結論
fonfunは、SMS配信や業務向けクラウドサービスを基盤に、システム開発と技術者派遣の会社を次々と買収している小型のIT企業である。筆者の結論は「割高」だ。経営再建の実績は評価するが、10年後の株主価値を決めるのは買収した事業がどれだけ残るかであり、その見通しはまだ不確かである。
2023年にサイブリッジグループの傘下へ入り、経営方針は大きく変わった。長く停滞していた売上高は2026年3月期に21億円を超え、営業利益も創業来最高水準となった。さらに会社は2029年3月期に売上高100億円、調整後EBITDA20億円を目指す。買収案件の発掘、資金調達、事業統合を繰り返す経営能力は、一定の成果を示し始めている。
しかし、成長の主役になったSESと受託開発は、人の稼働時間を売る事業である。AIエージェントが開発、試験、保守、社内業務を直接処理する時代には、顧客が買う人月そのものが減りうる。業務SaaSも、利用者が画面を操作する価値が薄れれば、契約ID数や利用料金に下押し圧力がかかる。会社自身が中期計画でこの変化を明確に認識している点は評価できるが、対抗策の収益化はまだ実証途上にある。
現在の時価総額は約68億円で、純有利子負債は約6億円ある。2026年3月期の高い純利益には繰延税金資産の計上益も含まれるため、表面上のROEをそのまま長期の稼ぐ力と見なすことはできない。買収により増えたのれんや顧客関連資産も、事業が衰退した時に現金として戻る資産ではない。
5つの筋書きを資本コストで現在価値に直すと、本質価値は約26億円となり、現在の時価総額を約62%下回る。大きな成功を収める筋書きには上値があるものの、それには買収の継続成功と高い利益率の維持が必要だ。企業の再生を認めることと、現在の株価に十分な安全域があると判断することは別である。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主の見方では、fonfunは優良な単一事業に投資する会社というより、経営者の資本配分能力に賭ける会社である。SMS配信の既存事業は比較的理解しやすい。顧客の業務システムからメッセージを送る仕組みには一定の継続性があり、契約が残る限りキャッシュフローも期待できる。ただし価格決定力は限定的で、独占的な通信基盤を所有しているわけではない。
買収による成長は、低価格で取得できる会社を見つけ続けられるかに依存する。現在は買収規模が小さく、売り手の高齢化や事業承継需要を背景に案件を探せる。しかし買収企業が増えれば、本社の管理能力や資金調達力が制約になる。買った事業の営業利益を合計するだけでは不十分であり、借入金の返済、追加投資、のれん償却を差し引いた利益が株主のものになるかを見る必要がある。
最大の不確実性は、10年後に人の時間を売るビジネスがどれほど残るかである。AIエージェントは単なる開発補助ではなく、ソフトウェアを利用する側の作業まで自動化する。その結果、従来の契約人数や利用席数が顧客の支払額を決める仕組みは弱まる。会社はAI活用による生産性改善を掲げているが、それが顧客への価格交渉力につながるとはまだ証明されていない。
経営者が株主と同じ利益を追求する仕組みは重要だ。定額役員報酬を抑え、自ら株式を保有する姿勢は望ましい。しかし支配株主が存在し、新株予約権による希薄化も見込まれる以上、株主全体の利益と既存の少数株主の取り分は区別する必要がある。
筆者は、この会社を理解不能な事業とは考えない。むしろ買収対象、利益率、資金調達という観察すべき点は明瞭である。ただし収益の寿命と将来の買収成果には幅が大きく、長期の価値を高い確信度で予測できない。現在の価格には、その不確実性に見合う安全域が不足している。
何で稼ぐ会社か
fonfunの事業は、クラウドソリューションとDXソリューションに分かれる。2026年3月期の売上高は前者が約9.6億円、後者が約11.5億円である。営業利益への貢献はクラウドの方が大きいが、従業員の多くはDX事業に所属する。会社は既存サービスを維持しながら、買収によって事業構成を変えている。
クラウド事業の代表的なサービスは「バンソウSMS」である。企業が予約確認、支払督促、本人認証、顧客への通知などを短文メッセージで送る仕組みを提供する。APIで顧客のシステムと連携でき、送信量に応じた収入が得られる。サービス開始以来の導入実績は累計6,000件を超えるが、現在の稼働顧客数や年間配信通数は開示されていない。SMS送信という実際の処理に対価が発生するため、単純な席課金SaaSよりAI代替の直接的な影響は小さい。
同じクラウド事業には、古くから続く「リモートメール」、クラウド電話の「CallConnect」、飲食店向け日次決算サービス「れすだく」がある。2026年5月には営業支援SaaS「Sales Performer」を取得した。これらは継続課金収入を生む反面、機能や操作画面で競争する部分も多い。顧客の業務記録を他社が代替できない形で独占しているわけではない。
DX事業では、技術者派遣型開発、チームによる準委任開発、請負型開発を提供する。グルーコードコミュニケーションズ、マイクロウェーブデジタル、YNPなどの買収によってエンジニア組織を拡大した。YNPには女性を中心とする人材派遣の事業基盤があり、2026年10月に取得したICSは通信設備関連の開発・保守も手がける。顧客に技術者を継続配置することで毎月収入が入るが、利益は稼働率、人件費、契約単価に左右される。
現在の経営のもう一つの重要な機能はM&Aそのものである。黒字の小規模なIT事業を比較的低い価格で取得し、管理体制や営業を改善して収益を積み上げる。買収価格の規律が守られれば価値を生むが、会社全体の規模が大きくなるほど案件の発掘と統合は難しくなる。10年後には、既存のSMS会社というより、複数のIT事業を保有する企業群としての評価が適切になる可能性が高い。
優良さと弱いところ
最大の強みは、既存のクラウド事業が小規模ながら安定した利益を生んでいることである。2026年3月期のクラウド事業の営業利益率は約36%に達した。SMSのAPI連携、顧客システムとの接続、既存顧客への継続提供には乗り換えの手間がある。会社はこの事業が生む利益を買収資金や本社機能の維持に活用できる。
ただし、これは強固な独占的地位とは異なる。SMS配信市場にはNTTコムオンライン、メディア4u、アクリート、AI CROSSなどの有力企業が存在する。fonfunは年間配信通数、解約率、顧客当たり売上、継続的な値上げ実績を十分に開示していない。買収したSaaSも、年単位の移行期間、規制による囲い込み、独自データの不可欠性といった強い堀を裏付ける証拠は確認できない。
DX事業の優位性はさらに限定的だ。国内の受託開発と技術者派遣には大手から中小企業まで多数の競合がある。顧客との関係、業務知識、技術者の確保は営業上の強みだが、それだけで長期の値上げ力が保証されるわけではない。AIによって同じ成果を少人数で出せるようになると、従来の稼働時間を売る構造は弱点になる。
経営面では、2023年以降の判断には評価すべき点がある。旧来の事業に固執せず、黒字事業の買収を進め、初期の中期計画の業績目標を達成した。買収時のEBITDA倍率を原則5倍以内とする考えも、無制限に高値を払う経営より健全である。しかし、買収で獲得した利益が追加の借金やのれん償却を差し引いても株主の利益になるかは、まだ長期で確認できていない。
2026年3月期末の自己資本は約13.4億円だが、のれんが約13.5億円ある。翌四半期にはのれんがさらに増えた。会計上の利益率が高くても、買収した事業の収益力が落ちれば資本効率は急速に悪化する。筆者は、現時点の堀を会社全体としては弱いと判断する。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の情報サービス業は大きな市場であり、2024年の売上高は約33.6兆円に達する。情報サービス産業協会の統計では、受注ソフトウェアが売上の約53.5%を占める。これに対してfonfunのDX事業の売上は約11.5億円にすぎず、広い受託開発市場でのシェアは0.01%未満と推定される。したがって市場全体の拡大余地は大きいが、競争相手に対する規模の優位性はほぼない。
SES市場では、人手不足がこれまで契約人数と単価の増加を支えてきた。技術者を採用して顧客に派遣する事業者には、SHIFT、システムサポート、ヒューマンクリエイションホールディングスをはじめ多くの競合がある。しかし今後は、AI駆動開発によってプログラム作成、検証、保守の必要工数が減る可能性が高い。開発需要そのものが増えても、必要人月は同じ割合で増えない。長く持つ株主は、この二つを区別しなければならない。
国内SaaS市場は拡大しているが、従来の席課金モデルがそのまま続くとは限らない。Microsoft、Salesforce、国内業務ソフト会社などがAIエージェントを組み込むことで、利用者が複数の画面を操作する必要は薄れていく。顧客が業務結果に対価を払う方向に変われば、単独の操作画面を提供する小規模SaaSは価格交渉で不利になる。フォンファンの営業支援や業務管理の製品も例外ではない。
SMS市場には別の性質がある。法人向けSMS配信数は2024年度の約38億通から、調査機関の予測では2030年度に140億通を超える可能性が示されている。本人認証、予約通知、督促、業務連絡などの利用が拡大するためだ。ただし配信通数の増加と事業者の利益成長は同じではない。大手アグリゲーターとの価格競争があり、パスキー認証やRCSへの移行によってSMSの用途構成も変わりうる。
筆者は、2036年にかけてSMSの物理的な配信需要には一定の成長余地があると見る。しかしfonfunの市場シェアが大幅に高まる証拠はまだない。一方、SESと業務SaaSの既存契約数量には減少圧力を見込む。企業買収によってグループの売上高は増えうるが、それは既存市場での競争力が自然に強くなることとは異なる。長期の市場成長率より、AI普及後の顧客が何に対価を払い続けるかが重要になる。
資本政策と M&A
資本配分はこの会社の投資価値を左右する中心的な論点である。2023年の経営体制変更以降、買収を成長戦略の主軸に据え、クラウド電話、飲食店向けSaaS、システム開発、SESなどへ事業を広げた。2026年3月期までに積み重ねた買収では、EBITDAに対しておおむね低い倍率で取得する方針を維持している。ただし、過去10年全体の増分ROICが継続的に資本コストを上回ったという実証には至っていない。
2026年5月25日に発表した第二次中期経営計画では、2029年3月期に連結売上高100億円、調整後EBITDA20億円、時価総額300億円を掲げた。営業利益率10%以上、EBITDAマージン20%前後を意識し、約50億円の買収資金調達を想定する。財務規律としてD/Eレシオ1.0〜1.5倍以内を目標にしており、銀行借入を中心としながら新株予約権や株式対価も活用する方針である。ROICが資本コストを上回ることも掲げるが、長期ROEの確定的な数値目標はない。
株主還元については、配当性向、DOE、総還元性向、自社株買い金額の具体的な数字の約束はない。2025年に初めて記念配当を実施したものの、2026年8月の説明会では当面無配を継続する方針を示した。株主優待も検討事項にとどまり、実施を前提にした還元価値は数えない。
支配株主のサイブリッジ合同会社は合算対象を含め約62%の議決権を持つ。上位10株主の保有比率も高く、少数株主が資本配分を直接変える力は限られる。一方、経営者自身が大株主として株主価値を意識していることは評価できる。2023年のTOBは経営体制変更を目的とした過去の取引であり、現在公表されている上場廃止予定ではない。
今後の焦点は、借金を増やして取得した事業が、金利4%前後の環境でも十分な利益を生むかである。買収先ののれんは7〜10年で償却する方針だが、償却を足し戻したEBITDAだけで価値を判断してはならない。少数株主の利益は、買収資金と償却費、追加の管理費を差し引いた後に残る。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
fonfunの経営陣は、2023年以降の短期間で停滞企業を成長企業へ変えた。最初の中期経営計画では売上高、EBITDA、エンジニア数などの目標を達成し、買収の発掘から統合までの手順を実際に作り上げた。これは単なる目標の発表ではなく、経営能力を測る実績である。中小IT企業には事業承継の問題を抱える会社が多く、黒字で継続収益を持つ事業を低い倍率で買える機会は今後も存在する。
買収した企業に共通の財務管理や営業を導入できれば、独立して経営していた時より利益率を高められる。Sales Performerのように既に高い営業利益率を持つサービスを取得できた事例もある。銀行借入を中心に資金を調達し、少数株主の希薄化を抑えながら企業規模を拡大することも可能だ。取得事業から生まれたキャッシュフローを次の買収に使えば、利益の再投資が継続的な複利成長を生む余地がある。
AIの普及も必ずしも悪いことだけではない。管理部門や開発工程を自動化することで、買収した会社の重複業務を減らせる。業務の複雑な中小企業では、AIの導入を支援する人材やシステム開発の需要が残る可能性もある。SMSは画面操作を売るサービスではなく、企業と利用者の間で実際に通知を届ける機能なので、AIによって全面的に消える性質ではない。
こうした強みが連続して成果につながれば、2036年の会社規模は現在とはまったく違うものになる。買収先の利益率が改善し、財務規律を維持できれば、現在の時価総額を大きく上回る価値を作ることは不可能ではない。会社が掲げる2029年の目標を、長期成長の途中経過とみなせる道も残っている。
慎重な見方
これまでの成長の大部分は、既存事業の競争力向上ではなく企業買収による売上高の取り込みである。買収によって増えた売上を、自社の製品が顧客からより強く選ばれるようになった証拠と混同してはならない。2026年3月期のDX事業の利益率は約10%で、クラウド事業より大幅に低い。買収を重ねても、人件費、顧客との契約条件、稼働率という制約は残る。
AIエージェントによる変化は、まさに同社が買い集めている事業を直撃する。受託開発、技術者派遣、営業管理SaaSでは、顧客が外部に依頼する作業量そのものが減りうる。開発者一人当たりの生産性が上がっても、契約人月を減らす交渉力は顧客側にある。自社の作業をAIで効率化できることと、その利益を長期にわたり自社で獲得できることは別問題である。
財務面にも脆さがある。2026年3月期末ののれんは自己資本とほぼ同額であり、翌四半期にはさらに増えた。買収に伴う借入金も拡大している。営業利益から税金や金利を支払った後の現金が十分に増えなければ、次の買収は借入か株式発行に頼ることになる。利益成長と同時に株式数が増える場合、会社全体の価値が拡大しても既存株主の取り分は薄くなる。
経営陣は取得時のEBITDA倍率を重視するが、買収価格が安いことだけでは成功にならない。売上や利益がAI代替で減る企業は、取得時に低い倍率でも実際には割高だった可能性がある。取得したのれんが減損される局面では、過去の高ROEも将来の株主価値を保証しない。
現在の株価に対して十分な価値を生むには、単に2029年の目標に近づくだけでなく、その後も高収益の買収を成功させ続ける必要がある。買収先の利益を長期で維持できる証拠がまだ少ない以上、経営者の能力への期待だけで高い値段を払うのは危険である。
どちらに重みを置いたか
事業再建と買収の実行力では強い見方に相応の根拠がある。しかし、10年後の収益の持続性では慎重な見方が優勢だ。既存DX事業の人月縮小と買収先の収益維持を別々に考えても、借入・のれん・希薄化の不確実性は残る。確率は楽観側27%、中立30%、悲観側43%とし、下側を厚くした。これはAI代替による数量縮小を確率でもう一度差し引くためではなく、買収案件の長期的な成否と財務負担が非対称だからである。加重した現在価値は約26億円であり、現在の約68億円に対して大きな割高と判断する。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 265 円56 億円(+ 還元の換算額還元の合計 8 円2 億円)。 今の値に割り戻すと 123 円26 億円、今との差 −58.5%、 期待の年率 −0.8%(資本コスト 8.5%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 9% | 1,003 円211 億円 | 30 円6 億円 | +249.3% | +13.6% | 93 円20 億円 |
| やや楽観 | 18% | 499 円105 億円 | 17 円4 億円 | +74.5% | +5.8% | 93 円20 億円 |
| 中立 | 30% | 244 円51 億円 | 9 円2 億円 | −14.7% | −1.6% | 76 円16 億円 |
| やや悲観 | 28% | 38 円8 億円 | 0 円0 億円 | −87.2% | −18.6% | 11 円2 億円 |
| 悲観 | 15% | 9 円2 億円 | 0 円0 億円 | −97.0% | −29.7% | 1 円0 億円 |
| 加重平均 | 100% | 265 円56 億円 | 8 円2 億円 | −7.5% | −0.8% | 274 円57 億円 |
今の株価時価総額 296 円62 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 9% 買収の規律と高収益化が長く続く 利益 20 億円 · PER 11.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,003 円211 億円
買収能力が持続的な競争力となり、事業群の規模が大幅に広がる。2029年の中期計画を達成した後も事業承継を求める中小IT企業を取得し、統合によって管理費や営業費を抑えられる。黒字のSaaSと保守事業の比率を高め、買収価格と借入金の管理にも成功する。2036年の売上高は約195億円となり、営業利益率も高い水準で維持される。
SMSは国内市場の拡大を取り込み、現在の小さなシェアを維持しながら配信数量を伸ばす。業務SaaSでは契約人数の増加は期待しないものの、顧客離れを防ぎ、料金も比較的維持できる。既存のSES事業はAIによる代替を受けるが、利益率の高い案件へ移行して単価と収益性を改善する。
追加で取得した事業の数が多くても、買収時の安い取得価格を維持できる。のれん償却を含めた営業利益が大きく増え、買収先でのAI活用は顧客への新規AI売上ではなく、主に自社の費用削減として成果を生む。営業利益約32.7億円、純利益約19.6億円を確保し、買収資金の返済と限定的な株主還元を両立する。既存株主の希薄化が小さいことも、この成功の重要な条件となる。
- クラウド:SMS配信・従量型通信サービス:数量 72,000,000(年間の法人向けSMS配信通数(通))× 価格 12(SMS1通当たり実現売上(円、名目))→ 売上 8 億円・営業利益 3 億円。国内SMS配信市場の拡大を獲得。数量は2.4倍、名目単価は1.15倍。値下げ競争を受けつつ、高付加価値の通知で利益率を維持。
- クラウド:その他のSaaS・リモートサービス:数量 3,000(年間有料契約換算数(契約、推定))× 価格 25(年間契約当たり売上(万円、名目))→ 売上 8 億円・営業利益 3 億円。AI代替を考慮して契約数量は現在と同水準にとどめる。単価は1.15倍で、物価累積上昇1.34倍を下回る。
- DX:既存のSES・受託開発:数量 131(年間稼働技術者換算(人年))× 価格 12(稼働人年当たり売上(百万円、名目))→ 売上 15 億円・営業利益 2 億円。既存の人月数量は楽観でも増えない。名目単価1.34倍と高付加価値案件への移行で利益率を改善。
- 2026年3月期末以降のM&A取得事業群:数量 21.0(被買収事業の年間売上換算案件数(件、AIによる残存数量を調整済み))× 価格 7.80(案件1件当たりの年間売上換算(億円、名目))→ 売上 164 億円・営業利益 30 億円。売上6億円相当の新規案件を累計約25件取得し、AI代替後に84%の事業数量が残る。単価1.30倍。買収先の統合に成功し営業利益率18.5%。
倍率:k=8.5%、2036年のROE約20.4%、堀の残存割合1/3からRONIC約12.5%。AI代替を含む長期名目成長率g_long=0%を採用し、正当化PER=(1−g/RONIC)/(k−g)=11.765倍。楽観でも市場の過去倍率やAIへの期待による上乗せを行わない。
確率:中期計画を上回る買収機会を長期にわたり獲得し、取得先の利益率も改善させる必要がある。経営再建の実績はあるが、10年間で大規模な再投資を成功させ続ける条件は厳しいため9%とした。
やや楽観 18% 買収の拡大と利益改善が続く 利益 10 億円 · PER 11.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 499 円105 億円
中期計画の実行が概ね順調に進み、買収による事業拡大が継続する。2029年の売上高100億円目標に多少遅れが生じても、その後の取得案件と既存事業の維持によって2036年には売上高約116億円に到達する。買収したSaaS事業の継続課金収入が安定し、SES事業でも高単価の契約を一定程度確保できる。
AIエージェントは業界の人月需要を削るため、既存のDX事業の稼働人数は減る。しかし顧客との関係が長く続く案件や、高度な判断を必要とする開発業務は残る。買収企業でもAI活用が進み、事務費用の削減と稼働率改善が収益を支える。新規のAI商品の大きな売上を仮定する必要はない。
SMSは送信量の増加が続き、既存サービスの利益率も大きくは崩れない。買収先では小規模な統合費用や顧客離脱が発生するものの、全体としてはプラスの利益を生み続ける。営業利益は約15.7億円、純利益は約9.8億円となる。資本政策では借入を中心にし、将来の自社株買いや配当は控えめにとどまる。
- クラウド:SMS配信・従量型通信サービス:数量 60,000,000(年間の法人向けSMS配信通数(通))× 価格 11(SMS1通当たり実現売上(円、名目))→ 売上 7 億円・営業利益 2 億円。メッセージ配信量は2倍。名目単価は1.10倍にとどまるが、継続需要で高利益率を維持。
- クラウド:その他のSaaS・リモートサービス:数量 2,700(年間有料契約換算数(契約、推定))× 価格 25(年間契約当たり売上(万円、名目))→ 売上 7 億円・営業利益 2 億円。AI代替後の契約数量は0.90倍、名目単価は1.15倍。
- DX:既存のSES・受託開発:数量 112(年間稼働技術者換算(人年))× 価格 12(稼働人年当たり売上(百万円、名目))→ 売上 13 億円・営業利益 1 億円。既存人月は0.85倍、名目単価は1.33倍。開発品質の向上と稼働率改善で利益率11%。
- 2026年3月期末以降のM&A取得事業群:数量 12.0(被買収事業の年間売上換算案件数(件、AIによる残存数量を調整済み))× 価格 7.50(案件1件当たりの年間売上換算(億円、名目))→ 売上 90 億円・営業利益 14 億円。累計約16件相当の新規事業を取得し、AI代替後の残存数量75%。名目単価1.25倍。
倍率:k=8.5%、事業ROE約14.8%、堀の残存割合1/3。長期成長率はAI代替を踏まえた名目0%。正当化PER=(1−g/RONIC)/(k−g)の上限11.765倍とする。
確率:比較的低い取得価格でのM&A実績を踏まえれば、事業規模を大きくできる可能性はある。ただしSES事業の利益率改善と買収後の統合成功を複数年続ける必要があるため18%とした。
中立 30% 買収は続くが既存事業の人月が縮む 利益 5 億円 · PER 11.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 244 円51 億円
経営陣は買収を続けるが、すべての案件で大きな利益を得られるわけではない。2027年以降に取得した事業は収益を増やすものの、同時に人件費、管理費、借入金、のれん償却も増える。2029年の売上高100億円という目標には届かず、2036年の売上高は約71億円となる。それでも2026年3月期の事業規模からは大幅な拡大である。
既存のDX事業では、AIエージェントが開発・運用の一部を代替する。顧客の新規開発需要は残るが、必要な稼働人月は現在の約65%になる。名目単価は上昇するものの、物価の累積上昇を下回り、売上高は縮む。既存の業務SaaSも契約換算数が減り、販売単価に十分な値上げ力は生まれない。
SMSは通知需要の拡大を受けて配信量が増える。ただし競争力の強いNTTコムオンライン、メディア4u、アクリートなどが市場の中心である構図は変わらない。fonfunの利益成長を支えるのは、SMSの自然成長より追加買収の成果となる。
営業利益率は約10%となり、純利益は約4.8億円にとどまる。買収資金の返済を優先するため、株主還元は10年間を通じて少ない。事業としては存続し、以前より規模も大きくなるが、既存株主が期待するほどの価値の増加は実現しない。
- クラウド:SMS配信・従量型通信サービス:数量 42,000,000(年間の法人向けSMS配信通数(通))× 価格 10(SMS1通当たり実現売上(円、名目))→ 売上 4 億円・営業利益 2 億円。市場拡大とシェア横ばいから小幅なシェア低下を見込み、配信数量1.4倍。名目単価1.04倍で物価を大きく下回る。
- クラウド:その他のSaaS・リモートサービス:数量 2,400(年間有料契約換算数(契約、推定))× 価格 24(年間契約当たり売上(万円、名目))→ 売上 6 億円・営業利益 2 億円。AIエージェントによって既存契約数量0.80倍、名目単価1.10倍。席課金SaaSの中立範囲に従う。
- DX:既存のSES・受託開発:数量 85.3(年間稼働技術者換算(人年))× 価格 11(稼働人年当たり売上(百万円、名目))→ 売上 9 億円・営業利益 1 億円。人月の既存数量0.65倍、名目単価1.25倍。AI代替後の受託開発の価格競争により利益率7.5%。
- 2026年3月期末以降のM&A取得事業群:数量 7.2(被買収事業の年間売上換算案件数(件、AIによる残存数量を調整済み))× 価格 7.20(案件1件当たりの年間売上換算(億円、名目))→ 売上 52 億円・営業利益 7 億円。新規の買収約12件相当を想定し、AI代替後の残存事業数量60%。名目単価1.20倍。償却後の利益率13%。
倍率:事業ROEは4.76÷50.0で約9.5%。k=8.5%を小幅に上回るが、堀は弱く長期成長率g_long=0%。新規投下資本の収益力が先に薄れる前提で、正当化PERは1÷8.5%=11.765倍。現行の株価や他社PERから決めない。
確率:過去の買収実績から追加取得の継続は妥当だが、AI代替による人月数量の縮小を相殺できるほどの収益改善が続くかは不透明。買収企業の平均的な利益率を過度に高くせず、会社固有の中立として30%を配分した。
やや悲観 28% 買収成果の鈍化と人月需要の減少 利益 0 億円 · PBR 0.7 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 38 円8 億円
AIによってSESの必要人月が減る中、買収した企業でも稼働率と契約単価の維持が難しくなる。新規M&Aは数件続くものの、取得した事業の利益率は当初の想定を下回る。経営陣はコスト削減と企業統合を進めるが、のれん償却や本社管理費を吸収するだけの営業利益を確保できない。
既存の業務SaaSは大手ソフト会社やAIエージェントとの競争で契約数量が減る。顧客は単独の画面を使うサービスより、既に導入している基幹システムやAIエージェントに機能を統合する。SMS事業は一定の需要を維持するが、価格競争によって高い利益率は続かない。
2036年の売上高は約32億円となる。既存のDX事業が縮小し、取得した企業の利益貢献も小さいため、本社費用を差し引くと営業損失になる。借入金の利息も残り、純損益は赤字となる。
それでも会社には顧客基盤と継続サービスが残り、事業売却や縮小によって立て直す余地はある。ただし買収資産ののれんを回収できない可能性が高まり、株主への還元は行われない。企業規模の拡大という戦略が、株主利益の増大につながらなかった10年である。
- クラウド:SMS配信・従量型通信サービス:数量 30,000,000(年間の法人向けSMS配信通数(通))× 価格 9.50(SMS1通当たり実現売上(円、名目))→ 売上 3 億円・営業利益 1 億円。配信量は横ばい。実現単価低下と通信関連費用の増加で利益率22%。
- クラウド:その他のSaaS・リモートサービス:数量 1,800(年間有料契約換算数(契約、推定))× 価格 22(年間契約当たり売上(万円、名目))→ 売上 4 億円・営業利益 1 億円。既存の契約数量0.60倍、単価横ばい。AIエージェントと統合型SaaSへの代替が進む。
- DX:既存のSES・受託開発:数量 72.2(年間稼働技術者換算(人年))× 価格 9.68(稼働人年当たり売上(百万円、名目))→ 売上 7 億円・営業利益 0 億円。人月数量0.55倍、名目単価1.10倍。派遣稼働率低下で営業利益率3%。
- 2026年3月期末以降のM&A取得事業群:数量 2.8(被買収事業の年間売上換算案件数(件、AIによる残存数量を調整済み))× 価格 6.60(案件1件当たりの年間売上換算(億円、名目))→ 売上 18 億円・営業利益 1 億円。買収約5件相当のうちAI代替後に55%の数量が残る。名目単価1.10倍。統合費用と償却で営業利益率7.5%。
倍率:事業の純利益が赤字となるため利益倍率は使わない。現在の実体資産が乏しく、事業再編と顧客基盤の継続価値を一部認める。比較の分母には今の自己資本約13.4億円を使用し、0.65倍を適用する。過去の市場PBRは根拠にしない。
確率:下に寄せる理由:直近の成長の大半がM&A由来で、買収に伴うのれんと借入金が大きい。既存サービスのAI代替に加えて、買収先の統合コストと利益率低下が重なる可能性があるため28%。中立の数量縮小を確率でもう一度差し引くのではなく、買収が期待どおりの資本利益を生まない別のリスクを表す。
悲観 15% AI代替と買収失敗で収益基盤が崩れる 利益 −3 億円 · PBR 0.2 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 9 円2 億円
AIエージェントの普及によって、人月を販売する業務の需要が大幅に減る。顧客企業は開発の多くを自社のAIツールや少人数の専門技術者で処理し、外部に発注する技術者数を減らす。中小のSES企業が過剰となり、価格競争が激化する。fonfunの買収した事業でも顧客離脱と人員整理が発生し、従来の買収価格を正当化できなくなる。
業務SaaSは画面を利用する契約が減り、他社のAIエージェントから直接業務を処理する方式へ移行する。高い利益率を生んでいたクラウドサービスも縮小し、SMS配信では大手事業者への集中と認証手段の変化によって収益が細る。
2036年の売上高は約13億円に縮小し、本社費用を吸収できない。営業損失は約2.7億円、純損失は約3億円に達する。取得した事業ののれんには減損が必要となり、銀行との財務制限条項の見直しや事業売却を迫られる可能性がある。
会社が直ちに消滅するとは限らず、SMS配信や一部の業務保守には顧客が残る。しかし、その残存事業の価値は現在の時価総額より著しく小さい。資金調達が難しくなり、新しい株式の発行や資産売却を行う場合には既存株主の取り分はさらに低下する。過去に見られた高ROEは再現されない。
- クラウド:SMS配信・従量型通信サービス:数量 22,000,000(年間の法人向けSMS配信通数(通))× 価格 9.00(SMS1通当たり実現売上(円、名目))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。配信量は約0.73倍。認証手段の変化と大手への顧客移転で収益力が大きく低下。
- クラウド:その他のSaaS・リモートサービス:数量 1,050(年間有料契約換算数(契約、推定))× 価格 19(年間契約当たり売上(万円、名目))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。契約数量0.35倍、名目単価0.85倍。AIエージェントへの代替で高収益SaaSとしての性質を失う。
- DX:既存のSES・受託開発:数量 45.9(年間稼働技術者換算(人年))× 価格 8.36(稼働人年当たり売上(百万円、名目))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。人月数量約0.35倍、単価0.95倍。受注減少に人員整理費用が重なり赤字。
- 2026年3月期末以降のM&A取得事業群:数量 0.9(被買収事業の年間売上換算案件数(件、AIによる残存数量を調整済み))× 価格 6.00(案件1件当たりの年間売上換算(億円、名目))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。取得事業約2件相当の残存数量45%。価格横ばいで、利益率は3%。追加買収は事実上停止。
倍率:純損失が継続し、事業の清算価値に近い局面。現在の自己資本約13.4億円を分母に0.15倍とする。のれん、顧客関連資産、繰延税金資産を清算価値から除き、純現金もないため正の資産床はない。残存顧客基盤への限定的な価値のみを認める。
確率:多数の取得事業で同時に収益性が悪化し、買収資金の借り換えやのれんの減損が必要となる複合的な失敗を想定する。大きな財務負担を抱える小規模企業として無視できないが、既存のSMS事業は存続可能と考え15%とする。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
クラウド:SMS配信・従量型通信サービス
バンソウSMSを中心に、法人向けの通知、認証、督促、業務連絡のSMS配信を提供する。正式な報告セグメントはクラウドソリューション事業に含まれる。
| 数量年間の法人向けSMS配信通数(通) | 価格SMS1通当たり実現売上(円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 30,000,000 | 10 | 3 | 1 |
| 10 年後 中立 | 42,000,000 | 10 | 4 | 2 |
取り方:会社はSMS単独の売上、配信通数、稼働顧客数を開示していないため推定。デロイト トーマツ ミック経済研究所による国内法人向けSMS配信量の2026年度予測約61.95億通を基準に、小規模な提供事業者として配信数量シェア約0.48%を仮定した。1通約10円という法人向け配信サービスの料金帯を使うと売上約3.0億円となる。累計6,000件超の導入実績は会社サービスサイトで確認できるが、現在の稼働顧客数と同一ではない。クラウド全体の売上9.56495億円のうち約3.0億円をSMS従量型に割り当てた分析上の推定であり、実際の事業別売上ではない。利益も全クラウドセグメントの利益率を参考に配賦した。AI代替表では非該当部分とする。SMSを実際に届ける通信機能が収益源であり、席課金や人月課金ではない。ただしパスキー認証、RCS、価格競争の影響を数量と単価に反映する。市場データ:https://mic-r.co.jp/micit/ 、会社:https://www.fonfun.co.jp/business/cloudsolution/bansou-sms/
クラウド:その他のSaaS・リモートサービス
リモートメール、CallConnect、れすだく等の継続課金型サービス。2026年5月に買収したSales Performerは起点の決算には含めず、買収事業群に含める。
| 数量年間有料契約換算数(契約、推定) | 価格年間契約当たり売上(万円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 3,000 | 22 | 7 | 2 |
| 10 年後 中立 | 2,400 | 24 | 6 | 2 |
取り方:2026年3月期のクラウドセグメント売上9.56495億円から、SMS推定売上3.0億円を除いた残り。会社は各SaaSの顧客数やARRを統一的に開示していないため、年間契約換算3,000件、契約当たり年21.88万円、月約1.82万円の参考的な契約単位に置き換えた。実際の契約ID数を確認した数字ではない。旧来の個人向け低単価契約と法人向け高単価契約が混在するため、件数の推定誤差は大きい。国内SaaS市場約1.7兆円に対する売上シェアは約0.04%と小さい。AI代替表では席課金SaaS・操作画面中心の型とし、中立の契約数量0.80倍、単価1.10倍を使う。解約率や独占データの証拠が不足するため『記録の正本』型には分類しない。
DX:既存のSES・受託開発
技術者派遣型開発、準委任開発、受託システム開発と運用保守。2026年3月期に計上された既存の事業収益を起点とする。
| 数量年間稼働技術者換算(人年) | 価格稼働人年当たり売上(百万円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 131 | 8.80 | 12 | 1 |
| 10 年後 中立 | 85.3 | 11 | 9 | 1 |
取り方:会社の2026年3月期DX事業売上11.54709億円、セグメント利益1.12307億円を使用。業界のSES契約単価は月60万〜80万円台に厚い分布があり、年換算の売上単価を880万円とすると、年間稼働人員は約131.2人年となる。会社の期末DX部門従業員238人とは異なり、年度途中のM&Aと稼働期間の差を考慮した売上換算数量である。技術者派遣と受託開発の詳細内訳は未開示。国内情報サービス産業の受注ソフトウェア市場は約18兆円で、fonfunのシェアは0.01%未満と推定される。AI代替表では人月・工数型とし、中立の既存稼働数量0.65倍、名目単価1.25倍とする。市場参考:https://www.jisa.or.jp/explain/tabid/755/default.aspx
2026年3月期末以降のM&A取得事業群
YNPの通年寄与、Sales Performer、ICS、カスタマー派遣事業、今後買収する中小IT企業をまとめた追加取得事業群。既存決算への二重計上を避けるため、取得後の追加収益だけを扱う。
| 数量被買収事業の年間売上換算案件数(件、AIによる残存数量を調整済み) | 価格案件1件当たりの年間売上換算(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.0 | 6.00 | 0 | 0 |
| 10 年後 中立 | 7.2 | 7.20 | 52 | 7 |
取り方:2026年3月期の報告セグメントには既に取得済み事業の当期寄与を含め、ここには重複計上しない。買収後の通年寄与と将来の案件を独立して数量化する。YNPの取得資料では年間売上規模約9.75億円、2026年に買収したICSは約7.95億円、Sales Performerは直近約1.89億円の売上規模が示されている。規模が異なるため基準となる被買収事業を売上6億円相当の1件として換算する。将来の案件数は実際の企業数ではなく、取得した事業の売上換算数量であり、各筋書きでは取得件数とAI代替後の残存割合を分けて説明する。取得後の事業の中心はSES、人材派遣、業務SaaSと想定し、AI代替表の人月型と席課金型を適用する。中立の取得事業数量残存率は約0.60倍、単価倍率1.20倍。通信設備工事など人の現場作業は相対的に代替されにくいが、売上内訳不明のため数量増を先取りしない。
リスクと懸念
AIエージェント代替
DX事業のSES・受託開発は、人月と工数を対価にする事業である。AIエージェントが開発、試験、保守、社内事務を直接処理すると、顧客の発注する工数が減る。業務SaaSでも操作画面やID課金の価値が薄れる。中立では既存DX数量0.65倍、SaaS契約数量0.80倍としている。AIによる効率化を企業が顧客からの収入増につなげたという定量的な実績が確認できなければ、この前提を緩めない。
M&Aの累積失敗と資本配分
企業買収による成長は、買収価格、事業統合、取得先の利益維持がすべて機能する必要がある。取得時のEBITDA倍率が低くても、その後の利益が縮めば投資回収期間は長くなる。会社の過去の買収には優れた事例があるが、同じ成果を10年間継続できる保証はない。経営陣が買収規模の拡大を優先し、利益の質や追加投資の必要性を軽視することが最大の資本配分リスクとなる。
のれん・顧客関連資産の減損
2026年3月期末ののれん約13.5億円は自己資本とほぼ同額であり、翌四半期にも増加した。買収先が予定どおり利益を生まなければ、会計上の償却に加えて減損損失を計上する可能性がある。のれんは会社の将来収益への期待を帳簿に載せたもので、資金繰りが悪化した際にそのまま売って回収できる資産ではない。
借入金の増加と金利上昇
2026年3月期末には約5.6億円の純有利子負債がある。会社は第二次中期経営計画で約50億円の調達を想定し、借入を中心にM&Aを進める。国債利回り3%を前提とすると、買収資金の借入金利は過去の低金利時代より高くなる。買収先の営業利益率が下がった局面では、利息と借入金の返済が株主に残る利益を大きく圧迫する。
支配株主と株式希薄化
サイブリッジグループが議決権の過半を支配しているため、少数株主の意向だけで資本配分を変えることは難しい。また2026年3月末には普通株式約197.9万株を対象とする新株予約権が存在した。条件が満たされて行使されると、現在の株主の会社全体に対する持分割合は約91.4%になる。将来さらに買収対価として株式を交付する場合には、追加の希薄化が発生する。
SMSの単価競争と代替技術
法人向けSMS配信市場は通数の成長が期待される一方、NTTコムオンライン、メディア4u、アクリート、AI CROSSなどの有力企業が競争している。価格の低下が続けば配信量の増加ほど利益は伸びない。また本人認証ではパスキーなどSMSを使わない方式が普及しつつある。通知用途の成長だけで従来の市場成長率を長期に延ばすことはできない。
買収先の人材流出と顧客集中
SES事業ではエンジニアと顧客企業との関係が重要な資産である。買収後に技術者が退職したり、取引先が別の会社へ契約を移したりすれば、取得時に想定した収益が失われる。大口顧客への依存、採用費の上昇、派遣先の内製化も収益変動の原因となる。小規模な買収を多数重ねるほど、統合後の人材管理と内部統制の負担が増える。
今後の分かれ目
- 2029年3月期に売上高100億円とEBITDA20億円を達成し、営業利益と営業キャッシュフローも十分に増えていたら
- 楽観・やや楽観の確率を引き上げる。ただし買収による借入金、のれん、株式数の変化を差し引き、既存株主の取り分が増えたかを確認する。
- 既存SES事業の稼働人月が継続的に減少し、契約単価の上昇でも補えなくなったら
- AI代替による数量縮小が進んでいると判断する。DX事業の長期利益率を引き下げ、やや悲観・悲観の筋書きを重視する。
- 買収先の営業利益率がのれん償却後で安定し、取得資本に対する増分ROICが8.5%を継続的に上回ったら
- M&Aの資本配分能力について評価を上げる。高い買収利益率が複数年度続けば、中立の買収事業の利益率と取得可能案件数を見直す。
- 借入金の増加に伴って純負債が営業利益の4倍を継続して超えるようになったら
- 返済能力と借り換えリスクを再点検する。取得案件の利益が落ちる場合には、株式希薄化、事業売却、のれん減損を含む下振れの可能性を高める。
- SMSの年間配信通数と実現単価が開示され、配信量の成長と安定した値上げ力が確認できたら
- SMS単独の事業価値と堀を再評価する。大手競合に対するシェアを維持できているなら、中立の配信数量と利益率を引き上げる余地がある。
- AIエージェントを用いた有料サービスについて、継続売上高と利益の具体的な金額が開示されたら
- 新しい収益事業として独立した数量・単価の評価を行う。社内のAI活用や営業方針の表明だけでは、長期成長率を引き上げない。
- 新株予約権の行使に加えて買収対価として大規模な新株発行が行われたら
- 将来の会社全体の価値だけでなく、既存株主の持分割合を引き下げる。買収による純利益の増加が希薄化率を上回るかを確認する。
見ておくもの
- クラウドソリューション事業のARR、SMS年間配信通数、実現単価、解約率
- DXソリューション事業の実稼働エンジニア人月、平均契約単価、稼働率
- 買収案件ごとの取得価格、取得時EBITDA、のれん償却後営業利益、取得後の増分ROIC
- 純有利子負債、D/Eレシオ、借入金の平均金利、営業キャッシュフローと返済額
- のれん・顧客関連資産・繰延税金資産の残高と減損の有無
- 新株予約権の行使状況、発行済株式数、追加の株式発行と自己株取得
- 第二次中期経営計画の売上高100億円、EBITDA20億円、営業利益率10%以上という目標の進捗
- 自社AI関連サービスの外部顧客売上高と、AI普及に伴う既存SES・SaaS契約の変化
倍率と資本コストの決め方
評価の起点は2026年3月期の売上21.112億円、営業利益2.423億円、自己資本約13.4億円とした。クラウドをSMS従量型とその他SaaSに分け、DXの既存人月と2026年3月期末以降の買収案件を別々に積んだ。既存人月の中立数量0.65倍、SaaS契約0.80倍はAIエージェント代替の規則に従う。買収による新しい事業数量の増加と、既存事業の数量縮小を混同していない。株式市場の現在・過去・同業のPERは、倍率の根拠に使っていない。資本コスト8.5%、長期成長率0%、弱い堀から正当化PERを求めた。2026年の税効果による一時的な純利益増加は長期の利益率に延ばしていない。悲観の床では、のれん13.54億円、顧客関連資産1.63億円、繰延税金資産2.19億円を実体資産から除外した。新リース会計基準による表示変更は2028年3月期以降に想定されるが、10年後の利益は賃借料を営業費用として扱う現在の形で比較する。5つの価値を最後に現在の時価総額と比較し、割高という結論になった。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%に事業の循環性と弱い価格決定力の合計1.0%を加え、株主資本コストを8.5%とする。時価総額の小ささや株価ベータでは上乗せしない。将来の買収失敗や財務悪化は筋書きと確率に反映する。