結論
ホットリンクは、国内のSNSマーケティング支援と、米国子会社によるソーシャルメディアデータの販売を二本柱とする企業である。筆者の結論は「割高」だ。データの収集と加工には一定の強みがある。しかし、それを長期にわたり高い利益率で売り続けられるかという問いには、まだ十分な答えがない。
2025年12月期は売上高36.5億円、営業損失18.3億円、純損失17.9億円となった。赤字の大部分には米国Effyisののれんとソフトウェアの減損が含まれるため、この損失が毎年続くと考えるのは誤りである。それでも、減損の背景にあった既存データ契約の終了や顧客の契約見直しは、一時的な会計処理ではない。2024年にも米国事業で減損が発生しており、経営者が過去に見込んだ収益力と現実とのずれは無視できない。
国内事業には回復の兆しがある。2025年のSNS広告・運用コンサルティングは、終了した旧分析ツールを除くと増収となった。2026年上半期も国内SNS支援は増収で、DaaSも小幅ながら前年を上回った。会社は2026年通期に黒字転換を計画している。ただし、上半期のIFRS営業損益と最終損益はなお赤字であり、事業構造の転換が完了したとは言えない。
最大の変化はAIエージェントである。顧客企業は広告制作、投稿案作成、効果分析、運用改善を自動化できるようになる。ホットリンク自身もAIで生産性を改善できるが、顧客が外部業者に支払う必要性も同時に低下する。米国のデータ販売はAI向け需要を取り込める可能性がある一方、既存のソーシャルリスニング向け契約はすでに縮小している。
純現金は厚く、株主還元も始まった。しかし、保有する金融商品には暗号資産関連の投資が含まれ、すべてを現金と同じ安全性で評価することはできない。10年後の中立的な稼ぐ力は現在の時価総額を支えるほど強くなく、資産価値を加えても十分な安全域は見当たらない。事業再建が成功する余地はあるが、その成功を当然のものとして値付けすべき会社ではない。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主が最初に考えるべきことは、10年後にも顧客がこの会社へお金を払い続ける理由である。SNSの情報収集とマーケティングの実務には需要が残るだろう。しかし、その需要をホットリンクが独占的に取り込めるわけではない。現在の顧客関係や運用ノウハウだけで、競合とAIによる代替から将来利益を守り切れるとは言い難い。
DaaSには評価できる要素がある。自社でデータを収集、整理し、契約条件を管理して提供する能力は、単に分析レポートを作成する仕事よりも代替されにくい。顧客が必要とするデータへの合法的で安定したアクセスを確保できれば、長く使われる基盤になりうる。ただし、会社自身が情報源を所有しているわけではないため、データ提供元との契約と利用条件に収益力が左右される。
オーナー利益の観点では、純利益の額だけでなく、次の顧客を獲得するための人件費、データ取得費、開発費、契約維持費を見なければならない。米国事業で繰り返された減損は、過去の投資から期待した将来の利益が実現しなかったことを意味する。2026年上半期には無形資産への投資支出も続いており、会計上の黒字転換がそのまま自由に分配できる現金の増加を意味するわけではない。
純現金と金融商品を合わせた資産には価値がある。ただし、資産を持つことと、それを株主にとって有利に使うことは別の問題である。投資先や新事業に資本を再投入するなら、その増分の収益率が資本コストを超える証拠を求めたい。利益率の低い事業に資本を残し続けるなら、配当と自社株買いの方が合理的になる。
筆者が高く評価する条件は明確だ。DaaSで解約率が低下し、AI向けデータの継続売上が拡大し、国内SNS支援が少ない人員で安定した利益を生むようになることだ。現在はその変化の途上にあり、実績で証明された強い堀ではない。安全域を重視する長期株主にとって、将来の大幅な収益改善を前提に高い価値を認める段階ではない。
何で稼ぐ会社か
ホットリンクの収益は、顧客のSNS活動を支援する国内事業と、SNS上の情報を取得して企業に販売する米国事業から生まれる。会計上はソーシャルメディアマーケティング支援事業にまとめられるが、二つの商売の経済性は異なる。さらに、Nonagon Capitalを通じてWeb3関連投資と事業開発を行っている。
国内のSNSマーケティング支援事業は、企業のX、Instagram、TikTokなどの活動について、戦略立案、広告配信、投稿運用、インフルエンサー施策、分析を請け負う。コンサルティングと継続的な運用代行は比較的安定した収入を生み、広告やキャンペーンは案件に応じて増減する。2025年末の顧客数は128社で、同年の売上高23.26億円を単純に割ると、顧客1社当たり年間約1,817万円となる。ただし、広告配信規模や取引期間の異なる顧客が混在しており、これは契約単価そのものではない。
米国のDaaS事業は、EffyisがSocialgistの名称で展開するデータ販売事業である。SNS運営企業との契約に基づくデータ取得と、自社の収集システムによる公開データの取得を組み合わせる。収集した情報を整理、加工し、Sprinklrなどの分析サービス企業やデータ活用企業へ提供する。2025年末の顧客数は47社、売上高は13.16億円であり、単純平均の顧客当たり年間売上は約2,800万円となる。データを継続的に提供できれば収益性は高いが、情報源へのアクセス権と販売先の契約が維持されることが前提である。
第三のWeb3関連事業は、スタートアップへの投資、ブロックチェーンの運用支援、DeFiによる資金運用、新規サービス開発を行う。2025年の外部売上は約0.10億円と小さく、事業収入そのものより金融商品や投資先の価値変動が連結利益に与える影響の方が大きい。2026年にはAIエージェントがデータ利用料を支払うNonagon Linkのベータ版も公開した。しかし、発表時点の業績影響は軽微であり、長期価値を支える確立済みの収益源とはみなせない。
これらを合わせると、会社の本質は広告代理店とデータ卸売業、そして一部の投資事業が同居する企業である。単一のソフトウェアを大量販売する会社とは違い、各事業で利益の安定性、必要な投資、顧客との交渉力が大きく異なる。この違いを見ずに連結売上高だけで成長を判断することはできない。
優良さと弱いところ
国内SNS支援の強みは、長年の分析ノウハウと企業の運用現場を理解していることである。ULSSASという独自の戦略体系を持ち、X広告の認定パートナーにも選ばれている。顧客の課題発見から施策の実行まで任せられる点には価値がある。とはいえ、顧客が他社へ移るために年単位のシステム移行を要するわけではなく、値上げを継続的に受け入れてもらえるほどの乗り換え障壁は確認できない。
DaaSは国内事業より参入障壁が高い。複数の情報源からデータを取得し、利用条件を管理し、大量のデータを継続して供給するには、技術と取引関係が必要になる。データの蓄積も新規参入者に対する優位を生む。ただし、データの生成者や配信プラットフォームをホットリンク自身が支配しているわけではない。利用許諾の終了や顧客側のAI化による契約変更が実際に起きているため、独自データの存在だけで強い堀があるとは判断できない。
過去の資本効率は不安定である。2019年、2024年、2025年には大きな損失を計上した。2022年の高収益は目立つが、継続的な事業利益の証拠としてそのまま将来へ延ばすことはできない。過去10年のROE中央値は約1.5%で、一般的な株主資本コストを下回る。資本を再投資しても、常に資本コスト以上の収益を得られた会社ではない。
評価できる変化もある。2025年には配当を始め、自社株買いも実行した。2026年には事業別の収益目標と本社費用が示され、経営資源の配分を検証しやすくなった。一方、2025年までの投資と買収に関連する減損は、以前の資本配分が十分な成果を生まなかった証拠でもある。
筆者は、国内SNS支援の堀を弱いもの、DaaSの堀を限定的なものと見る。DaaSには独自データの蓄積が認められるが、年5%未満の解約率、法規制による乗り換え障壁、長年続く値上げ実績など、強い独占的地位を裏づける証拠は不足している。今後、AI向けデータの継続契約と高い更新率が示されれば、この評価は変わりうる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
日本のSNSマーケティング市場は拡大している。会社の成長可能性資料が引用するサイバー・バズとデジタルインファクトの調査では、2025年の市場規模は約1兆3,732億円、2029年は約2兆1,313億円と予測されている。ホットリンクの2025年国内SNS支援売上23.26億円は、この広い市場に対して約0.17%である。ただし、市場統計には広告媒体への支出なども含まれ、サービス提供会社の純粋な手数料市場とは一致しない。したがって、この比率は参考値であり、厳密な代理店シェアではない。
国内の競争相手には電通グループ、博報堂系の広告会社、サイバーエージェント、セプテーニ、オプト、サイバー・バズなどがある。大手総合代理店は広告主との関係と大量の運用データを持つ。専門会社はSNSの知見や企画力で競う。各社のSNS支援だけを同じ範囲で切り出した市場シェアは十分に開示されておらず、競合の順位やシェアを断定することはできない。
市場が伸びても、外部の運用会社が同じように伸びるとは限らない。生成AIとAIエージェントは、広告文、画像、分析、運用調整の作業単価を下げる。SNS広告費の増加はMetaやTikTokなどの媒体側の売上拡大にもつながるが、運用代行手数料の増加を保証しない。今後10年で媒体への広告支出は増えながら、外部代理店が担う仕事量は減る可能性がある。
世界のソーシャルメディア分析市場については、Grand View Researchが2025年に約130億ドルと推計している。ただし、これは分析ソフトウェアや関連サービスを含む広い市場である。ホットリンクのDaaSが直接売るデータアクセス権の市場とは範囲が違い、この数字から正確なシェアを算出することはできない。競争環境にはSprinklr、Brandwatch、Talkwalker、Meltwater、各種データ収集・販売会社が存在する。ホットリンクにとっては、これらが競合であると同時に販売先や提携先になる場合もある。
DaaSの市場環境を決めるのは、AIの普及だけではない。SNS運営企業がAPIの利用条件を変更し、データの取得を制限すれば、供給側のコストが上がる。逆に、AI向けの整備済みデータを継続販売できれば、単なる情報収集の代行から価値の高いデータ供給へ移れる。2025年の米国DaaS売上減少は32.6%であり、市場拡大だけを根拠に急成長を見込める状況ではない。
Web3とAIエージェント決済には長期的な市場機会があるが、ホットリンクが主要な決済基盤となる確証はない。ブロックチェーン、ステーブルコイン、データ決済の市場は制度変更が大きく、10年先の勝者を決め打ちできない。会社自身の競争力が確立する前に、業界全体の成長率をそのまま企業価値へ転用すべきではない。
資本政策と M&A
資本配分の歴史で最も重く見るべきものは、米国Effyisへの投資とその後の減損である。同社は海外DaaS事業の中核となったが、2024年には一部データ提供元との契約終了などを背景にのれんを約6.1億円減損した。2025年にはさらに、のれん約8.9億円、ソフトウェア資産約6.8億円の減損を計上した。二期で合計約21.8億円の減損が発生しており、以前に投じた資本に対する将来収益の期待が大きく引き下げられた。
2022年にはNOVARCAの前身であるトレンドExpressを売却し、2023年にはwevnalからSNS広告事業などを取得した。近年はWeb3投資を拡大し、2025年末には金融商品への投資残高が約15億円となった。この中にはDeFi運用中のステーブルコイン約6億円が含まれる。金融投資から利益を得る可能性はあるが、暗号資産関連の運用を本業の安定収益と同じ品質で評価することはできない。
株主還元は2025年から大きく変わった。会社は年間約1億円の配当を実施し、2026年には増配を予定している。今後の配当方針はDOE、すなわち自己資本に対する配当総額の割合を2%前後とするものだ。2025年11月から2026年1月にかけては約1億円、37万8,300株の自社株買いも実施した。これらは余剰資本を株主へ戻す具体的な行動として評価できる。
2026年3月の事業計画では、同年の連結売上高40.70億円、営業利益1.04億円、当期利益0.89億円を示した。内訳は国内SNS支援27.13億円、DaaS13.52億円、Web3約0.04億円である。事業別の営業利益は本社費用控除前でSNS約3.97億円、DaaS約4.16億円を見込む一方、本社費用約7.29億円が残る。2027年以降の複数年度について、売上、営業利益、ROEを組み合わせた拘束力のある数値目標は確認できず、数字の約束なしと判断する。
大株主上位10名の持株比率は2025年末で約39%であり、少数株主を完全に排除できるほどの支配構造ではない。配当と自社株買いも始まっているため、余剰現金が株主に戻る割合を極端に低くする理由はない。ただし、還元実績はまだ短く、金融投資への再配分も続くため、全額が株主の利益になるとまでは評価しない。M&Aや買収される可能性は残るが、発表済みのTOBによる上場廃止予定は確認されていない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
この会社には、大手広告代理店とは異なる価値を生む可能性がある。SNS上の行動データを集め、分析し、広告運用に結びつける仕組みを長く構築してきた。国内ではコンサルティングを起点に広告、運用、クリエイター施策を提供できる。AIによって社内作業を減らせば、顧客にとっての成果を保ちながら採算を大きく改善する余地がある。
米国DaaSの事業構造も変わりつつある。これまではソーシャルリスニングのSaaS企業が主な販売先だったが、今後はAI開発企業やデジタルリスク管理企業に、整備済みデータを提供することを目指している。Socialgistのデータ収集能力とSnowflakeなどとの流通提携は、他社が短期間では構築しにくい資産である。データ需要そのものはAIによって消えるのではなく、むしろ高品質な情報を機械が扱える形にする需要が増える可能性がある。
財務面でも、2025年の大幅赤字をそのまま将来へ延ばす必要はない。減損は過去の資産価値の見直しであり、その大部分は現金流出を伴わない。2026年の事業計画では国内SNS支援とDaaSの両方が本社費用控除前の利益を確保する見通しである。持株比率の高い特定株主が過半数を支配する構造でもなく、配当と自社株買いが始まったことは少数株主にとって前向きな変化である。
さらにNonagon LinkやAIエージェント決済の取り組みが商用化されれば、既存事業のデータを別の方法で収益化する選択肢が増える。現時点の売上は確認できないため、その成功を基準の収益には含められない。それでも、経営がAIによる代替を受け身で待つだけでなく、新たな取引基盤を作ろうとしていることは評価できる。将来の利益率改善と資本還元が重なれば、現在より高い企業価値に到達する可能性は残る。
慎重な見方
最大の問題は、ホットリンクが販売しているサービスの多くで、AIエージェントが顧客に代わって作業できるようになることである。SNS投稿の企画、広告文の制作、データ分析、レポート作成、運用調整は、これまで外部企業に依頼されてきた業務だ。技術の進歩によって必要な工数が減れば、顧客企業は委託単価を引き下げたり、業務を内製化したりできる。市場全体の広告支出が増加しても、代理店に残る利益は減りうる。
米国DaaSにも同様の変化が起きている。データを大量に集める技術には価値があるが、販売先の分析SaaS企業がAI化によって収益構造を変えれば、既存契約は見直される。実際に2024年には一部のデータ提供契約が終了し、2025年にも取引先の契約見直しが発生した。顧客Sprinklr向けの売上は2025年の連結売上の約10.1%を占める。大口顧客と情報源の両側に依存する事業であり、価格決定権が強いとは言えない。
2024年と2025年に繰り返された減損は、経営者が将来収益を高く見積もった結果でもある。将来のAI関連需要について語るだけでは、過去の資本配分の失敗は帳消しにならない。DaaSが新市場に移るには開発費と営業費が必要で、そこに投じる資金が高い利益を生む保証もない。
Web3関連事業も、金融商品への投資残高が小さくない割に、現時点の外部サービス売上は極めて小さい。ステーブルコインを用いたDeFi運用は、価格安定を意図した仕組みであっても、預託先、スマートコントラクト、流動性、規制変更のリスクを残す。純現金が厚い会社でも、不採算事業への支出や金融投資によって資産は減少しうる。
会社が将来の生産性改善を十分に実現できない場合、国内SNS支援と米国DaaSの売上が減った後も本社費用とデータ取得費が残る。現在の時価総額が、単に保有現金と確立済みの事業利益だけで正当化されているわけではない以上、再建が長引くこと自体が株主にとって大きな機会損失となる。
どちらに重みを置いたか
現時点では慎重な見方が優勢である。国内SNS支援の増収や米国DaaSの新商品には評価できる変化があるが、会社全体で資本コストを上回る利益を安定して生む証拠は不足している。とりわけ、米国事業の契約縮小と二度の減損は重い。確率はやや悲観と悲観の合計を42%とし、楽観側27%より厚くした。ただし、AI代替による標準的な数量減少は中立の売上にも反映しており、同じ理由を確率と資本コストで何重にも引いていない。下側への傾斜は、データ取得契約の不安定さと金融投資を伴う資本配分の不確実性を主に反映する。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/12 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 183 円28 億円(+ 還元の換算額還元の合計 39 円6 億円)。 今の値に割り戻すと 109 円17 億円、今との差 −40.4%、 期待の年率 +2.2%(資本コスト 8.3%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 369 円57 億円 | 72 円11 億円 | +141.0% | +10.3% | 44 円7 億円 |
| やや楽観 | 17% | 234 円36 億円 | 59 円9 億円 | +59.9% | +5.4% | 50 円8 億円 |
| 中立 | 31% | 155 円24 億円 | 52 円8 億円 | +13.1% | +1.4% | 64 円10 億円 |
| やや悲観 | 27% | 140 円21 億円 | 20 円3 億円 | −12.9% | −1.5% | 43 円7 億円 |
| 悲観 | 15% | 137 円21 億円 | 3 円1 億円 | −23.2% | −2.6% | 21 円3 億円 |
| 加重平均 | 100% | 183 円28 億円 | 39 円6 億円 | +21.4% | +2.2% | 222 円34 億円 |
今の株価時価総額 183 円28 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 10% データ販売の転換と業務効率化がともに成功 利益 4 億円 · PER 12.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 369 円57 億円
国内SNS支援ではAIによる作業効率化が進むが、顧客は戦略判断と実行責任をホットリンクに任せ続ける。広告制作や分析の工数が減少しても、大手顧客との関係を維持し、案件の大型化によって平均売上を高める。X広告認定パートナーとしての経験とULSSASによる運用ノウハウが生き、価格競争よりも成果で選ばれる会社に変わる。
米国DaaSでは、既存のSaaS向け契約を守りながら、取得可能なデータの種類と加工サービスを広げる。Snowflakeなどの販売経路を活用し、独自のデータ収集能力が安定収益につながる。顧客数を大きく増やすのではなく、既存顧客の契約範囲とデータ利用量が増えることで採算が改善する。
経営陣は過去の減損から学び、投資先を厳しく選別する。Nonagon Linkなどの新領域は将来の選択肢として育成するが、金額の開示されていないAI関連新規売上をこの筋書きの前提にはしない。資本配分は本業の改善と株主還元が中心となる。高い利益率が安定し、長く持つ株主にとってようやく魅力のある事業構造が成立する。
- 国内SNSマーケティング支援:数量 126(年間取引顧客数の代理指標(社、2025年末の顧客数))× 価格 0.22(顧客1社当たり年間売上高(億円、広告取扱額や案件構成の変化を含む平均値))→ 売上 27 億円・営業利益 7 億円。顧客126社、現状の98.4%。平均売上は約18%上昇。AIによる効率化と高付加価値案件で営業利益率27%。
- 米国DaaS・ソーシャルデータ販売:数量 47.0(年間契約顧客数の代理指標(社、2025年末顧客数))× 価格 0.35(顧客1社当たり年間データ販売売上高(億円、データ量と契約範囲を含む))→ 売上 16 億円・営業利益 6 億円。顧客数は現状維持。独自データの契約範囲拡大と取得・加工コスト改善によって平均単価は約25%上昇。営業利益率39%。
- Web3運用支援・新規サービス:数量 5.0(外部サービス顧客数の代理指標(社、2025年末))× 価格 0.03(顧客1社当たり年間外部サービス売上高(億円))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。既存の調査・運用支援が小幅に拡大。AIエージェント決済の未確認売上は計上しない。
倍率:k=8.25%、g_long=0%、全社moat=weak。2036年ROE約7.2%はk以下であり、超過利益を伴う再投資成長を恒久的には評価しない。正当化PER上限1/k=12.1212倍を使用。余剰現金13億円の税後利息相当0.182億円を純利益から除き、13億円×株主への戻り方0.75を別加算する。
確率:国内事業で顧客をほぼ維持しつつ、米国DaaSの単価を高め、AIによる大幅な効率改善を実現する複合的な成功を必要とする。2025年の契約縮小と連続減損を考えると確率は限定的。
やや楽観 17% 国内事業の採算改善とDaaSの安定化 利益 2 億円 · PER 12.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 234 円36 億円
国内SNS支援は企業の内製化が進むものの、専門人材の不足する顧客や大規模な広告主からの継続受注を守る。制作と分析の一部はAIエージェントが担い、外部委託の総量は縮小する。しかし、残る顧客では戦略立案と広告配信を組み合わせた契約が中心となり、平均売上は維持される。
DaaSでは、従来型SaaS向けデータ契約の縮小が落ち着く。失われた契約を新規データ商品で完全に置き換えるわけではないが、顧客当たりのデータ利用量が増え、収益性は改善する。データ加工と取得方法の改善によって固定費を抑えられ、米国事業は連結利益に安定して貢献する。
経営陣は新規投資を慎重に進め、利益を生む既存事業への投資を優先する。配当方針が定着し、本社費用も事業規模に合わせて抑制される。大きな成長企業にはならないが、収益の変動が小さく、資産の大幅な毀損を避けられる会社として存続する。
- 国内SNSマーケティング支援:数量 112(年間取引顧客数の代理指標(社、2025年末の顧客数))× 価格 0.21(顧客1社当たり年間売上高(億円、広告取扱額や案件構成の変化を含む平均値))→ 売上 24 億円・営業利益 6 億円。顧客数は2025年比87.5%。平均売上は約17%上昇し、業務効率化で営業利益率25%。
- 米国DaaS・ソーシャルデータ販売:数量 43.0(年間契約顧客数の代理指標(社、2025年末顧客数))× 価格 0.33(顧客1社当たり年間データ販売売上高(億円、データ量と契約範囲を含む))→ 売上 14 億円・営業利益 5 億円。顧客数は約91.5%。高付加価値データの比率改善で平均売上は約19%上昇。
- Web3運用支援・新規サービス:数量 5.0(外部サービス顧客数の代理指標(社、2025年末))× 価格 0.02(顧客1社当たり年間外部サービス売上高(億円))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。調査・運用支援を継続するが、開発費が残り小幅赤字。
倍率:ROE約4.8%がk=8.25%を下回るため、成長による超過価値を認めず、利益の資本化は1/k=12.1212倍。g_long=0%でAI代替後の永久成長を見込まない。純利益から余剰現金の税後利息相当0.182億円を除外し、余剰現金の株主帰属分9.75億円を加える。
確率:既存の経営計画の延長線上にあるが、米国DaaSの顧客基盤安定と国内SNS支援の利益率改善が両立する必要があるため、実現確率は高く置かない。
中立 31% AI代替で顧客数が減るが、事業再編で小幅黒字を維持 利益 1 億円 · PER 12.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 155 円24 億円
国内SNSマーケティング市場では広告支出が増え続ける。しかし、広告制作、投稿管理、レポート、運用改善の多くをAIエージェントが担うようになり、企業の外部委託需要は縮小する。ホットリンクは専門性を必要とする顧客との取引を維持するものの、顧客数は2025年の約7割になる。平均契約売上は案件の大型化で小幅に増加するが、物価上昇率には届かない。
米国DaaSでは既存のソーシャルリスニング市場からの顧客流出が続く。データ取得と加工の独自技術は残り、一定の企業には不可欠な供給元となる。ただし、AI向けの新しいデータ需要によって減少分をすべて補うことはできない。大口顧客の契約条件を受け入れながら事業を維持し、数量の減少を平均単価の改善が一部相殺する。
経営は2025年までの大規模減損を経て、事業ポートフォリオの拡大よりも採算管理を重視する。本社業務のAI化によって費用の実質削減が進み、縮小した売上でも小幅な黒字を保つ。ただし、2036年の利益は資本コストを賄うには不十分である。配当は継続するが、大幅な増配や継続的な大型自社株買いを支える余剰利益は生まれない。
- 国内SNSマーケティング支援:数量 91.0(年間取引顧客数の代理指標(社、2025年末の顧客数))× 価格 0.19(顧客1社当たり年間売上高(億円、広告取扱額や案件構成の変化を含む平均値))→ 売上 17 億円・営業利益 5 億円。顧客数は2025年比約0.71倍。平均売上は約1.05倍で物価上昇を下回る。人員削減と自動化による高い効率改善を必要とする。
- 米国DaaS・ソーシャルデータ販売:数量 35.0(年間契約顧客数の代理指標(社、2025年末顧客数))× 価格 0.31(顧客1社当たり年間データ販売売上高(億円、データ量と契約範囲を含む))→ 売上 11 億円・営業利益 4 億円。顧客数は約0.745倍、平均売上は約1.11倍。取得・加工工程の自動化を進めるが、顧客数の縮小が続く。
- Web3運用支援・新規サービス:数量 5.0(外部サービス顧客数の代理指標(社、2025年末))× 価格 0.02(顧客1社当たり年間外部サービス売上高(億円))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。小規模なサービス収入を維持。新規データ決済の未確認収益は算入せず、研究開発費を負担する。
倍率:2036年ROEは約3.0%で資本コスト8.25%を下回る。新規投資が株主価値を高めるという前提を持ち込まず、利益の資本化上限1/k=12.1212倍を適用する。g_longはAI代替型の0%。事業純利益は1.33−13×1.4%=約1.148億円であり、これにPERを掛け、余剰現金13億円×0.75=9.75億円を加える。
確率:国内SNS支援の数量減少とDaaSの契約縮小を中心に据える。2026年計画の本社費用と2025年のAI業務導入実績を踏まえ、合理化が一定程度成功するものの、高収益事業には戻らない筋書き。
やや悲観 27% 既存データ契約と国内運用需要がともに縮小 利益 −3 億円 · PBR 0.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 140 円21 億円
広告運用の自動化が進み、国内SNS支援では小規模顧客だけでなく、大手企業でも内製化が広がる。AIツールを導入した競合との価格競争が激しくなり、ホットリンクの専門ノウハウだけでは従来の契約を守れなくなる。顧客数が減り、平均売上もほぼ横ばいとなる。残った顧客に十分な利益を上乗せできず、営業利益率は低下する。
DaaSでは複数のデータ提供元が取得条件を見直す。AIモデル開発会社やデジタルリスク企業から一定の需要はあるが、既存のSaaS向け販売の落ち込みを補えない。新商品への投資とシステム維持費の負担が残り、米国事業は小規模ながら存続するものの、十分な資本利益を生まなくなる。
経営は人員や費用を削減し、持株会社の規模も縮小する。しかし、金融投資と新サービス開発の費用が残るため、連結では赤字となる。配当は初期に実施されるが、その後は縮小する。事業の価値は低下し、株主が頼れるものは縮小した事業の稼ぐ力よりも、なお売却可能な金融資産と現金になる。赤字事業の継続に高い価値は認められず、既存顧客契約を整理・譲渡できる余地がわずかに残る程度である。
- 国内SNSマーケティング支援:数量 79.0(年間取引顧客数の代理指標(社、2025年末の顧客数))× 価格 0.18(顧客1社当たり年間売上高(億円、広告取扱額や案件構成の変化を含む平均値))→ 売上 14 億円・営業利益 2 億円。顧客数は2025年比約0.62倍。価格は名目でもほぼ横ばい。
- 米国DaaS・ソーシャルデータ販売:数量 30.0(年間契約顧客数の代理指標(社、2025年末顧客数))× 価格 0.28(顧客1社当たり年間データ販売売上高(億円、データ量と契約範囲を含む))→ 売上 8 億円・営業利益 2 億円。顧客数は約0.64倍。平均売上はほぼ横ばい。取得費用の固定負担が重くなる。
- Web3運用支援・新規サービス:数量 3.0(外部サービス顧客数の代理指標(社、2025年末))× 価格 0.02(顧客1社当たり年間外部サービス売上高(億円))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。外部サービスは縮小。開発・管理費のため赤字が残る。
倍率:2036年は営業・純損益とも赤字であり、利益を恒久的な価値に資本化しない。評価の起点は2036年の累積自己資本29億円ではなく、現在換金できると推定する純現金15.8億円と、金融商品のうち保守的に売却可能とみる5.2億円の合計21.0億円である。国内顧客契約の譲渡や赤字部門の撤退による追加回収余地をわずか0.4億円だけ認め、10年後の時価総額を21.4億円とする。表示上のPBRは2025年末の自己資本40.3億円を分母とした約0.5310倍であり、将来積み上げた自己資本に掛ける倍率ではない。
確率:米国DaaSで顧客契約の終了と見直しが既に起きており、国内の広告制作・運用も価格競争にさらされる。さらに本社費の削減が収入減に追いつかないリスクがあるため、悲観寄りの主要筋書きとして相応の重みを付ける。
悲観 15% AIによる代替が進み、資産価値中心の会社になる 利益 −6 億円 · PBR 0.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 137 円21 億円
SNS広告の企画、制作、分析、入札調整は、AIエージェントと広告媒体が提供する自動化機能に広く置き換わる。顧客は広告運用業者への支払いを大きく削減し、ホットリンクには一部の特殊な案件だけが残る。案件単価も下落し、国内事業の売上は2025年から半分以下となる。
米国DaaSでは、主要SNSのデータ取得条件がさらに厳しくなる。既存の顧客企業は独自収集や大手プラットフォームとの直接契約に移り、同社のデータ供給量は大幅に減る。独自データの蓄積だけでは顧客の移行を止められず、運用に必要な固定費を回収できない事業となる。
Web3関連では、投資先の価値下落や開発計画の失敗によって資本が毀損する。経営陣は事業縮小と資産売却を進めるが、残る事業に高い収益力はない。株主の関心は成長から資産の回収へ移る。純現金と売却可能な金融資産が一部残るため、完全な無価値とはしない。ただし、その資産が帳簿価額どおり、望む時期に少数株主へ戻るとは限らない。
- 国内SNSマーケティング支援:数量 65.0(年間取引顧客数の代理指標(社、2025年末の顧客数))× 価格 0.16(顧客1社当たり年間売上高(億円、広告取扱額や案件構成の変化を含む平均値))→ 売上 10 億円・営業利益 1 億円。顧客数は2025年比約0.51倍。平均単価も約12%下落。
- 米国DaaS・ソーシャルデータ販売:数量 23.0(年間契約顧客数の代理指標(社、2025年末顧客数))× 価格 0.26(顧客1社当たり年間データ販売売上高(億円、データ量と契約範囲を含む))→ 売上 6 億円・営業利益 1 億円。顧客数は約0.49倍。主要契約の終了とデータ供給制約が重なる。
- Web3運用支援・新規サービス:数量 1.0(外部サービス顧客数の代理指標(社、2025年末))× 価格 0.01(顧客1社当たり年間外部サービス売上高(億円))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。外部サービスはほぼ停止。投資先の評価損失は別途資産価値の減少に反映する。
倍率:事業利益が赤字となるためPERでは評価しない。2025年末自己資本40.3億円に対する約0.52倍は、市場の過去の底値ではなく、換金可能資産の現在価値21億円を表す。2026年中間期の純現金を概算15.8億円、金融商品を換価する際の回収可能額を約5.2億円とし、のれん・ソフトウェア等を床に含めない。減損対象の無形資産は換金可能性が乏しく、売却価値をゼロとする。
確率:国内の外部運用需要が大きく減り、米国DaaSが主要データ契約や顧客を失う複合的な悪化を想定。事業の完全消滅ではないが、買収・投資で失敗を重ねた履歴から無視できない確率とする。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
国内SNSマーケティング支援
SNSコンサルティング、広告制作・運用、SNSアカウント運用代行、インフルエンサー施策など。AIエージェント代替の分類は広告制作・運用及び人月型コンサルティングである。2025年売上構成比は約63.7%。
| 数量年間取引顧客数の代理指標(社、2025年末の顧客数) | 価格顧客1社当たり年間売上高(億円、広告取扱額や案件構成の変化を含む平均値) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 128 | 0.18 | 23 | 2 |
| 10 年後 中立 | 91.0 | 0.19 | 17 | 5 |
取り方:2026年3月27日公表の事業計画にある2025年末顧客128社と、2025年有報のSNSマーケティング支援売上2,325,937千円を利用。23.2594億円÷128社で平均約0.1817億円。年度末顧客数を通期取引社数の代理として用いるため、期中解約・開始時期による誤差がある。広告配信やキャンペーンの案件規模も価格に混ざる。営業利益2.0億円は個別の正式開示がないため、2025年の売上総利益6.31億円と2026年計画の費用構造から推定した減損・共通本社費控除前の参考値。AIエージェント代替分類は広告制作・運用・工数型支援で、中立数量は128社の約0.71倍、単価は約1.05倍とする。市場は2025年約1兆3,732億円、広義市場との売上比率は約0.17%。
米国DaaS・ソーシャルデータ販売
EffyisがSocialgistとしてSNSデータのアクセス権を企業に販売する。ライセンス取得型と独自収集型を組み合わせ、加工済みデータも提供する。AIエージェント代替の分類は情報・データサービスであり、記録の正本としての強い堀は未立証。2025年売上構成比は約36.0%。
| 数量年間契約顧客数の代理指標(社、2025年末顧客数) | 価格顧客1社当たり年間データ販売売上高(億円、データ量と契約範囲を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 47.0 | 0.28 | 13 | −7 |
| 10 年後 中立 | 35.0 | 0.31 | 11 | 4 |
取り方:2026年3月の事業計画で2025年末DaaS顧客47社を確認。2025年有報の売上1,315,612千円を47社で除し、平均0.2799億円。年末顧客数と通期売上を対応させた推定であり、契約ごとのデータ量、媒体、利用許諾条件は非開示。営業損益はEffyisの有報記載約△6.97億円を使用し、2025年に発生したソフトウェア減損等を含むため平常時の営業利益率とみなさない。2024年の一部データ契約終了、2025年の既存顧客の契約見直しを重視。AIエージェント代替とデータ取得条件の不確実性から中立の顧客数は約0.74倍、平均売上は約1.11倍。継続契約・価格改定・独自データの2件以上の堀の証拠は未確認であり、記録の正本の高成長型は適用しない。
Web3運用支援・新規サービス
Nonagon Capitalのバリデーター運用支援、調査・コミュニティサービス、AIエージェント向けデータ決済の開発。暗号資産や未上場株への投資評価損益は、顧客向けサービスの売上とは区別する。2025年売上構成比は約0.3%。
| 数量外部サービス顧客数の代理指標(社、2025年末) | 価格顧客1社当たり年間外部サービス売上高(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 5.0 | 0.02 | 0 | −1 |
| 10 年後 中立 | 5.0 | 0.02 | 0 | 0 |
取り方:会社の2026年3月公表資料におけるWeb3顧客5社と、有報の2025年売上9,587千円から算出した平均単価。投資案件数とは別であり、投資の含み損益を販売数量に含めない。営業損益はセグメント別の小規模事業損益からの概算で、本社経費や投資関連費用の配賦次第で変動する。2026年7月10日にNonagon Linkのベータ版を公開したが、同日の開示では連結業績への影響は軽微としており、定量的な商用売上は確認できない。したがってAIエージェント決済の成長期待を中立の売上に加算しない。投資事業そのものは人月・席課金のAI代替型には当たらないが、調査・運用支援部分には工数代替リスクがある。
リスクと懸念
AIエージェント代替による広告運用・調査業務の縮小
国内SNS支援では投稿制作、広告運用、分析、報告業務をAIエージェントが代行することで、顧客が外部委託する作業量と手数料が減る。米国DaaSでも既存の分析SaaS向け需要が変化する。社内AI導入による効率改善は利益にプラスだが、顧客が契約を継続する理由そのものを失えば、改善効果を上回る売上減少となる。中立の数量縮小と2036年以降の名目成長率0%に織り込んだリスクであり、資本コストの寿命上乗せには重ねない。
SNSプラットフォームへの依存とデータ取得権限
DaaSはデータを継続的に入手できることが事業の前提である。SNS運営企業がAPI利用条件、取得可能な項目、利用料金、再販売条件を変更すれば、販売できる商品と利益率が変わる。2024年には実際に一部のデータ提供契約が終了しており、仮説上のリスクではない。独自のクローリング技術も法令、利用規約、情報取得制限から独立して存在できるわけではない。
米国DaaSの顧客集中と既存契約の縮小
2025年の連結売上の約10.1%はSprinklr向けである。米国DaaSでは主要販売先が契約を見直した場合の影響が大きく、同事業の2025年売上は前年比32.6%減となった。AI向け新商品の需要が拡大しても、従来の大口契約の喪失を補えるとは限らない。顧客数だけでなく、既存顧客から得る年間売上とその粗利益を継続的に確認する必要がある。
Web3投資・DeFi運用の損失と流動性
会社は金融商品投資の一部として、暗号資産関連の投資やステーブルコインを利用したDeFi運用を行う。ステーブルコインには発行体、預託先、スマートコントラクト、規制、換金性のリスクがある。未上場投資も、帳簿評価額と売却可能額が一致するとは限らない。金融投資が本業のキャッシュフローを補う可能性はあるが、収益の安定性を過大に評価すると長期価値を誤る。
資本配分と追加減損
Effyisでは2024年と2025年に大きな減損が発生した。減損そのものは非資金費用でも、以前の投資から期待した利益が実現しなかった事実は残る。新規買収やAI・Web3領域への投資が同じ結果になれば、自己資本と将来利益の両方が低下する。経営陣が投資案件ごとの回収額や増分利益を明確に説明できるかが重要である。
収益規模に対して大きい本社費用
2026年の計画では国内SNSとDaaSがそれぞれ本社費用控除前の利益を生む一方、グループ共通費用約7.29億円が連結利益の大部分を吸収する。AIによる業務効率化だけでなく、管理体制や人員構成そのものの合理化が必要となる。中立では2036年の共通費用を7.5億円としており、物価3%が続く世界では実質的な大幅削減を要求する。これが実現しなければ中立の小幅黒字さえ難しくなる。
今後の分かれ目
- DaaSの年間売上が2025年水準を継続して下回り、主要顧客の契約縮小が止まらなければ
- DaaSの顧客数量と平均売上の両方を引き下げ、やや悲観の確率を高める。新規商品の受注発表だけでなく、実際の売上と粗利益の増加を確認する。
- AI向けの加工済みデータについて、金額を伴う継続契約、売上成長、契約更新率が開示されれば
- DaaSの独自データが顧客の業務基盤として定着し始めた可能性を評価する。新市場から得られる収益額を数量と単価に反映し、強い堀の要件を改めて検証する。
- 国内SNS支援の顧客数が大きく減らず、営業利益率が20%台後半に向上すれば
- AIによる業務効率化が顧客離れを上回っていると判断し、楽観側の筋書きに重みを移す。ただし、媒体広告費の増加だけでなく、会社自身が獲得する粗利益を確認する。
- 本社費用が2026年の計画水準を大幅に上回り、国内SNSとDaaSの利益を相殺し続ければ
- 中立の黒字維持前提を撤回し、企業価値を資産中心で評価する方向に修正する。AI導入率ではなく、実際の総費用と従業員当たり付加価値を判断材料とする。
- DeFiやWeb3投資の評価損が拡大し、純現金と換金可能資産が減少すれば
- 余剰現金と悲観の床を下方修正する。会計上の自己資本が残っていても、少数株主が回収可能な資産価値が低下していないかを優先して確認する。
- Nonagon Linkで決済取扱高、継続利用企業、手数料収入が定量的に開示されれば
- AIエージェント関連の新規事業が実証段階から商用段階に移ったものとして、独立した数量と単価を設定して再評価する。現時点では未確認の成長を先取りしない。
見ておくもの
- 2026年通期の売上高40.70億円、営業利益1.04億円、当期利益0.89億円の会社計画に対する達成度
- 国内SNSマーケティング支援の顧客数と顧客1社当たり年間売上、粗利益率の推移
- 米国DaaSの顧客数、主要顧客への売上依存度、既存契約の更新状況
- DaaSのAI Ready Dataなど新規商品の売上金額と継続契約実績
- 本社共通費用とAIによる実際の費用削減効果
- 営業キャッシュフロー、無形資産開発投資、純現金の推移
- Web3・DeFi関連の投資残高、含み損益、実現利益、換金可能額
- DOE約2%の配当方針と自社株買いの継続状況
- Nonagon Linkの有償利用件数、決済取扱高、実際の手数料売上
- Effyisの追加減損、情報源との契約終了、主要SNSのデータ提供規約変更
倍率と資本コストの決め方
株価266円と発行済株式から自己株式を除いた15,307,300株は、添付資料の2026年10月22日基準をそのまま使用した。時価総額は約40.72億円。2026年10月23日の市場区分変更やその後の株価変動を、事業価値の算定根拠には使用していない。
数量は2025年末の顧客数を基準に、国内SNS支援、DaaS、Web3を独立に積み上げた。市場拡大率をそのまま会社の数量に掛けず、AIによる委託作業の減少と顧客契約の見直しを織り込んだ。価格には広告・データ契約の平均売上を使い、物価上昇を数量へ二重計上していない。
倍率は市場の過去PERやPBRを参照せず、k=8.25%、g_long=0%、2036年ROEに基づいて決めた。楽観から中立まで2036年ROEが資本コストを下回るため、正当化PERは1/k=12.12倍とする。余剰現金の利息は事業純利益から外して現金の帰属価値を別計上した。赤字の二つの筋書きでは現在の純現金と換金可能資産の合計21.0億円を回収可能価値の起点にした。やや悲観は契約譲渡などのわずかな追加回収余地を加えた21.4億円で、PBR約0.531倍は現在の自己資本40.3億円を分母に表示する。2036年の累積自己資本29億円に倍率を掛けて床を引き上げることはしていない。
株主還元はDOE方針と資本余力を踏まえた10年間の累計額であり、利益が悪化する筋書きでは縮小させた。2025年の巨額減損を10年間繰り返す前提にはしていない。将来の投資利益を恒常的な営業利益として扱わず、AIエージェント関連の未確認売上も算入しなかった。結果として本質価値が現在の時価総額を大きく下回るが、その差を小さくするための数値調整はしていない。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%に事業品質による0.75ポイントを加えた8.25%。2024年・2025年の連続赤字は重いが、減損の非資金性、純現金、2026年の回復計画を踏まえ、継続企業としての存続に疑義がある状態とは扱わず、特別な財務危機上乗せは設けない。