結論
IIJは、企業や個人にネット接続とクラウド、システム構築・運用を提供する国内の老舗だ。筆者の結論は、事業の質は高いが今の値段は先を織り込みすぎで、本質価値は今より約3割低いというものだ。
稼ぎの土台は月額課金である。売上の約8割が毎月積み上がるストック収入で、法人向けのモバイル回線は約357万に達した。景気が悪くなっても解約が少なく、そこが一番の強みだ。最近はこれに大型のシステム構築が重なり、受注残は1,796億円まで膨らんでいる。
ただし利益の質には注意がいる。大型案件の中身は機器の持ち込みが多く、粗利率は薄い。インフラ費用も上がっている。売上が伸びても利益率は1割前後で頭打ちになりやすい。
筆者は、利益が着実に伸びる点を高く買う。それでも今の株価はPER27倍で、高い成長がずっと続く前提の値付けだ。10年後の本質価値は今を約3割下回る。総合ではやや割高と見る。
分かれ目は、AI向け基盤と官公庁案件で稼ぐ力を保てるか、それとも海外の巨大クラウドとAIによるシステム開発の効率化に利益を削られるかだ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、IIJは悪くない会社だ。顧客から毎月お金が入り、借金は少なく、利益は着実に伸びている。ただし、買うなら値段が全てを決める。
オーナーとして手元に残る利益を考える。営業利益のうち、ストックで入る部分は現金になりやすい。しかしSIの機器案件や、データセンターの建設は、稼いだお金をまた飲み込む。株主のものになる利益は、見かけの利益より少ない。
堀の幅は普通だ。信頼と切り替えの難しさは本物だが、価格を決める力はない。モバイルは仕入れを通信会社に握られ、クラウドは海外3社に価格で押される。10年後も存在はしているだろうが、今より広い堀を持っているとは言い切れない。
経営は堅実で、資本の使い方に大きな疑問はない。借金に頼らず、投資は自分の稼ぎの範囲で行っている。
安全域の点では、今の値付けが気になる。利益の伸びを織り込んで、すでに高い倍率が付いている。楽観的な筋書きが実現しても、払った値段を大きく上回る見返りは期待しにくい。逆に、悲観の筋書きでは損が大きい。上振れの余地より下振れの幅のほうが大きく、筆者はここに安全域を見ない。
何で稼ぐ会社か
IIJの稼ぎは、ネットワークサービスとシステムインテグレーション(SI)の2本柱だ。ほかに銀行ATMの運営があるが、売上の1%に満たない。
ネットワークサービスは売上の約5割を占める。企業向けのインターネット接続、データセンター、クラウド、セキュリティ、運用の請負が並ぶ。モバイルも大きい。回線は合計で約640万あり、うち法人が357万、個人向けIIJmioが143万だ。残りは他社にモバイル網を貸すMVNEで、顧客は212社にのぼる。法人の回線は機器に組み込むIoT用が多く、1回線の単価は小さいが数が増えている。
SIは売上の5割弱を占め、企業や官公庁のシステムを作り、作ったあとの運用保守まで請け負う。構築は一度きりの売上だが、運用保守は月額で続く。会社は構築中心から運用中心へ重心を移している。
この2本柱を貫くのは「いったん入れたら替えにくい」という性質だ。ネットワークも基幹システムも止められないため、顧客は簡単に乗り換えない。だから売上の8割が毎月入る形になる。
一方で、SIには機器を仕入れて納める案件が混じる。売上は大きく見えるが、利益は薄い。ここが全体の利益率を押さえる。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねしにくい強みは、信頼と運用の積み重ねにある。IIJは1990年代に日本で最初期の商用ネット接続を始めた会社で、止まらない網を長く運用してきた。大企業や官公庁は、この実績を理由に選ぶ。切り替えには大きな手間と危険が伴うため、一度つかんだ顧客は離れにくい。
ただし、堀は広くない。ネットワークもクラウドも、基本は価格競争にさらされる。モバイルはドコモ・KDDI・ソフトバンクなど通信会社から回線を借りて売る立場で、仕入れ値を握られている。ドコモの回線品質の問題でも、会社は通信会社との協議を続けるしかないと語っている。
資本効率は悪くない。自己資本利益率は15%台で、資本コストを大きく上回る。借金も少ない。経営は堅実だ。
弱みは二つある。利益率が1割前後と低いこと。そして大型のSI案件に利益が左右されやすいことだ。直近は機器の持ち込みが多い案件で、SIの粗利率が下がった。
筆者は、強い堀と認めるには早いと考える。信頼という無形の資産は本物だが、価格を自由に決められるほどの力はない。普通の堀として扱う。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の企業向けITは、人手不足とシステムの作り替えで、需要は底堅い。特に官公庁と金融は、古い仕組みを新しくする投資を続けている。IIJのSI受注残は1年前より4割増えた。
クラウドは、アマゾン、マイクロソフト、グーグルの3社が国内でも大きなシェアを握る。IIJは価格では勝てないため、国産であること、専用線や運用までまとめて任せられること、官公庁が求める安全の基準を満たすことで勝負している。さくらインターネットなどの国産勢との競争もある。
AIは両刃の剣だ。AI用の計算機を置くデータセンターは、電気と冷却の設備が要り、IIJの白井や松江の拠点はその受け皿になる。シンガポールでは、GPUの基盤で120億円を受注した。一方で、AIがプログラムを書けば、システム開発の人月が減る。SI売上の中身が変わる可能性がある。
モバイルは、法人のIoTで伸びる。工場や車、見守り機器に回線を組み込む動きが続く。個人向けは、大手の安い料金プランとの競争が続き、伸びは落ち着いている。
景気との関係は中くらいだ。ストックの比率が高いため、不況でも売上は崩れにくい。ただ、設備投資を先送りする企業が増えると、構築案件は急に細る。リーマン級の不況では、SIが先に落ちる。
資本政策と M&A
還元は、利益の3割強を配当に回す形だ。2026年3月期は配当を引き上げた。増配の余地は十分ある。自己資本比率は45%台、純負債はほぼゼロで、財務は軽い。
お金の使い道は、データセンターが中心だ。白井の3期棟は2026年度の運用開始を予定し、年間の設備投資は300億円前後を見込む。AI向けの需要が来たときに受け皿を持つ、という考えだ。M&Aは小粒の買収が中心で、大型の買収で価値を壊す動きは見えない。
資本関係では、2023年にNTTグループが保有株の半分を売り、NTTとKDDIが1割強ずつで並ぶ形になった。IIJはNTTの持分法適用から外れ、独立色が強まった。2社が並ぶことで、どちらか一方に染まらない状態になっている。
筆者は、この二大株主が将来の再編の火種になりうると見ている。10年以内に買収される確率の推計は17%ほどだ。ただ、創業者の鈴木幸一氏が会長を続けるなど、経営の独立を重んじる空気は強い。買収を前提にした値付けはしない。
減価償却は物価で増やさない。今ある設備の償却は取得した時の値段のままで、増えるのは更新と新規の分だけだ。償却は今の327億円が10年後に約 344億円。更新投資は価格の上昇で膨らみ、足りない分は借入になって利払い(3.5%)が増える。会計の利益と現金の動きは同じ向きに動かない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
IIJは、いま最も条件のいい場所にいる。SI受注残は1,796億円と1年前の1.4倍で、売上が数年先まで見えている。シンガポールでGPU基盤を120億円で受注したことは、AI時代の基盤を海外でも任される実力の証明だ。国内では、官公庁向けに18年契約という長い大型案件を取った。
稼ぎの質も高い。売上の8割が毎月入るストックで、法人モバイルは357万回線まで増えた。回線が増えるほど運用の売上も積み上がり、解約が少ないため利益が読みやすい。会社は、インフラ費用の上昇を受けてサービス価格の改定を検討している。顧客が替えにくい以上、値上げは通りやすい。
AIは追い風だ。AIが生む計算需要は、電力と冷却を備えたデータセンターを必要とし、IIJは白井・松江に受け皿を作っている。サイバー攻撃もAIで巧妙になるため、セキュリティの運用請負は増える一方だ。
財務は軽く、自己資本利益率は15%台と高い。利益を再投資しても資本効率が落ちにくい。10年かけて運用を積み上げれば、利益率は1割台前半まで上がる余地がある。成長が続き、高い資本効率が保たれるなら、今のPERは高すぎない。
慎重な見方
今のPER27倍は、高い成長がずっと続く前提だ。実際の利益率は1割前後で、粗利率はむしろ下がっている。直近1四半期のSIは、機器を納めるだけの案件で粗利率が11%台まで落ちた。売上が27%増えても、営業利益は9%しか増えていない。
売上を押し上げた大型案件は、繰り返し来る保証がない。GPUの基盤もシンガポールの電子商取引基盤も、一度きりの構築だ。終われば売上は細る。会社の通期予想が据え置かれたのは、利益の伸びが売上に追いついていないことの表れだ。
構造の問題もある。クラウドはアマゾン・マイクロソフト・グーグルの3社が価格を決める。モバイルはドコモなど通信会社が仕入れを握る。IIJは両方に挟まれ、価格を自由に決められない。AIがプログラムを書くようになれば、SIの人月が減り、人を並べて売るやり方そのものが危うくなる。
さらに、データセンターは電力と冷却に巨額の投資が要る。AI需要が期待より小さければ、設備が先に重荷になる。景気が崩れれば、企業はまず構築案件を止める。堀は広くなく、利益の質は見かけより薄い。それなのに、市場は優良株の倍率を払っている。
どちらに重みを置いたか
ストックの厚みと受注残は本物で、事業が崩れる確率は低い。一方で、利益率が頭打ちで、倍率が高い点は動かしがたい。強気の言い分は事業の質に関して正しく、慎重な言い分は値段に関して正しい。
本質価値を決めるのは倍率なので、確率は中立を厚く置きつつ、10年では悲観側をやや厚くした。AIによる開発の効率化と海外クラウドとの競争は、一度起きると取り返しにくいからだ。結果として10年の本質価値は今を3〜4割下回り、総合では割高になる。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 5,667 円1.01 兆円(+ 配当配当と自社株買いの合計 854 円1,515 億円)。 今の値に割り戻すと 3,416 円6,060 億円、今との差 −4.4%、 期待の年率 +6.2%(資本コスト 7.2%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 9,810 円1.74 兆円 | 1,073 円1,904 億円 | +204.6% | +11.8% | 1,088 円1,931 億円 |
| やや楽観 | 22% | 8,378 円1.49 兆円 | 999 円1,772 億円 | +162.4% | +10.1% | 2,063 円3,659 億円 |
| 中立 | 31% | 7,027 円1.25 兆円 | 920 円1,632 億円 | +122.4% | +8.3% | 2,464 円4,370 億円 |
| やや悲観 | 23% | 2,631 円4,666 億円 | 744 円1,319 億円 | −5.6% | −0.6% | 776 円1,377 億円 |
| 悲観 | 14% | 428 円759 億円 | 503 円893 億円 | −73.9% | −12.6% | 130 円231 億円 |
| 加重平均 | 100% | 5,667 円1.01 兆円 | 854 円1,515 億円 | +82.5% | +6.2% | 6,521 円1.16 兆円 |
今の株価時価総額 3,573 円6,338 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.2% を下回るほど割高。
楽観 10% AI基盤の担い手として地位を固める 利益 800 億円 · PER 20.9 倍 · 株価時価総額 9,810 円1.74 兆円
10年後、IIJは国産のAI・クラウド基盤の中核の一つになっている。白井・松江のデータセンターは高い稼働率で回り、官公庁や金融のシステムの運用を長期で請け負う。セキュリティと運用の請負が積み上がり、売上の大半が月額課金になる。値上げが通る地位を築き、利益率は1割台半ばに届く。回線は法人IoTを中心に増え続ける。海外の巨大クラウドとは棲み分けが進み、国産・運用の厚みで選ばれる。大株主のNTTとKDDIは安定株主として働き、経営の独立も保たれる。成長しながら資本効率も落ちない、最良の10年である。競合では、国産クラウド勢のなかでも運用の厚みが際立ち、官公庁の入札で有利になる。人材の採用と育成も順調に進み、人手不足の中でも案件を取りこぼさない。M&Aは小粒の買収で、専門のセキュリティ会社を取り込む程度にとどまる。減価償却は物価で増やさず、今ある設備は取得原価のまま、更新と新規の投資だけ新しい値段で35年に按分した。償却は今の327億円が10年後に約 344億円(物価で一律に増やすと約 234億円)。営業利益は +110億円。投資は内部の資金で賄え、借入は増えない。
- ネットワークサービス(接続・DC・クラウド・モバイル・運用):数量 1,183(モバイル回線数(万回線)を契約基盤の代理とした数量)× 価格 3.91(1回線あたりのネットワークサービス売上(万円/年))→ 売上 4,630 億円・営業利益 781 億円。回線1183万×3.91万円、営業利益率16.9%・償却は物価で増やさず按分(10年後 344億円)
- システムインテグレーション(構築・運用保守・機器販売):数量 23.8(SIの作業量(万人月。機器・外注を含む売上を標準単価で割り戻した値))× 価格 152(1人月あたり売上(万円。機器・外注込み))→ 売上 3,614 億円・営業利益 361 億円。23.8万人月×152万円、営業利益率10.0%
- ATM運営(トラストネットワークス):数量 60.0(ATM取扱件数(百万件/年))× 価格 36(取扱100万件あたりの手数料収入(百万円))→ 売上 22 億円・営業利益 8 億円。60百万件×手数料36(百万円/百万件)、営業利益率38%
倍率:事業の純利益 800 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 20.8% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 14.0%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 20.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 20.9 倍。全体の PER 20.94 倍、時価総額 16,752 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:AI基盤と運用の積み上げが長く効く最良の道。ただし価格を決める力が弱いため、確率は1割に留めた。
やや楽観 22% 運用の積み上げで利益率が上がる 利益 688 億円 · PER 20.6 倍 · 株価時価総額 8,378 円1.49 兆円
SIは構築から運用保守へ重心が移り、月額売上の比率がさらに上がる。官公庁と金融の長期契約が積み上がり、利益の波が小さくなる。ネットワークサービスは法人IoTとセキュリティで伸び、価格は物価をやや上回る。AI向けのデータセンターも一定の契約を取る。利益率は1割台前半まで上がる。海外クラウドとは競争が続くが、国産・運用の厚みで居場所を守る。堀は今より少し広くなる。競合では、アマゾンなど海外勢が価格で攻めても、運用と安全の基準で国産が選ばれる場面が増える。人材は採用に苦労するが、運用の自動化で補える。M&Aは小粒の買収にとどまり、還元は利益の4割ほどで続く。減価償却は物価で増やさず、今ある設備は取得原価のまま、更新と新規の投資だけ新しい値段で35年に按分した。償却は今の327億円が10年後に約 344億円(物価で一律に増やすと約 242億円)。営業利益は +102億円。投資は内部の資金で賄え、借入は増えない。
- ネットワークサービス(接続・DC・クラウド・モバイル・運用):数量 1,087(モバイル回線数(万回線)を契約基盤の代理とした数量)× 価格 3.83(1回線あたりのネットワークサービス売上(万円/年))→ 売上 4,163 億円・営業利益 685 億円。回線1087万×3.83万円、営業利益率16.4%・償却は物価で増やさず按分(10年後 344億円)
- システムインテグレーション(構築・運用保守・機器販売):数量 22.0(SIの作業量(万人月。機器・外注を含む売上を標準単価で割り戻した値))× 価格 150(1人月あたり売上(万円。機器・外注込み))→ 売上 3,294 億円・営業利益 297 億円。22.0万人月×150万円、営業利益率9.0%
- ATM運営(トラストネットワークス):数量 60.0(ATM取扱件数(百万件/年))× 価格 36(取扱100万件あたりの手数料収入(百万円))→ 売上 22 億円・営業利益 8 億円。60百万件×手数料36(百万円/百万件)、営業利益率38%
倍率:事業の純利益 688 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 19.7% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 13.5%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 20.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 20.6 倍。全体の PER 20.63 倍、時価総額 14,193 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:受注残と運用の積み上げが続く、強めの道。実績に沿った延長として置いた。
中立 31% ストックを積み、物価並みに稼ぐ 利益 581 億円 · PER 20.3 倍 · 株価時価総額 7,027 円1.25 兆円
10年間、ネットワークサービスは回線と利用の増加で実質的に年4%台で伸び、価格は物価並みに上がる。SIは運用保守が積み上がり、構築の波を和らげる。AIは使う側にも売る側にもなるが、利益率を大きく変えるほどではない。営業利益率は1割強のまま、利益は売上の伸びとほぼ同じペースで増える。データセンター投資は自己資本の範囲で続き、還元も維持する。堀は今と同じ普通の広さで、IIJは堅実な老舗であり続ける。競合との力関係は大きく変わらない。人材の採用は難しい局面が続くが、賃金の上昇は価格に転嫁できる。M&Aは小粒の買収が中心で、大型の再編は起きない。還元は利益の4割ほどで続き、自己資本も同じペースで積み上がる。減価償却は物価で増やさず、今ある設備は取得原価のまま、更新と新規の投資だけ新しい値段で35年に按分した。償却は今の327億円が10年後に約 344億円(物価で一律に増やすと約 250億円)。営業利益は +94億円。投資は内部の資金で賄え、借入は増えない。
- ネットワークサービス(接続・DC・クラウド・モバイル・運用):数量 992(モバイル回線数(万回線)を契約基盤の代理とした数量)× 価格 3.74(1回線あたりのネットワークサービス売上(万円/年))→ 売上 3,712 億円・営業利益 577 億円。回線992万×3.74万円、営業利益率15.5%・償却は物価で増やさず按分(10年後 344億円)
- システムインテグレーション(構築・運用保守・機器販売):数量 20.1(SIの作業量(万人月。機器・外注を含む売上を標準単価で割り戻した値))× 価格 147(1人月あたり売上(万円。機器・外注込み))→ 売上 2,961 億円・営業利益 252 億円。20.1万人月×147万円、営業利益率8.5%
- ATM運営(トラストネットワークス):数量 60.0(ATM取扱件数(百万件/年))× 価格 35(取扱100万件あたりの手数料収入(百万円))→ 売上 21 億円・営業利益 8 億円。60百万件×手数料34(百万円/百万件)、営業利益率36%
倍率:事業の純利益 581 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 18.5% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 12.9%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 20.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 20.3 倍。全体の PER 20.26 倍、時価総額 11,771 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:現在の構造をそのまま延ばした中心の道。確率は3割ほどに置いた。
やや悲観 23% 価格競争と開発効率化で、伸びが鈍る 利益 340 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 2,631 円4,666 億円
10年のうちに、AIがプログラムを書く量が増え、SIの人月が減る。単価の高い案件は残るが、構築の売上全体は伸びなくなる。ネットワークサービスは、海外の巨大クラウドとの価格競争で単価が物価に追いつかなくなり、モバイルも通信会社への仕入れ依存が続く。データセンター投資は回収が遅れ、利益率は6〜7%の低い水準まで下がる。事業は残るが、今の優良さは薄れ、成長は物価を下回る。配当は維持されるが、増配のペースは物価を下回る。競合では、さくらインターネットなど国産勢との価格競争も重なる。大株主のNTTとKDDIは動かないが、成長の鈍化で株式市場の評価は下がる。買収の話が出ても、価格は低い水準になる。減価償却は物価で増やさず、今ある設備は取得原価のまま、更新と新規の投資だけ新しい値段で35年に按分した。償却は今の327億円が10年後に約 344億円(物価で一律に増やすと約 296億円)。営業利益は +48億円。投資は内部の資金で賄え、借入は増えない。
- ネットワークサービス(接続・DC・クラウド・モバイル・運用):数量 832(モバイル回線数(万回線)を契約基盤の代理とした数量)× 価格 3.35(1回線あたりのネットワークサービス売上(万円/年))→ 売上 2,788 億円・営業利益 355 億円。回線832万×3.35万円、営業利益率12.7%・償却は物価で増やさず按分(10年後 344億円)
- システムインテグレーション(構築・運用保守・機器販売):数量 16.4(SIの作業量(万人月。機器・外注を含む売上を標準単価で割り戻した値))× 価格 132(1人月あたり売上(万円。機器・外注込み))→ 売上 2,161 億円・営業利益 130 億円。16.4万人月×132万円、営業利益率6.0%
- ATM運営(トラストネットワークス):数量 50.0(ATM取扱件数(百万件/年))× 価格 33(取扱100万件あたりの手数料収入(百万円))→ 売上 17 億円・営業利益 5 億円。50百万件×手数料33(百万円/百万件)、営業利益率30%
倍率:事業の純利益307億円・事業のROE9.9%。RONIC=k7.25%+残る割合1/2×(ROE9.9%−k7.25%)=8.6%、長期の成長率g3.7%から正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)=16.1倍。堀は並み。上限は事業307億円×16.1倍+余った現金0億円=4,944億円。成長と堀の持ちを低く見るので、上限を下回らせる。やや悲観は上限の7.5割に置き、時価総額3,708億円、全体のPERに直して12.1倍。
確率:AIによる効率化と価格競争は、10年では現実味が高い。構造的な負けの手前の道として、やや厚く置いた。
悲観 14% 構造的に負け、優良ではなくなる 利益 110 億円 · PER 6.9 倍 · 株価時価総額 428 円759 億円
10年のうちに、AIによる開発の効率化でSIの需要が大きく縮み、人月で稼ぐモデルが崩れる。クラウドは海外3社へ一本化が進み、IIJのネットワークとデータセンターは価格競争で利益が出なくなる。AI向けの設備投資が回収できず、減損や固定費の重さが残る。モバイルは仕入れ値の上昇を価格に転嫁できない。ストックの売上は残るため事業は続くが、利益率は数%まで下がり、優良とは言えなくなる。これが構造的に負けた姿である。競合に押され、主要顧客の一部が海外クラウドへ移る。人材の流出も起き、運用の品質を保つ費用だけが残る。大株主のNTTかKDDIが他社と組んで経営に関わる可能性も出るが、そのときの買収価格は自己資本に近い水準にとどまる。還元は利益の半分を超え、配当を守ることが重荷になる。減価償却は物価で増やさず、今ある設備は取得原価のまま、更新と新規の投資だけ新しい値段で35年に按分した。償却は今の327億円が10年後に約 344億円(物価で一律に増やすと約 353億円)。営業利益は −9億円。投資は内部の資金で賄え、借入は増えない。
- ネットワークサービス(接続・DC・クラウド・モバイル・運用):数量 640(モバイル回線数(万回線)を契約基盤の代理とした数量)× 価格 2.79(1回線あたりのネットワークサービス売上(万円/年))→ 売上 1,787 億円・営業利益 116 億円。回線640万×2.79万円、営業利益率6.5%・償却は物価で増やさず按分(10年後 344億円)
- システムインテグレーション(構築・運用保守・機器販売):数量 11.2(SIの作業量(万人月。機器・外注を含む売上を標準単価で割り戻した値))× 価格 116(1人月あたり売上(万円。機器・外注込み))→ 売上 1,289 億円・営業利益 39 億円。11.2万人月×116万円、営業利益率3.0%
- ATM運営(トラストネットワークス):数量 35.0(ATM取扱件数(百万件/年))× 価格 30(取扱100万件あたりの手数料収入(百万円))→ 売上 11 億円・営業利益 2 億円。35百万件×手数料30(百万円/百万件)、営業利益率20%
倍率:事業の純利益116億円・事業のROE5.0%。ROEがk7.25%以下なので、ためた利益は額面に満たない価値で、PERは1÷k=13.8倍まで。上限は事業116億円×13.8倍+余った現金0億円=1,600億円。構造的に負けて利益が実質で縮み続ける筋書きなので、稼ぐ力(事業の純利益÷k)の全額は見ず、縮む分を割り引いてその5割に置く。悲観は上限の5.0割に置き、時価総額800億円、全体のPERに直して6.9倍。
確率:AIによる開発効率化と海外クラウドへの一本化が同時に起きる、構造的に負ける道。ストックの厚みで崩れにくいが、10年では無視できず1割強に置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
ネットワークサービス(接続・DC・クラウド・モバイル・運用)
法人・個人向けのネット接続、クラウド、データセンター、セキュリティ、モバイル(IIJmio・法人IoT・MVNE)を月額で提供する、売上の約5割の事業。
| 数量モバイル回線数(万回線)を契約基盤の代理とした数量 | 価格1回線あたりのネットワークサービス売上(万円/年) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 640 | 2.79 | 1,787 | 215 |
| 10 年後 中立 | 992 | 3.74 | 3,712 | 577 |
取り方:ネットワークサービス売上1,787億円を、年度末のモバイル回線639.7万(法人357.3万・IIJmio143.0万・MVNE136.6万)で割ると約2.79万円/回線。モバイル以外(法人の接続・DC・クラウド・運用請負・セキュリティ)の売上も回線基盤に連動して伸びる、という近似で置いた。営業利益は粗利率27.1%から販管費を引いた約12%を推定(セグメント別の利益は開示が無い)。 数量は実物(モバイル回線数。年 4.5% で 1.55 倍)。価格は物価並み。
システムインテグレーション(構築・運用保守・機器販売)
企業・官公庁のシステムを構築し、運用保守まで請け負う、売上の5割弱の事業。構築は一過性、運用保守は月額。
| 数量SIの作業量(万人月。機器・外注を含む売上を標準単価で割り戻した値) | 価格1人月あたり売上(万円。機器・外注込み) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 14.9 | 110 | 1,637 | 121 |
| 10 年後 中立 | 20.1 | 147 | 2,961 | 252 |
取り方:全体売上3,454億円からネットワークサービス1,787億円とATM30億円を引いた約1,637億円をSIとした(推定)。人月の開示は無いため、機器・外注込みで1人月110万円と仮置きし、14.88万人月とした。営業利益は粗利率が13%台で販管費を負担して約7%(約121億円)と推定。
ATM運営(トラストネットワークス)
銀行ATMとそのネットワークを構築・運営し、利用手数料を得る小さな事業。現金離れで細る。
| 数量ATM取扱件数(百万件/年) | 価格取扱100万件あたりの手数料収入(百万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 30 | 30 | 12 |
| 10 年後 中立 | 60.0 | 35 | 21 | 8 |
取り方:売上30億円・利益率約41%(有価証券報告書のセグメント)。件数と手数料は開示が無く、1億件で売上30億円になる推定値(100万件あたり30百万円)。手数料は銀行との契約で決まり物価に連動しにくく、現金離れで件数が減るため、価格の伸びは物価より低く置いた。全社に占める割合は1%未満で、結論には効かない。
リスクと懸念
大型SI案件の波と利益率の低下
GPU基盤や官公庁向けなど大型案件が売上を押し上げているが、機器を納めるだけの案件が多く、SIの粗利率は11%台に落ちた。案件が一巡すれば売上が細り、利益率は戻らないおそれがある。機器を納めるだけの案件は売上の見栄えは良いが、利益に残る分は小さい。受注残が積み上がっていても、中身の質を見ないと利益の見通しを誤る。
海外の巨大クラウドとの価格競争
アマゾン・マイクロソフト・グーグルがクラウドの価格を決める。IIJは国産と運用の手厚さで差をつけるが、価格差が開けば顧客は流れる。ネットワークサービスの単価が物価に追いつかなくなる危険がある。3社が値決めを握る市場では、IIJは価格の受け手になりやすい。値上げが通らない年が続けば、利益率は下がる一方になる。
通信会社に仕入れを握られるモバイル
モバイルはドコモなどから回線を借りる立場で、仕入れ値と回線品質を自分では決められない。回線品質の問題でも、会社は協議を続けるしかないと述べている。MVNEの顧客が自前の回線に移る動きも気になる。回線を借りる限り、IIJの利益は通信会社の料金設定に縛られる。個人向けの競争が厳しいことも重なり、利益の伸びは限られる。
AIによるシステム開発の効率化
AIがプログラムを書く量が増えれば、人月で売るSIの需要は減る。単価の高い案件は残るが、構築の売上全体が縮み、人を並べて売るモデルが崩れる可能性がある。人月で売る仕組みが続く間は、人手不足と相まって単価が上がるが、AIの普及で一気に崩れる懸念がある。変化は速い。
データセンター投資の重さ
白井の3期棟など、電力と冷却に巨額の設備投資が続く。AI需要が期待より小さければ、設備が先に重荷になる。年300億円前後の投資は自己資本利益率を下げる方向に働く。設備は一度作ると簡単には減らせない固定費になる。需要が鈍る局面では、稼働率の低下が利益に直撃する。
サイバー攻撃と信用
止まらない網が売り物の会社なので、大規模な障害や情報漏えいは信用に直結する。会長はAIを使った攻撃の巧妙化を重い懸念として挙げている。安全が最大の売り物で、一度の大きな事故が顧客の信頼を失わせる。損害賠償や契約の打ち切りという形で業績に響く。
株主構成の変化
NTTとKDDIが1割強ずつで並ぶ。どちらかが保有を増やす、または他社が割って入ると、経営の独立性が変わる。買収の確率は推計17%ほどで、値段には買収の可能性は織り込まない。大株主が動けば、経営の方向が変わる。買収の可能性は株価を支える面もあるが、本質価値の計算には入れていない。
今後の分かれ目
- SI受注残が減り始め、機器の持ち込みでない構築案件の粗利率も下がり続けたら
- 利益の質が悪化しているとみて、やや悲観・悲観の確率を上げる。
- サービス価格の改定(値上げ)が実際に通り、ネットワークサービスの粗利率が回復したら
- 価格を決める力があるとみて、楽観側の確率を上げ、堀を強いと見直す余地がある。
- 白井・松江のデータセンターが、AI向けの大口契約でほぼ埋まったら
- 設備投資が回収できるとみて、やや楽観側へ寄せる。
- NTTかKDDIが保有比率を大きく動かす、または公開買付けが出たら
- 独立経営の前提が変わる。買収価格が本質価値を上回るかを確かめる。
- AIによる開発の効率化で、SIの人月単価・件数が目に見えて下がったら
- 10年の悲観の確率を上げる。
- 景気後退で企業のIT投資が止まり、構築案件の受注が急減したら
- 悲観に近づく。ストック売上は残るため、売上の崩れは構築部分に限られる。
見ておくもの
- SI受注残とSIの粗利率(機器案件を除いた構築の利益率)
- ネットワークサービスの粗利率とサービス価格の改定の実績
- 法人IoT回線とMVNE顧客の回線数の推移
- 白井・松江のデータセンターの稼働率とAI向けの契約
- NTT・KDDIの保有比率と、大株主の動き
- 年間の設備投資額と自己資本利益率
倍率と資本コストの決め方
ストック(月額課金)とSI・その他に分け、契約数×単価で積んだ。純負債はほぼゼロで余った現金は立てていない。倍率は式の上限(正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)、k7.25%、堀は並みで残る割合1/2)に対する位置で置いた。楽観は上限の8.5割、やや楽観8割、中立7割、やや悲観7.5割、悲観は事業の純利益÷kの稼ぐ力(と純現金)の5割。今のPERや同業の倍率、谷の倍率は見ていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 16.53→20.94 倍・やや楽観 PER 15.12→20.63 倍・中立 PER 12.76→20.26 倍)。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。