結論
Sansan は、名刺と取引先のデータを使う営業 DX の Sansan、請求書・契約の Bill One、名刺アプリの Eight を月額で売る会社である。Bill One は黒字化し、純現金も厚い。
筆者の結論は、データの堀は一部本物だが、値段は大きく割高である。AI エージェントが営業先の調査を担うほど正確な人脈データの価値は上がるが、画面を使って調べる席の数は減る。請求書の読み取りと仕訳は、AI エージェントが直接こなしやすい。
売上の約61%を占める Sansan は数量0.85倍・価格1.12倍、約26%の Bill One は0.80倍・1.05倍、約13%の Eight は0.75倍・1.0倍に置いた。中立の売上は名目で1割減り、実質では3割減る。営業利益は黒字化と費用の絞りで今より2割ほど増える。資本コストは基本7.5%に寿命の上乗せ1%を足した8.5%、長期の成長率は名目0〜−1%とした。
やや悲観・悲観の確率を合わせて36%置いた総合の価値は、今の時価総額を8割ほど下回る。AI エージェントを自社の売り物にして売上を出している開示は無いので、楽観でも数量は1.0倍以下である。悲観は売上が半分以下になる筋書きで、床は純現金のうち前受収益などを除いた250億円とした。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、「Sansan の事業が 10 年後も残り、その利益を株主がどれだけ受け取れるか」を見る。
Sansan 事業は、解約が少なく、値段を上げられる、よい事業だ。必要な投資は小さく、稼いだ利益のほとんどが株主のものになる。問題は 10 年の持続で、生成 AI で取引先情報の集め方が変われば、この事業は縮みうる。
Bill One は、まだ経営の腕を試している段階だ。四半期で初めて黒字になったことは確かな前進だが、競合が多く、堀は Sansan ほど深くない。10 年後に利益率が 3 割に届くかを、筆者は確信できない。中立で 3 割、悪い側で 2 割以下と置いた。
資本の使い方は評価が割れる。借金なしで現金が増えているのは安全だ。ただ、株式報酬が多く、還元が少ないままだと、株主の取り分は目減りする。いちごアセットの買い増しは、この点を直す機会になるかもしれない。
安全域は、悪い筋書きの重さで測る。構造的に負けた時の価値が今の時価総額を大きく下回る一方、中立の価値は今の倍ある。筆者は、この上下の非対称がある限り、今の値段は安全域を取れていると見る。ただし AI の影響は読みにくいので、確信は強くない。
何で稼ぐ会社か
Sansan の稼ぎ方は、月額や年額で契約を結ぶ継続課金だ。法人が名刺や取引先の情報を社内で共有し、営業に使う。契約は 1 万件を超え、1 契約あたりの年間売上は 300 万円弱である。人数と機能が増えるほど単価が上がる。
Bill One は、紙や PDF、メールで届く請求書を、まとめて受け取りデータにするサービスだ。経理の締め作業の手間が減る。取引先が使うネットワークに乗るため、国内約 27 万 8 千社がすでに請求書を出す側として登録されている。契約を管理する Contract One も同じ系列に入る。
Eight は個人向けの名刺アプリで、利用者は 450 万人を超える。個人は無料で使え、企業向けの採用・営業の有料機能が収入になる。売上は伸びているが、人を増やして先行投資しており、利益はまだ小さい。
三つの事業は、名刺・請求書・契約という「会社の間でやり取りされる紙」を入り口にしている点で同じだ。顧客の数が多いほど、データの価値が上がる。粗利率は 87% 前後と高く、売上が増えれば利益が大きく増える構造になっている。
会計年度は 5 月期だ。2026 年 5 月期の売上は約 538 億円、営業利益は約 82 億円だった。会社は 2029 年 5 月期の調整後営業利益率を 25〜30% とする計画を出している。
優良さと弱いところ
Sansan の堀は、名刺管理市場でのシェアと、データの蓄積にある。法人向けの売上シェアは 8 割台で、2 位以下は小さい。社内に名刺と取引先の履歴がたまるほど、他社に乗り換えにくい。月の解約率が 0.5% 前後なのは、その表れだ。
値決めの力もある。機能を足して契約あたりの単価を上げてきた。AI による検索機能の追加も、同じ手を使う。
Bill One の堀は、ネットワークと切り替えの手間だ。請求書の受け取り方を変えるのは経理にとって大仕事で、一度入ると動かしにくい。解約率は月 0.33% と、さらに低い。ただし市場の競合は多く、会計・経費の大手やラクスなどが似た機能を安く出している。堀は Sansan ほど深くない。
資本の使い方は慎重だ。借金はなく、現金は純額で 341 億円ある。買収は小さな案件が中心で、大きな買収で価値を壊した歴史はない。弱みは、株式報酬が多いことと、還元が少ないことだ。配当は年 6 億円ほどで、純利益の 1 割に届かない。
筆者は、Sansan 事業の堀を強いものと認めつつ、堀の「強い」判定は付けなかった。生成 AI が取引先情報の集め方そのものを変える可能性があり、10 年の持続に確信が持てないからだ。Bill One の堀はこれから太くなる途中で、10 年後に 2 つの事業がそろって残るかが分かれ目になる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
名刺管理の市場は成熟している。法人向けの市場規模は 2023 年で約 256 億円、2027 年に約 303 億円という予測だ。Sansan のシェアは 85% 前後で、これ以上のシェアは望めない。伸びは、契約先の中小企業への広がりと、機能を足した単価の上昇から来る。
この市場の外側に、営業支援ソフト(CRM)の巨大な市場がある。Salesforce や HubSpot が持つ顧客データの精度を、AI が高められるなら、名刺管理の役目は小さくなる。筆者がいちばん気にしているのはここだ。
Bill One が入る請求書受領の市場は、これから伸びる。2023 年のインボイス制度と電子帳簿保存法の改正で、請求書の電子化が経理の仕事になった。ミック経済研究所は、市場が年 29% で伸び、2029 年度に約 740 億円になると予測している。Bill One の売上シェアは約 49% で 4 年連続の 1 位だ。
競合は 3 方向から来る。会計ソフトの大手が機能を抱き合わせる。ラクスのように中小企業向けに安く出す会社がある。大手の会計・購買システムが自前で受け取りを取り込む。請求書は取引先との間の仕事なので、規模の大きな方が有利になる。ネットワークが厚いほど、後から入る会社は不利だ。
国内の企業数は人口とともに減る。数量の伸びは、電子化の遅れた会社を取り込む分から来る。海外の展開は小さく、10 年の筋書きには入れていない。
資本政策と M&A
還元は少ない。配当は年 6 億円ほどで、2026 年 5 月期の純利益の 1 割に届かない。自社株買いの実績は薄い。現金は積み上がり、純額で 341 億円ある。
圧力は外から来ている。いちごアセットマネジメントが 2026 年 5 月に 9.4% を持つと報告し、その後も買い増して 13.7% に達した。保有目的は純投資の区分で、具体的な要求は確認できなかった。筆者は、還元の強化を迫る力が働いていると見る。
創業者の寺田親弘氏の資産管理会社(CNK)が 26% を持ち、寺田氏本人は 6.5% だ。合わせて 3 割強が創業者側にある。経営の方針は創業者が決められる位置にあり、親子上場のような利害の食い違いはない。
M&A は小さな案件が中心で、買う側としての大型案件はない。買われる側になる可能性は、時価総額が 2,500 億円と大きく、創業者の持分も厚いため低いと見る。kabufu の推計は 10 年以内の買収の確率を 18.5% としている。
利益が増えれば現金はさらに積み上がる。筆者は、還元を上げるか、Bill One の周辺で買収するかが、10 年の資本の使い方の分かれ目と見る。
点検済み:中立の営業利益率21.4%は過去の山(15.2%)を超えるが、会社の来期・再来期予想(20.9%・22.1%)と同水準で、予想より低い。利益率は毎年上がってきた実績がある。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
Sansan は、国内の営業に欠かせない社内の情報基盤になる。名刺管理から始まり、取引先の変化を AI が知らせる仕組みに広がる。契約は 2 倍、1 契約あたりの単価は 5 割増になる。解約率が 0.5% で安定している事実が、この伸びを支える。
Bill One は、請求書の受け取りから、支払いと契約の管理まで広がる。国内約 200 万社のうち 2 万社以上が使い、ネットワークの厚みで競合を寄せつけない。会計・経費の大手やラクスの商品は、中小向けの安い層にとどまる。
黒字化はもう始まっており、四半期で 2 億円の利益が出た。契約が 4 倍になっても、営業と開発の費用はそこまで増えない。利益率は 36% まで上がる。会社の中期計画(2029 年に 25〜30%)は、確度の高い通過点にすぎない。
Eight は、法人の採用・営業の有料機能が広がり、利益が出る事業になる。利用者は 450 万人から 850 万人に増える。
還元も増える。いちごアセットなどの圧力もあり、利益の 45% を配当と自社株買いで返す。粗利率が 87% あり、売上が増えるほど利益が膨らむため、利益は 10 年で約 8 倍になりうる。
慎重な見方
Sansan の名刺管理は、生成 AI で価値が薄れる。取引先の情報は、Salesforce や HubSpot が AI で自動に集める。名刺をスキャンして共有するという手間が要らなくなれば、Sansan の役目は小さくなる。契約数は今の 9 割に減る。
解約率が 0.5% と低いことは、安定の証拠のように見える。しかし、これは「今のやり方に価値がある」間だけの話だ。やり方そのものが変われば、解約は一気に増える。検索連動の広告でも、似た構造変化が起きている。
Bill One は、勝っているように見えて、堀が浅い。会計ソフトの大手が受け取りを抱き合わせ、ラクスが中小向けを安く出し、大手の購買システムが自前で取り込む。市場の成長で数量は増えても、1 契約あたりの単価は上がらない。利益率が 3 割に届くという前提は、まだ誰も確かめていない。
Eight は 450 万人の利用者がいるが、収入の中心は法人向けの有料機能だ。個人向けは無料のままで、伸びにくい。
資本の面でも不安がある。株式報酬が多く、利益の 1 割も還元しない。いちごアセットの保有は 13.7% に達したが、要求の中身は確認できていない。会社が還元に応じなければ、株価の重しになる。今の値段は、先の利益を見込みすぎている。
AI エージェントが営業の調査から経理までこなす世界では、席と画面に払う理由が薄れる。年額前払いの前受収益も、解約が増えれば細る。
AI エージェントが営業の調査から経理までこなす世界では、席と画面に払う理由が薄れる。年額前払いの前受収益も、解約が増えれば細る。
AI エージェントが営業の調査から経理までこなす世界では、席と画面に払う理由が薄れる。年額前払いの前受収益も、解約が増えれば細る。
どちらに重みを置いたか
名刺データの堀と Bill One の黒字化では強気の見方が優勢だが、AI エージェントが営業先の調査と請求書の処理を直接こなし、席の数が減る筋書きでは慎重な見方が重い。利益が増えても、成長の前提で付いた値段は支えられない。資本コストは基本7.5%に寿命の上乗せ1%を足して8.5%とし、長期の成長率は名目0〜−1%。やや悲観・悲観を合わせて36%の重みを置いた総合は、今の時価総額を8割ほど下回る。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/05 期)
確率で加重した株価時価総額 831 円1,041 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 166 円208 億円)。 今の値に割り戻すと 508 円637 億円、今との差 −75.6%、 期待の年率 −7.1%(資本コスト 7.8%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 1,328 円1,664 億円 | 316 円396 億円 | −21.2% | −2.4% | 131 円165 億円 |
| やや楽観 | 19% | 1,150 円1,441 億円 | 239 円299 億円 | −33.4% | −4.0% | 264 円331 億円 |
| 中立 | 37% | 989 円1,240 億円 | 170 円214 億円 | −44.4% | −5.7% | 429 円538 億円 |
| やや悲観 | 24% | 483 円605 億円 | 106 円132 億円 | −71.8% | −11.9% | 141 円177 億円 |
| 悲観 | 12% | 199 円250 億円 | 59 円74 億円 | −87.6% | −18.8% | 31 円39 億円 |
| 加重平均 | 100% | 831 円1,041 億円 | 166 円208 億円 | −52.2% | −7.1% | 997 円1,249 億円 |
今の株価時価総額 2,085 円2,613 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 8% 名刺データの堀と Bill One の黒字化が両立する 利益 108 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 1,328 円1,664 億円
営業の現場では、AI エージェントが取引先の調査を担うほど、正確な名刺と人脈のデータの価値が上がる。Sansan はそのデータを握る強みを活かし、数量0.98倍、価格1.19倍。Bill One は黒字化が定着し、請求書の受領で数量0.92倍。売上は今より1割ほど増え、営業利益は150億円ほどになる。ただし AI エージェントを自社の売り物にして売上を出している開示は無く、楽観でも数量は1.0倍以下とみる。 最も大きい「Sansan」は、数量が今の0.98倍、価格が1.19倍になる。 10年後の売上は名目で今の1.09倍(実質0.82倍)、純利益は108億円になる。 営業利益は151億円で、今の82億円の184%に当たる。
- Sansan(名刺管理・営業 AX):数量 11,730(契約件数)× 価格 325(1 契約あたり年間売上(万円))→ 売上 381 億円・営業利益 129 億円。数量0.98倍・価格1.19倍・営業利益率34%(AI エージェント代替の型:席課金)
- Bill One・Contract One(経理・契約 AX):数量 5,428(有料契約件数(Bill One 約 5,100+Contract One 約 800))× 価格 264(1 契約あたり年間売上(万円))→ 売上 143 億円・営業利益 23 億円。数量0.92倍・価格1.11倍・営業利益率16%(AI エージェント代替の型:席課金)
- Eight(名刺アプリ):数量 388(利用者数(万人))× 価格 1,625(1 人あたり年間売上(円))→ 売上 63 億円・営業利益 8 億円。数量0.86倍・価格1.06倍・営業利益率12%(AI エージェント代替の型:席課金)
倍率:事業の純利益 108 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 46.6% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 27.2%、10 年より先の名目の伸び g 0.0% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍。全体の PER 12.9 倍、時価総額 1,398 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:営業の AX と経理の AX が両方伸びる筋書き。ただし AI エージェントを自社の売り物にして売上を出している開示(金額)が無いので、楽観でも数量は1.0倍以下。
やや楽観 19% 名刺データが下支えし、Bill One は踏みとどまる 利益 90 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 1,150 円1,441 億円
名刺データの堀が効いて、Sansan は数量0.91倍、価格1.15倍。Bill One は黒字化したが、請求書の読み取りは AI エージェントに置き換わりやすく、数量は0.86倍にとどまる。Eight は広告の伸びが小さい。売上は今とほぼ同じ水準で、営業利益は125億円ほど。筆者は、黒字化の勢いは認めるが、この筋書きでも、利益率が上がり続ける前提の今の値段は割高とみる。 最も大きい「Sansan」は、数量が今の0.91倍、価格が1.15倍になる。 10年後の売上は名目で今の0.99倍(実質0.74倍)、純利益は90億円になる。 営業利益は125億円で、今の82億円の153%に当たる。
- Sansan(名刺管理・営業 AX):数量 10,910(契約件数)× 価格 315(1 契約あたり年間売上(万円))→ 売上 344 億円・営業利益 110 億円。数量0.91倍・価格1.15倍・営業利益率32%(AI エージェント代替の型:席課金)
- Bill One・Contract One(経理・契約 AX):数量 5,050(有料契約件数(Bill One 約 5,100+Contract One 約 800))× 価格 257(1 契約あたり年間売上(万円))→ 売上 130 億円・営業利益 18 億円。数量0.86倍・価格1.08倍・営業利益率14%(AI エージェント代替の型:席課金)
- Eight(名刺アプリ):数量 361(利用者数(万人))× 価格 1,579(1 人あたり年間売上(円))→ 売上 57 億円・営業利益 6 億円。数量0.80倍・価格1.03倍・営業利益率10%(AI エージェント代替の型:席課金)
倍率:事業の純利益 90 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 41.6% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 24.7%、10 年より先の名目の伸び g 0.0% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍。全体の PER 12.9 倍、時価総額 1,162 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:名刺データの堀が効き、Bill One の黒字化が定着する筋書き。数量は1.0倍以下に抑えた。
中立 37% 中立:売上は名目で1割減り、利益は2割増にとどまる 利益 74 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 989 円1,240 億円
Sansan は数量0.85倍、価格1.12倍。名刺データの堀はあるが、AI エージェントが営業先の調査を直接こなし、席の数は減る。Bill One は数量0.80倍、価格は1.05倍で、黒字化は定着しても利益率は1割台前半。Eight は0.75倍。売上は名目で1割減り、実質では3割減。営業利益は103億円ほどで、今の82億円より2割強多い。新しく投じるお金の稼ぎは名目の成長が小さいので先で薄れる。 最も大きい「Sansan」は、数量が今の0.85倍、価格が1.12倍になる。 10年後の売上は名目で今の0.90倍(実質0.67倍)、純利益は74億円になる。 営業利益は103億円で、今の82億円の126%に当たる。
- Sansan(名刺管理・営業 AX):数量 10,200(契約件数)× 価格 306(1 契約あたり年間売上(万円))→ 売上 312 億円・営業利益 94 億円。数量0.85倍・価格1.12倍・営業利益率30%(AI エージェント代替の型:席課金)
- Bill One・Contract One(経理・契約 AX):数量 4,720(有料契約件数(Bill One 約 5,100+Contract One 約 800))× 価格 249(1 契約あたり年間売上(万円))→ 売上 118 億円・営業利益 14 億円。数量0.80倍・価格1.05倍・営業利益率12%(AI エージェント代替の型:席課金)
- Eight(名刺アプリ):数量 338(利用者数(万人))× 価格 1,533(1 人あたり年間売上(円))→ 売上 52 億円・営業利益 4 億円。数量0.75倍・価格1.00倍・営業利益率8%(AI エージェント代替の型:席課金)
倍率:事業の純利益 74 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 33.6% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 20.7%、10 年より先の名目の伸び g 0.0% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍。全体の PER 12.9 倍、時価総額 957 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:名刺管理は踏みとどまり、請求書受領の席が緩やかに縮むという、最も重みを置く筋書き。
やや悲観 24% AI エージェントが調査と経理を直接こなし、席が減る 利益 39 億円 · PER 11.0 倍 · 株価時価総額 483 円605 億円
AI エージェントが営業先の調査から請求書の処理まで直接こなし、Sansan の席は0.70倍、Bill One は0.66倍まで縮む。価格も大手の会計・ERP が AI エージェントを標準で付けるので1.0倍を割る。売上は今より3割減り、営業利益は54億円ほど。年額前払いの解約が増えて、前受収益の強みも細る。いちごアセットなどの圧力で出していた還元も小さくなる。 最も大きい「Sansan」は、数量が今の0.70倍、価格が1.06倍になる。 10年後の売上は名目で今の0.70倍(実質0.52倍)、純利益は39億円になる。 営業利益は54億円で、今の82億円の66%に当たる。
- Sansan(名刺管理・営業 AX):数量 8,364(契約件数)× 価格 291(1 契約あたり年間売上(万円))→ 売上 243 億円・営業利益 56 億円。数量0.70倍・価格1.06倍・営業利益率23%(AI エージェント代替の型:席課金)
- Bill One・Contract One(経理・契約 AX):数量 3,870(有料契約件数(Bill One 約 5,100+Contract One 約 800))× 価格 237(1 契約あたり年間売上(万円))→ 売上 92 億円・営業利益 5 億円。数量0.66倍・価格1.00倍・営業利益率5%(AI エージェント代替の型:席課金)
- Eight(名刺アプリ):数量 277(利用者数(万人))× 価格 1,457(1 人あたり年間売上(円))→ 売上 40 億円・営業利益 0 億円。数量0.61倍・価格0.95倍・営業利益率1%(AI エージェント代替の型:席課金)
倍率:事業の純利益 39 億円(現金の税後利息を除く)・事業の ROE 6.5%。AI エージェント代替で名刺管理・請求書受領の席(ID)課金が AI エージェントに置き換わり、数量が縮み価格も物価に届かない(席・画面を前提にした型。名刺データの堀は一部残る)とみて。長期の成長率 g を名目 -1.0% と置き、RONIC = k 7.75% + 残る割合 0.50 ×(ROE − k)= 8.5%、正当化 PER = (1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g) = 11.8 倍。上限の 8.5 割に置き、事業 39 億円 × 10.97 倍 + 余った現金 0 億円(戻り方込み)で時価総額 426 億円、全体の PER に直して 10.97 倍。
確率:請求書の読み取りと仕訳は AI エージェントが直接こなしやすく、Bill One の席が減る。実現しやすいと見て2割台半ばに置いた。
悲観 12% AI エージェントが営業と経理の画面を置き換え、売上は3分の1 利益 4 億円 · PBR 1.3 倍 · 株価時価総額 199 円250 億円
AI エージェントが営業の調査も経理の処理も丸ごとこなし、画面と席に払う理由が薄れる。売上は今の3分の1、営業利益は数億円に細る。それでも実質無借金で純現金があるので、株主の取り分の床は前受収益と運転資金、未払の約束を除いた250億円ほど残る。稼ぐ力ではなく、この資産の厚さが悲観の値段を決める。 最も大きい「Sansan」は、数量が今の0.38倍、価格が0.95倍になる。 10年後の売上は名目で今の0.34倍(実質0.26倍)、純利益は4億円になる。 営業利益は6億円で、今の82億円の7%に当たる。
- Sansan(名刺管理・営業 AX):数量 4,590(契約件数)× 価格 260(1 契約あたり年間売上(万円))→ 売上 119 億円・営業利益 12 億円。数量0.38倍・価格0.95倍・営業利益率10%(AI エージェント代替の型:席課金)
- Bill One・Contract One(経理・契約 AX):数量 2,124(有料契約件数(Bill One 約 5,100+Contract One 約 800))× 価格 212(1 契約あたり年間売上(万円))→ 売上 45 億円・営業利益 −2 億円。数量0.36倍・価格0.89倍・営業利益率-5%(AI エージェント代替の型:席課金)
- Eight(名刺アプリ):数量 152(利用者数(万人))× 価格 1,303(1 人あたり年間売上(円))→ 売上 20 億円・営業利益 −1 億円。数量0.34倍・価格0.85倍・営業利益率-5%(AI エージェント代替の型:席課金)
倍率:悲観は売上が 10 年で半分以下になる筋書き。純現金+売れる資産の税後 250 億円(純現金341億円のうち、前受収益・賞与・未払法人税・未払消費税などの約束と運転資)を床として、今の自己資本 200 億円に対する PBR 1.25 倍で時価総額 250 億円とした。AI エージェント代替で営業と経理の画面と席が使われなくなり、売上が半分以下に縮む。稼ぐ力そのものが崩れる筋書きなので、事業の利益には値を付けない。
確率:AI エージェントが営業先の調査から経理まで直接こなし、席課金が半分以下になる筋書き。やや悲観と合わせて3割台半ばにとどめた(中立の数量・価格に縮みを入れたので、確率では重ねない)。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
Sansan(名刺管理・営業 AX)
法人向けの名刺・取引先情報の共有サービス。売上の約 6 割で、利益の柱。
| 数量契約件数 | 価格1 契約あたり年間売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/05 | 12,000 | 273 | 328 | 118 |
| 10 年後 中立 | 10,200 | 306 | 312 | 94 |
取り方:契約件数は 2025 年 1 月の 1 万件突破と契約の伸び(年 14%)から約 1.2 万件と推定。売上はセグメント(Sansan と Bill One 合計 468 億円)から Bill One・Contract One の推定額を引いた約 328 億円。営業利益は調整後で会社が示す利益率(2025 年 5 月期 37.9%)を踏まえた推定で、本社費を配賦した形。 数量は実物(契約件数が 1.7 倍)。単価 1.42 倍は物価 1.34 倍に、AI サーチなどの追加機能の上乗せを小さく加えた値。 型は席(ID)課金の業務SaaS。名刺と取引先のデータという独自データの堀は一部あるが、AI エージェントが営業先の調査を直接こなすので、数量0.85倍・価格1.12倍と置いた。売上の約61%がこの型。
Bill One・Contract One(経理・契約 AX)
請求書を受け取りデータにするクラウドと、契約書を管理するサービス。黒字化の途中。
| 数量有料契約件数(Bill One 約 5,100+Contract One 約 800) | 価格1 契約あたり年間売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/05 | 5,900 | 237 | 140 | −35 |
| 10 年後 中立 | 4,720 | 249 | 118 | 14 |
取り方:Bill One の有料契約は 2026 年 8 月 5,468 件、MRR 13.1 億円(前年比 +33%)から 5 月期末を約 5,100 件、Contract One は 8 月 841 件から約 800 件と推定。売上は 5 月期の Bill One 約 131 億円(前年比 +39.7%)と Contract One 約 9 億円。営業利益は赤字が 2025 年 5 月期から約 3 割改善した推定で −35 億円。 数量は実物(有料契約件数が 3.3 倍)。単価 1.45 倍は物価 1.34 倍に、機能追加による上乗せを小さく加えた値。 型は席・取引課金の業務SaaS(請求書の受領・契約管理)。AI エージェントが請求書の読み取りと仕訳を直接こなすので影響が大きく、数量0.80倍・価格1.05倍と置いた。売上の約26%がこの型。
Eight(名刺アプリ)
個人向けの名刺アプリ。法人向けの採用・営業機能で稼ぐ。
| 数量利用者数(万人) | 価格1 人あたり年間売上(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/05 | 450 | 1,533 | 69 | 2 |
| 10 年後 中立 | 338 | 1,533 | 52 | 4 |
取り方:利用者は 450 万人突破(2026 年 8 月発表)。売上は全社 537.6 億円からセグメントの 468 億円を引いた約 69 億円。2 期連続で通期黒字だが利益は小さく、約 2 億円と推定した。 数量は実物(利用者数が 720 万人へ)。1 人あたり売上 1.70 倍は、物価 1.34 倍に、有料サービスの比率が上がって黒字化する分を加えた値(利益率は 15% に抑えた)。 型は席(個人会員)課金と広告。名刺アプリで、AI エージェントが人脈の管理を肩代わりするので数量0.75倍・価格1.0倍と置いた。売上の約13%がこの型。
リスクと懸念
AI エージェントによる営業調査・請求書処理の置き換え
AI エージェントが営業先の調査を担えば、画面で調べる席の数は減る。請求書の読み取りと仕訳は AI エージェントが直接こなしやすく、Bill One の席も縮む。大手の会計・ERP が AI エージェントを標準で付ければ値下げ圧力もかかる。売上の約61%は Sansan、約26%は Bill One、約13%は Eight で、10年の売上は名目で1割減、実質で3割減とみた。
Bill One の競合と値下げ
請求書受領は、会計・経費の大手やラクスなどが似た機能を安く出している。中小向けで価格が下がれば、1 契約あたりの売上が伸びない。契約数が増えても利益率が 3 割に届かない恐れがある。
株式報酬と還元の薄さ
株式報酬が多い一方、配当は純利益の 1 割に満たず、自社株買いも薄い。現金が積み上がると、ROE が薄まり株主の取り分が減る。いちごアセットなどの圧力で変わるかは未確定だ。
Eight の先行投資
Eight は売上が伸びているが、人員を増やして先行投資を続けており、利益はまだ小さい。個人向けは無料のままで、有料の法人機能が育たなければ、投資が利益にならない。
創業者の影響力と引き継ぎ
創業者側が 3 割強を持ち、経営の方針を決められる。その分、大きな判断の誤りを止める外からの力が働きにくい。寺田氏本人の持分は 6.5% まで下がっており、10 年先の経営体制と引き継ぎも読みにくい。
景気と中小企業の契約
契約先の中小企業は景気の悪化で契約を見直しやすい。月の解約率は低いが、不況が続けば新規の受注が止まる。Bill One の成長が鈍るのも同じ原因だ。
今後の分かれ目
- Bill One の黒字が通期で定着し、利益率が 3 割へ向かう
- 中立〜やや楽観の筋書きが近づく。今の値段に対する余裕が広がる。
- Sansan の月次解約率が 0.7% を超えて上がり続ける
- AI による置き換えが始まった合図。慎重な筋書きの確率を上げて見直す。
- 会社が配当または自社株買いを大きく増やす(純利益の 4 割超)
- 現金が事業に生かされ、ROE が高く保たれる。強気の筋書きに近づく。
- 大手の会計ソフトが請求書受領を標準機能にして無料に近づける
- Bill One の単価が下がり、利益率が 2 割にとどまる。やや悲観の筋書きに近づく。
- Eight の有料法人機能が拡大し、通期で利益率が上がる
- 利益の第 3 の柱が育つ。楽観側の上振れ。
- 創業者の資産管理会社が大きく持分を売る
- 経営の方針が外から問われやすくなり、買収や還元の議論が進みうる。
- Sansan や Bill One の AI エージェント機能が、金額で開示できる売上や受注として積み上がったら
- 楽観・やや楽観の数量を1.0倍超に直し、確率を上げて見直す。開示が無い間は楽観も数量1.0倍以下にとどめる。
見ておくもの
- Sansan 事業の契約件数と月次解約率(0.5% 前後を保てるか)
- Bill One の有料契約件数と 1 契約あたりの売上、四半期の黒字幅
- AI サーチの新規受注への効き方(下期)
- Eight 事業の調整後営業利益(通期で黒字を保てるか)
- 配当・自社株買いの方針と、いちごアセットの動き
- 調整後営業利益率の推移(会社計画 2029 年 5 月期 25〜30%)
倍率と資本コストの決め方
Sansan・Bill One・Eight に分け、AI エージェント代替の型(席課金。名刺データの独自データは一部)で数量・価格・利益率を置いた。純現金は前受収益が中身なので余った現金として分けない。倍率は式(正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)、k7.75%、g名目0〜−1%)に対する位置で置き、楽観〜中立は上限の9.5割、やや悲観は8.5割。悲観は稼ぐ力ではなく純現金+売れる資産の床。今の株価や過去・同業の倍率は見ていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.18→12.9 倍・やや楽観 PER 11.18→12.9 倍・中立 PER 11.18→12.9 倍・やや悲観 PER 10→10.97 倍)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。