結論
マクアケは、まだ一般の店頭に並ばない新商品を、作り手と消費者が直接つながって売買する「応援購入」の有力プラットフォームである。筆者の結論は「割高」だ。商品デビューの場として築いた知名度と購買データは価値がある。しかし、その強みが今後10年間、安定して高い株主利益を生み続けるとまでは言い切れない。
2025年9月期は売上高45.8億円、営業利益4.5億円となり、3期連続赤字から黒字に戻った。2026年9月期も大型案件と単価上昇を背景に好調である。ただし、2025年の応援購入金額172億円は2021年の約215億円を下回る。売上回復には手数料体系の見直しと広告配信代行の拡大が寄与しており、掲載案件の数量が力強く増え続けているわけではない。
長期の論点は、新商品を一度売る取引から、商品企画、販売、継続販売まで支援する関係へ変われるかどうかだ。成功すれば蓄積された購買データが次のヒット商品を生み、実行者も消費者も集まる循環が強くなる。失敗すれば、案件ごとに集客費を支払い続ける、景気と流行に左右される仲介サービスにとどまる。
2025年9月期の自己資本は約54億円、純現金は約60億円と財務は厚い。ただし、現金には事業者への預り金に対応する資金が含まれ、すべてが自由に株主へ配れる金ではない。さらに親会社が過半数を保有し、配当も長年実施していない。5つの筋書きを合わせた10年価値の現在価値は約65億円で、基準時価総額123億円を約47%下回る。事業の存在価値は認めるが、長期株主が求める安全域は不足している。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主の目で最初に問うのは、10年後にも新商品を発見し、作り手と買い手を結ぶ場が必要かどうかだ。答えは「必要」である。大量生産が始まる前に需要を確かめたい作り手も、まだ世にない商品に早く触れたい人も消えない。マクアケはこの商取引の一つの習慣を作った。名前を知っている人が多く、過去の購入実績があることには意味がある。
しかし、必要な市場が残ることと、現在の会社が高い利益を独占できることは別だ。利用者は商品を買うために来るのであって、プラットフォームの利用料を払い続けるために来るのではない。事業者も成功した商品の販路を広げたい。だから、案件が終わっても次の商品企画で戻ってくる関係を築けるかが決定的だ。MakuakeインサイトとSTOREはそのための投資だが、現時点では主力事業の将来を保証するほど大きくない。
次に見るのは、稼いだ金を再投資すると株主の利益がどれほど増えるかである。2025年から2026年の収益改善は好材料だが、広告配信代行の拡大が売上と利益の両方をどれだけ増やしたかは切り分けたい。事業者の売上を伸ばすための広告費が膨らむなら、売上高の成長率ほどオーナー利益は増えない。新規事業への投資が資本コストを超えるかも、まだ証明の途中にある。
そして現金の扱いが残る。純現金の厚い会社でも、現金が長年配られず、十分な収益を生まない投資に使われれば、少数株主が受け取る価値は小さくなる。親会社が過半数を保有すること自体を悪いとは見ない。ただし、還元と関連当事者取引に具体的な規律がない限り、余剰現金には慎重な評価が必要だ。市場の将来性は認めつつ、現時点では安全域を伴う価格とは判断しない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心は、事業者が新商品を公開し、一般消費者が発売前に購入を約束する「Makuake」だ。事業者は商品開発の反応と初期の販売実績を得られ、消費者は新しい家電、生活用品、食品、体験などをいち早く見つけられる。会社は実行者から販売額に応じた手数料を受け取り、購入者からも安心システム利用料を受け取る。商品そのものの在庫を広く抱える通常の小売とは違い、販売が成立するたびに収益が発生する。
2025年9月期の開示上、応援購入サービスの売上は約33.0億円である。これに購入者側の安心システム利用料が加わる。実行者向けの基本手数料は20%、安心システム利用料は購入額の2.2%という体系だ。手数料の改定を実行できたことは値決め力の証拠だが、事業者がその負担に見合う売上を得られなければ、別の販路へ移る。
周辺事業では、プロジェクトの宣伝を請け負う広告配信代行が2025年9月期に約7.3億円の売上を生んだ。Makuake Incubation Studioは、企業の技術を新商品に仕立てる企画・開発支援で、同年度の売上は約0.8億円である。さらに、実施後の商品を継続販売するMakuake STORE、購買データを使うMakuakeインサイトがある。会社の正式な報告セグメントは一つだが、これらは顧客が払う理由も競争相手も違うため、長期の採算は分けて考える必要がある。
2026年の公表指標では、会員は約350万人、月中アクティブプロジェクトは約1,055件、月次の案件当たり応援購入金額は約188万円となった。案件の数が横ばいに近い一方、売れる案件が大型化している。これは選別と販売支援の成果とも読めるが、少数の大当たり案件に業績が偏る兆候とも読める。実行者との契約関係は短期で終わることが多いと会社自身が認めており、翌年の売上を自動的に保証する契約の積み上がりではない。
優良さと弱いところ
マクアケの堀、つまり他社が簡単には奪えない強みは、新商品を探す消費者の集まりと、その消費者に売りたい作り手の集まりが互いを呼び込むことだ。累計5万件を超える案件の経験は、どの説明、価格、商品の組み合わせが支持されるかを学ぶ材料になる。購入額に占めるリピーターの割合も高く、初回購入だけに依存するサイトではない。
ただし、強みの中心は「新しい商品を売れる」という結果であり、事業者が契約上逃げられない仕組みではない。会社の経営計画は、旗艦事業では顧客との関係が2〜3か月で終わりやすいことを明示している。商品がヒットした事業者は、次の販売をAmazon、楽天市場、自社EC、量販店などに移せる。消費者も魅力的な新商品が別の場所に現れれば、同じサイトにとどまる理由は薄くなる。
値決め力には明るい材料がある。2024年に実行者側の手数料を見直し、購入者側にも安心システム利用料を導入した。それでも2025年に黒字転換し、2026年に案件単価がさらに上昇したことから、少なくとも一度の価格改定を市場に受け入れさせた。ただし、同じ値上げを今後何度も繰り返せるとは考えない。手数料率ではなく、実行者が持ち帰る利益で競争が起こるからだ。
資本効率はまだ優良企業の域に達していない。2022年から2024年には赤字が続き、2025年のROEも7.6%だった。黒字転換の再現性を見極めるには、広告宣伝費を増やさずに取扱高を増やせるか、既存事業者の再利用が増えているかを確かめたい。ブランドとデータには価値があるが、法規制に守られた独占や、解約が極めて少ない業務基盤に相当する証拠はない。堀は「普通」と判断する。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
新商品を発売前に購入してもらう市場には、MakuakeのほかCAMPFIRE、GREEN FUNDINGなどがある。2024年の主要な購入型クラウドファンディングを対象とした民間調査では、市場規模は約432億円、マクアケのシェアは約37%、CAMPFIREは約31%とされた。別の2025年上半期の集計でもマクアケが約35%で首位だった。ただし、調査ごとに対象サイトや寄付型との区分が異なるため、これを厳密な全国統一シェアとは扱わない。
マクアケは購入型の中でも、新しい製品の先行販売とテスト販売に強い。CAMPFIREは資金調達の案件数や地域の幅が広く、GREEN FUNDINGはガジェットや映像・家電との相性がよい。さらに競争相手を広く取れば、楽天市場、Amazon、自社EC、SNSを使った直接販売も含まれる。新商品を消費者へ知らせる費用が下がるほど、専用の応援購入サイトを使う意味が問われる。
需要には二つの反対方向の力がある。国内人口の減少は、最終的な購入者の数を押し下げる。一方、中小企業が在庫を大量に抱えず新製品を試したい需要、海外メーカーが日本市場の反応を確かめたい需要は残る。2026年には大型の家電・ガジェット案件が単価を押し上げた。中立では、国内の案件数が急増するとは考えず、掲載品質の改善と海外事業者の流入で数量を少し伸ばす。
大きな市場と自社が獲得できる市場は区別すべきだ。国内の物販EC全体は十数兆円規模だが、そのほとんどは既に販売実績のある商品の日常的な購入である。マクアケの現在の取扱高は、そのごく一部にすぎない。Makuake STOREが一般流通へ進出する余地はあるものの、既存大手と同じ土俵で戦えば競争はむしろ厳しくなる。10年後の勝ち筋はEC全体の拡大ではなく、商品デビューで得た最初の顧客とデータを次の商売にもつなげられるかにある。
生成AIも競争の形を変える。広告制作や運用は自動化され、商品企画の調査も安くなる。AIが消費者の希望を理解して商品を直接提示するようになれば、サイトを巡回して新商品を探す行動そのものが減る可能性がある。反対に、実際に購入された新商品の反応データは一定の価値を持つ。ただし、独自データがあることと、AIに置き換えられない収益があることは同じではない。
資本政策と M&A
財務の厚さは評価できるが、少数株主にとって現金の価値は額面どおりではない。2025年9月期の純現金は約60億円、自己資本は約54億円だった。一方、現金の一部はプロジェクト実行者への支払いに対応する預り金であり、自由に使える余剰資金ではない。さらにサイトの運営、広告費、商品未達時の対応に備える運転資金も必要だ。
2025年末に公表した中期経営計画は、2027年9月期の売上高52億円、営業利益7億円を目標とし、企画支援、商品デビュー、継続販売をつなぐ方針を掲げた。2026年の業績見通しは既にこの水準を上回っており、計画は更新作業中と説明されている。ただし、長期のROE、配当性向、DOE、総還元性向、自社株買いの金額について、確認できる数値目標の約束はない。会社は当面の内部留保を優先し、配当開始時期を未定としている。
親会社のサイバーエージェントは株式の50.87%を保有し、上位10株主の保有比率合計は約68.7%である。2025年9月期の有価証券報告書には、親会社への広告・プロモーション業務等の支払い約8.8億円も記載されている。支援を受けられる利点はあるが、関連当事者取引の価格が妥当か、利益と現金が一般株主にも公平に帰属するかは継続して確かめる必要がある。
これまでの資本配分は、大型買収で事業を急拡大するより、自社サービスと提携網の拡張が中心だった。Wadiz、Indiegogo、金融機関などとの提携は事業者の流入経路を増やす。一方、上場後の希薄化や赤字期を経て、株主還元の実績は乏しい。将来のTOBや親子上場解消は選択肢として存在するが、発表された事実ではなく、本質価値の上振れに先回りして算入しない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
マクアケには、一般のECサイトが簡単に再現できない役割がある。新商品を開発した事業者が最初の顧客を見つけ、その購入反応を確かめられることだ。大量の在庫を作る前に需要が分かる価値は、資金力の小さいメーカーにとって大きい。会社は長年の案件運営から商品ごとの反応データを集め、購入者のリピート利用も獲得してきた。2024年の手数料体系の変更を乗り越え、2025年には黒字転換したことが、価格決定力と事業の回復力を示している。
2026年には、案件数を無理に増やさず、大型の家電・ガジェット案件を成功させることで平均単価が上昇した。売れる商品の選別、海外の有力メーカーの誘致、購入後の継続販売が進めば、一つの案件から得られる価値はさらに増える。新商品を探す人が増え、販売実績を持つ事業者が再び出品する循環が成立すれば、集客費の負担も薄まる。
Makuake STOREには、初回の応援購入だけでは終わらない成長余地がある。商品の発売直後に集めた顧客を自社ECや外部モールでの継続販売へつなぐ役割を持てば、現在は短期間で終わる事業者との関係が長くなる。Makuakeインサイトも商品企画の初期段階から使われるようになれば、価格だけで比較される広告代理業務とは異なる価値を生む。営業利益率が改善した状態で取扱高が拡大すれば、会社の規模以上に利益が伸びる可能性がある。
加えて、現金が厚いため、業界の不況期にもサービス改善と海外事業者の獲得に投資できる。親会社の広告技術や取引関係を活用できることも、独立した小規模サイトにはない利点だ。新商品の発売から継続販売までを結ぶ仕組みが完成すれば、現在の事業を単なるクラウドファンディングサイトとして評価するのは過小評価となる。
慎重な見方
主力事業は、毎年新しい案件を獲得しなければ売上が消えるフロー型の仲介事業である。会社自身が事業者との関係の短さを課題として認めている。消費者の購入額に占めるリピーター比率が高くても、それだけで事業者の囲い込みが成功したことにはならない。成功した商品がAmazonや楽天市場、自社ECへ移れば、マクアケは最初の販売でしか手数料を得られない。
2021年をピークに応援購入総額が減った時期があり、2022年から2024年は営業赤字が続いた。2025年の売上回復にも、手数料の改定と広告配信代行の売上増加が含まれる。2026年の大型案件による単価上昇も、少数のヒット商品の影響を受けている。優れた商品が毎年同じ割合で見つかるとは限らず、現在の回復が安定した収益構造への転換を意味するかは未確定である。
競争は今後、掲載サイト同士に限られない。SNSで販売開始を告知することも、海外メーカーが日本の販売代理店を直接探すことも可能だ。生成AIは商品の紹介文、広告の制作・運用、市場調査を安くし、マクアケの周辺サービスの一部を不要にする。消費者がAIに商品を探してもらうようになれば、新商品を自分で閲覧するサイトへの来訪にも下押し圧力がかかる。独自の取引データは役立つが、他社が代替できない業務記録の正本ではない。
現金面の安心感も過信できない。預り金に対応する現金は会社の自由な財産ではなく、営業費用を支える運転資金も必要だ。さらに親会社が過半数を保有し、長期にわたり配当がない。広告費などの関連当事者取引もある。事業を伸ばすために現金を使い続け、株主還元が始まらなければ、現金の帳簿価額を少数株主の価値と同一視できない。成長の夢は大きいが、その実現に必要な条件は多い。
どちらに重みを置いたか
新商品デビューという市場の必要性と、ブランド・購買データの価値では前向きな見方が強い。しかし、継続契約の弱さ、掲載案件数の伸び悩み、周辺事業のAI代替、親会社支配下での現金の扱いを考えると、10年後の利益と株主への帰属を確信するには早い。確率は楽観側34%、中立25%、慎重側41%とした。AIの影響は既に該当事業の数量と長期成長率に織り込んでおり、慎重側を厚くした主因は案件収益のばらつきと株主還元の不確実性である。中立の10年後時価総額は現在を少し上回るが、10年分の資本コストを満たさない。総合では約47%の割高と判断する。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/09 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 1,072 円137 億円(+ 還元の換算額還元の合計 0 円0 億円)。 今の値に割り戻すと 508 円65 億円、今との差 −41.9%、 期待の年率 +2.1%(資本コスト 7.8%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 12% | 2,620 円334 億円 | 0 円0 億円 | +199.7% | +11.6% | 314 円40 億円 |
| やや楽観 | 22% | 1,597 円204 億円 | 0 円0 億円 | +82.8% | +6.2% | 351 円45 億円 |
| 中立 | 25% | 1,106 円141 億円 | 0 円0 億円 | +26.6% | +2.4% | 277 円35 億円 |
| やや悲観 | 24% | 401 円51 億円 | 0 円0 億円 | −54.1% | −7.5% | 96 円12 億円 |
| 悲観 | 17% | 196 円25 億円 | 0 円0 億円 | −77.6% | −13.9% | 33 円4 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,072 円137 億円 | 0 円0 億円 | +22.7% | +2.1% | 1,072 円137 億円 |
今の株価時価総額 874 円111 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 12% 商品デビューから継続販売までの循環が完成 利益 20 億円 · PER 15.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 2,620 円334 億円
2036年には、商品を初めて売る場としてのMakuakeに加え、発売後の販売を支えるSTOREも育っている。海外の家電メーカーや日本の中小製造業は、企画段階からマクアケの顧客データを使い、デビュー時に購入者を集め、その後は外部ECモールでも継続販売する。この一連の流れが定着し、優良な実行者が次の新商品でも戻ってくる。
月中の掲載案件数は増え、大型の高付加価値商品も増えるため、案件当たり取扱高が大きく伸びる。国内の購入者人口が減っても、海外事業者の日本進出と購入単価の上昇がそれを補う。CAMPFIREやGREEN FUNDINGとは用途ごとの住み分けが進み、商品デビューに強いブランドがさらに知られるようになる。
STOREは複数の外部モールとの連携で収益を拡大し、商品発売後の売上も受け取れる。継続関係の増加によって、案件ごとの獲得費用に依存する構造が和らぐ。ただし、広告運用と人手による企画支援はAI自動化で案件数が増えず、主な利益成長はプラットフォームと継続販売が担う。営業利益率は過去の最高水準を上回り、業界内での地位が利益にも表れる。
- 応援購入プラットフォーム・安心システム利用料:数量 18,000(年間のアクティブプロジェクト延べ件月。ある月に掲載・稼働している案件1件を1件月と数える)× 価格 0.01(アクティブプロジェクト1件月当たりの平均手数料・利用料収入(億円))→ 売上 113 億円・営業利益 50 億円。月平均1,500アクティブ件、案件当たり収入63万円。数量は現在の約1.40倍、単価は約2.18倍。大口案件増加と海外事業者の獲得を想定。
- 広告配信代行:数量 1,050(年間広告運用案件数(推定件数))× 価格 0.01(広告運用案件1件当たりの売上高(億円。媒体費を含む計上額の可能性がある))→ 売上 8 億円・営業利益 0 億円。AIエージェント代替で数量は現状以下。高度な運用案件のみ残り、単価は限定的に上昇。
- Makuake Incubation Studio:数量 20.0(年間の企画・開発支援契約数(推定件数))× 価格 0.05(契約1件当たりの売上高(億円))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。人手型支援の契約件数は増やさず、高難度の案件だけ単価改善。
- Makuake STORE・インサイト・その他販路支援:数量 2,300(継続販路・商品データ利用契約の年間換算件数(分析用の推定))× 価格 0.01(契約換算1件当たりの売上高(億円))→ 売上 28 億円・営業利益 2 億円。外部ECモールとの連携が広がり、商品発売後の継続販路支援が大きな独立事業に成長。現状からの飛躍が最大の不確実性。
倍率:資本コストk=7.75%、10年以降の名目成長g=2.0%、堀は普通で超過ROEの残存割合1/2。余剰現金95億円に対応する税後利息1.33億円を純利益20.44億円から除き、事業純利益19.11億円、事業自己資本90億円、事業ROE21.23%とする。RONIC=k+0.5×(ROE−k)=約14.49%。正当化PER=(1−g/RONIC)/(k−g)=約14.99倍。事業利益19.11億円×14.99倍に余剰現金95億円×戻り方0.5を加える。
確率:応援購入の平均案件額がさらに伸びるうえ、STOREが大きな独立収益源となり、顧客の継続利用も定着するという複数の成功が必要なため12%。広告代行と人手型支援にはAIによる数量減少をなお織り込み、AI関連の未確認売上を成長の根拠にしない。
やや楽観 22% 大型案件の好調が続き継続販売も育つ 利益 12 億円 · PER 14.7 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,597 円204 億円
Makuakeは商品デビューの有力な選択肢として定着する。掲載案件の数量は緩やかに増え、家電、生活用品、地域ブランドなどで大型案件が継続して生まれる。平均的な事業者の成功率も改善し、手数料負担に対する不満が抑えられるため、20%の基本手数料を保てる。
Makuake STOREは、応援購入後の商品の販売継続と外部ECへの接続で売上を増やす。かつて短期間で終わりやすかった実行者との関係が少しずつ延び、販売実績と顧客データを次の商品企画にも使ってもらえる。CAMPFIREやGREEN FUNDINGとの競争は続くが、高付加価値商品の販売実績で差別化する。
ただし、同社だけで小売の主導権を握るわけではない。広告運用はAIエージェントの普及で人手の請負が減り、商品企画支援も内製化や自動化が進む。周辺の人手型事業が縮む分は、本業の取扱高と継続販売で補う。広告宣伝費と採用費を抑えながら売上を伸ばせれば、今より高い営業利益を安定して稼ぐ。
- 応援購入プラットフォーム・安心システム利用料:数量 15,600(年間のアクティブプロジェクト延べ件月。ある月に掲載・稼働している案件1件を1件月と数える)× 価格 0.01(アクティブプロジェクト1件月当たりの平均手数料・利用料収入(億円))→ 売上 81 億円・営業利益 34 億円。月平均1,300アクティブ件。数量約1.21倍、案件当たり収入約1.80倍。大型案件の構成比上昇。
- 広告配信代行:数量 920(年間広告運用案件数(推定件数))× 価格 0.01(広告運用案件1件当たりの売上高(億円。媒体費を含む計上額の可能性がある))→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。AIエージェント代替で数量は現状の約0.84倍。選別的な高付加価値運用が残る。
- Makuake Incubation Studio:数量 18.0(年間の企画・開発支援契約数(推定件数))× 価格 0.04(契約1件当たりの売上高(億円))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。人手型の企画支援は案件数が微減し、単価上昇は物価の範囲内。
- Makuake STORE・インサイト・その他販路支援:数量 1,050(継続販路・商品データ利用契約の年間換算件数(分析用の推定))× 価格 0.01(契約換算1件当たりの売上高(億円))→ 売上 12 億円・営業利益 1 億円。継続販売の支援商品が増え、一定の規模に育つが、本業よりは小さい。
倍率:余剰現金90億円の税後利息1.26億円を除く事業純利益は10.82億円。事業自己資本61億円に対するROEは17.74%、資本コスト7.75%と堀の残存割合1/2からRONIC約12.74%。g_long=2.0%の正当化PERは14.66倍。事業純利益×14.66倍に、現金90億円×株主への戻り方0.5を加える。
確率:2025年の黒字回復と2026年の案件単価上昇が続けば到達可能だが、STOREの売上拡大と案件数回復の双方が必要。主力以外の収益がまだ小さいことから22%。
中立 25% 新商品市場の地位は守るが高成長は定着しない 利益 8 億円 · PER 14.4 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,106 円141 億円
新商品を世に出す際に消費者の反応を確かめる市場は、10年後も必要とされる。マクアケはその有力な仲介者として残る。案件数は大幅には伸びないが、家電や生活用品を中心に成功案件の単価が上がる。2026年に見られた大型案件への集中は一時的な流行だけではなく、会社が得意な商品の選別を進めた結果でもある。
ただし、販売の場を独占するほどの力はない。多くの事業者は新商品をMakuakeで発売した後、楽天市場やAmazon、自社の販売網へ移る。月中アクティブ案件は現在を少し上回る程度にとどまり、収益の伸びは主に平均取引額から生まれる。基本手数料のさらなる引き上げは競争で難しくなる。
STOREとインサイトは役立つサービスにはなるものの、販売後の関係を全面的に取り込むには至らない。広告配信代行ではAIエージェントが画像制作、広告文、配信調整を代替し、受託案件数は減る。人手型の企画支援も縮む。2025年から2026年のコスト改善は一部定着するが、営業利益が長期間にわたって急増する構造には変わらない。
- 応援購入プラットフォーム・安心システム利用料:数量 13,600(年間のアクティブプロジェクト延べ件月。ある月に掲載・稼働している案件1件を1件月と数える)× 価格 0.00(アクティブプロジェクト1件月当たりの平均手数料・利用料収入(億円))→ 売上 61 億円・営業利益 26 億円。月平均約1,133アクティブ件。数量1.054倍、単価1.56倍。CPI10年1.34倍を超える部分は大型案件と高単価商品への構成変化で説明し、追加の料率引上げは前提にしない。
- 広告配信代行:数量 770(年間広告運用案件数(推定件数))× 価格 0.01(広告運用案件1件当たりの売上高(億円。媒体費を含む計上額の可能性がある))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。AIエージェント代替により数量は1,100件から770件、0.70倍。価格は横ばいで物価上昇を転嫁できない。長期gは0%。
- Makuake Incubation Studio:数量 13.0(年間の企画・開発支援契約数(推定件数))× 価格 0.04(契約1件当たりの売上高(億円))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。AIエージェント代替により契約数は20件から13件、0.65倍。単価1.07倍で物価上昇を下回る。長期gは0%。
- Makuake STORE・インサイト・その他販路支援:数量 400(継続販路・商品データ利用契約の年間換算件数(分析用の推定))× 価格 0.01(契約換算1件当たりの売上高(億円))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。継続販路支援は一定の顧客を獲得するが、一般EC市場でのシェアはなお極めて小さい。
倍率:事業外の余剰現金85億円の税後利息約1.19億円を純利益8.05億円から除き、事業純利益6.86億円、事業自己資本45億円とする。事業ROE15.24%、k7.75%、超過収益の残存割合1/2でRONIC約11.50%。g_long2.0%から正当化PER=(1−0.02/RONIC)/(0.0775−0.02)=約14.37倍。事業の稼ぐ力約98.55億円に現金85億円×0.5を足して時価総額約141.05億円。現金を含む全社ROEは8.05÷130=約6.19%で、資本コストを下回る点を重視する。
確率:現在の案件数停滞と単価上昇の両方を反映する中心シナリオ。2036年の主力案件数量はほぼ横ばいで、物価と大型案件の構成比改善が売上を増やす。広告・企画支援の数量にはAIエージェント代替を明確に織り込んだ。中立の確率は25%。
やや悲観 24% 案件の減少を単価上昇で補えなくなる 利益 2 億円 · PER 12.9 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 401 円51 億円
新商品を発売前に売る市場は残るが、マクアケの存在感は少しずつ低下する。成功した事業者は自社ECや大手モールへ直接顧客を誘導し、新しい事業者もSNSとAIを活用して宣伝費を抑える。商品単価は物価の上昇を反映して上がるものの、掲載される商品の数と購入頻度が減り、主力サービスの売上は現在を下回る。
基本手数料を引き上げる余地はなくなり、実行者への集客支援に費用がかかる。広告配信代行は、運用業務の自動化と媒体側の広告最適化で請負案件が減る。企画支援もAIによる内製化が進み、人手の必要な専門案件だけが残る。STOREは大手ECとの競争に阻まれ、小規模な販路支援にとどまる。
会社は人員と固定費を削減し、営業黒字は守る。しかし、今のブランド力が生む利益は薄まり、再投資しても大きな超過収益を得にくくなる。預り金を除いた現金は残るが、株主へ分配する制度が整わないため、現金の価値を全額享受できるとは見ない。
- 応援購入プラットフォーム・安心システム利用料:数量 10,200(年間のアクティブプロジェクト延べ件月。ある月に掲載・稼働している案件1件を1件月と数える)× 価格 0.00(アクティブプロジェクト1件月当たりの平均手数料・利用料収入(億円))→ 売上 37 億円・営業利益 16 億円。月平均850アクティブ件。数量0.79倍、単価1.25倍。物価上昇を十分に転嫁できず、取扱高に占める地位が後退。
- 広告配信代行:数量 580(年間広告運用案件数(推定件数))× 価格 0.01(広告運用案件1件当たりの売上高(億円。媒体費を含む計上額の可能性がある))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。広告制作・運用の自動化が進み、数量0.53倍。手数料にも下げ圧力。
- Makuake Incubation Studio:数量 9.0(年間の企画・開発支援契約数(推定件数))× 価格 0.04(契約1件当たりの売上高(億円))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。人手の企画支援は契約数が大きく減り、採算ぎりぎり。
- Makuake STORE・インサイト・その他販路支援:数量 140(継続販路・商品データ利用契約の年間換算件数(分析用の推定))× 価格 0.01(契約換算1件当たりの売上高(億円))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。一般ECでの販路獲得が進まず、固定費が収益を上回る。
倍率:余剰現金60億円の税後利息0.84億円を除いた事業純利益は1.64億円。事業自己資本34億円に対するROEは約4.82%で資本コスト7.75%に届かない。新規投資に超過利益を認めず、PERの上限1/k=12.90倍を適用。事業純利益1.64億円×12.90倍に余剰現金60億円×戻り方0.5を加え、約51.16億円とする。
確率:掲載案件の不足、消費者の節約、競合販路への流出が同時に進む可能性を重視して24%。広告と人手型企画支援のAI代替は既に数量減に反映しており、その同じ理由で確率を二重に引き下げてはいない。
悲観 17% 新商品デビューの主導権を失い、縮小均衡へ 利益 0 億円 · PBR 0.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 196 円25 億円
2036年には、新商品の発表を専用の応援購入サイトで行う必要が大きく薄れている。メーカーはSNSで需要を見極め、AIを使って広告を制作し、既存のECサイトで予約を受ける。CAMPFIREやGREEN FUNDINGとの競争だけでなく、一般の販売経路への中抜きが進み、マクアケの掲載案件は現在の半分ほどになる。案件当たり収入も十分に上がらず、主力の規模は大きく縮む。
広告配信代行は、媒体が提供する自動運用機能とAIエージェントに置き換わる。企業の企画支援も、社内で使える調査・制作ツールの普及により契約数が減る。STOREは一般ECとの競争で独立した収益基盤を築けない。保有する購買データは残るが、そのデータを継続して高い価格で販売できる仕組みがない。
会社は従業員、広告費、拠点を大幅に減らして営業収支の均衡を目指す。それでも縮小の途中では損失やソフトウェアの減損が生じ、自己資本は減少する。親会社による完全子会社化が起きる可能性は否定しないが、価格と実施が未確定のため上乗せ価値には数えない。株式の価値は将来利益ではなく、損失と整理費用を差し引いてなお売却・回収できる資産を中心に残る。
- 応援購入プラットフォーム・安心システム利用料:数量 6,500(年間のアクティブプロジェクト延べ件月。ある月に掲載・稼働している案件1件を1件月と数える)× 価格 0.00(アクティブプロジェクト1件月当たりの平均手数料・利用料収入(億円))→ 売上 17 億円・営業利益 8 億円。月平均約542アクティブ件。数量0.50倍、単価0.90倍。手数料競争と商品の直接販売で売上が半分以下へ。
- 広告配信代行:数量 350(年間広告運用案件数(推定件数))× 価格 0.00(広告運用案件1件当たりの売上高(億円。媒体費を含む計上額の可能性がある))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。AIエージェント代替で広告運用案件は0.32倍となり、既存サービスの採算が悪化。
- Makuake Incubation Studio:数量 6.0(年間の企画・開発支援契約数(推定件数))× 価格 0.03(契約1件当たりの売上高(億円))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。企画・調査が顧客内で自動化され、契約件数も単価も低下。
- Makuake STORE・インサイト・その他販路支援:数量 50.0(継続販路・商品データ利用契約の年間換算件数(分析用の推定))× 価格 0.01(契約換算1件当たりの売上高(億円))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。継続販売網を確立できず、縮小・撤退費用が残る。
倍率:10年後の利益はほぼゼロであり、PERによる継続事業の価値を高く評価しない。悲観の床25億円を今の自己資本約53.8億円で割った床のPBR約0.465倍を使う。2036年の自己資本38億円にこの倍率を掛けていない。悲観の時価総額25億円は、営業による稼ぐ力約0億円と税後回収可能資産25億円の大きい方であり、過去の株価倍率は根拠にしていない。
確率:消費者の発見経路がSNS・AI・大手ECへ移り、主要な事業者が直接販売へ転じる構造的敗北の筋書き。サイトとブランドは残るが利益の質が失われる。発生確率17%。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
応援購入プラットフォーム・安心システム利用料
新商品の応援購入が成立した際に実行者から受け取る手数料と、購入者から受け取る安心システム利用料。正式開示のMakuake売上に購入者側利用料を組み合わせた分析上の区分。
| 数量年間のアクティブプロジェクト延べ件月。ある月に掲載・稼働している案件1件を1件月と数える | 価格アクティブプロジェクト1件月当たりの平均手数料・利用料収入(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 12,900 | 0.00 | 37 | 17 |
| 10 年後 中立 | 13,600 | 0.00 | 61 | 26 |
取り方:2025年9月期の有報にあるMakuake売上約33.016億円に、応援購入総額172.2165億円と安心システム利用料約4.22億円を対応させ、手数料・利用料収入約37.236億円と推定した。数量は同年度第4四半期の月中アクティブ約1,075件を12倍した12,900件月という年間換算の近似であり、年間掲載開始5,423件とは異なる。1件月当たり取扱高は約133.5万円、手数料等は約28.9万円となる。実行者手数料20%と購入者利用料2.2%を参考にした。営業利益17.0億円は報告セグメント利益ではなく、共通人件費・管理費の配賦前の推定貢献利益である。各事業の推定利益から共通費13.0億円を差し引くと全社営業利益約4.5億円となる。
広告配信代行
Makuakeの実行者から広告の制作・配信・運用を請け負うサービス。AIエージェントが作業と媒体最適化を代替しやすい。
| 数量年間広告運用案件数(推定件数) | 価格広告運用案件1件当たりの売上高(億円。媒体費を含む計上額の可能性がある) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 1,100 | 0.01 | 7 | 0 |
| 10 年後 中立 | 770 | 0.01 | 5 | 0 |
取り方:2025年9月期の広告配信代行売上約7.3億円を採用。案件数と案件当たり金額の会社開示は確認できないため、年間掲載開始5,423件の約20%が広告運用を発注するという仮定から約1,100件を推定し、平均約66万円とした。媒体費の総額計上と手数料収入の違いが不明であるため、売上額そのものを高い利益率に結びつけない。0.4億円は共通費配賦前の仮の貢献利益であり開示値ではない。AIエージェント代替の分類は広告制作・運用型で、中立の10年後数量は現在の0.70倍とする。
Makuake Incubation Studio
企業の技術や商品構想を事業化するための企画、商品開発、ブランドづくりの支援。人の専門工数による提供が中心。
| 数量年間の企画・開発支援契約数(推定件数) | 価格契約1件当たりの売上高(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 20.0 | 0.04 | 1 | 0 |
| 10 年後 中立 | 13.0 | 0.04 | 1 | 0 |
取り方:2025年9月期有報のMakuake Incubation Studio売上約0.785億円を正とする。契約数は非開示のため、年間20契約、1契約約393万円という分析用の仮定に分けた。契約数の実績と主張するものではない。営業利益は共通費配賦前の推定。AIエージェント代替の分類は人月・工数型で、中立数量は10年間で約0.65倍、価格は物価上昇以内とする。
Makuake STORE・インサイト・その他販路支援
応援購入終了後の商品の継続販売、外部ECモールへの出店支援、購買データを使った商品企画支援。現時点では小規模で、将来の主力化は未確定。
| 数量継続販路・商品データ利用契約の年間換算件数(分析用の推定) | 価格契約換算1件当たりの売上高(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 100 | 0.00 | 0 | 0 |
| 10 年後 中立 | 400 | 0.01 | 4 | 0 |
取り方:2025年9月期の会社売上45.78億円から、応援購入手数料・安心利用料37.236億円、広告配信代行7.3億円、Incubation Studio0.785億円を控除した残差約0.459億円を用いた。STORE・インサイトを会社がこの金額で個別開示したという意味ではなく、その他項目の概算である。年間100契約、平均45.9万円は明示的な推定。2026年の経営者インタビューでもSTORE・インサイトの合計は売上の5%未満と説明されており、今の時点で大きな収益源としない。
リスクと懸念
案件数の減少と大型案件への依存
2026年は案件当たり金額が上がる一方、月中アクティブプロジェクトの数量は大幅に増えていない。少数の大型家電・ガジェット案件が売上を牽引するほど、ヒット商品を獲得できなかった四半期の落ち込みは大きくなる。取扱高の伸びを案件数の伸びと区別し、成功案件以外の平均販売額も確かめる必要がある。
AIエージェント代替
2025年9月期に約7.3億円の売上を生んだ広告配信代行は、広告文・画像制作、配信設定、効果測定をAIエージェントが代替しやすい。人の工数で支援するIncubation Studioも同様である。中立の10年後数量は広告運用0.70倍、人手型支援0.65倍、長期成長率はそれぞれ0%としている。中核サイトもAIによる商品発見の自動化で来訪が減る可能性があるが、同じ理由を資本コストへ重複計上しない。
手数料の競争と実行者の離反
事業者は応援購入の手数料と広告費を払った後に利益が残るかで販路を選ぶ。2024年の価格改定が成功したことは強みだが、値上げを無制限に続けられる証拠ではない。販売実績のあるメーカーが自社ECや大手モールで予約販売を始めれば、Makuakeでなければ売れない商品の割合は減る。
親会社支配と関連当事者取引
サイバーエージェントは議決権の過半数を持ち、2025年9月期には広告・プロモーション関連で約8.8億円の取引が記載された。グループの広告技術は強みだが、委託価格と条件が少数株主にも妥当かを確かめる必要がある。長期の無配と現金留保も、会社の利益が株主の手元に戻るとは限らない理由になる。
預り金と現金価値の見誤り
帳簿上の現金約60億円の全額を余剰現金として評価してはならない。事業者への支払いに対応する預り金約13億円は実質的に他人の資金であり、広告費・人件費・トラブル対応のための運転資金も要る。赤字期には現金が減り、清算時には未履行案件への対応や人員整理の費用が発生しうる。
商品未達、品質問題、消費者保護
完成前の商品を販売する性質上、製造遅延、品質不良、説明内容との相違が起きやすい。実行者の責任であっても、購入者からの苦情や返金対応はプラットフォームの信頼を損なう。安全制度の運用費用が増えれば、購入者から徴収する安心システム利用料の採算も悪化する。景品表示法や特定商取引法等への対応も継続して必要となる。
STORE・インサイトの投資回収
会社は商品企画から継続販売までの支援を将来の柱にしようとしているが、STOREとインサイトは現時点では小規模である。一般ECにはAmazonや楽天市場などの大手が存在し、調査機能には生成AIという競合も現れた。顧客獲得費を伴う拡大が先行すれば、売上が増えても資本コストを超える増分利益を得られない。
今後の分かれ目
- 月中アクティブプロジェクト数が1,200件を継続して超え、案件当たり購入額も高水準を維持したら
- 一時的な大型案件の効果だけでなく数量の拡大も確認できる。主力プラットフォームの中立数量を引き上げ、やや楽観の実現可能性を見直す。
- 応援購入総額が2021年の約215億円を持続的に上回り、広告費率が上昇しなかったら
- 取扱高の過去の山を超えたうえで獲得効率も改善したことになる。ネットワーク効果が収益に表れた証拠として、主力事業の利益率を引き上げる。
- STORE・インサイトの売上が全社の15%を超え、単独採算でも黒字を示したら
- 短期の案件取引から継続関係へ移る戦略が数字で確認できる。新事業の利益と再投資収益率を見直し、長期価値の上振れを検討する。
- 広告配信代行の売上が落ちても主力手数料収入と全社利益が増え続けたら
- AIエージェントによる人手型業務の代替を、本業の強さが補えていると判断する。広告事業の数量減少前提は維持しながら、全社の下振れ確率を下げられる。
- 月中アクティブ案件数が900件を下回り、案件単価も前年割れになったら
- 数量と価格の両面が悪化しているため、手数料収入と営業利益の中立前提を引き下げる。やや悲観から悲観への移行を警戒する。
- 親会社との取引条件が詳しく開示され、配当・自社株買いの数値目標と実行実績が示されたら
- 余剰現金の株主への戻り方を0.5から再評価する。事業の数量・利益を変更しなくても、株主に帰属する価値は増える。
- 大型の買収、親会社によるTOB、株式交換などが正式発表されたら
- 通常の独立企業としての10年価値評価を停止し、実際の買付条件、少数株主の取り分、上場廃止の有無を優先して判断する。観測記事だけでは確率を変更しない。
見ておくもの
- 月中アクティブプロジェクト数と新規掲載開始件数の四半期推移
- 月次プロジェクト単価と大型案件を除いた平均購入額
- 応援購入総額の2021年ピーク約215億円に対する回復率
- リピート実行者による掲載割合とリピーター購入金額比率
- 売上高に対する広告配信代行の比率および広告費・販促費率
- Makuake STORE・インサイトの売上額、契約数、営業採算の個別開示
- CAMPFIRE・GREEN FUNDINGとの購入型市場シェア推移
- 親会社サイバーエージェントとの広告・プロモーション取引金額
- 預り金に対応する現金を除いた自由資金と営業キャッシュフロー
- 配当・自社株買いの開始、還元方針の数値化、自己株式・新株発行数
- 2026年10月27日公表予定の2026年9月期通期決算と改定後の中期経営計画
倍率と資本コストの決め方
現在の株価967円、時価総額約123億円から10年後の利益や倍率を逆算していない。まず掲載案件の延べ件月、案件当たり手数料、広告運用案件、企画支援契約、継続販路契約をそれぞれ数量と価格に分け、AIによる人手型業務の縮小と物価3%を反映した。営業費用は共通費として別に差し引き、金利2%の世界での余剰現金の税後利息も利益に含めた。倍率は資本コスト7.75%、長期名目成長2.0%、事業ROE、堀の残存割合から正当化した。中立の事業PERは約14.37倍であり、過去や同業の市場PERを参照して値を決めていない。現金は預り金と運転資金を除いて評価し、親会社支配と無配の実績により株主への戻り方を0.5とした。中立の10年後時価総額は約141億円、期待10年後時価総額は約137億円、資本コストで割り引いた価値は約65億円である。2026年の最新通期決算は基準日時点では未発表のため、財務の起点は添付の2025年9月期実績を使用した。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。国債3.0%と株式リスクプレミアム4.5%を足した基本7.5%に、事業の質による調整+0.25%を加えた。親会社支配や新規事業の失敗可能性は数量・利益率・確率で扱い、資本コストには重複して加えない。