結論
スペースマーケットは、会議や撮影、パーティーに使う場所を時間単位で貸し借りする市場を営む会社だ。長期の価値は現在の時価総額を上回り、筆者はやや割安と判断する。ただし、その理由は会社が掲げる大きな成長目標ではない。実在する場所の供給網、予約・決済に伴う信用、運営代行の現場機能に価値が残るためである。
2025年のマーケットプレイスの利用総額は約64億円まで増え、取引が成立したスペースの年間延べ数も拡大した。2025年には運営会社3社を買い、家主への手数料だけでなく運営サービスでも稼ぐ形へ広げた。2030年9月期の売上高100億円という経営目標は意欲的だが、2026年上期には売上増に対し営業利益が減少した。買収で売上を伸ばすほど、清掃、家賃、人件費、広告費が重くなる可能性を忘れてはならない。
長期にはレンタル空間の市場自体が広がる一方、インスタベースとの集客競争とAIによる検索の中抜きが起きる。利益率の改善は緩やかなものにとどめ、強いネットワーク効果を無条件には認めない。上振れは大きいが、悲観では買収ののれんと薄い自己資本が傷む。確率を控えめに加重すると、将来の余剰現金を別途加算しない保守的な計算でも、約26億円の現時価総額に対して現在価値は約32億円となる。ただし、無配が続き、株主に現金が戻りにくい点は安全域を狭める。
バリュー投資の観点から
長期株主の目で見ると、借りたい場所を見つけて安心して利用できる仕組みは、10年後にも必要である。インターネットで誰でも予約ができる時代でも、実物の場所を整え、事故やキャンセルの責任を受け止める仕事は消えない。取引が増えるほど評価と運営実績が積み重なる点に、守る価値のある種がある。だが、それを永続的な独占と呼ぶには証拠が足りない。
もう一つ確かめたいのは、稼いだお金の行き先だ。通常のプラットフォームなら設備を多く持たず、収益が増えるほど自由現金が厚くなる。しかし同社は運営会社を買い、人手を使う清掃や物件の整備に踏み込んだ。利益が増えても、初期投資、ソフト開発、内装更新、のれんの維持に現金が要る。2026年上期の増収減益は、この違いを映している。
会社の目標どおりに売上が4倍になると信じる必要はない。主要競合と市場を分け合いながらも、利用数を倍程度にし、慎重な利益率で運営できれば価値は出る。一方でAIによる検索の中抜きやプラットフォーム手数料の引き下げが起これば、現在の薄い資本では耐久力が落ちる。見通しの不確実さと無配を差し引いても、株価に比べた一定の安全域はある。ただし強い堀を持つ成熟企業のように、何も考えず永久保有できる銘柄ではない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心は、借り手のゲストと貸し手のホストを結ぶ「SPACEMARKET」である。掲載だけなら安いが、予約が成立するとホストから基本30%、ゲストから5%の手数料を受け取る。運営会社は不動産をすべて所有する必要がなく、利用額が増えるほど売上が積み上がる。決済の一時預かり、本人確認、相互評価、保険が、顔の見えない当事者を結ぶ信用の仕組みになっている。
次の柱は「スペースモール」や2025年に買収したクルトン、エミーナ、システリアによるスペースの企画・運営である。オーナーに代わって内装、価格設定、予約対応、清掃、鍵の受け渡しまで担い、利用料金の約10%を運営代行料として得る。企画時の初期費用や実費収入もある。2026年2月時点で資料に明示された運営代行スペースは、主要2ブランドの合計で1,276件に上る。ただし実作業に伴う原価と物件に関する固定費を負うため、プラットフォームと同じ高い利益率にはなりにくい。
もう一つは自治体向け公共施設予約システム「Spacepad」だ。施設の予約、料金、抽選、決済、スマートロック連携を管理し、月額課金と決済関連手数料を受け取る。導入は2026年2月時点で39自治体と公表されている。会計上は単一セグメントであり、3事業の売上・利益の正式な内訳は開示されていない。後段の配賦額は、利用スペースの取引高、運営数、導入自治体数に単価を掛けた分析上の推定であり、会社開示のセグメント実績ではない。
優良さと弱いところ
最大の強みは、スペースの実物供給と利用実績が蓄積されることだ。場所は住所、設備、時間帯、利用目的によって代替しにくい。口コミや決済の安心も加われば、新しい利用者が次のオーナーを呼び込む循環が生まれる。2025年の延べ利用スペース数は13万件を超え、2021年から大きく伸びた。ホストが高頻度に利用される空間を整備できれば、単なる広告掲載以上の価値をつくれる。
しかし、独占的な堀とは言えない。インスタベースの運営会社Rebaseも直近年度に約74億円の利用総額を開示しており、両社の規模は近い。ホストは複数サイトへ掲載でき、利用者も比較検索できる。会社が示す35%の標準手数料は現状の収益源であると同時に、直接予約や他社への移動を促す弱点でもある。低い解約率や持続的な値上げ成功を示す数値は見当たらず、強い堀の判定には届かない。
資本効率も慎重に見る必要がある。2025年のROEは高いが、自己資本は約9億円と薄く、買収ののれん約4億円が資産に含まれる。2017年以降は赤字になった年が複数ある。2026年上期は増収でも減益であり、投下資本を増やして利益が増えるかはまだ証明の途中だ。清掃や設備保守という現場機能はAIだけでは代替しにくいが、予約管理や問い合わせは自動化により単価が下がる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
空間の時間貸しは、少子化で空室が増える社会にも存在理由がある。会議、撮影、趣味の集まり、推し活などは人が実際に集まる場所を必要とする。会社資料はスペースシェア全体を約9,700億円、そのうちスペースシェアリングのプラットフォーム市場を約200億円と見積もる。ただし両者の範囲は違い、民泊や遊休不動産の転用まで含む大きい数字を同社がすべて取り込めるわけではない。
比較可能な狭い市場では、スペースマーケットの2025年GMV約64億円は約3割に当たる。競合「インスタベース」は2026年3月期の利用総額が約74億円であり、期間をそろえない概算ではこちらも3割台半ばとなる。両社の合計から分かるのは、すでに大手同士が競う段階に入ったことだ。TKPや貸し会議室運営会社、Airbnbなども用途によって重なり、競合各社の正確な全体シェアには推計上の誤差が残る。
中立では、狭いプラットフォーム市場の名目取扱高が10年で約470〜520億円へ成長するとみる。実際の利用回数の増加と、年3%の物価上昇を分けて考えた見通しだ。同社は約164億円の流通額を取るが、シェアはほぼ横ばいとみる。初期の掲載数拡大だけでなく、稼働率を上げなければ目標には届かない。AIエージェントが比較、問い合わせ、予約を代行すれば検索画面への流入が減り、集客費が上がる可能性もある。実物の鍵、清掃、本人確認を統合できるかが次の勝負になる。
資本政策と M&A
経営は配当より事業拡大を優先してきた。2025年12月期まで創業以来無配で、2026年9月期も無配予想だ。配当性向、DOE、総還元性向、自社株買い額の数字の約束はない。一方、2026年3月の事業計画には、2030年9月期の売上高100億円という明確な目標がある。営業利益やROEの達成値、株主還元の定量目標はその資料には示されていない。
資本の使い道は買収とシステム投資である。2021年にスペースモールを買い、2025年4月には運営会社3社を取り込んだ。運営ノウハウの獲得は合理的だが、のれんと借入が膨らみ、利用が鈍れば減損で自己資本を削る。りそな銀行の借入には債務返済能力を示すDSCRを1.1倍以上に保つ条件もある。近年の増分投資が資本コスト以上の利益を稼ぐか、毎期確認すべきだ。
大株主には経営陣やTKPなどが並び、上位10株主の保有比率は約77%に達する。5年以上増配も目立つ自社株買いもなく、留保現金が少数株主へ早期に戻るとは限らない。したがって余剰現金の株主への帰属は帳簿価額の半分で評価する。2026年には13万株分のストックオプションも設定され、将来の希薄化を考慮した。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
市場が広がる余地は思われている以上に大きい。空き店舗や旧来のビルを建て替えるだけではコストが合わず、時間貸しで収益化する選択肢が増える。撮影、レッスン、展示、パーティーのように目的が細かくなるほど、利用者は近さだけでなく設備や雰囲気を重視する。専門化した空間が増えれば、利用者は見知らぬオーナーを一軒ずつ探すより、レビュー、補償、決済を備えた共通の予約基盤を使う。
2025年の利用総額64億円は、会社が示す狭い市場約200億円の3割ほどだ。時間貸しが社会に根付けば、10年後の市場規模を今の倍以上に広げることはありうる。2025年に取得した運営3社の現場ノウハウを全社に展開し、空間の開発、無人化、鍵の管理、集客まで一体化できれば、単なる予約サイトから運営基盤へ進める。Spacepadも自治体との接点を生み、公共施設に新しい供給を広げる糸口になる。
今の手数料の高さは裏返せば、集客とトラブル対応に顧客が一定の対価を認めている証拠だ。AIを予約確認や価格最適化に使い、固定費を抑えながら現場の質を改善できる可能性もある。事業買収で先に全国の拠点とノウハウを確保した判断が効けば、高い目標に近づき、投資に見合う利益を取り戻す。
慎重な見方
最も弱い部分は、オーナーにも利用者にも複数の選択肢があることだ。インスタベースはすでに同程度の流通規模へ成長し、より多くの掲載場所を集める動きも続いている。ホストは手数料を比べて他サイトや自社予約へ移ることができる。インターネットで集客する媒体は検索順位の変更を避けられず、会社自身も外部検索エンジンへの依存を大きなリスクとして挙げている。
AIエージェントが利用者の希望を聞いて複数媒体から候補を探し、予約から決済まで済ませる時代には、サイトの画面が来訪者を囲い込む力は弱まる。Spacepadのような予約管理ソフトも、操作画面と定型業務が価値の中心なら価格の引き下げを迫られる。運営代行の問い合わせ、価格調整、掲載文制作は自動化され、人の手間に対する手数料も圧縮される。
さらに、2025年に買った運営会社は、人員、清掃、鍵管理、賃料という固定的な支出を伴う。売上が伸びても2026年上期の利益は減った。約4億円ののれんは現金化できず、成長の読みを外せば減損が起こる。売上100億円という目標を支えるために、まだ示されていない高い追加利益率を信じるのは危うい。経営陣と関係株主が多くの議決権を握り、配当もない。低い株価だけでは少数株主の回収が確約されない。
どちらに重みを置いたか
実物スペースの需給は10年先も残り、2025年までの利用増加には実績がある。反面、競合の利用総額は既に拮抗し、2026年上期の増収減益は買収後の資本効率に疑問を残す。中立は2030年の売上高100億円を達成する前提とせず、現在の約2倍の利用量でも事業価値が生まれる筋にした。上側の確率32%に対し、AIエージェント代替、検索集客、のれんと現場費用を理由に下側を38%とした。値付けには安全域があるが、確信度は高くない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/09 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 619 円75 億円(+ 還元の換算額還元の合計 0 円0 億円)。 今の値に割り戻すと 280 円34 億円、今との差 +34.0%、 期待の年率 +11.5%(資本コスト 8.3%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 12% | 1,827 円221 億円 | 0 円0 億円 | +774.1% | +24.2% | 219 円27 億円 |
| やや楽観 | 20% | 993 円120 億円 | 0 円0 億円 | +375.4% | +16.9% | 199 円24 億円 |
| 中立 | 30% | 561 円68 億円 | 0 円0 億円 | +168.2% | +10.4% | 168 円20 億円 |
| やや悲観 | 24% | 120 円15 億円 | 0 円0 億円 | −42.4% | −5.4% | 29 円4 億円 |
| 悲観 | 14% | 28 円3 億円 | 0 円0 億円 | −86.6% | −18.2% | 4 円0 億円 |
| 加重平均 | 100% | 619 円75 億円 | 0 円0 億円 | +196.1% | +11.5% | 619 円75 億円 |
今の株価時価総額 209 円25 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 12% 用途特化型スペースの全国基盤を築く 利益 16 億円 · PER 13.9 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,827 円221 億円
利用スペースの稼働密度が高まり、体験用途ごとの専門空間を全国に供給できる場合だ。2025年に買った運営会社のノウハウを、独立したホストにも提供する。インスタベースとの競争は続くが、決済・保証と運営一体型のサービスで差別化し、体験市場の成長の大きな部分を取る。2030年の高い売上目標は予定どおりでなくとも、2030年代に入ってから成長が加速する。
運営代行は3,550スペースまで拡大し、清掃などの現場作業は残しながら予約・問い合わせの自動化によって採算を改善する。SpacepadはAIエージェント代替のため導入自治体を現在以上には増やさない。グループの成長はあくまで実物空間とその取引から生まれ、画面を売るSaaSの膨張を前提にしない。会社の標準手数料を守り、広告費率を抑えた場合の最良の筋書きだ。
- 時間貸しマッチング:数量 500,000(年間延べ利用スペース月数(件・1か月に1回以上利用されたスペースの12か月累計))× 価格 7.10(1利用スペース月当たり取扱高相当額(万円・名目。実現手数料率はrev_factorに反映))→ 売上 112 億円・営業利益 20 億円。日本で体験利用が広がり、仲介GMVは約355億円、運営件数も大きく増加。仲介の実効手数料を維持し、利益率17.5%を実現する。
- レンタルスペース企画・運営代行:数量 3,550(運営代行スペース数(件・稼働物件のストック))× 価格 0.01(1運営スペース当たり連結計上売上(億円/年・名目))→ 売上 22 億円・営業利益 3 億円。AI代替の範囲を事務・SaaS部分だけに反映。実物運営は実需による件数で推計。
- 公共施設予約管理Spacepad:数量 39.0(契約導入自治体数(件))× 価格 0.01(自治体1件当たり年売上(億円/年、名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。操作画面課金の業務SaaSにAIエージェント代替の数量・単価規律を適用。
倍率:現在の倍率と無関係に、k8.25%、長期g2.0%、堀normalで超過ROEの残存1/2、2036年のROE約22.3%からRONIC約15.3%を求める。PER=(1−g/RONIC)/(k−g)=13.90倍の上限そのものを採用する。2036年の事業純利益15.60億円×PERで時価総額を算定し、保留する余剰現金は別に過大加算しない。
確率:上振れが続くには新しい用途の開発と買収後の高収益化を連続して達成する必要があるため、限定的な確率とする。
やや楽観 20% 運営基盤ができ、規模の利益が出る 利益 9 億円 · PER 13.3 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 993 円120 億円
場所探しは依然としてネット検索が入り口だが、目的別の予約と運営代行に強みが残る。国内プラットフォーム市場の利用回数が着実に増え、同社のシェアは現在の約3割から4割近くに上がる。予約の増加に対して、顧客獲得費とシステム費は緩やかにしか増えず、収益の厚みが出る。
買収先のスペースモールやクルトンが物件企画と無人運営を標準化し、運営代行件数は2,600件へ伸びる。人手を介する問い合わせ業務はAIによって細るが、清掃・物件保守・鍵管理は実物の需要に沿って伸びる。Spacepadは自治体の行政手続きに残るが、席課金ソフトの成長は期待せず、契約数はほぼ横ばいとする。投資後も高い収益率を保てるときの筋書きである。
- 時間貸しマッチング:数量 350,000(年間延べ利用スペース月数(件・1か月に1回以上利用されたスペースの12か月累計))× 価格 6.54(1利用スペース月当たり取扱高相当額(万円・名目。実現手数料率はrev_factorに反映))→ 売上 72 億円・営業利益 11 億円。実質の利用空間は延べ35万スペース月へ増え、単価は物価程度。市場の成長と小幅なシェア増が両立する。
- レンタルスペース企画・運営代行:数量 2,600(運営代行スペース数(件・稼働物件のストック))× 価格 0.01(1運営スペース当たり連結計上売上(億円/年・名目))→ 売上 14 億円・営業利益 1 億円。AI代替の範囲を事務・SaaS部分だけに反映。実物運営は実需による件数で推計。
- 公共施設予約管理Spacepad:数量 37.0(契約導入自治体数(件))× 価格 0.01(自治体1件当たり年売上(億円/年、名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。操作画面課金の業務SaaSにAIエージェント代替の数量・単価規律を適用。
倍率:現在の倍率と無関係に、k8.25%、長期g2.0%、堀normalで超過ROEの残存1/2、2036年のROE約15.6%からRONIC約11.9%を求める。PER=(1−g/RONIC)/(k−g)=13.31倍の上限そのものを採用する。2036年の事業純利益8.57億円×PERで時価総額を算定し、保留する余剰現金は別に過大加算しない。
確率:市場拡大と運営改善の双方が成果を出す余地はあるが、競合の規模が大きい点を踏まえる。
中立 30% 取引量は倍でも利益は段階的に増える 利益 5 億円 · PER 12.9 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 561 円68 億円
働き方や趣味の多様化で時間貸しの利用は広がるが、インスタベースも同じくらい強い。大手2社は検索広告、保証、掲載の充実を競い、同社の市場占有率は3割台前半にとどまる。利用スペースの延べ数は27万件程度まで増えるが、1件当たりの取扱高は物価上昇に少し届かない。名目のスペース料金は上がっても、集客費や手数料の競争で実質の受取単価が薄れるからだ。
運営代行は1,940件程度となり、清掃と現場管理が収益を支える。予約対応など事務工数に由来する約35%はAIエージェント代替により数量が0.65倍に縮み、現場作業の増加がこれを上回る。Spacepadは業務SaaSとして契約数が39件から31件に減り、単価の伸びも物価以下にとどまる。2030年の売上100億円目標には届かないが、既存事業の採算改善で緩やかな増益となる。
- 時間貸しマッチング:数量 270,000(年間延べ利用スペース月数(件・1か月に1回以上利用されたスペースの12か月累計))× 価格 6.08(1利用スペース月当たり取扱高相当額(万円・名目。実現手数料率はrev_factorに反映))→ 売上 52 億円・営業利益 7 億円。プラットフォームGMVは約164億円。名目市場470〜520億円でシェア3割台前半を守るが、会社の2030年目標は大幅に下回る。
- レンタルスペース企画・運営代行:数量 1,940(運営代行スペース数(件・稼働物件のストック))× 価格 0.01(1運営スペース当たり連結計上売上(億円/年・名目))→ 売上 10 億円・営業利益 1 億円。AI代替の範囲を事務・SaaS部分だけに反映。実物運営は実需による件数で推計。
- 公共施設予約管理Spacepad:数量 31.0(契約導入自治体数(件))× 価格 0.01(自治体1件当たり年売上(億円/年、名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。操作画面課金の業務SaaSにAIエージェント代替の数量・単価規律を適用。
倍率:現在の倍率と無関係に、k8.25%、長期g2.0%、堀normalで超過ROEの残存1/2、2036年のROE約12.4%からRONIC約10.3%を求める。PER=(1−g/RONIC)/(k−g)=12.90倍の上限そのものを採用する。2036年の事業純利益4.89億円×PERで時価総額を算定し、保留する余剰現金は別に過大加算しない。
確率:公開された取引実績と競合の成長、2026年上期の減益を均衡させた中心の筋書きとする。
やや悲観 24% 流通は残るが広告費と価格競争が重い 利益 1 億円 · PER 12.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 120 円15 億円
場所を借りる習慣は残るものの、インスタベースと直接予約に利用者が流れる。AIエージェントが複数の空間予約サイトを横断して候補を選ぶことで、スペースマーケット単独の検索画面からの集客が減る。取引総額は伸びても、実効手数料が下がり、広告を増やさなければ集客できない。
運営代行は買収した数を守る程度にとどまる。清掃や物件管理は必要だが、問い合わせや価格調整の代行料はAIエージェント代替によって下がる。Spacepadは操作画面中心のSaaSとして契約数を減らし、価格転嫁もできない。現場の固定費、家賃、設備の更新が営業利益率を押し下げる。利益を株主に配らず内部にためても、低いROEではその額に高い価値を付けられない。
- 時間貸しマッチング:数量 175,000(年間延べ利用スペース月数(件・1か月に1回以上利用されたスペースの12か月累計))× 価格 5.30(1利用スペース月当たり取扱高相当額(万円・名目。実現手数料率はrev_factorに反映))→ 売上 29 億円・営業利益 2 億円。GMVの増加は約1.45倍にとどまり、仲介の単価と利益率は低下。ROEが資本コストを下回るため、将来成長を値付けしない。
- レンタルスペース企画・運営代行:数量 1,260(運営代行スペース数(件・稼働物件のストック))× 価格 0.00(1運営スペース当たり連結計上売上(億円/年・名目))→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。AI代替の範囲を事務・SaaS部分だけに反映。実物運営は実需による件数で推計。
- 公共施設予約管理Spacepad:数量 28.0(契約導入自治体数(件))× 価格 0.01(自治体1件当たり年売上(億円/年、名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。操作画面課金の業務SaaSにAIエージェント代替の数量・単価規律を適用。
倍率:2036年のROE約4.3%は資本コスト8.25%未満。新しい投資に成長価値を付けず、事業純利益を1/k=12.12倍で資本化する。会社が過去に付けられた株価倍率ではなく、弱くなった稼ぐ力で決める。
確率:下に寄せる理由:競合Rebaseの流通規模が同社を上回り、2026年上期は成長しても減益となった。集客費・人手の固定費とAIエージェント代替を重く見る。
悲観 14% 検索の中抜きと買収失敗が重なる 利益 −1 億円 · PBR 0.4 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 28 円3 億円
AIの代理検索が一般化し、スペースマーケットを訪れる利用者が減る。インスタベースや大手予約プラットフォームが広告費で優位に立ち、ホストも複数媒体や直接予約へ移る。延べ利用スペース月数は現在より少なくなり、値下げによって取引単価も落ちる。市場は存在し続けても、同社が仲介する取引だけが構造的に減っていく。
運営代行は清掃・物件整備の固定費に苦しみ、管理スペース数は700件に減る。Spacepadは汎用のエージェント対応予約システムへ置き換わり、契約数が半減する。買収先の採算悪化でのれん約4億円の大部分を減損し、利益の累計と帳簿価値がともに傷む。それでも倒産を前提とはせず、現在の純現金に相当する額を売れる資産の保守的な床とする。
- 時間貸しマッチング:数量 85,000(年間延べ利用スペース月数(件・1か月に1回以上利用されたスペースの12か月累計))× 価格 4.60(1利用スペース月当たり取扱高相当額(万円・名目。実現手数料率はrev_factorに反映))→ 売上 12 億円・営業利益 0 億円。スペース仲介の流通が約39億円へ低下し、継続赤字と約4億円ののれん減損が重なる。床は現在の純現金だけに限る。
- レンタルスペース企画・運営代行:数量 700(運営代行スペース数(件・稼働物件のストック))× 価格 0.00(1運営スペース当たり連結計上売上(億円/年・名目))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。AI代替の範囲を事務・SaaS部分だけに反映。実物運営は実需による件数で推計。
- 公共施設予約管理Spacepad:数量 20.0(契約導入自治体数(件))× 価格 0.01(自治体1件当たり年売上(億円/年、名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。操作画面課金の業務SaaSにAIエージェント代替の数量・単価規律を適用。
倍率:営業赤字のため利益PERを使わない。現在の自己資本9.2億円に、現時点で換金可能とみなす純現金3.4億円÷9.2億円=約0.37倍の床PBRを掛ける。2036年の自己資本4.8億円に掛けて価値をつり上げない。のれん約4.17億円は清算価値ゼロ。
確率:買収のれんが自己資本の約半分あり、検索流入減と運営費高騰が重なると少数株主の価値が大きく傷む。AIエージェント代替がSaaSと事務BPOに及ぶ深い負け筋として評価する。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
時間貸しマッチング
ホストと利用者を結び、基本のホスト手数料30%とゲスト手数料5%等を受け取る。
| 数量年間延べ利用スペース月数(件・1か月に1回以上利用されたスペースの12か月累計) | 価格1利用スペース月当たり取扱高相当額(万円・名目。実現手数料率はrev_factorに反映) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 131,300 | 4.88 | 20 | 2 |
| 10 年後 中立 | 270,000 | 6.08 | 52 | 7 |
取り方:2025年有報のGMV64.08168億円、年間延べ利用スペース13.13万件、1件当たり4.88万円を用いた。会社開示の標準両側手数料は計35%だが、ポイント・クーポンやグループ内の重複取引等を差し引いた実効売上手数料31.6%を分析上の仮定とし、係数は31.6%÷1万=0.0000316。取扱高64.08億円×31.6%で20.25億円と推計。子会社売上とSpacepadの公式内訳はないため連結25.7億円に合わせた分析上の配賦であり実績のセグメント値ではない。2026年3月の事業計画p10・p25と2025年有報。会社推計のプラットフォーム市場約200億円に対し2025年GMVのシェア約32%。競合Rebaseは2026年3月期74.4億円、期間のずれに留意(https://s.kabutan.jp/news/n202605290543/)。
レンタルスペース企画・運営代行
スペースモールなど4子会社が、オーナーの代わりに企画、運営、清掃、鍵管理を行い、代行料・初期費用等を得る。
| 数量運営代行スペース数(件・稼働物件のストック) | 価格1運営スペース当たり連結計上売上(億円/年・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 1,276 | 0.00 | 5 | 1 |
| 10 年後 中立 | 1,940 | 0.01 | 10 | 1 |
取り方:2026年2月の事業計画p11にあるスペースモール378件、クルトン898件を足した1,276件を2025年度末の近似に用いる。SpaceMole単体2025年度売上5.34億円(有報)、基本代行料は取扱高の約10%で初期費用11万円以上(https://spacemole.co.jp/)。ほか3子会社や内部消去額が非開示なので、総売上に対して年40.5万円/運営スペースを仮に割り当てた。物件オーナーの受取約60%、仲介の両側35%との整合性に注意し、代行料と仲介手数料を同じ取引で二重計上しないよう連結値に合わせた。人手・工数の仕事は予約対応など約35%、清掃・鍵など現場業務約65%との分析仮定。AIエージェント代替では事務数量0.65倍、現場数量は実需と買収に合わせて伸びるため全体は増加し得る。
公共施設予約管理Spacepad
自治体施設の予約・抽選・決済管理を月額課金で提供するクラウド型業務ソフト。
| 数量契約導入自治体数(件) | 価格自治体1件当たり年売上(億円/年、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 39.0 | 0.01 | 0 | 0 |
| 10 年後 中立 | 31.0 | 0.01 | 0 | 0 |
取り方:2026年2月時点の導入39自治体は会社の2026年3月事業計画p12で確認。月額課金と決済代行料の存在は開示されるが料金は要見積りのため、1自治体あたり年73万円(月約6.1万円)を暫定仮定とし0.285億円を配賦。39件は2025年末実績ではなく直後の近似値であり、契約単価や売上構成の公式開示はない。AIエージェント代替では操作画面中心の業務SaaSと分類し、中立数量39→31件の0.79倍、価格73→80万円の1.10倍、10年以降の成長名目0%以下で扱う。解約率や長期の制度移行の2つの証拠が開示されないため『記録の正本』とは判定しない。
リスクと懸念
AIエージェント代替と検索流入の減少
AIが利用者に代わって希望を解釈し、複数サイトを比較して決済まで済ませれば、利用者がSPACEMARKETの画面を直接見る回数は減る。検索サイトの仕様変更も集客費の増加につながる。Spacepadの操作画面型SaaSは数量・単価の双方に下落圧力があり、運営代行の問い合わせ・予約対応は人手工数が減る。現場の清掃や空間供給まで消えるとはみず、同じ理由を長期成長率と資本コストへ重ねて加算しない。
掲載先の多重化と35%の手数料
基本のホスト手数料30%とゲスト手数料5%は強い収益源だが、インスタベースや直接予約と比べる余地も大きい。掲載先を替える費用が小さいため、利用者が増えても実効手数料率が下がる可能性がある。価格が1割低下すれば、同じ予約量では売上がほぼ1割減る。反対に口コミと本人確認による安心が高い水準で維持されれば、値下げを最小限にとどめられる。
買収のれんと弱いバランスシート
2025年の運営会社3社買収でのれんは約4億円に増え、自己資本約9億円に対して無視できない。家賃、内装、清掃、人員の負担は景気が悪いときも残る。2026年上期は売上25%増でも営業利益が大きく減った。買収先の利益が弱まれば減損が帳簿価値を削り、融資のDSCR条項が新しい投資を制限するおそれもある。
2030年目標と増分資本効率の不一致
2030年9月期の売上高100億円は2025年の約4倍に相当する。新しいスペースの確保、利用率の向上、周辺事業の買収が同時に成功しなければ到達しない。2025年の取扱高増加率に対して変動費の増加率は高く、利益が売上と同じ割合では増えない。達成状況は売上より限界利益、現金創出、のれん込みの増分ROICで判断すべきだ。
預り金・借入・還元の乏しさ
予約代金を一時預かるため、見た目の現金残高を丸ごと株主の持分とみなすことはできない。2025年末の純現金は約3.4億円でも、長期借入の返済、買収資金、運営物件の更新に使われる。配当と大規模自社株買いの実績が乏しく、大株主に議決権が集中している。企業価値が積もっても、それが少数株主に渡るまでの時間は不確実である。
新株予約権による希薄化
2026年4月付の新株予約権13万株は、2028年から2036年にかけて行使できる。中立以上の株式価値なら行使の誘因があり、既存株主の取り分は約1.1%減る。将来の買収資金を株式で調達する場合の希薄化はこの範囲に収まらないため、第三者割当増資や株式対価M&Aの開示を別途監視する必要がある。
今後の分かれ目
- 延べ利用スペース月数が年15%以上増え、1スペース当たりGMVも物価並みに上昇したら
- 中立の数量を引き上げる。件数増だけでなく稼働密度が伴うため、同じ広告費での流通額増加と利益率の改善が見込める。
- 競合との競争で実効手数料率が30%を下回り、集客費率が上昇したら
- マッチングの単価と利益率を同時に引き下げる。単なるGMVの拡大では価値を守れず、やや悲観の比重を増やす。
- 運営代行スペース数が増え、運営1件当たり限界利益と現金創出も改善したら
- 2025年の買収が規模の経済を生んだ証拠となる。現場サービスの利益率を上げ、次の買収の増分収益率を再評価する。
- Spacepadの年次解約率が5%未満で長期継続契約が確認され、更新時の値上げが続いたら
- 操作画面型SaaSの厳しい数量前提を再考する。独自データや制度対応の移行負担も開示で確認できた場合に限り、記録の正本の型へ変更する。
- 営業利益より営業キャッシュフローが継続的に弱く、のれん減損や借入条件抵触が生じたら
- 悲観側の資本価値と現金の床を再精査し、M&Aが株主価値を毀損しているとして悲観確率を引き上げる。
- 初配当、明確な総還元性向、自社株買いが実行されれば
- 積もる余剰現金の株主への戻り方を半分から見直す。ただし買収資金を削って無理に還元する場合は運転資金への影響を確認する。
見ておくもの
- 全社総取扱高とマーケットプレイスGMVを分けた伸び率
- 年間延べ利用スペース月数と1スペース当たり月間GMV
- インスタベースのGMV・利用件数・掲載スペース数との格差
- 連結売上に対する限界利益率と固定費、広告費率
- 運営代行スペース数と運営代行1物件当たり粗利益
- Spacepadの導入自治体数、解約率、単価
- のれん残高、営業キャッシュフロー、DSCR、株数
- 2030年9月期売上高100億円目標の進捗と初配当の有無
倍率と資本コストの決め方
株価212円や現在の実績PERを使って10年後の売上や倍率を逆算していない。2025年の年間延べ利用スペース13.13万件、同月当たり取扱高4.88万円、運営代行1,276件、Spacepad39自治体をそれぞれ数量として、名目単価と実効手数料・収益率を組み合わせた。会社が開示する売上100億円の2030年目標は中立では使わず、上振れ側の確認材料にとどめた。
中立のPERはk8.25%、事業ROE約12.4%、通常の堀に対応する超過利益の残存割合2分の1、10年を超えた後の名目成長率2%から求めた正当化値12.9倍である。ROEがk以下のやや悲観は1÷kの稼ぐ力を上限にする。悲観の3億円台は現在の純現金3.4億円だけを床とし、のれん約4.17億円を売れる資産と数えない。余剰現金の戻り方は支配株主構成と無配の実績から0.5。2027年以降の新リース会計基準が適用されても、物件賃料を費用として控除した同じ経済価値の見方を続ける。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。無リスク金利3%と株式リスクプレミアム4.5%による基本7.5%に、事業の循環・価格決定力・借金からの合計0.75%を加える。個別のM&A失敗は確率側に反映する。