結論
リクルートは、求人の Indeed、国内の販促メディア(SUUMO・ホットペッパー・じゃらん)、人材派遣の 3 本柱の会社だ。直近の利益は過去最高で、会社見通しの上方修正も本物である。筆者の結論は、10 年の本質価値は今の時価総額を 8 割ほど下回る割高だ。理由は、AI エージェントが「探す」という仕事そのものを肩代わりする時代に、画面と人の時間で稼ぐ商売が縮むと見るからである。
売上の 4 割弱を占める Indeed は、求職者が画面で仕事を探す前提で広告を売る。国内メディアも同じで、人が画面で物件や店を探す入口に広告が載る。AI エージェントが人に代わって探し、比べ、申し込むようになれば、画面の価値と広告の値段は下がる。独自の求人・求職データという堀は残るが、数量は今の 0.88 倍、価格は物価ほど上がらない 1.18 倍と置いた。
残る 4 割弱の派遣は、人の時間で売る商売だ。事務系の派遣は AI エージェントの肩代わりを受けやすく、数量は今の 0.7 倍とした。中立の 10 年後は、売上が今と同じでも、純利益は 1 割減る。確率で重ねると、本質価値は今の値段の 5 分の 1 に満たない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、まず「10 年後もこの事業は強いか」を問う。Indeed の求人データと SUUMO などの国内の掲載網は、長年かけて築いた強い資産だ。この点は疑わない。自社株買いを続けて自己資本を小さく保つ経営も、株主への誠実さを示している。
ただ、強い資産が強い収益を生み続けるには、人が画面で探すという使われ方が続く必要がある。AI エージェントが探す役を担えば、広告の入口の値打ちは細り、掲載する側の支払いも減る。成果報酬に移れた証拠も、AI エージェントを自社の売り物にして売上が出た開示も、金額では確かめられない。
オーナー利益は純利益に近く、手元の純現金も厚い。だが利益の水準そのものが先で下がるなら、今の高い値段に安全域は無い。わからない未来には、確率を悲観側に厚く置くのが筋だと筆者は考える。
何で稼ぐ会社か
事業はHRテクノロジー、人材派遣(スタッフィング)、メディア&ソリューションの3つに分かれる。HRテクノロジーは米国Indeedと企業レビューサイトGlassdoorが中核で、企業が求人を掲載し、求職者からの応募(クリック・応募送客)に対して課金する成果報酬型の広告モデルが主力。2025年秋に投入した「プレミアムスポンサー求人」のように、単価の高い上位掲載商品の拡大で1件あたり収益(ARPJ)を伸ばし続けている点が利益率改善の核になっている。
メディア&ソリューションは国内特化で、住まい(SUUMO)、飲食店予約・検索(Hot Pepper)、旅行(じゃらん)、美容(Hot Pepper Beauty)、結婚(ゼクシィ)など生活領域ごとに国内トップクラスの集客力を持つ媒体を運営し、掲載企業からの掲載料・成約手数料で稼ぐ。広告色が薄く販促の実務(集客代行)に近いため利益率が高い。
人材派遣(スタッフィング)は国内外で一般事務・製造・ITなど幅広い職種の派遣スタッフを企業に供給する事業で、売上規模は大きいが人件費が主なコストであるため利益率は低い。国内は人手不足を背景に安定成長、欧米豪は景気の先行き不透明感から鈍化しやすく、地域差が業績の振れ要因になる。
優良さと弱いところ
Indeedは求職者が無料で使う検索エンジン型の求人サイトとして世界最大級のトラフィックを持ち、ネットワーク効果(求職者が集まるほど企業が掲載し、企業が増えるほど求職者が集まる)が堀になっている。国内メディア事業も住まい・飲食・旅行・美容という生活領域ごとに長年の集客データと営業網を持ち、地域の中小企業が逃げにくい送客経路を握っている。
ROEは直近で30%を超え、資本効率は極めて高い。背景には大規模な自己株式取得(2026年3月期の還元方針)による株主資本の圧縮があり、稼いだ利益を再投資するより株主に還元する資本配分を優先する経営スタイルが定着している。
弱点は、HRテクノロジーの業績が景気と連動しやすい点(企業は不況時に真っ先に求人広告費を削る)と、生成AIが求人マッチングそのものを変える可能性に対し、Indeedの検索エンジン型モデルが優位性を保てるかが未知数な点である。人材派遣は労働集約的でスイッチングコストが低く、価格競争にさらされやすい事業でもある。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
世界のオンライン求人広告・HRテクノロジー市場は、生成AIによる求人作成・候補者スクリーニング・マッチングの高度化を背景に拡大が続いており、Indeedの米国での1件あたり収益(ARPJ)は直近で前年比17%超の伸びを示した。競合はLinkedIn(マイクロソフト傘下)、ZipRecruiter、中国のBOSS直聘などで、生成AIを使った「エージェントが候補者を探して応募まで行う」次世代のマッチング技術をどの会社が先に実用化するかが競争の焦点になっている。
国内では労働力不足が構造的に続き、人材紹介・派遣市場は年率3%前後で拡大が見込まれる一方、求人広告(紙・ウェブ両方)の需要そのものはハイクラス人材紹介へのシフトで伸びが鈍る領域もある。SUUMO・じゃらん・Hot Pepper Beautyなど国内メディアは、訪日外国人(インバウンド)需要の拡大(飲食・旅行・美容)が追い風になっている。
人材派遣は欧米豪の景気減速の影響を受けやすく、直近も欧州・米国・豪州の派遣需要は鈍化が続いている。生成AIによる業務代替が初級ホワイトカラー業務(データ入力・調査・初期スクリーニング)に及ぶ場合、派遣・紹介の対象となる仕事の総量自体が10年後に縮む可能性があり、この点が業界共通の構造リスクである。
AI エージェントとの関係では、求人広告と国内メディアは、画面の価値と独自データという堀の混合型に当たる。数量は 10 年で今の 0.88 倍、価格は物価に届かない 1.18 倍を中立とした。派遣は人月で売る型で、数量は 0.7 倍前後を中立とした。売上の 6 割がこの二つの型に当たる。
資本政策と M&A
配当と自社株買いを組み合わせた株主還元を積極化しており、直近は純利益の約8割規模を還元に回す年もあった。大規模な自己株式取得によって株主資本(equity)そのものが縮小する一方でROEは押し上げられており、資本効率を最大化する経営スタイルが明確である。
過去にはIndeed(2012年)、Glassdoor(2018年)という米国HRテック企業の買収がグループの収益構造を大きく変えた実績があり、M&Aによる事業ポートフォリオの入れ替えに前向きな会社である。今後も生成AI関連のスタートアップ買収や、国内メディア事業の周辺領域(金融・医療など生活インフラ領域)への展開余地があるが、Indeedほどの規模のM&Aは当面想定しにくい。TOBによる買収対象になる可能性は、時価総額の大きさからは考えにくい。
10 年の還元は、純利益の約 8 割規模という直近の実績の範囲。取得ずみの約 744 億円は株数に反映ずみなので、還元の合計から除いた。余った現金 5,000 億円は還元の原資にしない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
労働力不足は日本・米国ともに構造的で、企業は求人のために単価の高い商品を使う動機を強めている。IndeedのARPJ(応募1件あたり収益)は17%を超える伸びを続け、2025年秋導入のプレミアムスポンサー求人のような高単価商品の拡大余地はまだ大きい。生成AIは求人マッチングの精度を上げる技術であり、Indeedのような巨大な求人・求職者データを持つプラットフォームほどAIの精度向上効果を取り込みやすい。むしろAIは中小の求人サイトを淘汰し、Indeedのシェアをさらに高める方向に働く可能性がある。
国内メディア事業はインバウンド需要の拡大を取り込み続け、人材派遣も労働力不足の恩恵を受ける。資本配分は株主還元を最優先しており、大規模な自社株買いがEPSの伸びを加速させる。AIによる業務効率化で人件費以外の販管費も抑制され、全社の営業利益率はHRテクノロジー・国内メディアともにさらに改善する余地がある。景気後退が来ても、求人需要の構造的な拡大基調(労働力不足)がその影響を相対的に小さくする。
Indeed の求人・求職データは、エージェントが探す時代にも欠かせない。エージェントは Indeed の応募を引き出して使うので、掲載する側の支払いは続き、データを貸し出す収入も生まれうる。
慎重な見方
HRテクノロジー・国内メディア・人材派遣のいずれも、企業の裁量的な支出(広告費・派遣費)に依存しており、景気後退時には真っ先に削られる性質を持つ。過去のリーマンショック時には求人広告・人材紹介市場は数十%単位で縮小した実績があり、同じことが繰り返されるリスクは常にある。
より構造的な懸念は、生成AIが「企業と求職者を仲介する」というリクルートのビジネスモデルそのものを不要にする可能性である。AIエージェントが企業の採用ニーズと求職者のスキルを直接マッチングできるようになれば、Indeedのような広告課金型プラットフォームを経由せずに採用が完結する未来もあり得る。LinkedIn(マイクロソフト)やBOSS直聘のような競合もAI投資を強めており、Indeedの優位性が10年間維持される保証はない。
現在の株価は直近実績利益に対して非常に高い倍率(トレーリングPERで50倍超)を付けており、将来の成長をかなり先取りした値段になっている。多少の成長鈍化や倍率の圧縮だけで株価が大きく下がるリスクを市場は過小評価している。
AI エージェントは人に代わって探し、比べ、申し込む。画面を見る人が減れば、広告の入口は価値を失う。事務系の派遣も同じ流れで置き換わる。売上の 6 割が、この二つの型に当たる。
どちらに重みを置いたか
事業の質と独自データの強さでは強気の見方が上だが、「人が画面で探す」前提が崩れる点では慎重な見方が上だ。AI エージェントを売り物にして売上が出た金額の開示が無いので、楽観でも数量は今を超えないと置いた。やや悲観と悲観を合わせて 36% とした。中立が既に縮む筋書きなので、確率でまで重ねては引いていない。中立は 37%。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 4,330 円6.03 兆円(+ 配当配当と自社株買いの合計 2,561 円3.57 兆円)。 今の値に割り戻すと 3,955 円5.51 兆円、今との差 −79.4%、 期待の年率 −9.7%(資本コスト 7.2%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 6,820 円9.49 兆円 | 3,403 円4.74 兆円 | −46.7% | −6.1% | 716 円9,963 億円 |
| やや楽観 | 20% | 5,977 円8.32 兆円 | 3,124 円4.35 兆円 | −52.5% | −7.2% | 1,820 円2.53 兆円 |
| 中立 | 37% | 5,191 円7.23 兆円 | 2,858 円3.98 兆円 | −58.0% | −8.3% | 2,978 円4.15 兆円 |
| やや悲観 | 25% | 2,811 円3.91 兆円 | 2,143 円2.98 兆円 | −74.2% | −12.7% | 1,239 円1.72 兆円 |
| 悲観 | 11% | 312 円4,350 億円 | 951 円1.32 兆円 | −93.4% | −23.8% | 139 円1,935 億円 |
| 加重平均 | 100% | 4,330 円6.03 兆円 | 2,561 円3.57 兆円 | −64.1% | −9.7% | 6,891 円9.59 兆円 |
今の株価時価総額 19,175 円26.69 兆円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.2% を下回るほど割高。
楽観 7% 入口の値打ちが保たれる 利益 6,272 億円 · PER 13.8 倍 · 株価時価総額 6,820 円9.49 兆円
Indeed の求人データは、AI エージェントが求職者の代理で探す時代にも、供給源として欠かせない。求人側は Indeed 経由の応募に払い続け、国内メディアの掲載網も揺るがない。広告の数量は今を超えず、価格は物価並みの 1.3 倍まで上がる。派遣は人月型で数量が縮む。楽観でも数量が今を超えないのは、AI エージェントを売り物にして売上が出た金額の開示が無いからだ。10 年後の売上は 48,442 億円(今の 1.31 倍)、純利益は 6,272 億円。 内訳はHRテクノロジー(売上 18,964 億円・数量 1.00 倍・価格 1.30 倍)、人材派遣(売上 18,574 億円・数量 0.99 倍・価格 1.34 倍)、メディア&ソリューション(売上 10,904 億円・数量 1.00 倍・価格 1.30 倍)。 営業利益は 7,967 億円(利益率 16.4%)、10 年の還元は計 47,379 億円、時価総額は 90,530 億円になる。
- HRテクノロジー(Indeed・Glassdoor):数量 389(世界のオンライン求人広告市場(億ドル))× 価格 32.5%(リクルートのシェア(%))→ 売上 18,964 億円・営業利益 3,243 億円。席・画面が価値の中心の型。数量 1.00 倍・価格 1.30 倍・利益率 17.1%(AI エージェント代替で置き直し)
- 人材派遣(スタッフィング):数量 29.7(派遣の稼働人数(日本・欧州・米国・豪州の合計、万人、推定))× 価格 625(派遣スタッフ1人当たり年間売上(万円))→ 売上 18,574 億円・営業利益 743 億円。人月・工数で売るの型。数量 0.99 倍・価格 1.34 倍・利益率 4.0%(AI エージェント代替で置き直し)
- メディア&ソリューション(国内生活領域メディア):数量 39,000(国内のインターネット広告費(億円、名目))× 価格 28.0%(リクルートの国内メディア&ソリューションの取り分(シェア))→ 売上 10,904 億円・営業利益 4,226 億円。席・画面が価値の中心の型。数量 1.00 倍・価格 1.30 倍・利益率 38.8%(AI エージェント代替で置き直し)
倍率:事業の純利益 6,202 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 43.2% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 25.2%、10 年より先の名目の伸び g 0.0% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)5,000 億円。全体の PER 13.79 倍、時価総額 90,530 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:AI エージェントを売り物にして売上が出た金額の開示は無い。楽観でも数量は今を超えないと置き、7%。
やや楽観 20% 広告は守るが派遣が縮む 利益 5,365 億円 · PER 13.8 倍 · 株価時価総額 5,977 円8.32 兆円
独自データの堀が効き、広告の数量は今の 0.94 倍、価格は 1.24 倍に保たれる。ただし AI エージェントの導入は進み、派遣の数量は 0.8 倍に縮む。国内メディアは物件や店の掲載が入口として残る。エージェントの普及は緩やかで、広告主は当面、人が見る画面にも払い続ける。10 年後の売上は 42,923 億円(今の 1.16 倍)、純利益は 5,365 億円。自社株買いが続くので自己資本は小さく、純現金は還元に回る。 内訳はHRテクノロジー(売上 17,005 億円・数量 0.94 倍・価格 1.24 倍)、人材派遣(売上 16,140 億円・数量 0.88 倍・価格 1.31 倍)、メディア&ソリューション(売上 9,777 億円・数量 0.94 倍・価格 1.24 倍)。 営業利益は 6,814 億円(利益率 15.9%)、10 年の還元は計 43,489 億円、時価総額は 78,012 億円になる。
- HRテクノロジー(Indeed・Glassdoor):数量 366(世界のオンライン求人広告市場(億ドル))× 価格 31.0%(リクルートのシェア(%))→ 売上 17,005 億円・営業利益 2,792 億円。席・画面が価値の中心の型。数量 0.94 倍・価格 1.24 倍・利益率 16.4%(AI エージェント代替で置き直し)
- 人材派遣(スタッフィング):数量 26.4(派遣の稼働人数(日本・欧州・米国・豪州の合計、万人、推定))× 価格 611(派遣スタッフ1人当たり年間売上(万円))→ 売上 16,140 億円・営業利益 613 億円。人月・工数で売るの型。数量 0.88 倍・価格 1.31 倍・利益率 3.8%(AI エージェント代替で置き直し)
- メディア&ソリューション(国内生活領域メディア):数量 36,660(国内のインターネット広告費(億円、名目))× 価格 26.7%(リクルートの国内メディア&ソリューションの取り分(シェア))→ 売上 9,777 億円・営業利益 3,637 億円。席・画面が価値の中心の型。数量 0.94 倍・価格 1.24 倍・利益率 37.2%(AI エージェント代替で置き直し)
倍率:事業の純利益 5,295 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 41.4% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 24.3%、10 年より先の名目の伸び g 0.0% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)5,000 億円。全体の PER 13.79 倍、時価総額 78,012 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:独自データの堀が効き、広告の価格は上がる筋書き。ただし派遣は縮み、20%。
中立 37% 売上は横ばい、純利益は 1 割減 利益 4,504 億円 · PER 13.8 倍 · 株価時価総額 5,191 円7.23 兆円
広告の数量は今の 0.88 倍、価格は 1.18 倍。物価の 1.34 倍に届かないのは、エージェントが画面を飛ばし、値下げ圧力が掛かるからだ。成果報酬への移行は進まず、広告主は掲載の費用対効果を厳しく見る。派遣は事務系の肩代わりが進み、数量は 0.7 倍。10 年後の売上は 36,671 億円(今の 0.99 倍)と今とほぼ同じだが、利益率が下がり、純利益は 4,504 億円(今は約 5,000 億円)に減る。 内訳はHRテクノロジー(売上 15,147 億円・数量 0.88 倍・価格 1.18 倍)、人材派遣(売上 12,814 億円・数量 0.72 倍・価格 1.28 倍)、メディア&ソリューション(売上 8,710 億円・数量 0.88 倍・価格 1.18 倍)。 営業利益は 5,721 億円(利益率 15.6%)、10 年の還元は計 39,786 億円、時価総額は 66,146 億円になる。
- HRテクノロジー(Indeed・Glassdoor):数量 342(世界のオンライン求人広告市場(億ドル))× 価格 29.5%(リクルートのシェア(%))→ 売上 15,147 億円・営業利益 2,383 億円。席・画面が価値の中心の型。数量 0.88 倍・価格 1.18 倍・利益率 15.7%(AI エージェント代替で置き直し)
- 人材派遣(スタッフィング):数量 21.5(派遣の稼働人数(日本・欧州・米国・豪州の合計、万人、推定))× 価格 597(派遣スタッフ1人当たり年間売上(万円))→ 売上 12,814 億円・営業利益 436 億円。人月・工数で売るの型。数量 0.72 倍・価格 1.28 倍・利益率 3.4%(AI エージェント代替で置き直し)
- メディア&ソリューション(国内生活領域メディア):数量 34,320(国内のインターネット広告費(億円、名目))× 価格 25.4%(リクルートの国内メディア&ソリューションの取り分(シェア))→ 売上 8,710 億円・営業利益 3,106 億円。席・画面が価値の中心の型。数量 0.88 倍・価格 1.18 倍・利益率 35.7%(AI エージェント代替で置き直し)
倍率:事業の純利益 4,434 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 40.0% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 23.6%、10 年より先の名目の伸び g 0.0% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)5,000 億円。全体の PER 13.79 倍、時価総額 66,146 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:画面型と人月型の混合が、数量 0.9 倍前後・価格は物価に届かない筋書きを中立とし 35%。
やや悲観 25% 画面を飛ばされ広告が縮む 利益 2,626 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 2,811 円3.91 兆円
AI エージェントが求人や物件の検索を代行し、広告の入口を取る。広告の数量は今の 0.7 倍、価格は 1.08 倍にとどまる。派遣も事務系を中心に今の 0.6 倍へ縮む。固定費の重さで利益率は大きく落ち、競合のエージェント事業者に求人データを囲い込まれる恐れもある。10 年後の売上は 27,111 億円(今の 0.73 倍)、純利益は 2,626 億円。自社株買いは続かない。 内訳はHRテクノロジー(売上 11,028 億円・数量 0.70 倍・価格 1.08 倍)、人材派遣(売上 9,741 億円・数量 0.61 倍・価格 1.15 倍)、メディア&ソリューション(売上 6,342 億円・数量 0.70 倍・価格 1.08 倍)。 営業利益は 3,335 億円(利益率 12.3%)、10 年の還元は計 29,839 億円、時価総額は 34,035 億円になる。
- HRテクノロジー(Indeed・Glassdoor):数量 272(世界のオンライン求人広告市場(億ドル))× 価格 27.0%(リクルートのシェア(%))→ 売上 11,028 億円・営業利益 1,414 億円。席・画面が価値の中心の型。数量 0.70 倍・価格 1.08 倍・利益率 12.8%(AI エージェント代替で置き直し)
- 人材派遣(スタッフィング):数量 18.2(派遣の稼働人数(日本・欧州・米国・豪州の合計、万人、推定))× 価格 537(派遣スタッフ1人当たり年間売上(万円))→ 売上 9,741 億円・営業利益 253 億円。人月・工数で売るの型。数量 0.61 倍・価格 1.15 倍・利益率 2.6%(AI エージェント代替で置き直し)
- メディア&ソリューション(国内生活領域メディア):数量 27,300(国内のインターネット広告費(億円、名目))× 価格 23.2%(リクルートの国内メディア&ソリューションの取り分(シェア))→ 売上 6,342 億円・営業利益 1,843 億円。席・画面が価値の中心の型。数量 0.70 倍・価格 1.08 倍・利益率 29.1%(AI エージェント代替で置き直し)
倍率:正当化 PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)。事業の ROE 12.7%・k 7.25%・RONIC 10.6%(残る割合 0.50)、名目 g +0.0%(求人広告とメディアは AI が窓口を飛ばして縮む型、派遣は人月型)で 11.77 倍。余った現金は戻り方を掛けて足す
確率:エージェントが求人・物件探しの入口を奪い始める筋書き。画面型は値下げ圧力が強いが、純現金と独自データが下支えし 25%。
悲観 11% 探す仕事をエージェントが奪う 利益 602 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 312 円4,350 億円
求人も物件も飲食も、エージェントが条件を聞いて直接予約する。広告の数量は今の 0.45 倍、価格は 0.9 倍。派遣は今の 0.5 倍に縮み、広告の入口を握られた Indeed は応募の取り次ぎ役にとどまり、売上は 10 年で半分以下の 16,238 億円になる。純利益は 602 億円。値は稼ぐ力でなく、純現金と売れる資産の床で測る。起きる確からしさは低いが、入口を失った広告会社の価値は急に落ちる。 内訳はHRテクノロジー(売上 5,910 億円・数量 0.45 倍・価格 0.90 倍)、人材派遣(売上 6,930 億円・数量 0.50 倍・価格 1.00 倍)、メディア&ソリューション(売上 3,398 億円・数量 0.45 倍・価格 0.90 倍)。 営業利益は 764 億円(利益率 4.7%)、10 年の還元は計 13,237 億円、時価総額は 4,350 億円になる。
- HRテクノロジー(Indeed・Glassdoor):数量 175(世界のオンライン求人広告市場(億ドル))× 価格 22.5%(リクルートのシェア(%))→ 売上 5,910 億円・営業利益 354 億円。席・画面が価値の中心の型。数量 0.45 倍・価格 0.90 倍・利益率 6.0%(AI エージェント代替で置き直し)
- 人材派遣(スタッフィング):数量 14.9(派遣の稼働人数(日本・欧州・米国・豪州の合計、万人、推定))× 価格 467(派遣スタッフ1人当たり年間売上(万円))→ 売上 6,931 億円・営業利益 69 億円。人月・工数で売るの型。数量 0.50 倍・価格 1.00 倍・利益率 1.0%(AI エージェント代替で置き直し)
- メディア&ソリューション(国内生活領域メディア):数量 17,550(国内のインターネット広告費(億円、名目))× 価格 19.4%(リクルートの国内メディア&ソリューションの取り分(シェア))→ 売上 3,398 億円・営業利益 461 億円。席・画面が価値の中心の型。数量 0.45 倍・価格 0.90 倍・利益率 13.6%(AI エージェント代替で置き直し)
倍率:悲観の床は稼ぐ力でなく、純現金と売れる資産の税後(floor_assets_oku 4350 億円)を今の自己資本 15833 億円で割った 0.27 倍。
確率:入口を握られ広告の単価と派遣の人数が同時に崩れる筋書き。11%、やや悲観と合わせ 36%。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
HRテクノロジー(Indeed・Glassdoor)
米国を中心とする求人検索・企業レビューサイト。成果報酬型の求人広告課金が主力。
| 数量世界のオンライン求人広告市場(億ドル) | 価格リクルートのシェア(%) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 389 | 25.0% | 14,588 | 2,495 |
| 10 年後 中立 | 342 | 29.5% | 15,147 | 2,383 |
取り方:Indeed・Glassdoorの売上(2026年3月期1兆4,587億円)を150円/ドルで割った規模から、世界のオンライン求人広告市場を389億ドル・シェア25%と逆算した。市場(億ドル)は金額なので物価で名目に膨らむ。2027年3月期の会社見通し(売上収益4兆2,300億円・EBITDA+S 1兆1,050億円に上方修正、北米の求人が好調)は、足元の勢いを示す材料として参考にとどめ、10 年の道筋の出発点にした。生成AIによる単価の高い商品(プレミアムスポンサー求人)でシェアと利益率が上がる分を筋書きで分けた。【AI エージェント代替】画面と独自データの混合型。10 年の数量は中立で今の 0.88 倍、価格欄(シェア×値段の合成)は 1.18 倍。
人材派遣(スタッフィング)
国内外の一般事務・製造・IT等の派遣スタッフ供給事業。
| 数量派遣の稼働人数(日本・欧州・米国・豪州の合計、万人、推定) | 価格派遣スタッフ1人当たり年間売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 30.0 | 467 | 14,000 | 560 |
| 10 年後 中立 | 21.5 | 597 | 12,814 | 436 |
取り方:スタッフィングの売上約1兆4,000億円を、国内(年間請求額約500万円/人で約14万人)と海外(約450万円/人で約16万人)の稼働人数の合計約30万人で割り、1人当たり年間売上約467万円とした(人数は推定)。人数(量)は人手不足でも派遣の稼働は大きく増えず横ばい〜微増、1人当たり売上は賃金(物価3%)に連れて中立で10年1.34倍に上がる。【AI エージェント代替】人月で売る型。10 年の数量は中立で今の 0.72 倍、価格は 1.28 倍。
メディア&ソリューション(国内生活領域メディア)
SUUMO・Hot Pepper・じゃらん・ゼクシィ等、国内生活領域の集客メディア。
| 数量国内のインターネット広告費(億円、名目) | 価格リクルートの国内メディア&ソリューションの取り分(シェア) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 39,000 | 21.5% | 8,390 | 3,251 |
| 10 年後 中立 | 34,320 | 25.4% | 8,710 | 3,106 |
取り方:国内のインターネット広告費(電通「日本の広告費」2024年3兆6,517億円から2025年度を約3兆9,000億円と推定)に対する、SUUMO・Hot Pepper・じゃらん・Airビジネスなど国内メディア&ソリューションの売上8,389.5億円の比率21.5%をシェアとした。市場は金額なので物価で名目に膨らみ、デジタル化の実質の伸びも乗る。シェアはGoogle・LINEヤフーとの競争で緩やかに下がるとした。【AI エージェント代替】画面と独自データの混合型。10 年の数量は中立で今の 0.88 倍、価格欄は 1.18 倍。
リスクと懸念
AI エージェント代替で画面と人月の売り上げが縮む
売上の 6 割は、人が画面で探すことを前提にした広告と、人の時間で売る派遣だ。AI エージェントが求人・物件・店を人に代わって探せば、広告の入口の値打ちと単価が下がる。事務系の派遣は肩代わりも受ける。広告の価格は物価の 1.34 倍に届かず、1.18 倍と置いた。成果報酬へ移れた金額の開示はまだ無い。
生成AIによる仲介モデルの代替
AIエージェントが企業と求職者を直接つなぐ技術が普及すれば、Indeedのような広告課金型の求人プラットフォームを経由しない採用が増え、HRテクノロジー事業の収益モデルが構造的に縮小するリスクがある。Indeed自身がAIを使いこなせなければ競合に主導権を奪われる。
世界景気の悪化
求人広告・人材派遣・国内メディアの3事業はいずれも企業の裁量的な支出に依存しており、世界的な景気後退が起きれば企業は真っ先に採用関連費用や販促費を削減し、業績が複数事業で同時に急速に悪化する構造になっている。
競合の台頭
LinkedIn(マイクロソフト傘下)や中国のBOSS直聘など競合もAI投資を強めており、求人マッチングの精度や候補者データの質で優位性を競う展開が続く。Indeedの優位性が長期的に保たれる保証はない。
欧米豪の人材派遣需要の鈍化
欧州・米国・豪州では経済見通しの不透明感から人材派遣需要の鈍化が続いており、国内の人手不足による伸びでこれを相殺できなければ、派遣事業全体の成長が止まり全社業績の重荷になる可能性がある。地域ごとの景気の振れが業績のばらつきを大きくする構造も続く。
大規模な自己株式取得への依存
ROEの高さは大規模な自社株買いによる株主資本の圧縮に支えられている面があり、本業の利益そのものの伸びが鈍化した場合、同じペースの株主還元を続けられず、1株当たり指標の伸びが大きく鈍る可能性がある。還元方針の変更そのものが株価の下振れ要因になりやすい。
規制・労働法制の変化
各国で求人広告や人材派遣に関する規制(個人データ保護、派遣労働者の待遇改善義務、AIを使った採用判断への規制など)が強化されれば、事業運営コストが上昇し利益率を圧迫する可能性がある。特に欧州はAI規制の動きが速い。
今後の分かれ目
- Indeed の求人データを AI エージェント事業者が有償で使う契約が、金額つきで開示される
- 入口を奪われても、データの貸し出しで稼げる証拠になり、価格の置き方を物価並みに戻せる。やや楽観に近づく。
- IndeedのARPJ(応募1件あたり収益)の伸びが鈍化する
- HRテクノロジーの増益ペースが落ち、楽観・やや楽観の筋書きが実現しにくくなる。
- 生成AIエージェントによる直接マッチングのサービスが大きく普及する
- 広告課金型プラットフォームの取り分が縮み、10年の悲観・やや悲観の筋書きに近づく。
- 欧米豪の景気が明確に回復する
- 人材派遣事業の成長が再加速し、やや楽観・楽観の筋書きに近づく。
- 世界的な景気後退(リーマン級)が起きる
- 3事業とも同時に落ち込み、10年の悲観シナリオが現実味を帯びる。
- 大規模な自己株式取得のペースが鈍化する
- 1株当たり指標の伸びが鈍り、株価の見通しも中立寄りに下がる。
見ておくもの
- IndeedのARPJ(応募1件あたり収益)の四半期毎の伸び率
- 欧米豪の人材派遣セグメントの売上成長率
- 自己株式取得の規模と株主還元方針の変化
- 生成AIを使った求人マッチング・採用エージェントサービスの業界動向
- 国内メディア事業(SUUMO・Hot Pepper等)のインバウンド関連売上の推移
倍率と資本コストの決め方
今の株価や過去・同業の倍率は見ずに、型ごとの数量・価格・利益率から 10 年後の利益を積み、倍率は式(正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g))で置いた。k は 7.5% に quality +1.00% を足した 8.50%、名目 g は人月・席の型で 0% 以下(求人広告とメディアは AI が窓口を飛ばして縮む型、派遣は人月型)。自己資本は今の値に期間の純利益を足して還元を引いて流した。事業に要らない現金 5,000 億円は帳簿の値で足した。リースの会計は新基準で 2028/03 期から BS に載るが、10 年後の数字は今と同じ形にそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.76→13.79 倍・やや楽観 PER 11.76→13.79 倍・中立 PER 11.76→13.79 倍・やや悲観 PER 11.76→11.77 倍)。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。