結論
日本オーエー研究所は、国税・関税などの公共システムと金融機関向けシステムの受託開発を担う、創業40年を超える独立系IT企業である。筆者の結論は「やや割高」だ。長い取引実績と純現金は評価できるが、稼ぎの大部分を一つの企業グループに依存し、AIエージェントによる開発工数の削減を避けにくい。
最大の強みは、NTTデータグループと長年築いてきた関係だ。2025年にはNTTデータのビジネスパートナーに認定され、国税・関税など失敗の許されない社会基盤システムを支えている。しかし、2025年の売上高の85.8%がNTTデータグループ向けで、そのうちNTTデータ・アイだけで78.4%を占める。顧客の乗り換えが難しいことと、この会社が下請けとして選ばれ続けることは同じではない。
2026年に公表した中期経営計画は、2028年12月期の売上高33.53億円、営業利益2.09億円を目指す。実現すれば利益率は改善するが、計画自体がエンジニア数の増加を成長の柱としている。10年後には、人を増やすほど売上が増える仕組みが現在ほど通用しなくなる可能性が高い。
一方、自己資本約7.8億円、純現金約3.9億円という2025年末の財務は心強い。2026年には約0.75億円の自社株買いも実施した。利益の伸びが鈍くても現金が積み上がる余地はあり、会社が直ちに危うくなる見通しではない。
10年後の事業価値、積み上がる余剰現金、株主還元を確率で評価した現在価値は約10.05億円となる。基準時価総額約11.35億円を11.5%下回る計算だ。これは現金が株主に帰属するという比較的好意的な前提を含むため、積極的な安全域があるとは言い難い。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主の見方では、まず10年後にも仕事があるかを考える。日本オーエー研究所が関わる国税、関税、金融の基幹システムは、今後も社会に必要だろう。過去の開発内容を知る人材がいることも強みだ。しかし、仕事の必要性と、その仕事から現在と同じ利益を得られることは別である。
本当に強い企業は、顧客に不可欠な商品や仕組みを持ち、物価が上がっても値上げを通せる。日本オーエー研究所は不可欠なシステムの開発に関わるものの、システムそのものを所有しているわけではない。元請けの大手企業がAIによって開発生産性を高めれば、作業量に応じて収入を得る同社は、その利益をすべて自分のものにはできない。契約相手が集中していることも、価格交渉で不利になる要因だ。
株主のものになる利益という観点では、設備投資が小さく、現金を残しやすい性質は魅力的である。2026年の自社株買いは、現金をただ保有するだけではなく資本効率を高めようとした行動として評価できる。ただし、2025年の営業キャッシュフローは純利益を下回っており、毎年の利益がそのまま自由な現金になるわけでもない。売掛金の回収や外注費の支払いを含む運転資金には注意が必要である。
再投資については、技術者の採用人数が増えるだけでは十分ではない。新しい人材が、採用・教育費用を上回る利益を長く生み続けることが必要だ。AIが工数を減らす時代には、同じ売上を確保するために必要な技術者数も変わる。増分の投下資本利益率が資本コストを超えないなら、成長投資より還元を優先すべきである。
筆者が支払う価格を考える際に最も重く見るのは、顧客依存とAIによる収益モデルの変化である。株式を10年間持つ前提なら、純現金と長期契約の信用だけで判断してはならない。利益の持続性を確かめられる価格に十分な余裕が必要であり、現状ではその余裕が大きいとは判断できない。
何で稼ぐ会社か
収益の中心は、官公庁向けの公共系システム開発である。国税電子申告・納税システム、輸出入・港湾関連システム、関税関連システムなど、行政の業務を支える開発実績を持つ。国税・関税制度はなくならず、既存システムも継続的な改修を必要とするため、仕事そのものの寿命は長い。
2025年12月期の公共系事業の売上高は23.31億円で、全社の約78%を占めた。国税関連の次世代開発は続いたものの、関税関連の大規模開発が一巡し、売上高は前年より4.3%減少した。大型案件の開発、稼働後の保守、次世代システムへの更新という循環があるため、需要が安定していることと、毎年同じだけの開発工数を確保できることは別である。
金融・法人系事業は、銀行、生命保険、証券会社の基幹システムや一般企業向けの業務システムを扱う。2025年の売上高は6.60億円で、前年より28.3%増えた。ただし、この増加には公共系の大型開発が一巡して技術者を再配置できた効果が含まれている。新しい独自製品が急成長したわけではない。
仕事の受け方も理解しておきたい。会社は官公庁などの最終利用者から直接大量に受注する大手元請けではなく、NTTデータ・アイなどの大手システムインテグレーターから開発業務を受託する。収入は実質的に技術者の稼働量と工数単価に依存し、外注先も使いながら案件を遂行する仕組みである。
2025年末の従業員239人のうち、会社が定義するエンジニアは221人だった。中期計画では2028年に268人へ増やす方針である。技術者の採用、育成、配置の巧拙が売上と利益を決める資産の軽い事業だが、人件費と教育費は先に発生する。案件が細れば、その固定的な費用が利益を大きく圧迫する。
優良さと弱いところ
同社には長年の業務経験という参入障壁がある。国税・関税などの制度、既存プログラムの仕様、障害を避けるための手順を理解するには時間がかかる。2008年のNTTデータのアソシエイトパートナー認定に続き、2025年にはビジネスパートナーに認定された。これは長期にわたって品質と納期を守ってきた実績を示す、具体的な信用の証拠である。
ただし、堀、つまり他社に仕事を奪われにくい力は限定的だ。基幹システムの切り替えが難しいとしても、システムやデータの所有者は顧客側である。開発会社がデータベースの正本や共同利用基盤を独占しているわけではない。顧客がAIを導入して開発工数を削ったり、別の協力会社へ発注したりすれば、同社が請求できる工数は減る。
価格決定力にも弱さがある。2025年のNTTデータグループ向け売上比率は85.8%に達し、協力会社という立場から一方的に大幅な値上げを通すのは難しい。単価改定や賃上げの実績はあるとしても、法令改正のたびに価格を引き上げてきた定量的証拠は確認できない。顧客との関係の強さを、強い値決め力と同一視してはならない。
収益性は改善している。2023年の営業利益率1.5%から2025年には5.1%となり、技術者の再配置と外注費の抑制が寄与した。しかし、これは優れた独自製品から自動的に高収益が生まれる構造ではない。2026年上期には営業利益が前年同期比で27.5%減少しており、賃上げと案件構成の変化に対する敏感さが残る。
財務の健全性は明確な長所である。借入金を差し引いても現金が残り、大型設備投資を必要としない。もっとも、増分の投資収益率が高く維持されるかは、増やした技術者を十分な単価で稼働させ続けられるかにかかる。AIによって必要な工数が減る環境では、人材を増やすことが必ずしも価値のある再投資とは限らない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内ITサービス市場には、古い基幹システムの刷新、行政手続きの電子化、クラウドへの移行という需要がある。経済産業省の統計を引用した同社の有価証券報告書によれば、2024年度の国内システムインテグレーション市場は7兆3,162億円で、前年度比9.5%増だった。ただし、この成長率をそのまま人月型開発会社の10年後まで延長するのは危険である。
公共分野の需要は比較的粘り強い。2025年度の政府情報システム関係当初予算は約1兆円で、国税、社会保障、登記などのシステムには保守・改修の継続性がある。この予算と公共系売上高23.31億円を単純比較すると、同社の規模は約0.23%に相当する。ただし、これは政府IT支出全体との比較であり、元請け企業の下請け売上まで含めた厳密な市場シェアではない。
金融分野では、IDC Japanによる2025年の国内金融IT市場予測が約3.33兆円である。同社の金融・法人系売上高6.60億円をすべてこの市場に対応させても約0.02%にすぎず、法人系の非金融案件も含むため実際の金融市場シェアとは一致しない。規模が小さいことは成長余地を意味する一方、大きな競合との価格交渉力の差も意味する。
国内ITサービスの競争では、富士通、日立製作所、NEC、NTTデータなどの大手が元請け市場を主導している。Gartnerの2024年市場定義では、国内ITサービスのシェアはNTTデータ10.1%、NEC8.3%、富士通8.0%、日立製作所7.7%だった。同社の直接的な競争相手には多数の中堅・中小の協力会社も含まれるが、その階層ごとの厳密なシェアは公表されていない。
10年の大きな変化はAIエージェントである。仕様書の作成、コーディング、試験、保守、障害調査が自動化されれば、必要な人月は減る。行政システムの安全性、監査、責任分担により人間の関与は残るが、工数そのものが高い価格で売れ続ける保証にはならない。国内IT支出の総額が増えても、協力会社へ支払われる工数対価が減ることは十分にあり得る。
市場全体で見ると、大手は開発工程を自動化しながら設計や成果物の責任を引き受ける方向へ進む可能性が高い。同社がその流れに乗れれば顧客内での役割を保てる。しかし、特定顧客への依存が高い状態で発注側が内製化や協力会社の集約を進めれば、市場の成長にかかわらず同社のシェアは低下する。
資本政策と M&A
資本配分は保守的な財務管理が基本で、大型設備投資や買収による急拡大には依存していない。2024年には名証への上場に伴う増資で株数が増えたが、2026年6月には11万株、総額7,535万円の自社株買いを実施した。取得株数は取得前の自己株式を除く発行済株式の6.84%に相当する。既存株主の取り分は増えたものの、主要株主からの取得だったため、少数株主にとって取引価格と意思決定の公正さを継続して確認する必要がある。
2026年3月公表の『Expand 2028』は、2028年の売上高33.53億円、営業利益2.09億円、営業利益率6.3%を掲げる。エンジニア268人、資格取得者延べ375人も目標とした。一方、ROE、ROIC、配当性向、DOE、総還元性向、自社株買いの年間金額については数値の約束がない。2027年以降の配当方針も、決定次第開示するとしている。
配当は2024年から2025年に増額され、2026年も株式分割を考慮した実質的な年間配当水準は維持する計画である。2025年の配当総額は約0.24億円で、純利益に対する割合は約22%だった。10年間は配当を基本としつつ、余裕がある場合に自社株買いを追加する想定とし、業績が悪化する場合の還元額も抑えている。
株式保有は創業者側に集中しており、2026年の自社株買い後も主要株主の支配力は大きい。上場廃止を伴うTOBやMBOが決まった事実は確認できないが、将来の資本再編の可能性はある。買収価格が不明な段階で、その期待を本質価値に加算することはしない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
国税や関税のシステムは、AIが登場したからといって簡単になくなるものではない。制度改正、セキュリティ対策、既存システムとの連携、障害発生時の責任を考えると、長く関わってきた協力会社の知識には価値がある。NTTデータからビジネスパートナーとして認定されたことは、新規参入企業との競争で有利に働くだろう。
中期計画は2028年に営業利益2.09億円を目標とし、2025年より約35%増やす方針を示した。技術者の採用と教育が進み、クラウドや生成AIを使う案件に対応できれば、より難しい工程を担当する機会も増える。元請け企業が要求する品質を維持したまま開発の生産性を高めれば、売上が緩やかな成長でも利益率を上げられる。
また、純現金を保有し、設備投資も小さい。2026年には自社株買いを実行し、株主還元にも実績が生まれた。AIによる開発工数削減が進んでも、利益を留保して現金を積み上げ、適切に株主に戻すことができれば、事業の成長率だけでは測れない株主価値を生み出せる。大型買収による希薄化や財務悪化を避けながら、専門性の高い小規模なIT企業として生き残る道は十分にある。
慎重な見方
最大の問題は、売上の85.8%を一つの企業グループに依存していることである。これは顧客との関係が深いことを示すが、同時に発注側が価格や調達方針を変更した時の影響が極めて大きいことも示している。NTTデータグループが開発を内製化したり、AIエージェントで作業量を削減したりすれば、同社には他の顧客で減収を埋める力が十分にない。
公共システムの開発実績を独占的な資産と見なすこともできない。開発したシステムや業務データの所有権は顧客側にあり、同社が継続して収益を受け取ることを保証するものではない。NTTデータのビジネスパートナーという地位は信用を高めるが、契約量や単価の維持を保証する制度ではない。
2026年上期には売上が前年同期比2.0%減にとどまった一方、営業利益は27.5%減少した。人件費が増え、案件構成が変わるだけで利益が大きく動くことが示されている。中期計画が掲げる技術者数の増加も、顧客の工数需要が縮めば固定費の増加になる。加えて、大株主からの自己株式取得は、残る株主に利益をもたらす可能性がある半面、資本政策の公正さを検証し続ける必要がある。純現金は損失を吸収できても、人月型事業の競争力を保証するものではない。
どちらに重みを置いたか
公共系の実績と現金の厚さは評価できるが、長期的には慎重な見方がやや強い。楽観とやや楽観の合計を26%、やや悲観と悲観の合計を39%とした。下に寄せる理由は、2025年売上の85.8%がNTTデータグループ向けであり、発注先変更による損失を他の顧客で補いにくいことにある。AI代替の影響は既に中立の数量と長期成長率に織り込んでおり、確率で同じ要因を重ねて減点していない。現金の蓄積を好意的に評価しても、現在価値は時価総額をやや下回る。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 1,217 円18 億円(+ 還元の換算額還元の合計 179 円3 億円)。 今の値に割り戻すと 671 円10 億円、今との差 −9.9%、 期待の年率 +7.0%(資本コスト 8.3%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 2,457 円37 億円 | 327 円5 億円 | +273.7% | +15.4% | 223 円3 億円 |
| やや楽観 | 18% | 1,937 円29 億円 | 267 円4 億円 | +195.9% | +12.5% | 397 円6 億円 |
| 中立 | 35% | 1,354 円20 億円 | 180 円3 億円 | +105.9% | +8.1% | 537 円8 億円 |
| やや悲観 | 24% | 646 円10 億円 | 120 円2 億円 | +2.8% | +0.3% | 184 円3 億円 |
| 悲観 | 15% | 286 円4 億円 | 83 円1 億円 | −50.4% | −7.5% | 55 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,217 円18 億円 | 179 円3 億円 | +87.3% | +7.0% | 1,396 円21 億円 |
今の株価時価総額 745 円11 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 8% 既存顧客との取引を守り、生産性向上も収益化 利益 2 億円 · PER 12.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 2,457 円37 億円
公共系の基幹システム更新が続き、NTTデータ・アイなどの元請け企業は引き続き日本オーエー研究所を重要な協力会社として採用する。国税・関税に加え、自動車登録検査や社会保障の新しい案件にも参画し、特定大型案件が終わっても人員を他の案件に振り向けられる。2025年に得たビジネスパートナーとしての地位が実際の受注維持に結びつく。
金融・法人系では、クラウド移行やデータ連携の高度な工程を担当する。AIは社内の開発作業を効率化するが、顧客との責任分担や重要システムの試験に人間の仕事が残り、請求できる稼働量の減少は小幅にとどまる。独自AI製品の急成長は見込まず、既存の受託開発の品質と生産性で利益を確保する。
採用と教育への投資は続くが、外注加工費や間接費の管理が改善し、営業利益率は中期計画の目標を超える。利益の一部を配当と買戻しに回し、残りは事業に必要な運転資金を超えて蓄積する。2035年には、元請けへの依存を残しながらも、安定して現金を生み出す協力会社としての地位を維持する。
- 公共系システム開発:数量 167(年間稼働換算技術者数・人。2025年の全社エンジニア221人を基礎に推定)× 価格 0.18(年間稼働換算技術者1人当たりの売上高・億円)→ 売上 30 億円・営業利益 2 億円。AI後も請求稼働量は現在の97%。単価は物価並みの1.34倍。重要案件への継続参画と工程管理の改善で利益率8.2%。
- 金融・法人系システム開発:数量 48.0(年間稼働換算技術者数・人。2025年の全社エンジニア221人を基礎に推定)× 価格 0.18(年間稼働換算技術者1人当たりの売上高・億円)→ 売上 9 億円・営業利益 1 億円。数量は現在の98%、単価1.33倍。クラウド移行と高難度案件の受注によって利益率7.5%。
倍率:AI代替型の長期名目成長率g=0%、資本コストk=8.25%なので、正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)=1÷0.0825=12.1212倍。事業の堀の残存割合は通常の1/2とする。営業利益の72%に相当する事業純利益約2.153億円にこの倍率を適用し、10年で蓄積する余剰現金10.71億円を別に足す。2035年の純利益2.303億円には余剰現金の税後利息約0.150億円を含めており、事業価値との二重計上を避けるため控除する。
確率:NTTデータとの関係を維持しながら、AI導入後も従来に近い請求工数と物価並みの単価を維持する必要がある。品質面の強みはあるが、成果報酬型や自社AI製品の売上実績が金額で確認できないため、成功確率は低めの8%とする。
やや楽観 18% 主要顧客を維持し、利益率の改善が続く 利益 2 億円 · PER 12.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,937 円29 億円
NTTデータグループからの公共系開発は安定的に続く。関税や国税の大型開発が終わるたびに人員の移動は必要になるが、長年のノウハウと品質への信頼によって新しい案件にも参加できる。元請け企業の協力会社集約が進んでも、取引関係から排除されることはない。
金融・法人系ではクラウド移行、システム間連携、業務改善の仕事が増える。ただし、AIによってプログラム作成や試験に必要な時間が減るため、売上を伸ばす力は過去の成長期より弱くなる。単価改定は一定程度認められるが、顧客に生産性改善の利益の一部を渡すことになる。
既存事業の品質が維持され、利益率は中期計画に近い水準を保つ。大型買収に依存せず採用と教育を続け、事業規模に見合った自己資本を確保したうえで余剰現金を蓄積する。2035年には売上の急成長はないものの、利益と現金を生み続ける中堅システム開発会社として残る。
- 公共系システム開発:数量 146(年間稼働換算技術者数・人。2025年の全社エンジニア221人を基礎に推定)× 価格 0.18(年間稼働換算技術者1人当たりの売上高・億円)→ 売上 26 億円・営業利益 2 億円。請求稼働量は85%、価格1.32倍。大型案件の更新需要が続き、原価管理で利益率7.3%。
- 金融・法人系システム開発:数量 42.1(年間稼働換算技術者数・人。2025年の全社エンジニア221人を基礎に推定)× 価格 0.17(年間稼働換算技術者1人当たりの売上高・億円)→ 売上 7 億円・営業利益 0 億円。数量86%、価格1.30倍。クラウド案件の増加と工数圧縮が併存し、利益率6.2%。
倍率:10年より先の名目成長率0%、k8.25%から正当化PERは12.1212倍。現金の税後利息約0.137億円を除く事業純利益約1.588億円に倍率を適用し、事業に不要な現金9.77億円を加える。将来のROEを現金の積み上がりで薄めたあと、同じ現金を価値から落とす二重の減点は行わない。
確率:公共・金融の基幹システム需要は比較的粘り強いが、AIによる工数削減の影響を完全には防げない。元請けとの関係を維持し、減った工数を難度の高い案件である程度補える確率として18%とする。
中立 35% AIで人月需要が縮むが、重要システムの仕事は残る 利益 1 億円 · PER 12.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,354 円20 億円
国税、関税、社会保障などの基幹システムは引き続き運用され、改修や次世代更新の仕事も発生する。しかし、AIエージェントによってプログラム作成、単体試験、設計書修正、障害解析の多くが省力化される。元請け企業がその成果を顧客に還元するため、協力会社に発注する工数は減少する。
公共系では、重要な設計判断や結合試験、監査対応など、人間の業務知識が必要な工程を中心に生き残る。金融・法人系ではクラウドやAIツールを使う案件を獲得するが、従来の工数課金を完全には置き換えられない。中期計画の2028年目標を達成する可能性はあるものの、その後の売上には構造的な下押し圧力がかかる。
会社は開発人員の自然減や再配置、外注量の調整によって利益率を守る。営業利益は極端には崩れないが、現在の仕事量がそのまま10年間続くわけではない。自己資本の増加に比べ利益の伸びが鈍く、全社ROEは低下する。それでも設備投資が軽いため現金は残り、株主の価値を相応に支える。
- 公共系システム開発:数量 120(年間稼働換算技術者数・人。2025年の全社エンジニア221人を基礎に推定)× 価格 0.17(年間稼働換算技術者1人当たりの売上高・億円)→ 売上 21 億円・営業利益 1 億円。AIエージェント代替により稼働換算数量70%。単価1.29倍。公共基幹系の継続性を評価するが、元請けの工数圧縮を反映する。
- 金融・法人系システム開発:数量 31.9(年間稼働換算技術者数・人。2025年の全社エンジニア221人を基礎に推定)× 価格 0.16(年間稼働換算技術者1人当たりの売上高・億円)→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。数量65%、単価1.22倍。一般法人案件は内製化と自動開発による値下げ圧力が公共系より強い。
倍率:k8.25%、g_long0%なので正当化PERは12.1212倍となる。事業の純利益は営業利益1.339億円×過去の純利益換算率72%で約0.964億円。全社純利益1.084億円から蓄積した余剰現金8.60億円の税後利息0.120億円を除いた額にPERを適用し、現金8.60億円を別に足す。全社ROEは約7.5%に低下するが、余剰現金を除く事業の資本効率は資本コストを上回る。将来の名目成長率を0%に制限したため、従来型の高い成長倍率は付けない。
確率:公共系の長期契約と業務知識により事業は存続する一方、AIエージェントの利用拡大によって開発工数が減る。顧客の継続性と業務構造の変化を両方反映する中心的な筋書きとして35%とする。
やや悲観 24% 協力会社への発注縮小と価格圧力が重なる 利益 0 億円 · PER 8.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 646 円10 億円
公共系システムへのIT予算は維持されるものの、大手システムインテグレーターが開発工程を大幅に自動化する。外注先の数を絞り、AIを使って少人数で同じ成果物を作るようになるため、日本オーエー研究所への発注量は目に見えて減少する。既存システムの知識は役立つが、それだけでは従来の工数を取り戻せない。
金融・法人系でも顧客の内製化が進み、短納期・低価格の開発会社との競争が激しくなる。新規案件を受注できても、品質保証や監査に必要な人件費が残り、利益率は低下する。余剰人員の再配置と採用抑制を進めるが、固定費の削減には時間がかかる。
会社は営業黒字を維持しながらも、株主還元を縮小する。設備投資は小さいため、過去からの現金と留保利益は大きな支えになる。しかし、将来の再投資から高い収益を得る見通しは薄れ、現金以外の事業価値は厳しく評価される。
- 公共系システム開発:数量 98.0(年間稼働換算技術者数・人。2025年の全社エンジニア221人を基礎に推定)× 価格 0.16(年間稼働換算技術者1人当たりの売上高・億円)→ 売上 16 億円・営業利益 1 億円。数量57%、価格1.18倍。公共投資は残るが元請けによる発注集約で受託額が減る。
- 金融・法人系システム開発:数量 26.0(年間稼働換算技術者数・人。2025年の全社エンジニア221人を基礎に推定)× 価格 0.15(年間稼働換算技術者1人当たりの売上高・億円)→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。数量53%、価格1.13倍。顧客の内製化と外注単価引き下げで利益率3%。
倍率:ROEは約3.7%でk8.25%を下回る。長期成長率0%の継続利益の上限1÷k=12.12倍より低い8.0倍とし、収縮した受託事業への再投資の価値を慎重に扱う。全社純利益0.471億円から余剰現金6.65億円の税後利息0.093億円を除いた事業利益約0.378億円に倍率を適用し、余剰現金を加える。事業利益の正当化上限と余剰現金の合計は約11.23億円であり、評価額9.673億円はこれを下回る。現在の清算資産の床4.29億円も上回る。
確率:NTTデータグループが協力会社を集約し、人月単価より成果物単位の契約を重視する場合を想定する。既存の信頼関係があるため全面的な契約消失よりは部分的な取引縮小が起こりやすいと考え、24%とする。
悲観 15% 主要顧客の発注方針変更で事業の優良さを失う 利益 0 億円 · PBR 0.6 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 286 円4 億円
NTTデータグループがシステム開発体制を抜本的に見直し、AIを前提とした少人数開発を進める。従来の協力会社を大幅に減らし、システムの業務知識を社内に取り込む。日本オーエー研究所は保守の一部を受注し続けるが、大型更新案件での役割を失い、売上は現在の半分以下になる。
金融・法人系でも類似の変化が起こる。内製化と自動化が進む一方、残った仕事には高度なセキュリティ対応が必要になり、人材コストを十分に削れない。重要顧客を失った状態で新しい顧客を獲得するには時間がかかり、既存の営業体制も十分に機能しなくなる。
営業損益は赤字となり、会社は採用を抑えて事業規模を縮小する。大きな買収を行わない限り、直ちに倒産する状況ではないが、過去の高いROEを回復する見通しは立たない。株主価値は事業の将来利益よりも、現在の現金と回収可能な資産に大きく依存する状態になる。この筋書きでは将来蓄積する現金に追加価値を認めず、現在の資産を基礎に評価する。
- 公共系システム開発:数量 67.1(年間稼働換算技術者数・人。2025年の全社エンジニア221人を基礎に推定)× 価格 0.15(年間稼働換算技術者1人当たりの売上高・億円)→ 売上 10 億円・営業利益 0 億円。請求数量39%、価格1.13倍。発注集約による大幅減収で採算が悪化。
- 金融・法人系システム開発:数量 19.6(年間稼働換算技術者数・人。2025年の全社エンジニア221人を基礎に推定)× 価格 0.15(年間稼働換算技術者1人当たりの売上高・億円)→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。数量40%、価格1.08倍。技術者の稼働不足と価格競争で営業赤字。
倍率:2035年は営業赤字となり継続的な利益倍率での評価が難しいため、2025年末の自己資本7.8億円を基準とする。現在の純現金、回収可能な売掛金、売れる有価証券から計算した資産床4.29億円と一致するPBR0.55倍を採用する。10年後に積み上がった大きな自己資本を床の倍率に掛けておらず、将来の余剰現金も別加算しない。事業の継続利益は赤字であるため、資産価値が評価の中心となる。
確率:売上が一つの企業グループに極端に集中しているため、元請け側の協力会社集約が急速に進んだ場合の損失は大きい。ただし数十年の取引実績と財務余力があり、完全な事業消滅を前提とするほどの確率ではないため15%とする。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
公共系システム開発
国税、関税、貿易、社会保障などの重要な行政システムの受託開発と保守改修。実態は顧客から受注する開発工数を技術者と外注先で提供する人月型の事業である。
| 数量年間稼働換算技術者数・人。2025年の全社エンジニア221人を基礎に推定 | 価格年間稼働換算技術者1人当たりの売上高・億円 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 172 | 0.14 | 23 | 1 |
| 10 年後 中立 | 120 | 0.17 | 21 | 1 |
取り方:2025年有報の公共系事業の販売実績2,331,071千円を23.31071億円とした。中期計画には2025年のエンジニア221人が開示されているが、公共系への実際の配属人数は開示されていない。公共系の売上構成比78.0%を参考に172人を配分し、売上高を172人で割った約1,355万円を稼働換算1人当たり年間売上とした。これは外注費を含む売上高の代理単価であり、個々の社員の請求単価ではない。社会基盤系の開発・保守が継続することは会社資料で確認できるが、実工数や契約単価の開示はない。事業はAIエージェント代替の『人月・工数で売る』型とする。公共の比較市場は2025年度政府情報システム予算約1兆円で、売上の単純比較シェアは約0.23%。出典:https://edinetdb.jp/company/E38373/text?fy=2025 および https://www.digital.go.jp/budget
金融・法人系システム開発
銀行、保険、証券、一般法人向けの基幹・業務システム開発。クラウドやAI活用への対応を進めるが、現状の主な収益は受託開発の工数対価である。
| 数量年間稼働換算技術者数・人。2025年の全社エンジニア221人を基礎に推定 | 価格年間稼働換算技術者1人当たりの売上高・億円 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 49.0 | 0.13 | 7 | 0 |
| 10 年後 中立 | 31.9 | 0.16 | 5 | 0 |
取り方:2025年有報の金融・法人系事業の販売実績659,547千円を6.59547億円とした。エンジニア221人から公共系の推定172人を除いた49人を当事業の稼働換算量とし、年間売上約1,346万円を推計した。事業別の技術者数、実際の人月契約単価、金融と一般法人の内訳は非開示であり、これらはモデル上の推定値である。国内金融IT市場はIDC Japanによる2025年予測で3兆3,290億円で、当事業の売上をすべて金融向けと仮定した上限的な比較シェアは約0.020%。実際は一般法人売上を含むため、金融の実シェアはこれより小さい。AIエージェント代替の『人月・工数で売る』型を適用する。出典:https://it.impress.co.jp/articles/-/27340 および https://edinetdb.jp/company/E38373/text?fy=2025
リスクと懸念
AIエージェント代替
受託開発の収益が人月や工数に依存するため、AIによるコーディング、試験、保守、自動修正の普及は請求数量を直接減らす。重要システムの設計や責任分担に人間の仕事は残るが、会社が成果報酬型へ移行した売上実績は確認できない。中立では公共系の数量を70%、金融・法人系を65%とし、10年より先の名目成長率も0%に制限した。
NTTデータグループへの極端な売上集中
2025年の売上高の85.8%をNTTデータグループに依存し、NTTデータ・アイだけで78.4%を占める。歴史的な関係は長所だが、元請けの協力会社集約、内製化、開発方針の変更、単価交渉で業績が大きく変わる。他社からの受注が増えなければ、単一顧客の変化を補えない。
採用と育成の先行負担
中期計画は2028年にエンジニア268人を目標とする。採用費と教育費が増える一方で、AIが顧客側の開発工数需要を削れば、増やした人員が十分に稼働できなくなる。固定的な給与を維持したまま稼働率が低下すると、営業利益率は売上の減少以上に悪化する。
公共大型案件の終了
国税・関税などの基幹システムは長寿命だが、次世代開発には大型案件が終了する局面がある。2025年には関税関連の大規模開発が一巡して公共系売上が減少した。発注元の予算が維持されても、開発から保守へ工程が移るだけで必要人数は変わるため、受注残と人員配置の継続的な確認が必要だ。
支配株主と資本配分
創業者側が大きな持分を持ち、2026年には主要株主からの自社株買いが行われた。取得そのものは発行済株数を減らし、少数株主にとって有益になり得る。しかし、経営資源の配分や取引条件に少数株主の意思が十分に反映されるかは別問題である。今後も関連当事者取引と現金の使い方を確認する必要がある。
情報漏洩と重要システムの障害
官公庁と金融機関の機密情報を扱うため、情報漏洩や重大なシステム障害が発生すれば損害賠償だけでなく、最も重要な顧客との信頼関係を失う可能性がある。ISMSやプライバシーマークの認証は管理体制の証拠になるが、事故の発生を完全に防ぐものではない。
今後の分かれ目
- NTTデータグループ向け売上比率が下がり、グループ外の売上が継続的に増えたら
- 主要顧客への依存が改善したと評価する。ただし売上減少によって比率が下がっただけでは評価を上げず、グループ外の売上高と利益が実際に増えていることを確認する。
- AIを利用した成果報酬型の契約や自社製品の売上が金額で開示されたら
- 工数課金からの転換が実現した部分の数量前提と長期成長率を再評価する。PoCや技術研修の発表だけでは上方修正せず、継続的な売上と粗利益の実績を見る。
- 2028年の営業利益率6.3%目標を達成し、エンジニア1人当たり売上も維持されたら
- 生産性向上が顧客の値下げ要求に吸収されず会社の利益に残っていると判断する。中立の利益率を見直すが、10年後の工数減少見通しは別に検証する。
- 公共系の大型案件が終了した後も技術者の稼働率が大きく落ちなかったら
- 顧客との関係が新規案件の受注につながる証拠とし、やや楽観側の確率を上げる。逆に、技術者の待機や外注先への支払いが増えれば悲観側を厚くする。
- 自社株買いと増配が続き、余剰現金が株主に還元されたら
- 現金を株主価値に算入する前提への確信を高める。反対に、採算の悪い買収や利益を生まない現金滞留が続けば、余剰現金の株主帰属割合を引き下げる。
- NTTデータ・アイ向け売上が大幅に減少し、グループ外売上で補えなかったら
- 単一顧客依存が現実の損失になったと判断する。技術者稼働量と営業利益率を同時に引き下げ、やや悲観・悲観の筋書きに重みを移す。
見ておくもの
- NTTデータグループ向け売上高と売上構成比、特にNTTデータ・アイ向けの推移
- 公共系事業と金融・法人系事業の売上高および前年同期比
- エンジニア数と技術者1人当たり売上高、外注加工費率の推移
- 中期経営計画Expand 2028の売上高、営業利益、営業利益率の達成状況
- AI活用案件の受注額、成果報酬型契約、独自製品の継続売上の開示
- 配当総額、自社株取得実績、支配株主との取引、現金および借入金の推移
- 国税・関税・社会保障関連の大型開発案件の更新・終了と技術者の再配置
倍率と資本コストの決め方
価格基準は添付の758円、149.8万株、時価総額約11.35億円を使用した。事業価値は現在の市場PERや同業PBRから決めず、公共系と金融・法人系について、会社開示の売上高とエンジニア221人を基礎に数量と単価を推定した。AIエージェント代替は中立の数量70%・65%と10年より先の名目成長率0%に反映し、資本コストの寿命要因には重ねていない。
倍率はk8.25%とg_long0%から正当化PER12.12倍を計算し、余剰現金の税後利息と元本を分けた。現在の純現金には2026年の実行済み自社株買いを反映し、株数減少と還元額の二重計上を避けた。将来の現金蓄積は、起点自己資本約7.05億円に10年間の純利益を足して還元を引く道筋から求めた。純利益累計と還元累計は楽観16.30億円・4.90億円、やや楽観13.40億円・4.00億円、中立10.20億円・2.70億円、やや悲観7.35億円・1.80億円、悲観2.00億円・1.25億円であり、各筋書きの自己資本と整合する。悲観の資産床4.29億円は現在の回収可能資産から求め、将来積み上がる自己資本に底値の倍率を掛けていない。
現金の株主帰属割合を1.0とする点には、2026年の買戻し実績がある半面、支配株主の存在という不確実性も残る。日本基準の新リース会計基準に伴う2028年12月期以降の貸借対照表の表示変更は、賃借事務所の家賃を二重に費用化しないよう扱う。期待本質価値約10.05億円は現在の時価総額に寄せて決めたものではなく、各筋書きの事業収益と資産を評価した結果である。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。無リスク金利3.0%と株式リスクプレミアム4.5%による基本7.5%に、事業の循環性、価格交渉力、純現金の質から0.75%を加え、資本コストを8.25%とする。時価総額の小ささや株価変動率による機械的な上乗せは行わない。