結論
ネオジャパンは、グループウェア「desknet's NEO」を中心に、企業や自治体の日々の業務を支えるソフト会社である。結論は「適正」だ。値上げ後も解約が極めて少ない強さと厚い現金は評価できるが、AIエージェントが人間の操作画面を飛ばす時代に、現在の利益がそのまま伸び続けるとは見ない。
2024年のクラウド料金改定では主力プランを大幅に値上げした。それでも月次の売上解約率は低く、2026年1月期には営業利益率が30%を超えた。2026年7月末までの半年も増収増益で、当面の競争力に疑いは小さい。新しい中期目標は2029年1月期の売上高100億円超、営業利益31億円超と意欲的である。
しかし、10年保有する株主が買うのは2029年までの計画ではない。画面を開いて連絡や申請をする人が減れば、契約企業が残っても料金を払う席数は減る。特に受託開発は人月単価の経済から離れにくく、海外販売もまだ赤字である。一方、契約移行の負担が重い自治体・金融機関と、業務の中に蓄積した設定資産は、急激な解約を防ぐ。
純現金だけを眺めて割安と判断するのも誤りだ。売上が細る場合には現金の投資先と還元の仕方が、実現する株主価値を決める。利益を現金として積み上げ、株主に戻せるという条件を織り込んだ10年価値は約215億円となり、時価総額約226億円に近い。企業として魅力はあるが、十分な安全域を伴う値段とまでは言えない。
バリュー投資の観点から
長期の株主としていちばん大切なのは、利益率30%という現在の姿より、その利益を十年先にも低い再投資負担で守れるかである。ネオジャパンは営業所や工場を大量に作らず、製品を改良して同じ顧客に売る。この経済性は魅力的で、2024年の値上げを解約増なしに通した事実は、単なる成長率より重く受け止めたい。価格を決められる力がある事業の利益は長く持つ価値がある。
同時に、画面を操作する人が料金の単位である点を見逃せない。自治体向けの申請や決裁は簡単には消えないが、誰がその操作をするかは変わる。もしAIエージェント一つが何人分もの操作を代行するなら、顧客が製品を継続していても同社の売上は減りうる。この危うさを競争相手の脅威ではなく、料金の仕組みそのものの寿命として考えるべきだ。
資本を使う力にも差がある。自社ソフトの追加機能には高い利回りが期待できるが、人月を売る買収事業や採算の見えない海外拠点への投資は慎重に見る必要がある。還元できなかった資金がただ預金に積み上がるだけなら、資本に対する利益率は薄まる。実際のオーナー利益は、製品を維持する開発費と顧客サポートを負担した後の利益であり、現金の回収を実現して初めて株主の財産になる。
良い会社を安値で買うことと、良い会社ならどんな価格でも持つことは違う。純現金が豊かで自社株買いと増配の実績があるため、10年後の価値が極端にゼロへ近づくとは思わない。しかしAIの浸透を見通す自信は限られ、現在の時価総額に対して余裕ある安全域は確認できない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心は自社開発ソフトで、2026年1月期の売上は約62億円、全社の約4分の3を占める。desknet's NEOのクラウド利用料に、プログラミングなしで社内アプリを作れるAppSuiteとチャットのChatLuckを重ねて売る。クラウドだけで約43億円を稼ぎ、年度末にはdesknet's NEOの利用者が55.8万人に達した。AppSuite利用者は11.0万人であり、既存顧客への追加販売が一つの収益源である。
もう一方の自社ソフト収益は、顧客自身のサーバーに導入するパッケージのライセンスと保守で約17億円ある。自治体や金融機関など、情報を外部に置きにくい組織に適合する。パッケージの累計販売実績467.6万ユーザーは過去の累計であって、現在の課金者数ではない。オンプレミスの稼働席数は公表されないため、保守売上と公開価格から相当数を推定する必要がある。加えて親会社の技術開発受託が約1.5億円ある。
2020年にグループ入りしたPro-SPIREのシステム開発サービスは約19億円を売る。こちらは技術者を案件に配置する仕事が主体で、稼ぎの仕組みが自社ソフトとは異なる。利益は約0.7億円にとどまり、自社製品ほど利益が残らない。マレーシア、タイ、フィリピンを中心とする海外事業は売上約0.8億円に対し、約0.9億円の営業赤字である。
2026年7月末までの半年では、自社ソフトのクラウド売上が前年同期比11%伸びた。主力desknet's NEOのクラウド利用企業は平均87ユーザーで、中小組織への浸透が収益の土台となる。大きな案件を多く受注する一方、自治体の導入・移行支援や継続保守も必要であり、すべてが放置して増える収入ではない。
優良さと弱いところ
堀、つまり競争相手が簡単に奪えない強みは、既存顧客の仕事に深く組み込まれた製品と、価格改定を通す力にある。desknet's NEOのクラウド基本料金は2024年に月額400円から600円へ上がった。それでも2026年1月期の月次売上解約率は約0.35%、2026年7月までの半年では0.31%にとどまる。年率換算でも売上解約は小さく、既存顧客から利益を得る力が強い。
行政機関約1,250団体や金融機関約230組織への導入実績も重要だ。オンプレミス環境や自治体専用ネットワークに対応し、申請経路や文書の管理を再構築するのは骨が折れる。AppSuiteを使う利用者がクラウドの約2割から直近約23%に増えたことは、既存顧客の使い道を広げる実績でもある。ただし、導入先が多いことと、法令上の独占的な記録台帳を押さえることは別である。
近年の営業利益率は上昇し、自己資本に対する利益も高い。かつて売上高が小さかった頃から赤字期がなく、自己資本比率は約7割、純現金は約64億円ある。ソフトの追加販売が大きな工場を要さないからこそ、この資本効率が実現した。一方で、連結の高い利益率の大部分は自社製品が生んでおり、Pro-SPIREは薄利、海外子会社は先行費用が収益を上回る。
最大の弱点は、強みの相当部分が人間のログインと席課金を前提としていることだ。低解約率と値上げ実績は確かな証拠だが、法制度上の独占的な正本、共同利用基盤、独自データを複数持つとまでは認められない。AIが利用者の代理で作業するようになれば、乗り換えずに席数だけ減らされる恐れがある。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
日本のグループウェア市場は大きいが、寡占の中心にネオジャパンがいるわけではない。富士キメラ総研を引用したrakumoの開示では、2025年度の国内市場は約6,365億円、2028年度は約7,401億円とされる。同じ資料は売上ベースでGoogleとMicrosoftが約93%を占めると説明する。製品利用経験を尋ねた別の国内調査ではdesknet's NEOが4.27%だったが、これは金額シェアとは異なる。
同社のクラウドとパッケージの売上を広義の市場規模と照らすと、売上シェアは1%弱にすぎない。社内で画面を共有する道具ならMicrosoft 365、Google Workspace、サイボウズ Office、Garoon、kintone、LINE WORKSなど選択肢が多い。ネオジャパンの勝ち筋は世界全体の標準になることより、日本語の帳票、決裁、自治体の運用、買いやすい価格を細かく整えることにある。
業界全体では人手不足と電子申請の普及が追い風となるが、今の市場予測をそのまま10年延長するのは危うい。生成AIの導入が進むと、会社が買う道具は人間用の画面から、指示を受けて複数のシステムを動かす代理実行の仕組みへ移る。顧客企業数が増えなくてもアプリの単価は上げられた過去の成長と、席数自体が収縮する将来とは異なる。特に費用対効果を厳しく見る中小企業で、この変化は速く進みうる。
反面、自治体の調達条件や情報の保管場所には強い制約がある。変更手続きが面倒な業務も多く、置き換えは一斉には進まない。市場が名目で拡大しても同社のシェアが下がるという中立的な将来像は、この二つの力の綱引きから生まれる。受託開発の市場では大手SI会社やAIによる内製化が競合し、人月で売る仕事の総量を押し下げる。
資本政策と M&A
資本配分には評価できる実績がある。2024年には自己株式約85万株を約9.5億円で取得し、消却した。長期の株式数は約6%減り、配当も2022年1月期から2026年1月期まで増え続けた。2025年に配当政策を累進配当へ改め、連結配当性向40%を目安とした。2027年1月期の会社予想も増配であり、少数株主への現金の戻り方に実績がある。
2026年3月に改めた中期目標では、2029年1月期の売上高100.72億円、営業利益31.44億円を掲げる。売上高の年平均成長率は7%、営業利益は8%である。ROE、DOE、総還元性向、自社株買い額について新たな数値の約束はなく、明示されている還元目標は配当性向40%が中心だ。短期の計画は保守的とも言えるが、10年後の資本効率まで保証するものではない。
資金の使い方で心配なのは、薄利のPro-SPIREと、赤字が続く海外子会社への追加投資である。買収は事業規模を広げたが、少なくとも直近の利益貢献は大きくない。ソフト事業の内部開発に比べ、他社の人材を買う事業は投資額に見合う超過収益を生みにくい。親会社自身も、新製品への投資を継続しなければ機能が陳腐化する。
大株主上位10者は約76%を保有するが、それだけで現金に半値を付けるのは行き過ぎだ。大規模な自社株買いと連続増配を認め、余剰現金の株主への戻り方は全額相当と考える。ただし帳簿の現金約64億円は全額が自由な資金ではない。前受収益と運転資金を差し引いた約42億円だけを初期の余剰資金とし、将来の現金積み増しは利益からの留保と照合する。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
desknet's NEOの強みは、巨大IT企業と同じ機能をそろえたことではない。日本の職場で求められる回覧、申請、掲示板、設備予約などを、追加の専門家なしで使い続けられることだ。約1,250の行政機関と多くの金融機関への導入は、技術だけでなく移行負担が参入を妨げることを示している。継続課金の月次売上解約率は低いままで、価格改定後の利益率上昇も確認できた。
AppSuiteの付帯率は改善を続けている。すでにある顧客から追加売上を得るため、大量の新規営業人員を採用する必要は小さい。世界的な大手が独占的な売上シェアを持つ中で、国産製品にしか対応しにくい調達や日本式の細かな業務が残ることには意味がある。製品の累計販売ユーザーが増え続けている事実も、導入基盤の大きさを裏づける。
AIに関しては、単に自動化の波に流されるばかりではない。社内文書を横断検索するNeuron ES for desknet'sは導入が決まり、AIアシスタントにも取り組んでいる。まだAIによる新たな売上額の実証がないため、その成果を数量拡大の前提にはできないが、顧客の既存データを外部へ移さず活用する入口を押さえる可能性はある。クラウド料金と保守の維持に加え、増配と自己株買いを続ければ、たとえ本業の伸びが穏やかでも、現金を蓄積した株主価値は守られる。
慎重な見方
現在の成長を生む仕組みは、将来もっとも壊れやすい仕組みでもある。部署ごとに人がログインして作業するという前提は、AIエージェントが複数の業務システムをまとめて操作する時代と相性が悪い。会社が契約を解約しなくても、人が使う席を半分にすれば請求額は半分に近づく。2024年の大幅値上げは素晴らしい実績だが、次も同じように値上げできる証明ではない。
日本のグループウェア市場は見た目以上に競争が厳しい。MicrosoftとGoogleが売上の大部分を占め、サイボウズや各種ノーコード製品も業務の入り口を争う。国産グループウェアに操作性の優位があっても、代理実行の時代にはその優位の価値が薄れる。自治体や金融機関はデータの保管条件を重視するが、入札と更新のたびに他社製品へ移行する可能性は残る。
Pro-SPIREが売る人月はAIによる設計・テストの自動化や顧客の内製化で削られ、単価の引き上げだけでは補えない。海外事業は小さな売上に大きな赤字を伴い、規模の拡大が必ずしも利益に結びつかない。経営陣が高収益のソフト事業で得た現金を、利益率の低い買収や海外進出へ使い続ければ、帳簿上の純資産は増えても、少数株主の受け取る価値は薄まる。
どちらに重みを置いたか
値上げ後の低解約率と高い現金創出力は、慎重な見方の極端な崩壊予想を和らげる。一方、契約席数と技術者の工数がAIに代わる危険は、短期計画の達成とは別に存在する。このため確率は楽観側31%、中立32%、悲観側37%と、わずかに下へ寄せた。悲観側を特に厚くした理由は、当社の売上の大半が人間の席と人月に依存する点であり、AIによる売上縮小を資本コストの寿命項で重ねていない。留保現金の回収を認めた10年価値は時価総額の近くに落ち着き、評価は適正、ただし安全域は小さい。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/01 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 2,172 円304 億円(+ 還元の換算額還元の合計 474 円66 億円)。 今の値に割り戻すと 1,535 円215 億円、今との差 −4.1%、 期待の年率 +5.7%(資本コスト 6.3%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 3,770 円528 億円 | 656 円92 億円 | +176.5% | +11.9% | 443 円62 億円 |
| やや楽観 | 21% | 3,154 円442 億円 | 571 円80 億円 | +132.6% | +9.8% | 782 円110 億円 |
| 中立 | 32% | 2,471 円346 億円 | 514 円72 億円 | +86.4% | +7.2% | 955 円134 億円 |
| やや悲観 | 24% | 1,135 円159 億円 | 371 円52 億円 | −5.9% | −0.7% | 361 円51 億円 |
| 悲観 | 13% | 533 円75 億円 | 271 円38 億円 | −49.8% | −7.8% | 105 円15 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,172 円304 億円 | 474 円66 億円 | +65.3% | +5.7% | 2,646 円371 億円 |
今の株価時価総額 1,601 円224 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 10% 料金力が維持され現金も株主価値になる 利益 26 億円 · PER 15.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 3,770 円528 億円
自治体と金融機関向けの堅い販売基盤は10年後も残る。クラウドIDの急増を見込むことなく、既存の55.8万人相当を維持できる。AppSuiteの利用が広がり、2024年の値上げを通した実績が継続単価の改善を支える。新たなAIによる売上額はまだ実証されていないため、AIエージェントを売って新規IDが大幅増になる筋書きにはしない。
AIで開発生産性が上がった分は、自社のソフト更新費を抑える方向に効く。大型顧客である公共部門はオンプレミスを維持し、保守の更新率も高い。Pro-SPIREは受託工数が縮んでも成果物の付加価値を守り、価格の引き上げで売上と採算を保つ。ASEANは小さな売上のままでも赤字を絞る。海外買収で急成長するのではなく、得意な製品の開発と販路に資本を集中させる。
利益の大部分を株主に配り、残りは大規模投資に浪費せず預金等に積み上げる。継続的な現金還元によって事業の名目成長が乏しい10年間も、株主の受取価値が増える。
- クラウド型グループウェア・業務アプリ:数量 55.8(有料クラウドID数(万人、期末))× 価格 8,934(年間のID当たり連結クラウド売上相当額(円/席・年))→ 売上 50 億円・営業利益 23 億円。国内クラウド。既存有料IDを維持し、AppSuiteの付帯率と価格改定で収益を守る。
- オンプレミス・パッケージと保守:数量 120(稼働・保守対象の換算ID数(万人、推定))× 価格 1,659(ライセンス・保守・役務を含む年間ID当たり売上(円/席・年、推定))→ 売上 20 億円・営業利益 7 億円。自治体のオンプレミス継続と、保守対象の維持。
- 親会社の技術開発受託:数量 8.0(年換算の技術者稼働人数(人年、推定))× 価格 0.20(1人年当たり受託売上(億円、人年単価))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。親会社受託の工数は減るが、物価並みの単価改定が通る。
- Pro-SPIREのシステム開発サービス:数量 105(稼働するエンジニア人数(人年、推定))× 価格 0.19(1人年当たり受託売上(億円、人年単価))→ 売上 19 億円・営業利益 2 億円。工数縮小を高付加価値案件の単価上昇で補う。
- ASEAN向けクラウド販売:数量 0.8(推定有料ID数(万人、期末換算))× 価格 11,770(年間ID当たり海外売上相当額(円/席・年))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。海外販売は小規模のまま赤字幅を縮める。
倍率:資本コストk=6.25%、AIエージェント代替を反映した長期の名目成長g=−0.5%。2036年の余剰現金180億円を事業自己資本から除くと、事業ROEは約71%。堀は普通として超過ROEの半分のみ再投資で残し、RONICは約39%。正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)の上限15.007倍を使う。純利益から余剰現金の税引後利息2.52億円を除き、事業利益に倍率を掛けた後で現金180億円を加える。現金は現在の42億円と10年間の純利益累計230億円から還元92億円を控除した額であり、別の留保現金は足さない。
確率:低解約率が長期に続き、大手と住み分けながらコストを抑え、既存顧客への付帯機能を高める複数の成功が必要であるため1割とした。
やや楽観 21% 住み分けに成功して高収益を維持 利益 21 億円 · PER 15.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 3,154 円442 億円
主力のクラウドは企業数の減少ではなく、部署ごとの課金席数の減少を受ける。それでも自治体、信用金庫、国内中小企業の多くはdesknet's NEOとAppSuiteを使い続ける。AI経由で入力される場面が増えても、画面に残る決裁経路や権限設定がすぐには消えず、既存システムを維持する理由になる。追加機能で単価を小幅に上げ、クラウド収益を現在並みに保つ。
パッケージは自治体の更新需要で比較的粘る。人月で売るPro-SPIREの稼働量は減るが、残る案件は複雑なシステム接続や顧客固有の要件を伴い、単価を上げやすい。海外では売上を追うだけの拠点拡張を抑え、損失を縮める。大きな買収はせず、開発費を既存製品のAI接続とセキュリティへ重点配分する。
現金を生む力と配当が維持され、評価を支えるのは高成長ではなく、解約されにくい製品と再投資の軽さである。
- クラウド型グループウェア・業務アプリ:数量 50.2(有料クラウドID数(万人、期末))× 価格 8,778(年間のID当たり連結クラウド売上相当額(円/席・年))→ 売上 44 億円・営業利益 19 億円。有料IDは現在の9割となり、付帯機能による単価維持が支える。
- オンプレミス・パッケージと保守:数量 114(稼働・保守対象の換算ID数(万人、推定))× 価格 1,644(ライセンス・保守・役務を含む年間ID当たり売上(円/席・年、推定))→ 売上 19 億円・営業利益 6 億円。保守対象を比較的維持し、名目単価を少し上げる。
- 親会社の技術開発受託:数量 7.0(年換算の技術者稼働人数(人年、推定))× 価格 0.19(1人年当たり受託売上(億円、人年単価))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。工数は減少するが高付加価値案件が残る。
- Pro-SPIREのシステム開発サービス:数量 101(稼働するエンジニア人数(人年、推定))× 価格 0.18(1人年当たり受託売上(億円、人年単価))→ 売上 18 億円・営業利益 1 億円。エンジニアの稼働量は減少するが、顧客固有業務への対応が残る。
- ASEAN向けクラウド販売:数量 0.7(推定有料ID数(万人、期末換算))× 価格 11,668(年間ID当たり海外売上相当額(円/席・年))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。販管費を抑え赤字幅を縮める。
倍率:k=6.25%、g_long=−0.5%。余剰現金162億円を除いた事業自己資本は32.7億円であり、事業利益18.61億円からの事業ROEは約57%。普通の堀として超過収益の残存割合を半分とするとRONICは約32%。正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)から15.049倍。純利益から現金の税引後利息2.268億円を除いた利益に掛け、現金162億円を足す。10年間の純利益累計200億円から還元80億円を控除して現金を計算した。
確率:公的機関への導入実績と有料クラウドの低解約率が継続しつつ、AIによる席減少をある程度受け入れる想定である。
中立 32% 10年後は席課金が縮み現金が残る 利益 15 億円 · PER 15.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 2,471 円346 億円
2029年ごろまでは既存顧客への追加販売で成長できるが、その先の市場環境は大きく変わる。AIエージェントが予定表、申請、文書の整理を一括して扱い、顧客企業はソフトの契約を維持しながら使う席を減らす。クラウドの有料IDは十年で約2割減る。2024年の値上げ実績とAppSuiteの追加販売が料金を支えるため、単価は名目で小幅に上がるが、物価上昇には追いつかない。
自治体と金融機関の一部はオンプレミスを維持し、保守収入を一定程度守る。ただし新規ライセンスの伸びは鈍り、Microsoft、Google、サイボウズとのシェア争いは続く。Pro-SPIREは生成AIで設計・テストに要る人数が減り、人月単価の引き上げでも工数縮小を補い切れない。ASEAN事業も損失が続き、利益の柱にはならない。
高かった営業利益率は縮むが、事業そのものは黒字で残る。利益から配当を払い、必要な開発費の後に余る資金は現金として積もる。十年の価値は成長株としての期待より、継続利益と資本の返し方で決まる。
- クラウド型グループウェア・業務アプリ:数量 44.6(有料クラウドID数(万人、期末))× 価格 8,390(年間のID当たり連結クラウド売上相当額(円/席・年))→ 売上 37 億円・営業利益 13 億円。席課金型。AIエージェント代替でIDが現在の80%、単価は現在の1.08倍にとどまる。
- オンプレミス・パッケージと保守:数量 102(稼働・保守対象の換算ID数(万人、推定))× 価格 1,587(ライセンス・保守・役務を含む年間ID当たり売上(円/席・年、推定))→ 売上 16 億円・営業利益 5 億円。席課金型。保守対象85%、単価1.10倍。自治体向けは残るが価格は物価未満。
- 親会社の技術開発受託:数量 6.0(年換算の技術者稼働人数(人年、推定))× 価格 0.17(1人年当たり受託売上(億円、人年単価))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。工数型。稼働量は60%、単価は1.15倍。
- Pro-SPIREのシステム開発サービス:数量 91.0(稼働するエンジニア人数(人年、推定))× 価格 0.17(1人年当たり受託売上(億円、人年単価))→ 売上 16 億円・営業利益 0 億円。工数型。稼働量65%、単価1.25倍。AIによる省人化を織り込む。
- ASEAN向けクラウド販売:数量 0.6(推定有料ID数(万人、期末換算))× 価格 11,054(年間ID当たり海外売上相当額(円/席・年))→ 売上 1 億円・営業利益 −1 億円。海外の画面・ID課金も80%に減少し、販管費の固定負担が残る。
倍率:k=6.25%、g_long=−0.5%。10年後の自己資本183.7億円から余剰現金151億円を除くと事業自己資本32.7億円。余剰現金の税引後利息2.114億円を除いた事業純利益は12.906億円で、事業ROEは約39.5%。普通の堀としてRONIC=k+0.5×(ROE−k)は約22.9%。正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)の上限15.139倍を使用。時価総額は事業利益にこの倍率を掛けて現金151億円を足す。10年の純利益累計181億円、配当等72億円、初期余剰現金42億円を用い、留保資金を二重加算しない。
確率:2029年の会社計画を近い時点の成長経路として認めても、その後はAIによる有料席減少が勝るという中心の見通し。
やや悲観 24% 代理実行が席数と案件数を減らす 利益 8 億円 · PER 10.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,135 円159 億円
AIエージェントが日々の操作を担い、企業はユーザーごとの契約ではなく一部の共通接続基盤に投資する。ネオジャパンのソフトをすぐ解約しなくても、数年の更新を通じてID数が減少する。かつて有効だったAppSuiteの付帯率向上も、AIが直接業務を作るようになると料金を押し上げにくい。クラウドとパッケージ双方の数量が減り、名目単価はほぼ横ばいにとどまる。
MicrosoftとGoogleは製品群を一括契約で売り、サイボウズなども国産業務アプリ市場で顧客を争う。自治体の入札更新では一部が別の製品に移り、パッケージの保守対象も減る。Pro-SPIREのエンジニア稼働は減り、価格交渉力より賃金・教育費の負担が勝る。ASEAN事業の損失は縮まらず、撤退や再編を検討する。
利益は現在より大幅に細るが、過去に蓄えた現金が財務危機を防ぐ。累進配当の継続は難しくなり、業績に合わせて還元を調整せざるを得ない。
- クラウド型グループウェア・業務アプリ:数量 39.1(有料クラウドID数(万人、期末))× 価格 7,768(年間のID当たり連結クラウド売上相当額(円/席・年))→ 売上 30 億円・営業利益 8 億円。クラウドIDは現在の70%、単価は横ばい。
- オンプレミス・パッケージと保守:数量 84.0(稼働・保守対象の換算ID数(万人、推定))× 価格 1,442(ライセンス・保守・役務を含む年間ID当たり売上(円/席・年、推定))→ 売上 12 億円・営業利益 2 億円。保守対象70%、単価横ばい。
- 親会社の技術開発受託:数量 5.0(年換算の技術者稼働人数(人年、推定))× 価格 0.16(1人年当たり受託売上(億円、人年単価))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。受託工数半減により採算割れ。
- Pro-SPIREのシステム開発サービス:数量 77.0(稼働するエンジニア人数(人年、推定))× 価格 0.15(1人年当たり受託売上(億円、人年単価))→ 売上 12 億円・営業利益 0 億円。稼働量55%、名目単価1.10倍でも人件費が重い。
- ASEAN向けクラウド販売:数量 0.5(推定有料ID数(万人、期末換算))× 価格 10,235(年間ID当たり海外売上相当額(円/席・年))→ 売上 0 億円・営業利益 −1 億円。海外販売が細り固定費の負担が続く。
倍率:AIエージェント代替と競合で数量が減り、余剰現金を除く事業利益は約6.41億円となる。k=6.25%、g_long=−0.5%の正当化上限より低いPER10倍を採用。薄い利幅と更なる更新失注の危険を事業部分の稼ぐ力に反映する。純利益7.74億円から余剰現金95億円の税引後利息1.33億円を除き、その現金を帳簿価値で足す。10年間の純利益累計130億円から還元52億円を控除し、一部の投資資金を除いた95億円を残存余剰現金とした。過去の市場倍率から決めていない。
確率:標準機能の代替が進み、価格交渉力と受託工数の双方が弱る可能性を、競争環境と商品構造から具体的に見込む。
悲観 13% 人間向けソフトの価値が構造的に失われる 利益 1 億円 · PBR 1.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 533 円75 億円
主要な職場では人間が画面を直接操作する機会が大幅に減り、企業はAIエージェントから利用できる標準の業務基盤へ契約を集中させる。desknet's NEOは一部の自治体と既存顧客に残るが、課金対象のクラウドIDは半分以下になる。競合への移行でパッケージの保守対象も減る。単価は物価に追いつかず、サービス維持のための開発・サポート費だけが重く残る。
国内の受託開発では顧客自身がAIツールを使い、Pro-SPIREの工数需要が急減する。人材の固定費と稼働率の低下で赤字に転じる。ASEAN事業も拡大に失敗し、撤退費用やソフトウェア資産の減損が必要になる。成長を信じた買収と新製品への投資は十分な追加利益を生まない。
会社全体では営業黒字をわずかに保つが、事業価値は大きく失われる。前半の利益で自己資本は積み上がっていても、それをそのまま価値とはしない。借入による破綻は避けられ、現在の純現金と売れる資産を中心とする守りの価値だけが残る。
- クラウド型グループウェア・業務アプリ:数量 25.7(有料クラウドID数(万人、期末))× 価格 6,992(年間のID当たり連結クラウド売上相当額(円/席・年))→ 売上 18 億円・営業利益 2 億円。有料IDは現在の46%、単価は90%。人間向けの画面の価値が落ちる。
- オンプレミス・パッケージと保守:数量 60.0(稼働・保守対象の換算ID数(万人、推定))× 価格 1,226(ライセンス・保守・役務を含む年間ID当たり売上(円/席・年、推定))→ 売上 7 億円・営業利益 1 億円。保守対象50%、単価85%。大口更新失注を伴う。
- 親会社の技術開発受託:数量 3.0(年換算の技術者稼働人数(人年、推定))× 価格 0.14(1人年当たり受託売上(億円、人年単価))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。親会社の人月工数が現在の30%に縮む。
- Pro-SPIREのシステム開発サービス:数量 56.0(稼働するエンジニア人数(人年、推定))× 価格 0.14(1人年当たり受託売上(億円、人年単価))→ 売上 8 億円・営業利益 −1 億円。Pro-SPIREの工数が40%に減少し、単価も据え置き。
- ASEAN向けクラウド販売:数量 0.3(推定有料ID数(万人、期末換算))× 価格 9,212(年間ID当たり海外売上相当額(円/席・年))→ 売上 0 億円・営業利益 −1 億円。海外の販売失敗と撤退・整理に伴う費用負担。
倍率:構造的な競争敗北では将来純利益がほぼ消えるため永続成長のPERでは評価しない。現在の自己資本74.7億円を簿価の床としてPBR1.0倍とし、10年間に積み上がる純資産131.7億円には同じ倍率を掛けない。純現金64.3億円、有価証券等の換価性と契約負債を見て、のれん0.507億円を引いた保守的な資産床74.2億円も下回らない。
確率:AIによる席数半減と海外・受託の赤字化が重なる厳しい筋書き。買収先や投資の減損まで必要になる頻度として13%を認める。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
クラウド型グループウェア・業務アプリ
desknet's NEO、AppSuite、ChatLuckのID課金とオプション。人的な操作画面が価値の中心で、AI代替の席課金型。
| 数量有料クラウドID数(万人、期末) | 価格年間のID当たり連結クラウド売上相当額(円/席・年) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/01 | 55.8 | 7,768 | 43 | 20 |
| 10 年後 中立 | 44.6 | 8,390 | 37 | 13 |
取り方:2026年1月期のクラウド売上43.34811億円、desknet's NEOクラウド利用者55.8万人、AppSuite11.0万人は決算説明資料P27、P32。1ユーザー当たり月次売上579.2円は会社のMRR定義による別指標で、ここではその他月額売上・期中増減を含む売上÷期末55.8万ID=年7,768円の換算単価とした。売上実績と利用席を混同しない。2024年に月額400円から600円へ改定。https://www2.jpx.co.jp/disc/39210/140120260310579223.pdf および https://www.neo.co.jp/news/20240416/ 。営業利益は会社の報告セグメント計25.16622億円をクラウド45%、パッケージ32%、技術開発8%の仮定で内部配分した値で、製品区分別の公表利益ではない。
オンプレミス・パッケージと保守
desknet's NEO、AppSuite、ChatLuckのライセンスと継続保守。自治体・金融機関で使われるが、課金は最終的に利用人数に関係する。
| 数量稼働・保守対象の換算ID数(万人、推定) | 価格ライセンス・保守・役務を含む年間ID当たり売上(円/席・年、推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/01 | 120 | 1,442 | 17 | 6 |
| 10 年後 中立 | 102 | 1,587 | 16 | 5 |
取り方:2026年1月期のプロダクト売上17.30836億円。うち保守10.82829億円、ライセンスとカスタマイズ等は残余。実稼働席数は非公表。100人向け公開製品価格・年間保守料と会社の累計販売467.6万人(現役数ではない)を突き合わせて、現役保守換算120万人と仮定し単価を逆算した。数量の推定誤差は大きい。https://www.desknets.com/neo/price/package.html 。営業利益は会社の報告セグメント計25.16622億円をクラウド45%、パッケージ32%、技術開発8%の仮定で内部配分した値で、製品区分別の公表利益ではない。
親会社の技術開発受託
既存の技術開発・カスタマイズの受託。収益は技術者の工数に結びつくためAI代替の人月型。
| 数量年換算の技術者稼働人数(人年、推定) | 価格1人年当たり受託売上(億円、人年単価) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/01 | 10.0 | 0.15 | 2 | 0 |
| 10 年後 中立 | 6.0 | 0.17 | 1 | 0 |
取り方:2026年1月期のソフト事業の技術開発売上1.52000億円。案件別工数は公表されないため、平均1人年1,520万円の技術開発稼働約10人年として推定。2027年上期は既存案件縮小で売上が前年同期比52.4%減少しており、拡大事業とはみない。営業利益は会社の報告セグメント計25.16622億円をクラウド45%、パッケージ32%、技術開発8%の仮定で内部配分した値で、製品区分別の公表利益ではない。
Pro-SPIREのシステム開発サービス
クラウド移行、SI、技術者による準委任・開発業務。ストック収入表記でも実質は人月・工数型。
| 数量稼働するエンジニア人数(人年、推定) | 価格1人年当たり受託売上(億円、人年単価) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/01 | 140 | 0.14 | 19 | 1 |
| 10 年後 中立 | 91.0 | 0.17 | 16 | 0 |
取り方:2026年1月期の外部売上19.35820億円、営業利益0.73918億円。会社開示の従業員130人・臨時雇用55人から稼働140人年の実務換算を仮定し、売上÷140人年=約1,383万円/年とした。外注先を含む稼働数の開示がなく推定値。人的工数が価値の中心のためAI代替の人月型を適用。
ASEAN向けクラウド販売
マレーシア・タイ・フィリピンの子会社によるグループウェア販売。販売拠点費用が先行する画面・ID課金型。
| 数量推定有料ID数(万人、期末換算) | 価格年間ID当たり海外売上相当額(円/席・年) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/01 | 0.8 | 10,235 | 1 | −1 |
| 10 年後 中立 | 0.6 | 11,054 | 1 | −1 |
取り方:2026年1月期の海外売上0.76764億円、営業損失0.91742億円。国別契約席数と単価は非公表のため、3か国で合計7,500ID、年額約1.02万円として逆算した仮説であり実数ではない。現地価格・為替換算は長期にドル円150円固定とし、日本の物価上昇を二重には加えない。
リスクと懸念
AIエージェント代替と席課金の縮小
主力のdesknet's NEOは人が画面を使うID数で課金される。AIエージェントが申請、予定調整、入力を代行すると、顧客企業が解約しなくても購入席数を減らせる。2024年の値上げが成功したからといって、10年後にも同じ単価と席数を保てるとは限らない。中立の数量・単価とg_longに既に織り込んだため、資本コストの寿命に同じリスクを重ねていない。
世界的な製品群との競争と販売シェア
国内グループウェア市場はMicrosoftとGoogleの二強が売上の大半を占め、サイボウズ、rakumo、LINE WORKSも特定の業務を奪い合う。ネオジャパンの広義の売上シェアは小さく、製品を束ねて割安に売る競合に対抗するには日本向けの細かな機能と価格を維持する必要がある。付帯サービスの上乗せが止まれば単価の伸びも鈍る。
自治体・金融機関の更新入札
公共部門への導入実績は高い切替費用を生むが、永続契約ではない。自治体のシステム標準化、調達仕様の変更、クラウド移行の政策などで大口更新案件が他社に移る可能性がある。現在のサービスを毎年維持するだけでも開発とサポートの費用は必要であり、保守対象の急減はパッケージ部門の利益率を大きく引き下げる。
Pro-SPIREの人月単価と採用費
約19億円を売るシステム開発サービスは人月型の受託業務が中心で、生成AIによる設計やテストの自動化に脆い。稼働人数が減っても正社員人件費が直ちに減るわけではない。単価の改定と配置転換が遅れれば現在の薄い営業利益が赤字へ転じ、自社ソフトが稼いだ現金を取り崩す要因になる。
海外赤字と買収による資本配分の劣化
ASEAN事業は2026年1月期に売上より営業損失の方が大きく、2027年上期も赤字が残った。市場規模の大きさだけで拡大を正当化すると、販路開拓と現地人件費が先行し続ける。買収や新事業開発の成果は営業利益・現金回収・撤退判断で測る必要があり、連結の高ROEだけでは追加投資の利回りを判定できない。
余剰現金の再投資失敗と少数株主の支配力
上位10株主が約76%を持つため、少数株主が余った現金の使い方を決められない。2024年の自己株買いとその後の増配は好材料だが、将来も同じとは限らない。顧客前受金を含む資金を自由な純現金と誤認したり、増益分を低利回りの買収に回したりすると、帳簿上の資産と株主が受け取れる金額には差が出る。
顧客データ・セキュリティと制度対応
行政機関・金融機関の文書やワークフローを預かるソフトでは、情報漏えい、長期障害、脆弱性の放置が信用を損ねる。対策のための監査・保守・クラウド運用費は継続して必要で、価格転嫁が止まれば利益率を押し下げる。クラウド接続やAIを増やすほど外部サービスの障害や顧客データの利用条件にも注意を払う必要がある。
今後の分かれ目
- 月次MRR解約率が0.5%を継続して超え、クラウド有料IDが2期続けて減少する場合
- 2024年の値上げ後も維持した堀が弱まったと判断する。中立のクラウド数量をさらに減らし、やや悲観側の確率を高める。
- クラウド有料IDが維持され、AppSuiteの利用率が30%へ伸びてもARPUが下がらない場合
- 既存顧客への追加販売力がAI代替に勝っていると認める。価格の維持を確認した範囲で中立からやや楽観へ寄せる。
- 自治体向けオンプレミスの保守更新率が悪化し、大口調達で連敗する場合
- 切替費用の堀が想定より浅い。パッケージの保守席数と利益率を引き下げ、資産の床だけでは安全域が不足しないか再点検する。
- Pro-SPIREが売上横ばいで5%以上の営業利益率を複数期確保する場合
- 人月から成果物への価値移転や稼働率改善が進んだ証拠としてSIの中立利益率を上げる。ただしAIエージェント経由の売上額は別途確認する。
- 2029年1月期に売上100.72億円・営業利益31.44億円へ達し、顧客席数の伸びも続く場合
- 短期計画の実行力は認めるが、AI代替の10年予測を自動的には撤回しない。2030年代に課金席が維持される根拠が確認できれば楽観側を厚くする。
- 海外事業の赤字が解消しないまま大型買収や追加増資が実行される場合
- 事業価値より資金消費を重く見て、終端の余剰現金と株主への戻り方を減額する。のれんの減損と既存株主の希薄化を個別に検証する。
- 年度ごとの配当性向40%を維持し、株式数の減少または余剰現金還元が続く場合
- 積み上がる現金を額面に近く評価できるという仮定が強まる。保有資金を不採算事業へ投じないことも同時に確認する。
見ておくもの
- desknet's NEOクラウド有料ID数(2026年1月期55.8万人)と月次MRR解約率(直近0.31%)
- クラウドARPUとAppSuite利用率(2026年7月末約23%、会社が目指す30%)
- 自治体・金融機関向けの新規導入・更新入札結果およびパッケージ保守売上
- Pro-SPIREのエンジニア稼働人年、技術者当たり売上、システム開発部門営業利益率
- ASEAN子会社の営業赤字、現地有料契約と撤退・提携の判断
- 2029年1月期の売上100.72億円・営業利益31.44億円に対する進捗
- 有価証券を含む純現金、契約負債、配当性向40%および自己株買いの実行
- AIエージェント連携製品の有償売上額と、従来型ID課金に与える影響
倍率と資本コストの決め方
直近株価や過去・同業のPERから倍率を決めていない。AIエージェント代替による席数と工数の減少を10年の実質数量、価格を物価未満の改定、永続成長率g_long=−0.5%に分けた。資本コスト6.25%と、余剰現金を除いた事業ROEから正当化PERを求める。10年間に留保する現金は各筋書きの余剰現金額に明示し、別の自動積み増しで二重加算しない。悲観は今の自己資本の床で評価し、将来積み上がる自己資本を床に使わない。basisの株数は添付を正とした14,017,273株で、2026年7月末短信の発行済みから自己株を引く14,017,873株との差600株は約0.004%である。新リース会計基準によるBS上の負債表示変更だけで価値を上下させない。
資本コスト 6.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。