結論
インフォネットは、企業サイトの制作と運用、CMSと呼ばれるWebサイト管理ソフト、企業向けAI検索を提供する会社である。2026年10月に持株会社体制へ移行し、上場会社の商号はインフォネットグループに変わった。筆者の結論は「割高」である。SaaS型CMS市場で首位の実績はあるが、長期の利益を守る力と、買収後の既存株主の取り分には慎重な評価が必要だ。
同社を単なるWeb制作会社として片づけるのは正しくない。infoCMSは、ITR調査の2024年度SaaS型CMS市場で売上シェア14.4%を持ち、10年連続首位を獲得した。子会社アイアクトのCogmoは企業内検索と生成AIを組み合わせ、実際の導入事例も増えている。顧客との継続関係、制作から運用まで引き受ける体制、自社製品を持つことは、確かな強みである。
しかし、強みがあることと、10年先も十分な利益を残せることは別だ。2026年3月期の売上は20.85億円だったが、営業利益は0.55億円、純損益は赤字に転じた。月額利用料サービスも減収だった。さらに2026年7月にはアクティブリテックを子会社化し、株式交換で419,685株が交付された。これから評価すべき企業は、以前のCMS会社ではなく、Web制作、AI検索、CG・XR制作を抱える新しいグループである。
10年後の中立像では、制作量と操作画面に依存するサービスの利用数量が減る一方、単価と生産性の改善が利益を支えると考える。それでも将来の株主価値を資本コストで現在に戻すと、既存株主の取り分は約7億円台が中心となり、基準時価総額約17.36億円を大きく下回る。より高い価値には、自社製品の収益性回復、買収先の安定した利益、追加希薄化の抑制が同時に必要である。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主が最初に知りたいのは、10年後も顧客が同じ会社にお金を払い続け、その支払いが競合の圧力に負けず利益として残るかである。インフォネットのCMS事業には、長年の顧客関係と運用ノウハウがある。企業サイトの公開を支える仕事はなくならないだろう。しかし、サイトの管理画面自体は唯一無二の設備ではない。競合への乗り換えや、自社開発したAIエージェントによる運用が容易になれば、過去の継続課金をそのまま将来へ延ばすことはできない。
もう一つ気になるのは、会計上の利益と株主が自由に使える現金との差である。ソフトウエアの開発費は資産に計上されても、古くなれば改修や再開発が必要になる。CMSやAI製品は、作って終わりの設備ではない。保守開発と新製品への投資をやめると競争力が落ちるため、稼いだ利益の相当部分を事業に戻さなければならない。のれんとソフトウエアの帳簿価額が高い企業ほど、表面上の自己資本を安全の根拠にしすぎないことが大切だ。
買収による拡大も同じ基準で評価したい。取得した会社の売上が連結されれば規模は増すが、新株を発行すれば一株当たりの取り分が薄くなる。株主にとって価値があるのは、買収の後で利益が十分に増え、追加の開発投資や管理費を引いても、その利益が従来の株主に帰属する場合だけである。アクティブリテックの案件力が本当に強く、Web・AI・XRの相互送客が営業利益率を押し上げるなら評価は変わる。しかし、今ある数字だけでは、そう言い切るには早い。
筆者はinfoCMSのシェア実績を評価する一方、買収を繰り返せば自然に成長するという見方は採らない。優れた事業を適切な価格で持つには、強みの有無だけでなく、その強みの持続性、再投資の収益性、株主への還元を確認する必要がある。10年後の利益には改善余地があるものの、現時点で払う価格には十分な安全域が見えない。
何で稼ぐ会社か
事業の土台は、企業のWebサイトを作り、公開後も更新・運用を支える仕事である。infoCMSやLENSAhubを使って企業サイトを構築すると、最初に設計・制作・システム開発の代金が入る。その後もCMSの利用料や運用保守料が続くため、単発の受託開発と継続課金が組み合わさった収益構造になっている。顧客には企業や自治体があり、サイトの公開を止められない顧客ほど保守を継続する動機が強い。
2026年3月期の販売実績では、受託開発サービスが9.27億円、月額利用料サービスが7.78億円だった。前者は売上全体の約44%、後者は約37%を占める。企業サイトは定期的に刷新されるが、その時に制作会社とCMSの両方を見直すことができる。従って、初期構築で獲得した顧客が永久に残るわけではない。更新を重ねるたびに受注を取り直し、競合製品と比べて選ばれる必要がある。
AIサービスは、子会社アイアクトのCogmo Search、Cogmo Attend、RAG型生成AIサービスが中心である。2026年3月期の売上は3.55億円で、前年から42.4%増えた。企業内の文書を検索して回答を作る用途には実需があり、川崎重工や自治体への導入事例もある。ただし、この売上には導入支援と継続利用料が混在する。完全に自律して業務を遂行するAIエージェントが、独立した収益源として大きく販売されたことを示す開示とは区別する必要がある。
2026年7月に完全子会社化したアクティブリテックは、建築CG、アニメーション、VR・AR、デジタルツイン、Webシステム開発、3Dスキャナ関連事業を手がける。2025年9月期の単体売上は8.80億円、営業利益は0.63億円だった。買収により、従来のWeb・CMSにCG・XRを加える提案が可能になる。一方、売上の相当部分は案件ごとの制作工数に依存する。2026年10月以降のグループはAI、XR、デザイン、デジタル・システムの複数領域を持つが、経済的には受託制作と継続ソフト利用料の組み合わせが中心である。
会社は会計上、従来事業を単一セグメントとして報告している。そのため、本分析の事業区分は投資価値を考えるためのサービス別区分であり、法定の報告セグメントではない。受託件数や実契約数が開示されない項目は、公開料金と売上高から換算した数量で扱い、開示された実数と混同しない。
優良さと弱いところ
最大の強みは、infoCMSが長年にわたり特定の市場で選ばれ続けた実績である。ITRの2024年度調査でSaaS型CMSの売上シェアは14.4%だった。国内企業向けのサイト制作、管理画面、保守窓口を一体で提供してきたことが、顧客との関係を支えている。Webサイトを移行するにはデザイン、公開中のコンテンツ、フォーム、外部システムの接続を確認する必要があり、一定の乗り換え費用も生じる。
それでも、堀、つまり競合が容易に奪えない利益の源泉を強いとまでは認めない。会社が公表した月額利用料売上は2026年3月期に8.1%減少した。少なくとも直近の数字には、販売数量や料金を自由に増やせる力が表れていない。解約率が年5%未満であること、規制上の理由で年単位の移行が必須であること、法改正のたびに値上げを通せたことを示す複数の定量証拠も確認できない。情報を保存するCMSではあるが、法的な記録の正本を独占する基盤と同一視してはならない。
資本効率にも注意が要る。2017年から2019年にかけての営業利益率は高かったが、買収と製品開発を進めた後の利益率は不安定になった。2022年3月期と2026年3月期には最終赤字を計上し、直近年度の営業利益率は2.6%にとどまった。従来の自己資本比率は5割を超えるものの、ソフトウエア、のれん、顧客関連資産という換金しにくい資産も大きい。帳簿上の自己資本が、そのまま清算時に株主に戻るとは考えにくい。
経営には評価できる点もある。AIを自社サービスに組み込み、制作業務にも導入して生産性改善を図っている。会社は2026年3月期にAI活用による生産性25%改善を説明した。しかし、生産性が上がった時に、節約した工数を自社の利益として残せるかは別問題だ。顧客が納期短縮と値下げを求めれば、改善効果の一部は顧客に移る。現時点では、増分投資の利益率が資本コストを安定して上回ることは証明されていない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
企業が公式サイトを持ち、商品、採用、投資家情報を発信する必要は10年後も残る。ただし、サイトを作る手段は大きく変わる。WordPress、Movable Type、HeartCore、Connecty CMS、BlueMonkey、microCMS、Webflowなどが異なる価格帯と機能で競争している。生成AIが文章、デザイン、コード、翻訳を作れるようになれば、発注する仕事の量そのものが減る可能性が高い。競争の中心は、画面を作ることから、企業の情報を正しく管理し、必要な媒体に届けることへ移る。
市場の数字は定義をそろえる必要がある。ITR資料に基づく国内SaaS型CMS市場は2023年度に約70.3億円で、インフォネットの当時のシェアは14.3%だった。2024年度の同社シェアは14.4%である。この市場での競合シェアは、同社開示の円グラフではA社13.4%、B社13.0%、C社11.4%となっている。一方、SaaS型に限らないCMS市場では、Movable TypeやHeartCoreなどの売上も含まれる。両方の市場を同じ分母としてシェアを論じることはできない。
筆者は、SaaS型CMS市場の実質的な利用需要が10年で消えるとは考えない。しかし、需要の伸びが同社の契約数量増加を保証するわけでもない。より低価格のクラウドCMS、APIで内容を配信するヘッドレスCMS、AIエージェントによる直接更新が普及すれば、同社は市場の拡大中にもシェアを失う可能性がある。中立ではSaaS型CMS市場の実質需要が緩やかに増える一方、同社の契約換算数量は縮小し、狭義市場のシェアも現在の14.4%から1割前後へ低下する方向を想定する。これは予測であり、会社が示した目標ではない。
AI検索・RAG市場では、Microsoft、Google、Amazon Web Servicesの基盤サービスに加え、国内外の企業検索・チャットボット製品が競争相手になる。モデルの性能向上はCogmoの回答品質を高めるが、同じ技術を競合や顧客自身も利用できるため、ソフトウエアの差別化を弱める側面もある。企業内の固有データへの接続、アクセス権限の管理、回答の根拠表示が残る価値になる。それでも、操作画面の利用回数や検索席数を売るモデルは、自律型エージェントに置き換わりやすい。
建築CG・XRの市場は、建設会社や不動産開発会社の案件数、制作予算、建築投資に左右される。現地で行う3D計測には物理的な作業が残る一方、CG画像や動画の生成工数はAIによって削られやすい。Web制作、企業向けAI検索、建築CGを同じ定義で集計した公的市場規模や、アクティブリテックの比較可能な市場シェアは確認できなかった。この不確実さを市場全体への一律の成長率で埋めず、受注案件数と案件単価の個別の筋書きに反映する。
資本政策と M&A
経営の資本配分を評価するうえで、2026年の買収が最大の論点になる。インフォネットは2021年にアイアクトを子会社化し、2024年にはブランドデザインをグループに迎え、事業の幅を広げてきた。2026年7月にはアクティブリテックを完全子会社化した。同社の直近売上8.80億円は、買収前のインフォネット連結売上20.85億円に対して小さくない。これまでと同じ会社が自然成長したのではなく、株主の持分と事業内容が同時に変わったことを忘れてはならない。
アクティブリテックの取得には現金による一部株式取得と株式交換を用い、419,685株が交付された。2026年6月末時点の自己株式控除後株数2,018,730株と比べると、新株発行は既存株主にとって約17.2%の持分希薄化に相当する。取引相手には当時の取締役会長と関係する会社が含まれ、会社は当該取締役が関連する議案の審議・決議に参加していないことを開示した。手続き上の対応は確認できるが、独立株主には取得価格とその後の投下資本利益率を検証し続ける必要がある。
2027年3月期の会社予想は、買収を織り込んで売上33.01億円、営業利益1.83億円、純利益0.72億円となった。これは単年度予想であり、確認した中長期戦略には売上、営業利益、ROEを複数年にわたり達成する定量的な約束はない。配当性向、DOE、総還元性向、自社株買い金額についても数字の約束なしである。
会社は成長投資を優先しており、2026年3月期まで無配が続いた。一方、300株以上を半年以上保有する株主には、年間13,000円相当のデジタルギフトを用意している。これは会社に費用が生じる実質的な株主還元である。対象人数は未開示のため、年間約900人、約0.12億円の費用と仮定して10年間の還元に含めた。楽観側だけは利益成長に応じた小規模な配当開始を織り込むが、中立では配当を約束されたものとして扱わない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
infoCMSが10年連続でSaaS型CMS市場の首位を守った事実は、簡単には無視できない。企業サイトは公開している限り保守が必要であり、更新担当者の業務に深く組み込まれたシステムを変更するには、費用だけでなく運用上の混乱が生じる。Web制作、CMS、運用保守をまとめて提供できる会社なら、低価格の単機能製品にすべての仕事を奪われるとは限らない。新CMSのLENSAhubが旧製品からの移行先として定着すれば、更新需要を取り込みながら、より効率的な運用基盤へ顧客を移せる。
AIについても、同社は被害者になるだけではない。Cogmoの企業内検索やRAG型生成AIには実際の導入先があり、2026年3月期のAIサービス売上は増えた。生成AIによって社内の制作工数が減れば、同じ人数で多くの仕事に対応できる。会社が説明した生産性改善を顧客向けの低価格化だけに使わず、品質と納期、開発利益率の改善につなげられれば、受注量が伸びなくても利益は増える余地がある。
アクティブリテックの取得にも合理性はある。建築CG、XR、3D計測は、従来の企業サイト制作とは違う顧客と予算を開拓するきっかけになる。CGとWebを組み合わせた発注、AI検索を備えた企業向け情報提供、実物の3D計測まで提案が広がれば、単純な制作会社から複合的なサービス会社へ進化できる。買収先には取得前から営業利益があり、完全な赤字事業を再生する案件ではない。
こうした変化が実現すれば、10年後には売上規模だけでなく、営業利益率も現在より大きく改善する可能性がある。旧事業の数量が伸びなくても、自社製品の維持費を抑え、買収先の案件を利益に変え、無理な増資を止められれば株主価値は高まる。企業向けの日本語対応、実装支援、既存顧客の信頼を一体で評価すれば、今の利益の低さだけで将来価値を決めつけるべきではない。
慎重な見方
市場首位という言葉には注意が必要だ。14.4%というシェアはSaaS型CMSという限定された市場であり、企業サイト制作やすべてのCMSを含む市場の支配力を意味しない。世界中にWebサイトを構築する仕組みが存在し、AIは文章、画像、プログラムを直接生成できる。10年前のような画面操作と制作工数が必要なくなれば、顧客が払う費用そのものが縮む。シェアを守っていても、市場の利益総額が減る事業には高い値を付けられない。
実績にも警戒信号がある。売上が20億円を超えた2026年3月期でも営業利益率は2.6%に下がり、最終損益は赤字となった。月額利用料収入も減っている。自社製品が強いなら、なぜ売上の増加が安定した利益につながらないのかという問いが残る。新製品への投資や人員増加が必要なのだとしても、その投資は将来の利益で回収しなければならない。
AIサービスも安全とは限らない。企業内検索と文章生成の機能は大手クラウド事業者が継続的に改良しており、顧客が標準機能として使うようになれば独立した検索ソフトの単価は下がる。CogmoはAI関連の売上を持つが、情報を独占的に保有する規制上の記録基盤ではない。顧客が保有する文書の処理を担う以上、AIの普及による恩恵と代替の圧力を同時に受ける。
さらに、アクティブリテックの買収は既存株主の持分を薄めた。買収先は制作工数への依存が大きく、AI代替から守られた別の収益源を手に入れたわけではない。新株発行、のれんの発生、管理費の増加、複数会社の統合が重なると、売上だけ増えてROEが下がる危険がある。関連当事者との関係がある取引では、手続き上の対応だけでなく、取得後の投資収益が十分だったかという事後検証も欠かせない。
10年先には大手CMSとクラウドAIの競争に挟まれ、単価の引き上げも受注量の維持も難しくなる可能性がある。そうなれば、今の帳簿上のソフトウエアとのれんは株主の資産を守る役に立ちにくい。現在の業績悪化を一時的な先行投資と決めつけるのは早計である。
どちらに重みを置いたか
自社CMSの市場実績とCogmoの売上増加は評価するが、長期の利益を守るという点では慎重な見方が優勢である。2026年3月期の減益と最終赤字、月額利用料収入の減少、株式交換による希薄化は、いずれもこの会社固有の事実だ。確率は楽観側29%、中立30%、悲観側41%として下に寄せた。ただしAI代替は既に中立の数量と10年後以降の成長率に反映している。悲観確率を高めた主因は、買収統合、利益率回復、追加の資本配分に関する不確実性であり、同じAIリスクを重ねて引いたわけではない。現在の株価に対しては割高という結論になる。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 823 円17 億円(+ 還元の換算額還元の合計 62 円1 億円)。 今の値に割り戻すと 405 円8 億円、今との差 −52.4%、 期待の年率 +0.4%(資本コスト 8.5%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 9% | 2,500 円50 億円 | 185 円4 億円 | +215.8% | +12.8% | 242 円5 億円 |
| やや楽観 | 20% | 1,589 円32 億円 | 90 円2 億円 | +97.6% | +7.3% | 336 円7 億円 |
| 中立 | 30% | 793 円16 億円 | 48 円1 億円 | −1.1% | −0.1% | 252 円5 億円 |
| やや悲観 | 25% | 128 円3 億円 | 37 円1 億円 | −80.6% | −16.3% | 41 円1 億円 |
| 悲観 | 16% | 62 円1 億円 | 22 円0 億円 | −90.2% | −22.3% | 13 円0 億円 |
| 加重平均 | 100% | 823 円17 億円 | 62 円1 億円 | +4.0% | +0.4% | 884 円18 億円 |
今の株価時価総額 850 円17 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 9% CMSの顧客基盤を維持し、AI・XRとの一体提供が高採算化 利益 5 億円 · PER 11.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 2,500 円50 億円
企業サイトの制作そのものはAIによって効率化されるが、同社はその変化をいち早く自社の仕事に組み込み、顧客の発注先としての地位を守る。infoCMSからLENSAhubへの移行が順調に進み、既存企業のWebサイト管理・運用と新しい情報配信手段を一体で支援する。AIによる制作期間の短縮を、値下げではなく受注の品質と生産性向上に結びつけられる。
Cogmoは企業内検索の利用を維持し、権限管理、根拠提示、社内文書への接続という面で顧客から選ばれ続ける。企業向けAI市場は拡大するが、同社の数量を楽観的に増やしすぎない。自律型エージェントの販売額を独立して確認できない以上、Cogmoの契約換算数量は現状維持にとどめる。一方、開発効率と製品構成が改善して利益率は高まる。
アクティブリテックは買収前の主要顧客を維持し、Web・AI案件からの紹介によってCG・XRの高付加価値案件を確保する。現場3D計測のように物理作業が必要な領域も利益を支える。買収後の重複管理費が抑えられ、追加の大幅な希薄化は起きない。全社の営業利益率が2割程度まで回復し、長年続いた無配方針も利益の安定を受けて小規模な配当に変わる筋書きである。
- Web受託開発・サイト制作:数量 185(年間の受託開発案件換算件数)× 価格 0.07(案件当たり平均受託売上(億円/件))→ 売上 12 億円・営業利益 3 億円。案件換算数量は1.00倍、価格は1.34倍。工数効率改善を利益として保持する。
- CMS・月額利用料サービス:数量 1,000(年間契約サイト換算数)× 価格 0.01(サイト換算当たり年間売上(億円/年))→ 売上 9 億円・営業利益 3 億円。契約換算数量は1.00倍、価格は1.20倍。SaaS型CMS市場での上位地位を維持する。
- Cogmo・企業向けAI検索サービス:数量 300(年間の企業向け検索サービス契約換算数)× 価格 0.01(契約換算当たり年間売上(億円/年))→ 売上 4 億円・営業利益 2 億円。販売額を確認できない自律型エージェントの成長は数えず、契約換算数量を現状維持とする。
- SES・その他:数量 2.5(年間の技術者稼働人年換算)× 価格 0.11(稼働人年当たり年間売上(億円/人年))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。高度な技術支援を残し、単価は物価上昇並みに改定する。
- アクティブリテックの建築CG・XR・3D関連事業:数量 200(年間のCG・XR受注案件換算件数)× 価格 0.06(案件当たり平均売上(億円/件))→ 売上 12 億円・営業利益 2 億円。CG・XRの案件換算数量を維持し、現場計測と高付加価値制作を増やす。
倍率:資本コストkは8.5%。2036年以降の名目成長率g_longはAI代替を考慮して0%であり、正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)=1÷0.085=11.7647倍となる。2036年ROEは約13.0%でkを上回るが、長期成長0%のため超過利益の再投資を永久成長として加算しない。楽観側は式の上限そのものを用い、現在または同業のPERから決めていない。
確率:既存の受託件数とCMS換算契約数を維持したうえで、開発生産性の改善を価格競争に奪われず、買収先とも高い営業利益率を実現する必要がある。CMSの過去のシェア実績とAI導入の実需はあるが、現時点の低利益率からの転換には複数の成功条件が必要なので9%とする。
やや楽観 20% 制作量は減るが、自社製品と買収先の利益率が回復 利益 3 億円 · PER 11.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,589 円32 億円
企業のWebサイト制作では、AIが文章、画像、プログラム作成を補助するため、従来と同じ工数を請求する案件は減る。それでも大手企業や自治体には情報公開の責任があり、設計、運用、アクセス管理をまとめて引き受ける会社への発注は残る。同社は仕事の進め方を変え、受注数量が減っても顧客当たりの利益を守る。
infoCMSとLENSAhubは、企業サイト管理の主要な選択肢として残る。低価格製品に一部の顧客を奪われるものの、複雑な運用を必要とする企業の継続契約は保たれる。Cogmoも独立した検索・回答サービスとして一定の導入基盤を維持する。ただし、AI機能の一般化による値下げ圧力を避けられず、物価上昇をそのまま販売単価に転嫁することはできない。
アクティブリテックは現場3D計測と大型の建築CG案件に注力し、収益性を改善する。買収後の管理費は増えるが、グループで営業と制作工程を共通化して吸収する。全社の営業利益は2026年3月期を上回り、後半には少額の配当も始まる。事業の再投資負担は残るため、利益のすべてが株主に戻るわけではない。
- Web受託開発・サイト制作:数量 145(年間の受託開発案件換算件数)× 価格 0.07(案件当たり平均受託売上(億円/件))→ 売上 9 億円・営業利益 2 億円。制作案件数量は現状の約0.78倍、価格は1.30倍。
- CMS・月額利用料サービス:数量 900(年間契約サイト換算数)× 価格 0.01(サイト換算当たり年間売上(億円/年))→ 売上 8 億円・営業利益 2 億円。契約数量0.90倍、価格1.15倍。
- Cogmo・企業向けAI検索サービス:数量 285(年間の企業向け検索サービス契約換算数)× 価格 0.01(契約換算当たり年間売上(億円/年))→ 売上 4 億円・営業利益 1 億円。AI検索の契約換算数量0.95倍、価格1.15倍。
- SES・その他:数量 2.1(年間の技術者稼働人年換算)× 価格 0.10(稼働人年当たり年間売上(億円/人年))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。稼働量0.70倍、価格1.28倍。
- アクティブリテックの建築CG・XR・3D関連事業:数量 180(年間のCG・XR受注案件換算件数)× 価格 0.06(案件当たり平均売上(億円/件))→ 売上 10 億円・営業利益 2 億円。CG・XRの案件数量0.90倍、価格1.32倍。
倍率:k8.5%、g_long0%のため、長期の再投資利益率を考慮した正当化PERは11.7647倍。2036年ROEは約10.8%でkを上回るが、AI代替のある事業群について2036年以降の永久成長を認めない。中立より高い価値は倍率の引き上げではなく、2036年時点の純利益の改善から生じる。
確率:AIによる制作案件の減少を受け入れながら、CMSとCogmoの継続顧客を大きく失わず、アクティブリテックの利益率を改善する筋書きである。高い市場シェアという強みが残る可能性を考慮し、楽観ほど条件が厳しくない20%を配分する。
中立 30% AIが制作量を削り、CMSとCG・XRは緩やかに縮小 利益 1 億円 · PER 11.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 793 円16 億円
10年後も企業サイトの公開と保守は続くが、制作会社に発注される仕事の量は減る。サイトの文章、画像、画面部品、簡単なプログラムをAIが作り、顧客自身が更新作業を進められるためである。インフォネットは設計や運用で残る仕事を確保するが、受託開発の案件換算数量は現在の約65%になる。単価は人件費上昇に応じて改定するものの、数量の減少をすべて補うほどの値上げ力はない。
infoCMSとLENSAhubは引き続き企業のWeb管理を支える。一方、企業がAIエージェントを使って更新するようになり、管理画面の利用契約は減少する。SaaS型CMSの市場全体が存在し続けても、同社の市場シェアは今より小さくなる。Cogmoは企業内データの検索と回答生成で一定の需要を確保するが、大手クラウド製品と標準機能の競争を受ける。契約換算数量と実質単価がともに強く伸びる筋書きは採らない。
アクティブリテックの建築CG・XRもAI制作技術の影響を受け、案件換算数量が減る。現場計測や複雑な設計・映像制作は残るため、事業自体は消えない。管理費と製品保守費は物価に応じて増えるが、生産性の改善で営業利益率は2026年3月期より回復する。大きな配当開始は前提にせず、株主への現金還元は優待費用が中心となる。
- Web受託開発・サイト制作:数量 120(年間の受託開発案件換算件数)× 価格 0.06(案件当たり平均受託売上(億円/件))→ 売上 8 億円・営業利益 1 億円。人月・工数型。数量約0.65倍、価格1.28倍。
- CMS・月額利用料サービス:数量 800(年間契約サイト換算数)× 価格 0.01(サイト換算当たり年間売上(億円/年))→ 売上 7 億円・営業利益 1 億円。画面中心型。数量0.80倍、価格1.10倍。
- Cogmo・企業向けAI検索サービス:数量 255(年間の企業向け検索サービス契約換算数)× 価格 0.01(契約換算当たり年間売上(億円/年))→ 売上 3 億円・営業利益 1 億円。企業向け検索・RAGの契約換算数量0.85倍、価格1.10倍。
- SES・その他:数量 1.8(年間の技術者稼働人年換算)× 価格 0.10(稼働人年当たり年間売上(億円/人年))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。人月・工数型。稼働量0.60倍、価格1.22倍。
- アクティブリテックの建築CG・XR・3D関連事業:数量 145(年間のCG・XR受注案件換算件数)× 価格 0.06(案件当たり平均売上(億円/件))→ 売上 8 億円・営業利益 1 億円。制作工数型を主体とし、物理的な3D計測の一部だけが代替を免れる。数量0.725倍、価格1.28倍。
倍率:2036年のROEは1.402億円÷22.4億円=約6.3%で、k8.5%を下回る。資本コスト未満の再投資による成長には価値を加算しないため、PERの上限は1÷k=11.7647倍となる。g_longは0%とし、ROEが低いことを理由に同じ利益減少を倍率へ再度上乗せして減額しない。中立はこの上限そのものを使用する。
確率:過去の収益実績と、AIエージェントが工数と画面操作を置き換えるという構造変化を同時に反映した中心シナリオである。下に寄せる理由:2026年3月期の月額利用料減収と最終赤字、2026年7月の買収統合に伴う収益性の不確実性があるため、上下同確率にはせず中立30%とした。
やや悲観 25% CMSの乗り換えが進み、買収後の利益回復が鈍い 利益 0 億円 · PER 11.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 128 円3 億円
企業サイト制作では、低価格のAI制作ツールと顧客の内製化が広がる。大きな企業サイトや制度上の説明責任が必要な案件は残るものの、中小規模のサイト刷新では価格が下がりやすくなる。インフォネットは案件単価を名目では引き上げても、請け負う案件換算数量の減少が大きく、売上と粗利益が伸び悩む。
CMS市場では既存顧客の一部がWordPress、ヘッドレスCMS、より安いクラウドサービスへ移る。LENSAhubへの移行にも費用がかかり、旧製品の保守と新製品の開発を並行させる負担が残る。Cogmoは一定の顧客に使われ続けるが、大手クラウドが検索と生成AIを一体で提供するため、利用料の引き上げが難しくなる。
アクティブリテックは建築CGの制作効率を改善するが、顧客がその分だけ発注価格の引き下げを求める。現地計測と高度な映像案件は残るものの、買収時に期待した部門間の営業連携は十分に進まない。グループ管理費や製品開発費が重く、営業利益率は低位にとどまる。会社は事業を継続できるが、無配と優待中心の株主還元が続き、資本コストを下回る利益しか生めなくなる。
- Web受託開発・サイト制作:数量 105(年間の受託開発案件換算件数)× 価格 0.06(案件当たり平均受託売上(億円/件))→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。案件換算数量0.57倍、価格1.20倍。
- CMS・月額利用料サービス:数量 730(年間契約サイト換算数)× 価格 0.01(サイト換算当たり年間売上(億円/年))→ 売上 6 億円・営業利益 1 億円。契約換算数量0.73倍、価格1.05倍。
- Cogmo・企業向けAI検索サービス:数量 225(年間の企業向け検索サービス契約換算数)× 価格 0.01(契約換算当たり年間売上(億円/年))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。AI検索契約換算数量0.75倍、価格1.05倍。
- SES・その他:数量 1.5(年間の技術者稼働人年換算)× 価格 0.10(稼働人年当たり年間売上(億円/人年))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。稼働量0.50倍。採算の悪い稼働が残る。
- アクティブリテックの建築CG・XR・3D関連事業:数量 125(年間のCG・XR受注案件換算件数)× 価格 0.05(案件当たり平均売上(億円/件))→ 売上 7 億円・営業利益 0 億円。CG・XRの案件数量0.625倍、価格1.22倍。
倍率:2036年のROEは約1.8%でk8.5%を大きく下回る。再投資しても十分な付加価値を生めないため、稼ぐ力の上限1÷k=11.7647倍を適用する。純利益自体が非常に小さいため時価総額は約3.13億円にとどまり、強い永久成長も追加的な現金価値も認めない。
確率:月額利用料収入の減少が続き、AI・CMSの標準化によって価格競争が強まり、買収先も従来の受託型から脱却できない筋書きである。過去の低利益率と複数事業の統合負担を踏まえて25%とした。
悲観 16% AIによる制作価格の破壊と買収資産の価値低下 利益 −1 億円 · PBR 0.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 62 円1 億円
企業は公式サイトを維持するものの、その更新と制作の大部分をAIエージェントへ任せるようになる。人が画面を操作してサイトを更新するCMSへの需要が減り、infoCMSの既存顧客は低価格の代替製品へ移る。インフォネットは一部の複雑な企業サイトを受託し続けるが、従来の制作案件数は大幅に減少する。単価も物価上昇に追いつかず、実質的な価格競争が進む。
Cogmoは技術的に使える製品であり続けても、MicrosoftやGoogleなどが企業内検索、回答生成、権限管理を標準サービスに組み込む。顧客が独立した検索ソフトのために支払う金額は減り、新規導入による補填も難しい。アクティブリテックではCGと映像の制作工数が急速に自動化され、価格引き下げと案件減少が重なる。現場での3D計測は残るが、会社全体を支えるには足りない。
経営は保守費用と管理費の削減を進めるものの、新製品や既存システムの維持にも資金が必要となる。赤字と無形固定資産の減損が発生し、追加買収による成長も止まる。2036年には営業赤字となり、継続企業として高い利益倍率を付ける根拠を失う。ただし直ちに倒産することまでは前提にせず、債権の回収と売却可能な資産から残る株主価値を床とする。
- Web受託開発・サイト制作:数量 85.0(年間の受託開発案件換算件数)× 価格 0.05(案件当たり平均受託売上(億円/件))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。案件換算数量0.46倍、価格1.02倍。制作の標準化が進む。
- CMS・月額利用料サービス:数量 500(年間契約サイト換算数)× 価格 0.01(サイト換算当たり年間売上(億円/年))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。契約換算数量0.50倍、価格0.90倍。
- Cogmo・企業向けAI検索サービス:数量 175(年間の企業向け検索サービス契約換算数)× 価格 0.01(契約換算当たり年間売上(億円/年))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。企業向け検索がクラウド標準機能に置き換わり、数量と単価がともに縮む。
- SES・その他:数量 0.6(年間の技術者稼働人年換算)× 価格 0.08(稼働人年当たり年間売上(億円/人年))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。稼働量0.20倍、価格は名目横ばい。
- アクティブリテックの建築CG・XR・3D関連事業:数量 90.0(年間のCG・XR受注案件換算件数)× 価格 0.05(案件当たり平均売上(億円/件))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。CG・XRの案件数量0.45倍、価格1.05倍。
倍率:最終赤字のためPERで評価しない。床の基準は直近開示の自己資本全額ではなく、2026年6月末の現預金と回収可能な債権、処分可能な有形資産などから負債と処分費用を差し引いた約1.5億円である。2026年3月期の自己資本約10.9億円を参照すると床に対応するPBRは約0.138倍だが、これは過去の市場PBRから置いた倍率ではない。
確率:自社CMSの競争優位が崩れ、AI検索も標準機能に置き換わり、買収したCG制作事業まで採算を失う複合シナリオである。複数の競争上の敗北が同時に起きる必要があるため中心ではないが、無形資産の比率と業績の不安定さから16%を見込む。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
Web受託開発・サイト制作
企業サイトの構築・刷新、Webシステム開発、デザイン制作を請け負う。AI代替区分は人月・工数型であり、受注する制作案件数を実質数量とする。
| 数量年間の受託開発案件換算件数 | 価格案件当たり平均受託売上(億円/件) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 185 | 0.05 | 9 | 1 |
| 10 年後 中立 | 120 | 0.06 | 8 | 1 |
取り方:2026年3月期有価証券報告書の受託開発売上927,473千円と受注残高414,709千円を使用した。実際の案件数と平均受注単価は非開示である。一般的な企業サイト構築の案件を約500万円規模とする仮の案件換算を採り、9.27473億円÷185件=約501万円とした。185件は会社発表の受注件数ではない。営業利益0.73億円は法定開示のサービス別利益ではなく、全社利益と本社調整費を整合させるための推定配賦である。2036年中立はAIエージェント代替の人月・工数型として数量を約0.65倍、案件単価を1.28倍とする。
CMS・月額利用料サービス
infoCMS、LENSAhubなどのWebサイト管理・保守・継続利用サービスである。AI代替区分は操作画面中心の業務ソフト型であり、記録の正本としての規制上の堀は立証されていない。
| 数量年間契約サイト換算数 | 価格サイト換算当たり年間売上(億円/年) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,000 | 0.01 | 8 | 1 |
| 10 年後 中立 | 800 | 0.01 | 7 | 1 |
取り方:2026年3月期の月額利用料サービス売上778,406千円を起点とする。実契約社数、サイト数、ARR、解約率、ARPUは確認した開示では得られない。LENSAhubの公開料金には月額2.5万~10万円程度のプランがあり、保守などを含むサイト換算の年間売上を約77.84万円と仮定して1,000換算契約とした。1,000件は実際の契約数ではない。料金の確認先はhttps://www.lensa-hub.jp/plan/。ITRの2024年度SaaS型CMS市場シェア14.4%は別の集計定義に基づくため、この月額売上を単純に市場全体で割ってシェアを計算しない。2036年中立はAIエージェント代替の画面中心型として数量0.80倍、価格1.10倍とする。
Cogmo・企業向けAI検索サービス
子会社アイアクトによる企業内検索、チャットボット、RAG型生成AIとその導入・運用支援である。業務画面・企業内検索の型として扱い、独占的な記録の正本とは見なさない。
| 数量年間の企業向け検索サービス契約換算数 | 価格契約換算当たり年間売上(億円/年) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 300 | 0.01 | 4 | 0 |
| 10 年後 中立 | 255 | 0.01 | 3 | 1 |
取り方:有価証券報告書のAIサービス売上354,592千円を用いる。契約件数、導入初期費用と利用料の内訳は非開示である。公開されているCogmoの検索・生成AIサービスの月額料金と導入支援費を踏まえ、年約118万円の契約換算を300件とした推計であり、実際の導入社数ではない。会社はRAG型生成AIの顧客導入を開示しているが、自律型AIエージェントが独立した大口売上となった金額の証拠は確認できない。このためAIエージェント代替の楽観シナリオでも数量を現状の1.0倍以下とし、中立は0.85倍、価格は1.10倍とする。
SES・その他
エンジニアの技術支援など、人員の稼働量に収益が依存する小規模事業である。AI代替区分は人月・工数型とする。
| 数量年間の技術者稼働人年換算 | 価格稼働人年当たり年間売上(億円/人年) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 3.0 | 0.08 | 0 | 0 |
| 10 年後 中立 | 1.8 | 0.10 | 0 | 0 |
取り方:2026年3月期のSES・その他売上24,551千円を基礎とする。実際の派遣人数と人月単価は開示されていないため、年間約818万円の稼働を3人年とした換算である。10年中立の実質稼働量はAIによる業務自動化と顧客内製化を踏まえて0.60倍、価格は1.22倍とする。
アクティブリテックの建築CG・XR・3D関連事業
建築CG、アニメーション、VR・AR、デジタルツイン、3Dスキャナおよび関連開発である。主体は人月・制作工数型だが、現地3D計測など物理的作業の一部はAIによる直接代替を受けにくい。
| 数量年間のCG・XR受注案件換算件数 | 価格案件当たり平均売上(億円/件) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09(買収前の単体実績) | 200 | 0.04 | 9 | 1 |
| 10 年後 中立 | 145 | 0.06 | 8 | 1 |
取り方:2026年5月19日の株式取得・株式交換の開示にあるアクティブリテックの2025年9月期単体売上880百万円、営業利益63百万円を使用した。実案件数は非開示であり、平均440万円の案件を200件とした換算にすぎない。会社固有の建築CG・XR市場シェアも確認できない。受託制作の中立数量はAIエージェント代替で0.725倍とし、価格は1.28倍とする。現場での立体計測の一部には数量減少への抵抗力があるが、制作全体が守られるとはしない。この事業は2026年3月期連結売上に含まれていないため、連結実績20.85億円に混ぜず、買収後の事業構成を考えるための別建ての基礎数値とする。
リスクと懸念
AIエージェント代替
Web制作は人の工数、SESは技術者の稼働、CMSは管理画面、Cogmoは検索・回答機能、建築CGは制作工程が収益の中心である。AIエージェントがこれらを直接実行できるようになると、利用者や発注者は減った工数に相当する値下げを求める。自社の生産性が改善しても、その利益を顧客に渡してしまえば株主利益は増えない。中立では事業ごとに数量0.60~0.85倍程度の縮小を反映した。
CMSの市場首位と利益の堀を取り違える危険
infoCMSはSaaS型CMSという狭義市場で10年連続首位を獲得した。ただし、2026年3月期の月額利用料売上は前年を8.1%下回った。販売シェアだけでは低解約率、値上げ力、継続利益率を立証できない。顧客がWordPress、ヘッドレスCMS、クラウド標準機能へ移る場合、売上の減少に加えて旧製品の維持費が残る。
買収による希薄化と利益の過大評価
アクティブリテック取得では419,685株が交付され、旧株主の持分割合が下がった。買収によって連結売上が増えても、追加された利益が発行株式の増加と管理費を十分に補わなければ、一株当たりの価値は高まらない。今後もM&Aを重要な成長手段とする方針であるため、取得価格、のれん、追加増資、買収先の営業利益を継続的に確認する必要がある。
関連当事者が関与する取引のガバナンス
2026年5月の買収開示では、取締役会長と関係する会社が取引相手に含まれ、当該取締役は審議と決議に参加していないと説明された。利益相反への手続き上の対応があったことは確認できるが、取得価格の公正さや株主価値への寄与は別途検証すべき問題である。買収後の投下資本利益率が資本コストに届かない場合、連結規模の拡大は株主価値を損ねる。
無形固定資産の回収可能性
2026年6月末にはソフトウエア約3.35億円、のれん約1.99億円、顧客関連資産約0.92億円が計上されていた。これらは通常の事業活動では収益獲得に役立つが、競争力を失った際に帳簿どおりに売れる資産ではない。旧CMSの陳腐化、買収先の採算悪化、追加開発の失敗が重なれば、会計上の減損と資金不足が同時に表面化する危険がある。
四半期損失と利益回復計画の不確実性
2027年3月期第1四半期は売上が前年同期比12.1%減り、営業損失は約1.06億円だった。同社の売上は年度後半に偏るため、第1四半期を単純に4倍して年間赤字を予測するのは適切でない。それでも通期営業利益1.83億円を実現するには、その後の案件納品と利益率回復が重要になる。会社予想が実現するかは買収前後の事業別に確認する必要がある。
現金還元の小ささと再投資負担
無配を続けながらソフトウエア開発とM&Aを進める経営では、稼いだ利益が本当に株主の利益になっているかを測りにくい。2026年3月期は営業利益が小さく、開発投資や既存製品の維持も必要だった。株主優待は現実の還元だが、その費用は少数株主の保有株数に比例して受け取れるものではない。買収と開発費を優先し続ける場合、余剰現金の価値を満額認めることはできない。
今後の分かれ目
- 月額利用料サービスが2期連続で増収となり、契約換算数量・解約率・平均単価のいずれかが継続開示され、改善が確認できたら
- CMSの数量減少を緩和し、長期の顧客維持力を評価し直す。値上げ実績や低解約率が複数確認できる場合に限り、記録の正本に近い収益部分の堀と長期成長率を再判定する。
- Cogmoの独立した継続課金売上と自律型AIエージェントの契約売上が金額付きで開示されたら
- 既存のAI検索・RAG型サービスと自律型エージェントを別の事業として分け、後者に限りAI普及に伴う数量増加を認める。単に生成AI機能を搭載しただけでは楽観の数量を増やさない。
- 2027年3月期の売上33.01億円・営業利益1.83億円の会社予想が達成され、翌期も営業利益率が維持されたら
- 買収後の費用構造が安定している可能性が高まる。アクティブリテックの営業利益と既存事業の営業利益を分けて確認し、中立の利益率前提を上方修正する余地を検討する。
- アクティブリテック取得後の企業結合会計で多額ののれんが計上され、買収先の利益が取得前を下回ったら
- 買収に投じた資本の回収可能性を下げ、やや悲観・悲観の確率を高める。単に売上が増えたことではなく、追加資本に対する利益と現金創出力を判断基準とする。
- 今後さらに株式交換や第三者割当増資が行われ、既存株主の持分が減ったら
- 事業全体の利益予測とは別にholder_shareを更新する。新株の発行によって得られる事業や現金の価値が、持分希薄化を上回るかを取引単位で検証する。
- 営業利益率が複数年にわたり10%を超え、継続開発費を負担した後のフリーキャッシュフローも安定して黒字になったら
- 再投資が利益に結びつき始めた証拠と考える。中立とやや楽観の営業利益率、ROE、現金還元余力を見直す。ただし、AI代替後の契約数量が維持できることも必要である。
- CMSの保守売上とAI検索の利用料が減少し、開発したソフトウエアの減損や撤退が発表されたら
- 一時的な費用増ではなく事業の陳腐化が進んだと判断する。受託制作の案件単価と継続契約の数量を下方修正し、悲観側の清算可能資産も最新の貸借対照表で計算し直す。
見ておくもの
- 月額利用料サービスの売上高、前年同期比、解約率、契約数、平均契約単価の開示
- infoCMSとLENSAhubの新規採用、旧製品からの移行、ITRのSaaS型CMS市場シェア
- CogmoのRAG・企業内検索と自律型エージェントを分けた継続課金売上
- 受託開発の受注高・受注残高、粗利益率、案件ごとの平均工数
- アクティブリテックの売上、営業利益、買収後ののれん、追加取得対価
- 全社の営業利益率、営業キャッシュフロー、ソフトウエア開発投資、無形資産の減損
- 新株発行、自己株式数、配当の開始、株主優待の実際の対象人数と年間費用
- 取締役会による関連当事者取引の審査と、買収案件の投下資本利益率
- 2027年3月期の会社予想の達成状況と、翌年度の買収寄与を除いた成長率
倍率と資本コストの決め方
現在の株価860円と添付の自己株式控除後2,018,730株から得られる基準時価総額は約17.36億円である。これは価値を決めた後の比較対象としてのみ使用した。2026年7月の419,685株の交付を反映すると、実際の交換後発行済株式ベースの時価総額はこれより大きいため、評価では既存株主の持分0.827886を掛けて比較基準をそろえた。
2036年の売上は、2026年3月期のサービス別売上と、買収先の2025年9月期単体売上を別建てにし、仮定した案件数・契約数と単価から算出した。物価3%は価格の側に反映し、数量に重複して入れていない。営業利益には制作・製品保守・グループ管理費の増加を織り込み、純利益への転換率は過去の中央値を基準とした。10年後以降の名目成長率は0%、資本コストは8.5%とし、楽観から中立のPERは式から得られる上限を使った。現在や同業のPER・PBRは倍率の根拠にしていない。日本基準の新リース会計で2028年3月期から表示が変わっても、10年後の営業利益は賃借費用を含む従来の比較可能な形で評価する。悲観では売却できない無形資産を床から除いた。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。無リスク金利3%と株式リスクプレミアム4.5%の基本資本コスト7.5%に、業績変動と値決め力に関するquality合計1.0ポイントを加えた。時価総額の小ささや株価のβによる加算は行わず、買収や希薄化の固有リスクは筋書きと株主持分で評価する。