結論
くすりの窓口は、患者の処方箋予約から薬局の医薬品仕入れ、電子薬歴、医療機関の業務システムまでを結ぶヘルスケアIT企業である。筆者の結論は「やや割高」だ。医療現場に深く入り込んだ事業基盤は評価するが、現在の利益には一時的な税効果が含まれ、10年先にはAIによる業務ソフトの代替も無視できない。
この会社を単なる医療系SaaSとして片付けるのは誤りである。2026年3月期末には約5.3万施設との接点を持ち、処方箋ネット受付は年間726万件に達した。医薬品流通の取扱額も年間2,321億円に及ぶ。薬局の経営にとって重要な患者の獲得と仕入れ費用の削減を同時に提供できる会社は限られている。とりわけ医薬品の実際の取引を仲介する部分は、AIが操作画面を代替しても取引自体が消えるわけではない。
一方、会計上の利益をそのまま株主の稼ぐ力と見ることはできない。2026年3月期の営業利益は26.8億円だったが、親会社株主帰属純利益は29.5億円とそれを上回った。法人税等調整額がマイナス5.75億円となったことが大きい。前期にも同様の税効果があり、これを長期に延ばすと価値を過大評価する。通常の税負担に戻った利益を出発点にする必要がある。
2030年3月期にストック売上200億円、営業利益50億円以上を目指す中期計画には上振れの余地がある。しかし、施設数の拡大だけでなく、契約の採算、医薬品流通の手数料、開発投資の回収まで確かめたい。10年後の中立では医薬品流通が伸びても、予約サービスの価格競争と基幹システムのAI代替がその一部を相殺すると見る。
5つの筋書きの確率加重による現在価値は約214億円で、基準時価総額約262億円を約18%下回る。親会社に近いEPARKとの契約関係、買収の資本効率、医療制度の変更にも不確実性がある。良い事業をいくつか持つことと、株式全体に十分な安全域があることは別の問題である。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点でまず問うのは、10年後にも患者と薬局がこの会社を必要とし、値上げを受け入れるかということだ。EPARKお薬手帳の利用者基盤と全国の薬局網には価値がある。医薬品の不動在庫を実際に流通させる力にも経済的な意味がある。これらは単なる画面の使いやすさより長持ちしやすい。しかし、薬局が利用料や仲介手数料の値上げを継続して受け入れた証拠はまだ十分でない。
次に、稼いだ利益をどれだけ自由に株主が使えるかを考える。表面上の2026年3月期純利益29.5億円を出発点にすると、事業の価値は大きく見える。だが、その一部は繰延税金資産に関係する税効果であり、毎年生じる営業上の現金ではない。通常の税負担を反映した収益力は相当に小さい。ソフトウエア更新、制度対応、買収先の統合には引き続き資金が必要だ。営業利益が増えても、オーナー利益が同じ速度で増えるとは限らない。
医薬品流通への再投資は、適切な手数料を維持できるなら高い収益率を生む可能性がある。一方、既存顧客に新しい業務ソフトを売り足す戦略はAIの進歩で収益の寿命が短くなる危険がある。買収価格が高ければ、報告上の売上が伸びても株主の資本は増えない。経営には、施設数より投下資本に対してどれだけ増分利益が残ったかを示してほしい。
この会社には、医療現場を支える比較的理解しやすい部分と、10年後の収益構造を読みづらい部分が同居する。筆者が長く保有するなら、薬局網と実物の医薬品流通の強みを重視し、操作画面への依存が薄れていくかを見守る。現在の時価総額は極端な高値とは言えないが、悲観時に資産から回収できる金額との差はまだ大きい。予測が外れた場合を十分に引き受けられる安全域があるとまでは判断しない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心は、患者を薬局に送るヘルスケアオートメーション事業、薬局の仕入れを効率化するみんなのお薬箱事業、医療現場の業務を支える基幹システム事業の3つである。2027年3月期からメディア事業をヘルスケアオートメーション事業に改称し、未病予防事業もウェルネスプラットフォーム事業に改称した。単一の報告セグメントだが、経済性は大きく異なるため、事業別に考える必要がある。
ヘルスケアオートメーション事業は、EPARKくすりの窓口とEPARKお薬手帳を通じ、患者が処方箋を送って薬局で薬を受け取る仕組みを提供する。収益にはネット受付に伴う手数料、薬局向け月額サービス、初期導入費用、広告・販促関連収益がある。2026年3月期の売上は約50.2億円だった。薬局にとっては患者の獲得、患者にとっては待ち時間の短縮が価値である。さらにAI受付機や人間ドック予約など、患者との接点を広げている。
みんなのお薬箱事業は、医薬品の共同仕入れ支援、不動在庫の売買仲介、在庫管理と自動発注の支援を行う。2026年3月期の売上は約35.5億円、年間流通額は2,321億円である。薬局にとって薬の在庫は資金負担であり、期限切れや品目不足は経営に直結する。売買が成立した時の手数料や継続的な利用料を得るため、操作画面の便利さだけでなく、取引先の多さと実際に在庫を動かせる力が重要となる。
基幹システム事業は、子会社がレセコン、電子薬歴、調剤監査、電子カルテ、介護記録・請求システムなどを販売する。Pharmy、Hi_story、Cube.i、コメットケアなどが主要製品である。月額の保守・利用料と初期導入収益を受け取り、2026年3月期の売上は約34.8億円だった。医療機関では法定の記録保存や請求処理が必要で、導入済みシステムは容易に入れ替わらない。しかし、記録の保管と職員が画面を操作する機能は分けて評価すべきだ。
残る事業には健康診断の予約支援、特定保健指導、保険者向け健康管理などがある。まだ小規模で、医療・薬局の顧客基盤を利用して育てる段階にある。複数事業の相乗効果は魅力だが、単一施設に複数サービスを売ることで本当に顧客の支出が増えているか、買収による見かけの施設数増加ではないかを見極める必要がある。
優良さと弱いところ
最も明確な強みは、調剤薬局との接点の広さである。2027年3月期第1四半期には処方箋予約サービスの保有施設数が24,694施設となり、全国約6.3万薬局の39.3%に相当する。お薬手帳アプリの累計ダウンロード数は767万件を超えた。薬局が増えれば患者が使いやすくなり、患者が増えれば薬局側の導入価値も高まる。こうした両面ネットワークは、後発企業が短期間で複製しにくい。
ただし、薬局の約4割に導入されていることと、処方箋の約4割を握ることは全く違う。会社が示す処方箋ネット受付の対象市場シェアは約2%であり、患者の利用頻度ではまだ小さな存在だ。競合アプリ、薬局チェーン独自の予約機能、電子処方箋の共通基盤が発達すれば、薬局との契約が残っていても予約手数料の競争力は弱くなり得る。
医薬品流通には、異なる種類の堀がある。参加薬局と実際の医薬品流通額が増えるほど、不要在庫を売れる可能性と共同仕入れの交渉力が高まる。2027年3月期第1四半期の対象施設19,552施設は、薬局・医療機関を合わせた対象施設の約11.1%に相当する。まだ拡大の余地があり、規模が取引の便益を生む構造だ。ただし、医薬品卸大手が同様の調達機能を提供すれば手数料率は守り切れない。
基幹システムの乗り換えには患者データの移行や業務の再教育が必要となる。一方、年間解約率5%未満というような具体的な維持率や、法改正ごとに価格を上げられた実績は確認できない。法定記録を扱うことだけで、すべての製品を代替困難な基盤と認定することはできない。AIエージェントが業務画面を飛ばして処理を完了させる時代には、従来の席数や機能数による課金が弱点となる。
資本効率は高いが、利益の質には注意が要る。純現金24億円程度と自己資本比率64%弱は財務上の強みであるものの、貸借対照表にはソフトウエア、のれん、繰延税金資産が相当額含まれる。買収を重ねて大きくなった事業の真の増分ROICは、買収価格と追加開発費を含めて確かめるべきである。筆者は全社の堀を強いとまでは認定せず、事業ごとに強弱のある普通の堀と評価する。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
医療ITの需要は人口が減っても簡単にはなくならない。高齢化に伴う処方や慢性疾患の管理、薬局の人手不足、医療費抑制への圧力が、予約の効率化、在庫圧縮、電子記録の必要性を支える。厚生労働省による電子処方箋や医療DXの推進も追い風だ。ただし、国の政策は市場を増やすと同時に、共通仕様の導入で民間企業の独自機能を標準化する可能性を持つ。
2027年3月期第1四半期の会社資料では、国内の年間処方箋枚数を約9億枚、そのうち同社のネット受付対象市場を約4.5億枚と推定している。現在のネット受付シェアは約2%であり、患者利用の伸びしろは大きい。一方、全国の薬局数は約6.3万店と成熟しているため、施設契約数の成長余地は予約取扱枚数ほど大きくない。薬局チェーン自身の予約機能、日本調剤のお薬手帳プラス、薬局・患者向けアプリ各社が競争相手となる。
医薬品の仕入れ支援では、会社が示す国内医薬品流通市場は約11.8兆円で、同社の取扱シェアは約2%である。金額の大きな市場だが、売上の全額を会社が取れるわけではない。収益の源泉は仕入れ支援や不動在庫取引で受け取る手数料とシステム利用料である。メディパル、アルフレッサ、スズケンなどの大手卸は医薬品供給網と薬局との関係を持ち、交渉力で優位に立つ場合がある。流通額のシェアと仲介手数料の収益率を区別しなければならない。
基幹システムでは、調剤薬局向けのEMシステムズやカケハシ、医療機関向けのエムスリーデジカルやメドレーなどと競争する。制度対応、保守、移行支援が採用に影響するが、AIによる記録作成、処方確認、請求処理の自動化が進むと、操作人数に結び付いた課金の価値は下がる。電子記録の保存そのものは残っても、現在と同じ製品体系や単価が残るとは限らない。
2026年6月には、保険薬局における経済的利益による患者誘引をめぐる厚生労働省の事務連絡が出された。会社は処方箋予約に関するアンケートとポイント付与を5月までに終了し、業績影響は軽微との見解を示している。しかし、行政による運用解釈が変われば、集客方法や患者への還元策を変更せざるを得ない。10年後に医療ITが必要であることは確かでも、利益を獲得する企業と課金方法は今とは変わり得る。
資本政策と M&A
経営は自社開発と買収を組み合わせ、薬局から医療機関、介護、健康管理へと事業を広げてきた。モイネットシステムなどの基幹システム企業に加え、2026年にはメディ・ウェブやテクノネットワークの連結効果が業績に現れている。同年7月には人材マッチング技術を持つblankpadの完全子会社化も発表した。顧客基盤の共有は合理的だが、買収する事業が本業の強みを本当に高めるかは別に評価する必要がある。
2030年3月期の中期経営計画では、保有施設10万、ストック売上200億円、連結営業利益50億円以上を掲げている。2026年3月期末の保有施設は53,441、ストック売上は85.7億円だった。計画達成には薬局以外の医療機関・介護施設への展開と追加買収が重要になる。一方、中計に長期のROE、DOE、総還元性向、自社株買い総額についての数値の約束は確認できない。
株主還元は始まっている。2025年3月期の年間配当総額は約3.0億円、2026年3月期は約4.35億円で、連結配当性向はそれぞれ約15%と14%だった。2027年3月期も増配の会社予想である。さらに2026年6月には上限8億円の自己株取得を決議し、10月23日の開示では累計325,700株、約8億円の取得をもって終了した。現金を抱えるだけではなく株主へ戻す姿勢は評価できるが、長期の高い総還元率が確立したとはまだ言えない。
ガバナンス上はEPARKとの関係が重要である。2026年3月期末にEPARKは直接39.4%、共同保有者を含め40.8%の議決権を持ち、予約事業では会員基盤の共有とロイヤリティ契約が続く。2026年3月期のロイヤリティ支払額は約5.1億円で、独自獲得ユーザーの増加などにより前年から減少した。条件の見直しが少数株主に公平か、独立した事業拡大が進むかを継続して確認すべきだ。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
くすりの窓口には、一般的な業務SaaSと違う価値がある。全国の薬局との契約、累計767万件超のお薬手帳ダウンロード、数千億円の医薬品取扱実績は、後から参入する企業が短期間で買えるものではない。患者のネット受付は対象市場の約2%にすぎず、薬局への導入率と患者の実利用の差を埋めるだけでも相当な成長余地がある。予約件数が増えれば薬局がサービスを継続する理由も強くなる。
特に医薬品の流通には実物がある。どれほどAIが高度化しても、薬局に必要な薬を必要な場所へ届ける取引と、不要在庫を減らす経済的な便益は消えない。大手卸に比べれば小規模だが、既に全国の施設を束ねる仕組みを持つ。共同仕入れの取引額が拡大すれば、追加のシステム開発費に比べて大きな手数料収益を得られる可能性がある。
2026年3月期は売上123億円に対して営業利益26.8億円となり、収益率も改善した。2027年3月期第1四半期にはさらに増収増益が続き、買収した企業の連結効果も現れている。会社が示す2030年3月期のストック売上200億円、営業利益50億円以上には、既存の薬局・医療機関の顧客基盤を利用できるだけの根拠がある。
AIも必ずしも敵ではない。受付機や業務自動化を顧客に提供する側に回れば、人手不足が進む医療現場ほど同社のサービスを必要とする。財務も純現金であり、直近には増配と自社株買いが行われた。利益を生む事業を買い増しながら株主還元を続けられるなら、10年後の企業価値は現在を大きく超える。
慎重な見方
見かけの純利益から出発すること自体が危険である。2025年3月期と2026年3月期には繰延税金資産などに関係する大きな税効果が計上され、当期純利益が営業利益を上回った。通常の税負担へ戻れば、最近の利益成長ほどオーナー利益は増えていない。利益を正常化すると、現在の時価総額は簡単に割安と呼べる水準ではなくなる。
患者の予約画面は、今後10年で最も変わりやすい領域の一つだ。AIアシスタントが処方箋の送信先を選び、薬局と直接連携できるようになれば、EPARKの検索画面へ患者を誘導する必要は減る。薬局への導入率が約4割でも、実際のネット受付シェアが約2%ということは、患者の行動を完全に支配しているわけではない。ポイント付与に関する行政の事務連絡も、集客方法が制度に左右されることを示した。
基幹システムの電子薬歴、レセコン、介護記録にも同じ懸念がある。法定記録は必要だが、人が画面を操作するための機能が今と同じ料金で必要とは限らない。解約率や継続的な値上げ成功率が十分に開示されていない以上、利用施設数の増加だけで強い堀を認めることは難しい。買収を重ねて保有施設を増やしても、既存製品が置き換われば増分利益は残らない。
医薬品流通の市場規模が巨大であっても、その2%を扱うことと高い利益率を保つことは別である。メディパル、アルフレッサ、スズケンなどが調達最適化を強化すれば手数料率に圧力がかかる。EPARKとの関係にも少数株主には変えられない契約条件が残る。高いROE、買収成長、医療DXという言葉を理由に高く評価するより、将来の普通の税負担と競争下で残る利益から判断すべきである。
どちらに重みを置いたか
薬局網と医薬品の実取引には、メドレーなどの純粋な業務ソフト企業とは異なる強みがある。このため全社の消滅を中心に置く必要はない。一方、正常化利益が実績純利益を大きく下回り、予約画面と基幹システムのAI代替、EPARK依存という固有の弱点がある。確率は楽観側28%に対して、やや悲観と悲観の合計を40%とした。下に寄せる理由はこれらの具体的な収益構造の変化であり、AI代替を資本コストにも重ねて引いてはいない。加重現在価値は約214億円、基準時価総額約262億円との差は約マイナス18%となる。事業価値を認めても、今の株価には十分な安全域がないという慎重な判断が勝る。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 2,891 円324 億円(+ 還元の換算額還元の合計 726 円81 億円)。 今の値に割り戻すと 1,908 円214 億円、今との差 −14.4%、 期待の年率 +5.6%(資本コスト 7.5%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 11% | 5,389 円604 億円 | 1,607 円180 億円 | +213.7% | +14.4% | 770 円86 億円 |
| やや楽観 | 17% | 4,607 円516 億円 | 1,205 円135 億円 | +160.6% | +11.6% | 988 円111 億円 |
| 中立 | 32% | 3,924 円440 億円 | 804 円90 億円 | +112.0% | +8.7% | 1,513 円169 億円 |
| やや悲観 | 25% | 877 円98 億円 | 268 円30 億円 | −48.7% | −7.2% | 286 円32 億円 |
| 悲観 | 15% | 268 円30 億円 | 134 円15 億円 | −82.0% | −17.7% | 60 円7 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,891 円324 億円 | 726 円81 億円 | +62.2% | +5.6% | 3,617 円405 億円 |
今の株価時価総額 2,230 円250 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 11% 医薬品取引網が拡大し、予約と業務支援も収益化 利益 40 億円 · PER 14.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 5,389 円604 億円
薬局の経営効率化が進み、みんなのお薬箱の共同仕入れと不動在庫取引が業界の有力な流通経路になる。大手薬局チェーンに加え独立薬局の参加も増え、現在約2%の流通シェアは4%程度まで高まる。薬局側は仕入れ価格と廃棄損失を抑えられるため、一定の手数料を払い続ける経済的な理由がある。メディパル、アルフレッサなどの卸大手とも直接の全面対決を避け、補完的な在庫ネットワークを形成できる。
予約サービスでは日本調剤やイオン系の薬局を含めた連携が深まり、患者は複数の薬局を一つのサービスで使い分けるようになる。施設数と予約件数が増え、初期費用だけに依存しない継続収益が積み上がる。AI受付機は既存サービスの効率改善や追加販売につながるが、金額が確認できないAI新規事業の急成長を想定するわけではない。
基幹システムはAIにより従来の画面操作需要が減るものの、電子薬歴、レセプト請求、法令対応の中核を残す。テクノネットワークや既存子会社の統合は円滑に進み、不要な製品群を整理する。買収ののれん減損も大規模には発生せず、従業員当たりの売上と利益が改善する。株主還元も強まり、成長投資と配当・自社株買いが両立する10年になる。
- ヘルスケアオートメーション事業(旧メディア事業):数量 33,000(年間収益化する薬局等の保有施設数(施設。期末契約施設数を代表数量とする))× 価格 0.00(1施設当たりの年間合成売上(億円/施設・年。月額料、受付関連収益、広告、初期導入費を含む))→ 売上 90 億円・営業利益 31 億円。薬局契約は全国約6.3万施設の約52%に相当。患者利用頻度と周辺サービスを伸ばし、合成単価は現状の約1.33倍。
- みんなのお薬箱事業:数量 4,800(年間医薬品流通取扱額の2026年価格固定換算(億円・実質取扱規模))× 価格 0.02(実質取扱額1億円当たりの売上収益率(億円/億円。薬価等の名目変化を価格側に含む))→ 売上 96 億円・営業利益 27 億円。医薬品流通の実質シェア約4%を獲得。数量は取扱額の実質増、価格は売上収益率と名目価格の変化。
- 基幹システム事業:数量 8,439(基幹システム利用施設数(施設))× 価格 0.00(1施設当たり年間売上(億円/施設・年。初期導入・月額保守・利用料を含む))→ 売上 40 億円・営業利益 6 億円。AI代替を前提に施設数量は現在の1.0倍が上限。残る規制対応・統合型サービスの価格は約1.15倍。
- ウェルネスプラットフォーム・その他:数量 14,059(年間の健診サポート完了件数相当(件。その他事業も含む代理数量))× 価格 0.00(完了件数相当当たり年間合成売上(億円/件))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。人手による事務処理は縮むが、新たな顧客の獲得がこれを相殺し数量は1.0倍。単価は概ね物価並み。
倍率:資本コスト7.5%、長期名目成長率1.5%、普通の堀に対応する超過ROE残存割合2分の1を使う。余剰現金20億円を除いた事業純利益約39.83億円と事業自己資本210億円からROEは約19.0%。RONICは約13.23%、正当化PER=(1−0.015÷0.1323)÷(0.075−0.015)で約14.78倍となる。楽観の倍率は式の上限そのものとする。時価総額は(40.11−20×0.014)×14.78+20×0.75で約603.6億円。今の市場PERは参照しない。
確率:医薬品流通の実質取扱シェアが約2%から約4%へ上がり、予約サービスも薬局契約を拡大できる筋書き。ただし業務SaaSのAI代替を受けながら、複数の買収と収益化を同時に成功させる必要があるため11%にとどめる。AI製品による未確認の新規売上を前提とせず、基幹システムの数量も現状を超えない。
やや楽観 17% 仕入れ効率化が成長の柱となり、高収益を維持 利益 34 億円 · PER 14.6 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 4,607 円516 億円
薬局の共同仕入れと不動在庫取引が着実に広がる。全国の薬局数は大きく増えないが、各薬局が在庫を軽くし、仕入れ条件を改善しようとする需要は続く。みんなのお薬箱の流通取扱シェアが3%台半ばへ拡大し、実物の医薬品取引を支える収益が全社の成長をけん引する。医薬品卸との競争はあるものの、参加薬局を束ねる効果によって適切な収益率を維持できる。
処方箋予約では、既存薬局の利用頻度が増える一方、新規薬局の獲得速度は鈍る。患者がスマートフォンから予約する仕組みは残り、店舗での受付自動化や患者への連絡をまとめて提供できる。利用する患者のデータが蓄積されるほど、薬局にとって離れにくいサービスになる。ただしAIアシスタントが予約を代行する場合には、独自アプリの利用時間が減るため、価格を大幅に上げることは難しい。
基幹システムは既存顧客の移行支援と法改正対応を中心に残る。操作人数に応じた課金は弱まるが、電子記録の管理は続くため、収益が消失するわけではない。経営は買収先の重複製品を整理し、開発費の無駄を減らす。増益に応じて還元も拡大することで、自己資本が過度に積み上がることを抑えられる。
- ヘルスケアオートメーション事業(旧メディア事業):数量 30,000(年間収益化する薬局等の保有施設数(施設。期末契約施設数を代表数量とする))× 価格 0.00(1施設当たりの年間合成売上(億円/施設・年。月額料、受付関連収益、広告、初期導入費を含む))→ 売上 80 億円・営業利益 26 億円。契約施設は約3万、合成単価は現在の約1.30倍。価格の伸びは通常の物価上昇程度にとどめる。
- みんなのお薬箱事業:数量 4,200(年間医薬品流通取扱額の2026年価格固定換算(億円・実質取扱規模))× 価格 0.02(実質取扱額1億円当たりの売上収益率(億円/億円。薬価等の名目変化を価格側に含む))→ 売上 80 億円・営業利益 22 億円。流通取扱シェアが約3.6%へ上がる。取扱数量の増加を主因とし、手数料率の高騰は想定しない。
- 基幹システム事業:数量 8,020(基幹システム利用施設数(施設))× 価格 0.00(1施設当たり年間売上(億円/施設・年。初期導入・月額保守・利用料を含む))→ 売上 38 億円・営業利益 6 億円。AIによる画面操作の代替で数量は現在の約0.95倍。統合保守サービスの残存分に限り単価を維持。
- ウェルネスプラットフォーム・その他:数量 12,650(年間の健診サポート完了件数相当(件。その他事業も含む代理数量))× 価格 0.00(完了件数相当当たり年間合成売上(億円/件))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。人月型の事務部分は縮小し、残存顧客へのサービスの質と物価分の価格で売上を維持。
倍率:余剰現金45億円を除いた事業純利益は約32.96億円、事業自己資本は193億円でROEは約17.1%。資本コスト7.5%、普通の堀の残存割合2分の1からRONICは約12.29%となる。10年以降のgは1.5%なので正当化PERは約14.63倍。余剰現金の税後受取利息0.63億円を利益から除き、現金45億円に株主への戻り方0.75を適用する。時価総額は(33.59−0.63)×14.63+45×0.75で約516億円。
確率:仕入れ支援の取引基盤が拡大する可能性は十分あるが、薬局向け価格交渉の競争とAI代替により全事業が伸びるとは限らない。医薬品流通のシェア拡大を主因とし、基幹システム数量は10年間で約0.95倍に抑えたため、上振れとして17%を配分する。
中立 32% 医薬品流通は伸びるが、ソフトの代替が利益成長を抑える 利益 28 億円 · PER 14.3 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 3,924 円440 億円
10年後にも薬局は存在し、処方箋の受付、薬の在庫管理、仕入れ価格の管理を必要としている。くすりの窓口は全国の薬局に広がる既存契約を維持し、患者への予約サービスも続ける。ただし薬局数そのものは増えず、患者の検索や予約の一部はAIアシスタントや電子処方箋の共通基盤へ移る。契約施設数は大きく伸びず、追加サービスの販売が売上を下支えする。
成長の中心はみんなのお薬箱となる。薬価改定と人手不足で薬局の経営効率化が必要となり、実物医薬品の調達と不動在庫の流動化が広がる。会社の流通シェアは約2%から3%強へ伸びるが、卸大手も自動発注や仕入れ最適化を提供するため、実効収益率の上昇は物価ほど強くない。取扱額が増えても全額が利益になるわけではなく、運営費と流通費が残る。
基幹システムの法令対応と記録保存は続くものの、画面操作を中心とした機能はAIに代替される。買収で一時的に導入施設が増えても、10年間の中では既存製品の統廃合と価格競争が進む。契約施設数に換算した実質数量は現在の約85%となり、名目単価も物価上昇を下回る。
全社では、医薬品流通の増収がソフトウエアの成熟を補い、営業利益は現状から増える。ただし税効果を除いた純利益は急成長せず、利益留保によって自己資本が積み上がるためROEは低下する。安定企業として存続するが、上場初期に期待された高い成長がそのまま続く10年ではない。
- ヘルスケアオートメーション事業(旧メディア事業):数量 27,000(年間収益化する薬局等の保有施設数(施設。期末契約施設数を代表数量とする))× 価格 0.00(1施設当たりの年間合成売上(億円/施設・年。月額料、受付関連収益、広告、初期導入費を含む))→ 売上 70 億円・営業利益 22 億円。薬局契約は約2.7万で現在の約1.10倍。合成単価は約1.26倍とし、物価1.34倍との差はAIと予約競争による価格圧力。
- みんなのお薬箱事業:数量 3,750(年間医薬品流通取扱額の2026年価格固定換算(億円・実質取扱規模))× 価格 0.02(実質取扱額1億円当たりの売上収益率(億円/億円。薬価等の名目変化を価格側に含む))→ 売上 70 億円・営業利益 18 億円。実質流通額が3,750億円相当へ増え、国内流通シェア約3.2%。合成収益率は約1.87%。
- 基幹システム事業:数量 7,160(基幹システム利用施設数(施設))× 価格 0.00(1施設当たり年間売上(億円/施設・年。初期導入・月額保守・利用料を含む))→ 売上 33 億円・営業利益 5 億円。AIエージェント代替の席課金型として数量0.85倍、価格1.10倍。長期のgもこの弱さを反映。
- ウェルネスプラットフォーム・その他:数量 9,841(年間の健診サポート完了件数相当(件。その他事業も含む代理数量))× 価格 0.00(完了件数相当当たり年間合成売上(億円/件))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。BPO型の数量0.70倍、価格約1.34倍。健診事務自体の大幅成長は想定しない。
倍率:余剰現金65億円の税後利息0.91億円を除いた事業純利益は約27.25億円、事業自己資本は195億円。事業ROEは約14.0%、資本コスト7.5%、超過ROE残存割合2分の1からRONIC約10.74%。g_longを1.5%として、正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)は約14.34倍。余剰現金65億円は10年間の内部留保のうち事業の資本増加と追加投資に使わず残る分で、株主への戻り方は0.75。時価総額は(28.16−0.91)×14.34+65×0.75で約439.5億円。
確率:実物の医薬品流通にはシェア拡大の根拠があり、薬局との長い取引関係も残る。一方、予約の成長は導入施設の飽和とAIによる仲介飛ばしに制約され、基幹システムの操作画面は縮む。2030年中計目標の全面達成を前提としない中心見通しとして32%を配分する。
やや悲観 25% 予約サービスの価格競争とソフトの縮小が進む 利益 9 億円 · PER 10.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 877 円98 億円
薬局の患者予約は便利なサービスとして残るものの、患者がEPARKの画面を直接使う場面は減少する。電子処方箋の普及とAIアシスタントの普及により、処方箋を送る先の選定が別のサービスから行われるようになる。薬局は手数料の削減を求め、独自アプリを持つチェーンでは自社予約への誘導が増える。EPARKとの提携が続いても、契約施設数と1施設当たり売上は緩やかに縮小する。
医薬品流通の取引網には価値が残るが、大手卸による自動発注・共同仕入れ支援が普及する。薬局が複数サービスを比較するようになり、みんなのお薬箱の取扱額は現在の水準に近づく。仕入れ支援は低い手数料で競争する業務となり、成長投資の回収に時間がかかる。
基幹システムでは、AIがレセプト確認、薬歴作成、患者情報の照合を代替する。電子記録の法的義務が残っても、従来の操作画面や席課金に高い料金を払う必要が薄れ、導入施設に換算した数量は現在の約3分の2まで減る。買収した子会社のシステムを整理する際には、移行費用や開発費が利益を圧迫する。
会社は黒字を維持するものの、営業利益は現在を下回る。余剰現金の一部は事業の維持と再編に使われ、株主還元も限定的になる。事業が消えるわけではないが、成長企業としての利益率と資本効率を失う10年である。
- ヘルスケアオートメーション事業(旧メディア事業):数量 21,000(年間収益化する薬局等の保有施設数(施設。期末契約施設数を代表数量とする))× 価格 0.00(1施設当たりの年間合成売上(億円/施設・年。月額料、受付関連収益、広告、初期導入費を含む))→ 売上 47 億円・営業利益 10 億円。薬局契約数は2.1万に減少し、利用頻度と価格も低下。予約仲介からの収益力が弱まる。
- みんなのお薬箱事業:数量 2,300(年間医薬品流通取扱額の2026年価格固定換算(億円・実質取扱規模))× 価格 0.02(実質取扱額1億円当たりの売上収益率(億円/億円。薬価等の名目変化を価格側に含む))→ 売上 38 億円・営業利益 7 億円。流通額は実質で現状並みとなり、仲介収益率は低下。卸大手との競争が激化する。
- 基幹システム事業:数量 5,600(基幹システム利用施設数(施設))× 価格 0.00(1施設当たり年間売上(億円/施設・年。初期導入・月額保守・利用料を含む))→ 売上 24 億円・営業利益 2 億円。AI代替と競争で数量は現在の約0.66倍。維持費が残るため利益率も大きく低下。
- ウェルネスプラットフォーム・その他:数量 7,000(年間の健診サポート完了件数相当(件。その他事業も含む代理数量))× 価格 0.00(完了件数相当当たり年間合成売上(億円/件))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。健診事務の自動化による受託減少。固定のシステム維持費が赤字を生む。
倍率:事業純利益約8.70億円、余剰現金を除く自己資本208億円で事業ROE約4.2%となり、資本コスト7.5%を下回る。新規投資で価値を増やせないため、正当化PERの上限は1÷7.5%=13.33倍。やや悲観では競争による継続利益の減少を考え、稼ぐ力の価値として10倍とする。余剰現金15億円の利息0.21億円を除き、戻り方0.75を適用すると(8.91−0.21)×10+15×0.75で約98.2億円。これは中立のPBRを大きく下回る。
確率:薬局契約の多さは残るが、処方箋予約の利用者がAIや薬局独自アプリへ移る可能性は現実的である。基幹システムでも電子カルテ・薬歴の操作部分が自動化され、価格維持が難しい。会社固有のEPARK依存、規制の影響、買収に伴う固定費を考え25%とする。
悲観 15% 基盤の競争優位が失われ、資産価値が中心となる 利益 −4 億円 · PBR 0.3 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 268 円30 億円
患者は電子処方箋とAIアシスタントを通じて薬局を選び、EPARKの予約ページを開かなくなる。多くの薬局が最低限の契約を残しても、予約取扱件数と付加サービスへの支払額は減少する。薬局チェーンは自社予約機能を強め、行政は患者誘引に関係する付与施策をさらに制限する。従来のネットワーク効果は弱まり、薬局との契約数が残ることは高収益を保証しなくなる。
医薬品流通では、卸大手と薬局の直接連携が強まり、共同仕入れや不動在庫仲介の競争力を失う。既存の参加薬局はサービスを利用し続けても、取引額は減少し、仲介手数料は圧縮される。固定の倉庫費用、物流費、システム維持費が残り、事業収益は著しく減る。
基幹システム事業はAIを前提とする新しい競合製品に置き換えられる。電子薬歴などの保存義務は続くが、既存子会社の製品群を維持する経済的な理由が弱まる。買収によって積み上げたのれんやソフトウエア、将来利益を前提に計上した繰延税金資産の減損が発生する。後半には営業赤字となり、株主への配当も停止する。
当初の純現金と一定の売掛金回収力があるため、ただちに法的整理へ向かうわけではない。しかし、会社の価値は将来の高い利益より、残った現金と換金可能な資産に近づく。これまでの高ROE企業という評価が完全に失われる筋書きである。
- ヘルスケアオートメーション事業(旧メディア事業):数量 14,000(年間収益化する薬局等の保有施設数(施設。期末契約施設数を代表数量とする))× 価格 0.00(1施設当たりの年間合成売上(億円/施設・年。月額料、受付関連収益、広告、初期導入費を含む))→ 売上 27 億円・営業利益 2 億円。薬局契約と予約利用が大きく減り、価格も低下する。広告・販促収益も縮む。
- みんなのお薬箱事業:数量 1,100(年間医薬品流通取扱額の2026年価格固定換算(億円・実質取扱規模))× 価格 0.01(実質取扱額1億円当たりの売上収益率(億円/億円。薬価等の名目変化を価格側に含む))→ 売上 15 億円・営業利益 1 億円。流通の取扱数量が現状の半分以下となり、手数料競争が進む。
- 基幹システム事業:数量 3,380(基幹システム利用施設数(施設))× 価格 0.00(1施設当たり年間売上(億円/施設・年。初期導入・月額保守・利用料を含む))→ 売上 12 億円・営業利益 −1 億円。AI代替で数量は約0.40倍、価格は約0.85倍。残存システムの維持が赤字となる。
- ウェルネスプラットフォーム・その他:数量 4,200(年間の健診サポート完了件数相当(件。その他事業も含む代理数量))× 価格 0.00(完了件数相当当たり年間合成売上(億円/件))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。健診事務の多くが自動化され、受託収益が縮小する。
倍率:2036年の純利益は赤字のためPERによる永続価値は採用しない。今の自己資本113.5億円を起点に、前半の利益蓄積を後半の赤字と約55億円規模の無形資産・繰延税金資産等の減損が相殺すると考え、10年後の自己資本を約113億円とする。損なわれた簿価に通常の収益企業の倍率を付けず、純現金と税後換金資産の床約30億円を上限に近い評価として、113億円×PBR0.266=約30.1億円とする。今の自己資本に同倍率を掛けても約30.2億円となり整合する。過去のPBRの谷から決めた倍率ではない。
確率:医療サービスの需要そのものは残るため全面消滅は想定しない。ただし患者導線を外部AIが握り、卸大手の調達基盤に負け、ソフトの更新投資も回収できなくなる事態はあり得る。買収資産と繰延税金資産の減損が重なる構造的な敗北として15%とする。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
ヘルスケアオートメーション事業(旧メディア事業)
EPARKくすりの窓口、EPARKお薬手帳、処方箋ネット受付、薬局向け販促、受付自動化など。自社の患者・薬局ネットワークを持つプラットフォーム部分と、AIで代替される操作画面・受付支援部分が混在する。
| 数量年間収益化する薬局等の保有施設数(施設。期末契約施設数を代表数量とする) | 価格1施設当たりの年間合成売上(億円/施設・年。月額料、受付関連収益、広告、初期導入費を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 24,539 | 0.00 | 50 | 16 |
| 10 年後 中立 | 27,000 | 0.00 | 70 | 22 |
取り方:2026年3月期有報の旧メディア事業売上50.19868億円と、同年度末の処方箋予約サービス導入施設24,539を用いる。1施設当たり年間合成売上は約20.46万円。予約手数料・月額料金・広告・初期費用が混在するため、契約単価そのものではなく売上を説明する代理指標である。2026年3月期の予約数726.4万件、国内対象市場約4.5億枚に対する市場シェア約2%も別に確認した。年間平均施設数でなく期末施設数を使うため、初期単価には近似誤差がある。営業利益16.0億円は非開示につき分析上の配賦で、報告セグメント利益ではない。AI分類は自社媒体プラットフォームを主とし、受付・販促の画面依存部分には席課金型・広告運用型の代替圧力を認める。中立の施設数量は現在とほぼ同じ水準にとどめ、単価も物価上昇率を下回る伸びとする。
みんなのお薬箱事業
薬局の共同仕入れ支援、不動在庫の売買仲介、eオーダーによる在庫管理・自動発注。実物医薬品の取引仲介が収益の中心であり、操作画面が代替されても取引先網の価値は残り得る。
| 数量年間医薬品流通取扱額の2026年価格固定換算(億円・実質取扱規模) | 価格実質取扱額1億円当たりの売上収益率(億円/億円。薬価等の名目変化を価格側に含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2,321 | 0.02 | 35 | 10 |
| 10 年後 中立 | 3,750 | 0.02 | 70 | 18 |
取り方:2026年3月期有報の年間医薬品流通額2,321億円と事業売上35.47309億円を使用し、合成収益率を約1.53%と推定した。これは公表された契約手数料率ではない。流通額に連動しない月額収益、初期費用なども含む実効収益率である。対象市場は会社の2027年3月期第1四半期資料にある国内医薬品流通約11.8兆円で、取扱シェアは約2%。中立では市場全体の実質数量は大きく伸びず、調達網への参加増によるシェア拡大を数量の主因とする。薬価は公定価格の改定を受け、合成収益率の上昇は一般物価の1.34倍より弱く見積もる。営業利益は非開示につき推定配賦。AIによる在庫発注の自動化は起こるが、実物の流通取引と卸・薬局ネットワークまで消失する型ではない。
基幹システム事業
調剤レセコン、電子薬歴、監査システム、電子カルテ、介護記録・請求などを販売する。法定記録の保存・請求機能は残るが、職員の画面操作と席課金に結び付いた付加価値はAI代替を受ける。
| 数量基幹システム利用施設数(施設) | 価格1施設当たり年間売上(億円/施設・年。初期導入・月額保守・利用料を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 8,439 | 0.00 | 35 | 5 |
| 10 年後 中立 | 7,160 | 0.00 | 33 | 5 |
取り方:2026年3月期有報の基幹システム事業売上34.84268億円と、同年3月末の基幹システム利用施設8,439を使い、1施設当たり合成年間売上は約41.29万円と推定した。2027年3月期第1四半期には買収効果もあり施設数9,743となったが、基準財務年度との混同を避け、現在値には2026年3月期末数を採用する。電子薬歴や請求記録には規制上の必要性があり、独自データの蓄積もあるものの、解約率5%未満、年単位の移行期間、法改正時の継続的な値上げ実績など2つ以上の定量的な堀の証拠は確認できない。そこで全体を強い『記録の正本』型とはせず、席課金・操作画面中心の業務SaaS型に保守的に分類する。中立の数量は10年で約0.85倍、価格は約1.10倍とし、AIエージェント代替の規定範囲内に収める。営業利益は分析上の推定配賦。
ウェルネスプラットフォーム・その他
健康保険組合向け健診予約・受診勧奨・特定保健指導とその他の小規模サービス。人手による事務支援はAIや自動化への置換を受けやすい。
| 数量年間の健診サポート完了件数相当(件。その他事業も含む代理数量) | 価格完了件数相当当たり年間合成売上(億円/件) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 14,059 | 0.00 | 3 | 0 |
| 10 年後 中立 | 9,841 | 0.00 | 3 | 0 |
取り方:2026年3月期有報の未病予防事業約1.458億円とその他事業約1.328億円の合計を基準とする。健診サポート完了数14,059件相当は会社説明資料から採用したが、合計売上には別のサービスも含むため、約1.98万円という単価は厳密な契約単価ではなく分析用代理値である。2027年3月期から人間ドック関連がヘルスケアオートメーションへ再分類されており、新旧区分の不一致にも注意が必要。健診事務・受診勧奨はAIエージェント代替のBPO型を基本とし、中立数量0.70倍、価格1.34倍とする。売上規模が小さいため、全社価値への寄与は限定的に見積もる。営業利益は非開示につき推定配賦。
リスクと懸念
AI エージェント代替
基幹システムではレセプト確認、電子薬歴作成、患者情報の照合といった操作をAIが代行できるようになる。記録を保管するシステムは残っても、人数や機能に応じた利用料には下落圧力がかかる。予約サービスも外部AIが患者と薬局を直接つなげば、EPARKの検索画面を経由しなくなる。人手不足が市場を広げても、従来型のソフトがその価値を回収できるとは限らない。
税効果による実績純利益の上振れ
2025年3月期と2026年3月期の法人税等調整額は大きなマイナスとなり、純利益を押し上げた。2026年3月期には営業利益26.8億円に対し、純利益29.5億円となった。繰延税金資産の認識が続くことを永久の利益成長と見なすと、ROEとPERの両方を誤る。長期の税負担が通常水準に戻ることを考慮しない分析は過大評価につながる。
医療制度と患者誘引規制
2026年6月の厚生労働省の事務連絡では、保険薬局における経済的利益による患者誘引が論点となった。会社は処方箋予約に関するアンケートとポイント付与を終了し、現在の影響は軽微としている。しかし、行政の解釈がさらに厳しくなる場合や電子処方箋の共通基盤が強化される場合には、集客施策と予約仲介料の経済性が変化する。
EPARKとの契約および大株主の影響
EPARKと共同保有者は2026年3月期末に約40.8%の議決権を保有していた。EPARK会員基盤を利用する契約とロイヤリティ支払いは事業上の重要な要素である。2026年3月期のロイヤリティ額は約5.1億円で、引下げは進んでいるものの、契約条件を少数株主が直接決めることはできない。提携関係の変化や利益相反、将来の株式売却による影響に注意を要する。
医薬品卸との競争と流通手数料の低下
みんなのお薬箱は年間2,321億円の流通を扱うが、国内市場全体に対するシェアは約2%にすぎない。医薬品卸大手や薬局チェーン自身が在庫最適化と調達支援を強めれば、利用者は競合サービスを比較するようになる。流通額が増えても手数料率が下がれば、売上と利益は想定ほど伸びない。薬価改定や後発薬の供給問題も取引額と採算に影響する。
M&Aと無形資産の減損
基幹システム企業や周辺サービスの買収は顧客基盤を広げる一方、製品の統合や人材の維持に費用がかかる。2026年3月期の貸借対照表には多額のソフトウエア、のれん、繰延税金資産が計上されている。事業の成長が止まれば、これらは換金できる資産ではなく、減損の対象となる。投資後の増分営業利益と投下資本の関係を確認する必要がある。
自社株買い後の株数と資本配分
2026年10月23日に公表された自己株取得は累計325,700株、約8億円に達した。分析基準の株数は添付の2026年8月末基準を使用しているため、その後の取得を機械的に二重反映していない。買戻しが継続すれば株主価値を高める可能性はあるが、買収や新株予約権行使による株数増加との兼ね合いも見る必要がある。利益に比べて高い価格で買い戻すなら、資本効率の改善と株主価値の増加は同義ではない。
今後の分かれ目
- 医薬品流通額が実質で年5%以上伸び、実効収益率もおおむね維持されたら
- みんなのお薬箱が物理的な取引ネットワークとして強まっている証拠となる。中立の実質取扱額と利益率を上方修正し、やや楽観の確率を引き上げる。
- 処方箋ネット受付が年間1,000万件を超え、薬局当たり利用件数も増えたら
- 単なる施設獲得から患者利用の深耕へ進んでいると判断する。予約仲介の数量見通しを改善する。ただしポイント施策に依存しない利用増加か確認する。
- 基幹システムの契約施設数が増えても、1施設当たりストック粗利が連続して低下したら
- AI代替や競争による価格低下が進んでいるとみなし、基幹システムの価格と利益率を引き下げる。将来のg_longも上方には修正しない。
- 2030年3月期にストック売上200億円、営業利益50億円以上を達成し、税効果を除いた現金利益も伸びたら
- 中立の売上と利益を大きく引き上げる根拠になる。買収による一時的な連結増加でなく、既存顧客の継続収益と高い増分ROICによる達成かを重視する。
- 厚生労働省の運用変更で処方箋予約の付与施策や手数料方式がさらに制限されたら
- ヘルスケアオートメーションの単価と契約継続率を見直し、やや悲観・悲観側の確率を引き上げる。予約そのものが禁止されると決め付けず、実際に制限される収益を特定する。
- 大型M&A後にのれん・ソフトウエア資産が増える一方、営業キャッシュフローが改善しなかったら
- 利益を買収に再投資した増分利回りが資本コストを下回る疑いが強まる。将来の現金蓄積を減らし、減損を織り込んで中立・悲観双方の価値を引き下げる。
見ておくもの
- 処方箋ネット受付件数、予約対象市場シェア、1施設当たり受付件数
- ヘルスケアオートメーションの保有施設数とストック粗利、月額利用収益
- みんなのお薬箱の年間流通額、実効売上収益率、参加薬局数
- 基幹システムの保有施設数、1施設当たりストック粗利、法改正特需を除いた売上
- 通常の法人税負担を反映した純利益、営業キャッシュフロー、繰延税金資産の変動
- 2030年3月期のストック売上200億円・営業利益50億円以上・10万施設の達成状況
- EPARKとのロイヤリティと会員基盤契約、行政の患者誘引・電子処方箋政策
- 買収額、のれん・ソフトウエア増減、買収後の増分ROIC
- 配当総額、自社株買い、株式発行・新株予約権行使を差し引いた実質株数
倍率と資本コストの決め方
分析の順序は、薬局契約施設数、医薬品の実質流通額、基幹システムの利用施設数、健診完了件数という数量から売上を積み上げ、次に事業ごとの採算と税効果を除いた純利益を考えた。今の市場PERや過去のPBRの安値から10年後の倍率を決めていない。中立の正当化PERは資本コスト7.5%、10年以降のg1.5%、普通の堀の残存割合2分の1から導いた14.34倍である。
AIエージェント代替は基幹システムと健診事務の数量・価格、全社のg_longに反映した。資本コストの寿命上乗せには使っていない。医薬品流通はAIでも実物の取引が残るため、ソフトと同じ縮小率を一律に当てていない。中立の営業利益は2026年実績の山を無理に超えるのではなく、流通取扱シェアの拡大と収益構成の変化を根拠とする。本社費・管理費の上昇は調整額にも反映した。既存の償却額を単純に物価1.34倍にはせず、更新投資と新しいソフト開発の費用を利益率に含める。
10年間の純利益と還元の差が自己資本の増加におおむねつながることを確認し、余剰現金は各筋書きで明示して二重に足していない。中立の10年後時価総額約440億円だけを見れば成長しているが、資本コストによる割引と悲観時の大幅な価値毀損を考慮すると、現在価値は約214億円となる。基準時価総額261.5億円との差は約マイナス18.3%であり、結論はやや割高とした。2026年10月の自己株取得は資本政策として反映したが、基準株数は指定された2026年8月末の数値を維持し、その後の取得を二重控除していない。2027年4月以降開始年度に適用される新リース基準による貸借対照表の表示変更も、事業価値の増減として機械的に扱わない。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。10年国債3%と株式リスクプレミアム4.5%を合計した7.5%。技術変化、規制、親会社に近い株主との取引、買収失敗は追加の資本コストでなく各筋書きと確率に反映する。