投資有価証券も大きい。これらは事業悪化に備える資産価値であり、株主価値を支える。ただし、実際に株主へ戻るかは別問題である。
会社は2030年9月期に売上高40億円、純利益8億円を目指している。2026年9月期の業績予想も上方修正された。しかし、全国の歯科医院数が減少する中で、この成長を実現するには顧客獲得の大幅な加速が必要だ。中立では既存顧客の維持力を評価しながら、AI代替とクラウド競争で周辺機能の収益性が落ちると考える。10年後の価値を資本コストで現在に戻すと、確率加重した本質価値は約35億円となり、現在の時価総額を約29%下回る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、同社は「小さな専門市場で顧客の重要業務を深く押さえた会社」である。歯科医院が診療を続ける限り、患者の診療記録、保険請求、監査対応は必要になる。高い買替更新率と長期取引は、価格だけで簡単に奪われない顧客関係が存在する証拠だ。借金に頼らず営業利益を生み出してきたことも、長く保有する株主には魅力となる。
ただし、真のオーナー利益を評価するには、利益から将来必要な再投資を差し引かなければならない。同社ではサポート人員の確保、医療制度の変更対応、ソフトウェア更新、セキュリティ対策に継続的な費用がかかる。顧客から毎月保守料を徴収しない仕組みでは、こうした費用をシステムの更新価格や新規販売で回収し続ける必要がある。
また、顧客が長く残ることと顧客基盤が拡大することは違う。既存医院の買替が高率で続いても、閉院や競合への切替が新規獲得を上回れば契約院数は減る。実際の顧客数の推移は、同社を高成長の独占企業として評価することに慎重さを求めている。
財務面では、現金や市場性のある金融資産が厚く、これらを無視して利益だけで評価するのは適切ではない。もっとも、金融資産を抱える会社では、経営者がそれを株主に返すかどうかが価値を左右する。配当は続いているが、大きな余剰資産を機動的に還元する規律はまだ十分に確認できない。
筆者が最も重視するのは、10年先にこの会社が診療記録の基盤として選ばれ続けるかという点だ。その部分には価値がある。一方、音声入力や画面操作を他社のAIが代替する時代には、現在の周辺機能の利益まで同じ強さで続くとは考えない。現在の価格には一定の事業価値と金融資産価値が反映されており、将来の予測誤差を吸収する安全域はまだ狭い。
何で稼ぐ会社か
同社の事業は、歯科医院向けシステム事業の単一報告セグメントである。収益の中心は、電子カルテとレセプト請求ソフトを搭載したシステムを歯科医院へ販売することだ。医院は原則としてリース会社と契約し、同社はリース会社からシステム販売代金を受け取る。このため医院から毎月利用料を直接回収する一般的なSaaS企業とは収益構造が異なり、新規導入や既存顧客の買替が売上を大きく左右する。
2025年9月期の売上24.1億円の内訳は、システム販売14.61億円、ソフトウェア・付属品5.46億円、プログラム改定1.92億円、月額利用料1.01億円、自動精算機等0.53億円、その他0.53億円だった。システム本体の販売が約6割を占め、周辺ソフトと付属品を含めると8割を超える。月額利用料は伸びているものの、現時点では全社売上の約4%にとどまる。
販売後の関係にも特色がある。同社はシステムサポート、ソフトウェア保守、バージョンアップを原則無償とする「ソフトウェア三無主義」を掲げる。ハードウェアの修理は原則有償だが、顧客の互助会HMGを通じた費用負担の仕組みがある。2025年9月末には顧客2,974件のうち2,916件がHMGへ加入していた。これは顧客との関係を深める一方、サポートの人件費が増えても毎月の保守料を直接値上げしにくい仕組みでもある。
主力商品はAI・音声電子カルテ統合システムRevo.11、AI・音声歯周病精密検査、AI・音声サブカルテである。歯科医師や衛生士が手袋を外さずに音声で診療記録を残し、院内と訪問診療先で情報を共有できる。2025年9月期には全国24拠点、約75人の営業サポート社員が導入提案と既存顧客支援を担った。顧客への深い関与が特徴だが、人的支援の費用も収益構造に組み込まれている。
優良さと弱いところ
同社には、限定された領域ながら本物の競争優位がある。電子カルテの記録には真正性、見読性、保存性が求められ、同社は日立製作所のHiRDBと指静脈認証を用いて監査証跡や改ざん防止の仕組みを提供する。さらに、診療報酬請求、画像、予約、歯周病検査を一元管理するため、他社製品への切り替えでは過去データの移行だけでなく、院内業務の組み直しも必要になる。この法令対応と業務への深い組み込みが、記録の正本としての堀を支えている。
買替更新率91.1%という開示は、その強みを裏付ける。ただし、この数字は5年間の買替更新件数を、買替更新と他社への切替件数の合計で割ったもので、全顧客の年間継続率ではない。実際、顧客数は2021年の3,142件から2025年の2,974件へ減った。関東の顧客数は増えているが、九州、中国、関西、四国で減少が続く。この二つの数字を同時に見ることが重要だ。
2025年9月期の営業利益率は22.8%、ROEは10.7%で、専門製品メーカーとして十分な採算性がある。しかし、2023年9月期には営業利益率が11.3%へ落ち込んだ。顧客の購入時期や制度改定、販売員の稼働に左右されるため、利益が安定して積み上がる純粋な継続課金事業ではない。
資本効率にも両面がある。大きな借金を必要としない点は強いが、金融資産を積み上げるほど自己資本全体のROEは薄まる。新たな投資がどれほど追加利益を生んだかを判断するには、全国展開による純増顧客数と、AI関連製品の売上・利益の開示が不足している。既存事業を守る堀は評価できても、堀が全国で拡大しているとまでは判断できない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の歯科診療所は約6万5,000施設の成熟市場である。厚生労働省の医療施設動態調査では2025年末の歯科診療所は約6万5,500施設で、長期的には減少傾向にある。同社の顧客2,974件は全国施設数の約4.5%に相当する。ただし、未導入医院も含めた施設数を分母にした普及率の目安であり、歯科電子カルテ市場における厳密な売上シェアではない。
市場全体の更新需要は残る。仮に6万5,500施設が平均8年で基幹システムを更新し、1案件当たり500万円を支払うとすれば、年間の基幹システム市場は約410億円になる。周辺ソフトや医療DX対応費用を含めると、関連市場は年間500億〜800億円程度と推定できる。ただし、これは公的施設数と業界の更新周期を組み合わせた試算であり、歯科分野だけを切り出した公表市場規模ではない。同社の基幹システム売上14.61億円は、この試算市場の約3.6%に当たる。
競争相手にはミックのpalette、ノーザのclevia、メディアのWith、オプテックのOpt.one3、メドレーのDENTISなどがある。各社の全国導入数を同一基準で比較できる資料は確認できず、個別の市場シェアは断定できない。メドレーなどがクラウド型の診療支援機能を広げる中、同社の買切り型に近い販売方式が、導入費用と運用の柔軟性でどう評価されるかが争点となる。
医療DX政策は追い風にも逆風にもなる。電子カルテの標準化、情報共有、電子処方箋、診療報酬改定への対応は既存顧客の更新需要を生む。しかし、標準仕様が普及してデータ移行や外部システムとの接続が容易になれば、これまでの切替障壁が一部低くなる可能性もある。さらにAIエージェントは画面操作、予約、問診、文書作成を置き換えうる。診療記録の正本としての価値は残りやすいが、周辺操作機能には価格低下圧力がかかる。
長期の数量を支えるのは新規開業数ではなく、既存医院の更新と他社からの切替獲得である。予防歯科と訪問歯科の需要は増える可能性があるものの、それだけで基幹システムの契約院数が増えるとは限らない。中立では国内施設数が緩やかに減少し、同社も現在の顧客数を完全には維持できないと判断する。
資本政策と M&A
会社は安定的な株主還元と研究開発のための内部留保を基本方針としている。2025年9月期の年間配当総額は約2.07億円で、配当性向は約46%だった。2026年9月14日には通期純利益予想を4.81億円へ上方修正するとともに、年間配当予想を94円、配当性向を43.5%へ変更した。配当には第50期を迎えることに関連した特別配当が含まれるため、この部分を恒久的な増配力とはみなさない。
2026年8月時点の会社開示では、2030年9月期に売上高40億円、経常利益12億円、純利益8億円を目指している。一方、正式な中期計画としての配当性向、DOE、総還元性向、自社株買い金額について、継続的な数値目標は確認できない。株主還元に関する中長期の数字の約束なし、と判断する。
2025年には歯科医院の経営支援を目的としてHiクラージュを設立した。既存システムと経営相談を結び付ける狙いは理解できるが、コンサルティングは人の工数に依存しやすい。大きな買収によって利益が増えることは前提とせず、投資の成果が見えるまで慎重に扱う。
創業者と関係会社を中心とした持株比率は高い。2026年6月には主要株主間で株式の移転があり、8月には株式処分信託契約が開示された。支配株主の存在は長期経営を支える一方、余剰資産の処分や自社株買いを少数株主が促しにくい要因になる。過去には増配実績があるが、十分な規模の自社株買い実績は確認できないため、余剰金融資産の株主への戻り方は75%と評価する。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
歯科医院の基幹システムは簡単に入れ替えられない。診療記録には厳しい保存・監査要件があり、過去の患者データを正確に移す負担も大きい。Hiクラテスは電子カルテとレセプト、画像、予約、歯周病検査を長年一体化してきた。買替更新率91.1%は、既存顧客が単なる価格比較だけでは離れないことを示している。
2025年に投入したRevo.11などのAI・音声シリーズは、歯科医師と衛生士の人手不足を直接解決する商品である。診療中に手袋を外さず記録でき、歯周病検査の記録も少人数で完結する。会社は2026年9月期の上方修正理由としてAI・音声商品の販売拡大を挙げた。AIは必ずしも既存システムを破壊するだけではなく、既存の診療記録基盤を使う製品の価値を高める可能性もある。
販売余地もある。2025年の顧客数は全国歯科診療所の5%未満に相当し、関東では顧客数が徐々に増えている。西日本の販売方式を大都市圏で再現できれば、顧客数の減少を止められるかもしれない。2030年に売上高40億円、純利益8億円という会社目標は、その成長余地を示している。
加えて、会社は借金が少なく、現金、定期預金、債券などの金融資産を豊富に持つ。事業が期待どおり成長しなくても資金繰りに窮する可能性は小さい。既存顧客の買替を守りながら資産の一部を還元できれば、現在の時価総額に対して相応の株主価値が残る。
慎重な見方
最大の問題は、買替更新率の高さにもかかわらず顧客数が減っていることだ。2021年の3,142件から2025年には2,974件へ減少した。国内歯科医院数も減少傾向にあり、既存地域での高齢化や閉院を新規契約で埋められていない。関東進出も始まっているが、2025年9月末の顧客107件では、西日本の減少を埋めるほどの規模に達していない。
収益の大半がシステムや付属ソフトの販売で、継続利用料が小さい点も弱い。顧客が買替を先送りすれば、その年の売上と利益が直接減る。無償サポートを続けるための人件費は残り、制度改定のたびに開発や顧客対応が発生する。実際、2023年には営業利益率が大きく落ち込んだ。将来の賃金上昇が売上単価へ十分転嫁できる保証はない。
AIエージェントは、音声入力、予約、問診、会計連携などの操作を自動化し、従来の画面中心の価値を縮小させる。クラウド型のDENTISや既存の歯科レセコン各社がAIを標準搭載すれば、同社の新機能は差別化から必須機能へ変わり、価格競争が進む可能性がある。2026年の増益は確認できるが、AI製品単独の売上高や顧客純増の成果は十分に分からない。
大きな金融資産も無条件の安全域ではない。利益には債券利息、受取配当、投資有価証券の売却益などが含まれ、毎年の本業の稼ぎと完全には一致しない。株式や債券には価格変動もあり、資産を現金化して株主に返す政策も確約されていない。将来の純利益を現在の延長線上で大きく増やす前提には、まだ実証が足りない。
どちらに重みを置いたか
既存の歯科診療記録を守る力では強気の見方に根拠がある。しかし、顧客数の減少、買替依存の収益構造、AIによる操作機能の代替可能性を考えると、成長期待を強く織り込むのは早い。中立でも事業が消えるとは考えないが、周辺ソフトの数量と価格には下押し圧力が残る。確率は楽観側25%、中立35%、悲観側40%とした。悲観側へ寄せた主因は実際の顧客減少であり、AIによる利益縮小を数量と長期成長率に反映したうえで、同じ理由を資本コストへ重ねていない。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/09 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 2,341 円52 億円(+ 還元の換算額還元の合計 697 円16 億円)。 今の値に割り戻すと 1,559 円35 億円、今との差 −25.8%、 期待の年率 +4.3%(資本コスト 8.0%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 9% | 3,871 円86 億円 | 1,077 円24 億円 | +135.5% | +10.4% | 445 円10 億円 |
| やや楽観 | 16% | 3,477 円77 億円 | 988 円22 億円 | +112.5% | +9.1% | 714 円16 億円 |
| 中立 | 35% | 2,702 円60 億円 | 808 円18 億円 | +67.1% | +6.1% | 1,229 円27 億円 |
| やや悲観 | 25% | 1,508 円34 億円 | 584 円13 億円 | −0.4% | −0.1% | 523 円12 億円 |
| 悲観 | 15% | 754 円17 億円 | 90 円2 億円 | −59.8% | −9.1% | 127 円3 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,341 円52 億円 | 697 円16 億円 | +44.6% | +4.3% | 3,038 円68 億円 |
今の株価時価総額 2,101 円47 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 9% 基幹カルテの堀を守り、全国の更新需要を獲得 利益 6 億円 · PER 12.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 3,871 円86 億円
電子カルテの標準化が進む中で、同社は日立製作所との技術連携を生かし、診療記録の真正性と医療情報共有への接続を安定して提供する。西日本で培った営業サポートの仕組みを関東にも広げ、閉院や他社への切替で失う顧客を新規導入で補う。10年後の顧客基盤はおおむね現在の水準を維持する。
AI・音声Revo.11、歯周病精密検査、サブカルテは、衛生士不足に悩む医院で日常機能として定着する。操作画面の一部は汎用AIに代替されるが、患者記録、レセプト、画像、訪問診療を一体で管理する価値は保たれる。メドレーのDENTISなどクラウド型製品との競争でも、長期の顧客関係と法令対応の実績が評価される。
価格は基幹システムで物価上昇にほぼ追随し、付属ソフトにも一定の単価改善が認められる。営業サポートの効率化が進み、営業利益率は直近の好調期をやや上回る。Hiクラージュによる経営支援が失敗せず、本業との連携も維持される。株主還元は利益に応じて増えるが、経営支配や資産保有方針が大きく変わることは期待しない。
- 基幹歯科電子カルテ・レセプトシステム:数量 305(年間の基幹システム販売・更新医院数(件、推定))× 価格 0.06(1医院当たり基幹システム販売額(億円、ハード・ソフト込み))→ 売上 20 億円・営業利益 5 億円。販売305件を維持し、法令対応と統合性を保ちながら名目単価1.34倍。
- 周辺ソフトウェア・付属品:数量 700(年間の追加ソフト・付属品販売案件数(件、推定))× 価格 0.01(1案件当たり販売額(億円))→ 売上 6 億円・営業利益 2 億円。操作ソフトはAI競争下でも販売件数を維持。単価は1.15倍に限定。
- 診療報酬・制度改定プログラム:数量 2,974(制度改定対応の対象となる顧客医院数(件))× 価格 0.00(1医院当たりの年間平均改定収入(億円))→ 売上 3 億円・営業利益 1 億円。制度改定対応の対象医院数を維持し、単価は物価並み。
- 月額利用型のクラウド・付帯サービス:数量 1,000(平均有料利用医院数(件、推定))× 価格 0.00(1医院当たり年間利用額(億円))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。月額機能はAIによる値下げ圧力を受けるが有料利用件数は維持。
- 自動精算機・受付端末:数量 46.0(年間の端末販売台数(台、推定))× 価格 0.02(1台当たり販売額(億円))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。省人化端末の更新台数が増え、物価並みに単価上昇。
- 機器修理・その他収入:数量 2,974(年間の対象顧客医院数(件、売上換算))× 価格 0.00(1医院当たり年間平均その他収入(億円))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。顧客維持と修理単価上昇で収入を確保。
倍率:k8%、g_long1%、通常の堀の残存割合2分の1。余剰金融資産24億円を除く事業純利益は5.65−24×1.4%=5.314億円、事業自己資本は69−24=45億円でROE約11.8%。RONICは約9.9%となり、正当化PER=(1−0.01÷RONIC)÷(0.08−0.01)で約12.84倍。倍率は上限そのもの。事業価値に金融資産24億円×戻り方0.75を加える。
確率:電子カルテの監査・規制対応と地域密着サポートの強みを維持し、全国展開でも既存顧客の減少を補う必要がある。2026年のAI製品販売拡大は確認できるが、AI単独の売上金額は非開示なので数量の増加をAIによる上振れとしては織り込まない。実現可能だが条件は厳しく、確率9%とする。
やや楽観 16% 買替基盤をほぼ維持し、AI・音声製品が定着 利益 5 億円 · PER 12.7 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 3,477 円77 億円
同社の基幹電子カルテは長年の顧客との関係を維持し、診療記録と診療報酬請求をつなぐ中心的なシステムとして使われ続ける。西日本では閉院や競争によって一部顧客が減るが、関東を中心に新規契約を取り込み、全体の落ち込みを小幅に抑える。
AI・音声シリーズは、人手不足と訪問診療への対応を目的に採用が広がる。しかし、音声入力や予約機能は競合も実装するようになり、付属ソフトの単価は物価ほど上がらない。月額利用型サービスも一定の需要を保つものの、AIエージェントが画面操作を代行することで席や操作機能への課金は伸びにくくなる。
営業サポートの採用・教育が進み、改定対応の業務効率も改善する。制度改定対応を含めた製品群全体の採算性は維持され、営業利益率は現在よりやや高い水準となる。大規模な買収はせず、社内開発と既存製品の更新が資本投下の中心となる。株主還元は利益の増加に沿って続き、蓄積された金融資産も保全される。
- 基幹歯科電子カルテ・レセプトシステム:数量 298(年間の基幹システム販売・更新医院数(件、推定))× 価格 0.06(1医院当たり基幹システム販売額(億円、ハード・ソフト込み))→ 売上 18 億円・営業利益 4 億円。買替件数をほぼ維持し、単価1.28倍。
- 周辺ソフトウェア・付属品:数量 660(年間の追加ソフト・付属品販売案件数(件、推定))× 価格 0.01(1案件当たり販売額(億円))→ 売上 6 億円・営業利益 2 億円。AI代替下で数量0.94倍、単価1.12倍。
- 診療報酬・制度改定プログラム:数量 2,860(制度改定対応の対象となる顧客医院数(件))× 価格 0.00(1医院当たりの年間平均改定収入(億円))→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円。制度改定対応の顧客数減少は小幅。
- 月額利用型のクラウド・付帯サービス:数量 920(平均有料利用医院数(件、推定))× 価格 0.00(1医院当たり年間利用額(億円))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。月額利用件数0.92倍、単価1.12倍。
- 自動精算機・受付端末:数量 42.0(年間の端末販売台数(台、推定))× 価格 0.02(1台当たり販売額(億円))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。設備更新の需要を維持。
- 機器修理・その他収入:数量 2,820(年間の対象顧客医院数(件、売上換算))× 価格 0.00(1医院当たり年間平均その他収入(億円))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。修理・その他収入は顧客数に沿って推移。
倍率:余剰金融資産を除いた事業純利益4.664億円、事業自己資本44億円、事業ROE約10.6%。k8%、g1%、残存割合2分の1からRONIC約9.3%、正当化PER約12.75倍となる。上限を追加割引せず、金融資産24億円×戻り方0.75を加える。
確率:既存顧客の更新率の高さと2026年の製品販売拡大は肯定材料だが、10年間の顧客数維持には新規販売力の改善が要る。会社の2030年目標をそのまま実現確実とは扱わず、16%とする。
中立 35% 記録の正本は残るが、顧客減少とAI競争で成長は鈍い 利益 4 億円 · PER 12.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 2,702 円60 億円
歯科医院の診療記録とレセプト請求は、10年後も専用の記録基盤を必要とする。同社の製品は法令対応と既存データの蓄積によって顧客を守るが、閉院や業界再編を完全には防げない。関東の営業拡大も、西日本の顧客数減少を部分的に補う程度にとどまる。10年後の顧客数は2,650件程度と考える。
基幹システムの価格は物価上昇に近い範囲で上がるものの、競争のため完全な転嫁はできない。周辺ソフトではAIエージェントが予約、問診、音声入力、事務処理を代替し、販売数量は現在の8割程度まで縮む。月額サービスも一部の機能がAIに統合され、利用件数と単価の双方に圧力がかかる。
その一方で、制度改定対応や診療記録の保存・監査機能は継続して求められる。会社は社内開発と地域営業を続け、営業利益を維持するために販売員の効率化やソフトウェアの共通化を進める。ただし、顧客サポートの無償提供は固定費を残し、過去の最高利益率を長く維持することは難しい。事業は黒字を保つが、自己資本が積み上がるため全社ROEは低下する。
- 基幹歯科電子カルテ・レセプトシステム:数量 275(年間の基幹システム販売・更新医院数(件、推定))× 価格 0.06(1医院当たり基幹システム販売額(億円、ハード・ソフト込み))→ 売上 16 億円・営業利益 4 億円。記録の正本として数量0.90倍、価格1.23倍。
- 周辺ソフトウェア・付属品:数量 560(年間の追加ソフト・付属品販売案件数(件、推定))× 価格 0.01(1案件当たり販売額(億円))→ 売上 5 億円・営業利益 1 億円。AIエージェント代替で数量0.80倍、単価1.10倍。
- 診療報酬・制度改定プログラム:数量 2,650(制度改定対応の対象となる顧客医院数(件))× 価格 0.00(1医院当たりの年間平均改定収入(億円))→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円。対象顧客が減る一方、法令対応の名目単価は上昇。
- 月額利用型のクラウド・付帯サービス:数量 820(平均有料利用医院数(件、推定))× 価格 0.00(1医院当たり年間利用額(億円))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。月額利用件数0.82倍、単価1.10倍。
- 自動精算機・受付端末:数量 35.0(年間の端末販売台数(台、推定))× 価格 0.02(1台当たり販売額(億円))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。成熟した医院数に合わせて端末台数は減少、価格は物価並み。
- 機器修理・その他収入:数量 2,650(年間の対象顧客医院数(件、売上換算))× 価格 0.00(1医院当たり年間平均その他収入(億円))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。顧客数減少と修理単価上昇が一部相殺。
倍率:全社純利益3.70億円から余剰金融資産24億円の税後利息相当0.336億円を除くと、事業純利益は3.364億円。余剰金融資産を除く事業自己資本40億円に対するROEは約8.4%。k8%、g_long1%、通常の堀の持続割合2分の1からRONIC約8.2%となり、正当化PERは約12.54倍。PERは上限そのものとし、事業価値に金融資産24億円の75%を加算した。
確率:2,974件の顧客と高い買替更新率を土台としつつ、2021年以降の顧客減少率とAI代替圧力を反映した中心ケースである。基幹システムの記録・規制対応は維持されるとみるが、周辺ソフトの収益は縮む。最も説明力が高い筋書きとして35%とする。
やや悲観 25% クラウドへの切替が進み、顧客数が減少 利益 2 億円 · PBR 0.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,508 円34 億円
国内の歯科医院数が減る中で、同社の顧客基盤はさらに縮小する。閉院だけでなく、クラウド型システムへ移る新規開業医院が増え、既存顧客にも他社製品への切替が広がる。メドレーやミック、ノーザなどの競争相手が診療記録、レセプト、予約を統合し、データ移行の手間を減らすため、従来の切替障壁は少しずつ弱まる。
AIエージェントが音声入力、問診、予約管理、患者への説明文作成を担うことで、周辺ソフトの販売件数と付加価値は減少する。同社も機能追加で対抗するが、標準機能への取り込みが進み、追加料金を十分に得られない。基幹システムは残るものの、更新時の値引き要求が増える。
無償サポートの維持に必要な社員と拠点は急には減らせない。利益率が下がるため、研究開発や全国への営業拡大も選別せざるを得なくなる。制度改定対応は安定した収益の一部を守るが、会社全体の利益を以前の水準へ戻すほどではない。配当は減益に合わせて縮小され、金融資産の一部は事業維持や製品刷新に使われる。会社は存続しても、資本効率の低い小規模ソフトウェアメーカーになる。
- 基幹歯科電子カルテ・レセプトシステム:数量 235(年間の基幹システム販売・更新医院数(件、推定))× 価格 0.05(1医院当たり基幹システム販売額(億円、ハード・ソフト込み))→ 売上 12 億円・営業利益 2 億円。更新件数0.77倍、名目単価1.10倍。
- 周辺ソフトウェア・付属品:数量 435(年間の追加ソフト・付属品販売案件数(件、推定))× 価格 0.01(1案件当たり販売額(億円))→ 売上 3 億円・営業利益 1 億円。AIによる機能代替で販売件数が大きく減る。
- 診療報酬・制度改定プログラム:数量 2,450(制度改定対応の対象となる顧客医院数(件))× 価格 0.00(1医院当たりの年間平均改定収入(億円))→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円。制度対応の需要は残るが顧客基盤が縮小。
- 月額利用型のクラウド・付帯サービス:数量 680(平均有料利用医院数(件、推定))× 価格 0.00(1医院当たり年間利用額(億円))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。AIが席と操作機能を代替し、利用件数が減少。
- 自動精算機・受付端末:数量 31.0(年間の端末販売台数(台、推定))× 価格 0.02(1台当たり販売額(億円))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。物理端末の更新も減少。
- 機器修理・その他収入:数量 2,450(年間の対象顧客医院数(件、売上換算))× 価格 0.00(1医院当たり年間平均その他収入(億円))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。保守・修理収入は顧客基盤の縮小に連動。
倍率:悲観側は過去の株価倍率を使わない。2025年時点の自己資本42億円を基準とする。純利益2.2億円から余剰金融資産18億円の税後利息相当を控除した事業純利益約1.95億円の稼ぐ力と、戻り方を考慮した金融資産13.5億円の合計は約37.8億円が上限。事業基盤が傷んだ状態と資産処分の摩擦を考慮し、時価総額33.6億円とする。PBR0.80は今の自己資本42億円に対応し、未来に積み上げた自己資本60億円には掛けない。
確率:顧客数減少が既に確認され、周辺ソフトはAI代替の影響を受ける。既存の記録・制度対応の堀が急には消えないため全面的な赤字化より、利益率と顧客基盤が緩やかに傷む可能性を重視し、25%とする。
悲観 15% AIと標準化で競争力を失い、財務資産を取り崩す 利益 −1 億円 · PBR 0.4 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 754 円17 億円
医療情報の標準化とクラウド化が進み、歯科医院が過去の診療記録を他社へ移しやすくなる。新規開業医院は低初期費用のクラウド型製品を選び、従来の基幹システムを使っていた医院も、機器更新時に他社へ切り替える。同社の販売拠点と訪問サポートは、顧客を守る強みから高い固定費へと性質が変わる。
AIエージェントが予約、問診、音声入力、文書作成、レセプト入力補助などを横断的に処理するようになり、従来の画面操作を中心とする付属ソフトは売り物としての価値を失う。同社の電子カルテには監査・保存機能が残るが、競合も認証基準を満たし、独自性が薄まる。制度改定対応の費用も値下げ競争に巻き込まれる。
顧客数は2,000件程度へ減り、基幹システム販売件数は現在の半分程度となる。営業拠点の集約、人員整理、旧システムの更新停止が必要となり、利益は赤字に転落する。再建費用、研究開発費、金融資産の評価損や売却に伴う税負担が重なることで、過去に蓄積した現金や有価証券が減少する。大規模な買収や救済的なMBOによる価値回復は前提にせず、事業の収益価値より売却可能資産の価値が中心となる。
- 基幹歯科電子カルテ・レセプトシステム:数量 150(年間の基幹システム販売・更新医院数(件、推定))× 価格 0.05(1医院当たり基幹システム販売額(億円、ハード・ソフト込み))→ 売上 8 億円・営業利益 1 億円。基幹システム販売件数がほぼ半減し、価格転嫁も限定的。
- 周辺ソフトウェア・付属品:数量 250(年間の追加ソフト・付属品販売案件数(件、推定))× 価格 0.01(1案件当たり販売額(億円))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。AI代替で数量・単価の両方が縮む。
- 診療報酬・制度改定プログラム:数量 2,000(制度改定対応の対象となる顧客医院数(件))× 価格 0.00(1医院当たりの年間平均改定収入(億円))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。顧客数減少と標準化による料金低下圧力。
- 月額利用型のクラウド・付帯サービス:数量 400(平均有料利用医院数(件、推定))× 価格 0.00(1医院当たり年間利用額(億円))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。有料サービス利用医院は現在の4割。
- 自動精算機・受付端末:数量 20.0(年間の端末販売台数(台、推定))× 価格 0.01(1台当たり販売額(億円))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。端末更新需要が縮小し、競合製品への切替も進む。
- 機器修理・その他収入:数量 2,000(年間の対象顧客医院数(件、売上換算))× 価格 0.00(1医院当たり年間平均その他収入(億円))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。顧客数減少で修理などの収入も縮小。
倍率:赤字となり継続的な事業純利益に正のPERを掛けられないため、売却可能資産を中心に評価する。現在の自己資本42億円を基準としたPBR0.40に相当する16.8億円であり、10年後の自己資本35億円には掛けない。床の資産価値15億円を上回るが、今の時価総額49億円と比べると、事業の価値喪失と金融資産の取り崩しが大きい。
確率:AIエージェントが周辺機能を置き換え、医療情報標準化によって既存ベンダーの切替障壁も弱まる複合的な悪化を想定する。現在の高い買替更新率があるため必然ではないが、10年間では無視できないため15%を置く。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
基幹歯科電子カルテ・レセプトシステム
歯科医院の診療記録、保険請求、患者管理を担う基幹システム。AI・音声Revo.11を含む。
| 数量年間の基幹システム販売・更新医院数(件、推定) | 価格1医院当たり基幹システム販売額(億円、ハード・ソフト込み) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 305 | 0.05 | 15 | 3 |
| 10 年後 中立 | 275 | 0.06 | 16 | 4 |
取り方:2025年9月期有報のシステム売上高14億6,106万円を使用。年間の販売医院数と単価は非開示のため、顧客2,974件、医療情報システムの更新周期が長期化して約8年程度との業界資料、顧客数の減少を参考に、年間販売・更新305件、1件約479万円と推定した。営業利益2.9億円は会社非開示の収益形態別採算を分析目的で配分した推定値である。AI代替の型は記録の正本。電子保存三原則への対応と91.1%の買替更新率を根拠とし、中立数量は現在の0.90倍、価格は1.23倍とする。
周辺ソフトウェア・付属品
予約、問診、画像、歯周病検査、訪問診療、診療支援アプリなどの追加販売。
| 数量年間の追加ソフト・付属品販売案件数(件、推定) | 価格1案件当たり販売額(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 700 | 0.01 | 5 | 1 |
| 10 年後 中立 | 560 | 0.01 | 5 | 1 |
取り方:有報のソフトウェア・付属品売上高5億4,600万円を使用。案件数は非開示であり、約2,974顧客の2割強が年1回追加購入すると仮定して700件、平均約78万円と組み立てた。利益配分も推定。AI代替の型は操作画面が価値の中心となる業務ソフト。診療記録の正本ほど切替障壁が強くないため、中立数量0.80倍、単価1.10倍とする。
診療報酬・制度改定プログラム
診療報酬改定、電子請求、オンライン資格確認などの制度変更に対応するプログラム販売。
| 数量制度改定対応の対象となる顧客医院数(件) | 価格1医院当たりの年間平均改定収入(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 2,974 | 0.00 | 2 | 1 |
| 10 年後 中立 | 2,650 | 0.00 | 2 | 1 |
取り方:有報のプログラム改定売上1億9,244万円を顧客2,974件で割り、年間平均約6万5,000円とした。実際の請求は制度改定の年度ごとに偏るため、毎年同額の契約があることを意味しない。制度改定に対応した記録・請求の正本として扱い、中立の対象顧客2,650件、実質単価の改善を限定した名目1.21倍を想定する。
月額利用型のクラウド・付帯サービス
月額課金が発生するクラウド機能、予約連携などの付帯サービス。
| 数量平均有料利用医院数(件、推定) | 価格1医院当たり年間利用額(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 1,000 | 0.00 | 1 | 0 |
| 10 年後 中立 | 820 | 0.00 | 1 | 0 |
取り方:2025年9月期の月額利用料1億148万円を使用。有料医院数は非開示のため、顧客2,974件の約3分の1に当たる1,000件、1医院当たり月額約8,500円と仮定した。無償の基幹ソフト保守とは異なる有料機能である。AI代替の型は席課金・業務SaaSに準じ、中立数量0.82倍、年間単価1.10倍とする。
自動精算機・受付端末
院内の受付や会計の省人化に用いる物理端末と関連システム。
| 数量年間の端末販売台数(台、推定) | 価格1台当たり販売額(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 40.0 | 0.01 | 1 | 0 |
| 10 年後 中立 | 35.0 | 0.02 | 1 | 0 |
取り方:有報の自動精算機等売上5,323万円を使用。実際の台数と平均単価は未開示のため、年間40台、1台約133万円と推定した。物理的な会計端末はAIエージェントによる画面操作代替と区別し、国内歯科医院の設備更新数量に沿って中立35台、名目価格1.34倍とする。
機器修理・その他収入
修理、部材販売、付帯する雑収入など。
| 数量年間の対象顧客医院数(件、売上換算) | 価格1医院当たり年間平均その他収入(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 2,974 | 0.00 | 1 | 0 |
| 10 年後 中立 | 2,650 | 0.00 | 1 | 0 |
取り方:会社が開示したその他売上5,271万円を顧客2,974件に均等配分した平均収入であり、実際に全医院が同額を支払うことを意味しない。現場の修理作業は物理サービスとして残るが、受付事務や問い合わせ対応はAIで一部代替される。中立では対象顧客2,650件、名目単価1.26倍とした。
リスクと懸念
AIエージェント代替と周辺ソフトの価格競争
AIエージェントは、医院の受付、問診、予約、音声入力、診療文書作成など、従来は専用画面と人手で行っていた業務を代替しうる。同社の2025年売上ではソフトウェア・付属品と月額利用料が合わせて約27%を占め、これらは記録の正本よりも代替されやすい。基幹システムでも操作機能の付加価値は下がる。中立では周辺ソフト数量0.80倍、月額利用件数0.82倍に織り込み、長期成長率を名目1%に抑えた。
既存顧客数の減少と医院の閉院
顧客数は2021年の3,142件から2025年の2,974件へ減少した。買替更新率91.1%は更新する顧客の維持力を示すが、医院の閉院や新規獲得不足を防ぐ数字ではない。西日本の既存営業地域で顧客数が減り続ければ、全国展開が進んでもシステム販売件数は減少する。顧客数と新規獲得数を分けて見る必要がある。
電子カルテ標準化とクラウド型競合
国による標準化や電子カルテ情報共有の整備は改定需要を生む一方、相互運用性が高まれば他社への移行を容易にする可能性がある。ミック、ノーザ、メドレーなどの競争相手が規制対応とAI機能を一体で提供すれば、同社独自の機能の希少性が下がる。認証制度に対応できるメーカーが同社だけになるという主張は確認された事実として扱わない。
無償サポートと人件費の固定化
同社は保守やバージョンアップを原則無償とし、地域密着の営業サポートを強みとしている。賃金が年3%程度上昇する環境では、顧客数が横ばいでも人件費は増える。新規システムの買替周期が長くなると収入の増加が遅れ、既存顧客を支える社員と拠点の費用が利益率を圧迫する。
金融資産の価格変動と利益の質
金融資産は安全余力だが、債券や株式の評価損、売却損が発生する可能性がある。営業利益より経常利益が大きい期には受取利息、受取配当、投資有価証券の売却益などが含まれており、すべてを本業の持続的な利益と見ることはできない。金融資産を事業価値と別に評価し、税金、価格変動、運転資金を控除する必要がある。
支配株主と資本配分
創業者と関係会社の保有比率が高く、少数株主が金融資産の処分や自社株買いを促す力には限界がある。2026年には主要株主間の株式移転と処分信託契約が開示され、株式需給にも不確実性がある。配当の実績は評価できるが、余剰金融資産を全額株主に戻す方針が確約されているわけではない。
今後の分かれ目
- 顧客数が再び3,000件を超え、2年以上連続で純増したら
- 全国営業網の拡大が既存地域の減少を補う証拠となる。中立の基幹システム販売件数を上方修正し、やや楽観の確率を引き上げる。
- AI・音声シリーズ単独の売上高と新規導入件数が開示され、増収が継続したら
- AIを顧客価値へ転換する力を確認できる。現時点では認めていないAI起点の数量増加を上側の筋書きへ取り込む余地が生まれる。
- 買替更新率が85%未満へ低下し、競合への切替が増えたら
- 記録の正本としての堀が弱まっていると判断する。中立の基幹システム数量と将来利益率を引き下げ、悲観側の確率を高める。
- 2030年目標に向けて売上高が30億円を超え、顧客数も純増したら
- 価格改定だけでなく販売数量による成長が確認できる。資本効率と再投資の成果を見直し、楽観側の利益予想を上方修正する。
- 金融資産の売却によって大規模な特別配当や自社株買いが実施されたら
- 余剰金融資産の株主への戻り方を0.75から1.0へ引き上げる根拠となり、事業予想を変えなくても適正価値が上がる。
- 売上高が増えても営業利益率が15%未満で定着したら
- 無償サポートの固定費とAI・クラウド競争による価格下落が顕在化したとみなし、中立をやや悲観に近づける。
見ておくもの
- 毎年9月末の地域別顧客数、とくに西日本の減少幅と関東の純増数
- 買替更新率91.1%の更新状況と他社への切替件数
- システム売上高とソフトウェア・付属品売上高の数量・単価の変化
- AI・音声シリーズの販売金額、新規導入数、既存顧客への採用率
- 2030年9月期の売上40億円・経常利益12億円・純利益8億円目標への進捗
- 現金、定期預金、預け金、投資有価証券の内訳と純投資による損益
- 配当性向、DOE、自社株買い方針と支配株主の保有比率
- 医療情報の標準化、電子カルテ製品認証、クラウド移行の動向
倍率と資本コストの決め方
2026年10月22日時点の株価2,200円、時価総額約49.0億円は、事業の数量・価格・利益率と正当化倍率を決め終えるまで評価の基準として用いなかった。2025年の収益形態別売上を6つに分け、非開示の販売数量は顧客2,974件、更新周期、市場規模から推定した。物価3%による名目価格の上昇は単価だけに含め、数量には重ねていない。AIエージェント代替は、10年間の数量・単価と10年以後のg_long1%へ反映し、kの寿命には重複して加算していない。
資本コストは8%、普通の堀の持続割合は2分の1とし、楽観から中立までのPERはRONICとgから計算される正当化上限をそのまま採用した。現在や過去のPER・PBRを倍率の根拠には使っていない。純利益には金融収益が含まれるため、余剰金融資産24億円の税後利息相当を事業利益から控除し、金融資産を戻り方75%で別に評価した。悲観側は過去のPBRの底を使わず、今の自己資本42億円と将来の売却可能資産から評価した。
2025年の自己資本42億円を起点に、10年間の純利益累計から配当・自社株買いを差し引いて各筋書きの自己資本を求めた。2025年の本決算を基準に2035年9月期を10年後とし、2026年9月期の最新会社予想は事業の近況を確かめる材料として扱った。確率加重した本質価値は約34.7億円、現在の時価総額約49.0億円との差は約マイナス29%であり、結論はやや割高となる。新リース会計基準によって事務所等の賃借の表示が変わっても、期間費用としての実質的な負担を二重に加算しない。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%に営業利益の変動に対応するquality+0.5%を加えた。事業の存続危機に相当する上乗せは不要と判断する。