結論
応用技術は、建設・製造業のデジタル化と環境・防災の解析技術を組み合わせた専門企業である。筆者の結論は「やや割高」だ。事業には長く残る強みがあり、財務も極めて堅い。しかし、売上の相当部分が人の専門作業や業務ソフトの利用を前提としている。AIエージェントの普及を10年先まで考えると、過去の増収増益をそのまま延長して評価することはできない。
同社には、一般的なシステム開発会社にはない強みがある。建物の3次元設計データを扱うBIM、土木構造物を扱うCIM、製造業の製品情報管理、河川の氾濫解析、都市環境の数値シミュレーションを横断できる。国土交通省によるBIM/CIMの普及や老朽インフラ対策は、同社の専門知識を必要とする仕事を今後も生むだろう。顧客の実務を深く理解し、既存システムや設計データに接続できる技術力にも価値がある。
ただし、仕事が必要であり続けることと、その仕事に従来と同じ対価が支払われることは別問題だ。設計図面の変換、モデル作成、解析の前処理、業務画面の操作、定型的なプログラム開発は、自動化が進むほど人月単価で売りにくくなる。自社製品を持つことは防御力になるが、解約率や価格改定実績などから長期の独占的な値決め力を証明できる段階ではない。
財務面では、2025年末に自己資本約62.5億円、純現金約50.8億円を保有している。2026年6月末の現金同等物は約55.2億円に増えた。ただし、そのうち48億円は親会社グループへの預け金であり、普通預金と同じ感覚で少数株主に全額帰属すると考えるのは慎重であるべきだ。
5つの筋書きの期待値を現在価値に直すと約81.2億円となり、基準時価総額約91.9億円を約12%下回る。高収益な建設DX企業として成長する余地はあるが、現在の価格には十分な安全域がない。判断を変える最大の条件は、専門技術を人月から切り離し、継続課金と成果報酬で利益を確保できることを数字で証明することだ。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主にとって、応用技術の魅力は、財務の頑健さと専門領域で築いた顧客関係である。大きな設備や借金を必要とせず、技術者とソフトウエアで顧客の複雑な課題を解く。河川防災、環境アセスメント、BIM/CIMなどの需要は一時的な流行ではない。社会インフラが存在する限り、一定の専門的な仕事は続くと考えられる。
しかし、株主が受け取れる利益を考える際には、人件費と技術更新を軽視できない。会社が利益を増やすためには優秀な技術者を採用・維持し、外部ソフトの更新に対応し、顧客ごとの設計データを理解し続ける必要がある。AIによって開発効率が上がったとしても、その利益を顧客ではなく自社が獲得できるとは限らない。契約が工数連動なら、顧客は同じ成果をより安い費用で求めるだろう。
本物の堀があるなら、顧客の業務記録そのものを管理し、制度改正のたびに必要性が増し、値上げしても解約されない仕組みを確認したい。応用技術にはその候補となる製品があるが、定量的な裏付けはまだ足りない。顧客の基幹システムに導入されたという事実だけで、全社の利益が何十年も守られるとは評価しない。
再投資の収益性にも注意が要る。過去の資本効率が良かったことは、今後の新製品やSaaS開発が同じ利回りを生む証明ではない。特にAIが標準機能として組み込まれる時代には、自社で開発した周辺機能が外部の巨大プラットフォームに取り込まれる危険がある。余剰資金を無理な買収に使わず保持してきた点は評価するが、その多くが親会社グループに預けられているため、少数株主に戻るまでの時間と不確実性を考える必要がある。
現在の時価総額には、成長が一巡しても一定の収益が残るという期待が含まれている。事業の生存可能性は高いが、予測できる利益の範囲には限界がある。筆者は、専門技術の価値と潤沢な資産を認めながらも、AI時代に利益率と価格交渉力が守られる証拠が増えるまでは、現在の価格を十分な安全域とは判断しない。
何で稼ぐ会社か
事業は会社開示上、ソリューションサービスとエンジニアリングサービスの2つに分かれる。2025年12月期の売上高はそれぞれ約53.5億円と21.1億円で、前者が全体の約72%を占める。顧客はゼネコン、住宅設備・建材メーカー、製造業、鉄道・道路インフラ関連企業、地方自治体などである。いずれも専門知識が必要で、案件獲得後には顧客固有の図面、データ、業務手順との接続作業が生じる。
ソリューションサービスでは、建設業向けのBIM支援製品BooT.oneやtoBIM、製造業向けのEasyコンフィグレータ、WebLayoutPlanner、PLEX、FieldPlannerなどを展開する。建設業ではBIMモデルの作成・管理、設計情報と施工・調達の連携を支援する。製造業では商品の仕様選択から設計、製造、保守までをつなぐ顧客接点システムを構築する。顧客の基幹業務に入り込む仕事は、導入後の改修や機能追加につながりやすい。
同時に、この事業には受託開発、導入支援、他社ソフトウエアの販売仲介が含まれる。2024年11月から一部のソフトウエア販売を仲介契約に変更したため、売上高は減っても取引から得る利益は必ずしも減らない。この会計上の変化を、顧客数や市場シェアの減少と混同してはいけない。自社SaaSの継続売上、他社ライセンスの仲介収入、技術者による受託収入を完全に区分した金額は開示されていない。
エンジニアリングサービスは、防災・減災、環境アセスメント、まちづくり、BIM/CIM、GISを使うインフラ管理を担う。河川の洪水・内水氾濫、津波・高潮、上下水道の耐震対策、都市開発による環境変化を専門ソフトと数値計算で評価する。計算作業そのものは自動化されても、現地条件の確認、行政基準への適合、結果の説明責任まで消えるとは限らない。この違いが、両事業の10年後の収益性を分ける。
分析上は、会社の2事業を、受託・導入支援、製品・SaaS等、現場・制度対応を伴う専門解析、定型的なデジタル解析支援の4つに分ける。後二者にもAIの影響は及ぶが、許認可や現場固有の判断を伴う仕事は比較的残りやすい。なお、この4区分の売上と数量は会社が開示した内訳ではなく、従業員数、受注実績、売上総額から組み立てた分析上の推定である。
優良さと弱いところ
同社の強みは、顧客の設計情報と実際の建設・製造工程をつなぐ専門知識にある。WebLayoutPlannerが大手建材メーカーの基幹システムに採用された実績や、BooT.oneを通じたBIM導入支援、NavismasterによるCIMの属性管理などは、汎用的なシステム開発との差別化につながる。既存の設計データや業務手順に組み込まれたソフトは変更に手間がかかるため、一定の乗り換え障壁もある。
しかし、強い堀、すなわち競合が容易に奪えない持続的な超過利益が確立したとまでは言えない。自社SaaSの解約率、顧客別継続率、値上げ実績、独自データの蓄積量は十分に定量開示されていない。BIMソフトの基盤ではAutodeskなど外部企業の影響が強く、応用技術が業界全体の標準を単独で決められるわけではない。2025年の説明資料でもBooT.oneの導入拡大は当初想定の速度に届いていない。
資本効率は長く良好だった。2019年以降は営業利益率が概ね12〜16%で推移し、2025年には16.1%となった。過去10年のROE中央値は約14.5%で、借入依存も小さい。ただし、2026年上期にはソリューション事業の不採算案件と河川防災案件の減少により、全社営業利益が前年同期比31.2%減少した。専門サービスでも案件管理と稼働率によって利益が大きく変わることを示している。
増分の資本効率を評価すると、工場や大規模設備を増やさずに売上を増やせる点は有利である。顧客基盤を再利用できる製品化が進めば、追加投資に対する利益の増え方は大きくなる。ただし、開発要員の採用、給与引き上げ、品質管理、営業支援には毎年費用がかかり、利益を無条件に現金化できるわけではない。
事業の堀は「普通」と判断する。専門領域への参入障壁は確かにあるが、AIエージェントへの代替耐性や値上げを続けられる力については、なお証拠が不足している。財務の強さは大きな長所だが、親会社への多額の預け金には別の注意が必要である。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
建設DXには長期の需要がある。矢野経済研究所によれば、建築分野の建設テック市場は2023年度に約1,845億円で、2030年度に約3,043億円へ拡大すると予測されている。ただし、これは建築分野のソフトウエア・ソリューション市場であり、応用技術の製造業向けシステムや土木・環境解析のすべてを含む市場ではない。したがって、全社売上をこの数字で割って正確な市場シェアと呼ぶことはできない。
参考として、2025年の建設テック市場予測約2,262億円に対し、同社のソリューションサービス売上53.5億円をすべて建設向けと仮定しても、比率は約2.4%である。実際には製造業向け売上も含むため、建設テック市場全体に対する同社のシェアはそれより低いと考えるべきだ。市場にはAutodesk、大塚商会、福井コンピュータ系企業、多数の建設向けソフト開発会社が存在する。製品別の正確な各社シェアは公開資料から確認できなかった。
土木・環境関連では、建設コンサルタンツ協会の会員企業の2023年度売上が約1兆1,309億円に達する。応用技術のエンジニアリングサービス売上約21億円は、この広い市場に対して0.2%に満たない規模である。ただし、対象業務や集計年度が異なるため、これも厳密なシェアではない。日本工営、建設技術研究所、パシフィックコンサルタンツなど大手企業に比べ、応用技術は特定の解析・情報処理技術に絞った小規模な専門事業者と位置付けられる。
国土交通省は2023年度から直轄土木業務・工事でBIM/CIMの原則適用を進め、2026年3月にも関連要領を更新した。制度対応は需要を支えるが、普及が進めば基本的なモデル作成や属性入力は標準化される。AIはこうした定型作業を減らす一方、複雑な設計条件の検証、現地調査、行政との協議、説明責任のある専門判断の需要は残すだろう。
最大の構造変化はAIエージェント代替である。従来のソフト市場予測には、担当者が画面を操作する業務や、専門家が時間をかけてデータを処理する前提が含まれている。AIが図面の読解、モデル変換、資料作成、解析条件の設定まで担えば、顧客のDX投資額が増えても応用技術に支払われる人月や席数は減りうる。長期の競争相手は既存の専門会社だけでなく、Autodeskなどの基盤ソフト提供者、Microsoftを含むAIプラットフォーム、顧客自身の自動化システムになる。
建築需要にも限界がある。国内人口の減少は建築物の実質着工数量を押し下げる。老朽インフラや災害対策は下支えになるが、政府予算の制約も受ける。筆者は、建設・防災の社会的な必要性と、同社の従来型サービス売上の成長を分けて考える。
資本政策と M&A
中期経営計画「OGI GrowUp2028」は、2028年12月期の売上高100億円、営業利益15億円、営業利益率15%、経常利益15.1億円を目標としている。受託開発・受託解析とSaaS型事業の売上比率を、計画終了後に同程度へ近づける長期構想も掲げる。これは人員依存の収益から脱却する方向として合理的だが、SaaS事業の契約数や継続売上高について達成を保証する数値は示されていない。
2025年決算資料では、ソフトウエア販売の仲介契約化によって2028年売上が当初計画より約15億円小さくなる要因を認めながら、売上目標100億円を据え置いている。売上の会計表示が変わったこと自体は利益悪化ではないが、目標達成のために別の成長源を必要とする点は押さえるべきだ。2026年の会社予想は売上76億円、営業利益11億円であり、2028年目標までにはまだ距離がある。
株主還元は長期的な配当性向30%をめざす方針で、2025年実績の配当性向は25%である。2024年の配当水準から2025年に増配しており、実際の還元姿勢は改善した。ただし、DOEや総還元性向、自社株買い金額について具体的な数値の約束は確認できない。10年間の還元は基本的に累積利益の約30%を想定し、業績が悪化すれば配当額も抑える。
トランス・コスモスが議決権の約60%を保有する親会社であり、2025年末の上位10株主の持株比率は約82%に達する。親会社グループへの預け金は2025年末の43億円から2026年6月末に48億円へ増えた。資金運用による利息収入は得ているものの、少数株主が自社株買いや特別配当を直接決められる構造ではない。
過去10年の主な資本配分は、自社の人材・技術への投資と現金の蓄積であり、大規模買収による拡大は中心ではなかった。親会社による完全子会社化は将来の可能性として考える必要があるが、2026年10月23日時点で公表済みのTOB・MBO・上場廃止予定は確認できない。未発表の買収プレミアムは本質価値に織り込まない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
建設・製造業には複雑な現場条件と独自のデータ構造があり、AIだけで業務全体を完結するのは容易ではない。建物の設計データを施工、調達、設備メーカーの製品情報まで接続するには、標準ソフトの操作方法だけではなく、業界固有の業務知識が必要である。応用技術はBooT.one、toBIM、toDIM、WebLayoutPlannerなどを通じて、この境界部分に技術を蓄積してきた。
公共インフラの需要も強い。河川の氾濫解析、老朽上下水道の維持管理、環境アセスメントは、技術の発達によって仕事が消えるというより、分析対象が増え精度の要求が高まる可能性がある。地方自治体の財政制約はあるものの、災害やインフラ事故への対応を長期間停止することは難しい。BIM/CIMの制度対応が進めば、案件の種類も広がる。
経営が掲げるSaaS化にも期待できる。受託案件で得た知識を共通製品に取り込み、ゼネコンや設備メーカーに継続課金で提供できれば、追加の顧客を獲得する費用は下がる。AIによる自動化機能を自社サービスに組み込めば、技術者が直接作業する時間を減らしながら成果に対する対価を確保できる余地もある。ただし現時点では、その効果を売上金額で確認できないため、楽観側でもAIだけを理由に工数型・席課金型の数量拡大を仮定しない。
財務面の下支えも大きい。純現金が厚く、有利子負債に依存していないため、一時的な不採算案件や開発投資の失敗が直ちに会社の存続を脅かす可能性は小さい。新しいサービスの開発に試行錯誤を許す余力がある点は、小規模な技術企業として無視できない強みである。専門技術の事業化が成功すれば、株主価値は大きく高まりうる。
慎重な見方
最大の弱点は、人の作業時間を収益に変える事業構造である。BIMモデルの整備、CADデータの変換、設計情報の照合、定型解析、システム改修は、AIエージェントが扱いやすい領域に入る。受託先の大企業は自らAIを導入し、従来外注していた仕事を内部で処理するようになる可能性がある。工数が減れば、従来の契約形式で同じ売上を保つことは難しい。
自社ソフトウエアも安全ではない。BIM関連の製品はAutodeskなど外部の基盤ソフトと密接に結び付いている。基盤側に自動化機能が実装されれば、周辺ツールの独立した存在価値が縮む場合がある。人が画面を開いて操作することを前提とする機能は、AIが直接データを処理する時代には価格競争を受けやすい。BooT.oneの導入が当初想定より遅かった事実も、顧客基盤の拡大を当然視できない理由である。
2026年上期の減益は別の警告だ。売上が増加しても、一部の不採算案件や行政発注の遅れによって利益は大きく落ちた。河川防災のような社会的に必要な仕事でも、国の基準変更や地方自治体の予算執行によって受注時期は左右される。小規模企業では大型案件一つの採算悪化が全社利益に及ぼす影響も大きい。
潤沢な現金にも留保がある。その大部分は親会社グループ向けの預け金であり、預け先の信用状態やグループの資本政策から完全に独立していない。親会社が過半数の議決権を持つ以上、少数株主は現金の還元時期を決められない。低収益な投資に資金が回れば、帳簿の自己資本が増えても株主価値は増えない。AIによって収益基盤が縮む中で現金の利用効率も改善しなければ、現在の評価を正当化することは難しい。
どちらに重みを置いたか
防災・環境の専門技術が残るという主張には説得力がある。しかし、2025年時点の売上構造では、受託開発、操作型ソフト、定型解析が大きな割合を占める。AI代替を中立の数量減少に反映し、その影響を確率や資本コストで重複して引いてはいない。確率は上側27%、中立34%、下側39%とやや慎重に配分した。下側が厚い理由は、不採算案件の発生、SaaS導入の遅れ、親会社への資金集中が同時に確認できるためだ。厚い現金によって致命的な下振れは緩和されるが、期待価値は現時点の時価総額を下回る。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 2,302 円131 億円(+ 還元の換算額還元の合計 396 円23 億円)。 今の値に割り戻すと 1,422 円81 億円、今との差 −10.8%、 期待の年率 +5.9%(資本コスト 7.2%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 9% | 4,345 円248 億円 | 600 円34 億円 | +210.1% | +13.1% | 445 円25 億円 |
| やや楽観 | 18% | 3,498 円200 億円 | 518 円30 億円 | +151.7% | +10.6% | 723 円41 億円 |
| 中立 | 34% | 2,510 円143 億円 | 423 円24 億円 | +83.9% | +6.9% | 997 円57 億円 |
| やや悲観 | 25% | 1,368 円78 億円 | 323 円18 億円 | +6.0% | +0.6% | 423 円24 億円 |
| 悲観 | 14% | 613 円35 億円 | 175 円10 億円 | −50.6% | −7.5% | 110 円6 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,302 円131 億円 | 396 円23 億円 | +69.2% | +5.9% | 2,698 円154 億円 |
今の株価時価総額 1,595 円91 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 9% 専門技術の製品化と防災需要の拡大が成功 利益 14 億円 · PER 13.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 4,345 円248 億円
BIM/CIMを中心とする建設DXが普及し、応用技術の製品がゼネコン、設備メーカー、建材メーカーの間で広く利用される。WebLayoutPlannerやBooT.oneは顧客の業務データとの結合を強め、導入支援と保守・継続課金の収益性が改善する。個別受託の仕事は自動化されるが、複雑な顧客向けに成果を保証する案件は残る。
防災・環境分野では、中小河川の浸水対策、老朽水道、データセンターや都市開発の環境評価が増加する。現場条件と行政基準に責任を負う専門案件で市場シェアを拡大し、価格にも技術的な付加価値が乗る。設備・製造業向けの導入経験を競争優位として活用し、建設技術研究所など大手が扱う市場の一部を専門技術で獲得する。
SaaSと解析技術の再利用が進み、全社営業利益率は過去の最高期を少し上回る水準に達する。親会社との関係は維持しつつ、株主還元を着実に実施し、現金も積み上がる。大型買収の成功を前提とせず、自社製品の展開が中心となる。ただし、10年より先の人月型業務が再び高成長するとは評価しない。
- ソリューションサービス:受託開発・BIM導入支援:数量 149(年間提供技術者換算人年(人年・推定))× 価格 0.33(提供技術者換算1人年当たり売上(億円))→ 売上 49 億円・営業利益 10 億円。受託数量は現状を維持。高度な統合案件の構成増と名目単価の上昇により増収するが、AI需要だけを理由に工数を増加させない。
- ソリューションサービス:製品・SaaS・ソフト販売等:数量 600(年間有効企業契約換算数(契約年・推定))× 価格 0.03(1契約年当たり売上(億円))→ 売上 18 億円・営業利益 5 億円。契約換算数量は現状維持。自社製品の採用と継続利用の比重が高まり、保守・ライセンス等の収益性が改善する。
- エンジニアリングサービス:防災・環境・現場制度対応:数量 117(専門調査・防災環境評価案件数(件・年、推定))× 価格 0.25(1案件当たり平均収入(億円))→ 売上 29 億円・営業利益 9 億円。現場・制度対応案件は約1.30倍。都市型浸水、上下水道、環境評価の専門領域で受注を増やし、単価も高度化する。
- エンジニアリングサービス:定型解析・CIM情報処理:数量 120(デジタル解析・CIM支援案件数(件・年、推定))× 価格 0.07(1案件当たり平均収入(億円))→ 売上 8 億円・営業利益 2 億円。解析作業の案件数量は現状維持が上限。自動化による効率改善を利益率に反映するが、案件数増加は見込まない。
倍率:k=7.25%、g_long=0%、moat=normal。余剰現金105億円を除く事業の純利益は13.75−105×1.4%=12.28億円、事業自己資本は142.47−105=37.47億円で、事業ROEは約32.8%。RONICは約20.0%。正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)=13.793倍であり、上限そのものを採用する。会社全体の時価総額は事業純利益×PER+余剰現金105億円×戻り方0.75。現在の市場PERは倍率の根拠にしていない。
確率:建設・製造業の標準的な業務基盤への採用と、現場・制度対応型専門サービスの拡大がともに成功する場合である。中計のSaaS化方針は根拠になるが、AI製品による具体的な新規売上の実績が確認できないため、工数型・席課金型の数量は2025年を超えない。高い利益率を実現する連続成功の確率として9%。
やや楽観 18% 製品化は進むが受託業務も残る 利益 11 億円 · PER 13.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 3,498 円200 億円
建設業界のBIM活用が中堅ゼネコンや設備工事会社にも定着し、応用技術は既存顧客からの改修、追加機能、データ連携の仕事を継続して獲得する。製造業向けの顧客接点ソリューションも一定の採用を維持する。一方、顧客自身によるAI活用が進み、従来の受託開発の数量は減少する。
BooT.oneなどの自社製品は競合との価格競争を受けるが、既存顧客の設計情報や施工情報との接続によって継続利用が残る。AIによる画面操作の代替に対応しつつ、成果を確認する仕組みや外部データ連携の提供に移る。大幅なID数増加を前提としないため、収益の成長は中程度にとどまる。
環境・防災関連では、行政基準の変更と公共投資に対応し、河川や上下水道の専門案件が増える。大手建設コンサルタントとの競争は続くものの、特定の解析分野の技術力を維持する。投資は概ね自社開発中心で、大型M&Aによる拡大は想定しない。利益率は2025年に近い水準を維持し、蓄積した現金の一部が株主に還元される。
- ソリューションサービス:受託開発・BIM導入支援:数量 125(年間提供技術者換算人年(人年・推定))× 価格 0.33(提供技術者換算1人年当たり売上(億円))→ 売上 41 億円・営業利益 8 億円。数量は2025年の84%。開発支援工数は減るが複雑な顧客案件の単価を維持する。
- ソリューションサービス:製品・SaaS・ソフト販売等:数量 540(年間有効企業契約換算数(契約年・推定))× 価格 0.03(1契約年当たり売上(億円))→ 売上 16 億円・営業利益 4 億円。契約換算数量は90%。製品の継続利用が一定程度残り、価格は物価以下の上昇にとどまる。
- エンジニアリングサービス:防災・環境・現場制度対応:数量 105(専門調査・防災環境評価案件数(件・年、推定))× 価格 0.24(1案件当たり平均収入(億円))→ 売上 25 億円・営業利益 7 億円。案件数量は約17%増。インフラ維持管理と環境評価の専門需要を取り込む。
- エンジニアリングサービス:定型解析・CIM情報処理:数量 96.0(デジタル解析・CIM支援案件数(件・年、推定))× 価格 0.07(1案件当たり平均収入(億円))→ 売上 7 億円・営業利益 2 億円。AI代替で案件数量20%減。高度解析の比率を上げて単価と利益率を確保する。
倍率:余剰現金96億円の税後利息1.344億円を除く事業純利益9.256億円、事業自己資本35.45億円から事業ROEは約26.1%。k=7.25%、通常の堀の残存割合1/2でRONICは約16.7%。AI代替を踏まえたg_longは0%なので、正当化PERは1÷k=13.793倍。事業価値に余剰現金の戻り方0.75を反映する。
確率:BIM導入拡大と防災対策需要を取り込みながら、自社サービスの収益性を改善する場合である。受託・定型解析の工数は減少するが、案件の高度化で単価を確保する。中計の実行が一定程度成功する確率として18%。
中立 34% 専門業務は残るが開発工数とソフト利用数が縮小 利益 7 億円 · PER 13.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 2,510 円143 億円
2035年にはBIM/CIMの利用そのものは広がっているが、日常的なモデル作成、属性付与、図面照合、開発・改修作業の多くがAIによって自動化される。ゼネコンや製造業の顧客は、従来外注していた作業の一部を内製化する。応用技術は既存顧客との関係を維持するものの、受託開発の数量は約3割減少する。
BooT.oneや製造業向けソフトの契約は残るが、操作画面を利用する人員やライセンス数が減る。製品価格は物価上昇率ほどには上げられない。自社製品の価値は設計情報や顧客システムとの接続に残り、独立した作業画面の価値は低下する。完全なプラットフォームへの転換には至らず、受託と製品の混合型事業を続ける。
河川防災、環境アセスメント、上下水道維持管理は社会的な必要性から案件数を維持する。現場の確認や法令への適合、解析結果の説明には専門家が残るため、この分野が利益を支える。ただし、定型的な計算・情報処理の案件数は減少する。大型M&Aや親会社によるTOBを前提にせず、保有現金は引き続き増えるが、株主への還元は利益の約30%にとどまる。
結果として、名目売上は2025年と大きく変わらず、全社営業利益率は過去の高収益期を下回る。それでも無借金に近い財務と専門解析の利益が残るため、存続に大きな問題は生じない。
- ソリューションサービス:受託開発・BIM導入支援:数量 101(年間提供技術者換算人年(人年・推定))× 価格 0.32(提供技術者換算1人年当たり売上(億円))→ 売上 32 億円・営業利益 6 億円。AIエージェント代替で数量は0.678倍。物価3%の10年累積1.34倍より小さい1.27倍の名目単価上昇にとどまる。
- ソリューションサービス:製品・SaaS・ソフト販売等:数量 470(年間有効企業契約換算数(契約年・推定))× 価格 0.03(1契約年当たり売上(億円))→ 売上 14 億円・営業利益 3 億円。席課金・操作型ソフトとして数量は0.783倍、価格は1.086倍。基盤AIとの競争で価格上昇は物価を大きく下回る。
- エンジニアリングサービス:防災・環境・現場制度対応:数量 96.0(専門調査・防災環境評価案件数(件・年、推定))× 価格 0.23(1案件当たり平均収入(億円))→ 売上 22 億円・営業利益 6 億円。専門案件数は1.067倍。現場条件と制度対応の複雑化により単価は約1.39倍。AIによる定型作業の効率化は収益性にも反映する。
- エンジニアリングサービス:定型解析・CIM情報処理:数量 78.0(デジタル解析・CIM支援案件数(件・年、推定))× 価格 0.07(1案件当たり平均収入(億円))→ 売上 5 億円・営業利益 1 億円。デジタル解析の工数型数量は0.65倍。単価は1.30倍だが、数量減少を補えず減収となる。
倍率:資本コストk=7.25%、g_long=0%、moat=normal。全社純利益7億円には余剰現金84億円の税後利息約1.176億円を含むため、事業純利益は5.824億円。自己資本118.85億円から余剰現金84億円を除いた事業自己資本34.85億円に対するROEは約16.7%。RONIC=k+0.5×(ROE−k)で約12.0%。g=0%の正当化PERは13.793倍となる。事業純利益5.824億円×13.793倍+余剰現金84億円×0.75で時価総額約143.3億円。今の株価や同業PERは使っていない。
確率:公共インフラと製造業の専門需要は残る一方、AI代替によって開発工数と操作型ソフトの契約数量が減る中心的な筋書きである。過去の高収益が無条件に続くとはみないが、顧客基盤と現金を持つため急激な経営崩壊も想定しない。確率34%。
やや悲観 25% AI代替が受託開発を侵食し、価格競争が強まる 利益 3 億円 · PER 11.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,368 円78 億円
大手ゼネコンや製造業がAIエージェントを社内システムに接続し、従来外部に依頼していた図面変換、設計情報の管理、システムの改修作業を内部で処理する。応用技術の受託開発案件は減り、残る仕事も成果に対する厳しい価格交渉を受ける。顧客の自動化投資自体は続くが、その増加が同社の売上増加には結び付かない。
BooT.oneなどの製品も、Autodeskや他の基盤ソフトに自動化機能が追加されることで利用価値が削られる。既存の建設会社との関係は保たれるものの、新規契約を伸ばすのは難しくなる。製品ごとの開発投資が必要なため、売上減少に比例して費用を削ることもできない。
防災・環境分野では一定の仕事が続くが、行政の予算制約と入札競争によって単価の上昇は限られる。AIによる解析自動化の恩恵は顧客にも広がり、定型業務の外注数量は大きく減少する。自社の新規サービス投資が十分な収益を生まず、現金は残るが資本効率は低下する。配当は利益に合わせて縮小し、事業の優良さは一部失われる。
- ソリューションサービス:受託開発・BIM導入支援:数量 75.0(年間提供技術者換算人年(人年・推定))× 価格 0.30(提供技術者換算1人年当たり売上(億円))→ 売上 23 億円・営業利益 4 億円。AIによる内製化で数量は0.50倍。案件単価の上昇では固定費を十分に吸収できない。
- ソリューションサービス:製品・SaaS・ソフト販売等:数量 390(年間有効企業契約換算数(契約年・推定))× 価格 0.03(1契約年当たり売上(億円))→ 売上 11 億円・営業利益 2 億円。契約数量は0.65倍。利用者数削減と外部基盤への機能統合が進む。
- エンジニアリングサービス:防災・環境・現場制度対応:数量 83.0(専門調査・防災環境評価案件数(件・年、推定))× 価格 0.22(1案件当たり平均収入(億円))→ 売上 18 億円・営業利益 5 億円。現場・制度対応案件も公共発注の制約で約8%減少する。専門的な収益性は維持する。
- エンジニアリングサービス:定型解析・CIM情報処理:数量 55.0(デジタル解析・CIM支援案件数(件・年、推定))× 価格 0.06(1案件当たり平均収入(億円))→ 売上 3 億円・営業利益 1 億円。定型解析の外注数量は約54%減少し、単価の上昇余地も狭くなる。
倍率:余剰現金72億円を除く事業純利益は3.2−72×1.4%=2.192億円、事業自己資本は33.55億円でROEは約6.5%。k=7.25%を下回るのでPER上限は1/k=13.793倍。低収益な受託事業が残り、成長投資に対する超過収益が期待しにくい筋書きとして、悲観側の稼ぐ力に11倍を適用する。余剰現金72億円の戻り方0.75を足し、時価総額は約78.1億円。現在の純現金から運転資金等を控除した約35億円の床を上回る。
確率:工数型事業の内製化、SaaSの席数削減、定型解析の自動化が同時に進み、案件単価と利益率が低下する場合である。2026年上期の不採算案件は収益管理の難しさを示すため、十分な確率として25%を配分する。
悲観 14% 主要サービスの構造的な競争力を失う 利益 −3 億円 · PBR 0.6 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 613 円35 億円
AIエージェントが設計データの解析、CIM属性管理、システム改修などを標準機能として提供するようになり、応用技術の受託開発と独立したツール群の競争力が大きく低下する。建設会社やメーカーはAI機能を備えた大手基盤サービスに支出を集約し、周辺の専門ベンダーに依頼する工数を減らす。応用技術の開発・導入支援の売上数量は現在の3割程度となる。
自社製品は残るが、操作画面に対する継続課金が難しくなり、契約単価も下落する。環境・防災の専門業務は一定数が残るものの、大手建設コンサルタントとの競争に加え、行政の予算制約で十分な利益を得られない。定型解析業務はさらに縮小し、技術者の雇用維持と開発費が収益を圧迫する。
中期計画に基づくサービス化投資の一部が失敗し、利益剰余金は生産性の低い事業資産に固定化する。親会社による救済的な再編もありうるが、TOBが必ず高い価格で成立するとは仮定しない。最終年度は営業赤字となり、配当は途中から縮小または停止する。それでも過去に積んだ現金が残るため、価値は悲観的な売却可能資産を中心に測る。
- ソリューションサービス:受託開発・BIM導入支援:数量 45.0(年間提供技術者換算人年(人年・推定))× 価格 0.24(提供技術者換算1人年当たり売上(億円))→ 売上 11 億円・営業利益 0 億円。受託数量は0.30倍、単価も現状を下回る。専門技術の一部だけが残る。
- ソリューションサービス:製品・SaaS・ソフト販売等:数量 260(年間有効企業契約換算数(契約年・推定))× 価格 0.02(1契約年当たり売上(億円))→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。契約数量は0.43倍。価格競争と顧客の利用停止で利益率が大きく低下する。
- エンジニアリングサービス:防災・環境・現場制度対応:数量 65.0(専門調査・防災環境評価案件数(件・年、推定))× 価格 0.18(1案件当たり平均収入(億円))→ 売上 12 億円・営業利益 2 億円。現場・制度対応案件は約28%減少。専門的な判断が必要な仕事は残る。
- エンジニアリングサービス:定型解析・CIM情報処理:数量 28.0(デジタル解析・CIM支援案件数(件・年、推定))× 価格 0.05(1案件当たり平均収入(億円))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。AIによる定型解析代替で数量は0.23倍。利益を生む独立サービスとしての地位を失う。
倍率:最終年度は営業赤字であるため利益倍率を用いず、現在の売却可能資産の保守的な床35億円を価値の基礎とする。2025年末の自己資本62.5億円に対して35÷62.5=0.56倍。2035年の帳簿自己資本85億円に床の倍率を掛けることはしない。親会社グループ向け預け金の集中、運転資金、事業資産の処分損を考慮する。過去の株価の谷や市場PBRは根拠にしていない。
確率:AIによる開発工数の大幅減、BIM周辺機能の基盤ソフトへの統合、公共案件の失注、不採算投資が重なる構造的な負け筋である。現状の専門知識と現金から完全な事業消滅は考えにくいが、既存の収益構造を維持できない危険を14%とする。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
ソリューションサービス:受託開発・BIM導入支援
製造業の顧客接点システム、BIM/CADの導入、業務システムの受託開発や個別改修。AIエージェント代替の区分は「人月・工数で売る」である。
| 数量年間提供技術者換算人年(人年・推定) | 価格提供技術者換算1人年当たり売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 149 | 0.25 | 37 | 7 |
| 10 年後 中立 | 101 | 0.32 | 32 | 6 |
取り方:2025年有報でソリューションサービスの従業員は149人、会社開示のセグメント売上は53.47082億円、セグメント利益は10.8468億円。実際の請求人月は非開示であるため、149人を年間提供能力の代理変数とし、1人年約2,513万円の受託開発・導入支援売上と仮定した。これは実稼働人年の公表値ではない。受託部分37.45億円は149人×0.251342億円という原価・人的供給能力からの推定であり、残りは製品・ライセンス等に分類する。2026年上期には不採算案件が発生しているため、利益率の継続は保証されない。出典:https://edinetdb.jp/company/E05282/text
ソリューションサービス:製品・SaaS・ソフト販売等
BooT.one、WebLayoutPlanner、PLEXなどの製品と保守・継続利用収入、および他社ソフトの販売仲介を含む分析上の残余区分。自社SaaSだけの実売上ではない。AI代替の区分は主として「席課金・操作画面中心」である。
| 数量年間有効企業契約換算数(契約年・推定) | 価格1契約年当たり売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 600 | 0.03 | 16 | 4 |
| 10 年後 中立 | 470 | 0.03 | 14 | 3 |
取り方:会社はBooT.oneの契約社数、ID数、SaaS売上比率を十分に定量開示していない。会社開示のソリューションサービス売上53.47億円から、149人の技術者供給能力を基に推定した受託収入37.45億円を差し引いた16.02億円を、製品・保守・ライセンス等の分析上の代理額とした。年間600契約換算、平均267万円という設定は顧客別売上の規模を表現するための仮定であり、実際の契約数ではない。2024年11月以降のソフトウエア販売仲介契約化により、取扱高と計上売上が一致しない。独自の記録の正本として扱える定量的証拠が不足するため、SaaS型のAI代替前提を適用する。
エンジニアリングサービス:防災・環境・現場制度対応
河川・内水氾濫、上下水道、津波高潮、都市環境アセスメントなど、現場条件の調査、行政基準への適合や専門家の説明責任を伴う案件。AI代替では「建設コンサルの許認可・現場業務」の区分を適用する。
| 数量専門調査・防災環境評価案件数(件・年、推定) | 価格1案件当たり平均収入(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 90.0 | 0.17 | 15 | 4 |
| 10 年後 中立 | 96.0 | 0.23 | 22 | 6 |
取り方:2025年のエンジニアリングサービスの会社開示売上は21.06977億円、セグメント利益は約6.44億円、従業員85人。河川防災、環境影響評価、上下水道維持管理など現場条件・制度適合のある業務を売上の約71%と仮定し、年90件、1件約1,656万円の専門案件に換算した。案件単価と件数は非開示であり推定である。残り約29%を純粋なデジタル解析・CIM支援として別区分にした。建設コンサルタンツ協会の2023年度会員売上約1兆1,309億円を広い比較市場とするが、当社の専門分野だけの実際のシェアとは異なる。出典:https://www.jcca.or.jp/work/introduction/current_state.html
エンジニアリングサービス:定型解析・CIM情報処理
BIM/CIMデータの整備、GIS、シミュレーションの前処理、モデル変換、解析支援ツール開発など、デジタル作業を主体とする業務。AI代替の区分は「人月・工数で売る」である。
| 数量デジタル解析・CIM支援案件数(件・年、推定) | 価格1案件当たり平均収入(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 120 | 0.05 | 6 | 2 |
| 10 年後 中立 | 78.0 | 0.07 | 5 | 1 |
取り方:会社開示のエンジニアリングサービス売上約21.07億円から、現場・制度対応型専門業務の推定14.90億円を除いた6.17億円を配分した。年120案件、1件約514万円という換算は、比較的小規模な情報処理・解析案件の単価を表す仮定であり、契約書・受注件数から確認したものではない。会社はこの内訳を開示していない。AIで図面作成、属性付与、資料化が自動化されるほど、工数型の売上数量が減ると見込む。
リスクと懸念
AIエージェント代替
受託システム開発、BIMモデル作成、設計情報の照合、定型解析、操作型ソフトの利用という、現在の収益の大きな部分がAIに置き換わる可能性がある。自動化で顧客の投資効率が高まっても、応用技術の請求人月や契約席数は減少しうる。特に大手顧客の内製化が進むと、従来の顧客関係を維持しても売上単価と数量の双方が圧迫される。
BIM基盤ソフトへの依存
BooT.oneなどの周辺製品は、Autodeskをはじめとする基盤ソフトの機能や仕様変更に影響を受ける。AIによる自動設計や属性管理が基盤側に取り込まれれば、周辺ツールの独立した課金価値は下がる。外部ソフトの販売仲介契約の条件変更も、利益や売上計上額に影響する可能性がある。
親会社への預け金集中と少数株主の資本配分リスク
2026年6月末の現金同等物約55.2億円のうち48億円は親会社グループへの預け金である。預け先の信用状態やグループ内での資金利用方針に影響されるため、通常の独立企業の余剰現金とは異なる。親会社が議決権の約60%を保有し、少数株主は還元方針を決められない。帳簿に多額の現金があっても、市場価値へ全額を直結させるのは適切でない。
受託開発の採算悪化
2026年上期には一部のソリューション案件で不採算が生じ、全社営業利益は前年同期比31.2%減少した。案件ごとの仕様変更、納期遅延、追加工数、顧客との責任分担は利益率を左右する。高度な専門技術を持つことと、案件を常に利益の出る価格で請け負えることは同じではない。
公共予算と行政基準の変更
河川防災、上下水道、BIM/CIM関連業務は行政の基準や予算執行に左右される。2026年上期にも一級河川向け対策の一巡と中小河川の基準変更により、地方自治体の発注が遅れた。社会的に必要な仕事であっても、案件の発注時期、競争入札、予算制約によって利益は変動する。
SaaS化の実行と資本効率
中期計画は将来的に受託とSaaSの売上比率を同等にする方向を掲げている。しかし、BooT.oneの導入拡大は当初想定の速度に達しておらず、SaaSの契約数・解約率・継続売上比率も十分に開示されていない。新製品への投資が競争優位を作れなければ、現金を使って帳簿資産を増やしても、株主の本質価値は増えない。
今後の分かれ目
- BooT.oneやtoDIMなどの自社製品について契約数・継続売上・解約率が開示され、顧客基盤の拡大と継続課金が確認できたら
- 受託中心の推定を見直し、製品・SaaSの利益割合を引き上げる。解約率が低く、値上げやデータ蓄積について複数の証拠が示されれば、その部分の堀を強く評価する。
- AIによる設計・解析の自動化を自社サービスとして販売し、増加した売上や利益が金額で確認できたら
- AIを利益率改善だけでなく独立した収益源として評価する。工数型数量の減少を再点検し、上側の筋書きを厚くする余地が生じる。
- 受託開発の不採算案件が繰り返され、会社全体の営業利益率が一桁で定着したら
- AI代替とは別の案件管理・価格交渉力の問題として、中立の利益率をさらに引き下げ、やや悲観の確率を上げる。
- グループへの預け金が減り、その資金が特別配当や継続的な自社株買いに振り向けられたら
- 余剰現金の株主への戻り方を0.75から1.0へ見直し、利益価値とは独立して本質価値を上方修正する。預け金の単なる振替では変更しない。
- 国土交通省や自治体のBIM/CIM・防災・上下水道関連予算が継続的に増え、同社の専門案件受注が増加したら
- 現場・制度対応型エンジニアリングの数量を上方修正する。ただし、計算・データ処理の自動化による工数減少と区別して評価する。
- 親会社による公開買付けや株式交換を伴う完全子会社化が正式に公表されたら
- 通常の10年後の独立企業価値評価を停止し、正式な対価、取引条件、少数株主保護の手続きに基づいて判断する。未発表の買収期待だけで価値を引き上げない。
見ておくもの
- ソリューションサービスの受注高・受注残高と不採算案件の発生状況
- BooT.one、toBIM、toDIM、WebLayoutPlannerなどの顧客数・契約数・継続収益比率の開示
- 2028年の中期計画で掲げる売上100億円、営業利益15億円に対する実際の進捗
- エンジニアリングサービスにおける防災・環境・CIM案件の受注とセグメント利益率
- AIによる図面作成・設計情報処理・解析自動化の商用サービス売上
- トランス・コスモスグループへの預け金残高と受取利息、回収状況
- 配当性向30%の実現状況と自社株買い・特別配当の有無
- 国土交通省のBIM/CIM関連基準、地方自治体の浸水・上下水道対策の発注動向
倍率と資本コストの決め方
現在の基準時価総額は1610円×5709700株で約91.93億円だが、この数字から10年後の売上や倍率を逆算していない。2025年の会社開示売上74.54億円を、技術者の供給能力、製品契約の推定、専門案件件数、定型解析案件数に分けた。公表されていない内訳は推定であると明記した。2026年6月末の短信で確認できる実際の発行済株式5716800株、自己株式7169株との差は、添付basisの7100株との差69株であり、基準株数への影響は軽微である。
AI代替は工数型の中立数量0.55~0.75倍、席課金型0.70~0.90倍、長期g=0%に反映した。同じ理由を資本コストのlifeや追加の確率割引で重ねていない。ROEは利益と自己資本の結果から計算し、長期成長率の根拠としていない。中立のPERは正当化式の上限13.793倍であり、市場の過去PERや同業PERからは導いていない。
余剰現金は2025年末の純現金50.8億円から運転資金等を除いた35億円を起点とする。各筋書きのexcess_cash_okuは10年間の内部留保や投資の結果として2035年末に残る資金の推定であり、別途自動加算する留保現金との二重計上はしない。現金の税後利息1.4%を事業利益から除き、帳簿現金の戻り方0.75を適用した。悲観は将来の帳簿自己資本ではなく現在の売却可能資産約35億円を床に用いた。新リース会計による将来の表示変更があっても、事務所家賃を営業費用とする比較可能な利益の形にそろえる。
資本コスト7.25%で10年後の時価総額を割り引き、10年間の還元を期間中央で割り引いた加重期待価値は約81.2億円である。現在の時価総額約91.9億円に対する差は約-11.6%で、判定は「やや割高」となる。TOB・MBO・上場廃止予定は直近開示で確認できず、2026年8月12日の中間短信では継続企業の前提に関する注記は「該当事項はありません」とされている。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。無リスク金利3%、株式リスクプレミアム4.5%の基本7.5%から、財務の安全性と業績変動の小ささ、限定的な価格交渉力をqualityで調整し7.25%とした。親会社への預け金や個別案件の失敗はkに上乗せせず、悲観の筋書きと現金の戻り方で考慮する。