結論
電算は長野県を拠点に、自治体の住民記録や税務を支える総合行政システム「Reams」を供給する情報サービス会社である。長く持つ株主の見方では、今の時価総額157億円はおおむね適正で、十分な安全域があるとまでは言えない。10年間の事業と還元を資本コストで割り戻した価値は約171億円で、時価総額を約9%上回る水準にある。
同社が2026年3月期にあげた営業利益63億円は、自治体のシステム標準化を一斉に完了させた特需によって跳ね上がった。会社自身が翌期に減益を見込む以上、その最高益を永久に稼ぐ前提では評価できない。ただし、176団体で標準仕様版への移行を終えた実績は消えない。住民情報を保持し、法改正に合わせて動き続ける仕組みは、入れ替える側にも相当の手間がかかる。
反対に、移行作業の工数、機器の入れ替え、職員の画面操作を助ける事務サービスは、AIエージェントが直接代替しうる。今後の値付けで大切なのは、自治体が使う記録の中核と、周辺の人手で稼ぐ部分を混同しないことだ。資本の厚さと累進配当への転換は評価するが、解約率も料金改定の実績も開示が足りず、強い堀を全社に認めることはできない。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主なら、住民税の計算や住民登録の記録を支える仕組みが10年後に不要になるとは考えない。自治体が制度変更のたびに正確に動く基幹システムを必要とすることは、同社の収入の土台である。しかし、その必須性は電算という会社の利益率を保証しない。国が仕様を揃え、大手企業が共通基盤を供給すれば、役に立つ製品でも取り分が減ることは十分ありうる。
投じた資金から株主が持ち帰れる現金を考えると、2026年の最高益を基準にしてはいけない。新しいReamsの開発やデータセンターの更新は、現在の会計上の償却が軽く見える時期でも、新しい価格で資金が出ていく。法律に従う記録の中核を守りながら、受託工数をどこまで削減できるかで、十年後のオーナー利益は変わる。
同社の財務の改善と配当方針の変更は好ましい。それでも、過去には赤字の年があり、持分を支える有力株主の意向もある。保守契約の解約率や値上げ成功例、次期製品の投資収益が見えるまでは、強い堀に付けるほどの価格を支払う理由は乏しい。現在の価値はおおむね説明できるが、安全域が厚いと判断するには、標準化後も平年の利益が積み上がる証拠がほしい。
何で稼ぐ会社か
利益の源は、自治体向け公共分野と、民間企業・病院向け産業分野の二本である。2026年3月期の公共分野は売上高約225億円で全社の約8割を占め、その約74%がReamsであった。Reamsは住民記録、住民税、固定資産税、介護保険など30種類以上の業務を扱い、パッケージの提供だけでなく、データ移行、制度改正対応、保守、運用を一体で受ける。自治体にとって台帳の正確さと毎日の稼働は不可欠だが、売上には更改時の一括収入も混ざる。
残る公共分野には文書管理、庁内情報システム、ネットワーク、周辺機器、自治体向けBPOがある。会社の営業網は全国およそ450の自治体・関連団体に及ぶが、450団体すべてがReamsを使っているわけではない。顧客との長い付き合いは次の契約を獲得する入口になるものの、自治体予算と入札に従うため自由な値上げにはつながらない。
産業分野は売上高約55億円で、医療・福祉向けが約4割、リース業務が約2割を占める。電子カルテや健診、リース契約管理のパッケージを売り、導入作業と保守にも対価を得る。製造業向けのmcframeの導入や、インターネット接続、データセンター運営も抱える。2026年9月にはこの製造業向けの開発を補強するため日本エクサシステムを買収したが、エンジニアを増やすほど利益が増える昔ながらの構造が十年後も続くとは限らない。
優良さと弱いところ
最も守りの固い部分は、自治体の正本となる業務記録を稼働させるReamsの中核である。標準仕様への移行を終えた176団体という利用基盤と、30種類を超える法定業務を長年扱ってきた経験は、移行作業と制度対応の負担を高める。単に画面の使い勝手がよいから選ばれているのではなく、税額や住民資格の記録を日々正しく動かすことに対価が支払われる。
しかし、堀の広さと値決め力は同じではない。自治体は入札を行い、国の標準仕様は競合製品との互換性を高めるため、以前より乗り換えが容易になる可能性もある。会社は解約率、既存契約の平均単価、法改正時の値上げ率を十分に数値開示していない。独自の顧客データの所有権を持つとも言えず、切替費用だけを根拠に全社を独占的な事業とみるのは危険だ。
利益率の振幅も大きい。2019年3月期には営業赤字となり、2026年3月期には標準化特需で営業利益率が22%を超えた。過去10年のROE中央値は約9%で、直近の高い資本効率だけから増分投資の利回りを推定できない。一方、純有利子負債は約18億円の純現金に転じ、自己資本比率も約63%に改善した。今後は次期Reamsの開発支出が、継続保守から得られる現金に見合うかが真価を決める。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
自治体システムの市場は、公共サービスが続く限りなくならない。しかし日本の市町村は約1,700あり、人口減少と自治体の財政制約で顧客数の自然増は期待しにくい。Reamsを移行した176団体は市町村数の約1割に相当するが、団体の定義と調達金額が異なるため、これは厳密な売上シェアではない。全国の基幹業務を巡っては富士通Japan、NEC、TKC、アイネス、日本電子計算、RKKCSなどが競う。個社別の統一した全国契約件数や売上シェアは公表資料から確認できず、順位の断定は避ける。
政府の自治体システム標準化は、従来の自治体別カスタマイズを減らす方向に進んでいる。制度対応と認証・安全管理を担うベンダーには残存価値がある反面、標準仕様に合わせた移行作業は永久に繰り返す特需ではない。クラウド共通化と共同調達が進めば一契約あたりの単価は下がりやすい。会社は残る移行支援案件や行政事務BPOの受託を追っているが、そこで稼ぐ人手の時間もAIによって圧縮される。
国内ITサービス市場は業界資料で約7.5兆円とされるが、産業分野の売上約55億円はその約0.07%にすぎず、全国的な価格決定力はない。大手SIerのほか、医療系・リース系の専業会社、海外製ソフト、顧客の内製化が競争相手となる。需要そのものは老朽システムの更新で続いても、人月の数量は減り、インフレ分の値上げをすべて転嫁できるとは限らない。産業分野が高収益の独自パッケージに転換できるかがシェア拡大以上に重要になる。
資本政策と M&A
資本配分の評価は、足元の資金余力と過去の振れ幅を分ける必要がある。2016年3月期に約80億円だった自己資本は2026年3月期に約162億円まで増え、有利子負債を上回る手元資金も確保した。その一方、2019年の赤字や長年の一桁台の営業利益率を踏まえれば、留保した利益が一貫して資本コストを上回る形で再投資されたとは証明できない。
2026年5月に公表した中期経営計画では、2028年度の売上高285億円、営業利益35億円、ROE14.8%を目標に掲げ、営業利益率10%以上とROE10%以上も経営指標にした。還元では累進配当を明確にし、DOE、すなわち自己資本に対する年間配当額の割合を3%程度とする。固定額の自社株買い計画や総還元性向の数値目標はなく、株主優待は廃止した。60周年記念の特別配当を毎年続く通常還元と取り違えてはならない。
過去にはティー・エム・アール・システムズを取得し、TOPPANとの資本業務提携を進め、2026年9月には日本エクサシステムを買収した。製造業向けに外注工程を内製化する狙いは理解できるが、AIによって必要工数が減る時代には、買収先の人数を増やすことだけでは価値を作れない。信越放送とTOPPANなど有力株主の影響が強く、余剰現金が少数株主に確実に戻るとまではみず、還元実績を確認しながら評価する。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
公共分野の契約は普通の受託開発より粘り強い。Reamsは住民、税、保険、福祉を横断する30種類以上の業務を動かし、176団体の標準移行を完了した。顧客が製品を変えるにはデータ変換だけでなく、職員の研修、住民への影響確認、セキュリティ検証が必要だ。自治体財政が厳しいからこそ、既存の安心できる仕組みを使い続ける選択が合理的になる。
同社は単なる人月販売会社ではなく、自社の行政パッケージ、長年の法律対応、データセンター、現場のサポート網を持っている。標準化を経験した顧客に次期Reamsや行政事務BPOを売れば、開発資産を共有する利益が生まれる。民間ではリース管理や医療システムが既にあり、mcframeの人材を買収で確保したことで、これまで断っていた受注も取り込める。AIを設計やテストに使えば、提供する価値を保ちながら外注費や自社の労働時間を減らせる余地もある。
自己資本が厚くなり、配当は累進型に変わった。利益が高い年に留保した資金を次世代製品に使い、平年でも高い営業利益率を保てるなら、今の時価総額に対して株主が受け取る価値は大きくなる。今後の制度改正と残存する標準化案件は、当初の特需が終わった後にも更新需要を与える。
慎重な見方
2026年の急増益は自治体の標準仕様への一斉移行がもたらしたものであり、通常の定期保守ではない。顧客の標準対応が済んでしまえば、同じ作業を次の年にも販売することはできない。会社自身が翌期の売上と利益の縮小を見通しているのは、特需の反動を最もよく示す事実だ。いつか次の大型更改が起きるとしても、その間の利益を最高益で埋めることはできない。
標準仕様は切替負担を軽くするための政策でもある。国や大手ベンダーが共通のクラウド基盤を整えれば、自治体は相見積もりを取りやすくなり、地域密着型の会社の優位は縮む。住民データは顧客のものであり、電算だけが独占するデータではない。現時点で解約率と値上げの実績が不明である以上、法令対応の強さをそのまま強い価格決定力と読むことはできない。
AIエージェントはプログラミング、移行支援、画面操作、事務処理を人の代わりに進める。電算がAI製品を紹介していることと、その製品から十分な受注・利益を得ていることは別だ。公共分野以外は医療機関の投資予算や大手SIerとの取引に左右され、買収した人材の稼働率も下がりうる。過去に二度の営業赤字の年があった会社を、自治体の基幹記録が必要だからというだけで永続的な高ROE企業とみなすべきではない。
どちらに重みを置いたか
自治体の法定記録という中核の持続性では前向きな見方に分があるが、2026年の利益の持続性とAIによる工数削減については慎重な見方が勝る。中立でも営業利益率を最高益期より大幅に低く見積もったうえで、悲観側に計38%、楽観側に30%を配分した。制度基盤が残ることと、それを売る会社が高い利益率を維持することは別である。結果として現在の時価総額は本質価値に近いが、確信度は中程度である。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 4,936 円275 億円(+ 還元の換算額還元の合計 1,171 円65 億円)。 今の値に割り戻すと 3,083 円171 億円、今との差 +25.3%、 期待の年率 +10.9%(資本コスト 8.0%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 10,162 円565 億円 | 1,708 円95 億円 | +382.5% | +19.2% | 1,187 円66 億円 |
| やや楽観 | 20% | 7,690 円428 億円 | 1,402 円78 億円 | +269.6% | +15.7% | 1,818 円101 億円 |
| 中立 | 32% | 5,481 円305 億円 | 1,223 円68 億円 | +172.5% | +12.0% | 2,145 円119 億円 |
| やや悲観 | 25% | 1,781 円99 億円 | 1,079 円60 億円 | +16.2% | +1.9% | 715 円40 億円 |
| 悲観 | 13% | 1,401 円78 億円 | 449 円25 億円 | −24.8% | −3.2% | 241 円13 億円 |
| 加重平均 | 100% | 4,936 円275 億円 | 1,171 円65 億円 | +148.2% | +10.9% | 6,106 円340 億円 |
今の株価時価総額 2,460 円137 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 10% 法定記録を守り、標準化後も収益基盤を強化 利益 42 億円 · PER 12.6 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 10,162 円565 億円
標準化を済ませた自治体がReamsを使い続け、自治体向け基幹システムの全国展開にも成功する。法改正対応とセキュリティ対策を共通コードに集約し、追加の開発費を抑えながら保守契約を維持する。画面操作の仕事はAIに移るが、会社が制度変更を管理する中核への対価は保たれる。
行政事務のBPOではAIによる工数削減を競争入札で全額引き渡さず、改善した採算を部分的に確保する。産業分野でも買収した開発会社を活用し、医療・リース・製造業で高付加価値の導入・保守を増やす。工数の実質数量が業界全体では縮むなかでも同社が受注を維持し、運用の確かさが価格下落を防ぐ。
次期Reamsの開発費は契約基盤の拡大で回収し、配当と機動的な自社株買いを継続する。資本の使い方の規律が強まり、同社の過去の好況に比べても安定して利益を生み、余剰現金が多く残る10年になる。
- 公共分野・Reams基幹システム:数量 176(Reams標準仕様版への移行完了団体数(団体・2026年4月1日時点))× 価格 1.26(移行済み1団体当たりの年間関連売上代理値(億円・一時移行案件も含む))→ 売上 222 億円・営業利益 42 億円。標準仕様版176団体を維持、単価は物価並みまで回復。新規獲得を無理に計上しない
- 公共分野・周辺SI・機器・BPO:数量 338(自治体・関連団体との取引接点数(団体換算、重複を含み得る))× 価格 0.18(1取引接点当たりの関連売上代理値(億円・年間))→ 売上 60 億円・営業利益 6 億円。工数実質75%・価格1.34倍。AI省力化益を自社でも保持
- 産業分野・医療・リース・製造業SI:数量 115(産業分野の連結所属従業員数(人・工数能力の代理))× 価格 0.64(所属従業員1人当たり年間売上(億円、人件費単価ではない))→ 売上 73 億円・営業利益 10 億円。人月数量1.00倍がAI型の上限、顧客構成改善で利益率13%
倍率:資本コスト8%、10年後以降の名目成長g=0.5%、堀の超過収益が残る割合1/2。期末自己資本499.0億円のうち余剰現金75億円を除く事業自己資本424.1億円に、受取利息を除く事業純利益40.48億円を対応させた事業ROEは約9.55%。RONICは約8.77%となり、正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)の上限約12.5735倍を使う。現金の税後利息1.05億円を利益から除き、現金の75%を別に足す。AIエージェント代替は数量・価格とgに入れ、寿命要因には重ねない。
確率:次期Reamsが標準化市場で勝ち続け、公共だけでなく民間の受託業務までAIによる省人化益を確保する複合的成功が必要なため10%にとどめる。
やや楽観 20% 制度改正収入が続き、省人化益も一部残る 利益 32 億円 · PER 12.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 7,690 円428 億円
地方公共団体への導入経験と保守体制は引き続き競争力を持ち、Reamsの利用団体数は小幅な減少に収まる。2026年のような一斉移行はないが、制度改正への対応、クラウドの更新、周辺機器の入れ替えが断続的に発生する。一定の物価転嫁はできるものの、一括導入の高い利益率は残らない。
文書管理やBPOではAIで人手を減らす顧客の要求が強まるが、実績のあるシステム保守とデータセンターを一体で提供することで契約を保つ。産業分野の人月需要は縮みながらも、リースと医療の制度知識、製造業の買収先を通じた営業で過度な減収は避けられる。
開発投資を抑え過ぎず、DOEを目安とする配当を維持する。持続的な高成長企業にはならないが、平均的な受託開発会社よりも事業が崩れにくい企業として着地する。
- 公共分野・Reams基幹システム:数量 170(Reams標準仕様版への移行完了団体数(団体・2026年4月1日時点))× 価格 1.23(移行済み1団体当たりの年間関連売上代理値(億円・一時移行案件も含む))→ 売上 208 億円・営業利益 33 億円。標準化完了先の多くを保持。法令改正と一部の追加導入で価格指数1.30
- 公共分野・周辺SI・機器・BPO:数量 315(自治体・関連団体との取引接点数(団体換算、重複を含み得る))× 価格 0.17(1取引接点当たりの関連売上代理値(億円・年間))→ 売上 54 億円・営業利益 5 億円。人月工数70%を残し、物価相当未満の価格改善
- 産業分野・医療・リース・製造業SI:数量 99.0(産業分野の連結所属従業員数(人・工数能力の代理))× 価格 0.59(所属従業員1人当たり年間売上(億円、人件費単価ではない))→ 売上 59 億円・営業利益 6 億円。工数86%を残すのは再販・自社パッケージと買収後の営業効果込み
倍率:資本コスト8%、10年後以降の名目成長率g=0.5%。今の自己資本162.4億円に十年間の純利益推計382.45億円を足し、還元78億円を引いた期末自己資本は約466.9億円。うち余剰現金55億円を除いた事業自己資本411.9億円に対し、利息を除いた事業純利益30.92億円でROEは約7.51%とkを下回る。超過成長を認めず、稼ぐ力の上限1÷k=12.5倍を採用する。現金利息0.77億円を除いた利益にPERを掛け、現金の75%を別に足す。
確率:既存顧客をほぼ維持する可能性は高いが、特需後も周辺システムと産業SIの採算を着実に改善する必要があるため20%。
中立 32% 基幹記録は残り、移行特需の採算は平常化 利益 23 億円 · PER 12.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 5,481 円305 億円
総合行政情報システムの記録の中核は残る。176団体の標準化移行基盤から十年後も大部分の契約が続き、新しい税制や福祉制度への対応も日常的に求められる。しかし、自治体ごとの特別な開発と大規模移行の利益は戻らず、統一仕様と共同調達が価格を押し下げる。
周辺SIと行政事務BPOの実質工数は今の約3分の2に減る。AIが職員の入力と開発者の定型作業を代替し、名目価格の上昇がそれを完全には補わない。医療・リース・製造業向けの受託需要も減り、買収による人員補強だけでは成長しない。各部門の固定費と次期製品の開発を負担した結果、全社の営業利益は約32億円に落ち着く。
会社が中期経営計画に掲げた収益性改善は部分的に続くが、最高益期の規模には戻らない。財務は傷まず、累進配当とDOEを目安にした還元を続け、法定記録を守る安定企業として残る。
- 公共分野・Reams基幹システム:数量 154(Reams標準仕様版への移行完了団体数(団体・2026年4月1日時点))× 価格 1.10(移行済み1団体当たりの年間関連売上代理値(億円・一時移行案件も含む))→ 売上 170 億円・営業利益 25 億円。移行済み176団体の87.5%が残り、価格1.17倍には物価上昇と特需反動の相殺を含む
- 公共分野・周辺SI・機器・BPO:数量 293(自治体・関連団体との取引接点数(団体換算、重複を含み得る))× 価格 0.16(1取引接点当たりの関連売上代理値(億円・年間))→ 売上 48 億円・営業利益 3 億円。SI・BPO量65%、価格1.25倍。AIエージェント代替の人月型レンジ内
- 産業分野・医療・リース・製造業SI:数量 78.0(産業分野の連結所属従業員数(人・工数能力の代理))× 価格 0.61(所属従業員1人当たり年間売上(億円、人件費単価ではない))→ 売上 47 億円・営業利益 4 億円。産業SIの実質工数68%、価格1.28倍。買収だけで数量成長は見込まない
倍率:資本コスト8%、10年後以降の名目成長率g=0.5%。今の自己資本162.4億円に十年間の純利益推計337.9億円を足し、還元68億円を引くと期末自己資本432.3億円となる。余剰現金35億円を除く事業自己資本397.3億円に対し、利息を除いた事業純利益22.29億円でROEは約5.61%とkより低い。再投資による価値の上積みを認めず、1÷k=12.5倍を上限とする。現金利息0.49億円を利益から控除したうえで、余剰現金の75%を別に足す。
確率:自治体の法定システムは続くが、標準化で失う大型移行売上をすべて補えない。AI代替を数量と価格に組み入れた最頻の筋書きとして32%。
やや悲観 25% 共通調達とAI代替で受託の利益が細る 利益 11 億円 · PER 9.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,781 円99 億円
自治体システムの共通仕様化が進み、大手のクラウド型基幹システムや共同調達が広がる。Reamsの台帳機能は必要とされるが、一部の自治体が更新期に他社へ移り、保守の契約条件も厳しくなる。年度ごとの制度改正は残るものの、同じ機能を低価格で競争する市場に変わる。
周辺開発と行政事務BPOでは顧客がAIエージェントを導入し、従業員の人月工数が半分程度まで縮む。競合の値下げに合わせて請負単価も抑えられる。医療・リース向けの導入工事も高単価で販売しにくくなり、買収で増えた固定人件費が利益率を圧迫する。
それでも法定記録の契約と手元の資本は残るため、継続企業として存続する。配当は維持に努めるものの増配余力は鈍り、事業から得る利益は資本コストに届きにくくなる。
- 公共分野・Reams基幹システム:数量 150(Reams標準仕様版への移行完了団体数(団体・2026年4月1日時点))× 価格 1.08(移行済み1団体当たりの年間関連売上代理値(億円・一時移行案件も含む))→ 売上 162 億円・営業利益 13 億円。Reams導入団体が15%減り、単価は1.15倍にとどまる
- 公共分野・周辺SI・機器・BPO:数量 248(自治体・関連団体との取引接点数(団体換算、重複を含み得る))× 価格 0.14(1取引接点当たりの関連売上代理値(億円・年間))→ 売上 36 億円・営業利益 0 億円。工数55%、単価1.10倍で利益率1%まで低下
- 産業分野・医療・リース・製造業SI:数量 63.3(産業分野の連結所属従業員数(人・工数能力の代理))× 価格 0.52(所属従業員1人当たり年間売上(億円、人件費単価ではない))→ 売上 33 億円・営業利益 2 億円。産業工数55%、単価1.10倍、固定費の残存で利益率6%
倍率:AIによる代替と自治体共同調達によって、余剰現金5億円を除く事業自己資本374.7億円に対して利息控除後純利益10.59億円となり、ROEは約2.83%と資本コスト8%を大きく下回る。稼ぐ力の上限1÷k=12.5倍より低い9.0倍とする。帳簿に残った資本が高収益投資に結び付かない悲観を表し、現金利息0.07億円を外してから余剰現金の75%を足す。
確率:標準化で競合製品への移行障壁が下がり、AIで事務と受託開発の量が縮む会社固有の構造があるため25%。
悲観 13% 主力案件を奪われ、受託は構造的に赤字化 利益 −3 億円 · PBR 0.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,401 円78 億円
自治体の標準仕様化が本格的な共同調達につながり、Reams利用自治体の大きな一群が大手の基盤へ切り替える。これまで法制度対応の経験を生かして得てきた保守契約は減り、残る顧客にも価格を下げなければならない。次期Reamsの開発に投じた資金を十分に回収できず、償却負担が利益を奪う。
行政事務と周辺SIはAIエージェントで直接処理するのが普通になり、人的工数は現在の半分を大きく下回る。民間向けも医療機関の予算削減と顧客の内製化が重なり、導入支援の人員を抱えたまま赤字となる。買収先の採算悪化やソフトウェア資産の評価損も発生する。
年末には営業赤字となっているが、自治体の記録がすべて消えたわけではない。契約終了に伴う回収可能債権と売却可能資産を数え、旧来の稼ぐ力には値段を付けない。株主還元は前半に支払われても後半には停止を迫られる。
- 公共分野・Reams基幹システム:数量 104(Reams標準仕様版への移行完了団体数(団体・2026年4月1日時点))× 価格 0.91(移行済み1団体当たりの年間関連売上代理値(億円・一時移行案件も含む))→ 売上 94 億円・営業利益 2 億円。Reams利用団体数が約4割減、平均単価も低下
- 公共分野・周辺SI・機器・BPO:数量 165(自治体・関連団体との取引接点数(団体換算、重複を含み得る))× 価格 0.11(1取引接点当たりの関連売上代理値(億円・年間))→ 売上 18 億円・営業利益 −1 億円。AI代替で周辺SI・BPOの数量は約37%へ落ち、単価も下がる
- 産業分野・医療・リース・製造業SI:数量 46.0(産業分野の連結所属従業員数(人・工数能力の代理))× 価格 0.45(所属従業員1人当たり年間売上(億円、人件費単価ではない))→ 売上 21 億円・営業利益 −2 億円。産業受託工数40%、値段95%。医療・製造とも固定費負けし赤字化
倍率:2036年の純利益が赤字であるためPERで評価しない。過去の利益留保が残る期末自己資本348.9億円の大半は事業用ソフトウェアや回収不能になり得る事業資産に縛られるものと見なし、清算の床には転用・換金可能な純資産だけを含める。現在の自己資本162.4億円を基礎にPBR0.48倍で77.95億円とし、税後換金可能価値約75億円を下回らない。過去・現在の市場PBRではなく、その筋書きでの低い回収価値を判断した。
確率:自治体共同調達による顧客喪失とAIによる工数大幅縮小、買収償却負担が重なる複合事象。頻度は高くないが無視できず13%。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
公共分野・Reams基幹システム
地方公共団体向けの住民記録・税・社会保険等30超の法定業務パッケージ。標準仕様版移行時の一時的なソフト・機器・導入費用も含む。
| 数量Reams標準仕様版への移行完了団体数(団体・2026年4月1日時点) | 価格移行済み1団体当たりの年間関連売上代理値(億円・一時移行案件も含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 176 | 0.94 | 166 | 50 |
| 10 年後 中立 | 154 | 1.10 | 170 | 25 |
取り方:2026年有報の公共分野売上225.291億円×Reams比率73.7%=166.04億円。会社の2026年4月1日発表による移行完了176団体で割り0.9434億円/団体とした。ただし移行完了団体の残存時点と売上認識年度に差があり、年度内の一括更改・機器販売が含まれるため、年額保守単価ではない。公共利益57.64億円のうち50億円を仮配分し、製品別利益は非開示。AI型:法定記録の正本と年単位の標準移行、共通パッケージ利用という二つの堀がある中核は記録正本型。それ以外の移行工事・画面・機器部分は人月・UI型で、将来の低単価化を商品全体の価格に含める。
公共分野・周辺SI・機器・BPO
庁内情報、文書管理、機器更改、環境構築、システム保守、行政事務のアウトソーシング。
| 数量自治体・関連団体との取引接点数(団体換算、重複を含み得る) | 価格1取引接点当たりの関連売上代理値(億円・年間) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 450 | 0.13 | 59 | 8 |
| 10 年後 中立 | 293 | 0.16 | 48 | 3 |
取り方:有報の公共分野225.291億円×Reams以外26.3%=59.25億円。会社が全国約450の自治体・関連団体へサービス提供と開示した数を取引接点の代用とし、1件0.13167億円を推計。450は契約数・利用ID数ではなく、Reamsの176とも一部重複し、同社未開示の正式な平均客単価ではない。公共分野全体の営業利益57.64億円からReams仮配分50億円を引き7.64億円とした。AI型:SI受託・BPOの人月工数とUI操作が中心のため中立数量は今の0.65倍、価格1.25倍、長期成長0%。機器更改を含むが販売件数が非開示なので同一契約接点に代理配賦。
産業分野・医療・リース・製造業SI
医療福祉システム、リース管理パッケージ、製造業向けmcframe、受託開発、運用保守、ISP。
| 数量産業分野の連結所属従業員数(人・工数能力の代理) | 価格所属従業員1人当たり年間売上(億円、人件費単価ではない) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 115 | 0.47 | 55 | 5 |
| 10 年後 中立 | 78.0 | 0.61 | 47 | 4 |
取り方:2026年有報の産業分野売上54.581億円÷産業セグメント所属社員115人(共通部門164人・臨時雇用を除く)=1人当たり0.47462億円。医療福祉40.3%、リース17.2%、製造3.3%、ISP6.0%等の売上混在であり、この平均は実際の人月請求単価ではない。機器販売・仕入ソフト・共通部門作業の収入が上乗せされるため、過大な生産性と誤認しない。営業利益5.36億円は有報の直接開示。AI型:大半は導入工数・操作ソフト・受託開発で中立の能力需要は0.68倍、価格1.28倍に低下・上昇する。規制記録型になり得る医療データは解約・制度対応の実証がないので原則SI型のまま。
リスクと懸念
AIエージェント代替による工数消滅
システム開発・テスト・データ移行・職員の画面操作・行政事務BPOがAIエージェントに置き換わると、従業員数や受託工数が増えるほど売上が伸びる従来型の契約が細る。Reamsの法定台帳そのものは必要でも、導入時の一括費用や保守に付く人手は減る可能性がある。AI製品の提案を確認できる一方、代替を埋めるだけの新規AI売上金額は未開示である。
自治体標準化特需の反動と発注時期
2026年3月期の公共分野は大型の標準化移行案件が集中し、一度に大きな売上と利益が計上された。移行を終えた176団体から翌期も同じ導入費用は入らない。国の支援延長や制度変更で更新需要は続くが、時期と採算を予測しにくく、年度ごとの収益の山谷を平準化して考える必要がある。
標準仕様化・共通基盤と大手との価格競争
自治体の標準仕様統一は制度対応の品質を揃える反面、顧客が共同調達や他社への移行を比較しやすくする。NEC、富士通Japan、TKC、アイネスなど競合企業の全国的な提案体制も強い。価格を上げても解約されないという定量実績がなく、地方で築いた保守関係が単価下落を完全に防ぐとは考えられない。
次期Reamsの開発・償却・更新投資
次期Reamsの開発は将来の製品を守るために必要だが、制度変更、クラウド対応、セキュリティ対策で支出が継続する。既存設備やソフトの償却は取得原価で進む一方、将来の更新投資は物価が上がった価格で発生する。会計上の利益が見かけ上増えても、株主が自由に使える現金が同じ比率で増えるとは限らない。
産業分野の人材買収と医療・リース業界依存
日本エクサシステムの買収は製造業向けmcframe対応の内製化が狙いだが、開発工数の削減が進むと買収した技術者の稼働率と採算が落ちる。医療機関の予算削減、リース会社のシステム更改延期、販売元の方針変更にも左右される。新しい売上の獲得額と買収資金の回収期間が開示されるまでは、買収を恒久的な成長と見なせない。
持ち合い株主と余剰現金の配分
信越放送とTOPPANなど特定株主の持分が大きいことは、顧客関係や長期の協力を保つ一方、少数株主が資本政策を変える力を弱める。過去に自社株買いの実績はあり、累進配当とDOE目標も設けたが、余剰資金を継続的に全額配る約束はない。投資採算の低い案件や買収が続けば、帳簿上の現金をそのまま株主のものとは見られない。
今後の分かれ目
- 標準化特需が一巡した後もReamsの保守・利用料が前年比で増え、更新済み176団体から大幅な解約が出なければ
- 基幹記録の堀が確認されるため、中立の数量維持と価格前提を上方修正する。ただし一時移行案件と継続保守を必ず分けて検証する。
- 次期Reamsの開発費と償却を負担したうえで営業利益率12%超を数年保てれば
- 中期計画の達成だけでなく構造的な利益改善を確認できる。中立の2036年利益と増分の投下資本収益率を再評価する。
- 公共受託・BPOの人員当たり売上が減り、AIによる効率化益も単価引下げで顧客へ移れば
- 工数型の数量をやや悲観から悲観に近づけ、次期開発の固定費を賄えない場合は利益率をさらに下げる。
- 自治体の共同調達が増えてReamsの移行顧客が競合へまとまって乗り換え始めれば
- 記録の正本の優位を弱い堀と再判定し、自治体の実質導入団体数、十年後のシェア、長期gを見直す。
- 日本エクサシステムの買収後、製造業向け外注費比率が低下し受注粗利が継続的に上がれば
- 産業分野の買収が費用削減と競争力強化につながった証拠とし、産業分野の営業利益率をやや楽観側へ修正する。
- DOE3%の累進配当を維持しつつ、自社株買いが複数年継続して現金が縮小すれば
- 株主に戻る資本の確実性が高まるため余剰現金の還元係数を0.75から1.0へ見直す。
見ておくもの
- Reams標準仕様版移行176団体の維持・追加導入・解約件数と継続保守売上
- 公共分野に占めるReamsの売上割合と移行案件・保守契約の内訳
- 産業分野115人および共通部門164人の稼働・外注費率・人員と売上の変化
- 次期Reams研究開発・ソフトウェア資産・償却費・キャッシュフローの推移
- 2028年度中期計画の売上285億円・営業利益35億円・ROE14.8%の進捗
- 自治体共通仕様の更改入札における落札率・契約継続率・値上げ率
- DOE3%の配当実績、追加自社株買いと政策保有株式の減少
- 日本エクサシステム買収後のmcframe案件の獲得額と粗利
倍率と資本コストの決め方
2036年の売上はReams移行176団体、全国約450団体の公共関係取引、産業部門115人という実在の数量指標に、開示売上から求めた代理単価を掛けている。2026年のReams売上は移行特需を含むため、単価を毎年継続する利用料とはみなしていない。全社営業利益は各収益の利益率と共通費の調整額から組み立て、純利益比率は過去の約0.70を基本にした。
各筋書きの2036年自己資本は、2026年3月期の162.4億円+十年間の純利益概算(期首・期末純利益の単純平均×10)−累計還元額から積み上げた。中立の自己資本432.3億円、ROE約5.27%は資本コスト8%を下回るため、超過利益の再投資価値を認めず、PERは1÷kの12.5倍とする。やや楽観でも同様で、楽観だけは余剰現金を除く事業ROE約9.55%から計算した正当化PERを用いた。AI代替による数量・単価縮小と長期成長率g=0.5%は反映済みで、kに寿命の不利を重ねていない。
今の株価や直近の低い実績PERを価値の根拠にしていない。新リース会計基準適用後も家賃を事業の費用に入れた同じ経済実態で比較し、ソフトウェアや建物の既存償却をCPIで一律に増やさず、次期製品と設備の更新費用は将来価格で生じると考えた。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。国債3%と株式リスクプレミアム4.5%の基本7.5%に、品質要因を差し引き+0.5%だけ調整する。個別の買収・支配株主リスクを資本コストに重ねず、筋書きの確率で考慮する。