結論
TKC は、税理士が顧問先の会計・申告に使うクラウドと、全国の自治体の基幹業務を担うクラウドを、毎年の利用料・保守料で売る会社である。全国会という1万名超の会員組織が、顧客であり改善の声の出どころでもある。
筆者の結論は、堀は本物だが、値段は割高である。税理士の流れを一続きで扱う基盤と、国の標準化への移行が年単位で進む自治体システムは、AI エージェントが仕訳を下書きしても動かしにくい。ただ、顧客の税理士事務所が AI エージェントで工数を減らせば、事務所の数と席は縮む。自治体も標準化の後は料金に値下げ圧力がかかる。
売上の約55%を占める会計事務所向けは数量0.88倍・価格1.20倍、約45%の自治体向けは0.90倍・1.20倍に置いた。どちらも記録の正本・規制対応の型なので、縮みは小さめに置いた。中立の売上は名目で7%増にとどまり、実質では2割減る。資本コストは基本7.5%に寿命の上乗せ0.5%を足した8.0%、長期の成長率は名目1〜2%とした。
やや悲観・悲観の確率を合わせて35%置いた総合の価値は、今の時価総額を5割ほど下回る。悲観は売上が半分以下になる筋書きで、床は純現金のうち運転資金などを除いた250億円とした。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、TKCは「分かりやすく守りの堅い会社」だ。顧客が離れにくく、毎年の利用料が積み上がる。借金はなく、自己資本比率は8割を超える。10年後も事業が残る確度は高い。
一方で、稼ぐ力の中身は地味だ。営業利益率は2割ほどで、価格を自由に決められる事業ではない。税理士も自治体も、価格には敏感だ。資本の厚さも、ROEを押し下げる形で効いている。つまり「安全だが、割安に買える会社ではない」というのが筆者の見方だ。
資本の使い方は評価できる。大型買収で価値を壊さず、増配と自社株買いを続けている。ただ、余った現金が長く積み上がってきた点は、もう一段の還元の余地として残る。
安全域の目で見ると、中立の価値は今の値段をわずかに下回る。上振れの余地は、自治体の料金改定が定着し、会計事務所向けで単価を伸ばせる場合に限られる。悲観でも事業は残るため、底は堅い。今の値段に割引は付いておらず、安全域はない。強気と慎重の見方を重みづけすると、2割ほど割高になる。
何で稼ぐ会社か
TKCの事業は二本柱だ。一本は会計事務所事業で、税理士が顧問先の会計・申告に使う「FXクラウド」「OMSクラウド」などを提供する。もう一本は地方公共団体事業で、税・住民情報など自治体の基幹業務を担う「TASKクラウドサービス」を提供する。このほかに、帳票などの印刷事業が小さくある。
会計事務所事業の特徴は、顧客が税理士であることだ。税理士は顧問先の帳簿を預かり、仕訳から決算・申告・納税までを一気に処理する。TKCのシステムはこの流れに合わせて作られ、証憑の取り込みから電子申告までを一続きで扱う。TKC全国会という会員組織(1万名超)が顧客であり、同時にサービス改善の声の出どころにもなっている。
自治体事業は、一度入れたら何年も使い続ける性質が強い。TASKクラウドは全国164団体が使う。国が進めた基幹システムの標準化に合わせて、2026年2月までに全団体がガバメントクラウドへ移った。移行が終わったことで、4月からは料金体系の見直しとクラウド運用の受託が売上を押し上げている。
収益の中心は、毎年の利用料・保守料だ。新規の売り切りが少なく、顧客が離れにくい。景気の波を受けにくい代わりに、売上は人口や企業数の増減に引きずられやすい。成長は新しい顧客の獲得より、単価の引き上げと機能の追加で作るものになる。
優良さと弱いところ
筆者がTKCで評価するのは、顧客との関係の深さだ。税理士の事務所は、会計データも業務の手順もTKCに預けている。システムを替えれば、顧問先の帳簿の移し替えと職員の再教育が要る。このため離脱は少ない。自治体も同じで、住民の税情報を預かる基幹システムは、簡単には替えられない。
数字にもそれが出る。営業利益は10年前の約62億円から、2025年9月期に約161億円まで伸びた。赤字の期はない。純現金は157億円から336億円へ積み上がり、自己資本比率は83.6%と高い。
弱みは、収益性が飛び抜けて高くはないことだ。営業利益率は19%台で、同じ業務ソフトでもオービックのような6割台とは別物である。人手をかけて顧客を支える構造のため、人件費が先に増える。自己資本が厚い分、ROEも11%前後にとどまる。
会計事務所向けでは、freee・マネーフォワード・弥生・ミロク情報サービスなどが競合する。自治体向けでは富士通・NEC・日立・NTTデータなどの大手が相手だ。TKCは両分野とも最大手ではないが、税理士との組織的な結びつきという独自の強みがある。
筆頭株主は公益財団法人の飯塚毅育英会(14.6%)で、特定の個人が支配する形ではない。中期の数値目標は積極的に示さず、方針は理念と毎期の実績で伝える会社だ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
会計事務所向けの市場は、税理士の高齢化と人手不足のなかで、クラウド化とDXが続く。国内のクラウドSaaS市場は年1割ほどの成長が続くと見られ、会計・申告・労務はその中心にある。インボイス制度や電子帳簿保存法といった制度対応は、システム利用の追い風になった。
ただ、TKCの客である税理士の数は長期では減る。一方で顧問先の中小企業も廃業で減る。筆者は、顧問先の数は10年でやや減ると見る。伸ばせるのは1社あたりの単価で、新しい機能を載せて上位のプランへ導くことが要になる。
新興のクラウド会計は、中小企業へ直接売る。税理士を通さない流れが太れば、TKCの土台である会員組織が痩せる。これが会計事務所事業のいちばん大きな構造リスクだ。生成AIが記帳や仕訳を自動化すれば、事務所の作業量も減る。システムの価値は、記帳の代行から「税務の判断を支える基盤」へ移る。
自治体向けは、国策の波の中にある。標準化とガバメントクラウドへの移行が2026年に一巡し、各社の勢力図はひとまず固まった。次の焦点は運用費だ。デジタル庁は自治体の費用を下げる姿勢を崩しておらず、ベンダーの価格を抑える圧力は続く。市区町村は約1,700で数が変わらない分、伸ばせるのは団体あたりの単価だけだ。
2026年4月の料金改定が通ったのは、標準化で他社へ乗り換えにくくなった面もある。ただ、同じ手が次の10年も通じるとは限らない。景気の波には強い業界だ。ITコストの中でも税・会計・住民情報は削れない。
資本政策と M&A
配当は増配が続く。2026年9月期も増配の予定で、12期連続になる見込みだ。2025年9月期は自社株買いも33億円行い、配当と合わせた還元は利益の7割を超えた。過去の平均は5割弱だから、還元の姿勢は強まっている。
政策保有株などの持ち合いで資本を寝かせる会社ではない。大型の買収にも手を出さず、自社開発と会員組織を通じた内部成長を貫いてきた。筆頭株主は公益財団法人の飯塚毅育英会で、持ち分は14.6%。個人株主も3割近くいる。支配株主がいないため、再編や買収の動きは読みにくいが、理念を共有する会員の存在が経営の安定を支えている。
課題は、貯まった現金の使い道だ。純現金は10年で倍になった。筆者は、成長投資の余地が限られる以上、さらに還元を厚くするのが自然だと考える。ただし自治体事業には、利用料が先に入る性格があり、見かけほど余るわけではない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
自治体事業の稼ぎ方が変わった。標準化の対応が終わり、2026年4月に料金の体系を改めた。他社へ乗り換えにくくなった今、この単価が定着すれば、毎年の利用料は物価を上回って伸びる。ガバメントクラウドの運用を受託する仕事も、新しい収益の柱になる。
会計事務所向けでは、クラウドの利用件数が増えている。記帳や仕訳を自動化する機能は、税理士の作業を減らすぶん、システムへの依存を深める。顧問先の数が減っても、1社あたりの利用額を上げれば売上は伸びる。税理士の事務所は、証憑の取り込みから申告までを一続きで処理できるTKCを替えにくい。
財務は盤石だ。無借金で、純現金は積み上がっている。還元の余力があり、増配と自社株買いを続けられる。創業の理念を守る経営は、短期の流行に振り回されない。営業利益は10年で62億円から161億円まで増えた。この安定感は、10年先も続くと見てよい。
だとすれば、10年後の営業利益率は2割を超え、利益は今の1.5倍近くまで伸びる。ROEも15%に近づく。今の値段は、その筋書きの手前にある。
慎重な見方
会計事務所向けの土台は、静かに痩せていく。税理士は高齢化し、数が減る。新興のクラウド会計は、中小企業へ直接売る。税理士を通さない流れが広がれば、TKC全国会という会員組織の力が弱まる。生成AIが記帳を自動化すれば、事務所の作業量も減り、システムの使い道も変わる。
自治体向けの料金改定は、一度だけの追い風にすぎない。デジタル庁は運用費の削減を求め続けており、ベンダーに値下げの圧力がかかる。ガバメントクラウド運用の受託は、利用料を通すだけで利益率が低い。標準化が終われば、他社が団体を取りにくる。
収益性も弱い。営業利益率は2割ほどで、人件費が先に増える構造だ。ROEは11%前後で、資本コストを大きくは上回らない。余った現金は還元に回らないまま積み上がってきた歴史もある。
今期の好決算は、料金改定の効果が一時的に出た面がある。10年を通せば、利益の伸びは物価並みにとどまる。倍率も、成長が鈍れば縮む。今の値段は、この現実を十分に割り引いていない。
税務と行政事務を AI エージェントが直接こなす世界では、顧客の席そのものが減る。堀があっても、堀の内側の市場が縮めば利益は縮む。
税務と行政事務を AI エージェントが直接こなす世界では、顧客の席そのものが減る。堀があっても、堀の内側の市場が縮めば利益は縮む。
税務と行政事務を AI エージェントが直接こなす世界では、顧客の席そのものが減る。堀があっても、堀の内側の市場が縮めば利益は縮む。
どちらに重みを置いたか
全国会の会員組織と自治体の標準準拠システムへの移行が進む基盤では強気の見方が優勢だが、顧客の税理士事務所の工数を AI エージェントが減らし、自治体の料金にも圧力がかかる筋書きでは慎重な見方が重い。堀は縮みの幅を小さくする力であって、成長を保証する力ではない。資本コストは基本7.5%に寿命の上乗せ0.5%を足して8%とし、長期の成長率は名目1〜2%。やや悲観・悲観を合わせて35%の重みを置いた総合は、今の時価総額を5割ほど下回る。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/09 期)
確率で加重した株価時価総額 3,336 円1,635 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,411 円691 億円)。 今の値に割り戻すと 2,754 円1,349 億円、今との差 −37.6%、 期待の年率 +0.7%(資本コスト 6.8%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 9% | 5,899 円2,890 億円 | 1,741 円853 億円 | +73.0% | +5.6% | 688 円337 億円 |
| やや楽観 | 20% | 4,870 円2,386 億円 | 1,648 円808 億円 | +47.6% | +4.0% | 1,304 円639 億円 |
| 中立 | 36% | 3,901 円1,912 億円 | 1,527 円748 億円 | +22.9% | +2.1% | 1,954 円958 億円 |
| やや悲観 | 22% | 1,640 円804 億円 | 1,207 円591 億円 | −35.5% | −4.3% | 626 円307 億円 |
| 悲観 | 13% | 510 円250 億円 | 839 円411 億円 | −69.5% | −11.2% | 175 円86 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,336 円1,635 億円 | 1,411 円691 億円 | +7.5% | +0.7% | 4,747 円2,326 億円 |
今の株価時価総額 4,415 円2,163 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 6.8% を下回るほど割高。
楽観 9% 税理士と自治体の正本を守り、AI も取り込む 利益 164 億円 · PER 17.3 倍 · 株価時価総額 5,899 円2,890 億円
税理士が顧問先の仕訳から申告までを一気に処理する TKC の流れは、AI エージェントが仕訳を下書きしても動かしにくい。会員組織があり、電子申告まで一続きで扱う記録の正本だからだ。会計事務所向けは数量1.0倍、価格1.28倍。自治体事業は標準化後の料金見直しで価格が1.3倍近くまで上がる。売上は今より3割弱増え、営業利益は220億円近くになる。ただし AI エージェントを自社の売り物にして売上を出している開示は無く、楽観でも数量は1.0倍以下とみる。 最も大きい「会計事務所事業」は、数量が今の1.00倍、価格が1.27倍になる。 10年後の売上は名目で今の1.27倍(実質0.95倍)、純利益は164億円になる。
- 会計事務所事業(FX・OMSクラウドなど):数量 33.0(関与先企業数(万社))× 価格 18(1社あたり年間売上(万円))→ 売上 584 億円・営業利益 111 億円。数量1.00倍・価格1.27倍・営業利益率19%(AI エージェント代替の型:記録の正本)
- 地方公共団体事業(TASKクラウドなど):数量 650(契約団体数(団体))× 価格 0.73(1団体あたり年間売上(億円))→ 売上 477 億円・営業利益 115 億円。数量1.00倍・価格1.27倍・営業利益率24%(AI エージェント代替の型:記録の正本)
倍率:事業の純利益 161 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.1% が k 6.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.9%、10 年より先の名目の伸び g 2.0% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)200 億円。全体の PER 17.27 倍、時価総額 2,824 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:楽観でも数量は1.0倍以下。AI エージェントを自社の売り物にして売上を出している開示(金額)が無い。自治体の料金改定が効く上振れにとどめた。
やや楽観 20% 正本の堀で踏みとどまり、事務所の数が減る 利益 136 億円 · PER 17.1 倍 · 株価時価総額 4,870 円2,386 億円
税理士事務所の工数が減って会員の数は微減にとどまり、会計事務所向けは数量0.94倍、価格1.24倍。自治体は標準化の完了で乗り換えにくく、数量0.96倍、価格1.24倍。売上は今より2割弱増えるが、物価の3%を考えれば実質では1割減だ。営業利益は180億円強。筆者は、景気の波を受けにくい質は本物だが、この筋書きでも今の値段は割高とみる。無借金と厚い純現金は変わらない。 最も大きい「会計事務所事業」は、数量が今の0.94倍、価格が1.24倍になる。 10年後の売上は名目で今の1.18倍(実質0.88倍)、純利益は136億円になる。 営業利益は182億円で、今の161億円の113%に当たる。
- 会計事務所事業(FX・OMSクラウドなど):数量 31.1(関与先企業数(万社))× 価格 17(1社あたり年間売上(万円))→ 売上 534 億円・営業利益 91 億円。数量0.94倍・価格1.24倍・営業利益率17%(AI エージェント代替の型:記録の正本)
- 地方公共団体事業(TASKクラウドなど):数量 626(契約団体数(団体))× 価格 0.71(1団体あたり年間売上(億円))→ 売上 446 億円・営業利益 98 億円。数量0.96倍・価格1.24倍・営業利益率22%(AI エージェント代替の型:記録の正本)
倍率:事業の純利益 133 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.8% が k 6.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.3%、10 年より先の名目の伸び g 2.0% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.0 倍 + 余った現金(戻り方込み)200 億円。全体の PER 17.1 倍、時価総額 2,319 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:全国会の会員組織と自治体の標準化が効いて、解約がほとんど出ない筋書き。数量は1.0倍以下に抑えた。
中立 36% 中立:売上は名目で7%増にとどまり、実質は2割減 利益 109 億円 · PER 16.9 倍 · 株価時価総額 3,901 円1,912 億円
会計事務所向けは数量0.88倍、価格1.20倍。AI エージェントが記帳と申告の下準備を引き受け、税理士事務所の工数が減って席が縮む。自治体事業は数量0.90倍、価格1.20倍。標準化後は新規の乗り換えもなく、伸びは料金改定だけになる。売上は名目で7%増にとどまり、実質では2割減。営業利益率は17%に落ち、営業利益は150億円弱。新しく投じるお金の稼ぎは名目の成長が小さいので先で薄れる。 最も大きい「会計事務所事業」は、数量が今の0.88倍、価格が1.20倍になる。 10年後の売上は名目で今の1.07倍(実質0.80倍)、純利益は109億円になる。 営業利益は148億円で、今の161億円の91%に当たる。
- 会計事務所事業(FX・OMSクラウドなど):数量 29.0(関与先企業数(万社))× 価格 17(1社あたり年間売上(万円))→ 売上 485 億円・営業利益 73 億円。数量0.88倍・価格1.20倍・営業利益率15%(AI エージェント代替の型:記録の正本)
- 地方公共団体事業(TASKクラウドなど):数量 585(契約団体数(団体))× 価格 0.69(1団体あたり年間売上(億円))→ 売上 405 億円・営業利益 81 億円。数量0.90倍・価格1.20倍・営業利益率20%(AI エージェント代替の型:記録の正本)
倍率:事業の純利益 106 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.3% が k 6.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.5%、10 年より先の名目の伸び g 2.0% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.4 倍 + 余った現金(戻り方込み)200 億円。全体の PER 16.88 倍、時価総額 1,843 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:税理士事務所の数が緩やかに減り、自治体は料金改定で単価を上げるが数量は伸びないという、最も重みを置く筋書き。
やや悲観 22% 税理士事務所の工数が減り、自治体の料金も抑えられる 利益 48 億円 · PER 15.2 倍 · 株価時価総額 1,640 円804 億円
税理士事務所が AI エージェントで工数を減らし、事務所の数と席が縮む。会計事務所向けは数量0.72倍、価格1.14倍。自治体は標準化後の競争入札で値下げ圧力を受け、数量0.79倍、価格1.14倍。売上は今より2割弱減り、営業利益率は1割に落ちる。営業利益は70億円弱、純利益は50億円ほどで、還元は利益に合わせて減る。国の標準化に沿った開発費が先に出る。 最も大きい「会計事務所事業」は、数量が今の0.72倍、価格が1.14倍になる。 10年後の売上は名目で今の0.83倍(実質0.62倍)、純利益は48億円になる。 営業利益は67億円で、今の161億円の41%に当たる。
- 会計事務所事業(FX・OMSクラウドなど):数量 23.8(関与先企業数(万社))× 価格 16(1社あたり年間売上(万円))→ 売上 378 億円・営業利益 30 億円。数量0.72倍・価格1.14倍・営業利益率8%(AI エージェント代替の型:記録の正本)
- 地方公共団体事業(TASKクラウドなど):数量 480(契約団体数(団体))× 価格 0.66(1団体あたり年間売上(億円))→ 売上 316 億円・営業利益 41 億円。数量0.74倍・価格1.14倍・営業利益率13%(AI エージェント代替の型:記録の正本)
倍率:事業に要らない現金 150 億円(戻り方 1.0)を分けると、事業の純利益 46 億円(現金の税後利息を除く)・事業の ROE 3.9%。AI エージェント代替で税理士事務所の工数が減って席が縮み、自治体の料金も抑えられる(記録の正本・規制対応という堀は残る)とみて。長期の成長率 g を名目 1.0% と置き、RONIC = k 6.75% + 残る割合 0.50 ×(ROE − k)= 8.0%、正当化 PER = (1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g) = 12.5 倍。上限の 8.5 割に置き、事業 46 億円 × 10.6 倍 + 余った現金 150 億円(戻り方込み)で時価総額 730 億円、全体の PER に直して 15.2 倍。
確率:税理士事務所の工数が AI エージェントで減り、会員の数が縮む。自治体も標準化後は値下げ圧力を受ける。実現しやすいと見て2割強に置いた。
悲観 13% AI エージェントが税務と行政事務を肩代わりし、売上は4割 利益 −11 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 510 円250 億円
AI エージェントが税務と行政事務を直接こなし、税理士事務所の席も自治体の基幹システムの料金も、半分以下に縮む。売上は今の4割、営業利益は赤字に沈む。それでも無借金で純現金が厚く、株主の取り分の床は運転資金と前受の保守料を除いた250億円ほど残る。稼ぐ力ではなく、この資産の厚さが悲観の値段を決める。自社の開発費を賄う力が落ちれば、標準化後の改修も重荷になる。 最も大きい「会計事務所事業」は、数量が今の0.40倍、価格が1.02倍になる。 10年後の売上は名目で今の0.41倍(実質0.30倍)、純利益は-11億円になる。
- 会計事務所事業(FX・OMSクラウドなど):数量 13.1(関与先企業数(万社))× 価格 14(1社あたり年間売上(万円))→ 売上 186 億円・営業利益 −9 億円。数量0.40倍・価格1.02倍・営業利益率-5%(AI エージェント代替の型:記録の正本)
- 地方公共団体事業(TASKクラウドなど):数量 263(契約団体数(団体))× 価格 0.59(1団体あたり年間売上(億円))→ 売上 155 億円・営業利益 0 億円。数量0.41倍・価格1.02倍・営業利益率0%(AI エージェント代替の型:記録の正本)
倍率:悲観は売上が 10 年で半分以下になる筋書き。純現金+売れる資産の税後 250 億円(純現金336億円のうち、運転に要る売上1.5か月分と前受の保守料を除いた約250)を床として、今の自己資本 1,085 億円に対する PBR 0.23 倍で時価総額 250 億円とした。AI エージェント代替で税理士事務所の席も自治体の基幹システムの料金も半分以下に縮む。稼ぐ力そのものが崩れる筋書きなので、事業の利益には値を付けない。
確率:税務と行政事務を AI エージェントが直接こなし、事務所と自治体の席が半分以下になる筋書き。やや悲観と合わせて3割台半ばにとどめた(中立の数量・価格に縮みを入れたので、確率では重ねない)。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
会計事務所事業(FX・OMSクラウドなど)
税理士・公認会計士の事務所向けに、会計・申告のシステムを毎年の利用料で提供する。印刷事業も含める。
| 数量関与先企業数(万社) | 価格1社あたり年間売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 33.0 | 14 | 459 | 80 |
| 10 年後 中立 | 29.0 | 17 | 485 | 73 |
取り方:開示は事業別の売上のみで、会員約1.2万事務所×1事務所あたり約28社から関与先を約33万社と推定した。1社あたりの売上は、会計事務所事業(印刷含む)の推定売上459億円を33万社で割って出した。セグメント利益は推定。 型は記録の正本・法対応(税理士向けの会計・申告基盤)。ただし顧客の税理士事務所が AI エージェントで工数を減らすと事務所数と席が縮むため、数量0.88倍・価格1.20倍と置いた。売上の約55%がこの型。 【堀の証拠(有報)】会員1.16万名の全国会が組織する共同の基盤・FXシリーズ利用32.7万社・MIS採用498金融機関、インボイス・電子帳簿・新リース会計への機能対応。2つ以上そろうので記録の正本とし、gは名目+1〜2%。
地方公共団体事業(TASKクラウドなど)
自治体の税・住民情報などの基幹システムを、利用料と運用の受託で提供する。
| 数量契約団体数(団体) | 価格1団体あたり年間売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 650 | 0.58 | 375 | 85 |
| 10 年後 中立 | 585 | 0.69 | 405 | 81 |
取り方:TASKクラウドの採用は164団体だが、税・住民・電子申告などを個別に使う団体も含め契約団体を約650と推定し、自治体事業の推定売上375億円で割った。セグメント利益は推定。 型は記録の正本・規制対応(自治体の基幹業務)。国の標準化で標準準拠システムへの移行(期限は令和8年3月末、2025年9月末で68団体が完了、164団体が採用)が年単位で進み、乗り換えにくいので数量0.90倍・価格1.20倍と置いた。売上の約45%がこの型。 【堀の証拠(有報)】行政クラウド1,150団体超の共同利用基盤・標準準拠システムへの年単位の移行と規制対応。解約率は開示が無い。2つ以上そろうので記録の正本、gは名目+1〜2%。
リスクと懸念
AI エージェントによる税務・行政事務の置き換え
顧客の税理士事務所が AI エージェントで記帳と申告の下準備を減らせば、事務所の数と席が縮む。自治体も標準化の後は料金に値下げ圧力がかかり、AI エージェントが住民対応や税の事務を肩代わりすれば基幹システムの利用規模も変わる。売上の約55%は会計事務所向け、約45%は自治体向けで、10年の売上は名目で7%増、実質で2割減とみた。
税理士の減少と、税理士を通さない直販クラウド
税理士は高齢化で数が減る。freeeやマネーフォワードなど新興クラウドは、中小企業へ直接売る。この流れが太ると、TKC全国会という会員組織が痩せ、会計事務所事業の土台が弱くなる。
自治体の運用費削減の圧力
デジタル庁は、標準化後の自治体の運用費を下げる姿勢を崩していない。料金改定は2026年4月に通ったが、次の10年も同じ手が通るとは限らず、ベンダーに値下げ圧力がかかる。
標準化後の他社との競争
基幹システムの移行が2026年に一巡し、次の入れ替えまで勢力図は固まった。ただ、富士通・NEC・日立・NTTデータなどの大手は価格と提案力で攻める。団体を失えば、固定費だけが残る。
ガバメントクラウド運用受託の利益率
運用管理の補助業務は、クラウドの利用料を通す色が濃く、売上は増えても利益率は低い。売上の伸びだけを見ると、稼ぐ力を過大に見る恐れがある。
人件費と人材の確保
顧客を支える導入・サポート要員の確保が成長の制約になる。人件費は物価で上がり、利益率が横ばいなら増益は物価並みにとどまる。IT人材の採用競争も厳しい。
資本の厚さによるROEの低さ
純現金が336億円あり、自己資本比率は8割を超える。還元を厚くしなければROEは11%前後にとどまり、資本コストを大きくは上回らない。
今後の分かれ目
- 自治体向けのソフト売上が、料金改定後も物価を上回って伸び続けたら
- 楽観・やや楽観の確率を上げる。ガバメントクラウド運用の利益率も合わせて確認する。
- デジタル庁が自治体の運用費の大幅な引き下げを求め、ベンダー料金へ波及したら
- やや悲観・悲観の確率を上げ、自治体事業の利益率を下げて見直す。
- 会計事務所向けのクラウド利用件数の伸びが鈍り、TKC全国会の会員数が減り始めたら
- 会計事務所事業の数量を下げ、悲観側の重みを増やす。
- 新興クラウドが税理士経由の販売を強め、税理士との共存が進んだら
- 会員組織の痩せる懸念が和らぐ。やや悲観の確率を中立へ戻してよい。
- 純現金を使った自社株買いや増配が、利益の8割を超える規模で続いたら
- 資本効率が改善する。ROEの見通しを引き上げる。
- 営業利益率が17%を割って定着したら
- 人件費の先行増や価格競争が効いているサイン。やや悲観の筋書きへ近づいたと見る。
- 税理士向け・自治体向けに組み込んだ AI エージェント機能が、金額で開示できる売上や受注として積み上がったら
- 楽観・やや楽観の数量を1.0倍超に直し、確率を上げて見直す。開示が無い間は楽観も数量1.0倍以下にとどめる。
見ておくもの
- 自治体事業のソフト売上と運用受託の売上の伸び
- 会計事務所向けクラウド(FX・OMS)の利用件数
- TKC全国会の会員数
- 営業利益率(20%前後を保てるか)
- 配当・自社株買いなど総還元の水準
- デジタル庁の自治体運用費の方針
倍率と資本コストの決め方
会計事務所向けと地方公共団体向けに分け、AI エージェント代替の型(記録の正本・規制対応。顧客の工数減で席は縮む)で数量・価格・利益率を置いた。余った現金200億円は戻り方1.0で足した。倍率は式(正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)、k6.75%、g名目1〜2%)に対する位置で置き、楽観〜中立は上限の9.5割、やや悲観は8.5割。悲観は稼ぐ力ではなく純現金+売れる資産の床。今の株価や過去・同業の倍率は見ていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13.55→17.27 倍・やや楽観 PER 13.51→17.1 倍・中立 PER 13.47→16.88 倍・やや悲観 PER 13.29→15.2 倍)。
資本コスト 6.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。