結論
EMシステムズは、調剤薬局のレセプト請求や電子薬歴を支える業務ソフトの有力企業である。約4割の国内薬局を顧客に持つ強みは本物だが、現在の時価総額に対しては、10年先の不確実さを十分に埋め合わせるほどの割安さはなく、筆者は「やや割高」と考える。薬局が保険請求をやめることは考えにくい一方、薬剤師が同じ操作画面を使い続ける保証はない。AIエージェントが患者情報の整理、薬歴作成、入力と請求の一部を引き受ければ、従来型のソフトに払われる料金は抑えられる。
2025年の売上高は約237億円、営業利益は約37億円だった。だが、その前後の好業績には電子処方箋やオンライン資格確認、端末更新に伴う一時的な需要も混じっている。2026年上期には行政関連需要の反動で減収減益となり、主力調剤の顧客数も減った。毎月入る利用料が増えている点は心強いものの、顧客基盤の減少を単価上昇だけで長く埋められるかは、まだ答えが出ていない。
医科は顧客を増やしているが利益は薄く、介護は買収で規模を広げても赤字が残る。好調な調剤が両事業への投資を支え続ける構図で、追加投資の利回りは全社の過去のROEほど高いとは限らない。その一方で、純現金と新大阪の賃貸不動産には相応の価値があり、構造的に負ける場合の損失を和らげる。配当性向100%という還元方針も株主には有利だ。
10年後の調剤ソフトが必要なくなるとみるのではない。必要性と値上げ力は別だという判断である。中立では基幹ソフトの売上がほぼ横ばいでも、医科・介護の採算改善と資産価値が一定の下支えになる。ただし、医療情報の正本をどの事業者が握るかが変われば、今の高シェアはそのまま経済的な堀にはならない。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主の見方では、最初に薬局の受付と請求という仕事そのものを見極める。薬局の保険請求や薬歴の保存は10年後も必要だろう。行政の制度が複雑であり、正確に処理できないシステムは顧客に選ばれない。この継続需要と国内で約4割を占める顧客網には、目に見える価値がある。
しかし、続く仕事から誰がいくら稼ぐかは別問題である。昔から使っているソフトを変えない理由が、入力画面に慣れているというだけなら、AIが画面を迂回する時代には弱い。法令対応の実績はあるが、契約の解約率、年単位の移行障壁、繰り返した値上げなど、超過収益を20年保てる証拠はまだ十分ではない。医療の記録を持つ企業ではあるものの、その記録自体を他社が使えない独占的資産と見るべきではない。
また、オーナーに帰属する利益を見ると、調剤の開発・保守で得た利益を医科と介護の赤字補填や買収に回してきた側面がある。新しい顧客を得るための支出は必要だが、追加資本が何年も資本コスト以下の利益しか生まないなら、配当や買戻しの方が有利だったことになる。中期計画の100%配当方針は、経営に投資規律を課すという意味で前向きに評価する。
一方、賃貸不動産の含み価値と純現金は、サービスの陳腐化に備える現実的な備えになる。時価総額のかなりの部分を資産が裏打ちするが、株主がビルを直接売れるわけではなく、賃貸益と資産価値を二重に受け取れるわけでもない。最も魅力的なのは、高い市場シェアを土台にAI時代の請求・記録インフラへ進化し、なおかつ余った資本を株主に戻す筋書きだ。現時点では、それを確実視して高い値段を払うほどには証拠が揃っていない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎ頭は調剤システムである。薬局向けのレセプトコンピューターと電子薬歴などを提供し、導入時の機器・ソフト販売、月額課金、消耗品、保守で収入を得る。2025年の調剤売上は192億円で全社の8割強を占め、営業利益は約40億円だった。初期売上だけで約95億円を占め、毎月の課金約71億円とは性質が異なる。行政による電子処方箋や資格確認の導入支援が集中すると、収益は跳ね上がるが恒久的な利用料が同じ勢いで増えるわけではない。
医科システムは診療所向け電子カルテ・レセプト一体型の「MAPs for CLINIC」などを扱う。2025年の売上は約29億円だったが、営業利益はわずか約3千万円である。端末・システムの初期導入売上への依存が大きく、次世代クラウドの開発や販売網への投資が採算を圧迫する。2026年上期には再び営業赤字となり、顧客増がすぐ利益増に結び付く段階ではない。
介護・福祉システムは介護報酬請求と記録、訪問看護などの業務支援ソフトである。2025年の売上は約6億円、営業損失は約4億円だった。導入先の数は多くても1顧客当たりの単価が小さく、複数の製品基盤の維持費や買収先の統合作業が重い。その他事業には薬局運営、医療関連の周辺サービスなどが含まれ、単純な利用IDの課金とは収益源が異なる。
調剤と医科と介護をつなぐ共通基盤の「MAPs」を普及させれば、同じ顧客に複数の製品を販売できる。だが、現在の売上の大部分は調剤向けであり、統合基盤を持つことと実際に高い採算でクロスセルできることは別である。2026年には電子薬歴を自動生成するAI支援オプションの販売が始まり、調剤の月額顧客単価を押し上げた。これを従来の画面利用料に代わる長期収益源に育てられるかが、事業構造の分かれ目となる。
優良さと弱いところ
最も確かな強みは調剤薬局への浸透度である。2026年6月時点で約2万3千の薬局を顧客に持ち、会社が対象とする約5万5千薬局の42.3%を占める。薬局にとって、請求内容の正確さと制度改正への追随は不可欠であり、障害を起こせば日々の会計が止まる。長年使い慣れたシステムを替えるには職員の教育やデータ移行も伴い、新興企業が機能だけで一気に顧客を奪うことは難しい。
ただし、この堀を過大評価しない。会社が示す顧客数は2025年6月から2026年6月に減少し、資料には大口チェーンの解約も明記されている。解約率が年5%未満という継続的な数字や、移行に1年以上かかること、法改正ごとの値上げを通した実績を確認できない。規制に合わせる能力は強みでも、薬歴をAIが作り、データ連携が標準化されれば画面の粘着性は下がる。厳密には「記録の正本」を独占する企業ではなく、現時点では強い堀より一段控えた評価が妥当だ。
財務は堅固である。2025年末の自己資本は約203億円、純現金は約73億円で、自己資本比率は7割を超える。過去のROE中央値も10%台だが、医科・介護への投資と買収が持続的に資本コストを超えた証拠は十分ではない。2024年から2025年にかけて調剤の利益が減り、2026年上期も大きく落ち込んだ。資本の追加投入によって調剤以外が稼げるようになるまでは、全社の利益率だけで経営の質を判断できない。
新大阪ブリックビルの賃貸は見落とせない。帳簿上約65億円の賃貸不動産には鑑定上約165億円の時価が示され、毎年賃料から費用を引いた利益が入る。しかしその賃貸益は営業外に計上済みで、物件の評価額を株式価値に足すときは、その利益をもう一度事業の倍率で買ってはいけない。金利上昇で物件の利回りが上がれば鑑定価値は減り得るため、含み益全額を即座に現金と同じには扱わない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の薬局は高齢化で処方箋を扱い続けるが、店舗数が永遠に増える市場ではない。会社の定義する対象市場は調剤約5万5千薬局、医科約9万診療所、介護・福祉約29万事業所・ライセンスである。2026年6月の顧客数を当てるとシェアは調剤42.3%、医科4.0%、介護5.5%となる。調剤は成熟した大手、医科と介護は多数の業者が分立する市場であり、同じ会社でも競争上の立場は大きく異なる。
調剤ではウィーメックスのメディコム系や湯山製作所などが競合する。医科ではウィーメックス、エムスリーソリューションズ、メドレーなどのクラウド診療支援と争い、介護ではワイズマン、NDソフトウェア、カイポケ、カナミックネットワークなどが顧客接点を持つ。これら競合の正確な個別シェアは、今回参照した同一基準の一次資料では確認できない。少なくとも調剤の残り57.7%、医科の96%、介護の94.5%が同社以外の製品や未導入先に相当し、それを一社が直ちに獲得できる市場と見なすのは誤りである。
会社の現在の販売単価を顧客当たりに割り、対象数を乗じた参考規模は、調剤約455億円、医科約719億円、介護約102億円となる。ただしこれは公表された市場売上ではない。導入年度の端末購入や補助金対応を含む同社の単価を市場全体に広げた粗い上限の物差しであり、純粋な月額課金市場より大きく出る。実際の数量は薬局数や診療所数よりも、導入拠点の入れ替わりと利用サービス数で動く。
医療DX令和ビジョン2030、電子処方箋、オンライン資格確認は既存事業者に開発費と導入機会を同時にもたらす。2024年から2025年の特需が2026年には一巡したように、制度対応の波を恒久成長率に読み替えるのは危険だ。加えて標準化されたクラウドの医療情報基盤とAIエージェントが、診療記録の入力や薬歴の作成を自動化する。患者データ自体の法的な管理責任は残っても、職員がIDを持って手入力するための画面には価格低下圧力がかかる。今後10年は規制対応力だけでなく、AIが処理する業務の中で誰が請求先と記録を支配するかの競争になる。
資本政策と M&A
経営陣は高い配当と買収を並走させている。2025〜2027年の中期計画は、2027年に売上高235.11億円、営業利益40.31億円、純利益30.64億円、EBITDA50.23億円を目標とする。会社独自の期末自己資本控除後の定義によるROE目標は17%で、中計期間の配当性向は100%、株主還元枠は合計90億円、2027年末の現預金目標は60億円と明示した。自己資本を絞ってROEを高める意図があり、利益そのものを伸ばす施策とは分けて評価すべきだ。
2024年には約10億円を投じて自己株式を買い、400万株を消却した。近年は増配も続け、2025年の配当は連結純利益を上回ったが、2026年の年間配当予想は足元の減益に伴い引き下げられている。余剰資金を株主に返す姿勢は実績を伴い、支配株主の存在だけで現金の価値を半減する理由はない。他方、増配と買戻しが本当に得だったかは取得時の本質価値にも左右されるため、実績の金額だけで称賛はできない。
買収ではグッドサイクルシステム、ユニケリサーチ、プレカル、コンダクトなどを傘下に迎え、調剤の周辺業務から介護まで領域を広げてきた。2025年取得のプレカルには約10億円ののれんが発生し、無形資産への投資回収が問われる。医科・介護では過去に減損も起きており、顧客数を買うだけでなく、統合後に利益を残せるかを追いたい。親会社自身のTOBや上場廃止の公表は確認されず、2026年10月の吸収合併は完全子会社を社内に取り込む再編である。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
調剤システムの42.3%というシェアは簡単には作れない。電子処方箋や資格確認の法改正に一斉対応できる開発体制を持ち、全国の薬局と保守・販売網を通じてつながっている。大手の薬局チェーンが導入する業務ソフトには停止の許されない安定性が必要で、費用だけを見た安易な切り替えは起こりにくい。大手への集約が進むほど、中小ベンダーから顧客を引き受ける力が強くなるという見方ができる。
新しいAI機能は、必ずしも既存ソフトを駆逐する存在ではない。会社は薬歴生成AIサポートオプションをすでに提供し、2026年上期には調剤の顧客単価が前年同期比3.6%増えた。現場で使われる医療用語、制度上の請求処理、既存の業務データを理解したサービスなら、外部の汎用AIより安心して導入される可能性がある。AIで記録作成の時間が短くなれば、薬剤師不足に悩む薬局ほど費用対効果を見いだし、単価上昇と解約防止が両立する。
医科の顧客数も増えており、クラウド型の新製品が販売網に乗れば黒字が定着する余地がある。介護はコンダクトなどの買収で販路と製品を増やしたところで、費用の重複を減らせれば損失を縮められる。さらに、新大阪の賃貸物件は会計上の簿価より高く評価されており、営業利益だけでは測れない価値を持つ。中期計画の100%配当と過去の自社株買いを合わせて考えれば、成熟した調剤事業から得た現金が株主に届く道筋も比較的明確だ。
慎重な見方
調剤の高シェアは過去の顧客基盤を示す数字であって、10年先の取り分を保証しない。2025年6月から2026年6月までに調剤の顧客数は減り、大口チェーンの解約も生じた。医療機関の標準化が進むと、旧来のレセプトコンピューターの画面に縛られなくても必要な請求や記録を処理できる可能性が高まる。価格を上げたときに顧客が離れないことを示す解約率や契約の継続年数の開示は十分でない。
売上の質にも注意が必要だ。2025年の調剤売上には初期導入の機器や制度対応が大きく含まれる。2026年上期の減収減益は、その利益を毎年繰り返せるものと扱ってはいけないことを示した。生成AIが薬歴と入力を自動化すれば、利用者数や画面単位の料金に値下げ圧力がかかる。会社のAI機能は実際に販売され始めたが、10年間の既存収益の縮小を補うほどの独立した売上額はまだ開示されていない。
医科と介護は市場が大きく見えても競合が多く、次の大手になるまでの投資負担が大きい。過去の減損、介護の営業赤字、プレカル取得時の約10億円ののれんは、買収で顧客を増やすことと株主価値を増やすことの違いを物語る。2025年には純現金が減り、2026年上期も資金余力は縮んだ。中計の100%配当を守り続ければ成長投資の財源が限られ、投資を優先すれば還元の約束が揺らぐ。賃貸物件も金利3%の世界では、低金利時の鑑定評価をそのまま実現できるとは限らない。
どちらに重みを置いたか
薬局の顧客網と規制対応力は実在し、資産の裏付けもあるため、事業価値が一気にゼロになる見方は採らない。しかし、足元の顧客減と行政特需の剥落、医科・介護の低採算は確認された事実であり、AIにより画面課金の価値が弱まる先行きも軽視できない。中立の数量減にはAI代替をすでに織り込んでいるため、確率の下振れ39%はAIをもう一度罰するためではなく、買収統合と顧客維持の実行リスクを重視したものだ。上振れ26%より下振れに13ポイント多く配分し、資産を含めた期待価値は現在の時価総額を一段下回ると判断した。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 668 円463 億円(+ 還元の換算額還元の合計 267 円185 億円)。 今の値に割り戻すと 520 円360 億円、今との差 −7.0%、 期待の年率 +6.3%(資本コスト 7.2%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 1,074 円744 億円 | 419 円290 億円 | +167.1% | +12.6% | 119 円83 億円 |
| やや楽観 | 18% | 917 円635 億円 | 368 円255 億円 | +130.0% | +10.6% | 231 円160 億円 |
| 中立 | 35% | 764 円529 億円 | 310 円215 億円 | +92.2% | +8.1% | 376 円260 億円 |
| やや悲観 | 25% | 450 円312 億円 | 202 円140 億円 | +16.6% | +1.8% | 163 円113 億円 |
| 悲観 | 14% | 267 円185 億円 | 58 円40 億円 | −41.9% | −5.7% | 45 円32 億円 |
| 加重平均 | 100% | 668 円463 億円 | 267 円185 億円 | +67.3% | +6.3% | 935 円648 億円 |
今の株価時価総額 559 円387 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 8% 調剤の顧客を維持し、AIを収益化 利益 46 億円 · PER 13.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,074 円744 億円
調剤は高い顧客基盤をほぼ維持する。電子薬歴の生成支援と制度対応の安定稼働が評価され、ウィーメックスなどへの移行を抑え、薬局1拠点当たりのサービス収入が増す。2026年に始めたAIオプションが既存ソフトの上で薬剤師の時間を節約し、値上げと契約維持につながる。店舗数が減る中でも対象5万2千薬局に対するシェアは約45%まで相対的に広がり、調剤の営業利益率は24%となる。
医科は診療所向けクラウドと販売代理店網が軌道に乗る。顧客数は今の水準を保つが、端末の初期売上に頼らず継続的なサービス収入を積み、投下してきた開発資産から利益を得る。介護はコンダクトの事業を統合し、訪問看護と介護請求の重複費を減らして黒字化する。両事業の赤字補填が減るため、調剤から生まれた現金を研究開発と還元に配分できる。
M&Aは顧客の数を膨らませるためでなく、既存サービスへの組込みを重視した小型案件に限定する。現行の画面課金を無制限に伸ばす筋書きではなく、顧客を守って利益率を改善する上振れである。賃貸不動産も稼働を維持し、追加買収による大型減損は生じない。
- 調剤システム:数量 23,260(薬局・システム顧客の契約拠点数(件))× 価格 0.01(顧客1拠点当たり年間売上(億円。初期導入と月額課金の合計))→ 売上 221 億円・営業利益 53 億円。調剤の顧客数は現状と同水準、単価1.15倍、利益率24%
- 医科システム:数量 3,604(医科システム契約の診療所数(件))× 価格 0.01(顧客1診療所当たり年間売上(億円。導入と利用課金を含む))→ 売上 33 億円・営業利益 4 億円。医科の件数横ばい、単価1.15倍、利益率12%
- 介護・福祉システム:数量 16,094(介護・福祉システム契約ライセンス数(件))× 価格 0.00(顧客1ライセンス当たり年間売上(億円))→ 売上 7 億円・営業利益 1 億円。介護のライセンス横ばい、単価1.15倍で黒字化
- その他事業:数量 1,745(周辺サービス相当の推定契約数(件。薬局顧客の約1割))× 価格 0.01(推定1契約当たり年間ミックス売上(億円))→ 売上 11 億円・営業利益 0 億円。薬局周辺・BPO等の換算契約数0.75倍、単価1.34倍
倍率:2025年の純利益には営業外の賃貸損益が入るが、物件の価値はrental欄で別計上し、事業PERの資産加算で賃貸収益の価値を控除する。k=7.25%、g_long=名目0%のため、ROE約18.5%から残る割合1/2のRONICを測っても正当化PER=(1−0÷RONIC)/(7.25%−0)=13.79倍となる。高い利益率をPER側で重ねて加点しない。
確率:既存薬局の減少が止まり、医科の開発費負担を回収してAI課金を採算改善に結び付ける複合成功が必要で、足元の顧客減と損失を考えると発生確率は低い。AI専用商品の売上額は未開示のため、数量を現状超には増やさない。
やや楽観 18% 調剤の減少を単価と経費管理で吸収 利益 39 億円 · PER 13.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 917 円635 億円
調剤の契約件数は10年で約5%減るが、長く使用してきた薬局は引き続き主力製品を選ぶ。電子薬歴へのAI補助機能や周辺の請求サービスを組み込むことで、価格の下落圧力を吸収する。物価上昇ほどには料金を上げられないものの、対象薬局数も減るため、シェアは4割強を維持する。行政関連の追加導入が一巡した後も保守と更新を取りこぼさず、調剤の営業利益率は20%台を保つ。
医科ではMAPs for CLINICの顧客をおおむね維持し、現在の初期導入費や営業人員の負担を徐々に回収する。介護はコンダクトの販路を活用し、新たな大型買収をせずにシステム共通化を進める。競合のワイズマンやカイポケに大きなシェア差を付けるわけではないが、両分野とも損失が止まり、調剤以外の事業がわずかながら増益に寄与する。
資本配分では、配当性向100%の期間を経て財務余力に合わせた高い還元を続ける。成長投資に使う利益を限定するため事業を一気に大きくすることはないが、投資回収の悪い案件を増やさない。賃貸不動産の稼働は継続するものとし、現行顧客との関係が細る速度は緩やかな筋書きである。
- 調剤システム:数量 22,097(薬局・システム顧客の契約拠点数(件))× 価格 0.01(顧客1拠点当たり年間売上(億円。初期導入と月額課金の合計))→ 売上 208 億円・営業利益 45 億円。調剤契約0.95倍、名目単価1.14倍
- 医科システム:数量 3,388(医科システム契約の診療所数(件))× 価格 0.01(顧客1診療所当たり年間売上(億円。導入と利用課金を含む))→ 売上 30 億円・営業利益 2 億円。医科契約0.94倍、単価1.12倍、利益率7%
- 介護・福祉システム:数量 14,485(介護・福祉システム契約ライセンス数(件))× 価格 0.00(顧客1ライセンス当たり年間売上(億円))→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。介護ライセンス0.90倍、単価1.12倍
- その他事業:数量 1,745(周辺サービス相当の推定契約数(件。薬局顧客の約1割))× 価格 0.01(推定1契約当たり年間ミックス売上(億円))→ 売上 11 億円・営業利益 0 億円。周辺サービス等の換算契約0.75倍、単価1.30倍
倍率:想定ROE約16.8%、k7.25%、超過ROEが先で半分薄れる普通の堀とし、RONIC約12.0%。しかしAIエージェント代替を価格・顧客数だけでなくg_long=0%へ反映したため、正当化PERの式は13.79倍である。現行株価や同業PERは参照せず、追加の裁量的割引もしない。
確率:調剤の競争優位とAIサポートの単価上昇実績を重視するが、医科と介護の黒字化には追加投資と販売効率の改善が必要。競合に対してシェアを守り切れるとは限らず、楽観より確率を高める。
中立 35% 高シェアは維持するがAIで単価の上限ができる 利益 30 億円 · PER 13.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 764 円529 億円
調剤薬局は患者への調剤と保険請求を続けるが、薬局チェーンの統合とクラウド標準化が進み、既存ベンダーの契約件数は緩やかに減る。EMシステムズの顧客は約2万件となり、実質の契約数量は現在の0.88倍となる。対象市場も約5万2千薬局へ縮むため、10年後のシェアは約39%にとどまる。継続課金とAI薬歴補助の付加価値は残るが、使う画面やIDが減り、単価は10年で名目1割程度しか上がらない。
調剤の年間売上は現在より少し小さくなる。それでも制度改正と受付・請求の運用費を負担できる大手の位置を維持し、営業利益率は約19%を保つ。医科はクラウド移行を続けても有力な競合と価格で争い、導入先は約3千診療所に減る。介護はケア記録の入力がAIに移る影響を受け、規模の拡大より損失圧縮が優先課題となる。医科の小幅黒字と介護の小幅赤字がほぼ相殺する。
会社はAI対応のための研究開発を継続するが、製品投入そのものを高成長とみなさない。買収は少額の補完案件が中心となり、大幅な顧客数の増加を前提としない。配当性向100%の中期計画が終わった後も利益の大部分を株主に返し、賃貸物件を維持する。10年後の稼ぐ力は今と似た水準であり、それを超えた永続成長の確度は高くない。
- 調剤システム:数量 20,469(薬局・システム顧客の契約拠点数(件))× 価格 0.01(顧客1拠点当たり年間売上(億円。初期導入と月額課金の合計))→ 売上 186 億円・営業利益 34 億円。薬局約2.05万件、対象約5.2万件へのシェア39%、単価1.10倍
- 医科システム:数量 2,919(医科システム契約の診療所数(件))× 価格 0.01(顧客1診療所当たり年間売上(億円。導入と利用課金を含む))→ 売上 25 億円・営業利益 1 億円。医科約2,919件・シェア3.3%、単価1.08倍
- 介護・福祉システム:数量 13,358(介護・福祉システム契約ライセンス数(件))× 価格 0.00(顧客1ライセンス当たり年間売上(億円))→ 売上 5 億円・営業利益 −1 億円。介護約1.34万ライセンス・シェア4.4%、赤字残存
- その他事業:数量 1,512(周辺サービス相当の推定契約数(件。薬局顧客の約1割))× 価格 0.01(推定1契約当たり年間ミックス売上(億円))→ 売上 9 億円・営業利益 0 億円。その他は労働代替により換算契約0.65倍、単価1.25倍
倍率:調剤顧客0.88倍、医科0.81倍、介護0.83倍というAI席・画面型の中立数量制約と、価格1.08〜1.10倍を営業利益に反映。2025年の純利益から賃貸損益と金融収支を切り分けた後の事業価値でPERを使う。中立ROE約12.3%、k7.25%、RONIC約9.78%、g_long0%から正当化PER=13.79倍。長期にインフレ率3%を回収できると仮定しない。
確率:薬局業務の必要性と現状の導入顧客基盤は残る。一方で実際の薬局顧客減と行政特需の一巡を重視し、調剤数量0.88倍・名目単価1.10倍を中心とする。医科・介護の黒字化を自動的に前提にしない。
やや悲観 25% 薬局チェーン流出と医療クラウドの標準化 利益 15 億円 · PER 13.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 450 円312 億円
クラウド基盤の標準化が早まり、薬歴・請求の一部がAIエージェントに移る。EMシステムズは法対応を維持するものの、薬局チェーンが統一システムの選定をやり直す機会に、ウィーメックスなどとの競争で一部を失う。10年後の薬局顧客は約1万7千件となり、対象市場が縮小してもシェアは約33%に低下する。競争が激しく、単価は名目でわずかに上がるだけである。
医科ではMAPs for CLINICの販売投資を継続するが、大手のクラウド電子カルテが顧客を囲い込み、新規導入で値引きが増える。医科の営業利益率はマイナスに戻る。介護はNDソフトウェア、ワイズマンなどの競合と機能差が縮まり、コンダクトなど買収先の製品統合に時間がかかって固定費を減らせない。調剤の利益で両事業の損失を補う構図に逆戻りする。
株主還元は利益の縮小に合わせて減らし、自己資本の維持を優先する。建物賃貸の利益と純現金は残るが、金利上昇でオフィスの売却価格は鑑定額を下回る。ソフト事業の純利益は資本コストを下回り、新たな投資で企業価値を増やす力が弱まる。倒産の危険よりも、低収益のまま利益が株主に届きにくくなることが問題となる筋書きである。
- 調剤システム:数量 17,445(薬局・システム顧客の契約拠点数(件))× 価格 0.01(顧客1拠点当たり年間売上(億円。初期導入と月額課金の合計))→ 売上 150 億円・営業利益 18 億円。調剤顧客0.75倍、対象市場シェア約33%、単価1.04倍
- 医科システム:数量 2,523(医科システム契約の診療所数(件))× 価格 0.01(顧客1診療所当たり年間売上(億円。導入と利用課金を含む))→ 売上 20 億円・営業利益 −2 億円。医科0.70倍、赤字率8%
- 介護・福祉システム:数量 11,266(介護・福祉システム契約ライセンス数(件))× 価格 0.00(顧客1ライセンス当たり年間売上(億円))→ 売上 4 億円・営業利益 −1 億円。介護0.70倍、固定費負担で赤字率35%
- その他事業:数量 1,279(周辺サービス相当の推定契約数(件。薬局顧客の約1割))× 価格 0.01(推定1契約当たり年間ミックス売上(億円))→ 売上 7 億円・営業利益 0 億円。その他のBPO等0.55倍、単価1.15倍
倍率:10年後ROE約5.9%でk7.25%を下回るため、永続成長で高い価値を付けない。g_long0%の利益持続価値の上限1/k=13.79倍より低い13.0倍を、実際の収益悪化と稼ぐ力の弱さに応じて採用する。過去の株価倍率は参照しない。賃貸不動産の利益と別途資産評価の二重計上を避ける。
確率:下に寄せる理由:実際に大口薬局チェーンの解約が報告され、2026年上期の行政需要反動で収益が大きく落ち込んだ。医科・介護のM&A収益化の失敗も独立の下振れ要因であり、AIの数量減だけと同一視しない。
悲観 14% 画面課金の地位を失い資産価値が下支え 利益 2 億円 · PBR 0.9 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 267 円185 億円
薬局向けレセプトと薬歴の管理は残っても、統一クラウド上のAIエージェントが実務を直接引き受け、従来の画面を中心とした製品の付加価値は薄れる。大手薬局チェーンを中心に更新契約を失い、顧客は今の半分程度まで減る。対象薬局が約5万2千まで減る市場で、シェアは約22%まで落ちる。規制改正対応の開発費を縮めにくく、調剤の営業利益率はわずかな黒字にとどまる。
医科では電子カルテの共通基盤と外部サービスの競争に敗れ、契約数が大幅に減る。介護でも買収した製品を一本化できず、統一インターフェースへの移行が遅れる。両事業の損失が調剤で稼いだ利益を上回り、全社の営業損益は赤字となる。過去の買収に伴うのれんやソフト開発資産には追加減損が生じる。
こうした構造的な敗北では、赤字のソフト事業に高い利益倍率を与えない。薬局の店舗数は減っても、現金と上場株式、新大阪の賃貸不動産という換金可能な資産は残る。物件を売る際の金利上昇による価格低下、売却益課税、敷金の返還義務を差し引いても一定の床があると考える。ただし株主は経営陣に清算を命じられず、建物の簿外価値が実際に株主還元されるまで時間がかかる。
- 調剤システム:数量 11,630(薬局・システム顧客の契約拠点数(件))× 価格 0.01(顧客1拠点当たり年間売上(億円。初期導入と月額課金の合計))→ 売上 96 億円・営業利益 2 億円。調剤顧客0.50倍、薬局市場シェア約22%、利益率2%
- 医科システム:数量 1,622(医科システム契約の診療所数(件))× 価格 0.01(顧客1診療所当たり年間売上(億円。導入と利用課金を含む))→ 売上 12 億円・営業利益 −2 億円。医科契約0.45倍、営業損失率20%
- 介護・福祉システム:数量 8,852(介護・福祉システム契約ライセンス数(件))× 価格 0.00(顧客1ライセンス当たり年間売上(億円))→ 売上 3 億円・営業利益 −2 億円。介護0.55倍、重い開発固定費で赤字率50%
- その他事業:数量 1,163(周辺サービス相当の推定契約数(件。薬局顧客の約1割))× 価格 0.01(推定1契約当たり年間ミックス売上(億円))→ 売上 6 億円・営業利益 −1 億円。その他の周辺契約0.50倍、売上単価1.10倍
倍率:医科・介護を含む営業利益は構造的赤字で、収益PERでは価値を表せない。2025年末の自己資本203.3億円に対して、賃貸不動産と純現金の保全価値を重視したPBR約0.91倍を適用する。10年後の自己資本は減損により170億円とし、現在の自己資本をPBRの分母に使う。過去の谷の市場PBRには依拠しない。
確率:下に寄せる理由:主力薬局の顧客減がチェーン統合で加速し、AI・規制対応が外部基盤へ移り、医科と介護の投資回収ができない複合悪化は稀だが無視できない。純現金と新大阪物件があるため、事業破綻に近い評価ではなく資産による床を残す。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
調剤システム
薬局レセプト・電子薬歴・オンライン資格確認等の導入、利用課金、サプライ、保守
| 数量薬局・システム顧客の契約拠点数(件) | 価格顧客1拠点当たり年間売上(億円。初期導入と月額課金の合計) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 23,260 | 0.01 | 192 | 40 |
| 10 年後 中立 | 20,469 | 0.01 | 186 | 34 |
取り方:2025年実績は調剤売上192.36億円、営業利益39.67億円。2026年6月公表顧客23,260件を数量の代理値として割った顧客当たり年0.008270億円を価格に使う。2025年期末の契約数との時点差と、初期95億円・課金71億円等の売上構成に留意。2026年6月の対象薬局55,000件、占有42.3%。中立はAIエージェント代替の「席課金・操作画面」型で数量0.88倍・単価1.10倍、法改正一過性を毎年繰り返さない。
医科システム
診療所のクラウド電子カルテ・診療報酬請求と関連ソフト
| 数量医科システム契約の診療所数(件) | 価格顧客1診療所当たり年間売上(億円。導入と利用課金を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 3,604 | 0.01 | 29 | 0 |
| 10 年後 中立 | 2,919 | 0.01 | 25 | 1 |
取り方:2025年セグメント売上28.79億円、営業利益0.32億円、2026年6月時点の顧客3,604件を近似母数に使う。2026年6月の対象90,000診療所に対するシェア4.0%。2025年医科初期売上17.74億円、課金9.91億円と一時的な導入収入が大きい。中立は席課金型の数量0.81倍、単価1.08倍とし、AIの入力自動化と診療所の価格抵抗を織り込む。
介護・福祉システム
介護請求・記録と訪問看護を扱う業務ソフト
| 数量介護・福祉システム契約ライセンス数(件) | 価格顧客1ライセンス当たり年間売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 16,094 | 0.00 | 6 | −4 |
| 10 年後 中立 | 13,358 | 0.00 | 5 | −1 |
取り方:2025年セグメント売上5.66億円、営業損失3.78億円。2026年6月公表顧客16,094ライセンスを分母にした代理単価。対象市場290,000ライセンスとの比較で約5.5%。コンダクト取得による売上が2026年から加わり現在の数量と過去売上に時点差がある。AIエージェント代替の操作画面型として中立の数量0.83倍、単価1.10倍。
その他事業
薬局運営、周辺サービス、人材・キャッシュレス・医療情報関連の混合事業
| 数量周辺サービス相当の推定契約数(件。薬局顧客の約1割) | 価格推定1契約当たり年間ミックス売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 2,326 | 0.00 | 11 | 0 |
| 10 年後 中立 | 1,512 | 0.01 | 9 | 0 |
取り方:その他売上11.19億円、営業利益0.28億円は2025年決算資料。実際の契約数や統一価格の開示はないため、2026年調剤顧客23,260件の1割=2,326件を周辺サービス1契約相当と仮定し、残余を年売上単価とした感応度用の推定であり実顧客数ではない。薬局実店舗運営などAI代替されない現場の売上も含むが、業務代行・入力作業部分は人月・BPO型の中立数量0.65倍、物価未満の名目単価1.25倍。なお各部門売上の単純合計238.00億円から、連結上の内部取引消去等▲1.42億円を控除すると、2025年の連結売上236.58億円と一致する。
リスクと懸念
AI エージェント代替と料金体系の変化
調剤・医科・介護の画面利用、帳票入力、薬歴生成はAIエージェントが直接行う可能性がある。保険請求の法的責任は残っても、職員の操作時間やIDに応じて料金を得る仕組みは弱まる。中立では調剤契約0.88倍、医科0.81倍、介護0.83倍に加え、単価も10年で1.08〜1.10倍に抑えた。さらに長期の名目成長をゼロとし、同じ理由を資本コストや寿命には重ねていない。
薬局チェーンの解約と顧客集中
2026年6月時点の調剤顧客は前年同期より減り、会社は大口チェーンの解約に言及した。薬局チェーンが規模を大きくするほど購買交渉力が強まり、切り替えるときの店舗数も大きい。42.3%という現在のシェアを守るには、他社品からの乗り換えと契約喪失を継続的に比較する必要がある。シェアの高い既存事業だからといって、10年後の顧客数を自動的に増加させていない。
行政特需の消滅と月額売上の質
2025年の調剤部門では初期売上が約95億円、課金売上は約71億円だった。オンライン資格確認や電子処方箋に関する更新・導入が集中すれば、一時的に高い利益率が出る。2026年上期の売上と営業利益の低下はその反動を示す。真に持続する利益を測るには、機器更新と行政補助による一時収益を除いた月額課金の増減と、顧客1件当たりの実現単価を追う必要がある。
医科・介護の損失と買収資産の減損
医科ではクラウド電子カルテ、介護では請求・訪問看護の製品基盤を拡充するが、2025年まで収益性は低い。プレカル取得で約10億円ののれんが生じ、医科・介護では過去に減損もあった。買収によって顧客数や売上が増えても、追加の開発・販管費を回収できなければ、調剤の利益が失われる。今後も増分の営業利益と投下資本を並べて判断する。
不動産鑑定価値と金利・空室
新大阪ブリックビルなどの賃貸資産は簿価約65億円に対し鑑定時価約165億円であり、帳簿に表れない含み価値がある。ただし2025年の賃貸純損益は約5.9億円で、鑑定時価に対する単純利回りは約3.6%にすぎない。10年国債3%の前提では、必要利回りが上がると物件価格が下がる。売却時の課税やテナントの敷金、空室、改修費を無視して含み益を現金と同じに扱わない。
医療制度の標準化と競合ベンダー
電子処方箋、共通の医療情報基盤、診療報酬改定はソフト更新需要を生む一方、競合も同じ規格に沿って参入できるようにする。医科ではメドレーやエムスリー系、介護ではワイズマンやカイポケなどの製品がある。規制対応の負担は中小業者の淘汰を促すが、その果実が必ずEMシステムズに集まるとは限らない。標準APIと外部AIの利用が進むほど差別化の核が変わる。
還元100%と投資・運転資金の両立
中計の配当性向100%と累計90億円の還元は、今の資産を株主へ返すという約束である。ただし2025年末の純現金は前年末より減り、2026年上期にも減少した。医科や介護の開発、買収、物件改修と配当を同時に進めれば、現預金の余裕は小さくなる。会社の計画でも2027年末の現預金は60億円の見込みだ。利益が減ってなお同じ配当総額を続ける前提にはしない。
今後の分かれ目
- 調剤の顧客数が2期続けて純増へ転じ、42%前後の市場シェアを維持したら
- 数量0.88倍という中立を上方へ見直す。とくに大口チェーンの解約が止まったことと新規薬局への契約獲得を分けて確認し、楽観側の確率を上げる。
- 薬歴生成AIサポートの年間売上・利用率と解約率が定量的に開示され、継続的な収益を実証したら
- 操作画面の代替による縮小の一部をAIサービス収益が置き換えたと判断できる。記録の正本に相当する堀の証拠が別に2つ以上揃うなら、該当事業の長期成長率と倍率を再評価する。
- 2027年の営業利益40.31億円と医科・介護の黒字化目標が達成されたら
- 中立の医科・介護営業利益率と追加投資の採算を見直す。ただし制度対応の初期売上の集中ではなく、月額課金が積み上がったことを確かめる。
- 薬局向けの初期売上が鈍る一方で月額課金が横ばいか減少へ転じたら
- 現在の契約単価上昇が維持できない可能性が高まる。調剤の単価と利益率を同時に下方修正し、やや悲観・悲観の重みを増やす。
- 新大阪ブリックビルの賃貸損益が落ちるか鑑定額と必要利回りが大きく変わったら
- 賃貸益の事業利益への混入を調整したうえで、物件を賃料利回りから再評価する。純現金と売却税後価値を用いた悲観の床も変更する。
- 買収した介護・医科子会社で追加減損が発生し、顧客数の増加に比べ営業利益が改善しなかったら
- 買収時の資本配分が価値を生んでいないと判断する。追加投資の抑制と還元強化が実行されない限り、利益率の回復を弱くし下振れ確率を増やす。
- 配当性向100%の方針が大幅に変更され、余剰資金が回収率不明の大型買収に移されたら
- 10年の累計還元を下げ、余剰現金の株主への戻り方を実績に応じて再検討する。中期計画の具体的な90億円の還元目標と、実際のキャッシュフローを比較する。
見ておくもの
- 調剤システム契約顧客数・薬局対象市場とシェア(2026年6月23,260件・42.3%)
- 調剤ARPUの伸び、薬歴生成AIサポートの契約数と独立した売上額の開示
- 初期導入・課金・サプライ・保守の内訳、特に調剤の課金売上と解約率
- 医科・介護のクラウド移行件数、製品統合費用、部門営業損益
- 2027年中計の売上235.11億円、営業利益40.31億円、純利益30.64億円への進捗
- 配当性向100%・中計累計90億円還元、自社株買いと期末現預金約60億円の整合
- 新大阪の賃貸損益、鑑定評価額、改修投資、上場株式の持ち合い縮減
- 医療DXの標準仕様、AIによる薬歴自動作成の普及、同業製品の価格変更
倍率と資本コストの決め方
10年後売上は調剤・医科・介護の公表顧客数と対象市場を出発点とし、2025年の部門売上と2026年6月の顧客数に時点差があることを明示して、年間総売上単価を求めた。これには初期の特需が含まれるので、10年の数量・単価はAI操作画面型の制約を受け、現行の高い伸びを延長しない。営業利益はセグメント別利益率で組み、営業外の新大阪賃貸益と保有株式配当は資産評価を足す際に相殺する。
倍率は株価や過去の市場PERでなく、資本コスト7.25%と将来成長率g_long0%、ROEから計算する。好調〜中立の正当化PERは上限13.79倍をそのまま使い、同じAIリスクを寿命や資本コスト、倍率の裁量割引で二重に差し引かない。賃貸物件は帳簿時価164.73億円をそのまま足さず、国債利回り3%下の必要利回りと売却税を意識する。
悲観は営業赤字でも純現金72.7億円と新大阪物件の保守的な売却価値、上場株などで約175億円を床として確認し、悲観時価総額185億円はこれを上回る。のれんと回収を確信できないソフトウェアの帳簿額は床に含めない。今の時価総額390億円を最後に比較し、評価差に合わせて結論をやや割高とした。2027年4月以後に始まる年度から適用される新リース会計による貸借対照表上の負債表示変更を、営業利益から賃借費用を抜くことによる新たな価値と誤認しない。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。10年国債3%と株式リスクプレミアム4.5%の計7.5%から、純現金の強さを0.25ポイント控除する。β・時価総額規模・AI代替の二重上乗せはしない。