結論
建設技術研究所は、河川・砂防で国内首位に立つ建設コンサルタントだ。ダムや堤防、橋、道路の計画と設計を国や自治体から請け負う。発注元の約 9 割が公共で、景気の波を受けにくい。
結論から言う。筆者は、10 年後の本質価値は今の時価総額 951 億円を 3 割ほど下回ると見る。公共の需要と許認可は堅いが、稼ぎは人の工数に縛られ、AI エージェントが設計・作図・報告書づくりの工数を減らすからだ。
この会社は、人月だけで売る型ではない。技術士の署名と入札が要る許認可の型で、現場の体に近い。そのため決まりに従って今の置き方を基本とし、AI の影響は事務部分だけに入れた。中立の人員は横ばい、単価は物価に届かない 1.30 倍とした。
足を引っ張るのは海外だ。売上は 313 億円あるのに営業利益は 5 億円しかない。財務は堅く、純現金は 136 億円。ただ、割安と呼べるほどの余裕はない。AI エージェントを売り物にして出た売上の金額は、開示されていない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社を持ち続けたいかが問われる。答えは「悪くない事業だが、割安とは言えない」だ。河川分野で首位という地位、国と長く積み上げた関係、技術士の厚みは評価できる。景気に左右されにくく、10年先も仕事は残る。借金もなく、財務の安全域は広い。
気になるのは稼ぐ力の伸びの遅さだ。この会社は工場も店舗も持たない。稼ぎの元手は人だけで、利益は技術者の数と1人当たりの単価で決まる。人を増やすには時間がかかり、増やした分の人件費は物価で上がる。ROEが10%前後にとどまるのは、この構造の表れだ。会社が掲げるROE12%は意欲的だが、実績が追いついていない。
資本配分は改善途上にある。自社株買いと増配は歓迎できるが、これまでは現金をためる傾向が強かった。海外は売上の3割を占めるのに利益が薄く、資本を食っている。ここを黒字にできるかが経営の腕の見せどころだ。
安全域は狭い。中立の筋書きで資本コスト7.5%で割り戻すと、10年の価値は今の時価総額と同程度になる。強気に当たれば大きく報われるが、悲観に当たれば純現金と稼ぐ力の範囲まで下がる。割安と呼べるほどの余裕はない。
見直し(AI エージェント代替):中立の筋書きの価値は、前の見方より低い。許認可と公共予算の守りは評価できるが、稼ぎは人の工数に縛られ、AI エージェントが工数を減らす局面で単価を守れる保証はない。割安とは言えず、安全域は狭いままだ。
何で稼ぐ会社か
事業は国内建設コンサルティングと海外建設コンサルティングの2つだ。2025年12月期の売上は国内が697億円、海外が313億円。営業利益は国内の86億円に対し、海外は5億円にとどまる。稼ぎの大半は国内が生む。
国内の主力は河川・砂防・海岸、道路、都市、環境の計画と設計だ。洪水を防ぐ堤防やダムの計画では、国土交通省と長い取引がある。技術士を1,300人以上抱え、河川分野の売上は国内首位とされる。近年は橋やトンネルの点検、上下水道の更新、防災のデジタル化へ仕事が広がっている。報酬は人の稼働時間が積み上がる受託型で、売上は技術者の数と1人当たりの単価で決まる。
海外は2つの柱がある。東南アジアは建設技研インターナショナルが、ODA(政府開発援助)の案件を中心に請け負う。英国は2017年に完全子会社にしたWaterman社が、建築や環境のコンサルと技術者の派遣を手がける。2025年1月にはインドのConsulting Engineers Groupと提携し、洋上風力の海底調査でも提携を進めた。
買収は小粒で、事業の幅を足す形が多い。2024年に事業承継などを手がける湯浅コンサルティングと、同業の広建コンサルタンツを子会社にした。2025年7月には農業関連の子会社CTIフロンティアを譲渡し、事業を絞り込んでもいる。連結の従業員は約4,100人で、うち国内の技術者が中心だ。
優良さと弱いところ
強みは顧客との関係と技術者の厚さだ。国や自治体の河川計画の経験は、他社が一朝一夕にまねできない。河川分野の売上は首位で、洪水や土砂災害の現場の知見が溜まっている。ただ、堀としては中程度と見る。入札で受注が決まる仕事が多く、価格を自分で決めにくいからだ。技術者が転職すれば知見も動く。
資本効率は並だ。ROEは過去10年の中央値で10%、直近の2025年12月期は9%に下がった。営業利益率も2023年12月期の10.8%から、2025年12月期は9.0%へ低下している。国内の人件費の上昇を単価に転嫁しきれず、海外が足を引っ張った形だ。会社は原価率の改善で2026年12月期に利益を戻す計画で、上期は営業利益が1割増えた。
財務は堅い。自己資本比率は約7割、純現金は136億円ある。借金に頼らず、人材投資と小粒の買収を続けられる。経営は資本効率を意識し始めた。配当性向30%以上を最低ラインにし、中期計画の期間中は自己資本配当率3%を基本に据える。大株主には光パワー(重田康光氏が共同保有者)が約1割を持つが、2020年の報告では長期保有を目的とした純投資とされる。
弱みは2つある。1つは海外の収益力の低さ、もう1つは単一の発注元に依存する構造だ。どちらも一朝一夕には変わらない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
建設コンサルティングは、公共事業の上流を担う人材業だ。建設コンサルタンツ協会の会員501社の売上は、2023年度に1兆1,309億円。2014年度の6,677億円から約7割増えた。伸びを支えたのは災害対策と、老朽化したインフラの点検・更新だ。
追い風は政策にある。第1次国土強靱化実施中期計画は、2026〜2030年度の5年間で20兆円強を見込み、従来の約15兆円を上回る。2026年度の公共事業関係費は約6.1兆円と、13年続けて6兆円前後を保った。2025年の八潮市の道路陥没事故を受けて、上下水道の老朽化対策にも予算が付いた。
逆風は2つある。公共事業費が名目で横ばいなら、物価が3%で上がる世界では実質の事業量が減る。もう1つは人手だ。技術者は不足していて、採用と定着が成長の天井になる。競合は日本工営(現ID&Eホールディングス)、パシフィックコンサルタンツ、オリエンタルコンサルタンツ、八千代エンジニヤリングなどで、河川分野では当社が首位とされ、日本工営が続く。
10年で見ると、国内の人口減で新設の工事は減るが、更新・維持の仕事が置き換わる。人の数に縛られる分、増収は物価と採用の範囲で止まる。BIM/CIMや生成AIは工数を減らす。単価の下落を招くか、人が余った時間を付加価値の高い仕事に回せるかが分かれ目になる。海外は英国の公共部門で人件費の高止まりが利益を削り、東南アジアではODA予算の縮小が重い。
見直し(AI エージェント代替):上の段落の「工数を減らす。単価の下落を招くか、人が余った時間を付加価値の高い仕事に回せるかが分かれ目」という見方は、筆者は発注側が成果払いに寄るリスクのほうを重く見る。ただし許認可の型なので、事務部分に限って入れた。
資本政策と M&A
資本政策は急に変わった。会社は配当性向30%以上を最低ラインとし、中期計画の期間中は自己資本配当率3%を基本とする。2026年7月には期末配当を大きく引き上げ、年間の予想配当性向は4割台に乗った。同時に上限30億円の自社株買いを決めた。取得期間は2026年8月から2027年4月までだ。
中期経営計画2027は、2027年12月期に売上1,100億円・営業利益率11%以上を掲げる。長期ビジョンSPRONG 2030は2030年に売上1,300億円、営業利益150億円、ROE12%以上、社員5,000人をうたう。成長投資は約250億円で、人材・研究開発・DXに約100億円、残りは買収などの戦略投資に充てる。純現金136億円は、この投資の原資と重なる。
買収は小粒だ。湯浅コンサルティングと広建コンサルタンツは、事業承継の知見と地方の同業を足す手だ。一方で農業の子会社は売却し、事業の整理も進める。大型買収で価値を壊す心配は今のところ小さい。
買われる側になる可能性も頭に置く。時価総額は約950億円で、純現金がある。同業の再編が進めば、対象になりうる大きさだ。ただし従業員持株会が約8%、光パワーが約1割を持ち、安定株主の層は厚い。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
公共の需要は堅い。国土強靱化の第 1 次実施中期計画は 2026〜2030 年度で 20 兆円強を見込み、道路や上下水道の老朽化対策も続く。河川分野で首位の地位、国と長く積み上げた関係、技術士の厚みは、他社がすぐにまねできない。
設計の署名は技術士という人が負う許認可の仕事だ。AI エージェントが作図や報告書づくりを引き受けても、責任を負うのは人である。浮いた時間は、付加価値の高い設計や提案に回せる。
借金はなく、純現金は 136 億円ある。今期は大幅な増配と 30 億円の自社株買いを決め、資本配分は改善途上にある。海外の英国法人が黒字になれば、会社が掲げる営業利益 150 億円も届く。時価総額は約 950 億円で、同業の再編が進めば買われる側になる可能性もあり、価値は今を保つ。許認可の型では、人月型のコンサルのような急落は起きにくい。公共の発注元は価格だけでなく技術の確かさも見る。長年の実績が入札の評価点に効くため、新規の参入者は簡単に割り込めない。
慎重な見方
稼ぎの源は人だ。売上は技術者の数と 1 人当たりの単価で決まる。AI エージェントが設計・積算・報告書づくりの工数を減らせば、発注側は人月ではなく成果に応じた安い単価でしか払わなくなる。
公共事業費が名目で横ばいなら、物価が 3% で上がる世界では実質の事業量が減る。予定価格が物価に連動しても、成果払いに移れば工数の削減分は発注側のものになる。
海外は売上の 3 割を占めるのに利益は 5 億円しかなく、資本を食っている。英国の公共部門で人件費の高止まりが続き、東南アジアでは ODA の縮小が重い。会社の長期計画の営業利益 150 億円は、AI の影響を織り込んでいない。
AI エージェントを売り物にして出た売上の金額は、開示されていない。技術士の署名という壁も、新規の参入者が AI を使えば薄れる。海外の赤字を止められないまま、国内の単価だけが下がる形が最も怖い。人手不足で人件費だけが先に上がる点も重い。
どちらに重みを置いたか
公共の需要の堅さと許認可の守りは、強気の見方が正しい。ただ筆者は、AI エージェントの工数削減が、発注側の成果払いと値下げ要求につながる流れを無視できないと見る。許認可の型なので、数量の減りは事務部分だけに入れた。
やや悲観と悲観を合わせて 35% を置いた。置き換えの影響は中立の数量と価格に入れたので、確率では重ねて引かない。悲観でも純現金が残る。期待は今の値段を下回る。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 3,635 円991 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,338 円365 億円)。 今の値に割り戻すと 2,748 円749 億円、今との差 −21.2%、 期待の年率 +3.6%(資本コスト 7.2%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 6,080 円1,658 億円 | 1,797 円490 億円 | +125.7% | +8.5% | 473 円129 億円 |
| やや楽観 | 20% | 5,284 円1,441 億円 | 1,617 円441 億円 | +97.7% | +7.1% | 1,380 円376 億円 |
| 中立 | 39% | 4,449 円1,213 億円 | 1,432 円391 億円 | +68.5% | +5.4% | 2,294 円625 億円 |
| やや悲観 | 24% | 1,765 円481 億円 | 1,047 円286 億円 | −19.4% | −2.1% | 675 円184 億円 |
| 悲観 | 11% | 498 円136 億円 | 883 円241 億円 | −60.4% | −8.9% | 152 円41 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,635 円991 億円 | 1,338 円365 億円 | +42.5% | +3.6% | 4,974 円1,356 億円 |
今の株価時価総額 3,490 円951 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.2% を下回るほど割高。
楽観 6% 強靱化の予算を取り込み、国内の利益率が一段上がる 利益 119 億円 · PER 13.8 倍 · 株価時価総額 6,080 円1,658 億円
国土強靱化の第 1 次実施中期計画が予定どおり進み、国内の人員は 15% ほど増える。AI エージェントが作図と報告書づくりの工数を減らしても、技術士が署名する設計の価値は変わらない。国内の単価は物価並みの 1.34 倍まで上がり、営業利益率は 14% に届く。海外は英国の採算が改善し、利益率が 6% に上がる。全社の売上は約 1,560 億円と今の 1.5 倍、営業利益は約 180 億円になる。会社が掲げる長期計画の営業利益 150 億円を超える。AI の代替は、工数の削減が顧客の値下げ要求に転じない前提で、小さく収まる。
- 国内建設コンサルティング:数量 3,105(国内の人員(人、推定))× 価格 3,459(1人当たりの年間売上(万円))→ 売上 1,074 億円・営業利益 150 億円。数量 1.15 倍・価格 1.34 倍・営業利益率 14%
- 海外建設コンサルティング:数量 1,664(海外の人員(人、推定))× 価格 2,934(1人当たりの年間売上(万円))→ 売上 488 億円・営業利益 29 億円。数量 1.20 倍・価格 1.30 倍・営業利益率 6%
倍率:事業の純利益 119 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.4% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.3%、10 年より先の名目の伸び g 0.0% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.8 倍。全体の PER 13.79 倍、時価総額 1,636 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国土強靱化の予算は AI と別の追い風で、楽観でも AI で伸びる前提は置かない。国内の人員の増加、予定価格の物価連動、海外の黒字化が全部そろう筋書きなので 6% に絞った。
やや楽観 20% 国内の人員が 7% 増え、利益率が着実に上がる 利益 101 億円 · PER 13.8 倍 · 株価時価総額 5,284 円1,441 億円
強靱化の予算に支えられ、国内の人員は 7% ほど増える。AI エージェントが作図と報告書づくりを引き受け、同じ仕事を少ない人手でこなせるようになるが、浮いた時間は付加価値の高い設計に回る。国内の単価は 1.32 倍まで上がり、営業利益率は 13.5% になる。海外は 4.5% に改善する。全社の売上は約 1,430 億円と今の 1.4 倍、営業利益は約 150 億円。人手の確保が成長の天井で、採用と定着の費用が重い。会社は海外の採算改善を急ぎ、英国の拠点を整理する。返せる額は、増配と自社株買いの方針の範囲に収まる。
- 国内建設コンサルティング:数量 2,889(国内の人員(人、推定))× 価格 3,408(1人当たりの年間売上(万円))→ 売上 985 億円・営業利益 133 億円。数量 1.07 倍・価格 1.32 倍・営業利益率 14%
- 海外建設コンサルティング:数量 1,526(海外の人員(人、推定))× 価格 2,888(1人当たりの年間売上(万円))→ 売上 441 億円・営業利益 20 億円。数量 1.10 倍・価格 1.28 倍・営業利益率 4%
倍率:事業の純利益 101 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.6% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.9%、10 年より先の名目の伸び g 0.0% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.8 倍。全体の PER 13.79 倍、時価総額 1,390 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:強靱化の追い風が続き、AI エージェントの影響が事務部分に収まる筋書き。公共の需要が堅いことを踏まえ、20% を置いた。
中立 39% 人員は横ばい。予算は堅いが工数の削減が値段に響く 利益 83 億円 · PER 13.8 倍 · 株価時価総額 4,449 円1,213 億円
国土強靱化の予算は続き、国内の人員は横ばいとなる。浮いた工数は、AI エージェントが作図と報告書づくりを引き受けた分で、人員を減らさず新しい案件に回す。国内の単価は予定価格の物価連動で 1.30 倍まで上がり、営業利益率は 12.5% に落ち着く。海外は英国の人件費の高止まりが残り、利益率は 3% にとどまる。全社の売上は約 1,300 億円と今の 1.3 倍、営業利益は約 125 億円になる。借金のない財務は堅く、自己資本が積み上がって ROE は 8% 台にとどまる。堅いが平凡な 10 年である。
- 国内建設コンサルティング:数量 2,700(国内の人員(人、推定))× 価格 3,356(1人当たりの年間売上(万円))→ 売上 906 億円・営業利益 113 億円。数量 1.00 倍・価格 1.30 倍・営業利益率 12%
- 海外建設コンサルティング:数量 1,387(海外の人員(人、推定))× 価格 2,821(1人当たりの年間売上(万円))→ 売上 391 億円・営業利益 12 億円。数量 1.00 倍・価格 1.25 倍・営業利益率 3%
倍率:事業の純利益 82 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.4% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.3%、10 年より先の名目の伸び g 0.0% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.8 倍。全体の PER 13.79 倍、時価総額 1,138 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:公共の需要は堅く、AI エージェントの影響が事務部分に収まる流れの中心の筋書き。数量 1.0 倍、価格 1.30 倍と、決まりの「今の置き方を基本」に事務部分の縮みを足して置いた。数量と価格に入れた分を、確率と g で重ねて引いていない。
やや悲観 24% 工数の削減が値下げに転じ、国内の人員が 15% 減る 利益 44 億円 · PER 8.1 倍 · 株価時価総額 1,765 円481 億円
AI エージェントが設計と報告書づくりの工数を大きく減らし、発注側は成果払いへの移行と予定価格の見直しを進める。国内の人員は 15% 減り、単価は 1.20 倍にとどまる。営業利益率は 9% に下がる。海外は人件費の高止まりで 1% まで落ちる。全社の売上は約 1,020 億円と今とほぼ同じ水準、営業利益は約 67 億円と、今を下回る。技術士の署名と許認可は残るため、事業の存続は揺らがない。公共の予算が物価に追いつかない年が続き、増収が利益にならない。会社は海外の拠点を縮小し、国内の事務部分の人員を技術部門に移す。配当は守るが、自社株買いは細る。
- 国内建設コンサルティング:数量 2,295(国内の人員(人、推定))× 価格 3,098(1人当たりの年間売上(万円))→ 売上 711 億円・営業利益 64 億円。数量 0.85 倍・価格 1.20 倍・営業利益率 9%
- 海外建設コンサルティング:数量 1,179(海外の人員(人、推定))× 価格 2,595(1人当たりの年間売上(万円))→ 売上 306 億円・営業利益 3 億円。数量 0.85 倍・価格 1.15 倍・営業利益率 1%
倍率:ROE 4.9% が k 7.25% 以下。ためた利益は額面未満の価値で、PER は 1÷k = 12.5 倍を上限に ROE÷k の割合で下げて 8.12 倍。g は名目 0.0%。人月・席の型で寿命は短く、g は名目 0%(横ばい)まで。堀は普通。
確率:AI エージェントの工数削減が、発注側の成果払いへの移行と予定価格の引き下げにつながる筋書き。公共の需要の堅さを踏まえつつ、24% を置いた。
悲観 11% 設計の自動化と予算の縮小で、売上が半分前後に縮む 利益 1 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 498 円136 億円
AI エージェントが設計・積算・報告書づくりの大半を自動化し、発注側は人月ではなく成果に応じた安い単価でしか払わなくなる。国内の人員は半分近くまで減り、単価も 0.95 倍と、値下げを受け入れる。海外は英国の撤退で規模が半分以下に縮み、赤字になる。全社の売上は約 490 億円と今の半分前後、営業利益はほぼゼロになる。技術士の署名という参入の壁も、AI を使う新規の参入者の前では守りきれない。残るのは純現金だけで、事業の稼ぐ力は床に使わない。会社は拠点を閉じ、人員を大きく減らして固定費を縮める。10 年後の会社は、河川・砂防の専門家が少数残る小さな設計会社になっている。
- 国内建設コンサルティング:数量 1,485(国内の人員(人、推定))× 価格 2,452(1人当たりの年間売上(万円))→ 売上 364 億円・営業利益 7 億円。数量 0.55 倍・価格 0.95 倍・営業利益率 2%
- 海外建設コンサルティング:数量 624(海外の人員(人、推定))× 価格 2,031(1人当たりの年間売上(万円))→ 売上 127 億円・営業利益 −6 億円。数量 0.45 倍・価格 0.90 倍・営業利益率 -5%
倍率:稼ぐ力が崩れた姿。事業の稼ぎは床に使わず、純現金(約 136 億円)を今の自己資本 665 億円に対する PBR で表す。
確率:AI エージェントが設計の大半を自動化し、予算も実質で縮む筋書き。許認可の型で起こりにくいため、悲観は 11% と低く、やや悲観と合わせて 35%。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
国内建設コンサルティング
河川・砂防・道路・都市・環境などの計画と設計、点検。発注元の約9割が国と自治体。
| 数量国内の人員(人、推定) | 価格1人当たりの年間売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 2,700 | 2,582 | 697 | 86 |
| 10 年後 中立 | 2,700 | 3,356 | 906 | 113 |
取り方:連結従業員4,087人(2025年12月期の有報ベース)のうち、単体2,263人と国内子会社を合わせて約2,700人を国内と推定し、売上697億円を割って1人当たり約2,580万円とした。人員の分け方は推定。先の価格は人件費の物価3%を転嫁して中立で10年1.34倍に置いた。 AI エージェント代替の型:売上の約 69%。河川・砂防・道路の計画と設計で、技術士の署名と国・自治体の入札が要る許認可の型。AI エージェントは作図・報告書づくりなど事務部分の工数を減らす。決まりに従い今の置き方を基本とし、事務部分(作業の約 3 割と仮定)だけが人月型で縮む前提で、数量は中立 1.0 倍(前の版は 1.10 倍)、価格は 1.30 倍(予定価格は労務単価で物価に連動するが、成果払いに移る分を差し引く)とした。AI エージェントを売り物にした売上の金額開示は確認できない。
海外建設コンサルティング
英国のWaterman社(建築・環境コンサルと技術者派遣)と、東南アジアの建設技研インターナショナル(ODA案件)。
| 数量海外の人員(人、推定) | 価格1人当たりの年間売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 1,387 | 2,257 | 313 | 5 |
| 10 年後 中立 | 1,387 | 2,821 | 391 | 12 |
取り方:連結従業員4,087人から国内の約2,700人を引いた約1,390人を海外と推定し、売上313億円を割って1人当たり約2,260万円とした。為替は固定。英国は人件費の高止まりを単価に転嫁しきれず、中立で10年1.30倍に置いた。 AI エージェント代替の型:売上の約 31%。英国のウォーターマンやアジアの拠点。公共の設計業務で、国内より入札の競争が激しく人件費の高止まりも重い。数量は中立 1.0 倍(前の版は 1.12 倍)、価格は 1.25 倍とした。
リスクと懸念
AI エージェントによる設計工数の削減(AI エージェント代替)
稼ぎの源は技術者の工数だ。AI エージェントが作図・積算・報告書づくりを肩代わりすれば、発注側は成果払いへの移行や予定価格の引き下げを求める。技術士の署名と許認可の型なので、数量の減りは事務部分だけに入れ、中立は人員横ばい、単価は 1.30 倍にとどまる。悲観では売上が半分前後に縮む。
公共予算が物価に追いつかない
公共事業関係費は13年連続で約6兆円に張り付いている。物価が年3%で上がるなら、名目が横ばいの予算では実質の事業量が縮む。国土強靱化の枠も毎年の積み上げ次第で、受注が伸びない年が続けば、人員の稼働が下がり利益率が落ちる。
人材の確保と人件費の先行
売上は技術者の数と単価で決まる。採用が伸びなければ増収は止まり、競合やゼネコンへの流出が起きれば知見ごと失う。賃金は物価で先に上がり、入札の単価は遅れて上がる。このずれが利益率を削る。
海外の収益力の低さ
海外は売上313億円に対し営業利益が5億円しかない。英国は人件費の高止まりと民間需要の弱さ、東南アジアはODA予算の縮小が重荷になる。構造改革が遅れれば、減損や撤退の損失が出る恐れがある。
発注元が国と自治体に偏る
売上の約9割が公共で、国土交通省の方針や自治体の財政に業績が左右される。災害が少なければ緊急対応の仕事は減り、政権の方針が変われば予算の配分も変わる。分散の効かない構造である。
買収の統合と資本配分
成長投資約250億円のうち、人材・DXなど以外は買収に回る見込みだ。小粒な買収が続くが、統合に失敗すれば人材が抜けて利益が出ない。海外の買収は英国のWatermanの前例があり、投資の回収に時間がかかっている。
今後の分かれ目
- AI エージェントを売り物にした設計サービスの売上・受注が決算で開示される
- 開示が工数の減りを補う規模なら、楽観側の数量を引き上げる。開示が無い間は、AI による増収は置かない。
- 2027年12月期に営業利益率11%以上を達成する
- 原価率の改善が定着したと確認でき、10年のやや楽観・楽観の筋書きに近づく。
- 海外の営業利益が10億円を超えて安定する
- 構造改革が実を結んだと確認でき、全体の利益率が上がる筋書きの確度が上がる。
- 公共事業関係費が物価並みに増える
- 実質の事業量が保たれ、人員が増やせれば10年の中立以上に近づく。
- 技術者の離職が増え、人員が減る年が続く
- 売上の天井が下がり、やや悲観の筋書きが現実味を帯びる。
- 同業や投資家による買収の提案が出る
- 10年待たずに時価総額が見直される可能性があり、ここで置いた筋書きは前提が変わる。
見ておくもの
- 国内の受注高と受注残、1人当たりの売上の伸び
- 営業利益率(国内の13.5%超、全社の11%超)と原価率の推移
- 連結の人員数と離職率、新卒・中途の採用数
- 海外の営業利益(Watermanと建設技研インターナショナル別)
- 自社株買いの進み方と配当、ROEの推移(目標12%)
倍率と資本コストの決め方
倍率は式だけで置いた。許認可・現場の体の型だが g(10 年より先の名目の伸び)は 0% とし、PER は 1÷k = 12.5 倍になる。k は AI エージェント代替の寿命で +0.5% を上乗せして 8.0%(決まりの現場の体・許認可の上限)。AI エージェント代替の理由は、主に中立の数量と価格(事務部分のみ)に入れ、k は上限の +0.5%、確率は 35%、g は 0% と、重ねすぎないようにした。今の PER や同業・過去の倍率は使っていない。やや悲観は ROE が k を下回るため式で PER が下がる。悲観は稼ぐ力でなく純現金の床で置いた。自己資本は「今の 665 億円+期間の純利益−還元」で積んだ。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.5→13.79 倍・やや楽観 PER 12.5→13.79 倍・中立 PER 12.5→13.79 倍)。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。