結論
ZenmuTechは、パソコンの機密データを分割して保護する「ZENMU Virtual Drive」を主力とする情報セキュリティ企業である。筆者の結論は「割高」だ。独自技術と市場開拓の余地は評価できるが、現在の時価総額約114億円を正当化するには、秘密分散技術を大規模な継続収益へ育てる必要がある。
主力製品の導入ライセンスは2025年末に約11.5万、2026年6月末には約12.6万へ増えた。顧客のデータを端末内だけに置かない仕組みは、情報漏洩やランサムウェア対策として今後も必要とされる。国内の仮想デスクトップ利用者は約802万人とされ、置き換えや併用を提案できる市場も大きい。ただし、対象市場が大きいことと、同社がその市場を獲得できることは別問題である。
慎重になる最大の理由は、収益の再現性と拡張性がまだ十分に証明されていないことだ。2025年は売上約8.5億円、営業利益約1.4億円だったが、2026年上期は売上がほぼ横ばいで営業赤字となった。秘密計算の受託案件が減ったうえ、営業と研究開発の固定費が先行している。会社が掲げる2030年までの高成長目標と、足元の業績との間には大きな距離がある。
10年後には主力製品の採用拡大と組み込み技術の使用料収入によって、今より大きな会社になる可能性は十分ある。一方、Microsoftなどの標準機能との競争、顧客のIT予算、AIによる業務自動化が、その成長の果実を削る可能性もある。5つの筋書きの確率を加味した現在の本質価値は約43億円で、現在の時価総額を約63%下回る。事業の存在価値は認めても、株主が今払う価格には十分な安全域が見いだせない。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主の見方では、魅力的な技術を持っていることと、魅力的な投資先であることは違う。機密データを分散して保護する仕組みには、10年後も必要とされる理由がある。2026年9月に公表された医療分野向けの秘密分散プロキシ技術は、その用途がパソコン以外にも広がる可能性を示した。既存顧客の解約率が低いことも、製品が日常の業務に定着し始めた証拠として評価する。
一方、所有者が長期に受け取れる利益は、会計上の純利益より少ない可能性がある。製品の改良、OSへの継続対応、販売代理店の育成、セキュリティ評価、研究開発には資金が必要だ。2025年の研究開発費約1.07億円を削って短期利益を増やしても、競争力の持続にはつながらないだろう。営業利益率が高くなる将来ほど、競合の標準機能との競争に備える継続投資を忘れてはいけない。
同社が真に優れた企業になる道は、端末製品で顧客を増やしながら、ZENMU Engineを他社製品に組み込ませ、少ない追加費用でロイヤルティが増える仕組みを作ることだ。そこで得られる増分の投下資本利益率が資本コストを上回れば、現在の小さな利益は将来の姿を過小評価していることになる。しかし、共同開発の発表だけでは投資収益率はわからない。
筆者が最も重視するのは、安全域である。現在の時価総額を正当化するには、既存製品の採用拡大だけでなく、まだ小さい組み込み事業の成功まで必要になる。技術に将来性があるという理由だけで、成功した姿の価値を先払いしたくはない。製品の価値を認めながら、株主としての取得価格には厳しくあるべき会社だ。
何で稼ぐ会社か
稼ぎ頭は「ZENMU Virtual Drive」だ。パソコン内のデータを秘密分散技術で無意味な断片に分け、端末とクラウドなどに分散して保存する。端末を紛失したり、内部に侵入されたりしても、端末側に残った断片だけでは元の機密情報を復元しにくい。仮想デスクトップのように画面を常時転送する仕組みではないため、通信環境や既存パソコンの使い勝手を保ちやすいことが売りである。
販売先は、大企業、金融機関、専門職事務所、自治体など、端末からの情報漏洩を嫌う組織である。収益には月額・年額のサブスクリプションと、買い切りライセンスに付随する保守契約がある。公開されている標準料金は月額1,800円、年額21,600円だが、2025年の製品売上を期末の導入ライセンス数で割ると、年間約5,800円となる。この差は、大口割引、保守契約、期中導入時期、一時的な大型案件が混在するためであり、実際の契約単価そのものを意味しない。
「ZENMU Engine」は秘密分散技術を他社製品に組み込むための基盤である。データ転送、医療、通信、ドローンなどの用途で提携先が製品を普及させれば、同社は顧客の数だけ直接営業しなくても技術使用料を得られる。2026年9月には医療AIプラットフォーム技術研究組合と、特許取得済みの秘密分散プロキシ技術を利用した事業開始で合意した。ただし、共同開発や事業開始の発表を、継続的なロイヤルティ収入の実績と同一視してはいけない。
「QueryAhead」は、機密情報を平文で共有せずに計算・分析する秘密計算技術である。官公庁の研究開発受託などで売上を得てきたが、案件ごとの発生時期に左右される。会社は継続課金型の「QueryAhead Hub」への転換を目指しているものの、2026年上期時点では、そのARRや有料契約数を評価できるだけの定量開示がない。
会計上の報告セグメントは情報セキュリティ事業の単一セグメントである。本分析では経済性を区別するため、ZENMU Virtual Drive、ZENMU Engine、QueryAhead、その他の4つに分ける。製品別売上は会社開示を使い、製品別利益は非開示のため推定する。
優良さと弱いところ
最大の強みは、秘密分散という技術を、企業が実際に導入できる端末製品に仕立てたことだ。暗号化だけに頼らず、端末に完全なデータを置かない設計は明確な利用価値を持つ。低い解約率も好材料である。2025年の解約率は約1.2%とされ、2026年上期の公表値には買い切りライセンスへの移行による見かけ上の解約が含まれる。これを除いた率は約0.4%と説明されている。
ただし、低解約率だけで強固な堀、つまり競合が奪えない優位を認定するのは早い。顧客システム全体を何年もかけて移行しなければならない構造や、法改正のたびに値上げを通せる実績は確認できない。導入期間の短さは新規営業では魅力だが、競合製品への乗り換えを阻む壁にもなりにくい。Microsoftの端末管理・暗号化・クラウド保護機能、CitrixやOmnissaなどの仮想デスクトップ、国内のデータレス端末製品が、顧客の同じ予算を争う。
2025年のROEは高かったが、これをそのまま将来の投下資本利益率と考えない。2022年まで赤字が続き、2025年の自己資本増加には新規上場時の増資が含まれるため、長期間の再投資効率を測る材料が不足している。2025年の研究開発費は約1.07億円で、売上に対する比率も高い。開発投資から新しい継続売上がどれだけ生まれたかを、今後の数字で確かめる必要がある。
財務には相応の余裕がある。2025年末の純現金は約6.6億円で、自己資本比率は約63%だった。しかし契約負債に対応するサービス提供義務と、開発・営業に必要な運転資金を考えれば、現金のすべてを株主が自由に引き出せるわけではない。結局、現段階の堀は「有望な独自技術と既存顧客の継続性」であり、「価格と採用市場を支配する強い堀」には達していない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
情報セキュリティ需要は、10年後も消えにくい。端末の紛失、不正アクセス、委託先からの情報流出、ランサムウェア被害は、業務の自動化が進んでも残る。むしろAIエージェントが企業データを自動的に読み書きするほど、アクセス権限と機密データの隔離は重要になる。ZENMU Virtual Driveの価値は人が画面を操作することではなく、機密データを安全に保持することにあるため、通常の画面中心の業務SaaSとは区別すべきである。
会社資料によれば、国内の仮想デスクトップ利用者は約802万人、ホワイトカラー就業者は約2,700万人と推計される。2025年末の同社導入ライセンス約11.5万は、仮想デスクトップ利用者規模の約1.4%に相当する。ただし、この比較は置き換え・併用の余地を示すものであり、国内セキュリティ市場における厳密な同社シェアではない。仮想デスクトップとZENMU Virtual Driveは機能が完全には一致せず、併用する顧客もいる。
競争相手はMicrosoftのIntune、BitLocker、Azure Virtual Desktop、Citrix、Omnissaのほか、国内のセキュア端末・データレス端末各社である。これらの競合製品の同一定義による利用台数別シェアは公開資料で確認できないため、恣意的な順位は付けない。市場を広げる際の最大の障害は技術だけではなく、大企業の標準端末への採用審査、販売代理店の営業能力、既存システムとの適合性、保守対応力である。
数量面では、既存顧客の端末数だけでなく、VDIからの置き換え、新規導入企業数、Macやクラウド環境への対応範囲が効く。価格面では、標準製品の料金を上げる余地があっても、大口のIT調達では競争入札と包括契約による値下げ圧力が強い。10年間の物価上昇をそのまま売価に転嫁できるとは考えない。
秘密計算市場はさらに不確実である。国内ではNTT、NEC、研究機関やプライバシー技術の新興企業が関連技術を開発しているが、統一定義の商用利用件数や企業別シェアを確認できない。研究開発予算の規模と商用ソフトウェア市場の規模は異なる。医療・金融・行政の実証実験が増えても、技術使用料や継続契約が伴わなければ、株主価値には直結しない。
資本政策と M&A
経営陣は2030年12月期に向けた「triple 30 Plan」を掲げ、2025年を起点とする売上高の年平均成長率30%と、営業利益率30%を目指している。2025年の売上高約8.5億円から計算すると、2030年の売上目標に相当する規模は約31.6億円となる。さらに203X年の売上100億円という長期構想がある。ただし、これらは会社の目標であって受注済みの売上ではない。中期計画にROEの明確な数値目標はなく、配当性向、DOE、総還元性向、自社株買い額についても数字の約束なしである。
2025年の上場によって調達した資本は、営業体制と研究開発の強化に振り向けられている。2026年上期の赤字は、その費用が収益より早く発生する構造を示した。2026年9月のHAIPとの事業開始や、台湾企業との技術協業は成長の選択肢を増やすが、提携先の数と利益への寄与を混同しない。大型買収によって再投資利益率を高めた実績も、まだ確認できない。
会社は創業以来、配当を実施していない。有価証券報告書でも成長投資を優先する方針を示しており、短期間に大きな現金還元を想定する根拠は乏しい。上位10株主の保有比率は2025年末で約37%と、余剰現金の価値を半分に割り引くほどの集中支配条件には当たらない。一方、増配や大規模な自社株買いの実績もないため、余剰現金が最終的に株主へ戻る割合は慎重に評価する。
買収される可能性は選択肢として存在するが、現在の価値評価には買収プレミアムを含めない。資本配分の成否は、研究開発費と提携投資が、契約数、実現単価、継続利益をどれほど増やしたかで判断する。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
端末からの情報漏洩を減らす必要性は、AI時代にも変わらない。ZENMU Virtual Driveは、既存パソコンを使い続けながら機密データを端末内だけに残さないという明確な便益を提供する。VDIには導入・運用コストや通信環境への依存という弱点があり、そのすべてを同じ仕組みで守る必要はない。既存のVDI利用者約802万人とホワイトカラー約2,700万人を考えれば、2025年末の11万台余りという導入規模には大きな開拓余地がある。
大企業の情報システム部門が一度標準端末として採用すれば、更新や保守が積み上がる。既存顧客の解約率が低いことは、すでにその兆しである。2026年上期には、買い切りと保守を含む導入ライセンスが約12.6万に増えた。Mac対応や秘密分散ストレージの開発が進めば、従来提案できなかった端末や利用場面にも販路を広げられる。
さらに大きな価値を持つのは、端末製品ではなくZENMU Engineかもしれない。医療情報の通信、ドローン、機密データ転送などに秘密分散技術が組み込まれれば、提携企業が市場を広げるたびに使用料収入を得られる。2026年9月にはHAIPとの特許技術を使った事業開始が発表された。用途ごとの組み込み契約が商用収益へ転換すれば、営業人員を同じ割合で増やさなくても売上を伸ばせる。
2030年の高成長目標は野心的だが、市場開拓の初期段階にあることを考えれば不可能と決めつけるべきではない。2026年上期の損失は、人材と開発費を先行投入した結果とも読める。端末製品の大幅普及と技術使用料の成長が同時に起きれば、会社が長期構想として掲げる売上100億円規模も射程に入る。その場合、現在の事業規模だけを根拠に価値を判断することは、成長余地を大きく見落とす。
慎重な見方
秘密分散技術が有効であることは、ZenmuTechが長期的に大きな利益を独占できることを意味しない。情報セキュリティ製品は、顧客が買う製品そのものよりも、既存の端末管理基盤にどれだけ自然に組み込めるかが決め手になる。MicrosoftがOS、端末管理、クラウド保存、アクセス制御を組み合わせれば、顧客は専用製品を追加する理由を厳しく問い直す。技術の優秀さでは勝っても、導入の手間と総費用で負けることはある。
2025年の売上には大口の買い切り案件が含まれ、期末ライセンス数に標準月額料金を掛けた額が、そのまま翌年の継続売上になるわけではない。2026年上期は、ZENMU Virtual Driveの売上が増えたにもかかわらず、全社売上はほぼ横ばいだった。QueryAheadの官公庁案件が減り、開発と営業の費用が増えたからだ。主力製品の成長と全社利益の成長が一致しない構造が、すでに見えている。
秘密計算の受託案件はAIエージェント代替にさらされる。調査、設計、コード作成、実証実験の一部を自動化できるようになれば、従来の人月や工数に基づく契約単価と必要工数が縮む。QueryAhead Hubへの転換が成功すれば問題は緩むが、継続課金型の商用契約が十分に積み上がったという数字はまだない。ZENMU Engineについても、共同開発や特許取得と、量産時に得られる使用料は別物である。
財務面では、2025年の高いROEは過去の赤字からの回復期に得られた短い実績にすぎず、増資を経た資本で同じ利益率を何年も出せる証拠ではない。会社は2030年に高い成長率と利益率を目指すが、2026年上期は計画の進捗が遅く、通期達成は下期の案件計上に依存する。現時点の時価総額は、製品採用の拡大、利益率の改善、組み込み技術の成功を相当程度先取りしている。10年間でどれか一つが外れるだけでも、株主の期待収益は大きく落ちる。
どちらに重みを置いたか
技術の独自性と市場の余地については成長を期待する根拠がある。しかし、現在の企業価値を説明するには、将来の組み込み使用料と大企業への普及が必要であり、その実績はまだ薄い。中立の筋書きでも売上と利益の拡大を認めるが、それだけでは現在の時価総額に届かない。確率は楽観側26%に対し、やや悲観と悲観を合わせて40%とした。下に寄せる理由は、2026年上期の計画未達、受託案件への依存、大口契約の偏り、開発費先行である。AI代替による数量の減少はQueryAheadの予測に織り込んでおり、同じ理由を資本コストに重ねていない。結論は、事業を評価しつつ価格には慎重な「割高」である。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 3,330 円91 億円(+ 還元の換算額還元の合計 122 円3 億円)。 今の値に割り戻すと 1,663 円45 億円、今との差 −60.2%、 期待の年率 −1.9%(資本コスト 7.8%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 15,490 円422 億円 | 550 円15 億円 | +283.7% | +14.8% | 1,283 円35 億円 |
| やや楽観 | 18% | 6,489 円177 億円 | 293 円8 億円 | +62.3% | +5.1% | 1,221 円33 億円 |
| 中立 | 34% | 2,413 円66 億円 | 73 円2 億円 | −40.5% | −5.1% | 845 円23 億円 |
| やや悲観 | 26% | 320 円9 億円 | 0 円0 億円 | −92.4% | −22.7% | 83 円2 億円 |
| 悲観 | 14% | 139 円4 億円 | 0 円0 億円 | −96.7% | −28.8% | 20 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,330 円91 億円 | 122 円3 億円 | −17.4% | −1.9% | 3,452 円94 億円 |
今の株価時価総額 4,180 円114 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 8% 端末標準化と組み込み収益が同時に成功 利益 28 億円 · PER 14.3 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 15,490 円422 億円
ZENMU Virtual Driveは大企業の標準端末へ本格採用され、金融、公共、医療、専門職の市場へ広がる。国内VDI利用者への置き換え提案に加え、VDIと併用する組織も増え、導入ライセンスは110万件に達する。これは2025年末の約9.5倍であり、ホワイトカラー推計人数の約4%に相当する。競合との全面的な価格競争を避けつつも大口契約が中心になるため、実現単価の上昇は物価上昇を下回る。
ZENMU Engineは医療AIプラットフォーム技術研究組合などとの協業を起点に、有償用途が大きく増える。秘密分散プロキシや各種組み込み製品の利用が広がり、売上の重要部分が継続的な使用料となる。技術の提供先がそれぞれ市場を開拓するため、ZenmuTechの営業人員増加より速く収益が伸びる。QueryAheadでも採算の取れる案件が残るが、成長の主役はあくまで端末製品と組み込み事業だ。
2035年の売上は100億円を超え、営業利益率も会社の長期目標に近い水準へ上がる。開発投資と販売投資を続けながら、一定の配当・自社株買いを始められる。強い技術が実際の経済的な堀に育つ、実現すれば大きな価値を生む筋書きである。
- ZENMU Virtual Drive:数量 1,100,000(期末導入ライセンス数(サブスクリプションと保守契約の合計、件))× 価格 0.00(ライセンス1件当たりの年間売上認識額(億円、買い切り・保守・サブスクリプションの混合))→ 売上 77 億円・営業利益 25 億円。導入110万件、混合実現単価年7,000円。2025年比数量9.53倍、価格1.20倍。大企業標準化により利益率32%。
- ZENMU Engine:数量 180(年間有償OEM・開発用途の契約換算件数(推定))× 価格 0.21(契約換算1件当たり年間売上(億円))→ 売上 38 億円・営業利益 16 億円。有償OEM・使用料契約換算180件。量産用途を含むため平均契約収益は拡大。継続ロイヤルティ化で営業利益率43%。
- QueryAhead・秘密計算:数量 4.0(年間受託案件換算件数(推定、実際の契約件数ではない))× 価格 0.45(受託案件換算1件当たり売上(億円))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。受託案件換算数量は2025年並みで、成果物の高付加価値化により採算改善。未確認のAIサービス収益は含めない。
- その他・関連保守:数量 8.0(年間サービス契約換算件数(推定))× 価格 0.04(契約換算1件当たり年間売上(億円))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。関連契約8件相当。保守中心に緩やかに増える。
倍率:自己資本は2025年末約8.1億円を起点に、10年間の純利益累計約146億円を加え、株主還元累計15億円を差し引いて約139億円とする。2035年のROEは27.5÷139=19.78%。k=7.75%、堀normalの超過収益残存率1/2からRONIC=7.75%+0.5×(19.78%−7.75%)=約13.77%。g_long=1.5%を使う正当化PER=(1−0.015÷0.1377)÷(0.0775−0.015)=約14.26倍となる。以前の自己資本75億円と、それに基づく高いROE・PERは使用しない。現在余剰現金2億円の税後利息0.028億円を純利益から控除し、戻り方75%の1.5億円を別途加える。
確率:主要な大企業の標準端末として採用され、医療・通信などのOEM契約が大幅に増え、技術使用料の高い利益率まで実現する必要がある。現在は商用ロイヤルティの実績が小さいため8%とした。
やや楽観 18% 企業端末への採用拡大とOEMの商用化 利益 12 億円 · PER 14.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 6,489 円177 億円
ZENMU Virtual Driveは、既存の大口顧客から関連部署へ展開し、新たな販売代理店を通じて企業端末への採用を増やす。VDIを完全に置き換えるだけではなく、用途に応じて併用する導入も進む。Macへの対応やデータ保護機能の拡張により、販売先の範囲も広がる。導入ライセンスは65万件へ増えるが、大企業の調達価格は厳しく、平均の実現単価は物価ほど上がらない。
ZENMU Engineでは、医療と通信を中心に商用契約が増える。契約先の製品が一定数普及することで、開発一時金だけではなく使用料収入が積み上がる。ただし、技術の採用先がすべて量産へ至るわけではなく、案件ごとの収益規模には差が残る。QueryAheadの受託案件はAIによる開発効率化と官公庁予算の変動を受けるが、専門性の高い研究開発部分は維持できる。
売上の拡大とともに営業費用の比率が下がり、研究開発費を増やしても利益が残るようになる。経営陣は大きな買収に頼らず、販売網と製品群を広げる。一定の株主還元を始めながら純資産を積み上げられるが、技術の独占力までは証明されず、収益性は強い競争力を持つ中堅ソフトウェア企業の水準に落ち着く。
- ZENMU Virtual Drive:数量 650,000(期末導入ライセンス数(サブスクリプションと保守契約の合計、件))× 価格 0.00(ライセンス1件当たりの年間売上認識額(億円、買い切り・保守・サブスクリプションの混合))→ 売上 45 億円・営業利益 13 億円。導入65万件、年間実現単価6,850円。数量は2025年比5.63倍、価格は1.18倍。
- ZENMU Engine:数量 80.0(年間有償OEM・開発用途の契約換算件数(推定))× 価格 0.15(契約換算1件当たり年間売上(億円))→ 売上 12 億円・営業利益 5 億円。有償OEM・使用料契約換算80件。初期開発費の比率が下がり、使用料の利益寄与が増える。
- QueryAhead・秘密計算:数量 3.5(年間受託案件換算件数(推定、実際の契約件数ではない))× 価格 0.45(受託案件換算1件当たり売上(億円))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。受託案件換算は2025年比0.875倍。高付加価値の専門開発への集中で利益率改善。
- その他・関連保守:数量 7.0(年間サービス契約換算件数(推定))× 価格 0.04(契約換算1件当たり年間売上(億円))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。周辺契約7件相当。
倍率:自己資本は2025年末約8.1億円を起点に、10年間の純利益累計約66億円を加え、株主還元累計8億円を差し引いて約66億円とする。2035年のROEは11.6÷66=17.58%。k=7.75%、堀normalの超過収益残存率1/2からRONIC=7.75%+0.5×(17.58%−7.75%)=約12.66%。g_long=1.5%を使う正当化PER=(1−0.015÷0.1266)÷(0.0775−0.015)=約14.10倍となる。以前の自己資本40億円と、それに基づく高いROE・PERは使用しない。現在余剰現金の税後利息0.028億円を純利益から控除し、余剰現金2億円の75%を別に評価する。
確率:販売代理店の開拓と企業端末の採用拡大は現実的だが、OEMの有償契約を多数獲得する必要がある。主力製品だけでなく第二の収益源が育つ確度はまだ高くないため18%とする。
中立 34% 端末保護は普及するが成長投資と競争が利益を抑える 利益 4 億円 · PER 14.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 2,413 円66 億円
ZENMU Virtual Driveの導入ライセンスは33万件まで増える。国内VDI利用者の一部を置き換え、別の企業ではVDIと併用する。これは2025年末比では約2.9倍の採用拡大だが、国内ホワイトカラー全体の約1.2%にすぎない。市場開拓の余地が大きいため数量は伸びるものの、販売代理店の費用や大口顧客の割引要求から、実現単価の伸びは物価を下回る。
ZENMU Engineは医療、データ転送、通信などで小さな商用契約を積み重ねる。現在の開発案件の一部が継続的な使用料へ転換するが、世界的な標準技術として広く採用されるほどの独占力は得られない。QueryAheadの官公庁向け受託はAIエージェントによる調査・実装工程の効率化が進み、案件換算数量は2025年の65%となる。単価の上昇を含めても、この部分の売上は縮小する。
2035年の全社売上は約26.6億円、営業利益は約6.2億円となる。現状からは十分な成長だが、会社が2030年に掲げる高成長目標の達成を保証するものではない。営業と研究開発への再投資を続けることで利益は増える一方、自己資本も積み上がり、ROEは上場直後の高水準から平常化する。長期株主に利益は残るが、現在の時価総額を説明するほどの超過収益には至らない。
- ZENMU Virtual Drive:数量 330,000(期末導入ライセンス数(サブスクリプションと保守契約の合計、件))× 価格 0.00(ライセンス1件当たりの年間売上認識額(億円、買い切り・保守・サブスクリプションの混合))→ 売上 22 億円・営業利益 6 億円。導入33万件、年間混合実現単価6,600円。数量は2.86倍、価格は1.135倍。値上げ実績がないためCPIの1.34倍を採用しない。
- ZENMU Engine:数量 35.0(年間有償OEM・開発用途の契約換算件数(推定))× 価格 0.10(契約換算1件当たり年間売上(億円))→ 売上 4 億円・営業利益 1 億円。有償OEM・開発契約換算35件。平均契約収益1,000万円は2025年比1.38倍で、物価と契約用途の拡大を反映。
- QueryAhead・秘密計算:数量 2.6(年間受託案件換算件数(推定、実際の契約件数ではない))× 価格 0.42(受託案件換算1件当たり売上(億円))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。AIエージェント代替:受託案件換算数量は2025年の0.65倍、単価は1.27倍。継続課金化の未確認売上は算入しない。
- その他・関連保守:数量 6.0(年間サービス契約換算件数(推定))× 価格 0.04(契約換算1件当たり年間売上(億円))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。件数は横ばい、単価は1.2倍。
倍率:2035年のROEは4.4÷27=16.3%、k=7.75%。堀normalの残存率1/2からRONIC=約12.0%、g_long=1.5%。正当化PER=(1−0.015÷RONIC)÷(0.0775−0.015)=約14.0倍となるため、そのほぼ上限の13.95倍を採用。現在余剰現金の税後利息0.028億円を純利益から控除し、現金価値1.5億円を別途加える。
確率:国内での導入余地と低い既存顧客の解約率は主力製品の増加を支える。一方、2026年上期の費用先行とOEM事業の小ささを踏まえ、会社の2030年目標をそのまま延長しない。最も可能性の高い34%とした。
やや悲観 26% 端末採用が停滞し固定費を回収しにくい 利益 1 億円 · PER 12.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 320 円9 億円
ZENMU Virtual Driveは一定の顧客を守るが、大企業の新規採用が期待ほど進まない。Microsoftなどの端末管理・暗号化機能が改善し、専用製品の追加導入を見送る企業が増える。AIエージェントによる業務自動化も、人が管理するパソコンの必要台数を一部減らす。導入ライセンス数は2025年よりわずかに多い13万件にとどまり、大口顧客の価格交渉で実現単価もほぼ横ばいとなる。
ZENMU Engineは共同開発案件の一部を商用化できるものの、量産される製品は少ない。秘密計算分野では、研究開発受託の一般的な部分が自動化され、専門性が高い案件だけが残る。案件が縮小しても研究者・開発者の人件費をすぐに減らすことは難しく、固定費が利益を圧迫する。
この筋書きでも会社が直ちに存続不能になるとは考えない。保守契約の継続と端末の既存顧客が一定の収益を生み、経営が投資を抑制すれば小幅な黒字は維持できる。ただし、営業利益率は低く、利益に対して多くの自己資本を使う状態になる。新規事業の可能性を期待して高い値段を払った株主は、10年後の会社が生き残っていても、十分な利益を受け取れない。
- ZENMU Virtual Drive:数量 130,000(期末導入ライセンス数(サブスクリプションと保守契約の合計、件))× 価格 0.00(ライセンス1件当たりの年間売上認識額(億円、買い切り・保守・サブスクリプションの混合))→ 売上 8 億円・営業利益 1 億円。導入13万件。単価は2025年比ほぼ横ばいで、物価に追いつかない。
- ZENMU Engine:数量 10.0(年間有償OEM・開発用途の契約換算件数(推定))× 価格 0.08(契約換算1件当たり年間売上(億円))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。有償契約換算10件。量産案件が限定的で、開発費負担が重い。
- QueryAhead・秘密計算:数量 2.5(年間受託案件換算件数(推定、実際の契約件数ではない))× 価格 0.35(受託案件換算1件当たり売上(億円))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。AIエージェント代替により受託案件換算数量は0.625倍、価格は1.06倍。
- その他・関連保守:数量 5.0(年間サービス契約換算件数(推定))× 価格 0.03(契約換算1件当たり年間売上(億円))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。小規模な既存案件が残る。
倍率:ROE=0.55÷11=5.0%でk=7.75%を下回る。再投資による超過価値を認めず、稼ぐ力の上限1÷k=12.90倍を超えない12倍で評価する。現在余剰現金の税後利息を控除し、別途評価する現金1.5億円を加える。
確率:下に寄せる理由:国内大企業の標準化審査に時間がかかり、Microsoft等との競争で主力製品の採用が鈍る可能性がある。2026年上期の赤字と人員増加により下振れが利益へ直結するため26%とした。
悲観 14% 技術の差別化が薄れ、赤字事業へ後退 利益 −1 億円 · PBR 0.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 139 円4 億円
企業の端末管理とデータ保護が大手プラットフォームに統合され、ZENMU Virtual Driveを追加導入する理由が弱くなる。大口顧客の契約縮小により、導入ライセンスは6.5万件まで減る。残る顧客についても更新単価が下がり、端末製品の売上は大幅に縮む。秘密分散技術そのものは残るが、企業が独立製品として購入する価値を十分に維持できない。
ZENMU Engineでは、医療や通信分野の実証から継続的な使用料収入が十分に生まれない。大手企業が同等の機能を内製し、または別の暗号・アクセス制御技術を採用する。QueryAheadもAIエージェントによる研究開発工程の自動化と官公庁予算の削減が重なり、案件数と単価の両方が落ちる。開発人員と保守体制を抱えたまま売上が減るため、営業赤字が続く。
経営が事業縮小に踏み切っても、開発ソフトウェアの帳簿価額や過去の研究開発費をそのまま回収することはできない。普通株主に残る価値は、売却可能な現金等からサービス提供義務と整理費用を引いた額に近づく。新しい技術が生まれても、それを販売できる組織としての競争力は失われている。
- ZENMU Virtual Drive:数量 65,000(期末導入ライセンス数(サブスクリプションと保守契約の合計、件))× 価格 0.00(ライセンス1件当たりの年間売上認識額(億円、買い切り・保守・サブスクリプションの混合))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。導入6.5万件。数量は2025年比0.56倍、価格は0.86倍。標準機能との競争と大口契約減少。
- ZENMU Engine:数量 2.0(年間有償OEM・開発用途の契約換算件数(推定))× 価格 0.06(契約換算1件当たり年間売上(億円))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。商用用途がほぼ育たず、開発費を回収できない。
- QueryAhead・秘密計算:数量 1.5(年間受託案件換算件数(推定、実際の契約件数ではない))× 価格 0.25(受託案件換算1件当たり売上(億円))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。AIエージェント代替と公的案件縮小で数量は0.375倍、価格は0.76倍。
- その他・関連保守:数量 4.0(年間サービス契約換算件数(推定))× 価格 0.03(契約換算1件当たり年間売上(億円))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。一部の保守契約のみ残る。
倍率:営業赤字であるため利益倍率を適用せず、現在の自己資本8.1億円に対するPBRで評価する。8.1億円×0.47=約3.81億円。これは純現金6.6億円から契約負債の履行相当額約2.5億円と事業整理費用等約0.35億円を控除した床約3.75億円をわずかに上回る。開発ソフトウェアの帳簿価額を市場で売れる資産として評価しない。2035年までに積み上がった帳簿上の自己資本には床の倍率を掛けない。
確率:OS標準機能の充実、主力顧客の契約縮小、受託の自動化、組み込み用途の商用化失敗が重なる複合事象である。純現金が残るため直ちに破綻とまではしないが、技術企業としての優位を失う確率を14%とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
ZENMU Virtual Drive
パソコンのデータを秘密分散して保護する端末向け製品。サブスクリプションと買い切りライセンスに対する保守契約を含む。
| 数量期末導入ライセンス数(サブスクリプションと保守契約の合計、件) | 価格ライセンス1件当たりの年間売上認識額(億円、買い切り・保守・サブスクリプションの混合) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 115,417 | 0.00 | 7 | 2 |
| 10 年後 中立 | 330,000 | 0.00 | 22 | 6 |
取り方:2025年決算説明資料のZENMU Virtual Drive売上671百万円と2025年末導入ライセンス115,417件を使用。1件当たりの売上認識額は約5,814円で、標準料金21,600円とは異なる。大口買い切り案件、年間保守、導入時期、価格体系の違いが混在するため、これは実際の契約ARPUではなく数量×価格分析のための混合実現単価である。2026年6月末の導入数は126,072件。製品別営業利益は未開示で、全社営業利益1.4億円と整合するよう、製品の相対的な収益性を考慮して暫定配分した推定値である。国内VDI利用者約802万人、ホワイトカラー約2,700万人は潜在顧客の参考規模であり、同社の市場シェアを示すものではない。通常の画面操作型SaaSではなく情報保護の機能そのものを売るため、AI代替の一律の席数減少率は適用しない。ただしAIによる管理端末の減少と価格競争は予測に含める。
ZENMU Engine
秘密分散技術を他社製品・サービスに組み込むための開発基盤。初期開発収入と、将来的なOEM・使用料収入の可能性を持つ。
| 数量年間有償OEM・開発用途の契約換算件数(推定) | 価格契約換算1件当たり年間売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 4.0 | 0.07 | 0 | 0 |
| 10 年後 中立 | 35.0 | 0.10 | 4 | 1 |
取り方:2025年の会社開示売上29百万円を使用。契約件数・平均技術使用料・ロイヤルティ率は公表されていない。数量4件、単価725万円は同額を商用契約相当に分解するための明示的な分析上の仮定であり、実契約4件という会社発表ではない。医療向け秘密分散プロキシ、通信、データ転送などの提携・実証は確認できるが、提携件数を有償契約件数として加算しない。2035年の数量は有償用途が商用製品として定着する数、単価は各用途の契約・使用料の規模を表す。営業利益は製品別非開示のため推定。
QueryAhead・秘密計算
機密データを秘匿したまま分析する秘密計算技術。現状は官公庁の研究開発受託などフロー型の収益が中心である。
| 数量年間受託案件換算件数(推定、実際の契約件数ではない) | 価格受託案件換算1件当たり売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 4.0 | 0.33 | 1 | 0 |
| 10 年後 中立 | 2.6 | 0.42 | 1 | 0 |
取り方:2025年の会社開示売上132百万円を使用。実際の案件数と受託単価が開示されていないため、年間4案件相当、1件3,300万円という分析上の換算を採用した。これは会社の契約件数や価格表を示すものではない。2026年上期のQueryAhead売上は29百万円で前年同期比約67%減と受託需要の振れが明瞭である。人月・工数型の研究開発受託にAIエージェント代替を適用し、中立の数量は2025年比0.65倍、価格は1.27倍とする。長期名目成長は0%。QueryAhead HubへのSaaS・PaaS転換による未確認のARRは、中立売上に先取りして加算しない。営業利益は製品別非開示の推定値。
その他・関連保守
主力製品以外の関連サービスや保守・技術支援等の小規模収益。
| 数量年間サービス契約換算件数(推定) | 価格契約換算1件当たり年間売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 6.0 | 0.03 | 0 | 0 |
| 10 年後 中立 | 6.0 | 0.04 | 0 | 0 |
取り方:2025年の会社開示『その他』18百万円を使用。契約数の開示はないため、年間6契約相当、1契約300万円という明示的な推定に分解した。契約数・単価は実績値ではない。小規模な補完事業であり、10年後の主要な価値創出源とは見込まない。
リスクと懸念
AIエージェント代替と端末需要の変化
QueryAheadの官公庁向け研究開発受託には、人が行っていた調査、設計、プログラミング、検証の一部をAIエージェントが置き換える危険がある。中立の受託案件換算数量を10年で65%に縮小し、長期名目成長率を0%とする。一方、ZENMU Virtual Driveは操作画面でなく機密データの保護が価値の中心であり、通常の席課金SaaSと区別する。ただし、AIによる端末の集約・自動化は、その導入対象台数を減らしうる。
大手プラットフォームによる機能統合
Microsoftなどが暗号化、端末管理、クラウド保存、アクセス制御を標準機能として強化すれば、顧客は別料金の情報保護製品を追加する理由を失いやすい。秘密分散方式に技術的な優位が残っても、調達担当者はセキュリティの総費用と管理の手間で判断する。ZENMU Virtual Driveの機能の独自性が、10年間継続して価格の独自性にもつながる保証はない。
売上認識と大口案件への依存
2025年の主力製品売上には大型の買い切り案件が含まれ、ライセンス数に標準料金を掛けただけでは翌年の売上を説明できない。2026年上期は主力製品が伸びても全社売上はほぼ横ばいだった。サブスクリプション、買い切り、保守契約の構成比が変わると、ライセンスの増加率と利益の増加率は大きく食い違う。契約の更新形態と実現単価を追い続ける必要がある。
秘密計算の商用化と研究開発費の回収
QueryAhead Hubへの転換やZENMU EngineのOEM展開は魅力的だが、実証実験、共同開発、特許取得は継続的な売上ではない。製品別の営業利益も開示されていないため、どの用途が資本コストを超える利益を生むのか判断しにくい。研究開発費を増やしても、販売先の量産や有料契約へ結び付かなければ、10年後の株主価値は低くなる。
固定費先行、資金調達と希薄化
2026年上期には売上の伸びより人件費・研究開発費の増加が先行し、営業赤字となった。2025年末には純現金があるものの、契約負債に対応するサービス提供義務もあり、現金すべてが自由資金ではない。2025年の有価証券報告書には借入の財務制限条項も記載される。追加増資やストックオプションの行使が重なれば、事業が成長しても既存株主の取り分は薄まる可能性がある。
2030年目標と足元の業績の乖離
経営陣は2030年の売上成長率30%、営業利益率30%を掲げる。しかし2026年上期の売上は前年同期比ほぼ横ばいで、利益は赤字だった。通期計画の達成は下期、とくに年度後半の案件計上に依存する。目標は事業の方向を示すが、継続受注と利益率の実績が伴わないうちは、本質価値をその目標に合わせて引き上げるべきではない。
知的財産と技術標準の変化
秘密分散や秘密計算には特許と開発ノウハウがあるが、セキュリティ技術は継続的な検証と改良が必要である。新しい暗号方式、端末の実行環境、クラウドの権限制御が進歩すると、顧客が求める保護方法自体が変わり得る。競合に同等の機能を低コストで提供された場合、特許の存在だけで市場シェアや販売価格を守り切れるとは限らない。
今後の分かれ目
- ZENMU Virtual Driveの導入ライセンスが30万件を超え、同時に1件当たり実現売上が大幅に低下しなければ
- 端末製品の市場浸透と単価維持が確認できる。中立の数量・利益率を引き上げ、やや楽観側の確率を増やす。単に買い切り案件で導入数が増えただけかも確認する。
- ZENMU Engineについて有償OEM契約数、継続ロイヤルティ、量産開始後の売上が金額付きで開示されれば
- 共同開発を将来価値ではなく実際の稼ぐ力として評価できる。追加投資に対する利益の増分を検証し、収益性が高ければ本質価値を上方修正する。
- QueryAhead Hubで有料契約数、ARR、解約率が開示され、受託売上の減少を補う継続売上が生まれれば
- 人月・工数型への依存が下がった証拠となる。AIエージェント代替で数量を縮小する部分と、技術基盤として残る部分を分け直し、長期成長率を再評価する。
- 2026年以降も会社の売上計画未達と営業赤字が続き、現金が減少すれば
- 販売拡大より固定費増加が先行する構造を重く見る。研究開発投資の回収期間を延ばし、やや悲観・悲観の確率を高める。資金調達条件と株式希薄化も確認する。
- Microsoft等の標準セキュリティ機能との競争で大型顧客の更新率が悪化し、実現単価が下がれば
- 現在評価している低解約率の持続性を疑う。ZENMU Virtual Driveの数量と単価の両方を引き下げ、技術による差別化が価格決定力につながっているかを問い直す。
- 2030年に向けて営業利益率の改善が確認でき、研究開発費を維持したまま利益が積み上がれば
- 固定費の吸収と再投資効率の改善が確認できる。営業利益率だけでなく、増分ROIC、営業キャッシュフロー、配当・自社株買いの実績を見て評価を引き上げる。
見ておくもの
- ZENMU Virtual Driveの期末導入ライセンス数、サブスクリプション数、保守契約数の内訳
- 解約率の実績と買い切りライセンスへの移行を除いた実質解約率
- ZENMU Virtual Driveの売上を導入ライセンス数で割った混合実現単価と大型買い切り案件の割合
- 2026年12月期の通期売上・営業利益の達成状況と四半期別の固定費
- ZENMU Engineの有償OEM契約数、製品量産件数、継続ロイヤルティの金額
- QueryAhead Hubの有料顧客数、ARR、受託案件の売上比率
- 研究開発費と資産計上ソフトウェアの増加額、減価償却、営業キャッシュフロー
- Microsoft等の端末管理・情報保護機能との製品比較と競合受注の状況
- 配当、自社株買い、ストックオプション行使、増資と発行済株式数
- 医療分野の秘密分散プロキシ事業における有償導入先と売上認識
倍率と資本コストの決め方
現在の時価総額約114.49億円を将来売上・利益・倍率の設定には使わず、先に製品別の数量と実現単価から2035年の営業利益を求めた。主力製品の数量には会社が開示する導入ライセンス数を使い、ZENMU EngineやQueryAheadの契約換算件数は実数が非開示であることを明記した。中立の2035年売上は約26.59億円、純利益4.4億円で、会社の2030年計画を機械的に延長していない。倍率はk=7.75%、堀normal、長期g=1.5%、その時点のROEから求める正当化PERに従った。楽観の自己資本は139億円、やや楽観は66億円へ修正し、各シナリオの10年間の累積純利益と株主還元の流れに合わせた。その結果、楽観のROEは19.78%、やや楽観は17.58%となり、正当化PERもそれぞれ14.26倍、14.10倍へ修正した。今のPERや同業の市場倍率は根拠にしていない。2025年の高ROEはIPO前後の資本変化と短い黒字期間によるため恒常値としない。2025年末の純現金は契約負債と運転資金を控除した余剰分だけを別評価し、悲観の床も清算可能な現金を基準にした。AI代替の影響は対象事業の数量・価格と長期成長率に反映し、資本コストには重ねていない。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。共通基準7.5%に、過去の利益変動+0.5%、純現金の財務効果-0.25%を加えた7.75%。上場規模や株価変動率に基づく上乗せはしない。