結論
ノバシステムは生命保険会社や金融機関の業務システムを請け負う中堅の開発会社である。筆者の結論は「やや割高」だ。保険業務に通じた技術者と長年の取引関係は評価できるが、売上のほぼ全てが開発の工数に依存し、AIエージェントがその工数を減らす時代には利益の永続性を高く見積もれない。足元の業績回復を否定する判断ではない。
2025年は売上が67億円に達したものの、不採算の請負案件により営業利益は3億円台に落ち込んだ。2026年は売上75億円、営業利益6億円強への回復を会社が見込む。2026年上期の営業利益も改善しており、短期の回復には裏付けがある。ただし、2030年に売上150億円、営業利益22.5億円を目指す計画と、十年後も同じ作業量を顧客が発注するかという問題は分けて考えたい。
強みは、保険契約や金融機関の複雑な業務を理解し、大手元請けの開発現場に入り込んでいることだ。しかし、日本IBM、ニッセイ情報テクノロジー、SCSKへの売上が計六割強を占める。最終顧客のデータやシステムを自社で独占する立場ではなく、価格決定権は必ずしも強くない。自社クラウドはあるが、売上比率は二%に満たない。
純有利子負債はほぼゼロで、上場株式や事業用不動産も残るため、事業が縮んでも価値がすべて消えるわけではない。一方で、今後の残存利益を保守的に評価すると、十年先の利益と途中の還元を現在価値に戻した額は基準時価総額の39億円を二割前後下回る見立てとなる。経営がAIによる生産性向上を契約単価や成果報酬に結び付けられるかが、評価を変える最大の鍵である。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主の立場なら、まず保険会社が十年後もシステムを使うかを考える。答えは明らかに肯定だ。保険契約の管理、法令対応、顧客情報の保護はなくならない。しかし、同じ仕事に必要な人月まで残るとは限らない。ノバシステムが売っているのは、現状では業務上の最終的な記録そのものより、それを作り直し、改修する技術者の働きである。
真に守りたい資産は、保険業務の複雑な知識を組織に蓄積し、案件を高い品質で完成させる能力だ。だが、2025年に請負案件が不採算化した事実は、見積りと品質管理が必ずしも再現性のある強みではないことを物語る。受注が増えるたびに技術者を雇い、教育し、拠点を増やす必要があるなら、会計上の利益がすべて自由なオーナー利益にはならない。AIの普及で必要な人員が減れば投下資本を軽くできるが、その便益を発注側に奪われれば株主には残らない。
一方で、保有するTIS株と事業用不動産、手元資金は下振れを和らげる。2025年末の自己資本約25.5億円には現金化に時間のかかる資産も含まれるため、その額面を破綻時の最低価値とは見ない。純投資株は税後で考え、固定資産は処分費用と売却価格の不確実性を割り引く。純現金だけを見て安全だと断言しない姿勢が必要だ。
筆者が評価を高めるのは、元請けの予算で工数を売る会社から、業務の成果に対する継続報酬を得る会社へ実際に変わった時だ。2030年計画の達成だけを先取りして買うのでなく、開発工数の減少と利益の残り方を別々に点検したい。足元の市場価値には十分な安全域が見えず、事業への親しみや過去の高ROEだけで長期保有を正当化しない。
何で稼ぐ会社か
売上の中心は、保険・金融・産業向け業務システムの受託開発である。会社の報告セグメントは単一だが、収益を考えるには請負案件と準委任案件を分ける必要がある。2025年の請負売上は33.40億円、準委任は32.66億円であり、両者で全社売上の約98%を占める。残りのクラウドサービスは1.08億円にすぎない。
請負では要件を決めたシステムを納め、完成度と開発原価の差から利益が生まれる。見積りより工数が増えると採算が崩れ、2025年の請負売上総利益率は14.7%にとどまった。会社が適正とする35%とは大きな開きがある。一方、準委任では技術者を月単位などで提供し、稼働と人月単価が売上を決める。こちらの2025年売上総利益率は25.6%で、請負より安定していた。
顧客名で見ると、日本IBMへの売上は約20億円、ニッセイ情報テクノロジーは約12億円、SCSKは約10億円である。いずれも大規模システムの元請けとなる企業であり、ノバシステムはその下で保険業務の設計・開発・試験を担うことが多い。保険向けがSI売上の約半分という専門性は武器だが、同時に元請け側の発注量と契約条件に業績が左右される。
自社製品には飲食店向け注文支援のOrder Revolutionと、受付・顔認証関連のアイウェルコ群がある。月額サービスの要素を持つが、利用施設数、継続率、顧客当たり収入は十分に開示されていない。現在の利益を支えるほど大きくはなく、将来の成長を織り込むには実売上の継続的な拡大を確認する必要がある。2025年には地方銀行向け与信相談票作成AIの受注を公表したが、受注金額は示されておらず、AI製品が開発工数の減少を埋める段階に達したとはまだ言えない。
優良さと弱いところ
ノバシステムの強みは、保険システムで培った業務知識と開発の継続性にある。長期契約の業務では、制度変更や既存プログラムの制約を知らない業者に一度で切り替えることは難しい。金融機関の品質要求に応える技術者を確保できれば、同規模の新興企業より安定した受注を得やすい。2023年まで営業利益率が改善した経緯も、専門性を利益に変えた一つの証拠だ。
ただし、これは最終顧客を囲い込む強固な堀ではない。主要三社への売上集中は約62%に達し、顧客側は複数の協力会社を使い分けられる。値上げを繰り返し通した実績や、解約率の低さを示す数値も確認できない。2025年の不採算案件は、得意分野にいても見積りを誤れば利益が失われることを示した。
過去のROEは十%台後半が中心だったが、上場後の財務拡充と利益変動で2025年は約九%へ低下した。借入金に対して現預金がほぼ見合い、自己資本比率は六割を超える。この財務の余裕は顧客獲得と人材育成を支える反面、余った資本を高利回りで再投資し続けられる保証にはならない。AI時代には優秀な技術者を増やすこと自体より、成果に見合う対価を受け取れるかが増分の資本利益率を左右する。
記録の正本を所有しているわけではなく、独自データ、法令改正の都度の値上げ、年単位の移管期間など、強い堀と認めるための客観的な証拠は二つそろっていない。したがって請負と準委任は「人月・工数」、自社クラウドは「画面操作型SaaS」として評価する。顧客企業のシステムを理解する強みは残るが、同社が所有する製品そのものの乗り換え障壁と混同してはならない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内ITサービス市場は2025年におおむね7.5兆円規模と推定され、基幹システムの刷新、クラウド移行、セキュリティ対策が当面の需要を支える。IDCの見通しは2030年前後までの名目成長を示すが、その市場拡大を開発者の作業時間の増加と同一視してはならない。AIが単体テスト、画面作成、プログラムの修正を担えば、システム需要が増えても外注する人月は減りうる。元請けが生産性向上分を価格引下げとして顧客に渡すか、自社に残すかが業界の利益配分を変える。
同社のSI売上約66億円は国内ITサービス市場の約0.09%に相当するが、元請けと下請けの売上を含む広い市場との比較であり、厳密なシェアではない。むしろ2024年に会社が示した主要元請け七社の推計外注市場約5,332億円に対し、同社の案件売上は約一%という物差しが実態に近い。この数字も会社独自の外注率仮定に依存し、競合各社の同条件のシェアは開示されていない。NTTデータ、TIS、SCSKなどの大手は元請けにも内製化の推進役にもなり得る。
2025年の顧客別売上では、日本IBMが約三割を占め、ニッセイ情報テクノロジーとSCSKが続く。生命保険の契約管理や金融の法令対応では基盤を一気に置き換えにくいものの、周辺開発とテストの自動化は進む。十年の中立では従来型請負の実質工数が七割強、準委任は六割強に縮むと見る。単価の名目上昇はあっても物価の伸びを十分には取り込めず、人月型の売上は減る構造である。
飲食店向け注文ソフトでは、Airレジ、スマレジ、USENなどが強く、ノバシステムの製品は差別化と販売力をまだ証明しきれていない。受付・顔認証でも機器メーカーと汎用AIサービスが競合する。自社製品の導入店舗数や個別市場シェアの開示がないため、国内飲食店数をそのまま販売余地にすることは避けた。今後十年は開発人員を増やす企業より、開発後の運用責任と業務成果を契約で引き受けられる企業が優位になると考える。
資本政策と M&A
資本政策は、2025年に始まった配当と2026年の自社株買いが転機となる。会社は配当性向三割を目安とし、2025年には業績の下方修正後も総額約1.47億円の配当を維持した。2026年の計画でも配当性向は約三分の一となる。自社株買いは複数回実施しているが、役員や従業員向け株式報酬・新株予約権との見合いもあり、取得額すべてを持続的な一株利益向上と考えるべきではない。
2025年にベトナムのVIET NHAT SOFTWAREへの持分取得を進めたが、帳簿価額は約0.14億円と小さく、今の企業価値を左右する大型買収ではない。今後の買収が技術者の人数を増やすだけなら、AI時代の収益性をむしろ下げかねない。開発の自動化を顧客の成果に変えられる資産を買えるかが、資本配分の質を決める。
2025年末にはTIS株を約5.09億円保有し、約4.50億円の含み益があった。持株会を通じた保有を純投資目的に変更し、売却も検討対象としているため、事業利益とは別に税引後の換金可能価値を見る。ただし含み益への税と売却の不確実性を忘れてはならない。上位十株主の保有比率は57.62%であり、支配が強く還元もない場合の半値評価は適用せず、留保現金が株主に戻る割合を慎重に考える。
2030年目標は売上150億円、営業利益22.5億円、利益率15%、請負案件比率60%、AIエンジニア100人である。ROE、DOE、総還元性向、自社株買い総額についての中期数値の約束はない。請負比率の拡大とAIの生産性向上が成果として確認されなければ、人数と受注の拡大だけで高い資本収益率を維持するのは難しい。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
金融や保険の基幹業務は、生成AIがコードを書けるからといって簡単には他社へ移せない。制度変更、保険約款、長年の例外処理に精通した技術者の価値は高く、ノバシステムは元請けの開発網に深く組み込まれている。顧客が求めるのは文字列としてのコードではなく、安全に動く仕組みである。品質保証と移行責任まで引き受ける請負案件では、AIによる生産性向上を粗利益率の改善として残せる余地がある。
2025年の営業減益は特定の不採算案件が主因であり、2026年上期の回復は手当ての効果を示している。会社は2030年に請負比率を六割へ高め、営業利益率15%を目指す。AIエンジニアを四十人から百人へ増やし、地方銀行の与信書類作成AIも受注した。顧客側のAI導入案件が増えれば、従来の開発作業が減っても新たな需要を取り込む可能性がある。
さらに、財務には極端な借入負担がない。2025年末の純投資TIS株には大きな含み益があり、保険関連の受注が一時的に落ちても採用や研究に資金を回せる。小規模な海外拠点の活用や選択的な買収によって高度案件への対応範囲を広げる道もある。開発工数を増やせない時代でも、一案件当たりの付加価値を高めれば、営業利益は現在より大幅に増える。
慎重な見方
顧客にとって本当に貴重なのは保険契約のデータと業務プロセスであり、その所有者はノバシステムではない。日本IBMやSCSKのような元請けは、多数の協力会社の中から工程ごとに発注先を選べる。主要三社で六割強という売上集中は、技術者不足の時期には効率的でも、AIエージェントで開発作業が減る時期には価格交渉力の弱さになる。準委任の月額単価が上がっても発注人月が半減すれば、売上は守れない。
会社が目指す請負比率の拡大も、採算が伴わなければ株主価値を壊す。2025年の請負売上総利益率は14.7%で、会社の適正水準35%と大きく離れた。AIの使い方を知らない既存ソフトを保守する案件で、仕様変更や安全対策の追加費用を顧客に転嫁できるとは限らない。採用を続けて固定費を増やした後に受注が縮めば、稼働率低下と見積り損失が重なる。
クラウドサービスは売上の二%未満で、顧客の継続率も不明だ。保険契約の記録の正本を保有する製品はなく、操作画面中心のサービスには別のAI代替圧力がかかる。AIエンジニアの人数目標や銀行向けAIの単発受注だけでは、収益構造の転換は証明されない。持ち合いから純投資へ移したTIS株も、売却して還元されるまで少数株主の自由な現金ではない。2030年の高い成長目標を実現する前提が崩れれば、十年後の稼ぐ力は大きく減る。
どちらに重みを置いたか
短期は強みを重く見る。2026年上期の正常化と保険分野の取引継続は、急な業績崩壊を想定しにくくする事実である。しかし十年で見ると、売上のほぼ全てが人月型であり、上位三社への売上集中と過去の請負採算の振れが、2030年計画の実現性に疑問を残す。やや悲観と悲観に計43%、楽観側に計26%を配したのは、事業固有の顧客集中と見積り損失の再発リスクがあるためだ。AIによる工数減少は既に中立の数量と長期成長率へ反映しており、同じ理由で資本コストや確率を再び重くすることは避けた。保有資産で下値は一定程度支えられるが、基準時価総額に対してはやや割高と判断する。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 3,514 円48 億円(+ 還元の換算額還元の合計 887 円12 億円)。 今の値に割り戻すと 2,144 円29 億円、今との差 −18.3%、 期待の年率 +6.0%(資本コスト 8.5%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 9% | 8,047 円110 億円 | 1,711 円24 億円 | +271.8% | +16.1% | 878 円12 億円 |
| やや楽観 | 17% | 5,988 円82 億円 | 1,311 円18 億円 | +178.0% | +12.2% | 1,241 円17 億円 |
| 中立 | 31% | 3,926 円54 億円 | 1,020 円14 億円 | +88.4% | +7.5% | 1,533 円21 億円 |
| やや悲観 | 27% | 1,420 円19 億円 | 546 円8 億円 | −25.1% | −3.3% | 531 円7 億円 |
| 悲観 | 16% | 1,071 円15 億円 | 291 円4 億円 | −48.1% | −7.0% | 218 円3 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,514 円48 億円 | 887 円12 億円 | +67.7% | +6.0% | 4,401 円60 億円 |
今の株価時価総額 2,625 円36 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 9% 楽観:業務成果を売る転換に成功 利益 8 億円 · PER 11.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 8,047 円110 億円
生命保険の契約管理と法対応が続く中、ノバシステムは設計から品質検証までを一括して引き受ける案件を増やす。元請けの日本IBMやSCSKは自動化されたコード生成だけでは規制や複雑な約款に責任を持てず、同社が積み上げた保険業務の知識に対価を払う。地方銀行の与信相談票作成AIのような案件が継続受注に発展し、顧客に必要な成果を売る割合が増える。
それでも従来型開発の作業量自体を増やすとは考えず、請負も準委任も実質工数は現在と同程度にとどまる。生産性向上分が利益率に残り、クラウドも契約継続率を改善する。2030年計画が示す高い利益率には届かなくても、大規模な買収に頼らず営業利益が二桁億円へ伸びる。新たな株式発行が小規模にとどまり、配当と自社株買いも適切に実行される筋書きだ。
- SI請負案件:数量 3,340(開発成果物の人月換算工数(人月/年、公開売上からの推計))× 価格 0.01(人月換算工数当たり契約売上(億円/人月、名目))→ 売上 45 億円・営業利益 8 億円。請負は現在の人月相当を上限、名目単価は物価上昇相当。品質保証とAI活用で利益率17%。
- SI準委任案件:数量 3,266(稼働人月相当(人月/年、売上からの推計))× 価格 0.01(人月当たり契約売上(億円/人月、名目))→ 売上 44 億円・営業利益 5 億円。準委任工数は増えず、名目単価のみ物価相当で上昇。自動化で利幅12%。
- クラウドサービス:数量 360(年間契約換算(件/年、推計であって実契約数ではない))× 価格 0.00(契約換算一件当たり年間売上(億円/件、名目))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。契約換算数は不変。操作画面型サービスの単価上限は1.15倍で利益率7%。
倍率:主力98.4%のSIにAIエージェント代替の長期名目g=0%を適用。資本コスト8.5%、十年後ROE約12.9%、弱い堀のRONIC=k+1/3×(ROE−k)とすると、正当化PER=(1−g/RONIC)/(k−g)=1/0.085=11.7647倍。AIで工数は2035年までに減少済みで、倍率・kで再減額せず理論上限を使用。保有有価証券と留保超過現金は別途調整する。
確率:専門業務の品質責任まで担うことで既存人月の減少をほぼ防ぎ、AIで生産性を上げながら高付加価値の請負へ移る。地方銀行案件の継続受注など、売上として確認できる案件の追加が必要なため可能性は限定的。
やや楽観 17% やや楽観:AIで粗利率を改善 利益 6 億円 · PER 11.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 5,988 円82 億円
保険会社のレガシーシステム更新は長く続き、大手元請けの協力会社として安定した案件を確保する。AIによる設計補助と試験自動化で必要工数は減るが、上流工程と品質検証を同社が引き受けるため、失う人月は限定される。請負案件の過去の見積り失敗は再発せず、業務知識を価格へ反映できる。
2030年に向けたAIエンジニアの育成や請負比率の引上げは進むものの、会社が掲げる売上150億円への到達は前提にしない。クラウドは細く成長するが依然として小規模である。利益率は改善し、金融機関からの新しいAI導入案件も受注するが、その対価はまだ成果報酬中心に転換しきれない。大きな買収や増資を避け、稼いだ利益を配当と現金蓄積の双方に充てられる十年となる。
- SI請負案件:数量 2,939(開発成果物の人月換算工数(人月/年、公開売上からの推計))× 価格 0.01(人月換算工数当たり契約売上(億円/人月、名目))→ 売上 39 億円・営業利益 6 億円。実質人月0.88倍、単価1.32倍。AIで見積り精度向上。
- SI準委任案件:数量 2,613(稼働人月相当(人月/年、売上からの推計))× 価格 0.01(人月当たり契約売上(億円/人月、名目))→ 売上 34 億円・営業利益 3 億円。実質人月0.80倍、単価1.29倍。高難度保守を維持。
- クラウドサービス:数量 342(年間契約換算(件/年、推計であって実契約数ではない))× 価格 0.00(契約換算一件当たり年間売上(億円/件、名目))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。実質契約0.95倍、単価1.13倍。大手競合と争う。
倍率:AIエージェント代替を受ける主力SIの長期名目成長率g=0%、資本コストk=8.5%、2035年ROE約10.0%。弱い堀を踏まえRONIC=k+1/3×(ROE−k)としても、正当化PER=(1−g/RONIC)/(k−g)=11.7647倍。開発工数の縮小はすでに数量に含み、倍率を手で再度割り引かない。
確率:不採算請負の正常化を定着させ、従来型の稼働量は減るものの単価交渉と開発自動化で利益を守る。ただし元請けからの発注縮小が完全に止まるほどの契約上の支配力はまだない。
中立 31% 中立:開発需要は残るが工数が縮む 利益 4 億円 · PER 11.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 3,926 円54 億円
保険契約の管理や金融機関のシステム更新は続くが、元請けはAIエージェントを使って従来の開発・テスト工数を減らす。ノバシステムは業務理解の深さで案件をつなぎ留めるものの、請負の仕事量は十年間で七割強、準委任の稼働量は六割強に減る。人手不足による単価上昇は続くが、顧客がAIの便益を求めるため、物価上昇をすべて売上単価に転嫁することはできない。
2025年の不採算請負は解消し、2026年に利益率は正常化する。その後は開発自動化による原価削減が効き、売上縮小の割には利益を保つ。クラウドは導入施設数が伸びず、引き続き小さな収益源にとどまる。大きなM&Aや事業売却は行わず、配当性向三割を基本に余剰を積み上げる。結果として自己資本は厚くなるが、保有する利益を大きく増やせないためROEは一桁台へ下がる。
- SI請負案件:数量 2,405(開発成果物の人月換算工数(人月/年、公開売上からの推計))× 価格 0.01(人月換算工数当たり契約売上(億円/人月、名目))→ 売上 31 億円・営業利益 4 億円。AIエージェント代替で人月0.72倍、単価1.30倍。
- SI準委任案件:数量 2,025(稼働人月相当(人月/年、売上からの推計))× 価格 0.01(人月当たり契約売上(億円/人月、名目))→ 売上 25 億円・営業利益 2 億円。AIエージェント代替で人月0.62倍、単価1.24倍。
- クラウドサービス:数量 288(年間契約換算(件/年、推計であって実契約数ではない))× 価格 0.00(契約換算一件当たり年間売上(億円/件、名目))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。操作画面型SaaS。契約換算0.80倍、単価1.10倍。
倍率:AIエージェント代替によって2035年の実質工数が請負0.72倍、準委任0.62倍になり、以後の長期名目成長率はg=0%。2035年ROE約6.6%はk=8.5%に届かないため成長による超過利益を付けず、PER上限は1/k=11.7647倍とする。資産や留保現金を別途計上し、歴史的な株価倍率は根拠に使用しない。
確率:下に寄せる理由:2025年に請負案件で採算が大きく悪化し、上位三社向け売上が約62%を占める。AI代替は既に数量を縮めて計上したが、工数単価と成果報酬の改善がまだ実績で裏付けられない。
やや悲観 27% やや悲観:元請けがAI効率を取り込む 利益 1 億円 · PBR 0.6 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,420 円19 億円
大手元請けは開発工程を社内のAIエージェントへ移し、協力会社には既存システムの難しい保守だけを残す。ノバシステムが築いた保険業務の知識は必要とされるが、発注先を決める権限は顧客にある。請負の実質仕事量は約半分、準委任はそれ以下へ縮み、技術者の稼働率と月額単価の双方が弱くなる。
請負案件の見積り損失は2025年ほど深刻でなくとも繰り返し発生し、会社が目指す高い請負比率は利益率の改善につながらない。クラウドはAirレジなど大手製品との競争に苦しみ、採用した人員や開発費の一部が固定負担になる。買収で人数を増やしても期待した相乗効果は得られず、配当は業績に連動して縮小する。営業利益は黒字を維持するが資本コストを賄うほどの稼ぐ力は残らない。
- SI請負案件:数量 1,837(開発成果物の人月換算工数(人月/年、公開売上からの推計))× 価格 0.01(人月換算工数当たり契約売上(億円/人月、名目))→ 売上 21 億円・営業利益 1 億円。元請け内製化で人月0.55倍、単価1.13倍。
- SI準委任案件:数量 1,470(稼働人月相当(人月/年、売上からの推計))× 価格 0.01(人月当たり契約売上(億円/人月、名目))→ 売上 16 億円・営業利益 1 億円。需要減で稼働人月0.45倍、単価1.10倍。
- クラウドサービス:数量 252(年間契約換算(件/年、推計であって実契約数ではない))× 価格 0.00(契約換算一件当たり年間売上(億円/件、名目))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。AIと競合製品で契約0.70倍、単価据置き。
倍率:2035年のROEは0.691億円÷43.0億円=約1.6%で、資本コスト8.5%を大きく下回る。事業の稼ぐ力は0.691億円÷8.5%=約8.13億円であり、売れる資産の税後回収見込15.3億円の方が大きい。したがって時価総額はこの換金可能資産の床15.3億円を採用し、2025年末の自己資本25.5億円に対する表示上のPBRは0.60倍となる。2035年までに積み上がった自己資本43.0億円には掛けず、稼ぐ力と換金資産も足し合わせない。過去の市場PBRは参照しない。
確率:下に寄せる理由:日本IBM、ニッセイ情報テクノロジー、SCSKの大口発注先がAIで内製化と工程短縮を進め、見積り競争が強まる。2025年に示された原価管理の弱さが、受注縮小局面で再発する可能性を重く見る。
悲観 16% 悲観:受託の役割を大きく失う 利益 −1 億円 · PBR 0.6 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,071 円15 億円
AIエージェントによる開発・試験の自動化が本格化し、日本IBMやSCSKなどの大口発注先が外注工程を大幅に減らす。ニッセイ情報テクノロジー向けも内製と標準ソフトへの移行が進み、従来の人月商売では仕事を取り戻せない。保険業務の専門性は残るものの、それを自社の独占的な記録基盤へ変えることはできず、工数の単価も名目で下落する。
請負では採算悪化が慢性化し、準委任は待機技術者の固定費を吸収できなくなる。クラウドは少数契約の維持費が売上を上回り、全社は営業赤字へ転じる。M&Aによる救済は想定せず、事業縮小に伴う退職費用や拠点整理が発生する。2025年末のTIS株、回収可能な売掛金、土地建物などを税金と処分費用を差し引いて処分できれば一定の資産価値は残るが、利益による成長価値はほぼ失われる。
- SI請負案件:数量 1,269(開発成果物の人月換算工数(人月/年、公開売上からの推計))× 価格 0.01(人月換算工数当たり契約売上(億円/人月、名目))→ 売上 12 億円・営業利益 0 億円。構造的失注で人月0.38倍、単価0.95倍。
- SI準委任案件:数量 1,110(稼働人月相当(人月/年、売上からの推計))× 価格 0.01(人月当たり契約売上(億円/人月、名目))→ 売上 10 億円・営業利益 0 億円。構造的失注で人月0.34倍、単価0.92倍。
- クラウドサービス:数量 180(年間契約換算(件/年、推計であって実契約数ではない))× 価格 0.00(契約換算一件当たり年間売上(億円/件、名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。契約0.50倍、単価0.87倍、維持費負担が重い。
倍率:2035年は営業赤字で純利益も赤字のため、将来利益に恒久的なPERを掛けず、2025年末の現金・売掛金・TIS株・不動産などを換金する税後資産価値を採用する。全負債と退職・処分費を引いた床は約14.7億円で、時価総額も14.7億円とする。表示上のPBRは現在の自己資本25.5億円に対し約0.5765倍。2035年の自己資本30.7億円や過去の市場PBRから逆算せず、残存利益と床を二重に加算しない。
確率:下に寄せる理由:元請けによる作業の内製化と自動化が同時に進み、元請け依存の強い当社は収益の柱を失う。保有株や物件をすぐ株主に配れるとは限らないため、資産処分価値にも相応の控除を施す。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
SI請負案件
保険・金融を中心とした仕様確定型システムの開発、納入と改修。会社の単一報告セグメント内を契約形態で分割した分析用区分。
| 数量開発成果物の人月換算工数(人月/年、公開売上からの推計) | 価格人月換算工数当たり契約売上(億円/人月、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 3,340 | 0.01 | 33 | 0 |
| 10 年後 中立 | 2,405 | 0.01 | 31 | 4 |
取り方:会社決算資料の請負案件売上3,340百万円を使用。人月単価100万円=0.01億円を仮定して3,340人月相当と逆算した。実際の請負は成果物で価格が決まり、会社は人月と単価を開示していないため契約量の代理指標であり実稼働ではない。会社公表の売上総利益率14.7%と全社販管費9.72億円を売上比率で配賦して営業利益0.08億円と推定した。AIエージェント代替の型は人月・工数。
SI準委任案件
顧客または元請けの開発・試験・運用チームに技術者を提供する継続案件。稼働人数と契約単価が収益を左右する。
| 数量稼働人月相当(人月/年、売上からの推計) | 価格人月当たり契約売上(億円/人月、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 3,266 | 0.01 | 33 | 4 |
| 10 年後 中立 | 2,025 | 0.01 | 25 | 2 |
取り方:会社決算資料の準委任売上3,266百万円を使用。平均100万円/人月を便宜上仮定し、3,266人月と逆算。これは開示された人月単価ではなく、外注パートナーや稼働条件を含む概算である。売上総利益率25.6%、全社販管費を売上比例配賦し営業利益3.63億円と推計した。請負との合計6,606人月は約551人年相当だが、正社員実数を表すものではない。AI代替型は人月・工数。
クラウドサービス
飲食店の注文支援Order Revolutionと受付・顔認証のアイウェルコ関連。初期導入・月額保守を含む小規模な自社サービス。
| 数量年間契約換算(件/年、推計であって実契約数ではない) | 価格契約換算一件当たり年間売上(億円/件、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 360 | 0.00 | 1 | 0 |
| 10 年後 中立 | 288 | 0.00 | 1 | 0 |
取り方:会社のクラウド売上108百万円を、仮の年間売上30万円/契約=0.003億円で割り360件相当と表した。実際の導入施設数、月額料金、初期導入収入の内訳は非開示であり、360件は推計上の等価単位である。請負・準委任の開示粗利率から全社粗利を逆算するとクラウドの粗利益は約マイナス0.31億円、売上比例配賦した販管費込みで営業損失約0.47億円となるが、部門別営業利益の会社開示ではない。AI型は画面操作中心の業務SaaSであり記録の正本ではない。
リスクと懸念
AI エージェント代替と工数商売の縮小
売上の約98%が請負・準委任の開発工数に依存する。生成AIがプログラミングだけでなく設計、試験、保守の工程を代替すれば、最終顧客が投資を続けても協力会社へ発注する人月は減る。会社のAIエンジニア育成と2025年の銀行向けAI受注は前進だが、工数減少に匹敵する成果報酬売上は金額で確認できない。中立の十年数量とg_longの両方に反映済みで、kの寿命には重ねていない。
大口三社への売上集中
日本IBM、ニッセイ情報テクノロジー、SCSKへの売上は2025年に計約62%を占めた。これらの元請けが協力会社の発注枠を減らし、自社のAI開発基盤や別の協力会社へ切り替えれば、保険契約そのものの需要が安定していても同社の売上は減る。顧客との直接契約と、主要三社以外から得る継続売上の拡大がなければ価格交渉力も改善しにくい。
請負案件の見積りと原価管理
2025年の請負売上総利益率は14.7%で、会社が適正と考える35%との開きが大きい。仕様変更や開発遅延を固定価格で引き受けた場合、売上が計上されても利益が出ない。会社は不採算案件の正常化を説明しているが、2030年へ向けて請負比率を引き上げる方針は同じリスクの総額を増やす可能性もある。受注損失引当金や案件別粗利を監視したい。
自社クラウドの規模と競争
Order Revolutionとアイウェルコ関連を合わせたクラウド売上は2025年に1.08億円であり、全社の約1.6%にすぎない。Airレジやスマレジなどの販売・決済基盤、汎用の受付・顔認証技術と競争する一方、契約数や解約率は確認できない。AIエージェントによる操作画面の省略で、ユーザー席数に基づく価格も圧迫される。まだ会社全体の評価を支える堀ではない。
保有TIS株の評価と現金化
2025年末の保有TIS株は貸借対照表計上額が約5.09億円で、原価との差で約4.50億円の含み益がある。市場価格の変動と税金を考えると額面どおりの株主価値ではない。純投資目的への振替で売却の選択肢は生まれたが、資金が株主に配当されることは約束されていない。事業利益による価値と保有株の価値を二重に数えてはいけない。
投資効率、株式報酬と人員固定費
採用・育成・事務所増床で人員を先に増やすと、受注が予想を下回った時には稼働率と利益率が同時に悪化する。新株予約権や譲渡制限付株式報酬により少数株主の持分が薄まる可能性もあり、自社株買いはそれを補填する役割を持つ。ベトナム関連出資や将来の買収も、単なる人員の買い集めならAI代替時代には資本収益率を下げうる。
今後の分かれ目
- 2026年下期以降、請負案件の売上総利益率が適正水準へ戻り、受注損失引当金の増加も止まったら
- 短期の収益力への確信を高め、楽観側の利益率を検証する。ただし、十年後の人月数量が縮まらない証拠とは区別する。
- 主要三社以外の顧客が増え、上位三社への売上集中が50%を切ったら
- 元請けの価格交渉力による圧迫が弱まるとみて、請負と準委任の単価および悲観確率を見直す。
- 2027年以降、AI関連案件の年間受注額と継続課金額が開示され、既存SI売上の減少を上回って増えたら
- 成果報酬やAI製品の収益化を事実で確認した上で、SI数量の下落幅とg_longの妥当性を再評価する。単なる技術者資格人数では上方修正しない。
- 請負・準委任の人月相当売上が減り、元請けからの受注量も継続して減少したら
- AI代替の進行が中立以上に速いと判断し、やや悲観と悲観の数量・利益率を重く見る。
- TIS株の売却と税後代金の配当・自己株買いによる株主還元が実行されたら
- 株式保有の換金価値を確定し、超過現金の回収率を75%から引き上げる余地が生まれる。保有中の評価益を売却益として二重計上しない。
- 2030年目標の売上150億円、営業利益22.5億円に向けて、増分投資利益率が資本コストを明確に上回って持続したら
- 会社の成果報酬化または新分野拡大が実証されたものと判断する。数量と単価のどちらが伸びたかを確認してから、長期の利益水準を上方修正する。
見ておくもの
- 請負・準委任別の売上、四半期売上総利益率と受注損失引当金
- 日本IBM、ニッセイ情報テクノロジー、SCSKの合計売上比率と新規直接顧客
- 会社が開示するAI受注額、成果報酬型契約比率、AI開発基盤の外販売上
- クラウドの契約・導入施設数、解約率、顧客当たり継続収入
- 2030年の請負比率60%、AIエンジニア100人、営業利益率15%への実績進捗
- 保有TIS株の売却、配当性向30%、自己株取得後の実質株数
- ベトナム関連投資や今後の買収と、その後の増分ROIC
倍率と資本コストの決め方
基準株価と時価総額約39.06億円は最後の比較だけに使った。報告単一セグメントを契約形態別に三分し、売上から逆算した人月相当と自社クラウドの契約等価単位を明示した。中立の実質工数は請負0.72倍、準委任0.62倍、画面型SaaS0.80倍とし、単価はそれぞれ名目1.30倍、1.24倍、1.10倍とした。物価3%の効果を数量に混ぜていない。PERは過去の市場倍率ではなく、k8.5%、g_long0%、RONICから導く理論上限約11.76倍を楽観から中立に使用した。やや悲観は稼ぐ力約8.13億円を超える税後換金床15.3億円、悲観は撤退費を厚くした床14.7億円を採用した。PBRは今の自己資本25.5億円で表示し、10年後の留保利益に掛けていない。10年間の途中の還元は中間時点で、最終時価総額は10年後から割り引く。留保利益のうち事業に不要となる額は戻り方75%で評価し、TIS株の配当と換金額はholdings調整で二重計上を避ける。2027年度開始の新リース会計は帳簿上の負債の形を変えうるが、事務所家賃を利益で既に費用処理した前提を維持する。基準株価への逆算は行っていない。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%に循環+0.5%と価格決定力+0.5%、純現金・寿命ゼロを加えて8.5%。上乗せの財務危機には該当しない。