結論
GSIは札幌を発祥とし、企業向けシステム開発を技術者の稼働時間で請け負うITサービス会社である。筆者は現状を「やや割安」とみる。ただし、割安さの主因はソフトウェア事業の強固な競争優位ではなく、預金と有価証券の厚さ、そして継続的な配当である。
2026年3月期の売上は46.3億円、営業利益は4.9億円だった。常駐開発支援だけで売上の94.6%を占める。顧客企業にとって必要なのは、今後もシステムを安全に動かし、刷新する能力である。しかし、その仕事に何人月を必要とするかは、AIエージェントの普及で大きく変わりうる。事業の必要性と、現在の請求形態が残ることを混同してはならない。
会社が開示した2026年3月期の延べ稼働人員は5,477人月で、平均月額契約単価は64.3万円だった。人員は増え、単価も上昇しているが、単価上昇率は前期比約1.7%にとどまる。技術者不足が続いても、顧客がAIによる省力化を価格交渉に持ち込めば、この関係は逆転する。中立では10年後の常駐開発の実質工数が今より約3分の1減ると考えた。
それでも株主価値が大きく崩れないのは、2026年3月期末に現預金約16億円、上場株式約6.7億円、債券約3.3億円を保有するからだ。借入金と運転資金を控除しても余力はある。ただし、株式投資の損失や支配株主の資本配分次第で、少数株主に帰属する価値は変わる。
5つの筋書きを確率加重し、資本コスト7.25%で現在に割り戻した価値は約32.1億円となった。基準時価総額26.34億円に対して約22%の上振れである。十分に強い事業の堀を買う投資ではなく、縮小しうる事業と金融資産を一緒に保有する投資と理解すべきだ。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主にとって、最初の問いは「この会社が顧客にとって10年後も欠かせない存在か」である。GSIが支えるシステムは今後も必要だろう。しかし、顧客が必要とするのは成果であって、人月そのものではない。AIで開発工数が減るとき、成果を届ける能力があっても請求時間は減りうる。この違いが、同社の事業価値を考えるうえで最大の難しさである。
顧客との取引歴、地域での人材採用、技術者教育は事業を継続する力になる。だが、価格を継続的に上げても顧客が離れず、他社への乗り換えが困難だという強い証拠はない。自社AIチャットやERP販売は方向として理解できるものの、独自の記録基盤や規制上の不可欠性を握った事業と同一視しない。強い堀を持つソフトウェア企業のような長期成長倍率は支払えない。
一方、オーナーが受け取る価値は営業利益だけではない。預金、上場株式、債券は、顧客を維持するためのすべてが必要な資産ではない。不要な部分は、事業に必要な運転資金を差し引いたうえで株主価値に含めるべきだ。ただし、支配株主が資産を抱えたまま使い道を決める構造では、少数株主がすぐ全額を回収できると考えるのも危険である。
経営者の再投資には、稼ぎの質を改善するかという試験を課したい。採用者が増えた結果、売上だけでなく持続的な利益と現金が増えるか。AIを使った効率改善を元請けに還元するだけでなく、自社の利益として保持できるか。自社製品の継続課金が数字で示されるか。これらが証明されるまでは、利益の永続的な成長を期待しない。
現在の時価総額には金融資産による安全域がある。しかし、資産の厚さは事業の弱さを永久に補うものではない。金融資産を減らさず、縮む事業から得た現金を着実に還元できるかを、長期株主として最も重視する。
何で稼ぐ会社か
事業の中心はシステム開発事業であり、2026年3月期の外部売上は約45.5億円だった。このうち43.79億円が常駐開発支援、0.77億円が受託開発、0.88億円がパッケージ販売、広告・デザイン、Web・動画制作、SNS運用などである。残る就労支援事業の外部売上は約0.82億円だ。報告セグメントはシステム開発と就労支援の二つだが、稼ぎ方の違いを見るため、システム開発の内訳を分ける必要がある。
常駐開発支援では、技術者がメーカー系、ユーザー系、独立系の大手システム開発会社の案件に入り、準委任契約や派遣契約に基づいて対価を受け取る。主要販売先には伊藤忠テクノソリューションズとアルディートがあり、両社の売上比率は合わせて29.6%に達する。エンドユーザーの業種は情報通信が66.5%と高い。地域や案件を広げても、受注の上流を握る元請け会社への依存は残る。
受託開発は完成物や契約成果に対して対価を得る部分だが、実際には技術者の労働投入から自由ではない。大型案件が終わった影響で、同事業の売上は前期の2.06億円から0.77億円へ縮小した。フィリピン子会社Be UNIQUEは開発や保守を担い、国内の技術者不足への対応と開発費削減を狙う。海外拠点の存在そのものは、顧客を囲い込む仕組みではない。
新たな柱として、製造業向けクラウドERPの「UM SaaS Cloud」の販売・導入を進め、自社開発のAIチャットサービス「CAP」も提供し始めた。ただし、これらはその他売上0.88億円に含まれる一部であり、製品別の売上、課金ID数、継続率は開示されていない。独自データや法令対応を握る基幹記録の正本と認めるには、証拠が足りない。
就労支援は子会社Career Waysが運営する就労継続支援B型の事業所である。札幌と千歳の3拠点で利用者への支援を行い、公的な障害福祉サービス報酬などを受け取る。2026年3月期には営業黒字となった。支援の現場はAIだけでは代替できないが、報酬改定、利用者の確保、職員配置に利益が左右される。
優良さと弱いところ
GSIの強みは、20年以上にわたり企業のシステム開発を支援してきた取引関係と、地方でも技術者を採用し育てられる組織である。顧客の開発手順や既存システムに慣れた技術者をすぐ交代させるのは容易でなく、継続受注にもつながる。2026年3月期は延べ稼働人員が増え、平均契約単価も上がった。しかし、これだけでは強い値決め力の証明にならない。
同社が公表する稼働率100%は、研修終了後にプロジェクトへ参加した時点以降の実働状況で算出される。新規採用者の教育期間や、将来の需要減少時に生じる待機人員の負担がないという意味ではない。契約単価の上昇率も約1.7%で、物価上昇を継続的に上回って請求できているわけではない。元請けが価格と必要工数を決める取引では、技術力があっても超過利益を独占できない。
財務は明確な長所だ。自己資本比率は67.6%、純有利子負債はマイナス12億円であり、短期的な資金繰り不安は小さい。保有する上場株式と債券も大きい。一方、株式の時価下落は資産を減らす。事業の利益率を改善する設備投資ではなく、有価証券への投資が資本配分の大きな部分を占めていることには注意したい。
2023年3月期から2026年3月期にかけて、自己資本は約15億円から24億円へ増えたが、この間には上場時の増資もある。営業利益の増分だけから見ると、追加で積み上げた資本が継続的に資本コストを大きく上回って稼いだとは言い切れない。自社製品の販売拡大もまだ小規模だ。人的な実行力は認めるが、値上げ実績、独自データ、解約率、切替費用という観点での堀は弱いと判定する。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内ITサービス市場は、基幹システムの刷新、クラウド移行、データ活用を背景に拡大している。IDC Japanの2025年公表予測では、2024年の市場規模は約7.0兆円、2029年は約9.6兆円とされた。GSIのシステム開発売上約45.5億円は、この市場の約0.06%に相当する。国内全体を動かす企業ではなく、大手元請けの一部業務を担う中堅・小規模事業者の位置にある。
競争相手は、国内で大きな顧客基盤を持つNTTデータ、富士通、NEC、日立系のシステム会社に加え、技術者の派遣・受託を行うシステナ、NSD、独立系の多数の地域企業である。大手は顧客との契約や基幹業務の運用を握り、GSIのような協力会社は必要な技術者を供給する。市場全体の需要が増えても、利益の取り分が同じ比率で増えるとは限らない。GSIの同業小規模企業に対する厳密な順位やシェアは公表されていない。
今後10年の最大の変化は、AIエージェントが開発、テスト、移行、運用の一部を直接実行することだ。企業が必要とするシステムは増える可能性がある。それでも、同じ仕事に必要な人月は減りうる。システムの品質責任や顧客固有の業務理解は残るが、それが請求工数の維持を保証するわけではない。既存顧客の内製化や、AIを備えた大手開発基盤への集約も進みうる。
この変化はGSIに二つの影響を及ぼす。生成AIを使うことで開発費を下げられる反面、顧客がその節約を値下げや工数削減として要求する可能性がある。自社AIサービス「CAP」に期待できても、実際の製品売上が確認できない以上、将来の収益源として先取りしない。2036年の中立では、常駐開発の実質工数を2026年比0.67倍とし、契約単価の名目上昇を1.27倍にとどめる。
就労継続支援B型は別の市場であり、内閣府の障害者白書によれば2025年10月時点の事業所数は全国で約1万9,730に達する。GSIの3拠点は全国の約0.015%で、全国シェアより札幌・千歳の利用率が重要だ。対人支援はAIで消えにくいが、公的報酬は必ずしも物価とともに上がらない。
資本政策と M&A
資本政策は、積極的な成長投資と比較的明確な配当方針が並立している。会社は連結配当性向30〜70%の範囲と、株主資本配当率DOE5%を目標として明示している。2026年3月期の配当性向は32.9%、2027年3月期の会社予想では65.5%であり、利益が落ちる時にも配当を維持する姿勢が見える。反面、利益を超える配当が長く続けば、投資余力や金融資産が減る。
2024年公表の中期経営計画では、2027年3月期の売上高57.10億円、営業利益4.38億円、経常利益4.40億円、純利益3.08億円を掲げた。しかし、2026年5月の決算説明資料における2027年3月期の計画は売上約49.26億円、営業利益2.60億円まで下がった。初任給引き上げ、人事制度の見直し、採用教育、AI活用、パッケージ販売促進が利益を圧迫する。投資の必要性は理解できるが、当初計画と実際の距離は資本配分の評価に含めるべきだ。
2023年の上場時には30万株を新規発行した。2026年3月期末の株数は200万株で自己株式はなく、自社株買いの継続的な実績も確認できない。株式会社Kam Internationalが78.0%を保有し、上位10株主で89.96%を占める。少数株主が余剰資金の配分を変更させる力は弱い。
フィリピンのBe UNIQUEと国内のCareer Waysへの投資は事業の裾野を広げたが、全社利益を決める主役にはまだなっていない。保有上場株式と債券が約10億円あるため、今後は配当だけでなく、金融資産への投資と本業への再投資のどちらが長期の株主価値を増やしたかを確認したい。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
国内企業のシステム刷新は今後も終わらず、保守、運用、クラウド移行では顧客ごとの判断や品質保証が必要になる。GSIは20年以上の実績を持ち、大手システム会社から継続して案件を受けている。2026年3月期には延べ稼働人員と平均契約単価がともに上昇した。未経験者を育てて戦力化する仕組みも、地方で人材を確保するうえで意味がある。
生成AIの導入は必ずしも利益の減少だけを意味しない。GSI自身もGitHub Copilotなどを開発工程に導入し、フィリピン子会社では短納期化や品質向上の効果を説明している。人月の請求が減っても、熟練した技術者を必要とする工程が残り、高単価の仕事へ配置できれば採算は保てる。さらに、自社の「CAP」やERP導入支援を通じて顧客との直接関係を増やす道もある。
就労支援の3拠点はIT開発とは異なる需要を持ち、2026年3月期には営業黒字へ転じた。小さくても収益源が増えれば、本業の変動を一部吸収できる。最大の強みは財務で、営業資金とは別に売却可能な有価証券を保有し、負債の負担も軽い。配当性向とDOEの数値目標があるため、稼いだ利益が株主に届く見通しも立てやすい。現状の価格なら、事業が大きく成長しなくても報われる可能性は十分にある。
慎重な見方
売上の94.6%を占める常駐開発支援は、AIエージェントが最も直接に請求単位を変えうる分野である。顧客が求める開発成果をAIと少人数で実現できるなら、以前と同じ人数を長く常駐させる理由は乏しくなる。GSI自身がAIによる劇的な生産性改善を掲げていることは、同時に顧客の支払う人月を減らせることの裏返しでもある。元請けが成果と価格を握る限り、生産性の改善分がGSIに帰属するとは限らない。
契約単価の伸びは足元で約1.7%にとどまり、圧倒的な値決め力は確認できない。情報通信向けの案件が多く、上位2社への販売集中も約3割ある。特定顧客が自社開発、AI開発基盤、別の協力会社に切り替えれば、稼働人員と利益率は同時に落ちる。新しいERP販売やAIチャットも、同社が独自の基幹データを管理する収益とは異なり、競合製品に置き換わる可能性が高い。
最も懸念するのは資本配分である。多額の金融資産を保有することは防御力になるが、株価下落によってその価値自体が減る。78%を握る大株主の意向を、少数株主が変えることは難しい。業績が悪化した場合、資産を配当で還元するより、採用費や新事業へ投じて損失を広げる可能性もある。純資産が多いだけでは、株主に帰属する価値を保証しない。
どちらに重みを置いたか
事業の持続性については慎重な見方を重く採る。AI代替を中立の工数減少と10年後以降の成長率ゼロに反映し、さらに同じ理由で資本コストや確率を重複して悪化させてはいない。やや悲観と悲観の確率は合計39%とし、上側29%を上回る。上位顧客への依存と中計未達がその会社固有の理由である。一方、資産の厚さと配当実績は確認できるため、本質価値の最終結果は時価総額を約22%上回った。事業への確信よりも資産の裏付けによる「やや割安」である。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 2,325 円46 億円(+ 還元の換算額還元の合計 638 円13 億円)。 今の値に割り戻すと 1,604 円32 億円、今との差 +22.1%、 期待の年率 +9.8%(資本コスト 7.2%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 11% | 4,978 円100 億円 | 975 円20 億円 | +353.1% | +18.7% | 655 円13 億円 |
| やや楽観 | 18% | 3,630 円73 億円 | 825 円17 億円 | +239.0% | +14.9% | 802 円16 億円 |
| 中立 | 32% | 2,468 円49 億円 | 675 円14 億円 | +139.2% | +10.6% | 1,006 円20 億円 |
| やや悲観 | 25% | 885 円18 億円 | 525 円11 億円 | +7.3% | +0.9% | 352 円7 億円 |
| 悲観 | 14% | 805 円16 億円 | 250 円5 億円 | −19.7% | −2.4% | 148 円3 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,325 円46 億円 | 638 円13 億円 | +125.5% | +9.8% | 2,963 円59 億円 |
今の株価時価総額 1,314 円26 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 11% 既存顧客に残り、高付加価値の仕事へ移る 利益 6 億円 · PER 13.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 4,978 円100 億円
企業の基幹システム刷新は続き、GSIは伊藤忠テクノソリューションズなどの大手元請けとの取引を維持する。開発の単純作業はAIに移るが、既存システムの移行、品質管理、障害対応、顧客固有業務の設計に技術者を移し、高い契約単価を得られる。人月の総量はほぼ維持され、仕事の付加価値が上がる。
フィリピン子会社の活用は国内の費用削減に貢献し、採用した技術者が高い割合で戦力化する。自社AIサービスやERP導入支援も利用者を増やすが、開示のない巨大な新市場を独占するわけではない。就労支援では札幌・千歳で稼働率が改善し、運営可能な拠点が増える。
会社は大型買収に依存せず、採用、教育、既存製品の拡販と内部投資を中心に成長する。営業利益率は現在より改善し、過大な借入も行わない。株主には配当が継続され、余剰金融資産も積み上がる。それでも事業の中心は人月契約のままで、規制対応の独占基盤のような堀を得るわけではない。
- システム開発・常駐開発支援:数量 5,260(年間の延べ稼働人月。受託開発への配分を控除した推定値)× 価格 0.86(技術者1人月あたりの平均契約単価、百万円)→ 売上 58 億円・営業利益 7 億円。実質工数0.98倍、名目単価1.34倍。高付加価値案件への移行が成功するが、AI製品売上を根拠に数量を増やさない。
- システム開発・受託開発:数量 110(年間の開発工数を人月に換算した推定値)× 価格 0.94(1換算人月あたりの売上、百万円)→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。実質工数1.00倍、価格1.34倍。既存請負を維持する上限側。
- ソフト販売・AIチャット・広告制作等:数量 86.2(年間の契約売上を100万円単位で換算した契約相当件数)× 価格 1.14(1年間換算契約あたりの売上、百万円)→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。契約相当件数0.98倍、価格1.14倍。AI商材の未開示売上による飛躍は織り込まない。
- 就労継続支援B型:数量 19,000(年間延べ利用人日、推定)× 価格 1.10(延べ利用人日1日あたりの実効報酬、万円)→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。拠点追加と高い利用率で人日1.90倍。報酬単価1.34倍。
倍率:k7.25%、g_long0%、弱い堀の超過収益残存割合3分の1。余剰金融資産33.5億円の税後運用収益0.469億円を除く事業純利益5.398億円、事業自己資本11.3億円からROE約47.8%、RONIC約20.8%。正当化PER=(1−0÷RONIC)÷(0.0725−0)=13.79倍。事業利益5.398億円×13.79倍に金融資産33.5億円×戻り方0.75を加えた。自己資本は累計利益約39.9億円、累計還元19.5億円を現在24.4億円に反映した。
確率:技術者の高度化、単価改定、顧客の維持、福祉の増店がそろう場合である。CAPなどのAI製品の売上実績が金額で独立開示されていないため、楽観でもAI製品による工数需要の急拡大は加算せず、常駐工数は現在以下にとどめた。
やや楽観 18% 工数は減っても単価と採算を保つ 利益 4 億円 · PER 13.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 3,630 円73 億円
AIエージェントによるコード生成、試験、運用の自動化が進み、GSIへの発注工数は減少する。それでも金融や情報通信の顧客はシステムの安定稼働と品質管理を重視し、既存の取引先からの受注は相応に残る。GSIは技術者をより難しい工程へ移し、人月単価を物価に近いペースで引き上げる。
人員の採用を需要に合わせ、給与制度や教育費を調整できるため、売上が大きく伸びなくても営業採算を守る。フィリピン拠点は開発費の調整弁となるが、単純作業を海外へ移すだけで競争優位を作るものではない。ERPの代理販売とCAPの契約は一定の顧客基盤を得るものの、全社の収益構造を変える規模には至らない。
就労支援は現在の3拠点の利用率改善と限定的な拡大によって増収する。会社は買収に大きな資金を使わず、配当を続けながら金融資産を残す。事業の堀は広がらないが、顧客との関係を保つことで急激な衰退は避けられる。
- システム開発・常駐開発支援:数量 4,401(年間の延べ稼働人月。受託開発への配分を控除した推定値)× 価格 0.84(技術者1人月あたりの平均契約単価、百万円)→ 売上 47 億円・営業利益 5 億円。実質工数0.82倍、名目価格1.31倍。契約更新と人員配置の改善が進む。
- システム開発・受託開発:数量 94.6(年間の開発工数を人月に換算した推定値)× 価格 0.91(1換算人月あたりの売上、百万円)→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。実質工数0.86倍、価格1.30倍。
- ソフト販売・AIチャット・広告制作等:数量 77.4(年間の契約売上を100万円単位で換算した契約相当件数)× 価格 1.12(1年間換算契約あたりの売上、百万円)→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。契約相当件数0.88倍、価格1.12倍。
- 就労継続支援B型:数量 15,000(年間延べ利用人日、推定)× 価格 1.05(延べ利用人日1日あたりの実効報酬、万円)→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。利用人日1.50倍、報酬単価1.28倍。
倍率:k7.25%、事業の長期名目成長率g0%。金融資産29.5億円の税後収益0.413億円を除いた事業純利益3.660億円、事業自己資本11.1億円から事業ROE約33.0%、RONIC約15.8%。したがって正当化PERの上限は13.79倍であり、恣意的に割り引かない。金融資産には戻り方0.75を適用。10年間の累計利益約32.7億円と累計還元16.5億円から自己資本を40.6億円とした。
確率:元請けとの関係を保ちながら単価と技術者の配置を改善できる可能性はある。ただし、AIによる工数削減を完全には避けられず、売上構成上のソフト販売比率も急には高まらない。
中立 32% 工数が減り、値上げだけでは補えない 利益 2 億円 · PER 13.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 2,468 円49 億円
GSIは2036年にもシステム開発会社として存在する。しかし、契約の単位は現在ほど人月に依存しなくなる。大手元請けはAIを使って必要工数を削減し、成果を測りやすい業務では価格交渉を強める。GSIもAIを導入するため仕事そのものを失い切ることはないが、技術者を多数配置するだけでは売上を増やせなくなる。
常駐開発の実質工数は現在の約3分の2となり、名目単価の上昇は物価を下回る。会社は採用数や外部協力会社への発注を調整するものの、教育費、管理費、顧客対応の固定負担は残り、営業利益率は現在より低下する。受託開発も自動化の影響を受ける。CAPやERPの販売は続くが、独自の業界基盤として大きな価格決定力を得るには至らない。
就労支援は利用者の増加で緩やかに拡大し、AIの影響を受けにくい収益源となる。ただし、売上構成は小さいままだ。配当方針は維持され、利益をすべて再投資せず金融資産を一定額積み上げる。自己資本は増えるが、本業の資本効率は低下する。株主価値を下支えするのは高成長よりも資産と還元である。
- システム開発・常駐開発支援:数量 3,596(年間の延べ稼働人月。受託開発への配分を控除した推定値)× 価格 0.82(技術者1人月あたりの平均契約単価、百万円)→ 売上 37 億円・営業利益 3 億円。AIエージェント代替により実質工数0.67倍。名目価格1.27倍は10年の物価1.34倍を下回る。
- システム開発・受託開発:数量 77.0(年間の開発工数を人月に換算した推定値)× 価格 0.88(1換算人月あたりの売上、百万円)→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。実質工数0.70倍、名目価格1.25倍。成果物請負にもAIの省力化が波及する。
- ソフト販売・AIチャット・広告制作等:数量 68.6(年間の契約売上を100万円単位で換算した契約相当件数)× 価格 1.08(1年間換算契約あたりの売上、百万円)→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。契約相当件数0.78倍、価格1.08倍。席課金と広告制作への代替圧力を含む。
- 就労継続支援B型:数量 11,200(年間延べ利用人日、推定)× 価格 1.01(延べ利用人日1日あたりの実効報酬、万円)→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。利用人日1.12倍、報酬単価1.23倍。公的報酬が物価に遅れる。
倍率:k7.25%、g_long0%。金融資産28.0億円の税後収益0.392億円を除く事業純利益2.057億円、事業自己資本9.1億円から事業ROE約22.6%、RONIC約12.4%。正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)=13.79倍。金融資産には戻り方0.75を適用。全社ROEは2.449÷37.1=約6.6%で現在より低く、10年の累計純利益約26.2億円から還元13.5億円を控除して自己資本37.1億円とする。
確率:既存顧客のシステム更新需要は残るが、AIによる人月削減と元請けの価格交渉が進む中心的な筋書きである。短期の会社計画をそのまま10年延長せず、契約形態の変化を主因として見込む。
やや悲観 25% 元請けの価格交渉力が強まる 利益 1 億円 · PER 9.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 885 円18 億円
大手システム会社がAIエージェントによる開発を標準化し、常駐する技術者の人数を継続的に減らす。GSIが長年参加してきた案件でも、更新時には少人数で同じ成果を求められる。上位顧客の一部が協力会社を集約し、受託開発の単価にも下押し圧力が及ぶ。中堅SI会社との価格競争が強まる。
人員を減らせば売上原価は下がるが、採用・教育・管理の組織を縮めるには時間がかかる。経験豊かな技術者の一部も離職し、新しい高付加価値案件の獲得が難しくなる。ERP販売とCAPは一定の売上を残すものの、海外製品や汎用AIとの競争で十分な採算を生まない。フィリピン子会社の費用低減効果も、受注減少を補うには小さい。
就労支援は公的報酬の伸び悩みと拠点ごとの利用率低下で利益が薄くなる。会社は配当を減らしながら事業を維持するが、収益力を回復する大型買収は行わない。厚い金融資産が赤字化を防ぐものの、少数株主に全額が戻るとは考えにくい。営業利益率は低下し、株主が保有するのは縮小企業とその残存資産となる。
- システム開発・常駐開発支援:数量 2,845(年間の延べ稼働人月。受託開発への配分を控除した推定値)× 価格 0.75(技術者1人月あたりの平均契約単価、百万円)→ 売上 27 億円・営業利益 1 億円。実質工数0.53倍、価格1.16倍。元請けへの交渉力を失う。
- システム開発・受託開発:数量 55.0(年間の開発工数を人月に換算した推定値)× 価格 0.78(1換算人月あたりの売上、百万円)→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。実質工数0.50倍、価格1.12倍。少額案件の固定費が重い。
- ソフト販売・AIチャット・広告制作等:数量 52.8(年間の契約売上を100万円単位で換算した契約相当件数)× 価格 1.00(1年間換算契約あたりの売上、百万円)→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。契約相当件数0.60倍、価格据え置き。
- 就労継続支援B型:数量 9,000(年間延べ利用人日、推定)× 価格 0.93(延べ利用人日1日あたりの実効報酬、万円)→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。利用人日0.90倍、報酬単価1.13倍。
倍率:k7.25%。金融資産18.5億円の税後利息相当0.259億円を純利益から除いた事業純利益は0.424億円で、事業自己資本9.3億円に対するROEは約4.6%と資本コストを下回る。正当化PERの上限1÷k=13.79倍に対し、顧客契約が減り続ける収益構造を反映して事業利益に9.0倍を適用。金融資産18.5億円には戻り方0.75を適用。事業価値約3.82億円と資産価値約13.88億円の合計とした。資産の床16.0億円も上回る。
確率:大手元請けによるAI工数削減と、GSI固有の上位顧客集中が重なるケース。短期利益が過去の高水準に戻らない可能性を加味するが、金融資産の一部は維持する。
悲観 14% 人月モデルが崩れ、稼ぐ力を失う 利益 −1 億円 · PBR 0.7 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 805 円16 億円
元請け企業がAIエージェントを標準的な開発手段とし、GSIから購入する工数を大幅に減らす。伊藤忠テクノソリューションズやアルディートなどの大口顧客向け案件の一部も失い、他社との価格競争で契約単価の実質価値が下がる。常駐開発の売上は現在の半分以下となる。受託開発は利益を生む規模を失う。
会社は人員を削減するが、退職関連費用、教育・管理部門の負担、事業所維持費が残る。自社AIチャットは汎用エージェントとの差別化が進まず、パッケージ販売や制作業務も採算を失う。フィリピン子会社は受注不足となり、海外拠点を使った原価低減では解決できない。
就労支援も利用者確保と報酬改定に失敗し、運営の固定費を負担する。2027年以降の当初数年間は配当を支払うが、その後は減配・停止を余儀なくされる。保有上場株式の下落も自己資本を減らす。最後に残る価値は持続的な利益ではなく、現預金と換金可能な有価証券の一部である。経営が直ちに清算する保証はないため、帳簿上の自己資本全額を株主の回収額とは考えない。
- システム開発・常駐開発支援:数量 2,039(年間の延べ稼働人月。受託開発への配分を控除した推定値)× 価格 0.68(技術者1人月あたりの平均契約単価、百万円)→ 売上 17 億円・営業利益 −1 億円。実質工数0.38倍、価格1.05倍。構造的に顧客から選ばれなくなる。
- システム開発・受託開発:数量 38.5(年間の開発工数を人月に換算した推定値)× 価格 0.70(1換算人月あたりの売上、百万円)→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。実質工数0.35倍、価格据え置き。
- ソフト販売・AIチャット・広告制作等:数量 35.2(年間の契約売上を100万円単位で換算した契約相当件数)× 価格 0.92(1年間換算契約あたりの売上、百万円)→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。契約相当件数0.40倍、価格0.92倍。
- 就労継続支援B型:数量 7,000(年間延べ利用人日、推定)× 価格 0.90(延べ利用人日1日あたりの実効報酬、万円)→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。利用人日0.70倍、報酬単価1.10倍。
倍率:事業純利益が赤字であるためPERを用いず、現在の自己資本24.4億円に対する資産の換金可能性から評価する。床16.0億円を現在の自己資本で割ると約0.656倍であり、端数を考慮した0.66倍を現在の自己資本24.4億円に掛けて16.104億円とした。2036年の自己資本19.1億円には掛けていない。現在の自己資本から累計純利益約1.7億円、累計還元5.0億円、上場株式の評価損等約2.0億円を反映したものが2036年の自己資本である。10年間の後半に生じる営業赤字について税還付は見込まず、純利益は営業損失に金融収益を加えたマイナス0.816億円とした。
確率:AIによる工数減少に上位顧客の離脱、人件費の固定負担、保有株式の評価損が重なる複合的な敗北を想定する。継続企業注記や上場廃止の確定事実があるわけではないため、倒産を前提にはしない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
システム開発・常駐開発支援
SIerなどの案件へ技術者を派遣・準委任契約で配置し、人月や稼働工数に対する対価を受け取る。AIエージェント代替の型は「人月・工数」である。
| 数量年間の延べ稼働人月。受託開発への配分を控除した推定値 | 価格技術者1人月あたりの平均契約単価、百万円 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 5,367 | 0.64 | 44 | 5 |
| 10 年後 中立 | 3,596 | 0.82 | 37 | 3 |
取り方:会社の2026年3月期決算補足説明資料7・11ページによる常駐開発売上4,379百万円、常駐と受託の合計延べ稼働人員5,477人月、平均契約単価0.643百万円が出発点である。受託相当の110人月を推定控除した5,367人月を数量にした。単価との積だけでは売上に届かず、ビジネスパートナー分や契約単価の集計範囲の違いがあるため、売上との較正係数0.01269を固定した。会社は常駐単独の人月や協力会社の工数を開示していないので、この配分と係数は推定であり、実人数や生産性の確定値ではない。営業利益は開示されたシステム開発事業利益4.74億円から各サービスへ推定配分した。AIエージェント代替の中立数量は0.67倍、価格は1.27倍、g_longは0%とする。
システム開発・受託開発
請負によるシステム開発や成果物納入。契約は成果物単位でも、その原価と供給能力が開発工数に左右されるため、AIエージェント代替の型は「人月・工数」である。
| 数量年間の開発工数を人月に換算した推定値 | 価格1換算人月あたりの売上、百万円 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 110 | 0.70 | 1 | 0 |
| 10 年後 中立 | 77.0 | 0.88 | 1 | 0 |
取り方:2026年3月期の受託開発売上77百万円を会社のセグメント内訳から採用。受託固有の人月数・単価は非開示なので、GSIが公表する開発技術者平均0.643百万円と業界の受託単価を踏まえ、成果物売上を月70万円相当の110換算人月で表現した。実際の契約請求単位ではなく、工数の経済性を比較する代理変数である。会社のシステム開発事業の利益から推定配分した。中立数量0.70倍、名目価格1.25倍とする。
ソフト販売・AIチャット・広告制作等
UM SaaS Cloudなどの販売代理、CAPの提供、広告・Web・動画・SNS制作を含む。席課金ソフト・操作画面・広告制作に対するAIエージェント代替リスクを適用する。
| 数量年間の契約売上を100万円単位で換算した契約相当件数 | 価格1年間換算契約あたりの売上、百万円 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 88.0 | 1.00 | 1 | 0 |
| 10 年後 中立 | 68.6 | 1.08 | 1 | 0 |
取り方:会社開示のその他売上88百万円を使用。UM SaaS Cloudには販売会社による月額基本料と利用モジュールの料金表があるが、GSIの販売契約数、利用ID、CAP売上、広告制作件数の内訳は開示されていない。このため年間100万円換算の88契約相当は売上を実際の契約単位へ置き換えた分析上の代理変数であり、実契約数ではない。製品に独自データ蓄積や規制上の不可欠性を認める証拠がないため、「記録の正本」型に分類しない。席課金・画面中心サービスの中立数量0.78倍、価格1.08倍を採用し、制作業務の値下げ圧力も含めた。
就労継続支援B型
札幌・千歳の3事業所で障害のある利用者に対人支援と作業機会を提供し、公的な報酬等を受け取る。現場での支援は身体的・対人的なサービスであり、AI代替は管理事務に限られる。
| 数量年間延べ利用人日、推定 | 価格延べ利用人日1日あたりの実効報酬、万円 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 10,000 | 0.82 | 1 | 0 |
| 10 年後 中立 | 11,200 | 1.01 | 1 | 0 |
取り方:2026年3月期の外部顧客売上82百万円、セグメント営業利益19百万円は会社開示。延べ利用人日と実効報酬は非開示であり、障害福祉サービスの基本報酬と加算の仕組みを参考に、1日8,200円相当、年間約1万利用人日と逆算した推定である。3事業所の年間開所日数・定員に照らして不自然でない水準だが、実際の利用率を証明するものではない。中立では利用人日1.12倍、報酬単価1.23倍とし、国の報酬改定が物価に遅れる可能性を含める。
リスクと懸念
AIエージェント代替による人月需要の減少
常駐開発と受託開発は売上の約96%を占める。生成AIがコード生成、テスト、運用や改修を直接実行すれば、顧客のIT投資総額が増えてもGSIが請求できる工数は減る。会社自身の開発生産性が向上した場合でも、元請けがその節約を価格に反映させれば、利益は増えない。中立の工数減少とg_longゼロにこの危険を反映した。
上位顧客と情報通信向け案件への集中
2026年3月期の売上に占めるアルディートの割合は16.6%、伊藤忠テクノソリューションズは13.0%だった。エンドユーザー業種も情報通信が66.5%を占める。大口顧客がAI開発基盤への集約や協力会社の削減に踏み切れば、人員稼働率と単価に同時に影響が及ぶ。
金融資産の価格変動と二重計上
有価証券約10億円のうち上場株式が約6.7億円を占める。株式の下落は、システム開発事業が黒字でも自己資本と清算価値を下げる。評価では事業に必要な現金を控除した金融資産を別に加え、その金融収益相当額を事業純利益から差し引いた。資産の額面とその運用益を二重に数えることは避ける必要がある。
支配株主の資本配分と少数株主の回収可能性
Kam Internationalが株式の78.0%を持ち、上位10株主で約90%を占める。配当の増加実績はあるものの、保有金融資産の売却や特別配当を少数株主が求めても実現できるとは限らない。資産価値に戻り方0.75を用いたのはこのためであり、支配が強いという理由だけで0.5まで下げてはいない。
採用・教育・給与改定による利益率低下
技術者不足への対応で初任給や給与制度を改め、採用教育とAI活用に投資している。これらの費用が先行すると、受注が伸びても営業利益は減る。会社の2027年3月期の見通しは、かつての中期計画目標を大きく下回っている。稼働率100%という指標も研修後の実働状況に基づき、採用から稼働までの費用を完全に消すわけではない。
CAPとERP販売の継続課金が確立しない可能性
CAPは自社開発のAIチャットであり、UM SaaS Cloudは他社製品の販売パートナーという立場である。どちらも製品別の売上、ID数、解約率、顧客当たり売上が公表されていない。既存の記録システムを独占している証拠もないため、製品化だけを理由に高い利益率と持続的な成長を期待することはできない。
福祉報酬改定と事業所の固定費
就労継続支援B型は対人サービスであり、開発工数のAI代替とは性質が異なる。しかし、利用率が落ちても家賃や職員配置に必要な費用が残る。2026年3月期には黒字化したが、利益の絶対額は小さい。公的報酬の改定や札幌西など個別拠点の回復が遅れれば、全社への貢献は限られる。
今後の分かれ目
- 常駐開発の年間延べ稼働人員が2期連続で増え、平均契約単価が物価上昇率を上回ったら
- 顧客がAIによる工数削減よりも専門技術への支払いを優先している証拠となる。中立の工数減少を小さくし、やや楽観の確率を引き上げる。ただし、研修中の人員を含まない稼働率の定義は引き続き確認する。
- 主要販売先2社の売上比率が低下しながら、全社営業利益率が改善したら
- 元請け依存が弱まり、より直接的な顧客関係や価格決定力を得ている可能性がある。数量だけでなく利益率の見通しを上方修正する。
- CAPまたは自社が継続課金を握る製品の売上、契約数、解約率が独立開示されたら
- 製品売上の中身を席課金、成果課金、記録の正本に分け直す。規制対応、独自データ、低解約率などの堀の証拠が2つ以上そろった部分だけ長期成長率を見直す。
- 2027年3月期以降も採用教育費と給与改定の負担が続き、営業利益率が回復しなかったら
- 先行投資が収益力に転換できていないと判断する。中立の営業利益率を引き下げ、やや悲観の確率を高める。過去の二桁利益率への機械的な回帰は想定しない。
- 保有株式・債券の売却で得た資金を、特別配当または継続的な自社株買いとして株主に戻したら
- 余剰金融資産の回収可能性が改善する。過去の還元実績が配当性向中央値50%以上または発行株式数5%以上の減少という条件を満たすなら、現金の戻り方を0.75から1.0へ引き上げる。
- 上位顧客の契約終了や元請けによるAI開発への集約が公表されたら
- 常駐開発の実質工数と利益率を同時に引き下げる。案件が他顧客へ移らない場合、やや悲観と悲観の確率を高める。
- 就労支援の3拠点で利用者が増え、黒字を維持しながら新拠点を開設できたら
- 福祉事業の利用人日と利益率を上方修正する。ただし、全社売上に占める構成比が小さい間は、IT事業の人月減少を相殺するほどの評価はしない。
見ておくもの
- システム開発の年間延べ稼働人員5,477人月を起点とする実質工数の推移
- 平均月額契約単価64.3万円の改定率と給与改定率の差
- 常駐開発、受託開発、その他の売上構成と各サービスの粗利率
- アルディートと伊藤忠テクノソリューションズへの売上依存度
- CAPとUM SaaS Cloudの製品別売上、顧客数、解約率、実際のAI関連受注金額
- 2027年3月期の営業利益回復と2024年公表中期計画からの乖離
- 現預金、上場株式、債券、借入金の残高と金融資産の評価損益
- 配当性向30〜70%、DOE5%目標の維持と自社株買いの有無
- 就労支援3事業所の利用者数、稼働率、拠点別損益
- Kam Internationalの保有比率と支配株主に関する開示
倍率と資本コストの決め方
最初に2026年3月期の会社開示による常駐開発43.79億円、受託0.77億円、その他0.88億円、就労支援0.82億円を分け、実際の人月・契約単価・利用人日から10年後の売上と利益を作った。AIエージェント代替に当たる部分は、常駐と受託の中立実質工数を0.67倍・0.70倍、席課金等の契約相当件数を0.78倍とし、2036年以降の全社名目成長率を0%とした。数量減少を資本コストの寿命で再度引いていない。
楽観から中立のPERは、k7.25%、g0%、弱い堀の残存割合3分の1に基づく正当化上限13.79倍そのものを使った。今のPERや同業のPER、過去のPBRの谷を根拠にしていない。余剰金融資産には0.75の戻り方を適用し、その税後利息相当1.4%を事業純利益から除いた。各筋書きに将来の金融資産残高を明示したので、留保利益による追加現金を再び足さない。
2026年3月期の売上、利益、株数、株価、自己資本の起点は添付のfactsとbriefを正とする。なお、添付の2027年3月期予想は売上50.0億円・営業利益3.3億円だが、会社の2026年5月資料には売上49.26億円・営業利益2.60億円という別の見通しがある。この差を隠さず、10年の中立を短期会社予想から機械的に外挿しなかった。最新四半期開示で継続企業の前提に関する注記は該当なしと確認し、TOB・MBO・上場廃止予定の公表も確認されなかった。
10年後の5筋書きの時価総額と累計還元を、それぞれ10年・5年の資本コストで割り戻した確率加重価値は約32.08億円である。基準時価総額は26.34億円で、差は約プラス21.8%。結論は「やや割安」となる。悲観時の時価総額16.104億円は現在の換金可能資産の床約16.0億円を下回らず、悲観の時価総額と還元の合計21.104億円は現在の時価総額26.34億円以下である。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。無リスク金利3%、株式リスクプレミアム4.5%の基本7.5%に、事業の循環、値決め力、純現金、寿命の評価を反映した。個別の顧客集中、支配株主、AI代替は筋書きと確率で扱い、追加の危機上乗せは行わない。