結論
コーエーテクモは、『真・三國無双』『信長の野望』『仁王』『アトリエ』といった自社 IP を、6 つの開発ブランドで作り続けるゲーム会社だ。営業利益率は 42% と業界でも指折りで、ほぼ無借金。株の過半は創業家の資産管理会社が持つ。
筆者の結論は、今の値段は割高というものだ。本業は強い。ただ、2026 年 3 月期は『仁王 3』など新作が重なった山の年で、この利益率が続くとは見ない。
もうひとつの顔が資産運用だ。経常利益 570 億円のうち 200 億円近くは運用益で、本業ではない。この稼ぎは年によって大きく振れる。だから高い倍率は掛けない。運用資産は帳簿の値で足し、倍率は本業の利益だけに掛けた。
10 年後は、販売本数が年 1% 強、価格が物価並みに伸びて、売上は 1,300 億円弱になる。
分かれ目は 2 つある。大型新作が当たり続けるか。人件費が年 10% で増える中で、利益率を保てるか。10 年の悲観では、時価総額は今の 3 割ほどまで下がる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、コーエーテクモは「分けて考える会社」だ。ひとつは、自社 IP を持つゲーム開発という本業。もうひとつは、2,000 億円前後(筆者の推定)の金融資産だ。
本業は、ずっと持っていたい部類に入る。40 年続くシリーズは、資金を投じなくても毎年売れる。無借金で、新作の開発費もほぼ手元資金で賄う。ただ、IP の厚みはカプコンやコナミに劣り、予測のしやすさも中程度だ。大型のヒットが外れた年の落ち込みを、事前には読めない。
金融資産は、経営者の腕に左右される。本業の利益と運用益が混ざった数字を、そのまま高い倍率で評価すると危うい。筆者は運用益を倍率の対象から外し、金融資産を帳簿の値だけで足した。運用で稼げれば上振れだが、それを期待して払わない。
安全域は、悲観の筋書きでも金融資産が厚い点にある。10 年後の悲観でも、時価総額は今の 3 割ほどまで。現金と有価証券が下を支える。逆に、楽観の筋書きでも倍率は上限の 9 割台に抑えた。利益率 42% は一度の山の可能性が高い。
結論は、今の値段は割高で、安全域は無い。本業の質は高いが、どの年の利益を基準にするかで評価が割れる会社だ。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの 9 割以上はエンタテインメント事業、つまり自社ゲームの開発・販売だ。2026 年 3 月期の売上 825 億円のうち、コンソール・PC(据置機とパソコン)向けが 57%、オンライン・モバイルが 42%を占める。コンソール・PC の売れ方は、パッケージ 4 割に対してダウンロードが 6 割。店頭に在庫を積まないぶん利益率が高い。
作り手は 6 つの内製ブランドだ。ω-Force は『真・三國無双』や『ゼルダ無双 封印戦記』、『ぽこ あ ポケモン』を手がける。Team NINJA は『仁王』『Wo Long』『NINJA GAIDEN』『DEAD OR ALIVE』。ガストは『アトリエ』シリーズ。シブサワ・コウは『信長の野望』『三國志』の歴史シミュレーションを受け持つ。ここに他社 IP の受託開発が加わる。
オンライン・モバイルは、自社運営の『信長の野望 覇道』『三國志 覇道』と、中国のアリババ側が運営する『三国志・戦略版』のライセンス収入の 2 本立てだ。前期は既存タイトルの反動で 8.6% 減った。
ほかにアミューズメント(施設運営とパチスロ液晶の受託開発)、不動産(横浜のライブホール)、ベンチャー投資があるが、合わせても売上の 7% にすぎない。
地域では、日本が 55%、海外が 45%。今期は海外が 5 割を超える見込みだ。自社で売る海外の比率を上げるのが、中計の柱のひとつになっている。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは、IP の厚みと、作り続ける仕組みにある。『真・三國無双』は累計 2,400 万本、『信長の野望』は 1,100 万本。40 年かけて育てたシリーズが、旧作の売れ行きまで支える。
筆者がいちばん評価するのは、チームを解散しないことだ。1 本出し終えても、開発者は次の作品に移る。欧米の大手が人員を削る中で、同社は従業員を 3,000 人まで増やした。ノウハウが社内に残り、品質の波が小さい。
ただ、堀の幅は広くない。三國志や信長のファンは熱いが、数に限りがある。新規の遊び手を増やすには、海外での知名度を上げる必要がある。『仁王』や『NINJA GAIDEN』の腕前が問われるアクションは、世界の大作と競うことになる。カプコンのように、世界で数千万本を売る IP は持っていない。
資本効率は見かけほど高くない。ROE は 15.8% あるが、自己資本 2,718 億円の大半は運用に回っている。本業だけで測れば ROE は 2 割を超える一方、運用の損益で利益は大きく振れる。
経営は 2025 年 6 月に生え抜きの鯉沼久史氏が社長になった。内部の開発現場を知る人が舵を取る点は、安心材料だ。襟川陽一氏は会長、襟川恵子氏は名誉会長で、運用子会社の社長も務める。取締役の過半は社外で、統治の形は整えている。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
世界のゲーム市場は 32〜35 兆円。半分以上はスマホ向けだが、同社の主戦場はコンソールと PC の約 15 兆円だ。ここは買い切りが基本で、1 本の当たり外れで利益が大きく動く。
追い風は 3 つある。ひとつは Switch 2 の登場で、任天堂のゲーム機に乗せられる新作と旧作が増えた。ふたつめは PC 販売の拡大。Steam を通じて、アジアや欧州の買い手に直接届く。みっつめは旧作が売れ続けること。ダウンロード販売では、発売から数年たった作品が値引きのたびに数十万本ずつ積み上がる。
向かい風もはっきりしている。大作の開発費は膨らみ続け、中堅規模の作品は採算が取りにくくなってきた。中国発の『黒神話:悟空』のような作品が、世界のアクション市場に割り込む。海外の大手はレイオフを進めたが、同社は逆に増員している。この差が吉と出るか凶と出るかは、まだ決まっていない。
モバイルは別の世界だ。課金額は伸びても、広告費とプラットフォームの手数料(約 3 割)で消える。同社は自社運営を絞り、ライセンス収入を主体にしている。
同業ではカプコン、スクウェア・エニックス、コナミグループ、ネクソンが並ぶ。同社は世界シェアで 0.25% 前後の中堅だ。数量は市場並みに伸びれば十分で、シェアを大きく取る筋書きは中立に入れていない。
景気との関係は薄いが、ゼロではない。家計が引き締まる局面では、新作の買い控えとモバイルの課金減が同時に来る。ただ、景気の波は、個々の作品の当たり外れの波よりも小さい。同社の営業利益率は 2011〜12 年 3 月期に 10〜16% しかなく、今の 42% は歴史的な高さだ。
資本政策と M&A
還元は「配当と自社株買いを合わせた総配分性向 50%」が方針だ。前期は最高益を受けて期末配当を引き上げ、年間の配当性向は 50% だった。無借金なので、配当は今後も出せる。
筆者が気にしているのは、運用だ。自己資本の大半は有価証券などに回っており、年によって 100〜200 億円の運用益が営業外に入る。ただ、2023 年 3 月期は AT1 債(銀行の劣後債)の損失で運用の収支が 8 億円まで細った。
運用は 2025 年 4 月から、新設の「コーエーテクモコーポレートファイナンス」に集約された。社長は襟川恵子氏。中計は、1,100 億円以上の成長投資の使い道に、人材育成・開発設備・他社の買収を挙げている。買収するなら、開発力のあるスタジオか他社 IP が候補になる。
株は光優ホールディングスが 51.5% を握る。買われる側の TOB は、創業家が応じなければ成立しにくい。買う側としては、他社 IP やスタジオを買う余地があり、運用資産が弾になる。大きく外すと価値を壊す点が、資本の使い方のいちばんの焦点だ。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
コーエーテクモの強みは、利益の積み上がり方にある。『仁王 3』はシリーズ最速で 100 万本に達し、シリーズ累計は 1,000 万本を超えた。『ぽこ あ ポケモン』は発売 4 日で 220 万本に届いた。大型作品が当たる確率が、数年前より明らかに上がっている。
この上に、パイプラインが厚い。2027 年度までに大型 6 本、中規模 19 本を出す計画で、『Wo Long 2』『進撃の巨人 3』『信長の野望・飛翔』が控える。大型への依存を避け、リマスターや Switch 2 対応を挟んで、収益が年間で均される。
旧作の積み上がりも見逃せない。ダウンロード比率は 6 割を超え、売れ続ける旧作が利益率を押し上げている。
そして、財務が安全域になる。2,000 億円前後の金融資産があり、人件費の増加や開発の遅れに耐えられる。運用益が平均を上回る年には、そのぶんが上積みになる。
海外は、欧州で売上が 8 割増えた。自社販売を広げれば、1 本あたりの手取りは上がる。
人材への 1,100 億円以上の投資が実れば、中計が掲げる営業利益 400 億円の再達成は十分に届く。しかも、金融資産が下を支えているので、新作が 1 本外れても会社の体力は揺らがない。
慎重な見方
利益率 42% は、新作が重なった年の姿だ。会社自身の今期予想が減益で、営業利益は 14% 減る。減るのは、人件費が年 10% 増えているからだ。この増え方が続けば、売上が横ばいの年は利益がすぐ圧縮される。
中計の売上目標もきつい。3 年累計 3,000 億円には、最終年に 1,200 億円超が要る。実績の 884 億円、予想の 900 億円からは遠い。目標未達の中計は、投資だけが先行しやすい。
モバイルは縮んでいる。前期は 8.6% 減。『三国志・戦略版』のライセンス収入は中国の相場に左右され、国内の運営タイトルも既存の反動減が出た。
経常利益の 3 分の 1 は運用益で、これは再現性がない。2022 年 3 月期は売却益 234 億円が出たが、営業外費用も 197 億円あった。2023 年 3 月期には AT1 債の損失で運用収支が 8 億円まで落ちている。運用の腕を、自己資本の大半を預ける理由にはしにくい。
さらに、創業家が 5 割を握り、運用も創業家の手にある。少数株主から見ると、使い道を外から正せない。大型の買収に資金が回れば、価値を壊す恐れもある。
ゲームの世界では、IP の勝ち負けは数年で入れ替わる。40 年続くシリーズが、次の 10 年も同じ力を持つ保証はない。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方のほうが少し強い。利益率の平常化と運用益の不安定さは、数字で裏づけが取れている。強気の見方は、大作の当たりやすさと財務の厚みで対抗するが、それは 1 年ごとの利益を保証しない。
このため、確率は悲観側にやや寄せた。10 年は楽観 10%・悲観 12%とした。ただし、悲観の値は金融資産が支えるので、そこまで深くは下がらない。結果として、中立の時価総額は今と近いが、10 年かけて資本コスト7.5%を稼げないため、総合は割高になる。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,202 円7,361 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 531 円1,776 億円)。 今の値に割り戻すと 1,439 円4,809 億円、今との差 −16.1%、 期待の年率 +4.8%(資本コスト 7.5%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 3,624 円1.21 兆円 | 688 円2,300 億円 | +151.5% | +9.7% | 431 円1,441 億円 |
| やや楽観 | 25% | 2,967 円9,917 億円 | 628 円2,100 億円 | +109.6% | +7.7% | 899 円3,004 億円 |
| 中立 | 33% | 2,453 円8,200 億円 | 568 円1,900 億円 | +76.2% | +5.8% | 997 円3,333 億円 |
| やや悲観 | 20% | 1,299 円4,341 億円 | 464 円1,550 億円 | +2.8% | +0.3% | 353 円1,178 億円 |
| 悲観 | 12% | 239 円800 億円 | 209 円700 億円 | −73.8% | −12.5% | 54 円180 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,202 円7,361 億円 | 531 円1,776 億円 | +59.4% | +4.8% | 2,734 円9,137 億円 |
今の株価時価総額 1,715 円5,732 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 10% 世界で戦える中堅から、世界の主役の一人へ 利益 550 億円 · PER 22.0 倍 · 株価時価総額 3,624 円1.21 兆円
『Wo Long』『仁王』『NINJA GAIDEN』のアクション系が世界で数百万本を売り続け、無双は他社 IP との組み合わせで裾野を広げる。販売本数は年 2,100 万本。自社販売の海外比率が 6 割を超え、1 本あたりの手取りは物価を大きく上回って伸びる。モバイルはライセンス収入の新しい柱が立つ。人員を増やしても売上が先行し、営業利益は 750 億円、売上は 1,700 億円を超える。運用資産は使い途に困らず、配当を厚くする余力もある。ただし、ここまで伸びるには、アクション系の新しい IP を数年おきに生み出し続ける必要がある。10 年かけてその打率を保つのは、容易ではない。楽観の中でも最上位の姿として、確率は低く置いている。
- コンソール・PC ゲーム:数量 2,100(販売本数(万本))× 価格 4,989(1 本あたりの手取り売上(円。他社発売の作品は低い))→ 売上 1,048 億円・営業利益 545 億円。大型が連続ヒット(利益率 52%)
- オンライン・モバイル・IP 許諾:数量 0.0(世界モバイル・オンライン市場(約 17 兆円、実質)× 同社シェア(兆円))× 価格 1.34(価格の指数(今を 1.00))→ 売上 576 億円・営業利益 190 億円。ライセンス新作(利益率 33%)
- アミューズメント・不動産・その他:数量 28.0(稼働中の施設・受託案件・ホールなどの件数換算)× 価格 3.95(1 件あたり売上(億円))→ 売上 111 億円・営業利益 14 億円。堅調(利益率 13%)
倍率:事業の純利益 528 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 18.9% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 13.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 19.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 19.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)1,600 億円。全体の PER 22.01 倍、時価総額 12,114 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:『仁王』『Wo Long』『NINJA GAIDEN』のアクション、『無双』の IP 化、ポケモンのような他社 IP との共同制作がそろって世界に届く筋書き。強気の見方でも最上位で、10 年続く確率は低く見た。
やや楽観 25% IP の裾野が広がり、緩やかに伸び続ける 利益 455 億円 · PER 21.8 倍 · 株価時価総額 2,967 円9,917 億円
『仁王』の次の柱が 1 つ育ち、『信長の野望』『三國志』は海外のファンを増やす。旧作の積み上がりが厚くなり、1 本あたりの手取りも物価を上回る。販売本数は年 1,800 万本で、売上は 1,500 億円。営業利益率は 40% 強に保たれ、営業利益は 610 億円になる。運用は平均並みだが、本業の利益が増えるので、配当は 10 年で 2,000 億円を超える。海外で自社販売が育ち、モバイルのライセンス収入も細らない。ただ、世界の大作が相手の領域では、数百万本を安定して売る力までは持たない。人員の増加と物価の上昇で人件費は重くなるが、売上の伸びで吸収できる。10 年後も『安定して稼ぐ中堅の名門』という評価は保たれる。
- コンソール・PC ゲーム:数量 1,800(販売本数(万本))× 価格 4,889(1 本あたりの手取り売上(円。他社発売の作品は低い))→ 売上 880 億円・営業利益 440 億円。大型が計画どおり(利益率 50%)
- オンライン・モバイル・IP 許諾:数量 0.0(世界モバイル・オンライン市場(約 17 兆円、実質)× 同社シェア(兆円))× 価格 1.34(価格の指数(今を 1.00))→ 売上 523 億円・営業利益 162 億円。横ばいに戻る(利益率 31%)
- アミューズメント・不動産・その他:数量 26.0(稼働中の施設・受託案件・ホールなどの件数換算)× 価格 3.95(1 件あたり売上(億円))→ 売上 103 億円・営業利益 10 億円。堅調(利益率 10%)
倍率:事業の純利益 432 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 17.0% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 12.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 19.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 19.2 倍 + 余った現金(戻り方込み)1,600 億円。全体の PER 21.82 倍、時価総額 9,917 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:新しい IP の芽がひとつ出て、既存シリーズの旧作も売れ続ける筋書き。営業利益率は 4 割強を保つ。本業が緩やかに伸び、その上に運用が乗る。
中立 33% シリーズを守りながら、静かに伸びる 利益 365 億円 · PER 22.1 倍 · 株価時価総額 2,453 円8,200 億円
世界のコンソール・PC 市場は実質で年 1〜2% 伸びる。同社の本数は年 1,500 万本と、前期の山を少し上回る。ダウンロードの旧作が収益を支え、1 本あたりの手取りは物価に自社販売の増加が加わって上がる。モバイルは横ばいが続く。人員は増えるが、売上の伸びとほぼ見合う。営業利益率は 37% 前後に落ち着き、売上は 1,300 億円、営業利益は 480 億円。堀は保たれるが、広がりもしない。運用益は平常、配当は 10 年で 1,900 億円を出す。新しいシリーズが 1 つ加わる程度の変化はあるが、会社の姿は大きく変わらない。三國志や信長の IP は海外にも少しずつ広がる。新しい世代の遊び手が加わるぶん、旧作の売れ行きも落ちにくい。
- コンソール・PC ゲーム:数量 1,500(販売本数(万本))× 価格 4,823(1 本あたりの手取り売上(円。他社発売の作品は低い))→ 売上 724 億円・営業利益 340 億円。山から平常へ(利益率 47%)
- オンライン・モバイル・IP 許諾:数量 0.0(世界モバイル・オンライン市場(約 17 兆円、実質)× 同社シェア(兆円))× 価格 1.34(価格の指数(今を 1.00))→ 売上 469 億円・営業利益 136 億円。横ばい(利益率 29%)
- アミューズメント・不動産・その他:数量 25.0(稼働中の施設・受託案件・ホールなどの件数換算)× 価格 3.95(1 件あたり売上(億円))→ 売上 99 億円・営業利益 8 億円。現状維持(利益率 8%)
倍率:事業の純利益 342 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 16.0% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)1,600 億円。全体の PER 22.09 倍、時価総額 8,056 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:売上は物価並みに伸び、販売本数は実質で緩やかに増える。利益率は人件費の重さで平常化する。最も確率が高い筋書き。
やや悲観 20% ヒットが減り、普通のゲーム会社になる 利益 218 億円 · PER 19.1 倍 · 株価時価総額 1,299 円4,341 億円
新作の打率が下がり、販売本数は年 1,200 万本にとどまる。旧作は売れ続けるが、新作の入れ替わりが細ると積み上げも鈍る。モバイルは縮み、ライセンス収入も細る。人件費の重さは変わらず、営業利益率は 27% ほどに落ちる。売上は 1,040 億円、営業利益は 280 億円。『ヒットを作る会社』という評価は外れ、普通のコンテンツ企業として値が付く。運用益は小さくなる。金融資産は使い方次第で目減りもするので、配当は方針より薄くなる。会社は IP の更新と新しいシリーズの育成に資金を回す必要に迫られる。そのぶん、株主への還元に回せるお金は細る。
- コンソール・PC ゲーム:数量 1,200(販売本数(万本))× 価格 4,656(1 本あたりの手取り売上(円。他社発売の作品は低い))→ 売上 559 億円・営業利益 201 億円。新作が不発(利益率 36%)
- オンライン・モバイル・IP 許諾:数量 0.0(世界モバイル・オンライン市場(約 17 兆円、実質)× 同社シェア(兆円))× 価格 1.34(価格の指数(今を 1.00))→ 売上 389 億円・営業利益 78 億円。縮小(利益率 20%)
- アミューズメント・不動産・その他:数量 23.0(稼働中の施設・受託案件・ホールなどの件数換算)× 価格 3.95(1 件あたり売上(億円))→ 売上 91 億円・営業利益 3 億円。低調(利益率 3%)
倍率:事業に要らない現金1,200億円(戻り方1.0)を分けると、事業の純利益201億円(現金の税後利息を除く)・事業のROE9.1%。RONIC=k7.5%+残る割合1/2×(ROE9.1%−k7.5%)=8.6%、長期の成長率g4.0%から正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)=13.3倍。堀は並み。上限は事業201億円×13.3倍+余った現金1,200億円=3,882億円。成長と堀の持ちを低く見るので、上限を下回らせる。やや悲観は上限の9.5割に置き、時価総額4,166億円、全体のPERに直して19.1倍。
確率:新作の当たりが減り、旧作に頼る度合いが上がる筋書き。堀は削れるが、シリーズは残る。人件費が重く、利益率は 3 割弱まで下がる。
悲観 12% 構造的に優良さを失う 利益 −42 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 239 円800 億円
新作が当たらなくなる。ω-Force と Team NINJA のどちらかは規模を縮め、IP の更新が止まる。海外の大手と中国発の作品に世界のアクション市場を取られ、同社の作品は値引きでしか売れなくなる。販売本数は年 800 万本まで下がり、モバイルは赤字になる。人件費は固定費として重く、営業利益はほぼゼロ。運用でも評価損が続く。配当は、有価証券の売却で払う。自社株買いは止める。三國志と信長のファンも世代が替わり、数が減る。かつての『安定したヒット工場』という評価は外れ、収益が読めない会社として値が付く。経営の資本配分への信頼も下がる。運用でも、この間に評価損と売却損が重なる。
- コンソール・PC ゲーム:数量 800(販売本数(万本))× 価格 4,457(1 本あたりの手取り売上(円。他社発売の作品は低い))→ 売上 357 億円・営業利益 18 億円。不況で半減(利益率 5%)
- オンライン・モバイル・IP 許諾:数量 0.0(世界モバイル・オンライン市場(約 17 兆円、実質)× 同社シェア(兆円))× 価格 1.34(価格の指数(今を 1.00))→ 売上 268 億円・営業利益 −13 億円。課金が細る(利益率 -5%)
- アミューズメント・不動産・その他:数量 20.0(稼働中の施設・受託案件・ホールなどの件数換算)× 価格 3.95(1 件あたり売上(億円))→ 売上 79 億円・営業利益 −4 億円。赤字(利益率 -5%)
倍率:優良さを失い利益がほぼ消えた筋書きなので、稼ぐ力では測れない。床は純現金と売れる資産の税後(約800億円・floor_assets_oku。内訳は floor_assets_why)で、これを今の自己資本2718億円に掛けた形(PBR0.29)で置く。帳簿の自己資本は価値の根拠にしない。
確率:新作が当たらず、複数のブランドが行き詰まり、大手と新興勢力に市場を取られる筋書き。10 年かけて、堀が削れる。運用でも失敗が重なり、金融資産は目減りする。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
コンソール・PC ゲーム
『真・三國無双』『仁王』『信長の野望』『アトリエ』などの自社 IP と、ポケモンなど他社 IP の受託開発を、据置機・PC 向けに売る。ダウンロードが約 6 割。
| 数量販売本数(万本) | 価格1 本あたりの手取り売上(円。他社発売の作品は低い) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,410 | 3,326 | 469 | 250 |
| 10 年後 中立 | 1,500 | 4,823 | 724 | 340 |
取り方:会社の開示(コンソール・PC の売上 469 億円、販売本数は前期の 763 万本から約 85% 増)から、約 1,410 万本、1 本あたりの手取りは約 3,300(単位は円)と逆算した。本数は他社発売の作品(ぽこ あ ポケモンなど)を含むとみられ、単価は低めに出る。利益はセグメント利益 366 億円をコンソール・PC 約 250 億円・モバイル系約 116 億円に分けた推定(開示なし)。
オンライン・モバイル・IP 許諾
自社運営のスマホゲーム(覇道シリーズなど)と、中国のアリババ側が運営する『三国志・戦略版』などのライセンス収入、イベント・グッズ。
| 数量世界モバイル・オンライン市場(約 17 兆円、実質)× 同社シェア(兆円) | 価格価格の指数(今を 1.00) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.0 | 1.00 | 356 | 116 |
| 10 年後 中立 | 0.0 | 1.34 | 469 | 136 |
取り方:オンライン・モバイル 343 億円とイベント・グッズ 13 億円の合計 356 億円を、世界モバイル市場 約 17 兆円(業種ノートの 32 兆円をネクソンと同じ割合で分けた値)で割ると、同社シェアは約 0.21%。数量は市場 × シェアの実質規模、価格は物価と値上げの指数。利益は上の推定のとおり。
アミューズメント・不動産・その他
ゲームセンター運営とパチスロ液晶の受託開発、横浜のライブホール、ベンチャー投資。
| 数量稼働中の施設・受託案件・ホールなどの件数換算 | 価格1 件あたり売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 22.0 | 2.95 | 65 | 5 |
| 10 年後 中立 | 25.0 | 3.95 | 99 | 8 |
取り方:アミューズメント 48 億円・不動産 13 億円・その他 4 億円の合計 65 億円を、件数換算 22 件(施設・案件・ホールの推定)で割った。利益はアミューズメント 8 億円・不動産 3 億円・その他の損失 6 億円の合計。開示された件数は無いので、件数は推定。
リスクと懸念
利益率が山の年を基準にしてしまう危険
2026 年 3 月期の営業利益率 42% は、『仁王 3』『ぽこ あ ポケモン』など新作が重なった年の数字だ。会社自身が今期は営業利益 14% 減を見込む。大型の当たり外れで利益が大きく動く構造は変わらず、山の年を基準に未来を置くと過大評価になる。会社の今期予想も、新作の発売が下期に偏るため利益が薄い。
運用益のぶれと、使い道の不透明さ
経常利益の 3 分の 1 は運用益で、年によって 8 億円から 230 億円規模まで動いてきた。2023 年 3 月期は AT1 債の損失が出ている。運用資産は有価証券や複合商品を含み、中身を外から追いにくい。相場の急落時に評価損が自己資本を削る恐れがある。
人件費が売上より速く増える
人件費は年 10% ほどの計画的な増加で、前期は 268 億円に達した。従業員は 3,000 人を超えた。売上が物価並みにしか伸びなければ、利益率は着実に削られる。中計の 1,100 億円以上の成長投資が、実を結ぶ保証はない。人は一度増やすと減らしにくく、売上が落ちた年に利益を直撃する。
モバイルの縮小と中国のライセンス依存
オンライン・モバイルは前期 8.6% 減。『三国志・戦略版』はアリババ側が運営するライセンス収入で、中国市場の規制や競争の影響を受ける。自社運営の『覇道』シリーズも、既存タイトルの反動減が出ている。ここが細ると、新作の穴を埋める力が落ちる。収益の柱が実質的にコンソールの 1 本足に近づくことになる。
創業家が過半を握る統治
光優ホールディングスが株の 51.5% を持ち、運用子会社の社長も創業家の襟川恵子氏が務める。社外取締役が過半で形は整っているが、運用や買収の方針を少数株主が外から正す手段は限られる。TOB も創業家が応じない限り成立しにくい。資本の使い方で価値を壊す危険は、他社より気にしておく。
世界の大作との競争と技術の変化
大作の開発費は膨らみ、中国発の『黒神話:悟空』のような作品が世界市場に入ってきた。生成 AI で開発の効率が上がるのは強みになりうるが、同じ道具を競合も使うので、差にはなりにくい。数百万本を安定して売る力を、世界の大手に比べて持ち続けられるかが試される。
今後の分かれ目
- 『Wo Long 2』や『進撃の巨人 3』が世界で数百万本を超えたら
- 楽観・やや楽観の確率を上げてよい。ただし 1 作の当たりで利益率の高さが続くと決めず、次作までの人件費の増加を併せて見る。
- 新作が続けて外れ、営業利益が 300 億円を割り込んだら
- やや悲観の確率を上げる。人件費の増加が固定費として残るので、利益の落ち方は売上の落ち方より大きくなる。
- 運用資産で数百億円規模の評価損が出たら
- 悲観の確率を上げ、運用の腕への見方を改める。金融資産の帳簿の値を差し引いて、本業だけの価値で測り直す。
- 大型の買収(他社 IP やスタジオ)を発表したら
- 価格と相手の稼ぐ力を見て判断する。金融資産を使った割高な買収なら、資本の使い方への評価を下げる。
- 『三国志・戦略版』のライセンス収入が急に減ったら
- モバイルの数量を下げて、やや悲観の筋書きに近づける。自社の新作で穴を埋められるかが分かれ目になる。
- 自社株買いを積極的に始めたら
- 運用資産の取り崩しで買うなら、1 株あたりの価値は上がる。ただ、割高な局面で買っていないかを確かめる。
見ておくもの
- エンタテインメント事業の営業利益率(40% 台を保てるか、30% 台に落ちるか)
- 『Wo Long 2』『進撃の巨人 3』『信長の野望・飛翔』の販売本数
- 経常利益と営業利益の差(運用益の大きさと、評価損の有無)
- 従業員数と人件費の伸び(売上の伸びを上回り続けるか)
- オンライン・モバイルの売上(前期は 8.6% 減)と中国のライセンス収入
- 自社株買いや大型買収など、運用資産の使い道に関する発表
倍率と資本コストの決め方
ゲームを開発ブランドごとの本数×単価で積んだ。有価証券を含む金融資産のうち、運転資金などを引いた1,600億円(推定)を余った現金とし、戻り方1.0で足した。運用益は純利益に入れていない。倍率は式の上限(正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)、k7.5%、堀は並みで残る割合1/2)に対する位置で置いた。楽観は上限の9割、やや楽観8.5割、中立7.5割、やや悲観9.5割、悲観は事業の純利益÷kの稼ぐ力(と純現金)の(赤字のため資産の床で別に置いた)割。今のPERや同業の倍率、谷の倍率は見ていない。悲観は赤字なので資産の床や稼ぐ力では測れず、構造的に優良さを失った会社の自己資本の評価として置いた(従来どおり)。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 17.78→22.01 倍・やや楽観 PER 16.73→21.82 倍・中立 PER 16.55→22.09 倍・やや悲観 PER 16.91→19.1 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。