結論
SRAホールディングスは、金融機関のシステム開発と運用、IBM系製品の販売を柱とする独立系IT企業である。筆者の判断は「やや割高」だ。高い営業利益率と厚い現金には価値がある。しかし、技術者の作業時間を請求する商売は、AIエージェントの普及で根本から揺らぐ。現時点の利益が10年後も同じ形で得られるとは考えにくい。
2026年3月期は売上533億円、営業利益82億円といずれも堅調だった。開発は金融業向けが伸び、運用・構築は継続案件が支えた。販売は子会社AITによる大型案件の影響が大きく、翌期第1四半期には反動減が出ている。開発と運用の顧客基盤が堅いことと、機器販売の案件変動が大きいことを区別して考えたい。
財務面には相当の余裕がある。純現金は約202億円で、別に市場性のある株式や有価証券も抱える。配当を長く増やし、2026年には自社株買いも実行した。一方、海外子会社への貸付金に多額の貸倒引当金を計上しており、帳簿上の資産がすべて株主の自由な現金とは限らない。
10年後の中立では、仕事の量は減っても単価上昇と機器更新が一定程度補う。その間の配当と買い戻し、手元に残る余剰資金を合計しても、資本コストを差し引いた本質価値は約432億円となり、比較時点の時価総額584億円を約26%下回る。AIによる仕事の奪い合いを過度に楽観せず、既存顧客の強さと還元実績には相応の値を認めた結論である。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主にとって、問うべきは「今の高い利益率が10年後にも顧客との契約に残るか」である。金融機関の基幹系は失敗が許されず、顧客の業務を熟知した会社には繰り返し仕事が来る。SRAはその関係で確かに稼いできた。しかし、顧客が本当に買いたいのは技術者の時間ではなく、システムが正しく動く結果だ。AIエージェントがその結果を安く実現できれば、同じ人数分を請求する根拠は弱くなる。
オーナー利益、つまり事業を維持した後に株主へ残せる現金は、会計上の純利益だけでは測れない。SRAの大きな支出は設備ではなく人の採用、教育、協力会社への委託である。既存の設備の減価償却を物価に連動させる必要は小さいが、技術者の人件費と外注費は物価上昇の影響を受ける。値上げができなければ、会計上の売上が増えても自由な現金は増えない。
高い営業利益率と財務の厚さは魅力的だ。特に運用業務の継続性は評価できる。一方、海外投融資の貸倒引当金が示すように、稼いだ金を再び投じる判断が常に成功してきたわけではない。新規開発から自社製品へ移るなら、その製品の解約率、利用数、粗利、資本収益性が公開されるまで、強い堀を買う値段は付けない。
2026年の自社株買いは株主との利害を近づけるが、割高な時に買えば株主価値を損なう。逆に、業務量が縮むときに利益を無理に再投資せず、配当と規律ある買い戻しに振り向ければ、事業が縮んでも一部の価値は守られる。筆者はこの会社を「優良な既存事業と危うい資本配分が同居する会社」と見る。長く持つ前提では、値上げと還元の実行を確かめられるだけの安全域が必要だ。
何で稼ぐ会社か
収益の中心はシステム開発事業である。2026年3月期の売上は259億円、営業利益は57億円だった。金融機関の基幹システム、製造業の業務システム、クラウドへの移行、Oracle Cloud ERPやSalesforceの導入支援などを扱う。契約上は案件ごとの設計、開発、検証の工数と高い技術者単価が収益の軸である。顧客が変わっても業務を覚え直す必要があり、継続案件は容易には入れ替わらない。
運用・構築事業は売上66億円、営業利益21億円と小さいが、利益率は3割を超える。既存システムの稼働監視、サーバーやネットワークの構築、障害対応、保守運用などが対象だ。顧客は停止による損失を恐れるため、単純な価格比較だけで委託先を変えにくい。ただし、人が手順を実行する運用作業と、障害の責任を引き受ける契約とは別物である。AIによる自動化は前者の請求可能な時間を減らす。
販売事業は売上208億円、営業利益23億円で、グループ売上の約4割を占める。AITなどがIBMのサーバー、ストレージ、ソフトウェア製品と保守・導入を扱う。金融業向けの大口販売がある年には売上が跳ねるが、在庫と仕入価格、メーカーの製品戦略にも左右される。分析上は機器販売とソフトウェア・保守ライセンスに分けたが、会社が両者の金額や契約件数を公表したわけではなく、内訳は推定にすぎない。
開発と運用は技術者の人数と稼働、販売は案件件数と単価が収入を決める。自社の独自ソフトやOSS支援にも取り組むものの、全社を継続課金のソフトウェア会社として評価するのは不適切だ。実際に会社が開示する報告セグメントは開発、運用・構築、販売の3つであり、連結利益からは本社費など約18億円を差し引く必要がある。
優良さと弱いところ
この会社の優良さは、金融機関など止められない業務で長く仕事を任されてきた点にある。開発事業の営業利益率は約22%、運用・構築は約31%に達する。案件の蓄積が見積もり精度を高め、熟練した技術者を配置できることが利益率につながっている。主要顧客のどこか1社が連結売上の1割を占めるという開示もなく、顧客集中の危険はある程度分散されている。
2015年から2026年にかけて営業利益は約30億円から82億円へ伸び、自己資本は約188億円から336億円に増えた。差額だけを見れば、増えた自己資本に対する営業増益は高い。ただし、これは厳密な増分ROICではない。海外投融資の損失、値上げ、販売構成の変化を含むため、同じ再投資利回りが将来も続く証拠にはならない。今後の投資先の採算を、資本コストを超えるかという基準で見る必要がある。
堀、すなわち競争相手が容易に越えられない壁は、顧客の業務知識と移行の手間にある。しかし、大規模な共同利用基盤を独占しているわけではない。解約率が年5%未満といった数値、規制対応のたびに値上げが通る実績、何年もかかる移行期間の定量的な証拠は確認できなかった。そのため独自の記録を握る強い堀ではなく、安定顧客を持つ普通の堀と判断する。
弱みは自己資本の一部が海外子会社への投融資に向かっていることだ。SRA OSSの海外関連事業には赤字と債務超過があり、貸付金の回収可能性も見積もりに左右される。厚い現金と有価証券は重要な防波堤だが、経営者がその現金を損失補填や追加投資に使えば、少数株主には取り戻せない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内ITサービス市場はIDC Japanの推計で2025年に約7兆5,663億円、2030年には約10兆2,541億円へ拡大する見通しだ。基幹システムの刷新、金融機関の規制対応、クラウド移行が需要を支える。とはいえ、市場全体の支出額が増えることと、受託会社が同じ人数分の工数を請求できることは別問題である。人件費とソフトウェア価格を含む名目市場の伸びを、SRAの作業量の伸びと取り違えてはならない。
競争相手は富士通、日立製作所、NEC、NTTデータ、日本IBMのほか、TIS、BIPROGY、DTSなどだ。IDCの2024年売上順位は富士通、日立、NEC、NTTデータ、日本IBMの順で、富士通の2025年国内ITサービス売上は約1兆5,218億円に達する。IDC定義の2024年ベンダー売上を市場規模で割る粗い目安では、富士通約20%、日立・NEC・NTTデータ各約17%、日本IBM約8%となる。ただし再委託の重複と対象市場の違いがあるため、厳密な占有率とは断定できない。SRAの開発・運用売上合計325億円は2025年の市場全体の約0.43%にすぎず、大手の営業網に比べれば小さい。開発市場と運用市場を分ける公表統計は十分でなく、内訳のシェアは推計である。
AIエージェントは設計書の作成、コード生成、試験、障害一次対応、問い合わせを一連の作業として引き受け始めている。発注側が成果や稼働を買う割合が増えれば、必要なシステム数が増えても、請求可能な人月は減る。既存システムの責任を負う会社には仕事が残るが、単純な工数販売の値決め力は弱まる。SRAはAI人材育成や自社技術の製品化を進めているものの、エージェント商品による受注・売上金額は確認できない。好材料を利益に先取りすべきではない。
販売事業の競合はIBM直販や大塚商会、JBCC、他の機器代理店である。国内PCサーバー市場はMM総研の2025年度調査で約2,853億円だが、AITのIBM製品は大型機やストレージも含み、同一の市場ではない。ソフトウェアの国内市場も広いが、SRAの再販売と独自製品の内訳は非開示だ。今後10年、ITサービス市場が2036年に名目13兆円規模まで伸びた場合でも、SRAの開発・運用売上の中立予測は約290億円であり、市場全体に対する比率は約0.22%まで縮む。2030年以降の市場成長は延長推計であって公表予測ではなく、正確な分野別シェアも未開示だ。
資本政策と M&A
資本政策には評価できる歴史がある。年間配当は2017年3月期からおおむね増加し、2026年3月期の配当性向は45.1%だった。2027年3月期は配当性向50.5%を計画し、基本方針も配当性向50%程度とROE10%以上の維持である。2026年7月には上限43億円、96万株の自社株買いを決議し、9月末までに13.56億円、30万株を取得した。この実行済み分を将来の還元に重ねて数えていない。
公表された2027年3月期の単年度目標は売上555億円、営業利益86億円、純利益55億円である。添付予想は売上550億円であり、会社目標と区別する。複数年度にわたる売上・利益・ROE、DOE、総還元性向、自社株買い総額を明示した中計は確認できず、複数年の数字の約束なしと扱う。
最大の資本配分上の懸念は海外事業への投融資だ。SRA OSS系のCavirin、Proximなどに資金を投じたが、損失と引当金が純利益を大きく動かしてきた。2026年3月期も海外投融資の貸倒引当金繰入が発生した。投資の採算と追加貸付を止められるかが問われる。
手元資産の取り扱いも大切である。純現金約202億円から必要な運転資金と実行済み自社株買いを引いた余剰分を価値に数える。有価証券は配当の利益を外したうえで税後の売却価値を認める。増配と買い戻しは実行されているが、直近5期の配当性向中央値は50%未満で、実行済み株数減少も5%未満のため、余剰資金の株主への戻り方は75%とする。海外損失が拡大する筋書きでは余剰資金自体も小さく見る。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
金融機関の基幹システムは、実験的なAIだけで翌日から置き換えられる性質の仕事ではない。長い運用実績と障害に対する責任、既存顧客の業務知識を持つSRAは、単なるプログラムの作成会社より強い立場にいる。2026年3月期には開発の利益率が約22%、運用・構築では3割を超えた。これは受託開発の会社として良好な水準であり、AIを使って社内の生産性を上げれば利益率を保つ余地がある。
会社はOracle Cloud ERPやSalesforceの導入支援に加え、OSSの技術支援、AI人材育成、自社IPの製品化を推進している。2024年のSRA OSSとNTTデータグループとの提携も、高度な基幹系の支援を増やす機会になる。顧客がAIで単純作業を削減しても、複数のシステムを安全に動かす設計と責任をSRAに委ねる需要は残る。高い技術単価と優良顧客を守るなら、開発や運用の数量減少は緩やかで済む。
現金約202億円、上場株式の時価約68億円という資産面の余裕も見逃せない。金融危機や一時的な発注減で増資を迫られる可能性は低く、配当性向50%を目安とした還元を続けられる。2026年に決めた大型の買い戻し枠は、保守的な貸借対照表を株主の利益に変える意思の表れだ。海外投融資の問題が終息し、優良な国内事業から生まれる現金が配当と買い戻しに流れるなら、10年後の株主の取り分はかなり大きくなる。
慎重な見方
最も高い利益率を生んできたのは、技術者が現場に入り込み、専門知識を工数として売る仕組みだ。この仕組みそのものがAIエージェントに脅かされている。設計、開発、テスト、運用の手順をAIが一続きで行えるようになれば、発注者は工数ではなく成果を買う。仕事は残っても契約金額が縮む可能性がある。既存顧客の信頼関係だけで、同じ人月単価を守り続けられると考えるのは危険だ。
運用事業の高利益率は魅力的だが、監視や障害の一次切り分けは自動化しやすい。大手クラウド事業者やサービス統合企業が運用を標準化すれば、SRAは複雑で責任の重い案件だけを残して総工数を失う。販売事業にも別の危険がある。IBMの製品改廃、メーカーによる直販やクラウドへの置き換えが進めば、AITの大型案件を失い、売上高と粗利は同時に下がる。
海外投融資の傷は単なる過去の損失ではない。債務超過の関連会社に貸付を続ければ、営業利益が増えても最終利益と現金の質は悪化する。すでに多額の引当金が計上されているため、帳簿上の自己資本をそのまま清算価値とみなせない。現金や有価証券が積み上がっても、株主が自由に売却を指示できるわけではない。AIの値下げ圧力と海外損失が重なったとき、10年後には優良なIT企業ではなく、縮小する人月商売と不確かな投資資産を持つ会社へ変わりうる。
どちらに重みを置いたか
国内金融業向けの顧客基盤と手元資金は確かな強みである。ただし、解約率や独自データに裏付けられた独占的な堀は見つからず、開発と運用の工数縮小を否定する材料は乏しい。AI代替だけを理由に資本コストや確率を何重にも引き下げず、中立の数量と10年後以降の成長率に主として織り込んだ。下側の確率は40%とし、販売事業の大型案件依存と海外貸付リスクによる独自の下振れを重くした。配当以外の余剰現金の還元実績は慎重に75%で評価し、現時点の時価総額は将来の株主還元まで含めてなお高いと判断する。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 4,823 円580 億円(+ 還元の換算額還元の合計 1,707 円205 億円)。 今の値に割り戻すと 3,598 円433 億円、今との差 −23.4%、 期待の年率 +3.9%(資本コスト 7.2%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 9% | 9,458 円1,138 億円 | 3,241 円390 億円 | +170.5% | +12.5% | 1,143 円138 億円 |
| やや楽観 | 18% | 7,442 円896 億円 | 2,451 円295 億円 | +110.7% | +9.1% | 1,781 円214 億円 |
| 中立 | 33% | 5,472 円659 億円 | 1,870 円225 億円 | +56.4% | +5.3% | 2,423 円292 億円 |
| やや悲観 | 25% | 2,301 円277 億円 | 1,080 円130 億円 | −28.0% | −3.8% | 845 円102 億円 |
| 悲観 | 15% | 1,675 円202 億円 | 582 円70 億円 | −51.9% | −7.9% | 339 円41 億円 |
| 加重平均 | 100% | 4,823 円580 億円 | 1,707 円205 億円 | +39.1% | +3.9% | 6,530 円786 億円 |
今の株価時価総額 4,695 円565 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 9% 金融の難所を守り、機器更新も続く 利益 71 億円 · PER 13.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 9,458 円1,138 億円
金融機関の大規模なシステム更新が続き、SRAは既存業務の理解を強みに複数の基幹システムを任される。単純な開発工程はAIに移るが、移行時の事故を防ぐ設計と責任はなお企業が必要とする。開発の請求人月は今の95%を保ち、物価に沿った単価改定も浸透する。運用でもクラウドと旧来システムの複雑な接続を担い、削減されるのは定型監視が中心となる。
AITのIBM系サーバーとストレージは金融機関の更新需要が続き、更新案件数は2割増える。ソフトウェア・保守契約はAIによる画面操作の置き換えを受けても契約件数を維持する。自社IPは顧客との関係を補強するが、AIエージェントの売上金額が立証されるまでは追加の数量成長を前提にしない。
高い技術単価を生かして開発利益率は23%、運用利益率は32%まで改善する。一方、会社全体の本社費も物価に従って増える。海外投融資の新たな損失は止まり、稼いだ現金の多くを配当と自社株買いに振り向ける。10年の純利益合計は約673億円、還元約390億円となり、残る自己資本と金融資産が株主価値を厚くする。
積み増した自己資本は336億円に今後10年の利益総額673億円を加え、配当・自社株買い390億円を引いた約619億円である。
- システム開発(人月受託):数量 19,000(顧客に請求する開発・導入工数(人月/年、社外技術者含む推計))× 価格 0.02(請求1人月当たり平均売上(億円/人月、名目))→ 売上 330 億円・営業利益 76 億円。金融システムの高難度案件を維持、AI代替後の請求人月は0.95倍
- 運用・構築(人月・継続保守):数量 5,225(顧客へ請求する運用・構築工数(人月/年、推計))× 価格 0.02(請求1人月当たり平均売上(億円/人月、名目))→ 売上 84 億円・営業利益 27 億円。監視自動化を生産性に転換、保守品質で顧客を維持
- 製品販売・企業向け機器(販売事業の分析上の分割):数量 1,800(企業向け機器・更新パッケージ受注件数(件/年、推計))× 価格 0.12(機器更新1案件当たり売上(億円/件、名目))→ 売上 217 億円・営業利益 20 億円。IBM系機器更新件数1.20倍、景気の良い更新周期
- 製品販売・ソフトウェアと保守契約(販売事業の分析上の分割):数量 2,000(ライセンス・保守の契約更新/追加件数(件/年、推計))× 価格 0.04(契約1件当たり売上(億円/件、名目))→ 売上 84 億円・営業利益 16 億円。UI・席課金の代替を受けても契約件数は上限1.00倍
倍率:市場のPERからではなく、資本コストk=7.25%、通常の堀(超過ROEが先で残る割合1/2)、10年後より先の名目成長g_long=0%による式(1−g÷RONIC)÷(k−g)の上限。期末の余剰現金260億円と株式の税後資産評価約66.8億円を事業と分ける。余剰現金の税引後利息約3.6億円、株式の税引後配当約2.6億円を純利益から除いた事業純利益は約64.7億円、事業ROE約22.2%、RONIC約14.7%。式の上限PER13.793倍をそのまま使い、除いた現金と税後の保有株式に戻り方75%を掛けて足す。
確率:国内金融のシステム改修と高度な統合案件を複数回取り込み、IBM系の機器更新も増える上振れは現実的だが、顧客のAI活用とメーカー戦略を同時に凌ぐ必要があるため9%にとどめる。
やや楽観 18% 工数は縮むが高付加価値化が進む 利益 52 億円 · PER 13.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 7,442 円896 億円
大手金融機関は基幹システムの更改を続け、SRAの業務知識を買い続ける。AIが設計やテストを補助するため、同じ案件に必要な技術者の時間は減るが、金融機関が求める品質保証と移行責任への対価を確保する。開発工数は今の82%、運用工数も82%へ減少する一方、残る高度な技術者の平均単価は物価並みに引き上がる。
ソフトウェア契約はAIエージェントが画面を飛び越して処理するため、契約件数が1割減り、単価の上昇も物価を下回る。AITは大手顧客との取引を続けるが、機器更新は大幅には増えない。IBMや大塚商会などの競合に対して選ばれる案件だけを取り、粗利率の高い一部商品を維持する。
生産性改善で開発の利益率は21%と高く、運用も29%を確保する。海外での貸倒損失が縮小し、約547億円の10年累積純利益から295億円を株主に還元する。設備を多く要しないため、売上を維持する以上の留保資本の一部は現金として積み上がる。事業の堀は独占的ではないが、取引継続性に支えられて存続する。
株主に返さない現金の一部は留保され、期末自己資本は336億円に10年間の利益547億円を加え、還元295億円を控除した588億円となる。
- システム開発(人月受託):数量 16,400(顧客に請求する開発・導入工数(人月/年、社外技術者含む推計))× 価格 0.02(請求1人月当たり平均売上(億円/人月、名目))→ 売上 284 億円・営業利益 60 億円。人月0.82倍、高難度設計・ERP移行に案件を集約
- 運用・構築(人月・継続保守):数量 4,510(顧客へ請求する運用・構築工数(人月/年、推計))× 価格 0.02(請求1人月当たり平均売上(億円/人月、名目))→ 売上 72 億円・営業利益 21 億円。運用人月0.82倍、品質と責任契約の単価を維持
- 製品販売・企業向け機器(販売事業の分析上の分割):数量 1,530(企業向け機器・更新パッケージ受注件数(件/年、推計))× 価格 0.12(機器更新1案件当たり売上(億円/件、名目))→ 売上 185 億円・営業利益 15 億円。機器更新1.02倍、海外メーカーとの関係を維持
- 製品販売・ソフトウェアと保守契約(販売事業の分析上の分割):数量 1,800(ライセンス・保守の契約更新/追加件数(件/年、推計))× 価格 0.04(契約1件当たり売上(億円/件、名目))→ 売上 76 億円・営業利益 13 億円。ライセンス契約0.90倍、価格上昇は15%にとどまる
倍率:市場のPERからではなく、資本コストk=7.25%、通常の堀(超過ROEが先で残る割合1/2)、10年後より先の名目成長g_long=0%による式(1−g÷RONIC)÷(k−g)の上限。期末の余剰現金295億円と株式の税後資産評価約66.8億円を事業と分ける。余剰現金の税引後利息約4.1億円、株式の税引後配当約2.6億円を純利益から除いた事業純利益は約45.3億円、事業ROE約20.0%、RONIC約13.6%。式の上限PER13.793倍をそのまま使い、除いた現金と税後の保有株式に戻り方75%を掛けて足す。
確率:金融機関向け案件と運用の品質を維持できれば高い単価を守れる。ただし成果物課金への転換は未証明で、AIによる工数削減を避けられないため18%とする。
中立 33% 市場は伸びても請求工数は細る 利益 34 億円 · PER 13.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 5,472 円659 億円
国内のIT投資総額は金融のシステム刷新とクラウド移行で増える。しかし発注者はAIエージェントを使ってプログラムの生成、試験、運用の手順を内製化する。SRAも同じ技術を使って案件をこなすものの、発注者が買う工数そのものが減るため、請求可能な開発人月は今の70%、運用は65%へ落ちる。残る業務は高度化し、平均単価は上がるが、作業量の減少を埋められない。
金融機関との取引は継続し、SRAが作るシステムは10年後も必要とされる。ただし、顧客が契約を更新するたびに必要人員を見直す。顧客固有の設計や監査対応は残り、定型的なコーディングと監視は薄くなる。保守ライセンスの件数も現在の8割となり、画面を操作する契約の価格改定は物価に追いつかない。
AITの機器販売は更新周期の谷とクラウド移行で件数が1割減るが、半導体と人件費の物価上昇分は販売価格に反映される。高い利益率を保っていた開発・運用も、人員固定費の調整で利益率が低下する。10年後の営業利益は約54億円、純利益は34億円となる。途中の還元は約225億円、留保利益は余剰現金として残り、事業価値の下振れを一部吸収する。
途中10年間の純利益合計は約447億円、還元合計は約225億円を想定するため、期末の自己資本は約558億円になる。
- システム開発(人月受託):数量 14,000(顧客に請求する開発・導入工数(人月/年、社外技術者含む推計))× 価格 0.02(請求1人月当たり平均売上(億円/人月、名目))→ 売上 236 億円・営業利益 42 億円。開発の請求人月0.70倍、顧客のAI内製化で実質量減
- 運用・構築(人月・継続保守):数量 3,575(顧客へ請求する運用・構築工数(人月/年、推計))× 価格 0.02(請求1人月当たり平均売上(億円/人月、名目))→ 売上 55 億円・営業利益 14 億円。運用工数0.65倍、保守の成果部分だけが残る
- 製品販売・企業向け機器(販売事業の分析上の分割):数量 1,350(企業向け機器・更新パッケージ受注件数(件/年、推計))× 価格 0.12(機器更新1案件当たり売上(億円/件、名目))→ 売上 163 億円・営業利益 11 億円。機器更新件数0.90倍、名目単価はCPI並み
- 製品販売・ソフトウェアと保守契約(販売事業の分析上の分割):数量 1,600(ライセンス・保守の契約更新/追加件数(件/年、推計))× 価格 0.04(契約1件当たり売上(億円/件、名目))→ 売上 64 億円・営業利益 10 億円。ライセンス件数0.80倍、席・操作画面の単価は1.10倍
倍率:市場のPERからではなく、資本コストk=7.25%、通常の堀(超過ROEが先で残る割合1/2)、10年後より先の名目成長g_long=0%による式(1−g÷RONIC)÷(k−g)の上限。期末の余剰現金315億円と株式の税後資産評価約66.8億円を事業と分ける。余剰現金の税引後利息約4.4億円、株式の税引後配当約2.6億円を純利益から除いた事業純利益は約27.0億円、事業ROE約15.3%、RONIC約11.3%。式の上限PER13.793倍をそのまま使い、除いた現金と税後の保有株式に戻り方75%を掛けて足す。
確率:IDCが予測する国内IT投資の名目拡大と、SRAの人月型収益の縮小を両立させる中心シナリオ。下に寄せる理由:同社の販売事業は大型案件の反動が大きく、海外投融資の損失も純利益を揺らすため、楽観側27%に対して悲観側40%とした。
やや悲観 25% 金融機関も工数削減を契約に反映 利益 13 億円 · PER 10.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 2,301 円277 億円
金融機関が調達方式を見直し、設計から試験までをAIエージェントで実施したうえで、外部会社には成果と安全性の確認だけを発注する。SRAの開発工数は現在の57%、運用工数は55%になる。仕事を失うだけでなく、残る技術者の稼働率も低下するため、開発の営業利益率は12%まで下がる。運用でも標準化されたクラウド監視が広がり、価格競争が強まる。
国内ITサービス市場は名目では成長を続けるが、同社の市場シェアは縮小する。富士通、NTTデータやTISなど規模が大きい競合は、AIと顧客データを組み合わせて成果報酬型の提案を強化する。SRAの開発実績は残るものの、大型契約を奪い返すだけの独自サービスが育たない。
AITの機器更新件数も現在の72%に減少し、ライセンス件数は60%へ落ちる。海外投融資の回収には時間がかかり、利益に対して慎重な引当を続ける。10年後の連結営業利益は約15億円まで落ち、還元も約130億円に縮小する。ただし現金と市場性有価証券の厚さが残るため、事業そのものの稼ぐ力が痩せても価値が直ちにゼロにはならない。
途中10年間の利益は前半に偏り、累計約260億円の純利益から約130億円を還元し、期末自己資本は約466億円となる。
- システム開発(人月受託):数量 11,400(顧客に請求する開発・導入工数(人月/年、社外技術者含む推計))× 価格 0.02(請求1人月当たり平均売上(億円/人月、名目))→ 売上 173 億円・営業利益 21 億円。開発工数0.57倍、工程内製化と入札単価下落
- 運用・構築(人月・継続保守):数量 3,025(顧客へ請求する運用・構築工数(人月/年、推計))× 価格 0.01(請求1人月当たり平均売上(億円/人月、名目))→ 売上 42 億円・営業利益 7 億円。運用工数0.55倍、監視・保守の自動化加速
- 製品販売・企業向け機器(販売事業の分析上の分割):数量 1,080(企業向け機器・更新パッケージ受注件数(件/年、推計))× 価格 0.11(機器更新1案件当たり売上(億円/件、名目))→ 売上 117 億円・営業利益 5 億円。販売件数0.72倍、IBM機器需要と販路が細る
- 製品販売・ソフトウェアと保守契約(販売事業の分析上の分割):数量 1,200(ライセンス・保守の契約更新/追加件数(件/年、推計))× 価格 0.04(契約1件当たり売上(億円/件、名目))→ 売上 46 億円・営業利益 4 億円。UI契約0.60倍、継続・更新の値上げが止まる
倍率:資本コスト7.25%、2036年より先の名目成長0%なら稼ぐ力のPER上限は13.79倍。やや悲観では利益の残存期間と既存顧客の逸失を考慮し、稼ぐ力を10.5倍で評価する。期末余剰現金195億円の税後利息2.7億円と保有株式の税後配当2.6億円を純利益から除き、株式の税後資産価値約66.8億円と現金は戻り方75%を掛けて別に加える。現在の清算可能資産約190億円より上である。
確率:顧客が工数削減を直接契約価格に反映させると利益率まで落ちる。海外信用損失とAITの大型案件剥落が同時に進む確率を25%とし、発生した場合の損害は保守的に評価する。
悲観 15% 人月の構造が崩れ、海外損失が重なる 利益 −7 億円 · PBR 0.6 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,675 円202 億円
AIエージェントが基幹システムの更新と通常運用までを標準的にこなすようになり、発注者は必要な成果だけを少数の大手にまとめて発注する。SRAは長年の顧客を完全には失わないが、工数契約の単価交渉に応じざるを得ない。開発工数は今の45%、運用工数は40%へ急減し、稼働率の低下と固定的な人材費が営業利益を圧迫する。
IBMのクラウド移行と直販強化でAITの大型案件が消え、企業向け機器更新は半減する。ソフトウェアの席課金契約はAIによる操作の代替で4割に縮み、製品販売の利益もほぼ失われる。国内のIT投資全体が伸びても、同社の持ち分は小さくなる。OSS技術と金融業務知識は残るが、競合がAIに組み込んだ汎用サービスと同等の条件を求められる。
海外投融資では追加の貸倒と事業整理が必要になる。人員を減らしても本社費と組織再編費が残り、10年後の営業利益は赤字に転じる。株主還元は縮小し、現金の一部を損失の穴埋めに使う。価値の支えは現在保有する換金可能な資産の税引き後価値であり、帳簿純資産や過去の株価の安値を床とはしない。
最初の黒字と後半の継続赤字を相殺した10年累計純利益は約50億円、還元は約70億円にとどまり、自己資本は約316億円となる。
- システム開発(人月受託):数量 9,000(顧客に請求する開発・導入工数(人月/年、社外技術者含む推計))× 価格 0.01(請求1人月当たり平均売上(億円/人月、名目))→ 売上 126 億円・営業利益 4 億円。開発工数0.45倍、AIエージェントで工程を失う
- 運用・構築(人月・継続保守):数量 2,200(顧客へ請求する運用・構築工数(人月/年、推計))× 価格 0.01(請求1人月当たり平均売上(億円/人月、名目))→ 売上 28 億円・営業利益 1 億円。運用工数0.40倍、残存契約は低採算化
- 製品販売・企業向け機器(販売事業の分析上の分割):数量 750(企業向け機器・更新パッケージ受注件数(件/年、推計))× 価格 0.09(機器更新1案件当たり売上(億円/件、名目))→ 売上 71 億円・営業利益 1 億円。IBM機器販売件数0.50倍、販売利益はほぼ消失
- 製品販売・ソフトウェアと保守契約(販売事業の分析上の分割):数量 800(ライセンス・保守の契約更新/追加件数(件/年、推計))× 価格 0.03(契約1件当たり売上(億円/件、名目))→ 売上 28 億円・営業利益 −1 億円。画面・席課金の契約件数0.40倍、採算割れ
倍率:構造的な負けで営業赤字となるため純利益PERを使わない。過去のPBRの安値を参照せず、今の自己資本336億円に、今日の純現金と換金可能証券を控除・税調整した床を反映するPBR0.60倍を掛けた201.6億円。2036年の増減後の自己資本316億円を床の倍率の分母に使っていない。現時点の売却可能な資産の保守的な税引後評価は約190億円であり、これを下回らない。
確率:工数の大幅削減と、販売事業のメーカー直販・クラウド代替、海外貸付損失が長く重なる複合的な下振れである。赤字化まで進むため頻度は低いが、国内事業の独占的な堀が確認できないので15%とする。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
システム開発(人月受託)
金融業などの基幹システムの受託開発、ERP・クラウド導入、業務ソフトの設計と試験。実質の人月と1人月当たり請求額で稼ぐ。
| 数量顧客に請求する開発・導入工数(人月/年、社外技術者含む推計) | 価格請求1人月当たり平均売上(億円/人月、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 20,000 | 0.01 | 259 | 57 |
| 10 年後 中立 | 14,000 | 0.02 | 236 | 42 |
取り方:会社有報2026/03の開発売上258.89億円、営業利益56.88億円を正とする。開発部門社員約896人×12月=10,752人月に、協力会社等の約9,248人月を補う仮定で年20,000人月。協力会社人数・契約人月は非開示なので人数は逆算した推計であり、平均単価は258.89億円÷20,000人月=約129.4万円。IDC Japanの国内ITサービス市場2025年約7兆5,663億円に対する売上比は0.34%、ただし開発市場だけのシェアではない。AIエージェント代替の人月型として中立2036/03数量0.70倍、価格は1.30倍に限定する。
運用・構築(人月・継続保守)
金融機関や製造業のシステム監視、ネットワーク構築、運用・保守、技術支援。複数年契約はあるが多くは工数・契約作業で対価を得る。
| 数量顧客へ請求する運用・構築工数(人月/年、推計) | 価格請求1人月当たり平均売上(億円/人月、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 5,500 | 0.01 | 66 | 21 |
| 10 年後 中立 | 3,575 | 0.02 | 55 | 14 |
取り方:有報の運用・構築売上65.94億円、営業利益20.69億円が基準。部門社員約267人の3,204人月と外部協力技術者約2,296人月を合わせて5,500人月と推定し、平均約119.9万円/人月に換算した。工数は非開示。2025年IDC国内ITサービス市場全体への売上比は0.087%、個別の運用市場シェアは未確定。AIエージェントが障害一次対応や運用手順を代替するため、人月型として中立数量0.65倍、価格1.28倍。
製品販売・企業向け機器(販売事業の分析上の分割)
子会社AITを中心とするIBM系サーバー、ストレージ、ハードウェア更新・設置・関連製品販売。契約一式を1件と数える。
| 数量企業向け機器・更新パッケージ受注件数(件/年、推計) | 価格機器更新1案件当たり売上(億円/件、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,500 | 0.09 | 135 | 11 |
| 10 年後 中立 | 1,350 | 0.12 | 163 | 11 |
取り方:販売事業の実績は売上207.95億円・営業利益22.73億円で、機器とソフトの内訳や受注件数は非開示。AITのIBM製品を中心とする説明を根拠に、機器・更新売上を135億円(販売の約65%)、営業利益を11.25億円と仮に分け、1,500件×900万円とした。MM総研の2025年度国内PCサーバー市場2,853億円への単純比は4.7%だが、AITにはIBM Powerやストレージ等もあるため正式なシェアではない。AI人月型の数量制約を機器販売に誤適用せず、国内導入件数と機器単価を別に予測する。
製品販売・ソフトウェアと保守契約(販売事業の分析上の分割)
IBM等のソフトウェアライセンス、保守サポート、パッケージ更新、自社技術を伴う製品の再販売。契約更新や追加を数える。
| 数量ライセンス・保守の契約更新/追加件数(件/年、推計) | 価格契約1件当たり売上(億円/件、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2,000 | 0.04 | 73 | 11 |
| 10 年後 中立 | 1,600 | 0.04 | 64 | 10 |
取り方:販売事業207.95億円から分析上の機器135億円を差し引いてソフトと保守72.95億円、利益は同事業22.73億円から機器11.25億円を差し引いて11.48億円と仮定した。2,000件×約364.75万円は販売契約件数が非開示のため検証不能な推計。IDCの2025年国内ソフトウェア市場概算5.9兆円と比べ約0.12%だが、流通取引とソフトウェア制作元の売上は市場定義が違い正式シェアではない。席・画面課金型に準じ中立数量0.80倍、価格1.10倍、10年より先の成長期待を認めない。
リスクと懸念
AIエージェント代替と人月単価の空洞化
開発・運用は約325億円と全社売上の6割強を占める。AIが設計書、コード、試験、障害対応を自動化すると、顧客のIT予算が増えても請求できる工数は減る。SRAが成果報酬へ移行した際の受注額や解約率は定量的に未確認であり、実績を伴わないAI成長を価値に加えない。
海外投融資の貸倒と経営資金の流出
海外のSRA OSS系事業には債務超過と継続的な赤字がある。連結で海外関連貸付金に大きな引当を持つが、追加融資や評価損によって国内事業の営業利益と株主の利益が乖離する危険が残る。会計上の自己資本をそのまま現金と見なさず、貸付金の回収実績と新規資金供給を追う。
AITの大型機器販売案件への依存
販売事業は約208億円と連結売上の4割を占め、利益の1つの柱である。金融業向け大型案件の納入時期で売上が振れ、2027年3月期第1四半期には前年の大型案件の反動が表れた。IBMの直販、クラウド移行、サーバー供給制約によって案件件数と粗利率が同時に下がりうる。
顧客接点は強いが独自基盤の堀は未確認
金融機関の既存業務を熟知し移行時の事故を避ける力はある。ただし、年率解約率、業務データの独占、法令改正に連動した値上げ実績など、強い正本型システムの根拠を2つ以上示す開示は見当たらない。大手SIのAI導入と顧客内製化が進めば、顧客関係だけで収益性を維持できない。
現金と上場株式は株主へ必ず戻るわけではない
純現金約202億円と、含み益を伴う上場株式約68億円は大きな安全弁だ。しかし投融資、株式の時価変動、長期保有方針によって実際の株主還元額は減る。直近5期の配当性向の中央値は50%未満であるため、額面の100%ではなく、75%の価値が戻る前提で評価する。
為替差益と株式配当による純利益の揺れ
2026年3月期の経常利益には為替差益が寄与し、最終利益には貸倒引当金繰入が影響した。国内SIの営業利益が同じでも為替や海外資産評価で純利益とROEは大きく変わる。売上と営業利益の増加だけで資本配分の成果を判断せず、海外貸付金の純増減、実際の営業キャッシュフローを確認する。
今後の分かれ目
- 開発・運用の売上が減らず、外部向けAIエージェント製品の年間受注金額が継続的に開示されたら
- 人月型として縮めた実質数量の一部を成果報酬・独自製品の成長へ移し替える。ただし受注額・継続率・営業利益率を確認してから中立の収益構造を更新する。
- 開発の受注残高が前年比で2期連続20%以上減少し、技術者の稼働率も落ちたら
- 中立の開発人月0.70倍でも楽観的な可能性がある。やや悲観の収益構造を検討し、本社費の削減可能額も同時に見直す。
- 運用・構築の営業利益率が25%を下回り、それが一時的な外注単価変動でないと確認できたら
- 運用の自動化が顧客との契約価格に転嫁された兆候として、2036年の運用利益率と請求人月の双方を引き下げる。
- 海外貸付金に対する引当残高が減り、現金による実際の回収が続いたら
- 投融資の追加損失確率を下げ、悲観側の資産床を引き上げる。引当の戻入れ益だけでは継続的な稼ぐ力を増やさない。
- 販売事業の受注高と受注残高が2年続けて減少し、IBM系製品の大型納入が戻らなかったら
- 機器更新件数の基準を下げ、販売事業の構造的な競争力低下として中立とやや悲観の売上・営業利益を修正する。
- 配当性向50%を超える実績が5期中央値で確認され、または実行済みの自社株買いで株数が5%以上減少したら
- 余剰現金の株主への戻り方を0.75から1.0へ改善する。一方で買い戻しのための実際の現金流出を余剰現金から差し引き、還元を二重計上しない。
- 国内ITサービス市場が実質では伸びなくても、SRAの成果契約単価が継続的に上がったら
- AIによる工数減少があっても一部の値決め力が残った証拠として、利益率と2036年以降の長期成長率の見直しを検討する。
見ておくもの
- システム開発の受注残高、売上、営業利益率の四半期推移
- 運用・構築事業の人員・外注率と利益率、成果契約への移行割合
- 外部販売するAIエージェント商品の受注額・売上額・継続率の有無
- AITのIBM系販売案件の受注高、受注残高、粗利率
- 海外子会社の赤字、貸付金回収額、貸倒引当金残高と追加資金供給
- 配当性向5期中央値、実際に取得した自社株の数と金額
- 現預金、定期預金、時価のある上場株式、非上場株式の時価と売却実績
倍率と資本コストの決め方
今のPERや株価に合わせず、開発20,000人月、運用5,500人月、機器1,500案件、ライセンス2,000契約の推計数量から数量×価格で試算した。販売の内訳と外注工数は会社非開示である。AIエージェント代替で中立の開発工数0.70倍、運用0.65倍、画面型契約0.80倍、10年後以降のgを0%とした。資本コスト7.25%に対するPERは正当化式の上限13.793倍で、相場の倍率ではない。余剰現金と上場株式の税後価値の評価と受取利益の二重計上を防いだ。戻り方は75%とした。悲観のPBRは今の自己資本336億円にだけ掛ける。新リース基準後も賃料を同一基準で見る。株数は添付の12,033,886株を採用したが、2026年6月末の会社開示自己株と7月の30万株買戻しから算出する12,333,889株より30万株少ない。基準差による時価総額の約2.5%の不確実性は残る。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。無リスク金利3%と株式リスクプレミアム4.5%による基本7.5%に、事業の安定性・値決め力・負債構成の調整−0.25%だけを加えた。