結論
ココペリは、地域金融機関を通じて中小企業をつなぐ「Big Advance」を主力とする会社である。筆者の結論は「割高」だ。全国の銀行・信用金庫との関係は容易に複製できない資産だが、それが会員企業の増加や持続的な利益成長に結びついていない。2026年10月22日時点の時価総額約25億円に対し、10年先の利益と株主への還元を資本コストで割り引いた本質価値は約8.3億円となる。
最大の問題は、ネットワークが広いことと、そこから十分な利益を生むことが別だという点である。Big Advanceの会員企業数は2022年3月期の72,050社を頂点に減り、2026年6月末には52,203社になった。導入金融機関も84社をピークに72社まで減っている。金融機関との関係は残っても、中小企業が毎月対価を払いたいと考える用途が弱まれば、継続課金の優位性は薄れる。
2026年3月期の大幅な営業赤字には、海外サービス「BIG ADVANCE GLOBAL」への先行投資という特殊事情がある。2027年3月期第1四半期には営業黒字へ戻っており、直ちに事業存続を疑う状況ではない。純現金約9億円も一定の安全網となる。ただし、新規事業の収益化とAIエージェントによる既存機能の代替が同時に進むため、10年後の利益の確度は低い。
金融機関の顧客基盤を生かして海外取引の成功報酬や新しい金融DXサービスを育てられれば、収益構造は改善する。しかし、会社が掲げる大幅な成長目標を実現済みの収益と同じ重さでは扱えない。上振れの可能性は残しながらも、長く持つ株主が必要とする安全域は、現在の時価総額では確保できないと判断する。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主の見方では、まずこの会社の本当の顧客資産を見極めたい。金融機関との関係と全国の商談データは簡単に作れないが、契約を維持するだけでは価値は生まれない。会員企業が支払い続ける理由は何か、別のサービスに移ると何を失うのか、値上げしても利用を続けるか。この三つに明確な答えがない限り、金融機関の導入実績だけで強い堀と呼ぶのは難しい。
次にオーナー利益を見る。会計上の営業利益に戻ることは出発点にすぎず、開発したソフトウェアが陳腐化するたびに再開発費が必要となる。2026年3月期には営業キャッシュフローがわずかに黒字だった一方、ソフトウェアなどの取得に多額の資金を使った。追加投資後の現金創出が確認できなければ、将来の純利益をそのまま自由な現金とは考えられない。
経営陣の判断にも慎重さが必要だ。海外市場への投資を前倒しし、補助金を活用した判断には合理性がある。しかし、その後の有料会員獲得が遅れている事実を重く見る。国内の既存会員数が減る中で、海外投資と地域企業の買収を重ねれば、会社は大きくなる一方で一株当たりの経済価値が増えない危険もある。増分利益が資本コストを上回るまでは、再投資の成功を前提に評価しない。
現在の純現金は事業の失敗に対する緩衝材となる。ただし、その現金を配当として受け取れるわけではなく、将来の開発や買収で消費することもできる。筆者が重視するのは、AI時代でも銀行と企業をつなぐ独自の取引基盤が残るか、そして残った基盤から株主に帰属する現金を生めるかである。現状の収益性と還元実績では、25億円を正当化する十分な安全域は見いだせない。
何で稼ぐ会社か
事業の中心はBig Advanceである。地方銀行、第二地方銀行、信用金庫、信用組合が自らの取引先企業にサービスを紹介し、会員企業は金融機関を越えたビジネスマッチング、ホームページ作成、補助金情報、福利厚生、金融機関との連絡などを利用する。一般向けの利用料金は月額3,300円(税込)で、金融機関は導入費用と月額の運用・保守費を負担し、会員企業からの利用料は金融機関とココペリで分け合う。2026年3月期のBig Advance関連売上は約14.22億円で、連結売上の約81%を占める。
この仕組みの特徴は、ココペリ自身が全国の中小企業へ一社ずつ営業しなくても、地域金融機関の営業網を利用できることだ。金融機関側には取引先の本業支援という利点があり、企業側には日頃付き合う金融機関を通じて参加できる安心感がある。国内で累計25万件程度の商談申込を蓄積していることも、単なるホームページ作成ソフトとの違いである。ただし、商談申込の件数と成約件数は同じではなく、実際の経済的成果を見極める必要がある。
第二の柱は金融機関向けのDX Solutionsである。AIによる社内問い合わせ支援の「SAF」、安全なファイル送受信を支援する「WebFile/GrpMail」、ビジネスマッチング業務を管理する「BMポータル」などを提供する。加えて補助金の採択に応じて報酬を受けるコンサルティングがあり、2026年3月期のDX Solutions売上は約3.35億円だった。金融機関向けの継続課金部分と、採択時に売上が発生する変動の大きい部分は、利益の質が異なる。
第三の柱として2026年3月にタイで開始したBIG ADVANCE GLOBALがある。クルンタイ銀行などと協力し、日本とタイの企業を結び、現地の会費と国境を越えたマッチングの成功報酬を収益源にする構想だ。2026年6月末には日本側490社、タイ側の無償試行会員18社という初期段階で、有償化と成功報酬の実績はまだ確認できない。将来の収益には期待できるが、現時点では利益の柱ではなく、収益化を待つ投資案件である。
優良さと弱いところ
ココペリの最も価値ある資産は金融機関との販売網である。全国に拡がる取引先企業との接点を、小規模なソフト会社が独力で築くのは難しい。金融機関を越える商談の蓄積や、支店担当者による対面支援も、純粋なオンラインサービスとの差別化になる。特に、金融機関の業務に組み込まれたマッチング管理や問い合わせ支援は、導入後の切り替えに一定の手間がある。
ただし、強い堀と判断するには証拠が足りない。2026年6月末時点のBig Advance会員企業は52,203社で減少が続き、直近12か月の平均解約率は月1.52%だった。この数字は年率1.52%ではなく、単純な年間継続率に換算すると約83%となる。年5%未満の解約率という強い定着性の目安には届かない。金融機関そのものの契約継続率や、解約に年単位の移行が必要だという定量的な証拠も不足する。
2026年3月期には、請求書機能と法人ポータルのソフトウェアについて、導入が想定を下回ったため減損が発生した。これは開発した機能が顧客に採用されるとは限らないことを示す。2021年から2022年にかけては高い営業利益率を実現したが、その後の利益は安定せず、2026年3月期には大型投資が重なって赤字となった。過去の高収益を10年後の平常値と見なすことはできない。
財務面は比較的強い。2026年3月期末の自己資本は約14.6億円、純現金は約9.2億円で、借入金の返済能力は十分にある。一方で、直近の海外開発投資はまだ資本コストを上回る増分利益を示していない。既存のネットワークには価値を認めるが、値上げ力と再投資効率が検証されていないため、会社全体の堀は弱いと評価する。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内のビジネスマッチング市場には成長余地がある。会社が引用するデロイト トーマツ ミック経済研究所の調査では、2024年度の国内市場は約2,013億円、2028年度は約2,722億円と見込まれる。ただし、この市場には広い種類のマッチングサービスが含まれ、ココペリが販売できる月額課金市場と同一ではない。企業の支援需要が大きいことと、その需要をココペリが収益化できることは分けて考えるべきだ。
会社資料では、地方銀行、第二地方銀行、信用金庫、信用組合を合わせた対象金融機関は約495先とされる。Big Advanceの2026年6月末の導入先72社は、この約14.5%に相当する。会社は金融系ビジネスマッチングプラットフォームの売上金額シェアを約63%と説明しているが、これは2023年版の業界調査に基づく狭い市場区分であり、2026年時点の最新シェアと断定できない。導入金融機関の減少を考えれば、10年後も同じ比率が続く保証はない。
競合には、金融機関向けの案件管理と企業探索を支援するリンカーズの「Linkers for BANK」などがある。同サービスの導入機関数は2026年6月時点で49先と公表されているが、Big Advanceとは提供範囲が異なり、単純に両社の件数から売上シェアを比較することはできない。また、銀行自身が開発する法人ポータル、一般的なマッチングサービス、freeeやマネーフォワードなどの業務ソフトも、会員企業の利用時間と予算を奪い合う。
最大の構造変化はAIエージェントの普及である。補助金の検索、請求書作成、ホームページ更新、社内問い合わせの回答などは、利用者が個別の画面を開かなくても処理できるようになる。独自の商談相手を見つけ、信頼関係のある金融機関が実際の取引成立を支える機能は残りやすいが、便利な操作画面を束ねただけの価値は縮小する。金融機関向け業務ソフトも、既存の銀行システムにAIが直接接続する形への変化にさらされる。
一方、国内の中小企業は人口減少や後継者不足で数が減る方向にあり、国内会員数が自然に増え続ける市場ではない。地方金融機関にも統合・再編が進む可能性がある。海外事業はタイやASEANへの市場拡張を狙うが、現地金融機関との提携、企業審査、商習慣、成約報酬の回収に別の壁がある。市場自体の成長より、既存の顧客接点をどのような収益に変えられるかが10年間の競争を決める。
資本政策と M&A
2026年5月に公表した新中期経営計画「スケールアップ」は、2027年3月期から2030年3月期を対象とする。2027年3月期には売上高20億円、営業利益0.8億円、純利益0.5億円への黒字回復を計画し、2028年3月期以降は売上高の年平均成長率20%以上、営業利益率20%を目指す。目標時価総額150億円も掲げるが、これは株主価値の保証ではない。ROEの数値目標と、配当性向・DOE・総還元性向・自社株買い金額についての具体的な数値の約束は確認できない。
前の中期計画では2027年3月期に売上高40億円、営業利益8億円を目指していたが、会社自身が達成困難と総括した。新計画も海外の成功報酬とM&Aに依存する部分が大きく、実績利益として扱うには早い。2026年3月期の海外投資は大規模で、補助金が営業外収益を補ったものの営業赤字を生んだ。2027年3月期第1四半期は黒字化したが、海外サービス単独では依然として赤字だった。
2023年にはキー・ポイントをグループ化し、2026年9月には岡山県のソフト開発会社サンテルの全株式取得を決議して、10月1日に実行した。サンテルの2026年5月期売上は約0.56億円、営業利益は約0.01億円と小さい。取得価格は非公表で、現時点では大幅な利益増加より地域密着型の支援能力を買う意味が強い。受託開発やコンサルティングへの投資はAI代替リスクも伴うため、買収額に見合う現金創出が必要だ。
株主還元はこれまで限定的で、2027年3月期予想も無配である。自己株式数の変動には新株予約権の行使による処分があり、それを株主還元の自社株買いと混同しない。余剰現金の評価には、還元の十分な実績がないことを反映する。長期の資本配分では、成長投資を続けるより配当や自社株買いの方が株主価値を高める局面が訪れる可能性がある。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
Big Advanceの本質は単なる業務ソフトではなく、地域金融機関が支える企業間の信頼ネットワークである。AIがホームページ作成や資料作成を代替しても、実在する取引相手を紹介し、金融機関の担当者が信用を補完する役割はなくならない。2026年6月時点で72の金融機関と5万社以上の会員企業が参加しており、国内でゼロから対抗網を構築するには大きな営業上の障壁がある。累計約25万件の商談申込から得た利用データも、取引先を探す精度を高める材料となる。
国内の会員企業数が減っていても、既存金融機関の法人取引先に対する浸透率には余地がある。今は営業店での紹介や利用促進が十分でない可能性があり、AIアシスタント「BiBi」や商談作成支援が利用率を高めれば、解約抑制と収益改善が進む。金融機関向けのBMポータル、SAF、WebFileも導入先を増やしており、Big Advanceだけに依存する状態からは脱却できる。2027年3月期第1四半期の営業黒字化は、前年度の赤字が恒常的なものではないことを示した。
海外の成功報酬には国内とは異なる成長余地がある。タイのクルンタイ銀行や政府機関との連携を生かして有料会員と成約件数を増やせば、単なる会員課金より大きな収入を得られる。海外の取引実績が積み上がるほど、新たな取引相手を探す企業にとっての利便性も高まる。これは既存の国内SaaSがAIによって陳腐化する場合でも残りうる価値である。
さらに、2026年9月に決めたサンテルの買収は、金融機関の紹介先に対して地域密着で導入から運用まで支援する構想を具体化した。小規模案件の買収を積み重ね、全国の銀行ネットワークと結びつけられれば、追加の営業費を抑えて案件を獲得できる。現金を活用しながら、ネットワーク型の継続収入と成功報酬を組み合わせる企業に変わる可能性がある。
慎重な見方
最も重い事実は、金融機関のネットワークが拡大を続けていないことである。Big Advanceは2022年3月期に72,050社まで増えた会員企業数が減少に転じ、2026年6月末には52,203社となった。導入金融機関数も減り、月次解約率は依然として1%台である。便利な機能を追加しても解約企業を上回る新規会員を獲得できなかったという事実は、ネットワーク効果が期待したほど強くないことを示す。
AIエージェントはこの弱点を拡大させる。中小企業が必要とするのはホームページ作成画面や補助金検索画面ではなく、売上増加、資金調達、事務負担の軽減という結果である。AIが金融機関の既存システムや企業の業務データに直接接続すれば、複数の機能を束ねた外部ポータルの必要性は低下する。金融機関は自前のAI基盤や別のベンダーを選択できるため、ココペリだけが値上げを通せる構造ではない。
海外事業も、潜在市場の大きさと実際に報酬を得る能力には距離がある。2026年6月末時点のタイ側の会員は無償の試行段階であり、日本側のマッチングニーズ登録も少数にとどまっていた。タイ政府機関との協定や銀行との提携は販売の入口であって、継続的な成功報酬の保証ではない。多言語対応、商習慣の違い、取引相手の信用調査、決済の実務など、収益化までに解くべき課題は多い。
資本配分の記録も慎重な評価を支持する。前の中期計画は大きく未達となり、請求書ソフトと法人ポータルでは減損が発生した。2026年3月期の赤字には先行投資が大きく影響したものの、海外投資の回収はまだ示されていない。ここへ人手によるコンサルティングや受託開発の買収を加えると、AIによって縮む可能性のある仕事に再び資本を投じる危険がある。会社が成長しても、株主に残る現金が増えない構造に陥りかねない。
どちらに重みを置いたか
金融機関との広域ネットワークと純現金は確かな強みであり、海外成功報酬の立ち上がりにも上振れ余地がある。しかし、国内会員数が数年にわたって減少し、旧中期計画が大幅未達だった事実を重く見る。AI代替による数量・価格の縮みは中立に織り込み、確率で同じ理由を重ねていない。下側に確率を寄せたのは、会社固有の販売実績と未収益化の新事業に不確実性が残るためである。悲観時にも一定の現金価値は残るが、現在の時価総額を正当化するには海外の収益化と再投資効率の改善が必要だ。総合判断は割高となる。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 234 円18 億円(+ 還元の換算額還元の合計 5 円0 億円)。 今の値に割り戻すと 109 円8 億円、今との差 −62.0%、 期待の年率 −1.9%(資本コスト 8.3%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 666 円51 億円 | 39 円3 億円 | +144.8% | +9.7% | 56 円4 億円 |
| やや楽観 | 17% | 382 円29 億円 | 13 円1 億円 | +37.3% | +3.3% | 67 円5 億円 |
| 中立 | 34% | 191 円15 億円 | 0 円0 億円 | −33.6% | −4.0% | 65 円5 億円 |
| やや悲観 | 25% | 125 円10 億円 | 0 円0 億円 | −56.7% | −8.0% | 31 円2 億円 |
| 悲観 | 16% | 121 円9 億円 | 0 円0 億円 | −58.0% | −8.3% | 19 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 234 円18 億円 | 5 円0 億円 | −17.0% | −1.9% | 239 円18 億円 |
今の株価時価総額 288 円22 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 8% 海外成約報酬が収益の第二の柱になる 利益 4 億円 · PER 12.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 666 円51 億円
Big Advanceは既存会員企業の解約を食い止め、10年後も約5.4万社の有料会員を維持する。AIエージェントの利用支援は定着するが、既存の席課金そのものが拡大するとは想定しない。金融機関との関係を保ちながら、商談の質と銀行担当者による支援を高めることで、価格の急落を避ける。新しいソフトへの切り替えを銀行が簡単には選ばず、国内プラットフォームが安定した収益源となる。
BIG ADVANCE GLOBALはタイのクルンタイ銀行と政府機関との提携を起点に商談を増やし、年間300件程度の有償成約を生む。成功報酬を受けられる実取引が増えることで、国内の会員企業数に依存しない収入が形成される。海外の現地企業の信頼確認や商談支援を金融機関と分担でき、固定費の増加を抑えながら利益を伸ばす。国内の金融DXと補助金支援も利益を維持する。
2026年に取得したサンテルをはじめ、地域の受託・支援事業は大規模買収に頼らず選別的に拡大する。営業利益は約5.3億円、純利益は約4.0億円に達し、利益の一部が初めて株主へ戻る。ネットワークによる差別化は強まるが、既存SaaSの価格決定力まで永続的に強くなるとは見なさない。
- Big Advance・国内中小企業プラットフォーム:数量 53,800(有料会員企業換算数(社))× 価格 0.00(1会員企業換算当たり年間売上(億円、金融機関固定料金の按分を含む))→ 売上 16 億円・営業利益 5 億円。会員企業数は現在以下、会社取り分単価は10年で1.15倍。AIによる新規の席数増加を前提にしない。
- 金融機関向けDX・AI FAQ・ファイル管理:数量 19.0(金融機関向けサービス導入先換算数(先))× 価格 0.05(1導入先換算当たり年間売上(億円))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。導入先換算数は横ばい、価格1.15倍。金融機関向け継続契約は維持。
- 補助金活用支援・地域DX受託:数量 19.0(年間採択・支援契約換算件数(件))× 価格 0.13(1案件換算当たり収益(億円))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。案件数は現在の0.76倍、単価は物価並み1.34倍。案件選別と自動化で採算改善。
- BIG ADVANCE GLOBAL・海外取引成功報酬:数量 300(年間有償成約換算件数(件))× 価格 0.04(1成約当たり平均会社収益(億円))→ 売上 11 億円・営業利益 3 億円。年間300件の有償成約、平均成功報酬350万円。会社計画ではなく大幅な上振れの仮定。
倍率:k=8.25%、g_long=0%、moat=weak。余剰現金4.2億円に対する税後利息0.0588億円を除いた事業純利益3.9212億円、事業自己資本29.8億円から事業ROEは約13.2%。RONIC=k+1/3×(ROE-k)だが、g=0%なので正当化PER=(1-g/RONIC)/(k-g)=12.12倍。事業価値に余剰現金4.2億円×戻り方0.75=3.15億円を加える。海外成功報酬の大幅な成長は10年後までの利益に入れ、永続的な高成長を倍率に重ねない。
確率:海外プラットフォームで多数の有償成約が継続し、銀行ネットワークも維持する必要がある。既存サービスの会員減少を止めるだけでなく、新規収益源の立ち上げまで成功する複合条件であり、未収益化の現状から実現確率は8%とする。
やや楽観 17% 国内の減少が緩み、海外が黒字化する 利益 2 億円 · PER 12.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 382 円29 億円
国内Big Advanceの会員企業数は約5.1万社となり、2026年3月期からは小幅に減る。銀行の再編や解約で導入先が減るものの、残った金融機関ではAIアシスタントが商談の作成を補助し、担当者の利用促進も改善する。新たな金融DXサービスは既存銀行への追加販売が進み、収益の落ち込みを一部補う。月額料金には競争圧力が残るため、実質の大きな値上げには成功しない。
海外ではタイとの取引の成功事例が増え、年間120件の有償成約が生まれる。収益化には時間を要するが、既存の金融機関による紹介を利用することで営業費を抑える。国内では補助金支援が継続し、採択成果があった案件に絞って利益を確保する。会社が期待するほど急速な拡大ではなくても、海外事業が恒常的な赤字から脱する効果は大きい。
地域密着型の小規模買収は続けるが、大きな買収プレミアムを払う拡大策は採らない。10年後の営業利益は約2.9億円、純利益は約2.2億円になる。再投資後に一部の現金を株主へ還元できるようになるが、強い値上げ力を備えた企業と同じ収益倍率で評価するほどの堀は形成されない。
- Big Advance・国内中小企業プラットフォーム:数量 51,000(有料会員企業換算数(社))× 価格 0.00(1会員企業換算当たり年間売上(億円、金融機関固定料金の按分を含む))→ 売上 15 億円・営業利益 4 億円。会員企業数0.946倍、価格1.13倍。AI機能で利用継続を支える。
- 金融機関向けDX・AI FAQ・ファイル管理:数量 18.0(金融機関向けサービス導入先換算数(先))× 価格 0.05(1導入先換算当たり年間売上(億円))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。導入先換算数0.947倍、価格1.12倍。継続課金を維持。
- 補助金活用支援・地域DX受託:数量 18.0(年間採択・支援契約換算件数(件))× 価格 0.13(1案件換算当たり収益(億円))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。案件数0.72倍、価格1.30倍。高採算案件の選別が進む。
- BIG ADVANCE GLOBAL・海外取引成功報酬:数量 120(年間有償成約換算件数(件))× 価格 0.03(1成約当たり平均会社収益(億円))→ 売上 3 億円・営業利益 1 億円。年間120件の有償成約、平均成功報酬250万円。海外投資の回収が進む。
倍率:事業純利益は2.2-0.0588=2.1412億円、事業自己資本は27.1-4.2=22.9億円でROE約9.35%。k=8.25%、moat=weak、g_long=0%。RONICは約8.62%だが、g=0%のため正当化PERは1/k=12.12倍。事業利益に対する評価と別に余剰現金の戻り方込み3.15億円を足す。
確率:国内会員の減少が徐々に収まり、金融機関向け新サービスと海外の成功報酬が利益に寄与する場合。2027年3月期第1四半期の既存事業の黒字化は前向きな材料だが、海外の有償取引はまだ少ないため17%とする。
中立 34% 国内SaaSは縮小するが、経費正常化で利益を保つ 利益 1 億円 · PER 12.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 191 円15 億円
Big Advanceは国内の金融機関ネットワークを維持するが、有料会員数は約4.3万社まで減る。補助金検索、ホームページ作成、請求書管理、社内連絡の機能はAIエージェントや他社の業務ソフトに代替される。金融機関が介在する商談の紹介には価値が残るためサービス自体は存続するが、会員企業の減少を止めるほど強い新用途は生まれない。単価はわずかに上がるものの、物価上昇には追いつかない。
金融機関向けDXサービスは既存顧客への提供を続けるが、銀行のシステム更新と競合サービスによって導入先換算数は少し減る。補助金コンサルティングはAIによる書類作成や情報整理の自動化が進み、案件数が減る。BIG ADVANCE GLOBALは少数の有償成約を生むが、国内Big Advanceの売上減少を埋める第二の柱には至らない。
それでも2026年の海外向け大型投資が平常化し、開発と営業にAIを利用することで経費の伸びを抑える。地域企業の買収は小規模にとどまり、追加資本の大きな負担は生じない。10年後は売上約16.1億円、営業利益約1.3億円、純利益約1.0億円となる。黒字企業ではあるが自己資本利益率は資本コストに届かず、利益をため込むだけでは価値が大きく増えない。
- Big Advance・国内中小企業プラットフォーム:数量 43,000(有料会員企業換算数(社))× 価格 0.00(1会員企業換算当たり年間売上(億円、金融機関固定料金の按分を含む))→ 売上 12 億円・営業利益 3 億円。会員企業数0.798倍、単価1.10倍。AI代替による利用者減と価格圧力を反映。
- 金融機関向けDX・AI FAQ・ファイル管理:数量 16.0(金融機関向けサービス導入先換算数(先))× 価格 0.05(1導入先換算当たり年間売上(億円))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。導入先0.842倍、価格1.10倍。銀行システムのAI化により既存ソフトの席数が減る。
- 補助金活用支援・地域DX受託:数量 16.0(年間採択・支援契約換算件数(件))× 価格 0.13(1案件換算当たり収益(億円))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。案件数0.64倍、価格1.30倍。人手の支援作業が一部代替される。
- BIG ADVANCE GLOBAL・海外取引成功報酬:数量 40.0(年間有償成約換算件数(件))× 価格 0.02(1成約当たり平均会社収益(億円))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。年40件の有償成約。成功報酬は発生するが全社の利益を大きく変える規模ではない。
倍率:事業純利益は1.0-0.0588=0.9412億円、事業自己資本は22.1-4.2=17.9億円で事業ROE約5.3%。k=8.25%を下回るので、将来の再投資から超過利益を期待せず、正当化PER上限は1/k=12.12倍。g_long=0%。余剰現金4.2億円は税後利息を事業純利益から除き、戻り方0.75を掛けた3.15億円を加える。10年の純利益合計約7.5億円、還元ほぼゼロとして、自己資本14.6億円から22.1億円への流れと整合させる。
確率:主力の会員数が長期的に減少する一方、海外投資の一巡と小規模な成功報酬、既存事業の生産性改善で黒字を維持する筋書き。2027年3月期の会社計画と直近四半期の営業黒字回復を踏まえるが、会社の年20%成長計画は採用しない。
やや悲観 25% 顧客減少が止まらず、海外投資の成果も限られる 利益 0 億円 · PBR 0.7 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 125 円10 億円
地域金融機関との契約は一部残るが、Big Advanceの有料会員数は約3.9万社に減少する。金融機関の統合によるプラットフォームの一本化や、AIを組み込んだ銀行自身の法人サービスとの競争が強まる。既存会員はビジネスマッチング機能を利用するものの、新しい会員を十分に獲得できず、利用料金にも値下げ圧力がかかる。全国のネットワークは維持されても、商業的な価値は弱くなる。
金融機関向けDXでは既存顧客の更新を維持しきれず、補助金コンサルティングも採択数と支援案件が減る。BIG ADVANCE GLOBALは日本とタイの一部企業で利用が続くが、成功報酬は年間少数の成約に限られ、運用費用を賄えない。過去の開発投資の追加償却や一部減損が発生し、海外事業から撤退するか縮小する判断を迫られる。
会社は人員と開発費を減らして資金流出を抑えるが、2036年3月期の営業利益は再び小幅な赤字になる。10年間の途中の黒字と赤字が概ね相殺し、自己資本の積み上がりはほぼ止まる。継続事業の稼ぐ力より現金と換金可能な資産の価値が株主価値を支える状態となり、株主還元は実施されない。
- Big Advance・国内中小企業プラットフォーム:数量 39,000(有料会員企業換算数(社))× 価格 0.00(1会員企業換算当たり年間売上(億円、金融機関固定料金の按分を含む))→ 売上 11 億円・営業利益 1 億円。会員企業数0.724倍、価格1.04倍。販売網の一部が失われる。
- 金融機関向けDX・AI FAQ・ファイル管理:数量 14.0(金融機関向けサービス導入先換算数(先))× 価格 0.05(1導入先換算当たり年間売上(億円))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。導入先0.737倍、価格1.03倍。更新時の競争が激化。
- 補助金活用支援・地域DX受託:数量 14.0(年間採択・支援契約換算件数(件))× 価格 0.12(1案件換算当たり収益(億円))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。案件数0.56倍。人手による高付加価値支援だけが残る。
- BIG ADVANCE GLOBAL・海外取引成功報酬:数量 10.0(年間有償成約換算件数(件))× 価格 0.02(1成約当たり平均会社収益(億円))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。年間10件の有償成約。海外の固定費を回収できない。
倍率:2036年の営業赤字と純損失から継続事業の収益価値は小さい。過去の市場PBRではなく、現在の純現金約9.2億円に回収可能な債権・その他換金資産を加え、契約負債と事業整理費用を差し引いた床9.5億円を採用。現在の自己資本14.6億円に対する床のPBRは9.5÷14.6=0.6507倍。将来積み上がるかもしれない自己資本に床の倍率を掛けない。
確率:会員企業の減少が続き、金融機関向けサービスでも更新時の失注が生じる筋書き。これまでの会員減少と国内新機能の収益化の遅さが実証されたリスクであるため、中立からの下振れを25%とする。
悲観 16% プラットフォームの競争優位が失われる 利益 −1 億円 · PBR 0.6 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 121 円9 億円
AIエージェントが銀行や中小企業の業務環境に直接組み込まれ、Big Advanceの多くの操作機能は利用者にとって必要性が下がる。大口の金融機関が自社開発や別ベンダーへ移行すると、同じ銀行の会員企業もまとまって離脱する。金融機関を横断した商談網は一部残るものの、会員企業数は約2.7万社となり、国内のネットワーク効果がさらに弱まる。
金融機関向けDXでもAI FAQやファイル管理が共通システムの機能に吸収され、単体製品の売上は大幅に縮小する。補助金コンサルティングは申請作業の自動化と競争激化で案件数が減り、地域企業の買収で増やした人員にも十分な仕事を確保できない。タイのBIG ADVANCE GLOBALは有償成約の収益を確立できず、サービスを縮小または終了する。
会社は開発人員や販管費を削減し、資金流出を止めることを優先する。2036年3月期の売上は約8.3億円、営業損失は約1億円となる。黒字化できない事業に再投資するより、現金を守る方が合理的だが、経営陣が必ずその判断をする保証はない。株主価値は事業の成長力ではなく、残っている純現金と換金資産に依存する。
- Big Advance・国内中小企業プラットフォーム:数量 27,000(有料会員企業換算数(社))× 価格 0.00(1会員企業換算当たり年間売上(億円、金融機関固定料金の按分を含む))→ 売上 7 億円・営業利益 0 億円。会員企業数0.50倍、価格0.95倍。金融機関単位の離脱が重なる。
- 金融機関向けDX・AI FAQ・ファイル管理:数量 10.0(金融機関向けサービス導入先換算数(先))× 価格 0.04(1導入先換算当たり年間売上(億円))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。導入先0.526倍、価格0.90倍。維持費を回収しきれない。
- 補助金活用支援・地域DX受託:数量 10.0(年間採択・支援契約換算件数(件))× 価格 0.11(1案件換算当たり収益(億円))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。案件数0.40倍、価格1.10倍。物価と人件費に報酬が追いつかない。
- BIG ADVANCE GLOBAL・海外取引成功報酬:数量 0.0(年間有償成約換算件数(件))× 価格 0.02(1成約当たり平均会社収益(億円))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。有償事業は終了し、継続営業費は発生しない。
倍率:継続事業は赤字で、利益による正当化PERで正の価値を算定できない。現在の純現金約9.2億円に回収可能資産を加えたうえで、契約負債や縮小費用を控除し、同額の9.2億円を下限の資産価値とする。これは現在の自己資本14.6億円に対する0.6301倍であり、将来の自己資本12.85億円や過去の市場PBRを倍率の基礎にしない。
確率:銀行の統合、主要金融機関での解約、AIによる業務機能の汎用化、海外の失敗が重なる構造的敗北。強いネットワークが一定程度残るため完全消滅は既定としないが、事業価値の大幅な毀損を16%とする。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
Big Advance・国内中小企業プラットフォーム
地域金融機関経由の中小企業向けビジネスマッチングと経営支援。会員企業数に連動する収入と金融機関の固定料金が中心。
| 数量有料会員企業換算数(社) | 価格1会員企業換算当たり年間売上(億円、金融機関固定料金の按分を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 53,895 | 0.00 | 14 | 2 |
| 10 年後 中立 | 43,000 | 0.00 | 12 | 3 |
取り方:2026年3月期決算説明資料のBig Advance事業売上1,422百万円と期末会員企業53,895社を使用。1会員企業換算の会社売上は年約26,384円、月約2,199円。利用者が金融機関へ払う税込3,300円とは異なり、金融機関との収益分配や固定料金を含む会社取り分である。期末会員数を平均会員数の代用とするため単価は推定値。営業利益1.55億円は非開示のため本社費配賦前の分析上の推定。AIエージェント代替の型は『席課金・操作画面中心の業務SaaS』。中立の数量は現在の0.798倍、価格は1.10倍。金融機関横断の共同ネットワークと商談データはあるが、解約率が低いという強い証拠を満たさず、『記録の正本』型にはしない。
金融機関向けDX・AI FAQ・ファイル管理
SAF、WebFile/GrpMailなど金融機関向け業務ソフト。固定料金と継続利用による収益が中心。
| 数量金融機関向けサービス導入先換算数(先) | 価格1導入先換算当たり年間売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 19.0 | 0.04 | 1 | 0 |
| 10 年後 中立 | 16.0 | 0.05 | 1 | 0 |
取り方:会社開示ではDX Solutions全体が3.35億円で、金融機関向けソフトと補助金コンサルの内訳は非開示。Big Advance以外のサービス導入金融機関が延べ19先であることを数量の代理にし、ソフト部分を0.85億円と推定した。導入先の重複、期中導入、サービス別料金を均した分析用の換算単価であり実際の契約単価ではない。営業利益0.25億円も仮配賦。AIエージェント代替の型は『業務SaaS・操作画面中心』。中立の数量は16÷19=0.842倍、価格1.10倍。銀行の中核勘定系や法定記録の正本を保持する業務ではないため、規制対応型の堀は認めない。
補助金活用支援・地域DX受託
補助金申請支援の採択成功報酬、地域企業向けの開発・導入支援など、人の専門作業が収益の中心となる領域。
| 数量年間採択・支援契約換算件数(件) | 価格1案件換算当たり収益(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 25.0 | 0.10 | 3 | 0 |
| 10 年後 中立 | 16.0 | 0.13 | 2 | 0 |
取り方:DX Solutions売上3.35億円から、金融機関向け業務ソフトの推定0.85億円を引いた2.50億円を採択成功報酬・受託支援に分類。支援案件数と平均報酬は会社非開示のため、成功報酬型の大型補助金案件を含めて25件×平均1,000万円相当とする換算モデルであり、実際の採択件数ではない。2025年の大型案件が2026年に再現しなかったため売上は変動が大きい。営業利益0.15億円は推定。AIエージェント代替の型は『人月・工数で売るコンサルティング・受託』。中立の数量16÷25=0.64倍、価格1.30倍で、事務作業がAIに置き換わる分を数量に反映した。
BIG ADVANCE GLOBAL・海外取引成功報酬
日本とタイを中心とする国境を越えた企業マッチング。将来の取引成約報酬を中心に評価する新規事業。
| 数量年間有償成約換算件数(件) | 価格1成約当たり平均会社収益(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.0 | 0.02 | 0 | −4 |
| 10 年後 中立 | 40.0 | 0.02 | 1 | 0 |
取り方:2026年3月20日サービス開始。2026年3月期の売上は実質ゼロで、会社が示すBIG ADVANCE GLOBAL単独の営業損失は約4.41億円。価格0.02億円は将来の成約報酬の仮定であり、当期実績単価ではない。2026年6月末時点の日本側会員490社、タイ側無償試行会員18社、両国のマッチングニーズ登録はまだ少数で、成約報酬の検証には至らない。将来の数量はサブスク会員数ではなく成功報酬を生む有償成約件数で測る。タイで計画する席課金部分には別途AI代替圧力があるが、将来の主な価値を実際の取引成立に伴う報酬に限定し、未実現のAI収益は加えない。
リスクと懸念
AIエージェント代替による業務ソフトの価値低下
Big Advanceのホームページ作成、補助金検索、請求書作成、金融機関向けSAFなどは、AIエージェントが企業の既存システムと直接連携するようになると、独立した操作画面の必要性が弱まる。数量と単価の双方に圧力がかかり、過去の会員数や売上成長率を将来へ延長するのは危険である。独自の取引相手と金融機関の信用補完が残るかが分かれ目になる。
金融機関の離脱と会員企業減少
主力サービスは金融機関を通じて販売されるため、一つの銀行がサービスを終了すると、その取引先の会員企業がまとめて減少する。導入金融機関が2023年の84社から2026年6月末の72社へ減った事実は既にこのリスクを示している。金融機関再編や別システムへの移行が進めば、ネットワークの規模と収益の双方に影響する。
海外事業の有償化と成功報酬の不確実性
BIG ADVANCE GLOBALは2026年3月に開始したばかりで、タイ側の企業獲得は当初計画より遅れていた。登録会員が増えても、実際の商談成立と成功報酬の回収につながらなければ利益は生まれない。海外の商習慣、取引審査、為替決済、法規制への対応には継続的な費用が必要であり、既に投じた開発資金が回収できない可能性がある。
補助金コンサルティングの変動と制度依存
補助金支援の収益は、制度の予算、採択率、案件の大型化に左右される。2026年3月期には前年にあった大型の成功報酬が再現せず、DX Solutionsの売上が減少した。さらに、申請書作成や資料整理がAIで効率化されると、顧客が払う成功報酬にも圧力がかかる。大型案件が偶然採択された年度の利益を平常収益と見なすべきではない。
買収とソフトウェア開発による資本毀損
2026年3月期には、投資したソフトウェアや過去買収に関係するのれんの評価が利益を圧迫した。今後も地域企業の買収を進める方針であり、買収価格が高すぎれば将来の利益で回収できない。受託開発と伴走型コンサルティングはAIによる工数削減と価格競争にもさらされる。M&Aによる売上増加と、株主が受け取れる現金の増加を混同する危険がある。
余剰現金と少数株主への還元
純現金が時価総額の大きな割合を占める一方、会社は配当や大規模な自社株買いを実施してこなかった。現金が事業投資や買収に使われれば、その帳簿価値のすべてが株主へ戻るとは限らない。経営者は約3割の議決権を保有しており、少数株主の意向だけで資本配分を変更するのは難しい。余剰資金の使途と資本効率の改善を継続的に確認する必要がある。
今後の分かれ目
- Big Advance会員企業数が四半期ごとに増加し、複数期にわたり純増が定着したら
- 国内プラットフォームの数量減少前提を緩める。特に導入金融機関当たりの会員数が増え、解約率も低下するなら、既存ネットワークの経済価値を見直す。
- Big Advanceの導入金融機関数がさらに減り、60社を下回る方向へ進んだら
- 金融機関を横断するネットワークの規模が縮むと判断し、国内会員数と収益率を下方修正する。大口金融機関の離脱が原因なら悲観側を重く見る。
- BIG ADVANCE GLOBALの有償成約件数と実際の成功報酬売上が四半期開示で確認できたら
- 海外事業を会員登録数ではなく有償成約件数と単価で評価し直す。継続的な利益が確認できれば、やや楽観と楽観の可能性を高める。
- 海外事業が2028年3月期にも単独黒字化できず、追加投資が続いたら
- 投資回収期間の長期化と現金の減少を評価に反映する。新たな大規模投資の正当性を厳しく検証し、資産価値の床も更新する。
- AIアシスタントBiBiなどの利用で商談成立件数や会員企業当たり収益が改善したら
- 既存の業務画面がAIに代替されても、取引成果で収益を維持できる証拠として評価する。ただし、AI利用件数だけでなく、成約・売上・継続率が改善していることを条件とする。
- 資本コストを上回るROEが継続し、配当または自社株買いの具体的な数値方針が公表されたら
- 再投資効率と余剰現金の戻り方を引き上げる根拠になる。新しい株主還元方針が実行された実績も確認し、本質価値を再評価する。
見ておくもの
- Big Advanceの有料会員企業数と導入金融機関数の四半期推移
- Big Advanceの月次チャーンレートと既存会員企業当たり収益
- BMポータル・SAF・WebFile/GrpMailの導入金融機関数と継続契約売上
- BIG ADVANCE GLOBALの日本・タイ双方の有料会員数、マッチングニーズ登録数、有償成約件数、成功報酬売上
- 2028年3月期のBIG ADVANCE GLOBAL単独黒字化の達成状況
- 開発費、ソフトウェア取得額、営業キャッシュフロー、減損損失の推移
- M&A取得価格、取得企業の営業利益、のれん、資本効率、配当・自社株買いの方針
倍率と資本コストの決め方
現在の時価総額約24.97億円と過去のPER・PBRを使わず、事業ごとの会員企業数・導入先数・支援案件数・海外成約件数と単価から10年後の売上を構築した。Big Advanceと金融DXは席課金SaaS、補助金支援は人月・工数型とし、AIエージェント代替による数量と価格の縮みを各セグメントに反映した。倍率はk=8.25%、g_long=0%、弱い堀を前提とする正当化PERから決めた。現金は税後利息を利益から除いて別に評価し、戻り方0.75を適用した。中立の事業ROEは資本コスト以下なのでPER上限は1/k=12.12倍。悲観側は現在の純現金と換金資産を床とし、過去の市場評価を使用しない。日本基準の新リース会計による表示変更は想定されるが、家賃を営業費用とする同一基準で10年の利益を比較する。5筋書きの割引現在価値は約8.33億円で、基準時価総額に対する差は約-66.6%、判定は割高となる。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。無リスク金利3%と株式リスクプレミアム4.5%の基本7.5%に、事業の循環・値決め力・財務の品質差+0.75%を加えて8.25%。2026年3月期は大幅赤字だったが、純現金が厚く2027年3月期第1四半期は営業黒字へ回復しているため、存続困難に対する追加の上乗せは行わない。