結論
バリューHRは、健康保険組合の事務を請け負う会社だ。組合員の健診の予約、結果の管理、福利厚生の運営、生活習慣病の指導までを、自社のシステムと人でまとめて引き受ける。顧客は公的な健保で、支払いは安定している。筆者の結論は、事業の筋は堅いが、人手で稼ぐ事務の型は AI エージェントに置き換わりやすく、今の値段はその危うさを織り込んでいない、というものだ。
2025 年 12 月期の売上は 100 億円で、前の期より 20% 増えた。顧客の増加に人を急いで増やし、営業利益は 21% 減の 8.8 億円に落ちた。会社は 2026 年に営業利益が 16 億円台へ戻ると予想し、上期は増益で進んでいる。
問題は 10 年先だ。稼ぎの中心は、予約の調整や結果の取り込みなど、人が画面を操作する事務だ。この種の仕事は、AI エージェントがまず肩代わりする。取り扱う業務は増えても、1 件あたりの単価は下がり、人も要らなくなる。
中立の筋書きでは、10 年後の営業利益は 19 億円台と、2026 年の計画と同じ水準にとどまる。確率で重みをつけた本質価値は、今の時価総額を大きく下回る。筆者は、成長性を買う値段が先に付いた株だと見る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で、この会社を長く持ちたいかと問われれば、答えは「慎重」だ。
事業の本質は、公的な健保の事務を人手で引き受ける請負にある。顧客は安定し、景気の波も小さい。この点は好ましい。設備投資も大きくない。
一方、10 年先に今より強いかは疑わしい。稼ぎの大半は人の手作業で、AI エージェントが最初に置き換える種類の仕事だ。業務量が増えても、単価は下がり、浮いた人手の利益は顧客との分け合いになる。堀、つまり他社がまねできない強みは、データの蓄積と契約の継続しかない。
株主のものになる利益は、配当で戻っている。ただ、利益を超える配当を続ければ、自己資本が痩せる。資本の配分は、成長のための人の採用と配当に偏っている。
安全域は無い。今の値段は、2027 年の計画を超える成長を前提にしている。悲観の筋書きでは、今の値段の 1 割以下になる。上の筋書きでも、今の値段に届かない。この会社は、悪い会社ではないが、払う値段としては高い。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は 2 つの事業だ。
1 つ目は「バリューカフェテリア事業」で、売上の約 8 割を占める。健保組合や企業の代わりに、健診の予約、結果の管理、保健事業、福利厚生のメニュー運営を一括で請け負う。自社開発の「バリューカフェテリア」システムが窓口だ。料金は、システム利用料と事務代行料、保健指導の委託料の組み合わせになる。特定保健指導は 2025 年に 28,900 件と、前の年より 4 割増えた。
2 つ目は「HR マネジメント事業」で、売上は 18 億円。健保組合の新設・分割・合併の支援と、組合向けの事務代行を手がける。
事業の形は人の仕事だ。連結の従業員は 970 名で、1 年で 191 名増えた。2025 年は想定を超える顧客増に追われ、派遣や業務委託に頼る費用が一時的に膨らんだ。そこで約 250 名を新たに採り、内製の体制を整えた。平均年収は約 400 万円で、人件費が費用の中心になる。
契約は 1 年ごとに自動更新される。解約率の開示は無い。提携先に、大同生命、東京海上日動、日本生命、リロクラブなどが並ぶ。保険会社の顧客に健保の事務を売る形が多い。
財産では、渋谷と弘前の土地を持つ。簿価で 64 億円ほどだ。賃貸ビルの賃料も年 2.2 億円入る。借入は 51 億円で、現金 48 億円とほぼ釣り合う。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできにくい強みは、あるが厚くはない。
強みは 2 つある。1 つ目は顧客の安定だ。健診と保健指導は法律で健保に課された事業で、需要は景気に左右されにくい。契約は 1 年ごとの自動更新で、一度入ると切り替えに手間がかかる。2 つ目は、保険会社などの提携先を経由して健保を紹介してもらえる点だ。
弱みは、稼ぎの源が人の手作業に近いことだ。システム利用料の部分は積み上がっても、売上の大半は人を使う事務代行と指導で出ている。人が増えなければ売上も増えない。ここは AI エージェントが最も置き換えやすい部分だ。
資本の効率は、悪くない。ROE は過去 10 年の中央値で 13%、営業利益率は 15〜19% の年が続いていた。ところが 2024 年から 2 年続けて利益率が下がり、2025 年は 8.8%。急な顧客増に人が追いつかず、質と費用の両方で無理が出た。
経営は、配当に前向きだ。配当性向 50% か DOE(株主資本配当率)10% の高い方を基準にする累進配当を掲げる。ただ、2025 年は配当が利益を上回った。経営者の顔ぶれは社長・副社長が同じ姓だが、続柄は確かめていないので触れない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
健保組合は全国に約 1,380 あり、加入者はおよそ 2,800 万人いる。特定健診と特定保健指導は、40〜74 歳の加入者に毎年実施する義務があり、市場は人口と制度でほぼ決まる。人口は減るが、高齢の加入者が増える分で相殺される。国は保健指導の成果を重くみる方向に制度を変えており、件数よりも質が問われる。
競合の全体像は、公開の資料からは確かめられなかった。事務を請け負う事業者、健診機関が運営する予約システム、福利厚生の大手などが混在している。健保が複数の事業者に分けて発注することも多い。
10 年の最大の変化は AI だ。予約の日程調整、健診結果の取り込み、問い合わせの対応は、AI エージェントが得意とする仕事だ。健保の側も、事業者に頼まず自分で AI を使えば、事務を安く回せる。事務代行の単価は、人件費の上昇ほどには上がらない。
逆に、人が顔を合わせて行う保健指導は、規制もあり、置き換えが遅い。ただ、オンライン面談の事業者が増え、単価の競争は強まる。
健保組合の数は減り続けている。合併や解散で大型化すると、内製化の力が増し、外注の交渉力も強まる。HR マネジメントは設立・再編の需要に頼るため、需要が一巡すれば縮む。
資本政策と M&A
還元は手厚い。2025 年から、配当性向 50% か DOE 10% の高い方を基準にする累進配当に変えた。2025 年の配当は利益を上回り、配当性向は 110% に達した。2026 年は性向 69% の予想だ。自社株買いは 2024 年に 11.5 億円行ったが、2025 年は無い。
配当は、純利益が落ちても自己資本に合わせて払う設計だ。利益が細る筋書きでは、この方針を守れるかが問われる。
投資の面では、2025 年に 8.1 億円を使い、健診結果管理と予約のシステム、弘前センターを整えた。借入は 51 億円で、現金とほぼ同額。自己資本比率は 38% だ。
持ち合いは、提携先のリログループなど 4 銘柄を持つ。関係強化が目的で、規模は 15 億円ほどだ。M&A では、大型の買収は無い。kabufu の試算では、10 年以内に TOB や買収が起きる確率は約 19% だ。大株主の構成は確かめられなかった。
株主優待は、100 株以上の保有で、健康管理サービスの年会費が無料になる。費用の開示は無く、規模は小さいとみて、還元には足していない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
回復は始まっており、堅い需要に乗る会社として再評価される。強気の見方はこうだ。
第 1 に、減益は一時的だ。2025 年の営業利益の落ち込みは、顧客の急増に人が追いつかず、外注費と採用費が重なったためだ。2026 年の予想は営業利益 16.5 億円で、上期はすでに 11% 増益で進んでいる。
第 2 に、需要は制度が決める。特定健診と保健指導は、健保に課された義務だ。保健指導は 1 年で 4 割増えており、成果を重くみる制度の変更で件数が伸びる。
第 3 に、顧客は健保という公的な存在で、支払いが安定している。契約は自動更新で、顧客を失いにくい。
第 4 に、AI は敵ではなく道具になる。予約や結果の取り込みを AI で自動化すれば、同じ人員で扱える業務が増え、利益率が上がる。20% 近かった過去の利益率が戻る。
最後に、還元が厚い。累進配当の方針があり、配当性向は 7 割近い。利益が戻れば、増配が続く。
慎重な見方
稼ぎの源が人の仕事であることが、最大の弱みだ。慎重な見方はこうだ。
まず、AI エージェントが事務を置き換える。予約の日程調整、結果の取り込み、問い合わせの対応は、人が画面を操作して行う典型的な仕事だ。5 年で人手の要る量が半分になっても不思議ではない。その時、健保が支払う単価は下がる。
次に、顧客が自前で AI を使える。事務を請け負う理由は、自分では人を持てないことだった。AI で事務が安くなれば、大きな健保から内製に戻る。組合の合併が進むほど、この動きは強まる。
第 3 に、利益の質だ。2024 年から 2 年続けて利益が落ちた。顧客が増えるほど人が要る構造のため、成長が利益に結びつきにくい。
第 4 に、配当だ。2025 年は利益を上回る配当を出した。自己資本に合わせて払う方針は、利益が細ると重い。
最後に、値段だ。今の時価総額は、純利益の 40 倍に近い。会社の計画が実現しても、AI の影響を織り込めば、割高に見える。
どちらに重みを置いたか
強気の見方の中心は、需要の安定と回復の確かさにある。2026 年の計画は上期の実績に裏づけられており、中立の利益は計画と同じ水準に置いた。
ただ、慎重な見方の指摘は 10 年では決定的だ。人手で稼ぐ事務の型は、AI エージェントの影響を最も受ける。自社が AI で受注を出している開示も無い。やや悲観と悲観を合わせて 4 割とし、数量は楽観でも 1.0 倍を超えないようにした。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 505 円137 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 247 円67 億円)。 今の値に割り戻すと 410 円111 億円、今との差 −72.7%、 期待の年率 −6.7%(資本コスト 7.8%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 5% | 1,149 円311 億円 | 337 円91 億円 | −1.0% | −0.1% | 74 円20 億円 |
| やや楽観 | 15% | 854 円231 億円 | 303 円82 億円 | −22.9% | −2.6% | 174 円47 億円 |
| 中立 | 40% | 639 円173 億円 | 333 円90 億円 | −35.2% | −4.2% | 389 円105 億円 |
| やや悲観 | 25% | 171 円46 億円 | 155 円42 億円 | −78.2% | −14.1% | 82 円22 億円 |
| 悲観 | 15% | 140 円38 億円 | 85 円23 億円 | −85.0% | −17.3% | 34 円9 億円 |
| 加重平均 | 100% | 505 円137 億円 | 247 円67 億円 | −49.9% | −6.7% | 752 円203 億円 |
今の株価時価総額 1,501 円406 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 5% 楽観:AI を使いこなして 1 人あたりの稼ぎが上がり、保健指導も広がる 利益 24 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 1,149 円311 億円
AI の波を、人を減らす道具として使いこなす。健診予約や結果の取り込みなど事務の多くを AI エージェントが処理し、同じ人員で扱える業務が増える。単価は据え置かれ、1 人あたりの売上が 7 割近く上がる。特定保健指導は、保健事業の義務の強化と電話・オンライン面談の普及で件数が 1.8 倍になる。売上は 170 億円台、営業利益率は過去の山と同じ 20% に戻る。純利益は 23 億円台、ROE は 17% を超える。配当は累進の方針どおり増え続け、利益の 6 割ほどが株主に戻る。ただし、AI を自社の売り物にして受注が出ている開示は今のところ無く、数量は 1.0 倍を超えない。健保が事務を丸ごと任せる関係が続くことが前提だ。
- 健診予約・事務代行・システム(バリューカフェテリア事業):数量 615(担当人員(常勤換算・人・推定))× 価格 0.20(人員 1 人あたり売上の名目(億円/人)。物価の倍率に、AI 代替による単価の変化を重ねたもの)→ 売上 121 億円・営業利益 24 億円。人員 1.0 倍・1 人あたり売上 1.67 倍・営業利益率 20%
- 特定保健指導:数量 52,020(実施件数(件・開示 28,900 件))× 価格 0.00(1 件あたり委託料の名目(億円/件)。物価の倍率に競争による変化を重ねたもの)→ 売上 24 億円・営業利益 4 億円。件数 1.8 倍・営業利益率 16%
- HRマネジメント(健保設立支援・BPO):数量 215(担当人員(常勤換算・人・推定))× 価格 0.12(人員 1 人あたり売上の名目(億円/人)。物価の倍率を基準にする)→ 売上 27 億円・営業利益 6 億円。人員 1.0 倍・単価は物価の 110%
倍率:事業の純利益 24 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 18.6% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 13.2%、10 年より先の名目の伸び g 0.0% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍。全体の PER 12.9 倍、時価総額 303 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:AI を自社の売り物にして受注が出ている開示が無く、AI の影響を前向きに取り込む筋書きは起きにくい。5% にとどめた。
やや楽観 15% やや楽観:会社の回復計画が定着し、効率化の果実を一部残せる 利益 18 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 854 円231 億円
会社が掲げる回復が定着する。2026 年に営業利益が 16 億円台へ戻る計画は、先行投資と一時的な外注費が剥がれる分で実現する。その後は、AI による効率化の一部を値下げに回しつつ、一部を利益に残せる。業務量の伸びと人員の削減が相殺し、売上は 150 億円台、営業利益率は 17% 弱になる。保健指導は件数が 1.5 倍に増えるが、オンライン面談の競争で単価は物価に追いつかない。HR マネジメントは健保の設立・再編の需要が一巡し、緩やかに縮む。純利益は 17 億円台、ROE は 15% 台。配当は累進を保ち、還元は利益の 6 割台になる。
- 健診予約・事務代行・システム(バリューカフェテリア事業):数量 603(担当人員(常勤換算・人・推定))× 価格 0.18(人員 1 人あたり売上の名目(億円/人)。物価の倍率に、AI 代替による単価の変化を重ねたもの)→ 売上 110 億円・営業利益 19 億円。人員 0.98 倍・1 人あたり売上 1.54 倍・営業利益率 17%
- 特定保健指導:数量 43,350(実施件数(件・開示 28,900 件))× 価格 0.00(1 件あたり委託料の名目(億円/件)。物価の倍率に競争による変化を重ねたもの)→ 売上 19 億円・営業利益 3 億円。件数 1.5 倍・単価は物価の 95%
- HRマネジメント(健保設立支援・BPO):数量 194(担当人員(常勤換算・人・推定))× 価格 0.12(人員 1 人あたり売上の名目(億円/人)。物価の倍率を基準にする)→ 売上 23 億円・営業利益 5 億円。人員 0.9 倍・営業利益率 21%
倍率:事業の純利益 18 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 16.1% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.9%、10 年より先の名目の伸び g 0.0% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍。全体の PER 12.9 倍、時価総額 228 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社の回復計画が定着し、効率化の果実を一部残せる線。2026 年の計画が上期に増益で進んでおり、15% とした。
中立 40% 中立:業務量は伸びるが AI で人手が要らなくなり、売上は物価並みにしか増えない 利益 13 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 639 円173 億円
業務量は増えるのに、売上は物価並みにしか増えない。健保が事務を外に出す流れは続き、受託する業務量は 10 年で 1.8 倍ほどになる。一方で、AI エージェントが予約の調整・結果の取り込み・問い合わせの一次対応を肩代わりし、必要な人員は今の 95% で済む。1 件あたりの単価は名目で 2 割ほど下がり、顧客に生産性の向上を分け与える形になる。売上は 130 億円台、営業利益は 19 億円台、営業利益率は 14% 台。先行投資が一巡して、会社が示す回復が定着する姿だ。ROE は 15% ほど、配当は累進の方針どおり続く。HR マネジメントは人手の仕事で、縮む。
- 健診予約・事務代行・システム(バリューカフェテリア事業):数量 584(担当人員(常勤換算・人・推定))× 価格 0.17(人員 1 人あたり売上の名目(億円/人)。物価の倍率に、AI 代替による単価の変化を重ねたもの)→ 売上 102 億円・営業利益 14 億円。人員 0.95 倍・1 人あたり売上 1.47 倍・営業利益率 14%
- 特定保健指導:数量 36,125(実施件数(件・開示 28,900 件))× 価格 0.00(1 件あたり委託料の名目(億円/件)。物価の倍率に競争による変化を重ねたもの)→ 売上 15 億円・営業利益 2 億円。件数 1.25 倍・単価は物価の 90%・営業利益率 12%
- HRマネジメント(健保設立支援・BPO):数量 172(担当人員(常勤換算・人・推定))× 価格 0.11(人員 1 人あたり売上の名目(億円/人)。物価の倍率を基準にする)→ 売上 19 億円・営業利益 4 億円。人員 0.8 倍(AI 代替)・単価は物価並み・営業利益率 19%
倍率:事業の純利益 13 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 16.5% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 12.1%、10 年より先の名目の伸び g 0.0% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍。全体の PER 12.9 倍、時価総額 173 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:事務代行が AI で効率化する分を単価の引き下げで分け合う、最も起きやすい線。4 割。
やや悲観 25% やや悲観:事務代行の単価が AI と競争で崩れ、利益が今の水準に張り付く 利益 4 億円 · PER 8.8 倍 · 株価時価総額 171 円46 億円
事務代行の単価が崩れる。AI で仕事のやり方が変わると、健保は外注先を絞り、単価の引き下げを求める。健診機関が自前の予約システムを広げ、予約代行の出番も減る。受託の業務量は伸びず、人員は 3 割減り、単価は名目で 1 割下がる。売上は 90 億円弱で今と同じ水準、営業利益率は 7% 台に落ちる。保健指導は件数が横ばいで、単価は下がる。HR マネジメントは設立支援の需要が細り、売上は 15 億円ほど。純利益は 4 億円台、ROE は 5% 台で資本コストを下回る。配当は累進の方針を維持できず、利益の 5 割ほどに絞られる。事業は続くが、優良とは言えない。
- 健診予約・事務代行・システム(バリューカフェテリア事業):数量 431(担当人員(常勤換算・人・推定))× 価格 0.14(人員 1 人あたり売上の名目(億円/人)。物価の倍率に、AI 代替による単価の変化を重ねたもの)→ 売上 61 億円・営業利益 4 億円。人員 0.7 倍・1 人あたり売上 1.21 倍・営業利益率 7%
- 特定保健指導:数量 28,900(実施件数(件・開示 28,900 件))× 価格 0.00(1 件あたり委託料の名目(億円/件)。物価の倍率に競争による変化を重ねたもの)→ 売上 11 億円・営業利益 1 億円。件数 1.0 倍・単価は物価の 80%・営業利益率 5%
- HRマネジメント(健保設立支援・BPO):数量 129(担当人員(常勤換算・人・推定))× 価格 0.11(人員 1 人あたり売上の名目(億円/人)。物価の倍率を基準にする)→ 売上 15 億円・営業利益 2 億円。人員 0.6 倍・営業利益率 12%
倍率:事業の ROE 約 5.5% が k 7.75% 以下なので PER の上限は 1÷k の 11.76 倍。単価の下落で稼ぐ力が資本コストに届かない筋書き。上限の約 75% の 8.8 倍に置く。
確率:AI による値下げ圧力と、健診機関の自前システムが重なる線。人月で売る事務の型なので、2 割台半ばを置いた。
悲観 15% 悲観:健保の事務が AI と自前のシステムに移り、受託が半分に縮む 利益 1 億円 · PBR 0.6 倍 · 株価時価総額 140 円38 億円
健保の事務が自前のシステムと AI に移り、受託が半分に縮む。健保連の統合や合併で組合数が減り、残った大きな組合は内製化する。クラウドの健康管理システムを無料に近い形で配る競合も現れる。受託の人員は半分になり、単価も 2 割下がる。売上は 55 億円まで落ち、固定費が重くて営業利益はほぼゼロになる。保健指導も、オンライン専業の事業者に単価を叩かれて赤字に近い。もう優良な会社ではなく、自社ビルの土地と、細く残る事務代行が価値の中心になる。配当は大きく絞られ、利益の出ない中で自己資本が値の目安になる。
- 健診予約・事務代行・システム(バリューカフェテリア事業):数量 308(担当人員(常勤換算・人・推定))× 価格 0.13(人員 1 人あたり売上の名目(億円/人)。物価の倍率に、AI 代替による単価の変化を重ねたもの)→ 売上 39 億円・営業利益 1 億円。人員 0.5 倍・1 人あたり売上 1.07 倍・営業利益率 2%
- 特定保健指導:数量 23,120(実施件数(件・開示 28,900 件))× 価格 0.00(1 件あたり委託料の名目(億円/件)。物価の倍率に競争による変化を重ねたもの)→ 売上 8 億円・営業利益 0 億円。件数 0.8 倍・単価は物価の 70%・収支均衡
- HRマネジメント(健保設立支援・BPO):数量 86.0(担当人員(常勤換算・人・推定))× 価格 0.10(人員 1 人あたり売上の名目(億円/人)。物価の倍率を基準にする)→ 売上 9 億円・営業利益 0 億円。人員 0.4 倍・営業利益率 5%
倍率:純利益がほぼゼロで PER は使えず PBR で置く。床は今の自己資本ではなく、自社の土地(簿価 約 64 億円)と純現金ゼロの合計を元にした売れる資産で、事務代行の稼ぎは数えない。清算されない限り少数株主は土地の使い方を決められないため、約半分の額(今の自己資本の 0.551 倍)に置く。
確率:健保の再編・内製化と AI で受託が半分に縮む構造的な負け。事務代行の型は AI の影響が大きく、15% とやや厚めにした(やや悲観と合わせて 4 割)。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
健診予約・事務代行・システム(バリューカフェテリア事業)
健保組合・企業から健診の予約、結果の管理、福利厚生(カフェテリアプラン)の運営を受託する。システム利用料と事務代行の料金で稼ぐ。
| 数量担当人員(常勤換算・人・推定) | 価格人員 1 人あたり売上の名目(億円/人)。物価の倍率に、AI 代替による単価の変化を重ねたもの | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 615 | 0.12 | 73 | 5 |
| 10 年後 中立 | 584 | 0.17 | 102 | 14 |
取り方:バリューカフェテリア事業の売上 82.57 億円(開示)から特定保健指導の推定 10.1 億円を除いた 72.5 億円。人員は事業の従業員 720 名から保健師等の推定 105 名を除いた約 615 名(推定)。売上には派遣・業務委託の分も含むため、1 人あたり売上は見かけ高い。営業利益 4.5 億円は全社 8.83 億円からの配分(推定)。型は人月・工数で売る事務代行とシステム利用料の混合(AI エージェント代替の対象)。 数量は実質・率は物価込み(二重がけなし)。
特定保健指導
特定健診の結果から対象になった人に、保健師などが面談で生活指導をする。件数に応じた委託料が入る。
| 数量実施件数(件・開示 28,900 件) | 価格1 件あたり委託料の名目(億円/件)。物価の倍率に競争による変化を重ねたもの | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 28,900 | 0.00 | 10 | 1 |
| 10 年後 中立 | 36,125 | 0.00 | 15 | 2 |
取り方:実施件数 28,900 件は開示(前年比 +42.4%)。1 件あたり 3.5 万円(積極的支援・動機付け支援の平均の推定)で売上 10.1 億円。営業利益 0.9 億円は推定。保健師の面談という現場の仕事で、AI は支援に使えるが面談の置き換えは限定的(規制もある)。 数量は実質・率は物価込み(二重がけなし)。
HRマネジメント(健保設立支援・BPO)
健康保険組合の新設・分割・合併の支援コンサルティングと、組合向けの事務代行(BPO)。
| 数量担当人員(常勤換算・人・推定) | 価格人員 1 人あたり売上の名目(億円/人)。物価の倍率を基準にする | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 215 | 0.08 | 18 | 3 |
| 10 年後 中立 | 172 | 0.11 | 19 | 4 |
取り方:HR マネジメント事業の売上 18.11 億円(開示)、従業員 215 名(開示)。営業利益 3.4 億円は全社 8.83 億円からの配分で、セグメント営業利益が前年比 +26.3% の開示に合わせた推定。健保設立のコンサルと事務代行で、人月型(AI エージェント代替の対象)。 数量は実質・率は物価込み(二重がけなし)。
リスクと懸念
AI エージェントによる事務の代替
予約の調整、結果の取り込み、問い合わせの一次対応は、AI が最も得意とする仕事だ。売上の大半が人の事務で出ているため、必要な人手が減り、単価も下がる。自社が AI で受注を出している開示は無く、取り込む側ではなく置き換えられる側になる危険が大きい。
顧客の内製化と健保組合の再編
健保が自分で AI を使えば、事務を外に出す理由が薄れる。合併で大型化した組合ほど内製に戻りやすい。組合数は減り続けており、顧客の数そのものが縮む。HR マネジメントの設立・再編の需要は、一巡すれば消える。
人の採用と品質の問題
2025 年は顧客増に人が追いつかず、派遣・業務委託費が膨らみ、約 250 名を採用した。平均年収は約 400 万円と低く、賃上げ圧力が強い。人件費が物価以上に上がると、利益率が戻らない。教育の遅れが品質の問題になれば、顧客を失う。
配当方針の重さ
累進配当で、配当性向 50% か DOE 10% の高い方を基準にする。2025 年は利益を上回る配当を出した。利益が細る局面で方針を守れば自己資本が痩せ、守れなければ信認を失う。
制度の変更と保健指導の単価
保健指導は成果を重くみる制度に変わりつつある。オンライン面談の事業者が増え、単価の競争が強まる。国の制度や報酬の見直しで、委託料が下がる危険がある。
高い値段と大株主・関係者取引
時価総額は 2026 年の計画の純利益の 40 倍近い。計画が遅れれば、評価が一気に縮む。賃貸ビルの賃料の大半は、特定の医療法人 1 社から入る。借り手が偏る点は、賃料収入の安定性の面で注意が要る。
今後の分かれ目
- AI で事務を自動化して、人員を増やさずに受託を伸ばし、利益率が 15% を超えたら
- AI を取り込む側に回ったことになる。やや楽観以上の確率を上げてよい。
- 2026 年の営業利益 16.5 億円の計画が、下期も増益で達成されたら
- 一時的な費用の剥がれが確かめられる。中立の利益に近づく。
- 大きな健保が事務の内製化を発表したら
- 受託の縮みが始まる。やや悲観の確率を厚くする。
- 特定保健指導の委託単価が、制度で引き下げられたら
- 保健指導の利益が消える。中立の利益を下げる。
- 配当を利益に合わせて減らす方針に変えたら
- 還元が減る。短期では売りが出るが、自己資本の保全の面ではよい。
- 他社から買収の提案が出たら
- 健保の顧客基盤とシステムが評価される。提案は本質価値に近づく動きになりうる。
見ておくもの
- 売上総利益率・営業利益率(人件費と外注費の戻り)
- 特定保健指導の件数と単価
- 健保組合数と大型組合の内製化の動き
- 派遣・業務委託費の対売上比
- AI を使った自動化の実績と開示
倍率と資本コストの決め方
今の株価(時価総額約 420 億円)は見ずに、人月・事務代行の型として AI エージェント代替を数量・単価・k の寿命に入れた。数量は楽観でも 1.0 倍以下とし、中立の売上は 2025 年の約 1.35 倍にとどめた。倍率は g を名目 0% として正当化 PER を 1÷k とし、市場の PER は参考にしなかった。AI 代替を数量・単価・寿命・g・確率の 5 か所に重ねて引かないよう、数量と単価を主にして、k の寿命は +1.0%(下限寄り)、確率は 4 割に収めた。営業利益率は過去の山 20% 以下に置いた。会社は日本基準。賃借は事務所のみで、新リース会計基準の影響は小さい。土地は簿価で見て含み益は数えない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.5→12.9 倍・やや楽観 PER 12→12.9 倍・中立 PER 11.76→12.9 倍・悲観 PBR 0.5→0.551 倍)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。