結論
アイキューブドシステムズは、企業や官公庁のスマートフォン、タブレット、PCを遠隔管理する「CLOMO」を主力とする会社だ。国内MDM市場では15年連続で自社ブランド首位を守り、高い継続率と豊富な現金を持つ。しかし、長く持つ株主の立場では、現在の時価総額105億円に対して安全域が足りず、評価は「やや割高」と判断する。
この会社の強さは、単に使いやすい管理画面を提供していることではない。端末の設定、利用制限、証明書、紛失時の遠隔消去など、顧客が止められない安全管理の仕事を担っている。2026年6月期のライセンス継続率は95.8%で、政府調達に関係するISMAP登録やNTTドコモ向けOEM提供も競争力を支える。営業利益率26%台、純現金約29億円という実績も、小型ソフト会社としては優秀だ。
それでも、過去の成長率をそのまま10年先へ延ばすことはできない。導入法人数は増えているが、1社当たり月額単価は低下している。Microsoft Intuneなどの統合管理基盤が普及し、AIエージェントが管理者の操作や運用代行を担えば、独立した管理ソフトに払う料金の一部が削られる可能性がある。端末を安全に制御する機能は残っても、利益の取り分まで守れるとは限らない。
2026年9月に公表した経営方針は、2031年6月期に売上高80億円、営業利益16億円を目指す内容だ。成長意欲は評価するが、前回の売上目標は未達だった。新市場への進出と買収を成果として確認するまでは、会社計画を10年後の確実な利益として扱わない。
5つの筋書きの確率加重価値は、現在価値で約83億円となる。今の時価総額を約20%下回る。既存事業の高収益と現金の厚さが下値を支えるものの、ソフトウェアの競争環境が大きく変わる時代には、もう一段の安全域を求めたい。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主にとって、この会社の魅力は、必要な仕事を小さな資本で続けられるところにある。企業が業務端末を使う限り、誰かが設定を管理し、盗難や紛失に備え、業務データを守らなければならない。CLOMOはその仕事を継続課金で引き受け、顧客が増えれば大きな工場を作らずとも利益を伸ばせる。営業キャッシュフローが安定している点も評価できる。
ただし、本当の所有者利益を考えるなら、会計上の純利益だけでは足りない。OSが変わるたびに製品を更新し、セキュリティ認証を維持し、販売代理店と顧客の関係を守る支出が続くからだ。ソフトウェアの償却費が計上されても、競争力を保つ開発投資は不要にならない。設備を持たないことは有利だが、製品寿命が永久であることを意味しない。
顧客がCLOMOを使い続ける理由のうち、最も価値があるのは端末管理の実務に深く入り込んだ部分だ。ISMAP登録、長期の導入実績、通信会社とのOEM関係は新規参入を難しくする。一方、操作画面の便利さや管理者の作業時間削減だけでは、AIエージェントや統合クラウドに対する十分な防壁にならない。将来も端末の安全管理という仕事は残るが、その仕事をCLOMOが独立した高収益製品として担えるかは別の問いである。
資本政策では、増配と自社株買いを続けた点を肯定的に評価する。現金を抱えているだけの企業ではない。しかし、創業者の支配力が強いため、少数株主はM&Aや資金配分を直接変えられない。投資先の評価損や買収後ののれん償却が積み重なれば、本業の良さを相殺する可能性がある。
筆者なら、CLOMOの事業そのものには十分な価値を認める。ただし10年後の競争構造が読みにくい以上、好調が続く値段を先払いしない。優秀な会社を保有することと、優秀さを織り込んだ値段で買うことは異なる。今の評価は、後者の難しさを残している。
何で稼ぐ会社か
収益の中心は「CLOMO MDM」だ。企業が従業員へ配ったスマートフォンやタブレットを一元管理し、アプリの配布、端末の利用制限、位置情報の確認、紛失時の遠隔ロックやデータ消去などを提供する。利用企業は端末台数に応じて継続的に料金を支払う。情報システム担当者が少ない企業ほど、端末管理を外部サービスへ任せる経済的な理由がある。
料金表ではCLOMO MDMの基本利用料が月額2,100円、端末ライセンスが1台当たり月額300円となっている。実際には販売代理店を通じた契約、OEM、教育・公共機関向け割引があり、会社の受取単価はこの定価とは一致しない。2026年6月期のMDM売上は約34.68億円だった。定価換算では約89万台相当の端末ライセンスに当たり、実際の管理端末数とは区別すべき推計値だ。
第二の収益源は「CLOMO SECURED APPs」である。安全なブラウザー、メール、連絡先などの業務アプリを端末ごとに提供する。2026年6月期の売上は約1.59億円と小さい。MDMと同じ顧客へ販売できるが、業務アプリの操作そのものはAIエージェントによる代替を受けやすい。
第三の収益源はPC向け情報漏洩対策と周辺サービスだ。2025年1月に子会社化したワンビの「TRUST DELETE」を利用し、Windows PCの遠隔消去や情報漏洩対策を広げている。会社は導入、初期設定、運用代行、管理者向け支援も提供する。これらは顧客単価を引き上げる機会だが、PC用ソフトにはMicrosoftの統合管理製品があり、運用代行には自動化の圧力が強い。
2026年6月期の開示では、MDMとSECURED APPs以外の「その他」が約8.14億円だった。PC向け製品と運用支援の売上内訳は非開示のため、評価上はPC・セキュリティ製品5.30億円、運用支援など2.84億円と暫定的に分ける。この内訳は会社の正式なセグメント数字ではない。
連結上はCLOMO事業と投資事業の二つである。CLOMO事業の営業利益が約12.60億円、投資事業が約0.90億円の損失となり、連結営業利益は約11.70億円だった。投資事業はCVCを通じて未上場企業へ資金を出す活動であり、収益は投資先の売却や評価に左右される。継続課金のCLOMOと同じ倍率で評価すべき事業ではない。
優良さと弱いところ
最大の強みは、顧客が実際に業務で使い続けていることだ。2026年6月期末の導入法人数は10,718社、ライセンス継続率は95.8%だった。過去数年の継続率もおおむね95〜97%で推移する。端末を一斉に別製品へ移すには、設定や証明書、OSごとの管理方針を変更する必要がある。顧客にとって切り替えは単なるソフトの買い替えではない。
販売網にも堀がある。NTTドコモグループへのOEM提供により、通信回線を契約する企業へ管理機能を同時に販売できる。政府向けにはISMAP登録が信用力になり、医療・公共分野での販売実績も厚い。Apple、Google、Microsoftとの技術連携は、OSの仕様変更へ対応し続けるための重要な資産だ。これらを合わせると、国内MDMの既存顧客を守る力は平均的な業務SaaSより強い。
ただし、値上げできる力はまだ証明が弱い。導入法人数が増える一方で、1社当たり月額単価は2022年の約5.2万円から2026年には約2.9万円へ低下した。中小顧客の構成比上昇が主因であり、同一契約の値下げを意味するわけではない。それでも、顧客数の増加が利益の増加へそのまま結びつくと考えるのは危険だ。法令改正のたびに価格を引き上げた実績も確認できない。
資本効率は高い。2026年6月期の純利益は約7.3億円、自己資本は約30.4億円で、ROEは24%だった。大きな工場を持たず、継続課金を積み上げるため、追加の設備負担が比較的軽い。しかし、その高い利益率には自社ソフトを顧客が選び続ける前提がある。端末制御の機能がOSや大手クラウドへ取り込まれると、高いROEは急速に低下し得る。
堀は確かに存在するが、全事業が守られているわけではない。端末の制御記録やセキュリティ設定を担う中核は強く、業務アプリや人手による運用支援は弱い。会社全体の堀は標準的な評価とし、10年先も現在の超過収益を完全に維持できるとは考えない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内MDM市場は、2025年の約195億円から2026年に211億円、2029年には262億円へ拡大する見通しだ。会社資料の予測では名目で年8%前後の成長になる。法人スマートフォンの普及に加え、医療、教育、自治体、製造現場で管理端末が増えることが需要を支える。ただし、この市場規模は売上金額であり、物価上昇や単価変化を除いた端末数量の伸びと同一ではない。
CLOMOは2025年度の国内MDM自社ブランド市場で約21%のシェアを持ち、15年連続で首位を維持している。会社は将来的に40%のシェアを目指す考えも示している。ただし、その達成年限は約束していない。また、21%は自社ブランド出荷額の調査による数字で、OEMや周辺サービスを含む連結売上を市場全体211億円で割ったシェアとは異なる。
競合には国産MDMのOptimal Biz、LANSCOPE、SPPM、BizMobile Go!、mobiconnectがある。PC管理ではSky、Microsoft Intune、Jamf、Workspace ONEなど、より広い端末管理基盤も競争相手になる。主要競合の個別シェアは、比較可能な最新の公開一次資料で確認できないため推定値を事実として列挙しない。最も警戒すべき相手は、既存のソフトとMDMを一体販売できる大手クラウド事業者だ。
市場の境界は広がっている。会社が示す2026年のエンドポイント管理市場は824億円で、MDM単独市場の約4倍ある。PC資産管理やセキュリティを含むためだ。しかし、市場規模が4倍になることと、CLOMOが売上を4倍にできることは違う。PCでは競合が既に顧客基盤を築いており、ワンビの買収で得た技術だけでは勝ち切れない。
AIエージェントは需要と競争の両方を変える。業務用端末が増えれば保護すべき対象は残り、遠隔消去やアクセス制御のような実際の強制機能はAIだけでは不要にならない。一方、管理画面の操作、設定変更、問い合わせ対応、端末の導入作業は自動化される。ソフトの機能が大手の管理基盤に吸収されれば、独立したMDM事業者の取り分は縮む。
このため、10年の中立では端末管理の中核に一定の残存価値を認めつつ、席課金のアプリと人手の運用サービスは数量が縮むとみる。市場自体は成長しても、その利益を誰が獲得するかが大きく変わる可能性を重視する。
資本政策と M&A
経営陣は成長投資と還元の両立を掲げている。2026年9月29日に公表した2027〜2031年6月期の経営方針では、2031年6月期の売上高80億円、営業利益16億円を目標とした。売上高の年平均成長率は約12.5%を目指す。さらに新規事業やM&Aによる上乗せを狙うが、ROE、DOE、配当性向、総還元性向、自社株買い額について具体的な数値目標はない。
株主還元では、毎期、前年と同額以上の配当を目指し、株主優待制度も継続・拡充する方針だ。2026年6月期の年間配当は38円、2027年6月期は40円を予定する。100株以上と300株以上の保有者には、それぞれ年2回のデジタルギフト制度がある。2026年6月期の株主優待引当金繰入額は約0.054億円で、10年間の還元にも小額ながら反映した。
資本配分の実績では、2024年のタイ企業10KN COMPANY LIMITED、2025年のワンビの買収が重要だ。ワンビの取得対価は約4.2億円で、PC分野への展開と顧客基盤の取得を目的とした。2026年には新しい大型買収を急がず、既存事業の販売拡大と製品開発を進めた。前回の2026年6月期売上高50億円という中期目標は44.4億円にとどまったため、買収による売上の上積みを確実な成果として数えるべきではない。
自己株式の取得実績もあり、2025年6月期には約4億円を投じた。2021年から2026年にかけて流通する自己株控除後の株数も減少し、増配が続いている。支配株主の保有比率は高いが、利益を少数株主へ還元してきた実績があるため、余剰現金の株主帰属割合は100%とみる。
今後の問題はCVCと買収の収益性である。本業の限界利益率が高いだけに、利益を低採算の買収へ使うと企業価値を失いやすい。2031年の計画には営業利益率が現状より下がる余地も含まれる。売上規模の拡大よりも、買収後の増分ROICが資本コストを超えるかを優先して評価したい。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
CLOMOの中核は、普通の業務SaaSより守られた位置にある。経理や情報整理ならAIが画面を操作する代わりに処理してしまえるが、端末を遠隔でロックし、アクセス権限を適用し、紛失時にデータを消す機能そのものは必要だ。Apple、Google、MicrosoftのOS管理機構とつながった製品を企業に提供する役割が消えるとは考えにくい。政府向けISMAP登録と15年連続の首位実績も、単なる販売広告ではなく、選定の際に働く信用力である。
2026年6月期のライセンス継続率は95.8%であり、毎年ほとんどの契約が残る。導入法人数も10,718社まで増え、NTTドコモ向けOEMが新しい顧客獲得経路になった。通信会社の端末販売とCLOMOを一緒に提供すれば、営業費用を抑えながら契約を積み上げられる。小規模顧客が増えて平均単価が下がったことも、将来の追加端末やオプション販売を考えれば、顧客基盤を先に獲得した成果と見ることができる。
成長市場も十分に大きい。国内MDMは2029年に262億円へ拡大する見通しで、PCまで含むエンドポイント管理市場にはさらに大きな余地がある。ワンビのTRUST DELETE、Microsoft Intuneとの連携、公共・医療機関への販売は、その余地を取り込む具体的な足場になっている。
財務面では、純現金が約29億円あり、営業キャッシュフローも2026年6月期には約13億円だった。長期にわたり製品開発と還元を同時に進める余裕がある。利益の一部を小型買収へ投じても、現金が尽きる危険は小さい。現在の時価総額は、利益水準と財務の厚さを考えれば、極端な期待だけで支えられた値段ではない。
既存顧客の高い継続率を守り、PCとセキュリティ製品への追加販売に成功すれば、2036年にも高い利益率を保てる。会社が2031年の目標を達成できる可能性を考えると、悲観的な技術代替を前提に価値を削りすぎるべきではない。
慎重な見方
最大の弱点は、MDMという仕事がなくなることではなく、その対価を独立した製品として受け取れなくなることだ。Microsoft Intuneのような管理機能が既存のクラウド契約に組み込まれれば、企業は追加料金を払わず端末を管理できる。管理者が使う画面はAIエージェントに置き換わり、導入や設定の手間も急速に減る。CLOMOの機能が残っても、製品単価と契約数が減る可能性は十分にある。
価格の弱さは既に観察できる。導入法人数が増えた一方、1社当たり月額単価は数年間で大きく低下した。会社は中小顧客の比率上昇を説明しているが、今後も小口顧客中心の獲得が続くなら、営業やサポートの手間に対して得られる料金は小さくなる。15年間首位だった事実は過去の競争力を示すが、10年先の価格決定力を保証しない。
2026年9月の経営計画は、2031年6月期に売上高80億円を目指す一方、営業利益の目標は16億円だ。目標上の営業利益率は20%で、直近の26%台より低い。新しい事業で売上を増やしても、現在の高い収益率を維持できない可能性を会社自身の数字が示している。前回の売上高50億円という目標も未達だった。
ワンビの買収でPC市場への入口はできたが、Microsoft、Sky、Jamfなどの既存プレーヤーが強い。運用支援やキッティングはAIと自動化の影響を受ける。CVCでは未上場株式や投資組合の評価が不確実であり、損失が生じても少数株主が使途を変えることは容易ではない。
純現金29億円も、そのまますべてを株主の取り分と見るべきではない。契約負債、従業員への支払い、サーバー運用費、製品維持のための資金が必要だ。支配株主の判断で資金が買収に使われれば、帳簿上の現金が株主価値として残るとは限らない。
10年後、管理ソフトの操作とサポートはAIに吸収され、端末管理はOS標準機能の一部となるかもしれない。その場合、現在の営業利益率とROEを保つ根拠は失われる。株価の安さを判断する前に、稼ぐ力の寿命を疑うべき会社だ。
どちらに重みを置いたか
既存MDMの競争力については強気の見方に分がある。ライセンス継続率95.8%、15年連続首位、ISMAP登録とNTTドコモへのOEM提供は、具体的な裏付けを持つ。しかし、これらは将来の値上げ力を直接証明するものではない。AIと大手統合管理基盤による価格圧力は、慎重な見方の中心的な論点として残る。
確率は楽観側31%、中立30%、悲観側39%とした。中立の数量には既にAI代替の影響を織り込んでおり、同じ理由で悲観確率をさらに極端には引き上げない。現金と既存顧客が下支えするため、事業の消滅を中心にしない一方、過去の高成長を基準に楽観を厚くもしない。現在価値約83億円と時価総額約105億円の差から、結論はやや割高となる。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/06 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 2,504 円122 億円(+ 還元の換算額還元の合計 662 円32 億円)。 今の値に割り戻すと 1,710 円83 億円、今との差 −10.5%、 期待の年率 +5.9%(資本コスト 7.2%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 11% | 4,455 円217 億円 | 1,115 円54 億円 | +191.6% | +13.1% | 613 円30 億円 |
| やや楽観 | 20% | 3,820 円186 億円 | 892 円43 億円 | +146.7% | +10.8% | 942 円46 億円 |
| 中立 | 30% | 3,013 円147 億円 | 730 円36 億円 | +95.9% | +7.9% | 1,123 円55 億円 |
| やや悲観 | 25% | 1,237 円60 億円 | 466 円23 億円 | −10.8% | −1.3% | 426 円21 億円 |
| 悲観 | 14% | 266 円13 億円 | 182 円9 億円 | −76.5% | −15.8% | 63 円3 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,504 円122 億円 | 662 円32 億円 | +65.8% | +5.9% | 3,166 円154 億円 |
今の株価時価総額 1,910 円93 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 11% 端末管理の基盤を守り、PC向けの追加販売にも成功 利益 12 億円 · PER 15.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 4,455 円217 億円
CLOMOは端末管理という仕事の中心に残る。AIエージェントが管理者の画面操作を引き受けても、端末の設定情報、アクセス権限、遠隔消去命令の実行には信頼された管理基盤が必要だ。CLOMOはその基盤を提供し続け、NTTドコモ経由の販売と公共・医療分野で既存顧客を守る。
新規顧客の獲得ペースはかつてほど速くないが、管理対象をPCまで広げ、1端末当たりのセキュリティ機能を増やす。ワンビとの製品統合も進み、TRUST DELETEを既存顧客へ販売する。Microsoft Intuneとは単純な対決を避け、条件付きアクセスや端末状態の管理で補完関係を築く。
管理画面そのものの価値は薄れても、OSをまたぐ制御機能と顧客サポートの信頼が残る。価格競争による減少を付加価値の拡大で補い、MDMでは高い利益率を維持する。投資事業にはなお費用がかかるが、CVCの損失を本業の収益が十分に吸収する。
増配と自社株買いも継続し、余剰現金を株主へ返しながら財務の余力を残す。現在ほどの高い売上成長を永久に続けなくても、2036年に高収益の小型ソフト会社としての地位を保つ。
- CLOMO MDM(端末管理基盤):数量 888,000(定価換算の年間管理端末ライセンス数(台相当。実端末数ではない))× 価格 0.52(定価換算ライセンス1台当たり年間売上(万円・基本利用料とOEM収入を含む実効単価))→ 売上 46 億円・営業利益 16 億円。数量は現在と同じ定価換算88.8万台、単価1.34倍。管理・規制対応の中核を維持し営業利益率35%。
- CLOMO SECURED APPs:数量 53,000(有料アプリライセンスの定価換算数(端末ライセンス相当))× 価格 0.34(ライセンス1件当たり年間売上(万円))→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円。数量は現状維持、単価1.15倍。業務アプリの一部にAI代替圧力があるが既存顧客向けの販売を維持。
- PC向け情報漏洩対策・端末セキュリティ:数量 80,000(PCセキュリティの年間有料端末ライセンス換算数(台相当))× 価格 0.81(有料端末1台当たり年間売上(万円))→ 売上 7 億円・営業利益 2 億円。数量は現状維持、単価1.23倍。高付加価値の情報漏洩対策とオプション販売に成功。
- 端末導入・運用代行・周辺サービス:数量 10,718(CLOMO導入法人数を基礎とする年間販売機会(社相当))× 価格 3.55(販売機会1社当たり年間売上(万円・利用率と契約単価を含む))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。販売機会は現状維持、単価1.34倍。自動化による原価低下で低いながら利益率を確保。
倍率:k7.25%、2036年の事業純利益は全社純利益12.35億円から余剰現金42億円の税後利息相当0.588億円を控除して約11.76億円。事業自己資本は83−42=41億円、事業ROEは約28.7%。堀は標準で超過ROEの残る割合1/2とし、RONIC=7.25%+1/2×(28.7%−7.25%)=約18.0%。長期名目g1%から正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)=15.11倍。事業純利益に上限そのものを適用し、余剰現金42億円を株主帰属割合1.0で足す。既存株主の希薄化係数は最後にのみ適用する。
確率:国内MDM首位とISMAP登録、通信会社との販売網を維持したまま、PCやセキュリティ製品の利益率を高める筋書き。管理対象の数はAI代替を考慮して現在の定価換算数量を超えないが、顧客基盤を守りながら高付加価値化に成功する余地はある。10年連続の実行成功が必要なため11%。
やや楽観 20% 既存MDMを維持し、周辺製品の収益性が改善 利益 10 億円 · PER 15.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 3,820 円186 億円
国内MDMの成長は続くが、大手クラウドの統合管理製品も普及する。CLOMOは全市場でシェアを拡大するほどの勢いを持たない一方、通信会社との販売網と公共・医療分野の実績を生かして既存顧客を守る。端末管理の契約が安定するため、継続課金から得られるキャッシュフローも比較的安定する。
ワンビの技術を使ったPC向け情報漏洩対策では、既存CLOMO顧客への追加販売が徐々に進む。競合との価格競争は厳しく、PC分野が独立した大きな利益の柱になるところまでは期待しない。それでも製品統合が進み、研究開発や販促費に対する売上効率は改善する。
SECURED APPsではAIエージェントによって操作系アプリの利用が減る。キッティングと運用代行も自動化で人手の作業が縮むため、売上数量は現在より少なくなる。それでも管理対象を安全に保つという中核機能は残り、MDMの収益が周辺領域の減少を補う。
経営は大規模な買収を避け、増配と小規模な自社株買いを続ける。余剰現金は着実に増え、単独の事業利益だけではなく財務の厚さも10年後の株主価値を支える。過去の急成長には及ばなくても、収益力のあるソフトウェア企業として残る。
- CLOMO MDM(端末管理基盤):数量 870,240(定価換算の年間管理端末ライセンス数(台相当。実端末数ではない))× 価格 0.51(定価換算ライセンス1台当たり年間売上(万円・基本利用料とOEM収入を含む実効単価))→ 売上 44 億円・営業利益 14 億円。数量0.98倍、単価1.30倍。管理対象の高付加価値化で利益率32%。
- CLOMO SECURED APPs:数量 47,700(有料アプリライセンスの定価換算数(端末ライセンス相当))× 価格 0.34(ライセンス1件当たり年間売上(万円))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。数量0.90倍、単価1.13倍。AI代替の一部を既存顧客への付加価値販売が補う。
- PC向け情報漏洩対策・端末セキュリティ:数量 72,000(PCセキュリティの年間有料端末ライセンス換算数(台相当))× 価格 0.78(有料端末1台当たり年間売上(万円))→ 売上 6 億円・営業利益 1 億円。数量0.90倍、単価1.18倍。競争を受けながらセキュリティオプション販売を継続。
- 端末導入・運用代行・周辺サービス:数量 8,574(CLOMO導入法人数を基礎とする年間販売機会(社相当))× 価格 3.45(販売機会1社当たり年間売上(万円・利用率と契約単価を含む))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。数量0.80倍、単価1.30倍。作業自動化を進め利益率を守る。
倍率:k7.25%、余剰現金40億円の税後利息0.56億円を除いた事業純利益は約9.86億円。事業自己資本37億円に対する事業ROEは約26.6%。超過ROEの残る割合1/2によりRONICは約16.9%。長期g1%から正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)=約15.06倍。上限そのものを事業純利益に掛け、余剰現金を別に加える。
確率:国内MDMのブランド力、既存顧客の高い継続率、ISMAP登録を背景に、端末管理基盤の契約が比較的安定する筋書き。PCとアプリにはAI代替による数量減を認めるが、価格と原価管理で補える可能性がある。市場の伸びを全て取り切る必要はないため20%。
中立 30% 端末管理は残るが、AIと統合製品が超過成長を削る 利益 8 億円 · PER 14.9 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 3,013 円147 億円
企業がスマートフォンやPCを使う以上、端末の安全管理は必要であり続ける。しかし、管理の仕方は大きく変わる。AIエージェントが管理者の画面操作、設定変更、問い合わせへの対応を引き受けることで、独立した管理ソフトの価値は画面の使いやすさから、OSに対して実際に制御を強制できる機能へ移る。
CLOMOは公共・医療分野で積み上げた実績とNTTドコモとの関係を維持するが、Microsoft Intuneなどの統合管理製品に大口顧客の一部を奪われる。中小顧客の構成比も高まり、契約企業数が増えても平均単価は上がりにくい。中核MDMでは名目の単価を引き上げられるものの、定価換算の管理数量は現在より減る。
SECURED APPsは、業務アプリを個別に契約する必要が薄れ、利用数量が減少する。PCセキュリティではワンビの技術が一定の売上を支えるが、大手の統合製品に対して独立性を大きく広げられない。キッティングや運用代行は作業自動化で人月需要が減り、顧客の支払いも抑えられる。
経営は2031年の売上目標に向けて製品拡張と買収を進めるが、その後の競争激化によって、10年後の売上は現在から緩やかな増加にとどまる。利益率は直近の高水準から少し下がる。一方で、継続課金と小さな設備負担により現金は残り、配当と自社株買いによる還元も続く。優良さの一部を失っても、収益企業として存続する10年になる。
- CLOMO MDM(端末管理基盤):数量 834,720(定価換算の年間管理端末ライセンス数(台相当。実端末数ではない))× 価格 0.48(定価換算ライセンス1台当たり年間売上(万円・基本利用料とOEM収入を含む実効単価))→ 売上 40 億円・営業利益 11 億円。数量0.94倍、単価1.23倍。管理対象は残るが、統合製品との競争により数量が減少。
- CLOMO SECURED APPs:数量 42,400(有料アプリライセンスの定価換算数(端末ライセンス相当))× 価格 0.33(ライセンス1件当たり年間売上(万円))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。数量0.80倍、単価1.09倍。操作型業務アプリがAIに置き換わる。
- PC向け情報漏洩対策・端末セキュリティ:数量 65,600(PCセキュリティの年間有料端末ライセンス換算数(台相当))× 価格 0.74(有料端末1台当たり年間売上(万円))→ 売上 5 億円・営業利益 1 億円。数量0.82倍、単価1.12倍。Microsoft等との競争で独立ライセンスの数量が減る。
- 端末導入・運用代行・周辺サービス:数量 6,967(CLOMO導入法人数を基礎とする年間販売機会(社相当))× 価格 3.29(販売機会1社当たり年間売上(万円・利用率と契約単価を含む))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。数量0.65倍、単価1.24倍。AIと自動化でキッティング・運用代行工数が減少。
倍率:k7.25%、全社純利益7.96億円から余剰現金38億円の税後利息0.532億円を除くと事業純利益は7.43億円。事業自己資本72−38=34億円に対するROEは約21.8%。堀はnormal、超過ROEの残る割合1/2でRONICは約14.5%。長期g1%から正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)=14.9倍。成熟後の上限そのものを使用し、余剰現金38億円を加える。
確率:中核MDMには国内首位と高い継続率という守りがあるため、全面的な代替は中心にしない。ただし、会社の平均契約単価は既に低下傾向で、PCやBPOの成長を高く評価しにくい。端末制御という基盤機能を残しつつ、AIと競合への流出を数量へ反映した中立を30%とする。
やや悲観 25% 統合管理製品に契約を奪われ、利益率が低下 利益 4 億円 · PER 10.6 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,237 円60 億円
Microsoftなどの大手クラウド事業者が、端末管理を既存契約の標準機能として提供する。大企業は管理ソフトを統合し、CLOMOの更新時に価格引下げを求める。通信会社の販売方針も変わり、従来のOEM経由の契約獲得が鈍る。契約継続率が高かった顧客でも、端末更新とともに別の管理基盤への移行が進む。
管理する機器そのものは残るが、CLOMOの定価換算ライセンスは約2割減る。価格も物価の累積上昇には追いつかない。中核事業の営業利益率は22%程度まで下がり、かつての高い収益力が薄れる。
PC向けではワンビの製品が大手の管理・セキュリティ製品と正面から競合する。追加販売で利益を増やすどころか、既存顧客を維持するために販促費が必要になる。SECURED APPsの一部はAIによる業務処理に置き換わり、運用代行も工数削減の要求を受ける。売上が減っても製品開発や認証維持の固定費は簡単には削れない。
CVCと買収に投じた資金の一部も十分な利益を生まない。経営は増配目標を修正し、還元額の伸びを止める。現金は残るため事業の継続が危うくなるほどではないが、ROEは資本コストを下回り、成長投資より還元を優先すべき企業へ変わる。
- CLOMO MDM(端末管理基盤):数量 692,640(定価換算の年間管理端末ライセンス数(台相当。実端末数ではない))× 価格 0.43(定価換算ライセンス1台当たり年間売上(万円・基本利用料とOEM収入を含む実効単価))→ 売上 30 億円・営業利益 7 億円。数量0.78倍、単価1.10倍。統合管理製品にシェアを奪われ、利益率22%。
- CLOMO SECURED APPs:数量 33,390(有料アプリライセンスの定価換算数(端末ライセンス相当))× 価格 0.31(ライセンス1件当たり年間売上(万円))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。数量0.63倍、単価1.02倍。業務アプリの多くが統合製品とAIに置き換わる。
- PC向け情報漏洩対策・端末セキュリティ:数量 49,600(PCセキュリティの年間有料端末ライセンス換算数(台相当))× 価格 0.68(有料端末1台当たり年間売上(万円))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。数量0.62倍、単価1.02倍。競争激化で利益率7%。
- 端末導入・運用代行・周辺サービス:数量 5,145(CLOMO導入法人数を基礎とする年間販売機会(社相当))× 価格 2.92(販売機会1社当たり年間売上(万円・利用率と契約単価を含む))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。数量0.48倍、単価1.10倍。人手作業の減少に固定費削減が追いつかない。
倍率:全社純利益3.99億円、余剰現金22億円の税後利息0.308億円を除く事業純利益は約3.68億円。事業純利益の資本コスト7.25%による稼ぐ力は約50.8億円で、余剰現金22億円を加えた上限は約72.8億円。統合管理製品との競争で低収益化した筋書きの価値として、事業利益の10.6倍と余剰現金の合計約61.0億円とする。現在の売れる資産の税後床13.1億円も下回らない。
確率:Microsoft Intuneなどへの集約、OEM販売方針の変化、PC関連事業の採算悪化が重なる筋書き。既存顧客の継続率が高いため即時に市場から消えるとはしないが、10年なら契約の入れ替えが進み得る。独立MDM事業者に固有の競争リスクを重く見て25%。
悲観 14% 独立MDMの収益構造が崩れ、資産価値が中心になる 利益 0 億円 · PBR 0.4 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 266 円13 億円
端末管理の機能はMicrosoftなどの大手プラットフォームへ集約され、企業は単独のMDM製品を追加購入しなくなる。AIエージェントが端末登録、設定変更、セキュリティ監視、問い合わせ対応を自動化し、従来の管理画面や運用サービスに払っていた料金が失われる。CLOMOが強みとしてきた使いやすさとサポートは、差別化の中心ではなくなる。
NTTドコモを含む販売パートナーが別製品へ切り替えるか、自社の統合管理機能へ顧客を移す。CLOMOの更新率は大きく低下し、導入法人数と端末ライセンスが縮む。官公庁や医療機関の一部では長年の実績で契約が残るものの、価格を維持する力は失われる。
PC向け情報漏洩対策は統合セキュリティ機能に代替され、ワンビの買収で得た事業にも十分な収益が残らない。運用代行は自動化に置き換わり、人員や開発費などの固定費が売上に対して重くなる。投資事業の損失も加わり、連結営業利益は赤字となる。
経営は配当方針を見直し、事業整理と資金の温存を優先する。買収した事業の無形資産には減損が発生し、積み上げた自己資本の一部が価値を失う。既存株主にとって残る価値は、かつての高収益ソフト会社としての稼ぐ力ではなく、現金、回収可能債権、売却できる投資資産に近づく。
この筋書きでは過去の利益倍率や株価の谷のPBRを床に使わない。現在の資産を慎重に換価したときの株主帰属価値を中心に評価する。
- CLOMO MDM(端末管理基盤):数量 408,480(定価換算の年間管理端末ライセンス数(台相当。実端末数ではない))× 価格 0.37(定価換算ライセンス1台当たり年間売上(万円・基本利用料とOEM収入を含む実効単価))→ 売上 15 億円・営業利益 1 億円。数量0.46倍、単価0.96倍。統合管理製品に大部分の独立需要を奪われ、利益率6%。
- CLOMO SECURED APPs:数量 20,140(有料アプリライセンスの定価換算数(端末ライセンス相当))× 価格 0.27(ライセンス1件当たり年間売上(万円))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。数量0.38倍、単価0.90倍。AI代替によって独立業務アプリの採算が崩れる。
- PC向け情報漏洩対策・端末セキュリティ:数量 30,400(PCセキュリティの年間有料端末ライセンス換算数(台相当))× 価格 0.60(有料端末1台当たり年間売上(万円))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。数量0.38倍、単価0.90倍。大手統合セキュリティとの競争で赤字。
- 端末導入・運用代行・周辺サービス:数量 3,001(CLOMO導入法人数を基礎とする年間販売機会(社相当))× 価格 2.86(販売機会1社当たり年間売上(万円・利用率と契約単価を含む))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。数量0.28倍、単価1.08倍。AIによる工数削減で固定費を回収できない。
倍率:営業赤字・純損失のためPERによる継続収益価値を採用しない。現在の自己資本30.4億円を分母とする床の資産価値約13.1億円はPBR約0.43倍に相当する。2036年の自己資本43億円に0.43倍を掛けて価値を膨らませず、純現金と売れる資産を税後・負債控除後で評価する。事業赤字に継続利益の上乗せはしない。
確率:大手クラウドの標準機能化、AIエージェントによる運用自動化、主要販売先の方針変更が重なり、端末管理の独立した収益力を失う構造的敗北。ISMAPや既存顧客の実績があるため事業消滅を高確率にはしないが、10年という時間では排除できず14%。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
CLOMO MDM(端末管理基盤)
スマートフォン、タブレット、PCの一元管理、遠隔ロック、データ消去、証明書や利用ポリシー管理を継続課金で提供する中核製品。
| 数量定価換算の年間管理端末ライセンス数(台相当。実端末数ではない) | 価格定価換算ライセンス1台当たり年間売上(万円・基本利用料とOEM収入を含む実効単価) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 888,000 | 0.39 | 35 | 11 |
| 10 年後 中立 | 834,720 | 0.48 | 40 | 11 |
取り方:2026年6月期の会社開示MDM売上34.67953億円を使用。公開価格は基本利用料月2,100円、1端末月300円。導入法人数10,718社に対する基本料金を年間約2.70億円と概算し、残り31.98億円を年3,600円で割ると約88.8万台相当となる。端末実数・OEMの卸価格・官公庁割引は非開示なので定価換算量であって実契約数ではない。営業利益10.9億円はCLOMO事業利益12.604億円を製品別に配分した推定値。市場は2026年MDM211億円、2029年262億円、自社ブランド市場でCLOMO約21%。AIエージェント代替の型は『記録の正本・規制対応・共同利用基盤』。継続率95.8%とNTTドコモOEMを通じた共通管理基盤の実績が二つの証拠となる。中立の数量は今の0.94倍、価格は1.23倍で、端末制御機能の残存と管理画面の自動化圧力を同時に反映する。
CLOMO SECURED APPs
安全なブラウザー、メール、連絡先、文書管理などを端末単位で提供する業務アプリケーション群。
| 数量有料アプリライセンスの定価換算数(端末ライセンス相当) | 価格ライセンス1件当たり年間売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 53,000 | 0.30 | 2 | 0 |
| 10 年後 中立 | 42,400 | 0.33 | 1 | 0 |
取り方:会社開示のSECURED APPs売上1.58723億円を、主要アプリの公開価格である月250円、年3,000円を中心に換算し約5.3万件と推定する。高額アプリや基本料金も含まれるため実ライセンス数ではない。営業利益は推定配賦。AIエージェント代替の型は『席(ID)課金・操作画面中心の業務SaaS』。中立の数量は0.80倍、価格は1.09倍。操作自動化で独立アプリの必要性が下がると考え、10年以降の成長率は名目0%以下と判断する。
PC向け情報漏洩対策・端末セキュリティ
ワンビのTRUST DELETEやCLOMO連携オプションによるPCの遠隔消去、情報漏洩対策、セキュリティ管理。
| 数量PCセキュリティの年間有料端末ライセンス換算数(台相当) | 価格有料端末1台当たり年間売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 80,000 | 0.66 | 5 | 1 |
| 10 年後 中立 | 65,600 | 0.74 | 5 | 1 |
取り方:2026年6月期のその他売上8.14043億円は製品別に未開示。PC・情報漏洩対策の寄与を約65%の5.30億円と推定する。CLOMOの公開オプション単価月550円を年換算すると6,600円であり、約8万台の定価換算ライセンスに相当する。ワンビ独自契約の単価や収益認識とは一致しないため、これは事業別実績ではなく数量×価格を考えるための推計である。AIエージェント代替の型は保守的に『席課金・操作画面中心の業務ソフト』とし、中立数量0.82倍、価格1.12倍。独立製品が統合管理ソフトへ吸収される可能性を考慮する。
端末導入・運用代行・周辺サービス
キッティング、端末の初期設定、運用代行、管理者研修、各種サポートと周辺サービス。
| 数量CLOMO導入法人数を基礎とする年間販売機会(社相当) | 価格販売機会1社当たり年間売上(万円・利用率と契約単価を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 10,718 | 2.65 | 3 | 0 |
| 10 年後 中立 | 6,967 | 3.29 | 2 | 0 |
取り方:その他売上8.14043億円から推定PC・セキュリティ売上5.30億円を差し引くと2.84043億円。公表されたCLOMO導入法人数10,718社を潜在的な販売機会として割り、年約2.65万円を利用率込みの平均売上とする。全顧客がBPOを購入した意味ではなく、受託作業件数の直接開示もない。営業利益はCLOMO事業全体との整合を取った推定配賦。AIエージェント代替の型は『人月・工数で売るBPO・研修・運用受託』。中立数量0.65倍、価格1.24倍とし、10年以降の名目成長率は0%と判断する。
リスクと懸念
AIエージェント代替
管理者が画面で端末を登録し、設定を変更し、問い合わせに対応する仕事はAIエージェントで自動化され得る。とくにSECURED APPsや運用代行は、従来の席数・作業工数に基づく料金を維持しにくい。中核MDMも端末制御機能は残るが、操作画面の価値が薄れ、大手統合管理製品へ支払いが集約される可能性がある。
Microsoftなどによる統合管理
Microsoft IntuneやクラウドID管理機能が企業の標準環境へ組み込まれれば、独立したMDM製品を追加購入する必要が小さくなる。CLOMOはMicrosoftとの連携機能を持つが、相手が補完先から競争相手へ変わる可能性もある。顧客が他のサービスとの一括契約を優先すると、独立製品の単価と数量の双方が圧迫される。
主要販売パートナーへの依存
NTTドコモグループ向けOEMは新規顧客獲得の重要な成長源になっている。しかし、大手通信会社が扱う管理製品の方針を変更したり、自社製品を優先したりすれば、CLOMOの新規契約と更新需要に大きな影響が生じる。販売パートナーとの契約条件や卸価格が非開示である点も、長期の値決め力を判断しにくくしている。
平均契約単価の低下
導入法人数が増える一方、1社当たり月額単価は数年間で低下している。小規模顧客が増えたことが主因とされるが、サポート費用を十分に吸収できるかは別問題だ。将来も低単価顧客の比率が上がれば、売上が増えても利益率を維持できない。既存顧客への値上げや上位プランへの移行が進むかを継続して確認したい。
買収・CVCによる資本配分の失敗
ワンビの買収はPC領域への進出に必要な技術を得る一方、のれんや顧客関連資産、非支配株主持分を伴う。今後も周辺領域の買収を重ねれば、本業の高い資本効率が低下するおそれがある。CVCの未上場株式や投資組合持分は換価性が低く、帳簿額がそのまま株主の現金価値になるとは限らない。
OS仕様変更とセキュリティ事故
CLOMOの管理機能はApple、Google、Microsoftが提供するOSの管理APIに依存する。OSの仕様変更で利用できる機能が制限されれば、製品開発に追加費用がかかる。重大な情報漏洩や管理基盤の障害が生じれば、信頼性を重視する官公庁や医療機関の採用にも影響する。長期の顧客維持に直結するため、技術対応と事故防止への投資を削ることはできない。
創業者支配と少数株主の資金回収
2026年6月期末時点で創業者が過半数を保有し、上位株主への集中度も高い。増配と自社株買いの実績はあるが、将来の買収や余剰資金の利用方針を少数株主が変更することは難しい。利益を高い利回りで再投資できなくなった場合、資金を速やかに還元できるかが価値を左右する。
今後の分かれ目
- ライセンス継続率が97%以上へ戻り、同時に1社当たり月額単価も数期連続で上昇したら
- 単なる小口顧客の増加ではなく、既存契約の値決め力と追加販売が改善している可能性がある。中立の単価と利益率を上方修正し、長期の堀の評価を強める。
- CLOMO MDMの継続率が93%未満となり、主要な通信会社経由の導入法人数も減少したら
- 大手統合管理基盤への移行が本格化した兆候として扱う。中立の管理ライセンス数量を引き下げ、やや悲観と悲観の確率を引き上げる。
- 2031年6月期の売上高80億円・営業利益16億円を、買収依存を抑えながら達成したら
- PCと周辺サービスの販売能力が想定より高いことを確認できる。成長後の利益の持続性を再評価するが、売上成長だけでなく増分ROICと営業キャッシュフローを同時に確認する。
- AIエージェントによる端末の自動管理機能を有償で提供し、既存製品とは別の契約金額やARRを開示したら
- AI代替を防ぐだけでなく新たな売上を得ている事実になるため、AIに関わる数量の下限を見直す。実際の売上金額が確認できるまでは『AIで伸びる』という期待を楽観の追加成長にしない。
- Microsoft Intuneなどの統合管理製品が主要顧客の標準となり、CLOMOの契約単価引下げが確認されたら
- 中核MDMの記録・制御基盤としての独立性を再評価する。価格が物価上昇に追いつかない場合は中立価格を下げ、長期gも0%以下へ引き下げる。
- 自社株買いと増配が途絶え、余剰現金を利益率の低い買収やCVCへ継続的に投じたら
- 株主に帰属する現金の評価を見直す。特に買収後の営業利益とキャッシュフローが投資額に見合わなければ、将来余剰現金の見込みを減額し、資本配分による価値毀損を悲観側へ反映する。
見ておくもの
- 四半期・通期のCLOMO導入法人数と年間ライセンス継続率
- CLOMOのARRと1社当たり月額単価の同時変化
- NTTドコモグループ向けOEM提供による顧客増加の継続
- 国内MDM自社ブランド市場のCLOMOシェアと競合製品の動向
- ワンビのTRUST DELETEを含むPC向け売上と営業利益の開示
- Microsoft Intuneとの連携が補完関係か競争関係か
- 2031年6月期の売上高80億円・営業利益16億円の達成状況
- CVCの売却収入・評価損と新たな買収に投じる金額
- 配当、自社株買い、自己株控除後株数と余剰現金の変化
- AIエージェント機能の有償契約額・ARRの開示
倍率と資本コストの決め方
評価の出発点は株価ではなく、公開料金と製品別売上から推定したライセンス数と実効単価である。MDM約88.8万台相当、SECURED APPs約5.3万件、PC約8万台相当は定価換算であり、会社が開示した実ライセンス数ではない。PCとBPOの内訳も会社非開示の推定として区別した。
AIエージェント代替は、10年間の数量・価格と10年以降のg_longだけで反映した。資本コストの寿命や追加プレミアムには重ねない。中立のMDM数量0.94倍・単価1.23倍、業務アプリ0.80倍・1.09倍、PCソフト0.82倍・1.12倍、BPO0.65倍・1.24倍は、型ごとの範囲と事業の違いを踏まえたものだ。
中立のPER14.9倍は、資本コスト7.25%、現金を除いた事業ROE約22%、超過ROEの残存割合1/2、長期名目g1%から計算した正当化上限である。市場の現在・過去のPER、同業のPERや谷のPBRは根拠にしていない。悲観は現在の換価可能資産13.1億円を床とし、将来の自己資本へ床のPBRを掛けない。
10年の純利益と還元額から自己資本が増える流れを確認し、積み上がる余剰現金は事業ROEの分母から外して別に評価した。日本基準の新リース会計による将来の表示変更は、同じ賃借費用負担を前提とする利益の価値を機械的に変えない。2026年10月22日の時価総額約104.8億円と比較するのは、以上の数量・利益・倍率・確率を決めた後に限った。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。無リスク金利3%と株式リスクプレミアム4.5%の基本7.5%に、財務の強さに基づく品質調整マイナス0.25%を加えた。AI代替、M&A、販売先集中の影響は数量・利益率・確率で表し、資本コストには重複して加算しない。