結論
東映アニメーションは、アニメを作り、その権利を国内外に貸して稼ぐ会社だ。筆者の結論は「割高」である。事業の質は高いが、今の値段は記録的な利益の年を前提にしている。
稼ぎ頭は版権事業だ。ワンピースとドラゴンボールの商品化権やゲーム化権で、営業利益率は33%に達した。借金はなく、純現金は760億円を超える。ROEも15%近い。これほど割のいい商売は、国内では多くない。
ただし、懸念が二つある。一つは、利益が二つの作品に偏っていること。もう一つは、当社が原作を持たず、出版社や配信大手に取り分を握られる恐れがあることだ。会社自身も2027年3月期の営業利益を、前期より2割近く減る250億円と見ている。
筆者は、中期経営計画の「2031年に営業利益500億円」を、そのまま信じてはいない。製作力を1.5倍にする方針は実行されるとみるが、利益は物価並みの伸びに収まる。10年後の営業利益は、中立で480億円ほどだ。
今の時価総額は約6,000億円、PERは24倍。これに対し、10年後の本質価値は今より4割強下と出た。総合では4割強の割高である。資本コストは基本7.5%に優良度の調整+0.5%を足した8.0%で測っている。海外の版権が計画どおり伸びれば大きく上振れる余地は残るが、それを前提にするほどの安全域はない。
バリュー投資の観点から
事業は、「権利を貸して稼ぐ」というオーナーにとって好ましい形をしている。作った映像と権利は、一度できれば何十年も稼ぎ続ける。再投資はほとんど要らない。稼いだ利益の大半を株主に戻せる体質だ。借金はなく、純現金は764億円ある。
一方で、バリュー投資の観点では、確信を持ちにくい点が二つある。一つは、利益が二つの作品に偏ること。10年後も同じ強さで稼いでいるかは、断言できない。もう一つは、原作を持たないため、権利の取り分を出版社と配信大手に握られる恐れがあることだ。
安全域の目で見ると、今の値段はPER24倍・PBR3.5倍。会社自身が減益を予想する年に、ROE15%が長く続くことを前提にした値段である。この会社は、いい事業を持っているが、安く買える会社ではない。余った現金の使い道が、これから10年の評価を大きく左右する。
何で稼ぐ会社か
当社はテレビ・劇場向けのアニメを作り、その権利を国内外に売る会社だ。収益の柱は三つある。一つ目は版権事業で、ワンピースやドラゴンボールなどの商品化権・ゲーム化権を許諾して収入を得る。2026年3月期の売上は約490億円で、利益の大半はここから出る。二つ目は映像製作・販売で、約310億円。テレビ局や配信会社に作品を納め、海外には放送・配信の権利を売る。三つ目は商品販売で、ショップやECでの物販が中心になる。
誰が顧客かは、事業ごとにまるで違う。版権は玩具・ゲーム・アパレルの会社が顧客だ。映像は国内の放送局、配信会社、海外の配信大手が顧客になる。つまり当社は消費者に直接売る会社ではなく、権利を貸して稼ぐ会社である。
当社は原作を持たない。ワンピースもドラゴンボールも、原作は出版社と作者のものだ。当社が持つのは、アニメ化した映像と、それに伴う権利である。この点が稼ぎ方を決めている。作品が当たれば版権の収入は積み上がる。当たらなければ、製作費だけが先に出る。
2026年3月期は売上937億円、営業利益310億円で営業利益率は33%。2027年3月期は売上1,000億円、営業利益250億円と、会社自身が減益を予想している。中期経営計画で、年150億円規模の戦略投資を始めるためだ。
優良さと弱いところ
筆者が高く評価するのは、版権の収益性だ。営業利益率は10年前の13%から、30%台に上がった。映像に比べて、版権は追加の費用をほとんど要さないからである。売れた分がそのまま利益になる。ROEは14.7%、自己資本比率は85%近く、借金はない。純現金は764億円ある。
堀、つまり他社がまねできない強みは二つある。一つは、ワンピースとドラゴンボールという、世界で売れ続けるIPの映像化権を握っていること。もう一つは、半世紀を超える製作の実績と、国内に数百人規模の製作人員を抱える体制だ。人手不足のアニメ業界では、この製作力が希少になっている。
弱みも隠せない。利益が二つのIPに偏っている。ドラゴンボールの反動で、2026年3月期は営業利益が前期より4%減った。海外の大型契約の更新時期で、収益が大きく振れる。さらに、当社は原作を持たない。出版社や配信大手が権利を寄せ始めれば、当社の取り分は減る。
経営の資本配分は、これまで堅実だった。自社株買いは小さく、配当性向は35.9%。中計では総還元性向50%を掲げる。ただし500億円規模のM&Aの枠もあり、買収の実績が乏しいことは気になる点だ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
日本のアニメ産業は、海外が主役になった。日本動画協会によれば、2024年の市場は3兆8,407億円で、うち海外が2兆1,702億円と国内を上回る。海外は前年比で26%伸びている。ただし、制作会社が直接受け取る分は小さい。稼ぎの大半は、商品化・配信・ゲームなど周辺の市場に流れる。当社の版権事業は、その周辺の稼ぎを取りにいく仕組みである。
構造の変化は三つある。第一に、配信の拡大。ネットフリックスやクランチロールなどが、アニメを世界同時に届けるようになった。第二に、人手不足。アニメーターが足りず、多くの制作会社が新規の依頼を断っている。製作力のある会社に、仕事と価格決定力が集まる。第三に、配信大手の製作費が頭打ちになり始めたことだ。
競合は、アニプレックス、東宝、ソニー系列などの製作・配給の大手に加え、MAPPAなどの独立系の制作会社だ。ただし、世界で通用するIPを何十年も育てた会社は限られる。当社の強みは、ここにある。
需要の面では、国内の子ども向けは少子化で細る。伸びるのは海外であり、東南アジア・南アジア・中東が次の舞台になる。生成AIは、制作費の下げにつながる半面、海外の新しい製作会社の参入も早める。当社の製作力が相対的に落ちる恐れも、ゼロではない。
資本政策と M&A
資本政策の核は、2025年10月に出した中期経営計画「VISION2030」だ。2031年3月期に売上2,000億円・営業利益500億円・ROE15%以上・総還元性向50%を目指す。5年間で2,000億円の戦略投資を行い、うち700億円をIPに、500億円をM&Aなどに充てる。営業キャッシュフローの見込み2,750億円のうち、770億円を株主に還元する。
筆者が気にしているのは、純現金764億円の使い道だ。製作費を先に払う商売なので、一定の現金は必要になる。それでも、事業に要らない現金は残る。買収に使うのか、還元に回すのか。ここで資本配分の腕が問われる。
株主の構造も見ておきたい。東映が34%、テレビ朝日が約2割を持つ(集計サイトの数字)。浮動株は半分に満たない。親会社的な東映の立場が強く、少数株主には、自社株買いや大型買収の判断が見えにくい。TOBの確率は、kabufuの推計で10年以内に約16%である。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
当社の版権事業は、世界でもまれな収益構造を持つ。ワンピースとドラゴンボールは、連載の開始から数十年を経てなお、海外で値づけが続いている。2026年3月期は、ドラゴンボールの反動があったのに、営業利益率は33%と過去最高だった。
アニメの海外市場は、2024年に2兆円を超え、年26%伸びている。製作力を1.5倍にし、新しいIPを40作品育てる計画が実行されれば、版権の稼ぎは二枚看板に頼らなくなる。人手不足の業界で、数百人規模の製作人員を持つ会社は他にない。
しかも財務は、無借金に近い。純現金764億円があり、M&Aと還元の両方に使える。会社は期初に低めの予想を出す癖があり、2027年3月期の営業利益250億円も、実際には上振れしやすい。中計の2031年の目標を、5年遅れで達成するだけでも、今の値段は妥当になる。
国内でも、人口減を補う手がある。ドラゴンボールとプリキュアのショップやEC事業が伸びており、2027年3月期の商品販売は約2割の増収を見込む。顧客と直接つながる事業が育てば、版権だけに頼る構造が薄まる。
慎重な見方
利益の源泉が、二つの作品に偏りすぎている。ワンピースは連載が長く、物語の終盤が近づけば商品化権の勢いは落ちる。ドラゴンボールも、新作のたびに反動減が出てきた。2026年3月期の営業利益が4%減ったのは、その一例だ。
当社は原作を持たない。出版社が権利を寄せれば、当社の取り分は下がる。配信大手の囲い込みも、すでに始まっている。海外映像は大型契約の更新が不透明で、会社自身が2027年3月期の海外映像を減らして見ている。
中計が掲げる「2031年に営業利益500億円」は、年16%で売上を伸ばす計画だ。しかも、年150億円の戦略投資を先に払う。制作人員を数百人増やせば、固定費が重くなる。ヒット作が出なければ、重い体制だけが残る。
今の値段は、PER24倍・PBR3.5倍。会社の減益予想(営業利益250億円)の年に、これは高い。下振れしたときの安全域が、ほとんどない。
東映とテレビ朝日で5割を超える株を持つため、自社株買いや買収の判断が少数株主の利益と一致する保証もない。現金の厚みを、そのまま価値と見ることは難しい。
どちらに重みを置いたか
強気の主張は、事業の質については正しい。版権の収益性と財務は、国内で見ても屈指だ。しかし、確率は慎重な側へ少し寄せた。理由は二つある。利益が二つの作品に偏っていること、そして原作を持たず、権利の取り分を握られる恐れがあることだ。
そこで、やや悲観と悲観を合わせて10年で36%に置いた。楽観とやや楽観の合計は10年で34%。中立は3割台にとどめた。会社の予想が控えめな癖は、中立の営業利益を少し上に置くことで反映した。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 3,582 円7,390 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 743 円1,532 億円)。 今の値に割り戻すと 2,350 円4,849 億円、今との差 −22.8%、 期待の年率 +3.6%(資本コスト 7.0%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 12% | 7,967 円1.64 兆円 | 1,340 円2,765 億円 | +205.7% | +11.8% | 1,117 円2,304 億円 |
| やや楽観 | 22% | 4,969 円1.03 兆円 | 945 円1,950 億円 | +94.2% | +6.9% | 1,301 円2,684 億円 |
| 中立 | 30% | 3,645 円7,520 億円 | 748 円1,543 億円 | +44.3% | +3.7% | 1,318 円2,719 億円 |
| やや悲観 | 23% | 1,740 円3,589 億円 | 501 円1,034 億円 | −26.4% | −3.0% | 515 円1,063 億円 |
| 悲観 | 13% | 300 円620 億円 | 263 円542 億円 | −81.5% | −15.5% | 73 円151 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,582 円7,390 億円 | 743 円1,532 億円 | +42.0% | +3.6% | 4,324 円8,922 億円 |
今の株価時価総額 3,045 円6,282 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.0% を下回るほど割高。
楽観 12% 楽観:世界のIP企業になり、製作力が倍近くになる 利益 754 億円 · PER 21.8 倍 · 株価時価総額 7,967 円1.64 兆円
海外売上比率が6割を超え、東南アジア・南アジア・中東の新拠点が育つ。主力IPは22本に増え、ワンピース・ドラゴンボールに続く世界規模のIPが1〜2本加わる。版権の価格は物価を3割上回る。映像は製作力が倍近くになり、自社で製作するIPの数も増える。営業利益は1,000億円を超える。強気の筋書きとしても強いが、日本のアニメの海外市場が2024年に前年比26%増と伸びていることを踏まえれば、ありえない水準ではない。配当と自社株買いも大きくなり、総還元性向は5割を超える。国内でも、人口減を補うように、イベントやテーマパークなど顧客接点の収益が加わる。
- 版権事業:数量 22.0(稼ぐ力のある主力IPの数(本))× 価格 71(1IPあたりの年間版権収入(億円))→ 売上 1,562 億円・営業利益 859 億円。主力IP22本・価格は物価を3割上回る・利益率55%
- 映像製作・販売:数量 75.0(製作・納品するアニメ作品の量(1クール相当の本数))× 価格 12(1本あたりの売上(億円))→ 売上 863 億円・営業利益 190 億円。納品75本・利益率22%
- 商品販売・その他:数量 28.0(稼働するIPの数(本))× 価格 17(1IPあたりの商品・周辺売上(億円))→ 売上 489 億円・営業利益 49 億円。28本・利益率10%
倍率:事業の純利益 749 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 21.0% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 14.0%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 21.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 21.4 倍 + 余った現金(戻り方込み)400 億円。全体の PER 21.79 倍、時価総額 16,436 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中計が掲げる「2031年に売上2000億円」の延長で、版権が世界で伸び続ける筋書き。ワンピース・ドラゴンボールの次の柱が育つ前提で、1割強を置いた。
やや楽観 22% やや楽観:海外が計画の7割ほど育つ 利益 499 億円 · PER 20.5 倍 · 株価時価総額 4,969 円1.03 兆円
海外の版権と配信権の収入が2倍近くになり、版権は物価を1割ほど上回って成長する。M&Aは規律を保ち、小さな制作会社や現地の流通網を買い足す程度に収まる。映像は製作力が1.6倍になり、納品が増える。営業利益は650億円前後。計画の2031年の目標(500億円)は5年遅れで超える形だ。配当は増え続け、自社株買いも継続する。国内の子ども向けは細るが、大人向けの作品とイベントの収益が穴を埋める。ワンピース・ドラゴンボールの重みは、利益の半分以下に下がる。中東や南アジアの新拠点が育ち、現地向けの作品も生まれる。海外売上比率は5割を超える。
- 版権事業:数量 18.0(稼ぐ力のある主力IPの数(本))× 価格 61(1IPあたりの年間版権収入(億円))→ 売上 1,101 億円・営業利益 562 億円。主力IP18本・価格は物価を12%上回る・利益率51%
- 映像製作・販売:数量 66.0(製作・納品するアニメ作品の量(1クール相当の本数))× 価格 11(1本あたりの売上(億円))→ 売上 724 億円・営業利益 138 億円。納品66本・利益率19%
- 商品販売・その他:数量 23.0(稼働するIPの数(本))× 価格 16(1IPあたりの商品・周辺売上(億円))→ 売上 367 億円・営業利益 33 億円。23本・利益率9%
倍率:事業の純利益 493 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 16.1% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.5%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 19.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 19.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)400 億円。全体の PER 20.48 倍、時価総額 10,220 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:アニメの海外市場が構造的に伸びる流れ(2024年に2.2兆円で国内を上回る)を、当社の取り分が追いかける筋書き。
中立 30% 中立:版権が物価並みに伸び、製作力は1.5倍に 利益 366 億円 · PER 19.9 倍 · 株価時価総額 3,645 円7,520 億円
10年後も、ワンピースとドラゴンボールは稼ぎ頭であり続ける。主力IPは16本に増え、版権の価格は物価並みに上がる。映像は製作力が1.5倍になって納品が増え、売上は約630億円。営業利益は約480億円、営業利益率は27%と、現在の33%より低い。国内の子ども向け需要は人口減で細るが、海外の配信と商品化がその穴を埋める。自社株買いは小さく、配当と合わせた総還元性向は50%前後で推移する。M&Aは規律を保ち、500億円の枠は半分ほどしか使わない。現金は積み上がるが、余りは400億円付近に保たれ、残りは配当と自社株買いに回る。新しいIPは育つが、二枚看板の重みは残る。
- 版権事業:数量 16.0(稼ぐ力のある主力IPの数(本))× 価格 55(1IPあたりの年間版権収入(億円))→ 売上 874 億円・営業利益 411 億円。主力IP16本・価格は物価並み・利益率47%
- 映像製作・販売:数量 60.0(製作・納品するアニメ作品の量(1クール相当の本数))× 価格 10(1本あたりの売上(億円))→ 売上 627 億円・営業利益 107 億円。納品60本・利益率17%
- 商品販売・その他:数量 20.0(稼働するIPの数(本))× 価格 15(1IPあたりの商品・周辺売上(億円))→ 売上 304 億円・営業利益 21 億円。20本・利益率7%
倍率:事業の純利益 361 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 14.1% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.6%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 19.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 19.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)400 億円。全体の PER 19.89 倍、時価総額 7,284 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:業種ノートの中立(海外向けの配信権・版権が伸びる)に当てた筋書き。計画の数字(2031年に営業利益500億円)には届かないが、製作力1.5倍の方針は実行される前提で、最も重みを置いた。
やや悲観 23% やや悲観:二枚看板が衰え、新しい柱が育たない 利益 209 億円 · PER 15.2 倍 · 株価時価総額 1,740 円3,589 億円
ワンピースの物語が終盤に入り、商品化権の勢いが落ちる。ドラゴンボールも新作の反応が弱まる。新しいIPは育ったが、看板の穴を埋めるほどではない。版権の価格は物価に追いつかず1割強の実質減となる。海外の配信プラットフォームが自社の製作を増やし、映像の単価も下がる。営業利益は270億円前後。堀は国内の製作力として残るが、「稼ぎ続ける優良会社」ではなくなる。還元は縮み、現金は買収や投資に回って成果が乏しい。東映・テレビ朝日の持ち分は変わらず、経営は安定するが、成長への期待は消える。評価は、国内の製作会社並みに落ち着く。
- 版権事業:数量 13.0(稼ぐ力のある主力IPの数(本))× 価格 48(1IPあたりの年間版権収入(億円))→ 売上 625 億円・営業利益 250 億円。主力IP13本・価格は物価に対し12%弱い・利益率40%
- 映像製作・販売:数量 50.0(製作・納品するアニメ作品の量(1クール相当の本数))× 価格 9.93(1本あたりの売上(億円))→ 売上 497 億円・営業利益 60 億円。納品50本・利益率12%
- 商品販売・その他:数量 15.0(稼働するIPの数(本))× 価格 14(1IPあたりの商品・周辺売上(億円))→ 売上 205 億円・営業利益 6 億円。利益率3%
倍率:事業に要らない現金300億円(戻り方1.0)を分けると、事業の純利益204億円(現金の税後利息を除く)・事業のROE7.6%。ROEがk7%以下なので、ためた利益は額面に満たない価値で、PERは1÷k=12.5倍まで。上限は事業204億円×12.5倍+余った現金300億円=2,854億円。成長と堀の持ちを低く見るので、上限を下回らせる。やや悲観は上限の8.5割に置き、時価総額3,165億円、全体のPERに直して15.18倍。
確率:ワンピースは連載が長期に及び、ドラゴンボールも続編を重ねている。10年のうちに看板の力が落ちる確率は、2割強と見るのが自然。
悲観 13% 悲観:権利を出版社と配信大手に握られ、仕事だけが残る 利益 59 億円 · PER 10.5 倍 · 株価時価総額 300 円620 億円
原作を持つ出版社が、アニメの製作と版権を自社に寄せる。配信大手も製作費を絞り、自社のIPを優先する。当社は下請けの製作会社に近づき、版権の1本あたり収入は物価の上昇を3割以上下回る。映像は固定費の重い製作体制が負担になり、営業利益は70億円を切る。10年のうちに不況も挟む。純現金と自己資本の厚みが下を支えるが、かつての高ROE企業の評価には戻れない。配当は大きく減り、自社株買いは止まる。M&Aで取得した海外の資産の一部を減損する。この筋書きは確率が低いが、一度始まると10年の間に戻りにくい。東映・テレビ朝日が大株主として残るため、経営は続くが、成長の物語は終わる。
- 版権事業:数量 10.0(稼ぐ力のある主力IPの数(本))× 価格 35(1IPあたりの年間版権収入(億円))→ 売上 355 億円・営業利益 99 億円。主力IP10本・価格は物価に対し35%弱い・利益率28%
- 映像製作・販売:数量 40.0(製作・納品するアニメ作品の量(1クール相当の本数))× 価格 8.88(1本あたりの売上(億円))→ 売上 355 億円・営業利益 14 億円。納品40本・利益率4%
- 商品販売・その他:数量 11.0(稼働するIPの数(本))× 価格 12(1IPあたりの商品・周辺売上(億円))→ 売上 134 億円・営業利益 −3 億円。赤字
倍率:権利を出版社と配信大手に握られ、仕事だけが残る筋書き。ROE が k 7% 以下なので上限は 1÷k = 12.5 倍。悲観は、やや悲観よりさらに構造的に負けた姿なので、倍率をやや悲観(11.64 倍)より高くせず、その 9 割の 10.5 倍に置いた。余った現金は悲観では今の5割に減るとみて、戻り方 1.0 を掛けた 200 億円を含む。時価総額 620 億円(全体の PER に直して 10.5 倍)。
確率:当社は原作を持たず、アニメ化に伴う権利で稼ぐ。出版社の内製化や配信大手の囲い込みで、権利の取り分が構造的に下がる筋書き。10年の悲観としては1割強が妥当。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
版権事業
国内外の商品化権・ゲーム化権などの許諾収入。ワンピース、ドラゴンボール、プリキュアなどが柱。
| 数量稼ぐ力のある主力IPの数(本) | 価格1IPあたりの年間版権収入(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 12.0 | 41 | 489 | 254 |
| 10 年後 中立 | 16.0 | 55 | 874 | 411 |
取り方:2026/03期の版権売上は約489億円(2027/03期予想の前期比から逆算)。ワンピース・ドラゴンボールなど稼働する主力IPを12本と数え、1本あたり約40.75億円とした。世界のアニメ関連市場(2024年で約3.8兆円・日本動画協会)に対する当社の取り分は約1.3%で、市場の伸びに沿って数量を増やす置き方と整合する。営業利益は版権の高採算を踏まえ売上の約52%と推定(セグメント利益は未確認の推定)。
映像製作・販売
テレビ・劇場・配信向けのアニメ製作と、国内外の放送・配信権の販売。
| 数量製作・納品するアニメ作品の量(1クール相当の本数) | 価格1本あたりの売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 40.0 | 7.80 | 312 | 62 |
| 10 年後 中立 | 60.0 | 10 | 627 | 107 |
取り方:2026/03期の映像製作・販売の売上は約312億円(同じく逆算)。年に納品する作品量を1クール換算で約40本、1本7.8億円と推定。営業利益は売上の約20%と推定(未確認の推定)。製作力は2031年までに約1.5倍にする計画。数量は実物(納品する作品の量)で、会社が製作力を 2031 年までに約 1.5 倍にする計画による。名目の市場の伸びは置いておらず、物価は 1 本あたり売上の 1.34 倍だけで見ている。
商品販売・その他
ショップ・EC・イベントなどの商品販売と周辺事業。
| 数量稼働するIPの数(本) | 価格1IPあたりの商品・周辺売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 12.0 | 11 | 136 | 9 |
| 10 年後 中立 | 20.0 | 15 | 304 | 21 |
取り方:売上937億円から版権489億円・映像312億円を引いた約136億円(商品販売約79億円とその他)。稼働IP12本×1本約11.3億円とした。営業利益は売上の約6.6%と推定。本社費など共通の費用は全体で約15億円の引き当てと置き、合計を営業利益310億円に合わせた。数量は実物(稼働する IP の本数)で、海外配信と商品化で稼働 IP を増やす事業の事実による。名目の市場の伸びは置いておらず、物価は 1 本あたり売上の 1.34 倍だけで見ている。
リスクと懸念
利益が二つの作品に偏る
利益の大半は、ワンピースとドラゴンボールの版権から出ている。どちらかの勢いが落ちれば、全体の営業利益が数割動く。2026年3月期の営業利益が前期比4%減だったのも、ドラゴンボールの反動による。新しい柱が育つまで、この偏りは消えない。
原作を持たない弱み
当社が持つのは映像と、それに伴う権利であり、原作ではない。出版社が権利を自社に寄せる、あるいは配信大手が囲い込むと、取り分が構造的に下がる。10年のうちに交渉力が逆転する可能性は小さくない。過去の例では、一つの作品の反動だけで利益が1割動いた年がある。
海外の大型契約の更新
海外映像は、大型の配信権契約の更新で収益が大きく振れる。会社自身が2027年3月期の海外映像を減らして見ているのは、更新の不透明感のためだ。更新が遅れる、あるいは単価が下がれば、利益に直結する。過去の例では、一つの作品の反動だけで利益が1割動いた年がある。
戦略投資が重荷になる
5年で2,000億円、2027年3月期だけで約150億円を投じる。製作人員の増強は固定費を重くする。ヒット作が出なければ、重い体制だけが残る。投資の回収が見えるまで、利益率は下がる方向に動く。過去の例では、一つの作品の反動だけで利益が1割動いた年がある。
M&Aの実行力
中計には500億円規模のM&A枠がある。当社は大型買収の実績が乏しく、海外の製作会社やIP会社を買う場合、価格が高すぎる、統合に失敗するなどのリスクがある。現金が厚いだけに、使い道を誤ると資本の価値を壊す。
国内需要の縮小と生成AI
国内の子ども向け需要は、少子化で細る。生成AIは製作費を下げるが、新興勢力の参入も早める。人手不足を武器にしてきた当社の製作力の希少性が、10年のうちに薄れる可能性がある。過去の例では、一つの作品の反動だけで利益が1割動いた年がある。
大株主の影響
東映が34%、テレビ朝日が約2割を持ち、浮動株は半分に満たない。大株主の意向によって、自社株買いやM&Aの判断が左右される。少数株主の立場からは、判断の過程が見えにくい。過去の例では、一つの作品の反動だけで利益が1割動いた年がある。
今後の分かれ目
- 2027年3月期の営業利益が会社予想の250億円を大きく上回って着地する
- 会社の控えめな予想の癖が出ており、中立の利益水準を少し上に置いてよい。ただし、ヒットの一過性かどうかを、次の期で確かめる。
- 海外の大型配信権の更新が、現行より高い単価でまとまる
- 海外映像の不確実性が減り、やや楽観の確率を上げる。更新が遅れる、あるいは単価が下がる場合は逆に、やや悲観の確率を上げる。
- ワンピースの商品化権の収入が前年を下回り続ける
- 看板の力の衰えが始まった兆しだ。10年の悲観の確率を上げ、新しいIPが穴を埋められるかを重く見る。
- 500億円規模のM&Aが発表され、買収額が高いと判断される
- 資本配分の質に疑いが出る。現金が事業の価値として働いているかを見直し、余った現金の評価を下げる。
- 総還元性向が50%を超えて、自社株買いが大きく増える
- 余った現金が株主に戻る道筋が見えたことになる。資本配分への確信が上がり、楽観の確率を少し上げてよい。
- 出版社や配信大手が、アニメの製作・版権を自社に寄せる動きを強める
- 当社の取り分が構造的に下がる前触れだ。10年の悲観の確率を引き上げる。
見ておくもの
- 海外映像・版権の売上と営業利益率(四半期ごとの動き)
- ワンピース・ドラゴンボール以外の新しいIPの収益への貢献
- 製作人員の増加ペースと、戦略投資(年150億円規模)の進み具合
- 総還元性向と自社株買いの規模、M&Aの発表
- 海外売上比率(2031年に6割の目標)の推移
倍率と資本コストの決め方
版権・映像製作・商品販売に分け、作品数・版権料で積んだ。余った現金400億円(運転資金とM&A枠を引いた)を戻り方1.0で足した。倍率は式の上限(正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)、k7%、堀は並みで残る割合1/2)に対する位置で置いた。楽観は上限の8割、やや楽観8割、中立7.5割、やや悲観8.5割、悲観は事業の純利益÷kの稼ぐ力(と純現金)を上限に、やや悲観より高くしない10.5倍。今のPERや同業の倍率、谷の倍率は見ていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 16.69→21.79 倍・やや楽観 PER 14.77→20.48 倍・中立 PER 13.15→19.89 倍・やや悲観 PER 11.64→15.18 倍)。
資本コスト 7.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。