結論
ディップは、アルバイト・パート求人サイト「バイトル」を柱にする国内の求人広告会社だ。企業から掲載料をもらい、求職者から応募を集める。これに企業向けの AI・DX の商品が加わる。
結論から言う。筆者は、10 年後の本質価値は今の時価総額 869 億円を半分ほど下回ると見る。利益が崩れた今から回復する前提で見ても、掲載料を取る仲介は AI エージェントや無料の入口に置き換えられる側にあるからだ。
2023 年の中期経営計画は、2027 年 2 月期に営業利益 200〜250 億円を掲げた。実際は 2026 年 2 月期が 91 億円、2027 年 2 月期の会社予想は 50 億円である。営業の組織を変えた混乱とスポットバイトルの先行投資が重なったが、求人広告の市場そのものも縮んでいる。
筆者は、中立で契約社数が 2 割余り減ると置いた。単価は無料の入口に抑えられて 1.18 倍にとどまり、営業利益は 60 億円ほどになる。創業者が筆頭株主で純現金もあるが、固定費の重さで利益は大きく振れる。AI エージェントを売り物にして出た売上の金額は、開示されていない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で、ディップに求めたいのは「長く利益を生む堀」と「配当に回せるお金」の 2 つだ。
堀は、ブランドと営業網の 2 つで、どちらも強くはない。バイトルのブランドは確かに強いが、求人の入口は Indeed と Google に握られ、掲載料を取れる理由が弱くなりつつある。営業網の力は、2026 年 2 月期の減益が示すとおり、組織を変えただけで揺らぐ。
オーナー利益、つまり株主が自由に使える利益で見ると、事業は設備が軽いので、利益のほとんどを配当に回せる。ここは魅力だ。ただし、その利益そのものが、2025 年 2 月期から今期の予想までに 6 割落ちる。景気に敏感で、広告のように使われる商品は、安定した利益の源にならない。
経営の資本配分は、本業の回復に賭けつつ、スポットワークに先行して投じている。回収の見込みはまだ見えず、この資金が株主の取り分を減らしている点を気にしている。
安全域で言えば、悲観の筋書きでも純現金 90 億円は残り、事業が半分に縮んでも底はある。ただし、今の 869 億円はその安全域を取るには高い。利益が 2024 年 2 月期並みに戻る中立の筋書きでも、10 年後の価値は今の値段に届かない。
筆者は、予測が難しい事業に高い確信は置けないと見る。確率の幅を広く取った。
見直し(AI エージェント代替):「悪くない中立でも 10 年後の価値は今の値段に届かない」という上の見方を、筆者はさらに厳しく改める。中立の 10 年後の時価総額は今の 5 割弱に下がる。純現金と配当の力は下支えになるが、掲載料の仲介が 10 年残る保証は薄い。
何で稼ぐ会社か
事業の中身は 2 つだ。ひとつは人材サービスで、売上の 88% を占める。バイトルでアルバイト、はたらこねっとでパート、看護のお仕事で看護職を募集する企業から、掲載料を受け取る。成果を問わず掲載の期間で課金する形が中心で、採用が決まらなくても料金は変わらない。
稼ぎを支えるのは営業力だ。2,000 人規模の採用コンサルタントが、飲食・小売・物流・医療など業種ごとに企業へ入り込み、原稿の書き方から応募の集め方まで提案する。この人海戦術が、求人広告を単なる掲示板にしない。2025 年 6 月には、営業をサービスごとから業界ごとに組み替えた(ソリューション体制)。
もうひとつは DX 事業で、売上は 66 億円と小さいが、営業利益率は 56% と高い。企業が営業や人事の仕事を自動化する AI・DX の商品を売る。バイトルの顧客基盤に乗せて売れるため、販売費が軽い。伸び率では人材サービスを上回ってきた。
新しい柱が、単発の仕事を紹介するスポットワークだ。「スポットバイトル」を立ち上げ、先行して広告費と人を投じている。ただし、この分野は先行するタイミーが規模で上を行き、まだ利益を生んでいない。
収益の構造は、広告のようなものだ。景気が悪くなると企業は求人を絞り、掲載料が減る。人件費と家賃の固定費は残る。だから売上が 3% 弱減っただけで営業利益が 3 割落ちる。2026 年 2 月期の決算がそれを示した。
優良さと弱いところ
事業の質は、強みと弱みがはっきり分かれる。強みは、アルバイト求人に絞った営業網とブランドだ。バイトルは国内のアルバイト求人サイトで知名度が高く、全国の営業が企業と長い付き合いを持つ。稼ぐ力は数字に出ている。2015 年から 2020 年は営業利益率が 25〜31% で、ROE は 30% を超えた。
弱みは、値段を自分で決められないことだ。求人広告は、無料で掲載できる検索型の Indeed や Google の求人検索に押されて、市場が小さくなっている。全国求人情報協会の統計では、2024 年度の市場は 6,661 億円と前年度の 7,267 億円から減った。この市場でバイトルの推定シェアは 7% ほどだ。
経営の質は、いま試されている。中期経営計画の営業利益 200 億円以上は、とうてい届かない。組織を組み替えて顧客獲得が鈍り、スポットワークの先行投資を重ねた。しかも、本業が弱った時期に固定費を増やした。資本配分の目で見れば、投資の回収はまだ見えない。
いい点は、財務の堅さと還元の姿勢だ。借金はなく、自己資本比率は 74%。利益を超えて株主へ戻してきた実績がある。筆者は、この経営陣が配当を厚くする方針を捨てない限り、安全域はあると見る。
総じて、堀は薄く、利益は景気と競合に左右される。長く持ち続けたい会社とまでは言えない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
求人広告の市場は、構造的に縮んでいる。理由は、求人が有料の掲載から、無料または成果課金の仕組みに移っているためだ。全国求人情報協会の調べでは、2024 年度の市場は前年度より 8% 減った。しかも、この統計には Indeed のような検索型の仕組みの売上が入っていない。入口が移っただけなので、実際の採用の数はこれほど減っていない。
人手不足は追い風だ。人口は減り、企業はアルバイトとパートを集めるのに苦労している。求人倍率が高ければ、企業は広告費を惜しまない。ただし、集められる人の数は増えないので、広告の数量は伸びにくい。値上げは通りやすいが、数量は横ばいから減る。
競合の姿は 3 つある。ひとつは、リクルートのタウンワークと Indeed だ。規模は桁違いで、求人検索の入口を握る。2 つ目は、Google の検索結果に出る求人の仕組みだ。3 つ目が、タイミー、メルカリ ハロのようなスポットワークだ。必要な時間だけ働く形で、短時間の穴を埋める求人を奪っていく。2025 年のスポットワーク市場は約 1,500 億円と推計され、成長は鈍化したものの、まだ増えている(ダイヤモンド・リサーチ推計)。
AI は、両刃の剣だ。ディップは AI エージェントで求人と求職者を結び、将来は成果課金に移す構想を持つ。成功すれば単価が上がる。だが、AI が求人と求職者を直接つなぐ世界では、掲載料を取る仲介そのものが要らなくなる。
中期でいちばん大事なのは、アルバイト求人という狭い領域で、Indeed とスポットワークの挟み撃ちをどこまで耐えられるかだ。
見直し(AI エージェント代替):上の議論で AI を「両刃の剣」と扱っていたが、筆者は AI エージェントによる求人と求職者の直接マッチングをより重く見る。10 年の中立でも、契約社数は今より 2 割余り減ると置いた。
資本政策と M&A
資本政策は、株主に厚い会社だ。利益の大半を配当と自社株買いで戻してきた。2025 年 2 月期は自己資本が減っており、利益を超える額を戻している。このため ROE は 20% 台の高さを保ってきた。
手元は純現金で、2026 年 2 月期に 90 億円。月商の 2 か月分にあたり、前受金や賞与、納税の資金繰りに要る分と見て、余った現金としては分けない。
筆頭株主は創業者の冨田英揮氏で、資産管理会社と合わせて 35〜37% 台を持つ(第三者の株主データ)。支配株主が安定しているので、敵対的な買収は起こりにくい。逆に、少数株主の意見は通りにくい。
M&A は大きくない。AI ベンチャーへの出資(AI.Accelerator)が中心で、事業の柱を買う動きは見えない。ただし、買収される側の目では、純現金と安定した顧客基盤は魅力だ。kabufu の推計では、10 年以内に TOB や買収が起きる確率は 16% だ。
今後の焦点は、本業が弱った時にも配当を守るかどうかだ。利益 29 億円の予想に対し、これまでの還元を続ければ純現金は減る。
10 年の還元は、これまでの水準(配当と自社株買いで利益の大半)より薄い、純利益の合計の 87%。余った現金は無い。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
人手不足は構造的で、企業はアルバイトを集めるのに高い広告費を払い続ける。バイトルは国内のアルバイト求人サイトで知名度が高く、2,000 人規模の営業が全国の企業に入り込んでいる。この営業網はタイミーにも Indeed にもまねしにくい。
利益が落ちた理由は、営業の組織替えと先行投資で、どちらも一時的だ。営業組織の混乱が収まれば、顧客獲得は戻る。スポットバイトルは先行投資の段階で、この支出が落ち着けば利益はすぐ戻る。2025 年 2 月期の営業利益は 134 億円で、そこに戻る力はある。
DX 事業は営業利益率 56% で、顧客基盤に乗せて売るため伸びが速い。AI エージェントで成果課金に移れば、掲載料の天井を超える単価が取れる。財務は純現金で、自己資本比率は 74%。配当と自社株買いで株主に戻す姿勢も変わらない。AI が採用の効率を上げれば、採用の現場を握るバイトルの位置はむしろ強まる。創業者が筆頭株主で、短期の数字に振り回されず、長い目で営業網に投資できる点も強みだ。看護や介護など、人手不足が特に深い領域では、求人広告の需要は景気が悪くても残る。
慎重な見方
中計の営業利益 200 億円以上は、まったく届かなかった。2027 年 2 月期の予想は 50 億円で、1 年で 4 割以上落ちる。組織替えの混乱は言い訳で、顧客が戻らなければ原因は別にある。
求人広告市場は 2024 年度に 8% 減った。Indeed と Google が入口を握り、求職者は無料の検索に流れる。バイトルに掲載料を払う理由は薄れる。単発の仕事はタイミーが規模で先行し、バイトルの穴を埋める市場を奪う。
固定費の重さも問題だ。人件費と家賃は売上が減っても残る。売上が 3% 弱減っただけで営業利益が 3 割落ちた。市場が縮めば、利益はほとんど残らない。
AI エージェントは掲載料の仲介を中抜きする。求人と求職者を AI エージェントが直接つなぐ世界で、バイトルの役目は小さくなる。DX 事業の社数も前年同期比 12.6% 減っている。AI エージェントを売り物にして出た売上の金額は、開示されていない。創業者が筆頭株主のため、経営を変える圧力も働きにくい。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方のほうが強い。理由は、事業の落ち込みが組織替えだけでは説明できないからだ。中計の未達は大きく、求人広告市場の縮小と入口の移動は、バイトルの外で起きている構造の変化だ。AI エージェントの売上が数字で出るまで、楽観にも数量 1.0 倍以上は置かない。
やや悲観と悲観を合わせて 37% を置いた。置き換えの影響は中立の数量と価格に入れたので、確率では重ねて引かない。純現金と配当の力、DX 事業の収益は確かな下支えになるが、今の値段は成長の回復を織り込みすぎている。期待は今の値段を大きく下回る。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/02 期)
確率で加重した株価時価総額 1,070 円560 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 650 円340 億円)。 今の値に割り戻すと 955 円499 億円、今との差 −33.9%、 期待の年率 +1.8%(資本コスト 7.8%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 2,623 円1,371 億円 | 1,086 円568 億円 | +156.7% | +9.9% | 223 円116 億円 |
| やや楽観 | 19% | 1,846 円965 億円 | 860 円449 億円 | +87.2% | +6.5% | 514 円269 億円 |
| 中立 | 38% | 1,165 円609 億円 | 671 円351 億円 | +27.1% | +2.4% | 698 円365 億円 |
| やや悲観 | 25% | 395 円207 億円 | 536 円280 億円 | −35.6% | −4.3% | 233 円122 億円 |
| 悲観 | 12% | 172 円90 億円 | 273 円143 億円 | −69.2% | −11.1% | 53 円28 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,070 円560 億円 | 650 円340 億円 | +19.1% | +1.8% | 1,720 円899 億円 |
今の株価時価総額 1,445 円755 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 6% 営業の混乱が収まり、掲載の単価が物価並みに上がる 利益 103 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 2,623 円1,371 億円
営業の組織替えの混乱は 2027 年のうちに収まり、顧客の獲得が戻る。契約社数は今の 1.49 万社の水準を守り、単価は物価並みの 1.34 倍まで上がる。DX 事業は社数を保ち、商品の追加で 1 社あたりの収入が 1.25 倍になる。売上は約 730 億円と今を 3 割余り上回り、営業利益は約 150 億円。2025 年 2 月期のピーク 134 億円を超えるが、物価で名目が 3 割上がることを考えれば無理のない水準である。AI エージェントの売上が数字で出る前の楽観として、これが上限になる。筆者は、この姿をかなりうまくいった場合と見ている。
- 人材サービス(バイトル・はたらこねっと等):数量 14.9(バイトル等の契約社数(千社))× 価格 34(1 社あたりの月額掲載単価(万円・名目))→ 売上 645 億円・営業利益 213 億円。数量 1.00 倍・価格 1.34 倍・営業利益率 33%
- DX 事業:数量 12.3(月額課金対象社数(千社))× 価格 5.50(1 社あたりの月額 ARPU(万円・名目))→ 売上 83 億円・営業利益 43 億円。数量 1.00 倍・価格 1.25 倍・営業利益率 52%
倍率:事業の純利益 103 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 19.2% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 13.5%、10 年より先の名目の伸び g 0.0% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍。全体の PER 12.9 倍、時価総額 1,324 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:AI エージェントを売り物にして出た売上・受注の金額開示が無く、楽観でも数量は 1.0 倍までと決めた。営業の組織替えの混乱が収まり、入口の移動も食い止められる筋書きなので 6% に絞った。
やや楽観 19% 契約社数は 1 割減り、単価の上昇で支える 利益 69 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 1,846 円965 億円
営業の組織替えの混乱は収まるが、Indeed と Google に求人の入口が移り、契約社数は今より 1 割ほど減って約 1.34 万社になる。単価は人手不足で 1.25 倍まで上がる。DX 事業は社数が 1 割弱減り、収入の追加で 1 社あたり 1.15 倍。売上は約 610 億円と今を 1 割ほど上回り、営業利益は約 100 億円。利益率は 17% に下がる。固定費の重さが残り、景気の後退を一度挟む年は利益が落ちる。スポットバイトルは小さく育つが、タイミーの規模には届かない。配当は守る。創業者が筆頭株主で、配当と自社株買いの姿勢は変わらない。スポットバイトルへの先行投資は絞られ、本社費も抑えられる。
- 人材サービス(バイトル・はたらこねっと等):数量 13.4(バイトル等の契約社数(千社))× 価格 32(1 社あたりの月額掲載単価(万円・名目))→ 売上 542 億円・営業利益 163 億円。数量 0.90 倍・価格 1.25 倍・営業利益率 30%
- DX 事業:数量 11.3(月額課金対象社数(千社))× 価格 5.06(1 社あたりの月額 ARPU(万円・名目))→ 売上 70 億円・営業利益 34 億円。数量 0.92 倍・価格 1.15 倍・営業利益率 48%
倍率:事業の純利益 69 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 15.7% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.7%、10 年より先の名目の伸び g 0.0% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍。全体の PER 12.9 倍、時価総額 888 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:営業の混乱は収まるが、Indeed や Google への入口の移動で契約社数が減る筋書きの中で良い側。景気の波を一度挟むとみて、19% を置いた。
中立 38% 契約社数が 2 割余り減り、単価の上昇で埋めきれない 利益 41 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 1,165 円609 億円
Indeed や Google、スポットワークに入口が移り、AI エージェントが求人と求職者を直接つなぐ。契約社数は今より 2 割余り減って約 1.16 万社になる。単価は無料の入口に抑えられ、物価を下回る 1.18 倍にとどまる。DX 事業も社数が 2 割減る。売上は約 500 億円と今の 9 割で、営業利益は約 60 億円、利益率は 12% に下がる。会社が 2027 年 2 月期に出した予想 50 億円と同じ水準が、10 年続く形である。固定費は残り、人員を絞って対応する。純利益は約 40 億円で、配当を守りつつ現金は少しずつ減る。過去 10 年の成長は、ここで止まる。
- 人材サービス(バイトル・はたらこねっと等):数量 11.6(バイトル等の契約社数(千社))× 価格 30(1 社あたりの月額掲載単価(万円・名目))→ 売上 443 億円・営業利益 115 億円。数量 0.78 倍・価格 1.18 倍・営業利益率 26%
- DX 事業:数量 9.8(月額課金対象社数(千社))× 価格 4.62(1 社あたりの月額 ARPU(万円・名目))→ 売上 56 億円・営業利益 24 億円。数量 0.80 倍・価格 1.05 倍・営業利益率 44%
倍率:事業の純利益 41 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.5% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.1%、10 年より先の名目の伸び g 0.0% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍。全体の PER 12.9 倍、時価総額 524 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:AI エージェントや無料の入口が求人と求職者を直接つなぐ流れの中心の筋書き。数量 0.78 倍、価格 1.18 倍と決まりの範囲に置いた。数量と価格に入れた分を、確率と g で重ねて引いていない。
やや悲観 25% 入口を奪われ、掲載料が下がって利益が 3 分の 1 になる 利益 21 億円 · PER 7.2 倍 · 株価時価総額 395 円207 億円
Indeed と Google が入口を握り、スポットワークが短時間の求人を奪う。契約社数は今の 6 割ほど、約 0.92 万社に減る。掲載料を下げて顧客をつなぎとめるため、単価は 1.08 倍にとどまる。DX 事業も社数が 4 割減る。売上は約 360 億円と今の 3 分の 2 に縮み、営業利益は約 30 億円になる。営業の人員と拠点を減らして固定費を抑えるが、売上の減りに追いつかない。純現金は残るので財務は揺らがないが、返せる額は今の半分以下になる。創業者の筆頭株主の方針で、配当は守られる。
- 人材サービス(バイトル・はたらこねっと等):数量 9.2(バイトル等の契約社数(千社))× 価格 28(1 社あたりの月額掲載単価(万円・名目))→ 売上 323 億円・営業利益 71 億円。数量 0.62 倍・価格 1.08 倍・営業利益率 22%
- DX 事業:数量 7.6(月額課金対象社数(千社))× 価格 4.18(1 社あたりの月額 ARPU(万円・名目))→ 売上 39 億円・営業利益 14 億円。数量 0.62 倍・価格 0.95 倍・営業利益率 36%
倍率:ROE 4.2% が k 7.75% 以下。ためた利益は額面未満の価値で、PER は 1÷k = 11.1 倍を上限に ROE÷k の割合で下げて 7.22 倍。g は名目 0.0%。人月・席の型で寿命は短く、g は名目 0%(横ばい)まで。堀は普通。
確率:AI エージェントや無料の入口が求人の直接マッチングを広げ、掲載料にも値下げの圧力がかかる筋書き。求人広告は景気にも弱く、25% を置いた。
悲観 12% AI エージェントが仲介を置き換え、稼ぐ力が崩れる 利益 −3 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 172 円90 億円
AI エージェントが求人と求職者を直接つなぎ、掲載料を払う理由が薄れる。契約社数は今の 45% ほど、約 0.67 万社に減る。単価は値下げを受け入れて 0.95 倍。DX 事業も社数が半分以下になる。売上は約 230 億円と今の 4 割余りに縮み、営業利益は赤字に近づく。営業の人員を大きく減らし、拠点も整理するが、固定費は残る。もはや優良会社ではなく、純現金と少しの事業が残るだけの会社である。株主には、手元の現金から返す形になる。会社は営業の拠点を閉じ、人員を大きく減らして固定費を縮める。10 年後の会社は、限られた業種の求人だけを扱う小さな会社になっている。配当は大きく減らす。
- 人材サービス(バイトル・はたらこねっと等):数量 6.7(バイトル等の契約社数(千社))× 価格 24(1 社あたりの月額掲載単価(万円・名目))→ 売上 206 億円・営業利益 21 億円。数量 0.45 倍・価格 0.95 倍・営業利益率 10%
- DX 事業:数量 5.5(月額課金対象社数(千社))× 価格 3.74(1 社あたりの月額 ARPU(万円・名目))→ 売上 25 億円・営業利益 6 億円。数量 0.45 倍・価格 0.85 倍・営業利益率 22%
倍率:稼ぐ力が崩れた姿。事業の稼ぎは床に使わず、純現金(約 90 億円)を今の自己資本 368 億円に対する PBR で表す。
確率:AI エージェントが求人と求職者を直接つなぎ、掲載料を取る仲介そのものが要らなくなる筋書き。売上が 10 年で半分以下になる形で、12% を置いた。やや悲観と合わせて 37%。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
人材サービス(バイトル・はたらこねっと等)
アルバイト・パート・看護職などの求人広告。企業から掲載料を受け取る。
| 数量バイトル等の契約社数(千社) | 価格1 社あたりの月額掲載単価(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 14.9 | 26 | 482 | 152 |
| 10 年後 中立 | 11.6 | 30 | 443 | 115 |
取り方:数量は実物の契約社数。2026/02 期第 3 四半期の契約社数は 14,853 社(前年同期比 7.5% 減)、1 契約あたり単価は月 25.7 万円(同 2.4% 増)。契約社数 × 単価 × 12 か月で約 458 億円になり、人材サービス売上 482 億円との差の約 5%(24 億円)は求人広告以外の収入(スポットバイトルなど)として rev_factor 1.2627(=12 か月 × 0.1 億円換算 × 1.05)に含める。価格は名目の月額単価で、物価の分は価格の側に入れる。セグメント利益 152 億円は本社費を引く前。 AI エージェント代替の型:売上の約 88%。バイトル等の求人掲載は、契約社数に月ごとの掲載単価を掛ける型で、席課金に近い。AI エージェントが求人と求職者を直接つなげば、掲載料を取る理由が薄れる。AI エージェントを売り物にして出た売上の金額開示は確認できない。数量は 10 年中立で 0.78 倍(席型の決まり 0.70〜0.90 の中ほど。契約社数は足元で前年同期比 7.5% 減)、価格は Indeed や Google の無料の入口に抑えられるので、物価並みの 1.34 倍でなく 1.18 倍とした。
DX 事業
企業向けの AI・DX の商品。バイトルの顧客基盤に乗せて売る。
| 数量月額課金対象社数(千社) | 価格1 社あたりの月額 ARPU(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 12.3 | 4.40 | 66 | 37 |
| 10 年後 中立 | 9.8 | 4.62 | 56 | 24 |
取り方:数量は実物の社数。2026/02 期第 3 四半期の月額課金対象社数は 12,256 社(前年同期比 12.6% 減)、1 社あたり ARPU は月 4.4 万円(集客コボット for MEO など)。社数 × ARPU × 12 か月で約 65 億円になり、売上 66.1 億円との差(約 2%)は初期費用などとして rev_factor 1.2257 に含める。セグメント利益 37.1 億円(有価証券報告書)。全体の営業利益 91 億円は、セグメント利益の合計 189 億円から本社費など約 98 億円を引いたもの。 AI エージェント代替の型:売上の約 12%。企業の営業や人事を自動化する AI・DX の商品は、月額課金の席課金型 SaaS。社数は足元で前年同期比 12.6% 減と減っており、AI エージェントが同じ仕事を肩代わりする競合も多い。AI エージェントを売り物にして出た売上の金額開示は確認できない。数量は中立 0.80 倍、価格は決まりの 1.00〜1.15 の範囲で 1.05 倍とした。
リスクと懸念
AI エージェントによる求人の直接マッチング(AI エージェント代替)
売上の約 88% は、契約社数に月ごとの掲載単価を掛ける型だ。AI エージェントや無料の検索が求人と求職者を直接つなげば、掲載料を取る理由が薄れ、契約社数と単価が同時に下がる。10 年の中立で契約社数は 2 割余り減り、悲観では売上が 4 割余りに縮む。DX 事業も席課金型で、社数の減りが続く。
求人の入口が Indeed と Google に移る
無料や成果課金の検索型の入口が広がれば、掲載料を払う求人広告そのものが縮む。全国求人情報協会の市場は 2024 年度に 8% 減った。バイトルの営業網が強くても、入口の流れは営業では止められない。
スポットワークにアルバイトの需要を奪われる
タイミーなどの単発の仕事の仲介が、短時間の穴埋めの求人を取っていく。2025 年の市場は約 1,500 億円で成長は鈍ったが増えている。ディップの「スポットバイトル」は後発で、先行投資を回収できるかが見えない。
固定費の重さで利益が大きく振れる
人件費と家賃は売上が減っても残る。2026 年 2 月期は売上が 3% 弱減っただけで営業利益が 3 割減った。2027 年 2 月期の予想はさらに 4 割以上の減益で、市場が縮めば利益の余裕は小さい。
営業の組織替えと中計未達の経営リスク
営業をサービス別から業界別に変えた混乱で、新規の顧客獲得が鈍った。中計の 2027 年 2 月期の営業利益 200〜250 億円は、予想 50 億円で大きく未達になる。経営の読みの甘さが再び出れば、資本配分への信頼も落ちる。
支配株主と少数株主の距離
創業者の冨田英揮氏が資産管理会社と合わせて 35〜37% 台を持つ(第三者の株主データ)。経営の規律を外から求める力は弱い。逆に、買収の提案は支配株主の意向しだいになる。
今後の分かれ目
- AI エージェントを売り物にした売上・受注の金額が決算で開示される
- 開示が契約社数の減りを補う規模なら、楽観側の数量を引き上げる。開示が無い間は、数量 1.0 倍を超える筋書きは置かない。
- 2027 年 2 月期の下期に営業利益の四半期の水準が戻る
- 組織替えの混乱が一時的だったと確かめられ、中立から やや楽観の筋書きの確率が上がる。
- 求人広告市場の統計が 2025 年度も前年度比で 5% 超減る
- 入口の移動が構造と確かめられ、やや悲観と悲観の筋書きの重みが増す。
- スポットバイトルの掲載数と収益が公表され、黒字化の道が見える
- 先行投資の回収が確かになり、本社費の増加が止まるので、中立の利益率が上振れする。
- 配当や自社株買いが大きく減らされる
- 本業が想定より弱いか、スポットワークの投資が膨らんでいる合図で、中立の還元の置き方が高すぎる。
- 創業者の側から TOB や非公開化の提案が出る
- 価格しだいだが、純現金と顧客基盤を評価して買われる局面になり、悲観の筋書きは消える。
見ておくもの
- 求人広告市場の年度統計(全国求人情報協会)
- 四半期ごとの営業利益と掲載単価
- スポットバイトルの掲載数・収益の開示
- AI エージェントの成果課金の開始と 1 応募あたりの収益
- 配当と自社株買いの方針
- 本社費の増減
倍率と資本コストの決め方
倍率は式だけで置いた。契約社数に単価を掛ける席課金に近い型なので、長期の g(10 年より先の名目の伸び)は 0% とし、PER は 1÷k = 11.1 倍になる。k は景気への弱さ(+0.5%)、値決め(+0.25%)、AI エージェント代替の寿命(+0.75%)で 9.0%。AI エージェント代替の理由は、主に中立の数量と価格に入れ、k は決まりの枠の中、確率は 37%、g は 0% と、重ねすぎないようにした。やや悲観は ROE が k を下回るため式で PER が下がる。今の PER や同業・過去の倍率は使っていない。悲観は稼ぐ力でなく純現金の床で置いた。自己資本は「今の 368 億円+期間の純利益−還元」で積んだ。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.11→12.9 倍・やや楽観 PER 11.11→12.9 倍・中立 PER 9.67→12.9 倍)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。