結論
エクサウィザーズは、企業向けのAI導入支援と、生成AIや介護向けのAI製品を手がける会社だ。2026年3月期は営業利益が16億円と、赤字続きから初めて黒字になった。2027年3月期は営業利益24億円を見込む。
筆者の結論は、10年の本質価値は今の時価総額を大きく下回るというものだ。黒字は1期だけで、その前は6期連続の赤字だった。しかも売上の半分強は、AIエージェントに置き換わりやすい人月型の導入支援である。
製品が伸びても、導入支援の縮みと価格の下落を打ち消し切れない。会社予想の高い伸びを、そのまま10年先まで置くことはできない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、AIという大きな需要の中心にいることは魅力だ。しかし、黒字は1期で、過去は赤字続きだった。
人月型の仕事がAIに置き換わる中で、導入支援が主力という構造は読みにくい。配当もなく、積み上がる現金の行き先は少数株主には決められない。読めない事業に高い値は払えず、安全域は薄い。経営の挑戦は評価するが、持続する利益の水準がまだ見えない。減損の経験もあり、慎重に見る。安全域を取れる値段になるまで、評価は上げない。
何で稼ぐ会社か
事業は3つに分かれ、いずれも国内の大企業と介護の現場が相手だ。AIプラットフォームは売上の約6割で、企業のAI導入支援や生成AIの契約を扱う。人の工数で稼ぐ性格が強い。AIプロダクトは売上の約3割で、介護や業務向けのAI製品を売り、成長が速い。その他サービスは残りで小さい。売上の内訳は資料で確かめられなかったため、あくまで推定で、、プラットフォーム約58%・プロダクト約29%・その他約13%と推定した。顧客は国内の大企業と介護事業者が中心で、案件の大型化で売上が急に増えた。契約は年単位の更新が多い。
優良さと弱いところ
強みは、AIの専門人材を集めて大企業の案件を取れる点と、生成AIの製品を持つ点だ。自己資本比率は5割弱で、純現金がある。
弱みは、黒字化が直近の1期だけで、過去は赤字や大きな減損があったことだ。売上の半分強は人月型で、AIエージェントが代わりやすい。値段を市場に決められやすく、堀は弱めとみる。少数の大型案件に売上が偏る点も弱みである。経営の実行力は直近の黒字化に表れたが、持続性は読み切れない。創業者の発信力と人材採用力は強みだ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内のAI導入の市場は、生成AIの普及で急速に広がっている。大企業の導入支援の需要は強い。
ただ、AIエージェントが進化するほど、導入を手伝う仕事そのものが減る。顧客が自社で内製し、海外の大手がAIの基盤とサービスを直接売る。国内の同業やコンサル会社、大手SIerも同じ市場を狙い、価格競争が起きやすい。需要は広がるが、取り分は薄くなる。生成AIの価格も急速に下がっている。AIで伸びる会社が、AIで値段を崩される側にもなる点が最大の論点だ。大手SIerやコンサルも、AI専門の部隊を急いで増やしている。
資本政策と M&A
還元は無配で、利益は内部に留める方針とみられる。自社株買いの実績も確認できなかった。中期経営計画の売上・利益などの具体的な数字は確認できる資料の中で見つからず、株主還元の数字の約束もなかった(数字の約束なし)。
直近の資本政策では、2025年3月期に約24億円の減損を出した。M&Aや子会社の事業計画の見直しが損失に結びついた経験があり、今後の買収には慎重に見る。
見通しをどちらに寄せたか
強気の材料は生成AIの製品の伸びと直近の黒字化で、慎重な材料は黒字が1期だけであること、導入支援の置き換え、過去の減損である。AIエージェントを自社の売り物にして売上が出た金額の開示は無く、確率は下側に寄せた。やや悲観と悲観で44%、上側は22%とし、中立は34%だ。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 195 円186 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 0 円0 億円)。 今の値に割り戻すと 92 円88 億円、今との差 −88.2%、 期待の年率 −12.9%(資本コスト 7.8%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 495 円472 億円 | 0 円0 億円 | −36.4% | −4.4% | 30 円28 億円 |
| やや楽観 | 16% | 357 円341 億円 | 0 円0 億円 | −54.1% | −7.5% | 57 円55 億円 |
| 中立 | 34% | 262 円250 億円 | 0 円0 億円 | −66.4% | −10.3% | 89 円85 億円 |
| やや悲観 | 27% | 64 円61 億円 | 0 円0 億円 | −91.8% | −22.1% | 17 円17 億円 |
| 悲観 | 17% | 8 円8 億円 | 0 円0 億円 | −98.9% | −36.4% | 1 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 195 円186 億円 | 0 円0 億円 | −75.0% | −12.9% | 195 円186 億円 |
今の株価時価総額 779 円743 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 6% 生成AIの売上が積み上がり、製品が厚くなる 利益 27 億円 · PER 14.0 倍 · 株価時価総額 495 円472 億円
生成AIを組み込んだ製品の売上が実際に積み上がり、製品は今の1.5倍に増える。値上げも物価並みに通る。導入支援は数量を保ち、利益率は2割を超える。AIエージェントを自社の売り物にして売上が出る前提で、営業利益は今の2.5倍に近づく。人材の採用が追いつくことが条件になる。配当はなく、利益は内部に積み上がる。
- AIプラットフォーム:数量 385(契約・案件の企業数(社、推定))× 価格 0.27(1 社当たり年間売上(億円))→ 売上 103 億円・営業利益 23 億円。AI導入支援・生成AIの契約。人月に近い型で数量は縮みやすい
- AIプロダクト:数量 1.1(契約施設・拠点数(万、推定))× 価格 67(1 拠点当たり年間売上(万円))→ 売上 70 億円・営業利益 16 億円。価格 1.20 倍は、海外大手との競争とAIの標準化で値下げ圧力が掛かるため物価に届かない
- その他サービス:数量 150(案件数(件、推定))× 価格 0.13(1 件当たり売上(億円))→ 売上 20 億円・営業利益 2 億円。その他サービスは小さい
倍率:事業のROEとkから式で置いた正当化PERの上限そのもの。
確率:生成AIの自社製品の売上が積み上がる筋書き。金額の開示は無く、6%。
やや楽観 16% 製品が伸び、導入支援は踏みとどまる 利益 18 億円 · PER 14.0 倍 · 株価時価総額 357 円341 億円
製品が今の1.35倍に増え、導入支援は少し縮むが単価で補う。利益率は2割に近づく。営業利益は今の1.8倍になる。黒字は定着するが、規模の拡大は主に製品に頼る。導入支援の案件は大型化が一巡し、新規の獲得に営業の工数がかかる。配当はなく、積み上がる現金は内部に残る。新規の案件の積み増しも続く。
- AIプラットフォーム:数量 333(契約・案件の企業数(社、推定))× 価格 0.26(1 社当たり年間売上(億円))→ 売上 87 億円・営業利益 16 億円。AI導入支援・生成AIの契約。人月に近い型で数量は縮みやすい
- AIプロダクト:数量 0.9(契約施設・拠点数(万、推定))× 価格 64(1 拠点当たり年間売上(万円))→ 売上 60 億円・営業利益 11 億円。価格 1.20 倍は、海外大手との競争とAIの標準化で値下げ圧力が掛かるため物価に届かない
- その他サービス:数量 135(案件数(件、推定))× 価格 0.13(1 件当たり売上(億円))→ 売上 17 億円・営業利益 1 億円。その他サービスは小さい
倍率:事業のROEとkから式で置いた正当化PERの上限そのもの。
確率:製品が伸び導入支援は踏みとどまる筋書き。16%。
中立 34% 製品は伸びるが導入支援が縮み、利益は横ばい 利益 13 億円 · PER 14.0 倍 · 株価時価総額 262 円250 億円
製品は今の1.2倍に増えるが、AIエージェントが導入支援や相談の一部を代わり、導入支援の数量は0.8倍に縮む。価格は物価に届かない。営業利益は直近とほぼ同じ水準にとどまり、黒字は保たれるが伸びない。配当はなく、現金が積み上がる。製品の伸びが導入支援の縮みを打ち消す形で、全体の売上は今の1.1倍強にとどまる。
- AIプラットフォーム:数量 280(契約・案件の企業数(社、推定))× 価格 0.25(1 社当たり年間売上(億円))→ 売上 70 億円・営業利益 12 億円。AI導入支援・生成AIの契約。人月に近い型で数量は縮みやすい
- AIプロダクト:数量 0.8(契約施設・拠点数(万、推定))× 価格 60(1 拠点当たり年間売上(万円))→ 売上 50 億円・営業利益 8 億円。価格 1.20 倍は、海外大手との競争とAIの標準化で値下げ圧力が掛かるため物価に届かない
- その他サービス:数量 120(案件数(件、推定))× 価格 0.12(1 件当たり売上(億円))→ 売上 14 億円・営業利益 1 億円。その他サービスは小さい
倍率:事業のROEとkから式で置いた正当化PERの上限そのもの。
確率:製品の伸びと導入支援の縮みを合わせた落としどころ。34%。
やや悲観 27% 導入支援がAIに置き換わり、黒字が消える 利益 2 億円 · PER 10.0 倍 · 株価時価総額 64 円61 億円
導入支援の仕事を顧客が自社でAIエージェントを使って内製し、数量は0.6倍に縮む。製品も競争で伸び悩む。固定の人件費が重く、利益率は1割を切る。黒字は維持できても薄く、積み上がる現金が主な価値になる。配当はなく、少数株主への戻りも小さい。株式の価値は、黒字をどれだけ守れるかにかかる。
- AIプラットフォーム:数量 210(契約・案件の企業数(社、推定))× 価格 0.22(1 社当たり年間売上(億円))→ 売上 46 億円・営業利益 4 億円。AI導入支援・生成AIの契約。人月に近い型で数量は縮みやすい
- AIプロダクト:数量 0.6(契約施設・拠点数(万、推定))× 価格 53(1 拠点当たり年間売上(万円))→ 売上 33 億円・営業利益 2 億円。価格 1.20 倍は、海外大手との競争とAIの標準化で値下げ圧力が掛かるため物価に届かない
- その他サービス:数量 90.0(案件数(件、推定))× 価格 0.10(1 件当たり売上(億円))→ 売上 9 億円・営業利益 0 億円。その他サービスは小さい
倍率:事業のROEが資本コスト以下なので、稼ぐ力の値(1÷k)まで。
確率:下に寄せる理由:黒字は直近の1期だけで、その前は6期連続の赤字。導入支援が人月型でAIに置き換わりやすい。27%。
悲観 17% 黒字化が一時で終わり、赤字と減損に戻る 利益 −10 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 8 円8 億円
直近の黒字化は一時の需要で、導入支援が縮んで赤字に戻る。製品も海外の大手に置き換えられ、減損も再び出る。営業赤字が続いて現金を食い、会社に残る価値は純現金の一部だけになる。稼ぐ力では値が付かず、事業の再建には新たな資金が要る。再び増資で株が薄まる恐れもある。
- AIプラットフォーム:数量 140(契約・案件の企業数(社、推定))× 価格 0.20(1 社当たり年間売上(億円))→ 売上 28 億円・営業利益 −3 億円。AI導入支援・生成AIの契約。人月に近い型で数量は縮みやすい
- AIプロダクト:数量 0.4(契約施設・拠点数(万、推定))× 価格 45(1 拠点当たり年間売上(万円))→ 売上 19 億円・営業利益 −3 億円。価格 1.20 倍は、海外大手との競争とAIの標準化で値下げ圧力が掛かるため物価に届かない
- その他サービス:数量 45.0(案件数(件、推定))× 価格 0.09(1 件当たり売上(億円))→ 売上 4 億円・営業利益 −1 億円。その他サービスは小さい
倍率:悲観の床は稼ぐ力でなく、純現金から前受金などを引いた8億円を今の自己資本45億円で割った値。
確率:下に寄せる理由:2025年3月期に約24億円の減損を出した。黒字が一時で終わり、赤字に戻る筋書き。17%。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
AIプラットフォーム
企業向けのAI導入支援と生成AIの契約を扱う。
| 数量契約・案件の企業数(社、推定) | 価格1 社当たり年間売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 350 | 0.20 | 70 | 14 |
| 10 年後 中立 | 280 | 0.25 | 70 | 12 |
取り方:売上120億円の約58%と推定。1社年約0.2億円と置いて350社に推定(軽い版)。【AI エージェント代替】人月・工数に近い型で、数量は縮みやすい。
AIプロダクト
介護や業務向けのAI製品を売る。
| 数量契約施設・拠点数(万、推定) | 価格1 拠点当たり年間売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.7 | 50 | 35 | 3 |
| 10 年後 中立 | 0.8 | 60 | 50 | 8 |
取り方:売上の約29%と推定。1拠点年約50万円と置いて0.7万拠点に推定。
その他サービス
小さな関連サービス。
| 数量案件数(件、推定) | 価格1 件当たり売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 150 | 0.10 | 15 | 1 |
| 10 年後 中立 | 120 | 0.12 | 14 | 1 |
取り方:売上の約13%と推定。小さい部門として単純に置く。
リスクと懸念
AI エージェントによる導入支援の代替
売上の半分強は人月型の導入支援で、顧客が自社でAIエージェントを使って内製すれば縮む。中立では数量を今の0.8倍と置いた。
黒字化が1期だけ
2026年3月期が初めての営業黒字で、その前は6期連続の赤字だった。大型案件の反動が出れば、赤字に戻りうる。
減損とM&Aの失敗
2025年3月期に約24億円の減損を出した。子会社の事業計画の見直しが原因で、同じことの再発に注意する。
海外大手との価格競争
海外のAI大手が基盤とサービスを直接売るため、国内の導入支援の単価に下げ圧力がかかる。価格は物価に届かないと置いた。
今後の分かれ目
- AIプロダクトの売上が金額で開示され、前年比で高い伸びを保つ
- 自社の売り物としてのAIの証拠。製品の数量を高く置き、やや楽観に近づく。
- 導入支援の売上が顧客の内製化で前年を割る
- 置き換えが現実になった印。中立の数量を下げ、やや悲観に近づく。
- 配当や自社株買いの具体的な方針が示される
- 積み上がる現金が戻る道筋が見える。戻り方を上げられる。
- 赤字に戻る、または再び大きな減損を出す
- 黒字化が一時だった印。悲観に近づく。
見ておくもの
- AIプロダクトの売上と営業利益
- AIプラットフォームの案件数と単価
- 営業利益率が1割台を保てるか
- 配当・自社株買いの有無
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価や売上の倍率を見ず、事業のROE・k・gから式で置いた。黒字化は筋書きの確率で扱い、売上の倍率では値付けしていない。kは7.5%にqualityの+0.25%を足した7.75%。g_longは0%。売上の内訳は推定。中期経営計画の数字と還元の約束は見つからなかった。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。