結論
S&Jは、企業のネットワークや端末を24時間監視し、サイバー攻撃の検知から初動対処まで引き受けるセキュリティ専門会社だ。筆者の結論は「割高」である。顧客が簡単には止められないサービスを提供し、財務も健全だが、現在の時価総額約115億円は、10年先の利益に相当強い期待を織り込んでいる。
2026年3月期の売上高は23.3億円、営業利益は5.6億円だった。売上の75.7%がSOCサービスで、84.4%が継続契約から生まれている。この構造は優れている。しかし、売上の積み上がりやすさと、利益が10年先も同じ値段で守られることは別問題だ。会社が公表する月次平均解約率は0.8%であり、年間解約率0.8%ではない。月次の水準が続く場合、年間では約9%が失われる計算になる。
将来を左右するのはAIである。会社は2026年にMy SOC 365の自動対処機能と、国産ログ基盤CSIRT-Proを投入した。監視担当者の作業を自動化し、少人数で多くの顧客を守る道は開けている。一方、同じ技術はMicrosoft、CrowdStrike、SentinelOneや大手SOC事業者にも使える。分析や一次対処の費用が下がれば、顧客は監視サービスそのものの値下げを求めるようになる。
2026年5月の中期経営計画は、2029年3月期に売上40億円、営業利益11.2億円を目指す。ただし、その計画はMicrosoft製品監視と代理店販売の積み上げ不足から、従来の成長見通しを下方修正した後の数字である。実現を否定する必要はないが、達成を当然視することもできない。
10年後の中立では、既存監視業務の自動化と契約単価への圧力が重なり、売上は約21億円、純利益は約3.4億円にとどまる。新製品の成功が大きく上振れさせる可能性は残るが、まだ新製品の売上実績を独立して確かめられない。純現金と株主還元の価値を含めても、現在の値段に十分な安全域は認めにくい。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主の見方では、S&Jには保有する価値のある事業の種がある。顧客はセキュリティ事故を防ぐために毎月料金を支払い、事故が起きれば同じ会社の助言を求める。監視契約から事故対応へ、事故対応から監視契約へと顧客関係が循環する。この仕組みは単純な受託開発より理解しやすく、長く続く収益を作れる。
ただし、堀を持つ会社と、現在の値段で買う価値がある会社は同じではない。監視と分析は必要でも、その作業に人間がどれだけ関わるかは急速に変わる。今後の顧客は監視員の人数ではなく、被害を防いだ実績、対応時間、運用費用で契約先を選ぶだろう。S&Jがその変化を先導できれば利益率は伸びるが、他社も同じ自動化を実現すれば料金は下がる。
筆者が評価するのは、会社が守るべき顧客の課題を深く理解していることだ。国内完結型の監視や、自社開発のEDR、AIを使った自動対処は、顧客との関係を太くする可能性がある。しかし、これらの製品が競合に対して何年も優位を保ち、継続的に値上げできるかについては実績が足りない。ブランドや技術力だけで高い本質価値を認めるのは早い。
オーナー利益を見るうえでは、研究開発が会計上の費用として処理されていても、競争力を維持するため毎年続けなければならない投資であることに注意したい。AIやMicrosoftの製品変更に追随する人材、監視拠点、顧客対応を削りすぎればサービス品質が落ちる。設備投資額が小さいからといって、利益のすべてが株主の自由になるわけではない。
資本配分では、新しい配当方針と自己株買いを評価する一方、株式報酬による希薄化と大株主への依存を見ておく。強い現金残高は大きな救いだが、時価総額全体を支えるほどではない。株主として最も大切なのは、AI導入で増えた利益が値下げ競争に吸収されず、少数株主に還元されるかである。現状では、その答えに確信を持って高い値段を払うことは難しい。
何で稼ぐ会社か
同社の事業は会計上、サイバーセキュリティ事業の単一セグメントである。実際の収益構造は、SOC監視・EDR監視、自社製品監視、Microsoft製品監視、コンサルティングという四つに分けて見るのが適切だ。顧客の機器を監視して委託料を受け取る収益と、製品ライセンスに監視運用を組み合わせて受け取る収益があり、代理店経由の販売も大きな役割を持つ。
中核のSOCは、単に警告を顧客に送るだけではない。顧客の環境を理解したうえで脅威の深刻さを判断し、必要に応じて隔離や復旧の初動を支援する。顧客は自社で深夜や休日の監視要員を維持せずに済む。従来型のアラート通知業者よりも、事故発生時の意思決定に深く関わるため、信頼関係が収益の源泉になる。
自社開発のKeepEyeは、端末の挙動を記録して不審な活動を検知する製品で、24時間監視サービスと一体で提供される。会社の製品サイトは導入290社、管理ライセンス65,000件超を掲げる。自社製品監視にはActive Directory監視も含まれるため、このライセンス数と自社製品監視全体の売上を割った金額は、KeepEye単独の正確な単価ではない。それでも端末数に結び付く継続収益が存在する証拠にはなる。
Microsoft製品監視は、Microsoft 365やDefenderなど、顧客がすでに利用する基盤を監視する。2026年に提供を始めたMy SOC 365は、AIによるログ調査と自動対処を組み込み、AzureやPurviewにも監視範囲を広げた。専用設備を追加せず、Microsoftの既存ライセンスを活用できることが販売上の利点である。しかし、Microsoft自身が監視機能を強化すれば、同社の付加価値が問われる構造でもある。
コンサルティングは、セキュリティ評価、脆弱性診断、事故対応、顧問契約、訓練などからなる。事故が起きた顧客を支援し、再発防止のための監視契約へつなぐ流れは合理的だ。ただし、専門家の調査、文書作成、診断、助言の多くは人の工数を要する。AIがその工数を削減すれば、顧客が支払う対価も成果に見合った水準へ変わる可能性がある。
優良さと弱いところ
最大の強みは、監視と事故対応を切り離さずに提供できることである。サイバー攻撃の際に顧客が求めるものは、警告の数ではなく被害を食い止める判断だ。実際の事故を経験した専門家が、監視結果と復旧方針を結び付けられることには価値がある。2026年の自動対処機能の投入は、その経験をソフトウェアに移そうとする試みである。
継続収益の厚さも評価できる。2026年3月期のストック売上比率は84.4%、期末ARRは21.34億円だった。もっとも、公表される継続率99.2%は月次の指標である。年率換算で解約や減額が相当程度発生する点を考えると、年5%未満の解約という強い堀の条件を満たしたとは言えない。値上げを繰り返しても継続率が低下しなかった実績や、契約単価の長期推移も十分には開示されていない。
KeepEyeの端末ログや事故対応の知識は独自性を生むが、すべての顧客データを同社だけが利用できるわけではない。顧客はMicrosoft、他のEDR製品、大手監視事業者へ乗り換えることもできる。CSIRT-Proは国内保管と長期ログ保存を特徴とするものの、提供開始から日が浅い。顧客が何年もかけて移行しなければならない業界共通基盤になったという証拠はまだない。
財務は強い。2026年3月末の現預金は約22.5億円、借入金はなく、自己資本比率は71.2%だった。もっとも、負債8.7億円のうち約6.0億円は契約負債であり、前受けしたサービスを履行する責任がある。全額を自由に配れる現金と考えてはいけない。
過去のROEは高く、2026年3月期は約18.9%だった。しかし、上場後の資本がまだ小さく、過去の利益を積み上げた期間も短い。監視人数を増やさず顧客を増やせれば増分投資利益率は高くなるが、それが競合より高い単価を維持できることを意味するわけではない。現時点の堀は、本物の顧客関係を持つ一方、独占的というほど広くはない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内のサイバーセキュリティ需要は構造的に増えている。会社が引用する富士キメラ総研の調査では、ネットワークセキュリティ市場は2024年度の約7,100億円から2030年度に約1兆176億円へ拡大する見通しだ。このうちサービス市場は約3,024億円から約4,288億円へ伸びる。名目年率約6%の市場拡大であり、物価上昇率3%を差し引いても実質需要は増える計算になる。
S&Jの2026年3月期売上23.3億円は、2025年度の広義のセキュリティサービス市場約3,288億円に対して約0.7%に相当する。SOC売上だけなら約0.54%である。ただし、この市場には製品導入支援、診断、コンサルティングなども含まれる。専門SOC市場での正確なシェアを表す数字ではない。競合各社もSOC単独の売上や契約数を同じ定義で公開しておらず、直接比較できるシェア順位は確認できない。
競争相手にはNTT系のセキュリティ事業者、NEC、LAC、IIJなどの国内大手があり、監視基盤ではMicrosoft、CrowdStrike、SentinelOne、Palo Alto Networksなどの製品群とも関係する。大手には販路、人材、研究開発費で優位がある。一方、S&Jは顧客ごとの事情に応じた分析や初動対応を売りにしており、大手の標準化された監視だけでは満足しない企業を狙っている。
最大の転換はAIによる監視業務の自動化だ。脅威の分類、ログの検索、レポート作成、端末の隔離は、人が画面を操作する仕事から自動処理へ移っていく。S&J自身も、開発工程の工数を約40~50%削減し、一部のレポート作成を自動化したと説明している。これは費用削減の証拠であると同時に、他社でも同じ業務を安く提供できることを示している。
サイバー攻撃そのものはAIによって高度化し、医療機関、製造業、重要インフラでの防御需要は続く。市場が伸びることと、個別企業の売上単価が守られることを混同してはならない。今後10年の勝者は、単に多くの警告を監視する会社ではなく、少ない人手で安全性を実証し、事故対応まで責任を持てる会社だろう。
資本政策と M&A
経営陣は2026年5月に中期経営計画を改めた。2027年3月期の売上目標27.4億円、営業利益6.2億円、2028年3月期は売上33.0億円、営業利益8.0億円である。2029年3月期には売上40.0億円、営業利益11.2億円、純利益7.4億円、ARR39.22億円、営業利益率28.0%を目標とする。ROEについての数値目標は示していない。
計画を読む際に見逃せないのは下方修正である。旧計画で2028年3月期に想定していた売上40.12億円は、33.0億円に引き下げられた。主因はMicrosoft製品監視とパートナー販売のストック売上の積み上げ不足だった。規模が小さい企業でも、新製品を投入しただけでは販売網が機能するとは限らない。
株主還元は改善した。2026年3月期に初配を実施し、配当性向20%以上を目安に増配を目指す方針へ変更した。2027年3月期も増配を予定している。自己株式取得は2025年2~5月に約1.19億円、2025年12月~2026年3月に約2.99億円を実施した。ただし、ストックオプション行使に伴う自己株式処分も多く、発行済株式から自己株式を引いた実質株数は大きく減少していない。
マクニカが約37.7%を保有する筆頭株主で、経営陣などを含む上位10株主の保有比率は約79%に達する。大株主の販売網は成長に役立つが、少数株主が資本政策に与えられる影響は限られる。主要な大型買収の実績は確認できず、今後も新製品開発と人材への投資が資本配分の中心になるだろう。マクニカによる完全子会社化などは将来の選択肢として考えられるものの、現時点で確定した取引ではなく、本質価値には織り込まない。
2026年3月末には最大248,700株に相当する未行使の新株予約権が残る。行使による希薄化を無視できないため、実現可能性の高い筋書きでは既存株主の持分を調整する。現金の株主への戻り方は0.75とする。買い戻しと初配の実績はあるが、過半の利益を恒常的に還元する実績には至っていない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
サイバーセキュリティは、今後10年で企業が削りにくい支出の一つになる。ランサムウェアによる事業停止や情報漏えいの損失は大きく、攻撃がAIで高度化するほど、人手不足の企業は監視と事故対応を外部に任せる必要がある。S&Jは検知だけでなく隔離、復旧、再発防止まで助言できるため、警告を送るだけの業者から顧客を奪える。
My SOC 365は、Microsoftの既存ライセンスを生かしながら24時間監視を提供する。AIがログを調べて自動対処するため、同社は監視員を大幅に増やさずに顧客を支援できる。さらにCSIRT-Proは、ログ保存、検索、自動対処を国産基盤で統合する製品である。国内保管を求める大企業や重要インフラに受け入れられれば、既存監視サービスと相互に顧客を送り合う仕組みができる。
継続売上が8割を超え、財務も無借金である。従業員を増やすより速く売上を増やすことができれば、追加の売上に対する利益率は高くなる。会社は2029年3月期に営業利益率28%を目指しており、AIによる開発工数削減の実績もある。中期計画を実現した後に競争が強まっても、事業が大きく傷まずに高い収益性を維持する可能性は残っている。
マクニカとの関係も有利に働く。高度なセキュリティ製品を扱う販売網から顧客を獲得し、S&Jが監視と対応を担う分業は合理的である。市場全体で年6%程度の成長が続くなら、今の小さな規模でも新規案件を取る余地は大きい。独立した専門会社として成長する場合も、大手グループの中でサービスを広げる場合も、技術と顧客関係を失わなければ価値を生み続けられる。
慎重な見方
AIによって最も置き換えやすい仕事の一つが、監視画面の確認、ログ調査、脅威分類、報告書の作成である。S&J自身がそれを自動化し、人員増加を抑えると説明している。だが、同じ効率化は大手監視会社や顧客の情報システム部門にも起こる。顧客が人手の監視業務に支払っていた料金は、従来のままでは維持できなくなる。
Microsoftへの依存も軽くない。顧客がMicrosoft 365の標準機能で十分な安全性を確保できるようになれば、外部監視サービスの付加価値は狭くなる。My SOC 365の開発を速めることができても、製品の基盤とデータ取得手段をMicrosoft側が握る構造は変わらない。KeepEyeも世界的なEDR製品との競争を避けられず、安さだけで対抗すれば利益が削られる。
会社が示す月次解約率0.8%を、年間解約率0.8%と読み違えてはいけない。既存契約は永久に残るものではない。新規獲得が鈍化し、解約や値下げが続けば、継続売上の積み上がりは止まる。さらに2026年の中期計画では、Microsoft製品監視と代理店販売の積み上げが想定より弱く、売上目標を引き下げている。2027年3月期第1四半期も増収ながら営業減益で、成長がそのまま利益につながる状況ではなかった。
現金は豊富だが、監視サービスを継続するための契約負債や人件費があり、全額を清算価値として株主に返せるわけではない。マクニカと経営陣などに株式が集中し、少数株主の資本政策への影響力も弱い。新株予約権による希薄化が進む一方、自己株買いの効果が株数の減少に残らなければ、利益成長の取り分は薄まる。現在の時価総額は、こうした構造的な価格競争を十分に許容する水準とは考えにくい。
どちらに重みを置いたか
需要そのものは長く残るが、従来の監視工数やソフトウェア利用席数から収益を得る仕組みには大きな変化が起きる。国内SOCと事故対応の一体運用は強みだが、値上げ実績や顧客移行の難しさに関する証拠は十分でない。確率は上側32%、中立30%、下側38%とした。下側をやや厚くしたのはAI代替を確率で重ねたからではなく、中期計画の下方修正と販売立ち上がりの不確実さによる。低い資本負担と自社製品の開発力は評価できるものの、現在の時価総額に見合う10年後の稼ぐ力を中立には認められない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 947 円53 億円(+ 還元の換算額還元の合計 194 円11 億円)。 今の値に割り戻すと 582 円32 億円、今との差 −68.8%、 期待の年率 −5.2%(資本コスト 7.8%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 1,764 円98 億円 | 378 円21 億円 | +14.7% | +1.5% | 214 円12 億円 |
| やや楽観 | 22% | 1,417 円79 億円 | 309 円17 億円 | −7.6% | −0.9% | 380 円21 億円 |
| 中立 | 30% | 1,085 円60 億円 | 206 円11 億円 | −30.9% | −3.9% | 387 円22 億円 |
| やや悲観 | 25% | 438 円24 億円 | 90 円5 億円 | −71.8% | −12.6% | 132 円7 億円 |
| 悲観 | 13% | 180 円10 億円 | 27 円2 億円 | −88.9% | −20.5% | 27 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 947 円53 億円 | 194 円11 億円 | −39.0% | −5.2% | 1,140 円64 億円 |
今の株価時価総額 1,868 円104 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 10% 自動対処の先行と高収益サービスへの転換 利益 6 億円 · PER 12.9 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,764 円98 億円
My SOC 365の自動対処機能が実運用で高い成果を示し、顧客は監視を外注するだけでなく、事故発生時の対応までS&Jに任せるようになる。KeepEyeは端末の挙動記録と監視を組み合わせた独自の価値を保ち、CSIRT-Proも国内保管を求める顧客に受け入れられる。2029年3月期までの中期計画が一時的に大きく進展し、その後は市場全体の自動化による価格競争を受けながらも、優良顧客との取引を維持する。
Microsoft自身のセキュリティ機能が向上しても、顧客ごとの運用設計と事故対応の責任を引き受ける企業として生き残る。開発やレポート作成の自動化による費用削減が定着し、営業利益率は現在より高くなる。マクニカの販路も新製品の普及に役立つ。
それでも監視作業とID課金がAIによる代替から無傷であるとは考えない。2036年時点では従来業務の実質数量を現在と同水準にとどめ、製品単価も競争の上限までしか認めない。既に独立した売上金額を確認できない新しいAI機能の将来収入を、数量増加として無制限に加えない。利益が生む余裕を配当と自社株買いへ振り向ける筋書きである。
- SOC監視・EDR監視・監視構築:数量 140(年間監視受託契約の顧客社数相当(社・年、推定))× 価格 0.10(1社相当の年間監視・構築売上(億円、名目))→ 売上 15 億円・営業利益 5 億円。人月・BPO型。数量は現在の1.00倍、単価1.34倍。AI効率化で営業利益率33%。
- 自社製品監視(KeepEye・AD監視):数量 65,000(KeepEye管理端末ライセンス相当(件、公開値を基準))× 価格 0.00(端末1件当たりの自社製品監視年間売上相当(億円、名目))→ 売上 6 億円・営業利益 3 億円。ID・端末課金型。数量1.00倍、単価1.15倍。自社開発と監視運用の統合により利益率45%。
- Microsoft製品監視:数量 12,500(Microsoft監視対象の年額契約ID相当(件、推定))× 価格 0.00(監視対象ID1件当たりの年間売上相当(億円、名目))→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円。ID型。数量1.00倍、単価1.15倍。プラットフォーム依存は続くが自動化で費用を削減。
- セキュリティコンサルティング・事故対応:数量 160(年間支援契約・案件相当件数(件、推定))× 価格 0.05(1案件相当の年間コンサルティング売上(億円、名目))→ 売上 8 億円・営業利益 2 億円。工数型。数量1.00倍、単価1.34倍。高難度の事故対応案件が利益率を支える。
倍率:k=7.75%、g_long=0%、弱い堀の残存割合1/3。事業ROEは資本コストを上回るが、10年以後の名目成長はAI代替と競争を考えて0%。正当化PER=(1-g/RONIC)/(k-g)=1/0.0775=12.903倍であり、その上限を採用する。余剰現金10億円の税後利息0.14億円を純利益から控除し、現金の戻り方0.75を足す。
確率:自社のAI監視機能と事故対応の知識が製品競争力として定着し、顧客との関係を維持する場合。ただし独立したAI製品の販売金額や継続的な値上げ実績はまだ不足し、10年間にわたる優位の確度は高くないため10%。
やや楽観 22% 監視の高度化で顧客を守り、競争を吸収 利益 5 億円 · PER 12.9 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,417 円79 億円
会社はMy SOC 365やKeepEyeを改善し、製品の更新と監視業務の自動化を続ける。セキュリティを自社だけで管理できない企業から一定の需要を得られ、マクニカなどの販路も機能する。2029年3月期の計画には届かない分野が残るが、監視と事故対応を組み合わせた既存の取引基盤は維持される。
Microsoftと大手SOC事業者のサービスは強くなり、価格を自社だけで決めることは難しい。顧客は対応品質を評価して契約を続ける一方、標準化できる分析やレポートには高い料金を払わなくなる。それでも同社は作業を自動化し、需要が減るより速く費用を下げるため、利益率の大きな崩れを避けられる。
自社製品の機能追加が開発費の増加を上回る成果を生み、営業利益率は中期計画に近い水準を確保する。買収による無理な拡大は行わず、残った現金は株主還元へ回す。2036年には直近より大きな市場で競争しているものの、従来の有償監視業務の数量は現在より少ない、成熟した専門事業者となる。
- SOC監視・EDR監視・監視構築:数量 126(年間監視受託契約の顧客社数相当(社・年、推定))× 価格 0.10(1社相当の年間監視・構築売上(億円、名目))→ 売上 13 億円・営業利益 4 億円。数量0.90倍、単価1.34倍。高度な事故対応が残り、営業利益率30%。
- 自社製品監視(KeepEye・AD監視):数量 58,500(KeepEye管理端末ライセンス相当(件、公開値を基準))× 価格 0.00(端末1件当たりの自社製品監視年間売上相当(億円、名目))→ 売上 5 億円・営業利益 2 億円。数量0.90倍、単価1.13倍。既存の端末顧客を中心に残存。
- Microsoft製品監視:数量 11,250(Microsoft監視対象の年額契約ID相当(件、推定))× 価格 0.00(監視対象ID1件当たりの年間売上相当(億円、名目))→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円。数量0.90倍、単価1.13倍。自動監視機能は残るがMicrosoftの機能拡充と競合。
- セキュリティコンサルティング・事故対応:数量 136(年間支援契約・案件相当件数(件、推定))× 価格 0.05(1案件相当の年間コンサルティング売上(億円、名目))→ 売上 6 億円・営業利益 2 億円。数量0.85倍、単価1.34倍。助言業務の一部を自動化し高付加価値案件に集中。
倍率:k7.75%、g_long0%。弱い堀として新規投資の超過収益の残存割合1/3を使う。定常成長が0%なら正当化PERの上限は12.903倍となる。余剰現金の利息を利益から控除し、現金価値には戻り方0.75を適用する。
確率:既存顧客との関係と自社製品が残り、AIによる原価削減を顧客向け価格の引き下げより多く利益に残せる筋書き。中期計画の実行には一定の遅れがあり得るため、楽観ほどのシェア獲得は認めない。
中立 30% AIで監視工数は減り、利益は横ばい圏で成熟 利益 3 億円 · PER 12.9 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,085 円60 億円
サイバーセキュリティの重要性は高まり、顧客の防御予算も拡大する。しかし、ログの調査、脅威の分類、一次対処、報告書の作成は、AIによる自動化が標準となる。S&Jはこれらの機能を自社サービスへ組み込むが、競合も同じ仕組みを使い、契約単価には継続的な圧力がかかる。
SOC監視とコンサルティングの従来工数に対応する実質数量は縮み、KeepEyeやMicrosoft監視も端末・ID単位の課金だけでは成長できなくなる。My SOC 365とCSIRT-Proは顧客維持に役立つが、新しい利益の柱として大きく伸びるほどの販売実績はまだ確認できない。会社は事業を継続し、顧客対応の質を守りながら少人数化を進める。
2036年の売上は約21億円となり、現在を少し下回る。利益率はAIの費用削減によって大きくは崩れないが、競争に合わせた価格設定により営業利益は約4.7億円となる。蓄積した自己資本に対するROEは過去より下がる。大規模買収や新株発行による成長を前提にせず、継続配当を中心に株主へ利益を返す成熟企業として残る。
- SOC監視・EDR監視・監視構築:数量 101(年間監視受託契約の顧客社数相当(社・年、推定))× 価格 0.10(1社相当の年間監視・構築売上(億円、名目))→ 売上 11 億円・営業利益 3 億円。人月・BPO型の数量0.72倍、価格1.34倍。監視員の工数減少とAI自動化が需要増を相殺。
- 自社製品監視(KeepEye・AD監視):数量 52,000(KeepEye管理端末ライセンス相当(件、公開値を基準))× 価格 0.00(端末1件当たりの自社製品監視年間売上相当(億円、名目))→ 売上 4 億円・営業利益 2 億円。端末数量0.80倍、単価1.08倍。競合EDRと顧客側の自動化で数量・価格に制約。
- Microsoft製品監視:数量 10,000(Microsoft監視対象の年額契約ID相当(件、推定))× 価格 0.00(監視対象ID1件当たりの年間売上相当(億円、名目))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。ID数量0.80倍、単価1.08倍。Microsoft標準機能との重複が増える。
- セキュリティコンサルティング・事故対応:数量 99.0(年間支援契約・案件相当件数(件、推定))× 価格 0.05(1案件相当の年間コンサルティング売上(億円、名目))→ 売上 5 億円・営業利益 1 億円。工数型の数量約0.62倍、単価1.30倍。自動化により診断・助言工数の請求が縮小。
倍率:10年後の全社ROEは約7.1%でk7.75%を下回る。利益を再投資しても資本コストを超える価値は生みにくく、長期成長率g_longは0%。正当化PERの上限1/k=12.903倍を採用し、余剰現金10億円の税後利息0.14億円を純利益から除いて、戻り方0.75の現金価値を加算する。
確率:セキュリティ需要の増加と同時に、AIによる監視・分析工数の削減が進むと考える。既存顧客との関係は残るものの、現在の工数やIDを収益単位として10年間拡大し続けることは想定しない。
やや悲観 25% 競争激化で監視単価が低下し、規模が縮小 利益 1 億円 · PER 12.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 438 円24 億円
Microsoftなどの大手が自動対処機能を監視サービスに標準搭載し、顧客は追加の運用委託料を抑えるようになる。S&Jは高度な事故対応の顧客を維持するが、標準化された監視業務では大手に価格で対抗できない。自社EDRの契約も一部が大手製品へ切り替わり、継続契約の減少が新規受注を上回る。
2026年に発表した新製品は販売が伸び悩み、国内保管や運用支援の価値は評価されても、独立した大きな収益源にならない。顧客数と端末数が減る一方、24時間の監視体制、セキュリティ専門家、システム更新の費用を急には削減できない。事業を守るため、研究開発や販路支援に現金を使い、配当も縮小する。
2036年の売上は約13.7億円となる。営業利益率は1割程度へ低下し、利益の大半を固定的な運用体制の維持に費やす。大株主による再編が起こる可能性はあるが、成立価格や実施時期を予測できないため価値には含めない。既存株主には継続事業の小さな稼ぐ力と、減少した現金が残る。
- SOC監視・EDR監視・監視構築:数量 73.0(年間監視受託契約の顧客社数相当(社・年、推定))× 価格 0.09(1社相当の年間監視・構築売上(億円、名目))→ 売上 7 億円・営業利益 2 億円。数量約0.52倍、単価1.17倍。大手への顧客移転で監視体制の固定費が残る。
- 自社製品監視(KeepEye・AD監視):数量 35,750(KeepEye管理端末ライセンス相当(件、公開値を基準))× 価格 0.00(端末1件当たりの自社製品監視年間売上相当(億円、名目))→ 売上 3 億円・営業利益 1 億円。端末数量0.55倍、単価1.02倍。世界的なEDR製品との競争で採算悪化。
- Microsoft製品監視:数量 6,875(Microsoft監視対象の年額契約ID相当(件、推定))× 価格 0.00(監視対象ID1件当たりの年間売上相当(億円、名目))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。ID数量0.55倍、単価横ばい。標準機能への代替が進む。
- セキュリティコンサルティング・事故対応:数量 80.0(年間支援契約・案件相当件数(件、推定))× 価格 0.04(1案件相当の年間コンサルティング売上(億円、名目))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。工数数量0.50倍、単価1.15倍。定型的な診断や助言を失う。
倍率:ROEは資本コストを大きく下回り、PERの上限は1/k=12.90倍。競争で利益が再び縮む余地があるため12倍とする。余剰現金は中立の75%に当たる7.5億円に減少し、その税後利息約0.105億円を除いた利益に倍率を適用。現金には戻り方0.75を掛ける。
確率:2026年の計画下方修正が示す販売拡大の難しさが続き、Microsoftや大手SOC事業者との競争で想定以上にシェアを失う場合。中立で既に工数減少を織り込んでいるため、追加の弱さは販売失敗と顧客流出に限定する。
悲観 13% 監視業務が標準機能に吸収され、独立事業の価値を失う 利益 −1 億円 · PBR 0.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 180 円10 億円
AIエージェントによるログ分析と自動対処が大手プラットフォームに組み込まれ、顧客は独立した監視センターへ料金を払う必要性を見直す。S&Jは一部の高度な事故対応と国内企業向けの特殊な監視を続けるが、従来の大量の警告を確認する業務では価格を維持できなくなる。KeepEyeの端末数も減少し、Microsoft監視は顧客による内製化と標準機能への移行が進む。
新しいデータ基盤は技術として残っても、大手製品に対抗するだけの顧客数を集められない。継続売上が減る一方、監視センター、技術者、顧客契約に関わる固定費は残る。経営は資産の売却、事業縮小、人員整理を進め、株主還元を停止する。大株主の存在だけで少数株主が有利な価格で買い取られるとは考えない。
2036年の売上は約11.2億円、営業損益は赤字となる。過去の高い営業利益率やROEには戻れず、継続事業の稼ぐ力にはほとんど価値を認められない。会社は直ちに倒産するとは限らないが、現金を事業再建と契約履行に使うため、株主が受け取れる額は帳簿上の現金より小さい。残る価値は現金と回収可能な資産から負債・撤退費用を差し引いた部分に限られる。
- SOC監視・EDR監視・監視構築:数量 63.0(年間監視受託契約の顧客社数相当(社・年、推定))× 価格 0.09(1社相当の年間監視・構築売上(億円、名目))→ 売上 5 億円・営業利益 1 億円。数量0.45倍、単価1.10倍。独立したSOC監視の価値が大幅に縮む。
- 自社製品監視(KeepEye・AD監視):数量 33,800(KeepEye管理端末ライセンス相当(件、公開値を基準))× 価格 0.00(端末1件当たりの自社製品監視年間売上相当(億円、名目))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。端末数量0.52倍、単価0.98倍。顧客喪失と開発費の固定負担。
- Microsoft製品監視:数量 5,625(Microsoft監視対象の年額契約ID相当(件、推定))× 価格 0.00(監視対象ID1件当たりの年間売上相当(億円、名目))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。ID数量0.45倍、単価横ばい。Microsoftへの機能統合により収益機会が消える。
- セキュリティコンサルティング・事故対応:数量 64.0(年間支援契約・案件相当件数(件、推定))× 価格 0.04(1案件相当の年間コンサルティング売上(億円、名目))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。工数数量0.40倍、単価1.10倍。単発案件は残るが継続的な利益を生まない。
倍率:営業赤字となり利益倍率で事業価値を測れない。過去の市場PBRを使わず、現時点の自己資本21.50億円に対し、純現金と売却可能資産から算出した回収価値10億円を割り戻した倍率を使用する。10年後に利益を留保して積み上がる自己資本37.25億円には掛けない。
確率:Microsoftや世界的な監視基盤企業が顧客企業の運用を直接引き受け、S&Jが価格競争に負ける場合。失敗した新製品開発と高い固定費が重なり、既存顧客との関係を収益に変えられなくなる構造的な負け筋。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
SOC監視・EDR監視・監視構築
企業のネットワークや他社EDR製品の監視、アラート分析、初動対応、監視サービス構築。人的な運用業務が残るためAIエージェント代替では人月・BPO型に分類する。
| 数量年間監視受託契約の顧客社数相当(社・年、推定) | 価格1社相当の年間監視・構築売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 140 | 0.08 | 11 | 3 |
| 10 年後 中立 | 101 | 0.10 | 11 | 3 |
取り方:2026年5月13日の中期経営計画の売上内訳は、SOC監視7.62億円、他社EDR監視2.39億円、その他監視構築等約0.90億円で、合計は端数を含め約10.92億円となる。契約社数と平均契約単価は未開示であるため、24時間対応の個別受託を年約780万円と仮定し、140社相当へ換算した。これは実際の顧客企業数の公表値ではない。競合の一般向けEDR監視単価も参照したが、S&Jのサービスには企業単位の運用、調査、構築が含まれるので端末単価を直接流用していない。営業利益は会社が区分別に開示していないため、共通費控除前の分析上の配賦である。
自社製品監視(KeepEye・AD監視)
自社開発EDR KeepEyeとActive Directory監視を中心とした製品・運用一体型サービス。端末ライセンスと監視契約の価値を持つが、AIによる分析の自動化と競合製品への切り替えにさらされる。
| 数量KeepEye管理端末ライセンス相当(件、公開値を基準) | 価格端末1件当たりの自社製品監視年間売上相当(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 65,000 | 0.00 | 5 | 2 |
| 10 年後 中立 | 52,000 | 0.00 | 4 | 2 |
取り方:中期計画の自社製品監視売上は5.20億円。会社のKeepEye製品ページでは導入290社、65,000ライセンス以上を管理するとしているため、65,000件を基準に売上を割り、年間約8,000円の端末換算単価とした。ただし5.20億円にはAD監視なども含まれ、顧客別の正確なARPUではない。端末数も決算末日に完全に一致する保証はない。https://sandj.co.jp/services/keepeye/
Microsoft製品監視
Microsoft 365、Defender、Entra IDなどの監視・対処サービス。My SOC 365を含む方向へ移行するが、収益はMicrosoftのプラットフォームとID課金に影響される。
| 数量Microsoft監視対象の年額契約ID相当(件、推定) | 価格監視対象ID1件当たりの年間売上相当(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 12,500 | 0.00 | 2 | 1 |
| 10 年後 中立 | 10,000 | 0.00 | 1 | 0 |
取り方:2026年5月の中期計画でMicrosoft製品監視の実績売上は1.55億円と示される。監視対象ID数と実現単価は開示されないため、年間1件約12,400円の監視契約を仮定し、約12,500ID相当へ換算した。これは実際のID数を確認したものではない。2026年開始のMy SOC 365はユーザー数による年額課金だが、2026年3月期実績は新製品の発売前なので、同製品単独の売上として扱わない。https://www.sandj.co.jp/services/mysoc365/
セキュリティコンサルティング・事故対応
年間アドバイザー契約、脆弱性診断、事故時の調査・復旧支援、訓練など。専門人材の調査・助言・資料作成を伴うため、AIエージェント代替では人月・工数型に分類する。
| 数量年間支援契約・案件相当件数(件、推定) | 価格1案件相当の年間コンサルティング売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 160 | 0.04 | 6 | 1 |
| 10 年後 中立 | 99.0 | 0.05 | 5 | 1 |
取り方:会社の2026年3月期コンサルティング売上5.66億円を正とする。案件数と案件単価は非開示のため、年間顧問、診断、事故対応を混ぜた約160件相当、1件約354万円の分析上の換算を採用した。実際には数万円の月次顧問から大規模な事故対応まで単価差が大きい。顧問とスポット売上の構成は会社資料にあるが、件数別の精密な推計はできない。
リスクと懸念
AIエージェント代替
ログ分析、警告の選別、報告書作成、定型的な事故対応、コンサルティング資料の作成は自動化されやすい。S&J自身も開発工数の削減と自動対処を進めている。成果を低価格で提供できる競合が増えれば、作業工数やID数を単位とする売上が減り、費用削減の利益は顧客へ移る。中立の数量と単価、長期成長率にこの影響を反映した。
Microsoftへのプラットフォーム依存
My SOC 365の競争力はMicrosoft製品のログやセキュリティ機能へのアクセスに依存する。Microsoft自身の製品変更、価格政策、ライセンス体系や自動対処機能の強化によって、外部監視サービスの付加価値が突然変化する可能性がある。自社が製品の基盤を所有していない部分では価格交渉力が弱い。
中期計画の再修正
2026年5月の計画では、Microsoft製品監視と代理店販売の積み上げ不足を理由に従来計画が下方修正された。2027年3月期第1四半期も増収減益だった。新製品投入とパートナー販売が計画どおり利益へ結び付かなければ、売上の拡大に先行して増やした技術者や販管費が重荷となる。
大手監視事業者とEDR企業の競争
NTT系、NEC、LAC、IIJなどの国内大手は顧客基盤と監視拠点を持ち、MicrosoftやCrowdStrikeなどの大手製品企業は自動化と開発投資を大規模に進められる。S&Jが持つ顧客対応力を標準化された製品が代替すれば、契約維持のための値下げが必要になる。監視市場の拡大だけではシェア維持を保証しない。
インシデント対応と運用品質の失敗
顧客の攻撃検知と初動対処を請け負う事業では、見逃しや誤った自動隔離の影響が大きい。重要な業務を停止させれば、損害賠償、信用低下、解約につながる。AIの判定速度が上がっても正確性と責任の所在が重要であり、高度な監督人材を削りすぎると会社の最大の強みである顧客の信頼を損ないかねない。
大株主への依存と新株予約権の希薄化
マクニカと経営陣などに株式が集中しており、少数株主は資本政策への発言力が限られる。大株主の販路に依存しすぎれば取引条件の変更にも弱い。2026年3月末には248,700株相当の新株予約権が残り、権利行使で既存株主の取り分が薄まる。自己株買いを行っても実質株数が減らない場合には、還元の実効性を検証する必要がある。
現金の過大評価と固定的な費用
現預金約22.5億円は大きいが、契約負債約6億円や監視センターの維持費用、技術者の雇用費用を伴う。事務所賃料は年間約0.79億円で、解約不能の未経過リース料もある。顧客が減ってもこれらの支払いは直ちに減らない。新リース会計基準の適用後は負債表示が変わる可能性があり、会計上の純現金と自由に使える現金を分けて判断する必要がある。
今後の分かれ目
- My SOC 365とCSIRT-Proの独立した売上・ARR・契約数が開示され、2年以上継続して増えたら
- 単なるAI機能の発表ではなく、AIを自社の売り物にできた証拠となる。製品側の数量制約を見直し、やや楽観と楽観の筋書きの重みを高める。
- 月次解約率が0.4%以下へ改善し、同時に顧客単価の値上げ実績が確認されたら
- 年間の契約維持力と値決め力の証拠になる。堀の評価を引き上げ、監視契約の実質数量と長期の価格維持率を再検討する。
- 2029年3月期の売上40億円、営業利益11.2億円、ARR39.22億円が実現したら
- 少なくともAI導入初期の規模拡大に成功したと判断する。売上の内訳と新製品の収益を確認し、10年後の数量と利益率を上方修正する。ただし一時的な達成だけでは長期成長率を上げない。
- MicrosoftがMy SOC 365と同等の監視・自動対処を標準機能に組み込み、契約減少が続いたら
- Microsoft監視の数量・単価を下方修正し、やや悲観と悲観の可能性を再評価する。自社製品監視や事故対応への顧客移行があるかも確認する。
- 営業利益率が20%を下回り、ARRも前年割れしたら
- 費用削減より契約流出や値下げの影響が強くなった証拠とみる。中立の稼ぐ力を下げ、事業の構造的な競争力喪失が始まったかを点検する。
- 増配と自己株式取得が続き、オプション行使を差し引いた実質株数も5%以上減少したら
- 株主への余剰現金の戻り方を0.75から1.0へ引き上げる根拠になる。資本効率の改善も確認し、現金価値と10年後のROEを見直す。
- マクニカによる公開買付けや完全子会社化が正式に発表されたら
- 独立上場企業としての10年価値より、提示された買付条件と実現可能性が優先される。その時点で通常の長期分析を停止し、取引条件の評価へ切り替える。
見ておくもの
- SOC監視、自社製品監視、Microsoft製品監視、コンサルティングの四分野の売上推移
- My SOC 365とCSIRT-Proの個別ARR、契約社数、実際の有償顧客数
- 月次解約率とサービス継続率、値上げ後の解約動向
- KeepEyeの導入企業数と管理ライセンス数
- Microsoft製品監視のID数、単価、Microsoft標準機能との競争状況
- AI自動対処後のアナリスト1人当たり監視契約数と粗利益率
- 2029年3月期の売上40億円、営業利益11.2億円、ARR39.22億円の達成状況
- 現預金、契約負債、株主還元、未行使新株予約権、実質発行済株式数
- マクニカとの販売契約・持株関係・関連当事者取引の変化
倍率と資本コストの決め方
現在の株価や同業の市場PERから10年後の倍率を逆算していない。中期計画の目標は事業の上振れを考える材料とし、達成済みの数字とは扱わない。SOC監視の受託契約、KeepEye端末、Microsoft監視ID、コンサルティング案件を数量と単価に分けた。工数型とID型の中立数量にはAIエージェント代替の制約を適用し、長期成長率は0%とした。資本コスト7.75%と長期成長0%から楽観・やや楽観・中立の正当化PERを12.90倍とし、上限から任意に割り引いていない。余剰現金は営業利益と二重計上せず、戻り方0.75を適用する。悲観では2036年の増加後自己資本ではなく、現在の資産から負債と撤退費用を控除した床を使う。新株予約権の希薄化は将来の既存株主持分だけに反映する。新リース会計基準の適用後も、費用と負債の二重計上を避けて比較する。数量・単価の未開示部分は推定値であり、この不確実性は監視すべき課題として残す。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。無リスク金利3.0%と株式リスクプレミアム4.5%から基本7.5%。値決め力の弱さ+0.5%と純現金の強さ-0.25%を反映して7.75%。事業固有のAI代替や計画未達をさらに上乗せせず、数量・価格・g_longと筋書きで評価する。