結論
サイバーエージェントは、ネット広告の代理店、ゲーム、ABEMAの三本足で立つ会社だ。筆者の結論は、10年の本質価値は今の値段を大きく下回り、割高で安全域もないというものである。一番の理由は、利益の大半をゲームが稼いでいる点にある。次に、売上の半分を占めるネット広告代理が、AIエージェントに置き換えられて縮む点がある。
広告は売上が4,600億円ある一方で、営業利益は176億円にとどまる。運用・制作・買い付けは人の時間と手数料で売る仕事で、中立の10年では数量が今の0.78倍、手数料率は物価に追いつかない。ゲームは売上2,167億円で600億円を稼ぐが、ヒットの寿命は読みにくい。2021年に純利益が412億円まで跳ね、2023年に35億円まで落ちた過去が、その怖さを物語る。
いい材料もある。メディア&IPが開局10年のABEMAを中心に黒字化した。海外でウマ娘の英語版が当たり、収益源が分かれてきた。純現金は時価総額の2割ほどあり、下値を支える。
中立の10年後は、売上が今の1.20倍、時価総額は7,108億円になる。資本コストは7.5%で、ゲームの当たり外れも合わせると、本質価値は今の値段を50%ほど下回る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「利益の質をどう見るか」で評価が決まる。
オーナーとして持ちたいのは、10年後も稼いでいる事業だ。広告は仲介業で、運用・制作・買い付けをAIエージェントが肩代わりし、10年後は数量が縮み利益率も薄いままだろう。ゲームは当たれば見事な稼ぎ手だが、同じタイトルが10年稼ぎ続けるとは限らない。ABEMAは黒字になったが、番組投資の手を緩めれば視聴者が離れる。三つとも、堀が深いとは言えない。
そのうえで、評価できる点は二つある。一つは、純現金が時価総額の2割ある財務の頑丈さ。もう一つは、ゲームが海外に広がり、収益源が少しずつ分かれてきたことだ。逆に気になるのは、利益の山で見た時に今の株価に安全域が見えにくい点と、現金の還元が控えめな点である。
オーナー利益で見る。ゲームの600億円には、新作の開発費の回収が含まれる。ならして考えれば、利益の持続分は今の水準よりやや低い。今の純利益をそのまま長く続くものとは見ず、広告・ゲーム・メディアを別々に積み上げ、ヒットの外れる年も混ぜて評価した。
結論として、悲観に落ちた時でも純現金が下値を支えるため、大きな損失は避けやすい。一方、楽観の筋書きでも、堀の浅さから倍率は高くなりにくい。計算上も割高に出て、ゲームの利益が山にある分を割り引けば、割安とは言えない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎ方は三つに分かれる。
一つ目はインターネット広告だ。運用型広告(検索やSNSに出す広告を、成果を見ながら入れ替える手法)を中心に、企業の広告出稿を代行する。売上は最大の4,612億円だが、利益率は4%に届かない。Google、Meta、TikTok、LINEヤフーが広告枠を握り、代理店は手数料の薄い仲介役になりやすい。近年は大口顧客の離脱があり、AIを使った新サービスへの先行投資も利益を押し下げた。同業には電通グループ、博報堂DYホールディングス、セプテーニ、デジタルアーキテクトなどがいる。
二つ目はゲームで、子会社のCygamesなどが運営する。「ウマ娘 プリティーダービー」「Shadowverse: Worlds Beyond」「SDガンダム ジージェネ エターナル」など、運用型のスマホゲームが主力だ。売上2,167億円に対して営業利益は600億円と、利益率は3割に近い。アプリストアを通さない外部決済への移行が利益率を押し上げた、と会社は説明している。今期は海外が伸び、ウマ娘の英語版とカジュアルゲームの「Bus Traffic Fever!」が牽引した。
三つ目がメディア&IPで、ABEMA(動画配信とテレビ)に、アニメなど知的財産(IP)の事業を含む。売上は2,315億円。開局以来の赤字が続いたが、前期にようやく72億円の黒字となり、今期は3四半期累計で132億円まで伸びた。サッカーやアニメ、オリジナル番組への投資を続けながら稼ぐ段階に入ったことが、今期の特徴である。
このほか、投資育成事業(スタートアップなどへの出資)が小さな赤字を出している。2025年12月には、創業者から生え抜きへ社長が交代した。創業者は会長として当面残る。
優良さと弱いところ
堀は、事業ごとにまったく違う。
広告は堀が浅い。顧客はより安く成果の出る代理店に動きやすく、広告枠の大元はGoogleやMetaが握る。筆者は、広告の利益率がこの先も3〜5%台にとどまると見ている。ただし運用の人材とノウハウ、大手広告主との取引の積み上げは、簡単には崩れない。
ゲームは、IP(キャラクターや世界観)の力と開発力に堀がある。当たったタイトルは長く稼ぎ、海外にも出せる。一方で、新作のヒット率は読めない。ウマ娘の反動減でゲームが四半期赤字に沈んだこともある。ここ数年は複数タイトルに分散できてきたが、それでも1年先の利益を会社自身が読み切れず、今期予想を幅で出したほどだ。
ABEMAは、ネットでテレビに近い規模の視聴者を集めた点で価値が大きい。しかし黒字は始まったばかりで、番組制作費がかさむ事業であることは変わらない。
経営の面では、創業者が長く築いた「当たるまで挑戦する」文化が、ABEMAの10年の投資を支えた。資本の使い方は、現金を厚く持ち、配当は利益の25%前後と控えめだ。自社株買いを積極的に行ってきたとは言えない。筆者は、厚い現金が事業の挑戦を支える一方、株主に返す姿勢は物足りないと見る。
資本効率は、利益が山にある今は高い。ROEは前期で17.6%だが、2019年や2023年には2%台まで落ちた。平均で見れば、資本コストを少し上回る程度の会社だ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
ネット広告市場は伸びている。国内のネット広告費は2025年度に3.9兆円が見込まれ、2029年度には5.7兆円との予測もある(矢野経済研究所)。総広告費に占めるネット広告の割合は、2025年に初めて過半数を超えた。成長の中心はSNS広告と動画広告である。ただし、伸びる市場のどこまでを代理店が取れるかは別の話だ。広告主がGoogleやMetaに直接出稿する流れや、生成AIによる運用の自動化が、代理店の取り分を削る恐れがある。
ゲーム市場は、世界で見れば穏やかに伸びる成熟産業である。収益の中心は、アプリストア経由の課金から、各社のサイトで決済する形へ少しずつ移っている。手数料の負担が減るぶん、開発会社の利益率は上がる。日本の開発会社には、海外の大型ゲーム会社に対抗できる世界的IPが少ない。その中でCygamesは数少ない存在である。
動画配信とIPの市場は、ネット広告の成長と、アニメの海外人気という二つの追い風を受ける。ABEMAはテレビ局の広告費の一部を取り込める位置にある。ただしNetflixやAmazonなど海外勢が資金力で勝り、ABEMAは無料の広告つき配信とスポーツ・ニュース・リアリティ番組で独自の席を取る形だ。
景気との関係では、広告は景気に敏感で、不況時の出稿は大きく減る。ゲームは不況に強いとされるが、当たり外れの振れ幅が景気よりも大きい。三つの事業の山と谷が必ずしも重ならないのは、この会社にとって救いである。
資本政策と M&A
還元は控えめで、配当は利益の25%前後だ。今期の1株配当は前期から増える予想で、配当性向は約25%である。自社株買いの発表は、調べた範囲では見つからなかった。配当方針は自己資本に対する比率(DOE)5%以上を目安とする、と第三者サイトにある(一次資料は未確認)。
手元には純現金が1,300億円超あり、時価総額の2割にあたる。この現金は、新作ゲームの開発、ABEMAの番組投資、AI分野の新規事業に回る。筆者は、現金の使い道がヒットを狙う挑戦に偏っているため、現金の価値を全額は見ず、運転資金を除いた800億円だけを余りと見た。
M&Aは大型案件より、小さな出資や子会社の設立で事業を育てる色が濃い。投資育成事業はスタートアップへの出資が中心だが、今は赤字である。TOBの対象になる可能性は、kabufuの推計で10年以内に1割台半ばとされる。ただ、時価総額が7,000億円近く、創業者の持株も厚いため、実際に買収される場面は考えにくい。
2025年12月の社長交代は、創業者から生え抜きへの継承である。新社長は2006年入社で、ABEMAの経営やアニメ事業を率いた。会長に退く創業者が当面残り、二人体制で移行する。急な方針転換はないと見る。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
ゲームの収益力は、構造的に上がった。外部決済への移行で手数料が減り、利益率が3割近くまで改善した。ウマ娘の英語版が海外で当たり、海外売上は前年の3.5倍に伸びた。国内一本だった頃より、収益源は分散している。ハイパーカジュアルの「Bus Traffic Fever!」も世界で2,500万回ダウンロードされ、当たりを複数の型で作れる力を示した。
ABEMAは10年の投資を経て黒字になった。メディア&IPの営業利益は今期3四半期累計で132億円と、前年から9割近く増えている。サッカーやリアリティ番組で視聴者を集め、ネット広告の成長を受け止める器が整った。会社は今期の営業利益予想を770億円へ引き上げ、社長は「想定よりも良い感触」と述べている。
広告も底を打ちつつある。大口顧客の離脱の影響を取り戻し、AIを使った運用の自動化サービスへの投資が実り始めれば、利益率は上がる。ただしAIを自社の売り物にして出ている受注の金額は開示されていない。ネット広告市場は2029年度に5.7兆円へ伸びる見通しで、売上が伸びるだけで利益が積み上がる。
そのうえ、純現金が時価総額の2割ある。増配や自社株買いの余地は大きく、創業者から後継への継承も円滑だ。今の利益水準は、新しい基準になりうる。
慎重な見方
利益が山にある時に高く買ってはいけない。2021年に純利益は412億円まで伸びたが、2023年には35億円まで崩れた。ウマ娘が当たった後の反動で、ゲームが四半期赤字に沈んだ年もある。今期の営業利益770億円は、ヒットが重なった結果であり、続く保証はない。会社自身が当初、1年先を読めず予想を幅で出した。
広告は売上の半分を占めるのに、利益は2割強しか稼がない。Google、Meta、TikTokが広告枠を握り、広告主の直接出稿やAIによる運用の自動化が進めば、代理店の取り分は縮む。大口顧客の離脱がすでに起きた事実は重い。AIへの投資で利益が減っていることも、守りの色が濃い。
ABEMAは黒字になったが、番組制作費の重い事業だ。投資を減らせば視聴者を失い、増やせば利益が消える。黒字の持続は、まだ一巡しか確認されていない。
還元の姿勢も気になる。現金が厚くても、株主に返す量は利益の25%前後だ。現金の使い道は挑戦への投資で、それが外れれば現金はゲームの新作開発や番組制作に消える。厚い現金を、株主の持ち分として全額は数えられない。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方がやや勝つ。ゲームの利益が山にあることと、広告の利益率が薄いことは、数字で動かせない事実だからだ。一方、純現金の厚さ、海外収益の分散、ABEMAの黒字化も事実で、強気の見方を支える。10年は中立に33%、悲観側(やや悲観と悲観の合計)を43%まで厚く置いた。ネット広告代理のAIによる縮みは数量と価格に入れ、確率では重ねていない。楽観は、ヒットが続くだけでなくABEMAと広告が同時に伸びる必要があり、6〜7%にとどめた。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/09 期)
確率で加重した株価時価総額 2,017 円1.02 兆円(+ 配当配当と自社株買いの合計 218 円1,107 億円)。 今の値に割り戻すと 1,131 円5,734 億円、今との差 −13.9%、 期待の年率 +5.5%(資本コスト 7.5%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 4,506 円2.29 兆円 | 394 円1,998 億円 | +273.1% | +14.1% | 294 円1,491 億円 |
| やや楽観 | 18% | 3,502 円1.78 兆円 | 327 円1,657 億円 | +191.5% | +11.3% | 689 円3,495 億円 |
| 中立 | 33% | 2,407 円1.22 兆円 | 254 円1,287 億円 | +102.6% | +7.3% | 878 円4,452 億円 |
| やや悲観 | 27% | 1,089 円5,520 億円 | 171 円865 億円 | −4.1% | −0.4% | 340 円1,724 億円 |
| 悲観 | 16% | 177 円900 億円 | 37 円190 億円 | −83.6% | −16.6% | 34 円174 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,017 円1.02 兆円 | 218 円1,107 億円 | +70.2% | +5.5% | 2,235 円1.13 兆円 |
今の株価時価総額 1,314 円6,661 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 6% 世界的IPを育て、ABEMAが稼ぎ頭になる 利益 1,015 億円 · PER 20.3 倍 · 株価時価総額 4,506 円2.29 兆円
ゲームは世界で通用するIPを続けて作り、海外が稼ぎの柱になる。ABEMAは視聴者を増やして広告と月額で稼ぎ頭に育つ。ネット広告代理は運用をAIエージェントに任せる流れの中でも、大手広告主との取引の積み上げで役割を保つ。それでも代理店の数量は今を超えず、AIで伸びたと言える受注の金額が開示で出るまでは、これ以上は置かない。 内訳はインターネット広告=数量0.95倍・価格1.30倍・利益率5.0%、ゲーム=数量1.60倍・価格1.25倍・利益率28.0%、メディア&IP=数量1.35倍・価格1.34倍・利益率14.0%。この筋書きの確率は6%。結果は、売上が今の1.56倍の14,212億円、営業利益1,884億円、純利益1,015億円、自己資本6,463億円、10年の還元1,998億円、時価総額1.4兆円(PER20.26倍)。
- インターネット広告:数量 43.8(国内ネット広告市場(実質・兆円)× シェア(%))× 価格 1.30(値段の指数(物価・手数料率の変化。今を1とする))→ 売上 5,693 億円・営業利益 285 億円。数量0.95倍・価格1.30倍・営業利益率5.0%(ネット広告代理(人月・手数料型))
- ゲーム:数量 34.7(世界のゲーム市場(実質・兆円、推定)× シェア(%))× 価格 1.25(値段の指数(課金単価。今を1とする))→ 売上 4,331 億円・営業利益 1,213 億円。数量1.60倍・価格1.25倍・営業利益率28.0%(ゲーム(自社IP・一般の型。据え置き))
- メディア&IP:数量 31.3(国内の動画広告・配信・IP関連の市場(実質・兆円、推定)× シェア(%))× 価格 1.34(値段の指数(広告単価・月額料金。今を1とする))→ 売上 4,188 億円・営業利益 586 億円。数量1.35倍・価格1.34倍・営業利益率14.0%(自社媒体(ABEMA・IP)の広告枠と配信料)
倍率:事業の純利益 1,004 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 60.5% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 34.0%、10 年より先の名目の伸び g 3.0% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 20.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 20.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)600 億円。全体の PER 20.26 倍、時価総額 20,941 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:世界的IPを続けて作り、ABEMAが稼ぎ頭になり、広告代理も役割を保つ必要がある。AIを売り物にした受注の開示も無く、実現は難しいので6%。
やや楽観 18% ゲームの海外が定着し、三本足が安定する 利益 787 億円 · PER 20.0 倍 · 株価時価総額 3,502 円1.78 兆円
ゲームの海外収益が定着し、ABEMAの黒字も続く。ネット広告代理はAIの置き換えを緩やかに受けて数量が今の0.86倍にとどまり、手数料率は物価に追いつかないが利益率は4%台を保つ。三本足がそろって安定し、純現金が下値を支える。 内訳はインターネット広告=数量0.86倍・価格1.26倍・利益率4.5%、ゲーム=数量1.36倍・価格1.22倍・利益率26.0%、メディア&IP=数量1.30倍・価格1.34倍・利益率12.0%。この筋書きの確率は18%。結果は、売上が今の1.39倍の12,619億円、営業利益1,452億円、純利益787億円、自己資本5,666億円、10年の還元1,656億円、時価総額1.1兆円(PER20倍)。
- インターネット広告:数量 39.6(国内ネット広告市場(実質・兆円)× シェア(%))× 価格 1.26(値段の指数(物価・手数料率の変化。今を1とする))→ 売上 4,995 億円・営業利益 225 億円。数量0.86倍・価格1.26倍・営業利益率4.5%(ネット広告代理(人月・手数料型))
- ゲーム:数量 29.4(世界のゲーム市場(実質・兆円、推定)× シェア(%))× 価格 1.22(値段の指数(課金単価。今を1とする))→ 売上 3,591 億円・営業利益 934 億円。数量1.36倍・価格1.22倍・営業利益率26.0%(ゲーム(自社IP・一般の型。据え置き))
- メディア&IP:数量 30.1(国内の動画広告・配信・IP関連の市場(実質・兆円、推定)× シェア(%))× 価格 1.34(値段の指数(広告単価・月額料金。今を1とする))→ 売上 4,033 億円・営業利益 484 億円。数量1.30倍・価格1.34倍・営業利益率12.0%(自社媒体(ABEMA・IP)の広告枠と配信料)
倍率:事業の純利益 776 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 52.4% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 29.9%、10 年より先の名目の伸び g 3.0% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 20.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 20.0 倍 + 余った現金(戻り方込み)600 億円。全体の PER 20 倍、時価総額 16,124 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:ゲームの海外収益が定着し、ABEMAの黒字も続く筋。10年の持続は半分程度の確度で18%。
中立 33% ゲームは物価並み、広告代理は縮み、ABEMAが伸びる 利益 542 億円 · PER 19.8 倍 · 株価時価総額 2,407 円1.22 兆円
ゲームは今の置き方のまま、物価より低い単価で伸びる。ネット広告代理は、運用・制作・買い付けをAIエージェントが肩代わりして数量が今の0.78倍に縮み、手数料率も物価を下回る。ABEMAは視聴の実質の伸びが1.22倍と従来より控えめになり、AIの要約やショート動画に時間を奪われる分を引く。ヒットの当たり外れは均すと中立に収まる。 内訳はインターネット広告=数量0.78倍・価格1.20倍・利益率3.5%、ゲーム=数量1.14倍・価格1.20倍・利益率22.0%、メディア&IP=数量1.22倍・価格1.30倍・利益率10.0%。この筋書きの確率は33%。結果は、売上が今の1.20倍の10,941億円、営業利益988億円、純利益542億円、自己資本4,805億円、10年の還元1,287億円、時価総額10,879億円(PER19.76倍)。
- インターネット広告:数量 36.0(国内ネット広告市場(実質・兆円)× シェア(%))× 価格 1.20(値段の指数(物価・手数料率の変化。今を1とする))→ 売上 4,315 億円・営業利益 151 億円。数量0.78倍・価格1.20倍・営業利益率3.5%(ネット広告代理(人月・手数料型))
- ゲーム:数量 24.6(世界のゲーム市場(実質・兆円、推定)× シェア(%))× 価格 1.20(値段の指数(課金単価。今を1とする))→ 売上 2,954 億円・営業利益 650 億円。数量1.14倍・価格1.20倍・営業利益率22.0%(ゲーム(自社IP・一般の型。据え置き))
- メディア&IP:数量 28.2(国内の動画広告・配信・IP関連の市場(実質・兆円、推定)× シェア(%))× 価格 1.30(値段の指数(広告単価・月額料金。今を1とする))→ 売上 3,672 億円・営業利益 367 億円。数量1.22倍・価格1.30倍・営業利益率10.0%(自社媒体(ABEMA・IP)の広告枠と配信料)
倍率:10年より先の名目の伸びg3.0%(ゲーム・ABEMAなど利益の約8割は4%、AIエージェントの影響を受けるネット広告代理は0%。利益の割合で混ぜた)で、正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)。事業のROE13.2%、RONIC=k7.5%+残る割合0.50×(ROE−k)=11.0%、PER19.76倍。AIエージェント代替はgと別に数量・価格・k・確率へ入れ済みで、PERの上に割引は重ねない。余った現金800億円(戻り0.5)を足す。
確率:ゲームは物価並み、ネット広告代理はAIで縮み、ABEMAが伸びる中心の筋。ヒットの当たり外れは均すと中立に収まる。数量が既に縮むので33%と標準的に置いた。
やや悲観 27% 広告代理が縮み、ゲームは平凡に戻る 利益 260 億円 · PER 17.1 倍 · 株価時価総額 1,089 円5,520 億円
広告主がAIで運用を内製化し、プラットフォームとの直接取引も増えて、ネット広告代理の数量は今の0.65倍に縮む。ゲームのヒット率は平凡に戻り、ABEMAは視聴の伸びが鈍って投資負担が残る。堀の浅い事業が多く、利益は大きく細る。 内訳はインターネット広告=数量0.65倍・価格1.12倍・利益率2.5%、ゲーム=数量0.85倍・価格1.15倍・利益率17.0%、メディア&IP=数量1.08倍・価格1.22倍・利益率6.0%。この筋書きの確率は27%。結果は、売上が今の0.94倍の8,534億円、営業利益459億円、純利益260億円、自己資本3,818億円、10年の還元865億円、時価総額4,748億円(PER17.11倍)。
- インターネット広告:数量 30.0(国内ネット広告市場(実質・兆円)× シェア(%))× 価格 1.12(値段の指数(物価・手数料率の変化。今を1とする))→ 売上 3,356 億円・営業利益 84 億円。数量0.65倍・価格1.12倍・営業利益率2.5%(ネット広告代理(人月・手数料型))
- ゲーム:数量 18.5(世界のゲーム市場(実質・兆円、推定)× シェア(%))× 価格 1.15(値段の指数(課金単価。今を1とする))→ 売上 2,128 億円・営業利益 362 億円。数量0.85倍・価格1.15倍・営業利益率17.0%(ゲーム(自社IP・一般の型。据え置き))
- メディア&IP:数量 25.0(国内の動画広告・配信・IP関連の市場(実質・兆円、推定)× シェア(%))× 価格 1.22(値段の指数(広告単価・月額料金。今を1とする))→ 売上 3,050 億円・営業利益 183 億円。数量1.08倍・価格1.22倍・営業利益率6.0%(自社媒体(ABEMA・IP)の広告枠と配信料)
倍率:10年より先の名目の伸びg3.0%(ゲーム・ABEMAなど利益の約8割は4%、AIエージェントの影響を受けるネット広告代理は0%。利益の割合で混ぜた)で、正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)。事業のROE7.8%、RONIC=k7.5%+残る割合0.50×(ROE−k)=8.8%、PER17.11倍。AIエージェント代替はgと別に数量・価格・k・確率へ入れ済みで、PERの上に割引は重ねない。余った現金600億円(戻り0.5)を足す。
確率:広告代理の取り分が縮み、ゲームのヒット率が平凡に戻る筋。堀の浅い事業が多い。ネット広告代理の縮みは数量に入れ済みで、確率には重ねていない。
悲観 16% AIと海外勢に押され、構造的に稼ぎが細る 利益 −64 億円 · PBR 0.5 倍 · 株価時価総額 177 円900 億円
AIエージェントとプラットフォームの直接取引で、ネット広告代理は半分に縮み利益が消える。ゲームは新作が続かず、ABEMAも視聴が減って再び赤字になる。赤字で現金を食うが、純現金が床になるので会社は消えない。 内訳はインターネット広告=数量0.50倍・価格1.02倍・利益率1.0%、ゲーム=数量0.57倍・価格1.05倍・利益率8.0%、メディア&IP=数量0.92倍・価格1.12倍・利益率-2.0%。この筋書きの確率は16%。結果は、売上が今の0.66倍の6,023億円、営業利益-71億円、純利益-64億円、自己資本2,874億円、10年の還元190億円、時価総額900億円(PBR0.50倍)。
- インターネット広告:数量 23.1(国内ネット広告市場(実質・兆円)× シェア(%))× 価格 1.02(値段の指数(物価・手数料率の変化。今を1とする))→ 売上 2,351 億円・営業利益 24 億円。数量0.50倍・価格1.02倍・営業利益率1.0%(ネット広告代理(人月・手数料型))
- ゲーム:数量 12.3(世界のゲーム市場(実質・兆円、推定)× シェア(%))× 価格 1.05(値段の指数(課金単価。今を1とする))→ 売上 1,286 億円・営業利益 103 億円。数量0.57倍・価格1.05倍・営業利益率8.0%(ゲーム(自社IP・一般の型。据え置き))
- メディア&IP:数量 21.3(国内の動画広告・配信・IP関連の市場(実質・兆円、推定)× シェア(%))× 価格 1.12(値段の指数(広告単価・月額料金。今を1とする))→ 売上 2,385 億円・営業利益 −48 億円。数量0.92倍・価格1.12倍・営業利益率-2.0%(自社媒体(ABEMA・IP)の広告枠と配信料)
倍率:構造的に負け、営業利益が赤字になる筋書き。稼ぐ力はマイナスなので、残る純現金の床で置く(今の自己資本1,800億円にPBR0.5を掛け、約900億円)。ゲームやABEMAの売却益は見込まない。AIエージェント代替は数量・価格に入れ済み。
確率:AIとプラットフォームの直接取引で広告代理が細り、ゲームの新作が続かず、ABEMAも再び赤字になる筋。ゲームの当たり外れがある会社なので16%。やや悲観と合わせて43%。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
インターネット広告
運用型広告を中心に、企業のネット広告出稿を代行する。取扱高が大きく、手数料率は低い。
| 数量国内ネット広告市場(実質・兆円)× シェア(%) | 価格値段の指数(物価・手数料率の変化。今を1とする) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 46.1 | 1.00 | 4,612 | 176 |
| 10 年後 中立 | 36.0 | 1.20 | 4,315 | 151 |
取り方:国内のネット広告費(2025年度3.9兆円見込み、矢野経済研究所。2024年度3.58兆円)を今の値段のまま実質で置き、会社の広告売上4,612億円から逆算してシェア11.8%とした(広告費は広告主の支出、売上は代理店の計上額で定義が違うため推定)。価格は物価と手数料率の指数で、中立は物価並みに上がる(3年1.09倍・10年1.34倍)。 【AIエージェント代替の見直し】ネット広告代理は、運用型広告の運用、クリエイティブ制作、媒体の買い付けが仕事で、人の時間と手数料で売る型。AIエージェントが運用・制作・買い付けを肩代わりし、プラットフォーム側の自動化も進むので、数量は中立で今の0.78倍、手数料率は物価に乗せられず価格1.20倍。営業利益率は3.8%から3.5%へ。AIを自社の売り物にして出ている受注の金額は開示されていないので、楽観も数量は1.0倍以下。
ゲーム
Cygamesなどが運営するスマホゲーム。ウマ娘、シャドウバース、ジージェネ、ハイパーカジュアルなど。
| 数量世界のゲーム市場(実質・兆円、推定)× シェア(%) | 価格値段の指数(課金単価。今を1とする) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 21.7 | 1.00 | 2,167 | 600 |
| 10 年後 中立 | 24.6 | 1.20 | 2,954 | 650 |
取り方:世界のモバイル・コンソール向けゲーム市場を今の値段で約17兆円と推定し、ゲーム売上2,167億円からシェア1.28%を逆算した(市場は公開統計の概数による推定)。課金の価格は物価に連れて上がりにくく、中立で3年1.05倍・10年1.20倍と物価より低く置いた(無課金層の多さと競争のため)。 【AIエージェント代替の見直し】ゲームは自社のIPと課金で売る製品の型で、人月でも席でもない。AIエージェントの影響は個別に見ず、今の置き方を据え置いた。
メディア&IP
ABEMA(動画配信・テレビ)とアニメなどのIP事業。広告と課金で稼ぎ、番組制作費が重い。
| 数量国内の動画広告・配信・IP関連の市場(実質・兆円、推定)× シェア(%) | 価格値段の指数(広告単価・月額料金。今を1とする) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 23.2 | 1.00 | 2,315 | 72 |
| 10 年後 中立 | 28.2 | 1.30 | 3,672 | 367 |
取り方:国内の動画広告・有料動画配信・アニメIP関連を合わせた市場を約3兆円と推定し(動画広告と配信の公開数字の合算)、売上2,315億円からシェア7.7%とした。推定の幅は大きい。価格は物価並みに上がる(3年1.09倍・10年1.34倍)。 数量は実質(今の値段の市場×シェア。市場 3 兆円→4.05 兆円は年約 3% の実質の伸びで、名目の市場の伸びではない)。 【AIエージェント代替の見直し】ABEMAは自社の視聴者が堀で、広告枠と月額料金を売る自社媒体の型。数量は視聴の実質の伸びで置く。AIの要約やショート動画に視聴時間を奪われる分を引き、中立は今の1.22倍(従来は1.49倍)、価格は物価まで(1.30倍)。利益率は従来の置き方のまま。
リスクと懸念
ゲームの利益が山にあり、ヒットの寿命が読めない
利益の大半を稼ぐゲームは、新作の当たり外れで年ごとの振れが大きい。ウマ娘の反動減でゲームが四半期赤字になった年もあり、会社自身が今期の予想を幅で出した。今の利益は過去より高い水準にあり、ヒットが外れれば全体の営業利益が半分近くに戻る恐れがある。
AIエージェント代替(ネット広告代理)
ネット広告代理は売上の半分を占めるのに営業利益率は4%に届かない。運用・制作・買い付けをAIエージェントが肩代わりし、Google、Meta、TikTokの自動化と広告主の直接出稿も進むので、代理店の数量と手数料は削られる。中立の広告代理の数量は今の0.78倍、悲観では半分に縮むと置いた。大口顧客の離脱は前期に実際に起きている。
ABEMAの黒字が定着するかどうか
ABEMAは開局以来10年かけて黒字になったが、四半期単位で黒字が出たのは最近のことだ。スポーツ中継や番組制作の費用は重く、視聴者を保つには投資を続ける必要がある。海外の配信会社との競争も強まるため、投資を絞れば視聴者が離れ、増やせば利益が消える。
外部決済と規制・プラットフォーム依存
ゲームの利益率の改善は、アプリストアを通さない外部決済への移行に支えられている。アプリストア側の規約や規制の変化で、この利点が大きく変わる可能性がある。会社が外部決済の比率を高めるほど利益率は上がるが、その比率は会社の努力だけでは決まらない。また、ゲームの配信自体がAppleとGoogleのストアに依存する構造は変わらない。
還元の少なさと現金の使い道
純現金は1,300億円超あるが、配当は利益の25%前後で、自社株買いも目立たない。現金が新作開発・番組投資・AI投資に回り、失敗すれば株主の持ち分が目減りする。経営の資本配分の姿勢が、投資家にとって見えにくい。
ゲームの海外展開と為替
今期はウマ娘の英語版を中心に海外売上が伸びたが、海外はヒットの寿命がさらに短く、現地の競合や規制の影響も受けやすい。為替は150円で置いたが、円高に振れれば海外売上の円換算は目減りする。海外で当たったゲームでも、運営の人員と宣伝費が先に出る。
今後の分かれ目
- ゲームの営業利益が今期の水準(年600億円台)を下回る四半期が続く
- ヒットの山が過ぎたと確認され、10年の楽観・やや楽観の確率が下がり、やや悲観・悲観に近づく。
- ABEMAを含むメディア&IPの営業利益が、通期で前期の水準(72億円)を上回って積み上がる
- 黒字の定着が確認され、中立と楽観の確率が上がる。倍率を決める利益の質が少し上がる。
- 広告事業の営業利益率が5%を超える
- AIの運用サービスが収益に変わった証拠となり、中立の広告の利益率(10年で5〜6%)が上振れの側に動く。
- 会社が配当性向の引き上げや自社株買いを明示する
- 厚い純現金が株主に返る道筋が見え、余った現金を全額数える根拠が強まり、評価はやや上がる。
- 広告主がGoogleやMetaへの直接出稿を加速し、代理店の手数料が下がる
- 広告事業の売上も利益も縮み、10年の悲観の確率が上がる。
- アプリストアの手数料や外部決済の規制が変わる
- ゲームの利益率が動き、10年の営業利益に直接効く。上にも下にも振れる。
見ておくもの
- ゲーム事業の四半期営業利益と海外売上、外部決済の比率
- メディア&IP(ABEMA)の営業利益と週間利用者数
- インターネット広告の営業利益率と大口顧客の動向
- 純現金と配当性向・自社株買いの有無
- 国内ネット広告市場の成長率(矢野経済研究所・電通の調査)
倍率と資本コストの決め方
事業を広告・ゲーム・メディア&IPの三つに分け、数量(実質)と価格の指数で積み上げた後に倍率を決めた。ネット広告代理は人月・手数料の型として数量・価格を縮め、ゲームは据え置き、ABEMAは自社媒体の型として視聴の実質の伸びで置いた。倍率は、10年より先の名目の伸びを利益の割合で混ぜたg3%(AIの影響を受ける広告代理が利益の約2割)の正当化PERで、普通の堀(残る割合1/2)から求めた。kの寿命は+0.5%、確率はやや悲観と悲観の合計43%で、AIエージェント代替をgと重ねて引いていない。悲観は稼ぐ力がマイナスなので、残る純現金の床(約900億円)で置いた。純現金は運転資金を引いた800億円を余りとして分け、戻り方0.5で足した。今のPERや同業の倍率は根拠にしていない。新リース会計は今と同じ形。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13.45→20.26 倍・やや楽観 PER 13.17→20 倍・中立 PER 12.65→19.76 倍・やや悲観 PER 11.43→17.11 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。