結論
博報堂DYホールディングスは、電通と並ぶ国内2強の広告会社だ。稼ぎの柱は国内の広告・マーケティング支援で、海外は北米と中華圏の立て直しの途上にある。筆者の結論は割高で、いちばんの理由は、広告の企画・制作・運用という人の時間で売る仕事を、AIエージェントが置き換えていくことにある。
国内の稼ぐ力は本物だ。国内マーケティング事業の利益率は2割近く、純現金は時価総額の2割を超える。一方、海外は売上総利益が横ばいで、利益率も2.8%にとどまる。
中立の10年では、広告主が代理店に頼む業務の量が国内で0.76倍、海外で0.62倍に縮み、手数料率は物価に追いつかない。売上は今の0.88倍、純利益は約248億円で、時価総額は3,172億円になる。事業に要らない純現金500億円は足した。資本コストは7.5%(基本7.5%に+1.5%)。
やや悲観と悲観を合わせた確率は40%。確率で重ねて今に割り引くと、本質価値は今の値段を61%ほど下回る。AIを売り物にした受注の金額が開示で出るまでは、上振れを織り込まない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、まず「この会社が10年後も稼いでいるか」を問う。国内の広告主との関係は強く、2強の一角は残る。ただ、稼ぎ方は変わる。媒体の仲介から、データと企画と技術を売る仕事へ移れるかが分かれ目だ。
次に「利益は持ち主のものになるか」を問う。ここが弱い。自己資本利益率が資本コストを下回る年が続き、配当は利益の7割近くに達する。稼いだ分の多くが、のれん償却と構造改革で消えてきた。海外は、買った事業を磨けなかった典型である。
安全域は、事業の値打ちと純現金からなる。国内マーケティングの安定した利益に、物価並みの伸びを置き、広告主との関係が続く前提で見れば、今の時価総額の周りに値打ちがある。ただし、純現金のうち運転資金の分は余りではない。そのため、余りは500億円に絞って足した。
10年より先の伸びは0%とした。広告の企画・制作・運用は人の時間で売る仕事の典型で、AIエージェントが最初に置き換える領域に当たるからだ。
筆者の見立てでは、今の値段は安全域が無い。純現金が下値を支えるが、業務の量が縮む影響は国内の稼ぎにも及ぶ。本質価値は今の値段を61%ほど下回る。
何で稼ぐ会社か
博報堂DYホールディングスは、博報堂・大広・読売広告社などを軸に、国内のマーケティング支援、成長領域、海外の3つで稼ぐ持株会社である。
国内は、テレビ・新聞・雑誌などの媒体枠を広告主に売り、キャンペーンの企画と制作で手数料を得る。あわせて、DACやアイレップを統合したデジタル広告の運用、データ活用、コンサルティング、技術、コンテンツ、新規事業の育成に力を入れている。会社は国内の売上総利益を年4%程度、成長領域を年10%以上伸ばす目標を掲げ、直近の成長領域は年18%と目標を上回る。
海外は、北米のkyu(キュー)や中華圏、ASEANなどに広がる。ただ売上総利益は3年で伸びず、北米と中華圏は前年割れだった。ASEANだけが二桁で伸びている。
収益の見え方には注意がいる。会社の「収益」は媒体の仕入れ額を除いた差額に近く、2026年3月期は8,610億円だった。これに対し、売上総利益は4,000億円ほどで、会社予想の売上高(取扱高)は1兆6,750億円になる。ここでは利益率が出る売上総利益を土台に積み上げた。
財務は軽い。純現金が1,076億円あり、自己資本比率は36%だ。広告代理店は媒体社への支払いより先に広告主から入金を受ける形が多く、現金の多くは運転資金の側面を持つ。
株主では、公益財団法人の博報堂教育財団が2割近くを持つ最大株主である。親会社や支配株主はいない。
優良さと弱いところ
筆者は、この会社を「長く持ちたい事業」とまでは言えないと見る。優れた点と弱い点を分けて書く。
優れた点は、広告主との長い取引と、国内の2強という立ち位置だ。大手の広告主は、テレビ枠の確保、制作、効果測定を一社に任せたい。その窓口として、博報堂は代わりのききにくい場所にいる。国内マーケティング事業の利益率は2割近くあり、のれん償却前の営業利益は中計の途中で目標を上回って伸びている。
弱い点は三つある。一つ目は、売上総利益の伸びが年2%台で、目標の5%に届かないことだ。二つ目は、海外の利益率が3%に満たず、グループの資本効率を押し下げていること。三つ目は、生成AIが広告制作と運用の人手を減らし、広告主が代理店を通さず直接出稿する流れだ。人が稼ぐ事業では、人手が減れば売上も減る。
資本効率は低い。自己資本利益率は2026年3月期で4%台で、資本コストを下回る。主因は特別損失(国内外の構造改革費)とのれん償却である。経営の言葉どおり、27年3月期に10%近くへ戻るなら評価は変わる。
堀は弱いと置いた。国内の2強という立場は強いが、価格を決める力はプラットフォーム企業と広告主の側に移りつつある。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
日本の総広告費は2025年に8兆円を超え、4年連続で過去最高になった。ネット広告が初めて過半を占め、テレビや新聞などの従来型は縮む。代理店にとっては、伸びる分野ほど手数料が薄く、競争相手も多い。
国内の競争は、電通グループと博報堂DYの2強に、サイバーエージェントなどのネット系を加えた形だ。ネット広告の運用は、Google・Metaの2社が価格と配信の仕組みを握る。代理店はその上で、データ活用や企画で付加価値を出さなければならない。
業界の最大の問いは、生成AIが代理店の人件費中心の事業をどう変えるかだ。制作の費用が下がれば、広告主はその分の値下げを求める。内製化が進めば、仲介の手数料率そのものが下がる。一方で、AIを使いこなす提案力は、人手より価値を持つかもしれない。筆者は、10年でみれば値下げの力が上回る可能性をやや重く見る。
景気との関係も深い。広告は企業が最初に削る費用で、リーマン・ショックの時には国内の広告費が大きく落ちた。博報堂DYも、2010年3月期の営業利益率は0.7%まで下がっている。
海外では、オムニコムとIPGの統合で巨大な競合が生まれた。博報堂DYの海外は規模が小さく、北米は構造改革の途中にある。海外で戦うより、国内を軸に選択と集中を進める方が筋が通る。
資本政策と M&A
資本の使い方は、変わりつつあるが十分ではない。
配当は22年3月期から同じ水準で据え置きだ。26年3月期の配当性向は約7割に達し、利益が薄い年は払いすぎにも見える。27年3月期も同額の予定である。
自社株買いは、2025年5月に上限100億円の枠を決めた。会社はあわせて、政策保有株の売却と自社株の消却を進め、資本の適正化に向けた追加の策を、決まり次第開示するとしている。25年3月期にはメルカリ株の売却益も計上した。
M&Aは、これまで国内のデジタル系の企業を子会社化して成長領域を補ってきた。大型の買収は今の中計では前面に出ていない。海外は買う側でなく、立て直す側の局面にある。
筆者が見たいのは、純現金1,076億円の使い道だ。事業の運転資金を差し引いても余る分が数百億円あるなら、それは株主のものだ。自社株買いの進み具合は、2025年8月末で枠の1割に届かなかった。経営が本気で資本効率を上げるのか、見ておく価値がある。
最大株主は財団で、親会社はいない。買収される確率は低くないが、財団と持合いの株主が厚く、敵対的な買収は起きにくい。
10 年の還元は、配当性向7割の実績や資本の適正化の予告ではなく、方針として開示された範囲(配当の据え置きと小さな自社株買い)に近づけ、利益の6割に置いた。厚くするかどうかは、会社の追加策の開示を見て直す。
点検済み:走査上の超えは事業別の合算の基準違い。営業利益で比べると中立408億円は直近(447億円)・過去の山(716億円)より低く、山を超えていない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
強気の見方はこうだ。国内の広告市場は物価並みに伸び、博報堂は2強の一角として市場以上に稼ぐ。国内マーケティングの利益率は2割近くあり、成長領域は年18%で伸びている。海外は北米の構造改革が終わり、費用を絞った効果で、のれん償却前の利益が増え始めた。27年3月期にはのれん償却前の営業利益が600億円に届き、自己資本利益率が10%に戻る。
さらに、会社は資本の適正化を進めている。純現金は1,076億円あり、時価総額の2割にあたる。自社株買いと政策保有株の売却が続けば、1株当たりの利益は利益以上に伸びる。生成AIも、制作費を下げる一方で、AIを使った提案とデータ事業の需要を生む。博報堂が持つ生活者研究は、AI時代の武器になる。
この見方なら、10年後の純利益は今の3倍近くになり、倍率も上がる。
もう一つの論点は景気だ。広告費が回復する局面で、博報堂の国内デジタル領域は市場以上に伸びてきた。人件費の比率が下がれば、利益率はさらに上がる。10年後に今の2倍強の純利益を出しても、無理のない水準である。
慎重な見方
慎重な見方はこうだ。会社が掲げる目標は、いつも少し先へ延びてきた。のれん償却前の営業利益は目標を上回って伸びたが、売上総利益の伸びは目標の半分にとどまり、自己資本利益率は10%に届いていない。海外は10年近く立て直しの途中で、構造改革費用の特別損失が毎年のように出る。
生成AIは、広告制作の工程を安くする。広告主はその分を値下げとして求め、内製化も進む。ネット広告の運用は、Google・Metaの自動化で、代理店の取り分が薄い。人が稼ぐ事業は、人手の価値が下がれば売上も下がる。
純現金も、見かけほど余りではない。媒体社への支払いを待つお金が混じり、本当の余剰は半分に満たないかもしれない。配当を利益の7割払う会社が、自社株買いの枠を使い切れない姿は、資本の使い方に迷いがある証拠だ。
さらに、会社の「売上総利益4,300億円」という予想は、広告市況が順調に回復し続けることを前提にしている。景気が一度でも崩れれば、その前提は崩れる。純現金の安心感は、この前提の弱さを隠している。
どちらに重みを置いたか
筆者は慎重な見方がわずかに強いと見る。国内の稼ぐ力は強気の言うとおりだが、10 年後の手数料率という一番大きい変数が、AI では悪い方向に振れる力が強い。そのため確率は、やや悲観と悲観を合わせて40%、楽観とやや楽観を合わせて25%とした。AIによる業務の縮みは数量と価格にすでに入れてあり、確率でまで重ねてはいない。利益ではなく資産で見る下振れの筋書きでも、純現金が支えになる点は強気の言い分が正しい。それでも、資本コスト7.5%で今に割り戻すと、本質価値は今の値段を61%ほど下回る。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,015 円3,647 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 337 円1,210 億円)。 今の値に割り戻すと 727 円2,612 億円、今との差 −49.7%、 期待の年率 −0.7%(資本コスト 7.5%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 2,045 円7,347 億円 | 566 円2,035 億円 | +80.8% | +6.1% | 157 円563 億円 |
| やや楽観 | 19% | 1,659 円5,961 億円 | 464 円1,668 億円 | +47.0% | +3.9% | 403 円1,449 億円 |
| 中立 | 35% | 1,204 円4,327 億円 | 366 円1,313 億円 | +8.7% | +0.8% | 549 円1,974 億円 |
| やや悲観 | 26% | 479 円1,721 億円 | 243 円873 億円 | −50.0% | −6.7% | 188 円674 億円 |
| 悲観 | 14% | 223 円800 億円 | 167 円600 億円 | −73.0% | −12.3% | 55 円196 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,015 円3,647 億円 | 337 円1,210 億円 | −6.4% | −0.7% | 1,352 円4,857 億円 |
今の株価時価総額 1,444 円5,188 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 6% AIを道具にし、成長領域が柱に育つ 利益 486 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 2,045 円7,347 億円
博報堂はAIを道具にして制作の人手を減らし、広告主から頼まれる業務の量をほぼ保つ。成長領域のコンサルティング・技術・コンテンツが国内の稼ぎの中核に育ち、手数料率も物価の近くまで通す。海外は北米と東南アジアの再建が実り、小さな黒字を出す。のれん償却は大きく減り、自己資本利益率は一けた後半まで上がる。ただし数量は今を超えず、AIで伸びたと言える受注の金額が開示で出るまでは、これ以上の上振れは置かない。 内訳は国内=数量0.95倍・価格1.30倍・利益率18.5%、海外=数量0.80倍・価格1.25倍・利益率7.0%。この筋書きの確率は6%。結果は、売上が今の1.20倍の4,854億円、営業利益760億円、純利益486億円、自己資本5,126億円、10年の還元2,035億円、時価総額6,884億円(PER13.33倍)。
- 国内(マーケティング・成長領域):数量 321,076(日本の総広告費(実質・億円)× 博報堂DYの国内シェア(%))× 価格 1.30(値段の指数(今を1とする。物価と手数料率を合わせた動き))→ 売上 4,174 億円・営業利益 772 億円。数量0.95倍・価格1.30倍・営業利益率18.5%(広告の企画・制作・運用(人月型))
- 海外(北米・中華圏・ASEANなど):数量 363(世界の広告費(除く日本・実質・億ドル)× 博報堂DYの海外シェア(%))× 価格 1.25(値段の指数(今を1とする。ドル円150円で固定))→ 売上 680 億円・営業利益 48 億円。数量0.80倍・価格1.25倍・営業利益率7.0%(広告の制作・買い付け(人月型))
倍率:事業の純利益 479 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.6% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 8.9%、10 年より先の名目の伸び g 0.0% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)500 億円。全体の PER 13.33 倍、時価総額 6,884 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:AIを自社の売り物にして受注が出る開示がまだ無く、人の企画が中心の事業で業務の量を保つ筋は例外的。数量も1.0倍を超えないので6%。
やや楽観 19% 国内の優位が続き、海外は小さな黒字 利益 364 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 1,659 円5,961 億円
国内の2強の取引関係と成長領域の提案力が効き、置き換わりは緩やかに済む。広告主から頼まれる業務の量は今の0.86倍まで縮むが、価格は物価の近くまで通り、利益率は17%に保たれる。海外は北米の再建が終わり、小さな黒字を安定して出す。純現金が下値を支え、配当と自社株買いも続く。 内訳は国内=数量0.86倍・価格1.26倍・利益率17.0%、海外=数量0.70倍・価格1.18倍・利益率5.0%。この筋書きの確率は19%。結果は、売上が今の1.04倍の4,224億円、営業利益586億円、純利益364億円、自己資本4,885億円、10年の還元1,668億円、時価総額5,264億円(PER13.33倍)。
- 国内(マーケティング・成長領域):数量 290,659(日本の総広告費(実質・億円)× 博報堂DYの国内シェア(%))× 価格 1.26(値段の指数(今を1とする。物価と手数料率を合わせた動き))→ 売上 3,662 億円・営業利益 623 億円。数量0.86倍・価格1.26倍・営業利益率17.0%(広告の企画・制作・運用(人月型))
- 海外(北米・中華圏・ASEANなど):数量 317(世界の広告費(除く日本・実質・億ドル)× 博報堂DYの海外シェア(%))× 価格 1.18(値段の指数(今を1とする。ドル円150円で固定))→ 売上 562 億円・営業利益 28 億円。数量0.70倍・価格1.18倍・営業利益率5.0%(広告の制作・買い付け(人月型))
倍率:事業の純利益 357 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.8% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 8.3%、10 年より先の名目の伸び g 0.0% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)500 億円。全体の PER 13.33 倍、時価総額 5,264 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内の2強の取引関係が続き、置き換わりが緩やかに済む筋。過去の実績に近く2割弱。
中立 35% 国内は手数料の薄まりを価格で受け、海外は小さく残る 利益 248 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 1,204 円4,327 億円
広告の企画・制作・運用は、AIエージェントが人の時間を置き換えていく。国内で頼まれる業務の量は今の0.76倍、海外は0.62倍まで縮み、手数料率は物価に追いつかない。国内の2強の取引関係は残り、縮みは価格と利益率の低下で受け止める。海外はオムニコム統合後の巨大な競合に押されて小さく残る。のれん償却は減るが、構造改革費用は続く。純現金は事業に要らない500億円を足して見る。 内訳は国内=数量0.76倍・価格1.21倍・利益率15.0%、海外=数量0.62倍・価格1.12倍・利益率2.5%。この筋書きの確率は35%。結果は、売上が今の0.88倍の3,580億円、営業利益408億円、純利益248億円、自己資本4,655億円、10年の還元1,313億円、時価総額3,706億円(PER13.33倍)。
- 国内(マーケティング・成長領域):数量 256,861(日本の総広告費(実質・億円)× 博報堂DYの国内シェア(%))× 価格 1.21(値段の指数(今を1とする。物価と手数料率を合わせた動き))→ 売上 3,108 億円・営業利益 466 億円。数量0.76倍・価格1.21倍・営業利益率15.0%(広告の企画・制作・運用(人月型))
- 海外(北米・中華圏・ASEANなど):数量 281(世界の広告費(除く日本・実質・億ドル)× 博報堂DYの海外シェア(%))× 価格 1.12(値段の指数(今を1とする。ドル円150円で固定))→ 売上 472 億円・営業利益 12 億円。数量0.62倍・価格1.12倍・営業利益率2.5%(広告の制作・買い付け(人月型))
倍率:事業の純利益 240 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.8% が k 7.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)500 億円。全体の PER 13.33 倍、時価総額 3,706 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:業務の置き換えは進むが、国内の取引関係で縮みを価格と利益率の低下で受ける最も素直な道に最大の確率を置いた。数量がすでに縮むので35%と標準的に置いた。
やや悲観 26% 内製化とAIで国内の手数料が薄まり、利益が細る 利益 88 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 479 円1,721 億円
広告主が制作と運用を内製化し、配信側への直接出稿も増える。国内で頼まれる業務の量は今の6割強まで縮み、手数料率は物価の半分ほどしか上がらない。海外は規模の差が開いて半分に縮み、利益はゼロになる。構造改革の費用とのれん償却が残り、事業の利益は細る。自己資本利益率は資本コストを下回るので、資産で値打ちを見る。 内訳は国内=数量0.63倍・価格1.14倍・利益率11.5%、海外=数量0.50倍・価格1.06倍・利益率0.0%。この筋書きの確率は26%。結果は、売上が今の0.69倍の2,788億円、営業利益189億円、純利益88億円、自己資本4,296億円、10年の還元873億円、時価総額1,474億円(PER13.33倍)。
- 国内(マーケティング・成長領域):数量 212,924(日本の総広告費(実質・億円)× 博報堂DYの国内シェア(%))× 価格 1.14(値段の指数(今を1とする。物価と手数料率を合わせた動き))→ 売上 2,427 億円・営業利益 279 億円。数量0.63倍・価格1.14倍・営業利益率11.5%(広告の企画・制作・運用(人月型))
- 海外(北米・中華圏・ASEANなど):数量 227(世界の広告費(除く日本・実質・億ドル)× 博報堂DYの海外シェア(%))× 価格 1.06(値段の指数(今を1とする。ドル円150円で固定))→ 売上 361 億円・営業利益 0 億円。数量0.50倍・価格1.06倍・営業利益率0.0%(広告の制作・買い付け(人月型))
倍率:10年より先の名目の伸びg0.00%(人月型は0%・実質の縮みは10年の数量に入れ済み)で、利益を全部株主に分ける形の正当化PER=1÷(k−g)=1÷(9.00%−0.00%)=13.33倍(事業のROE2.1%)。AIエージェント代替はgと別に数量・価格・k・確率へ入れ済みで、PERの上に割引は重ねない。余った現金375億円(戻り1.0)を足す。
確率:広告主の内製化と配信側への直接出稿が進む筋。人手の比重が高く起きやすい。数量はすでに中立で縮めているので、確率は26%にとどめた。
悲観 14% AIエージェントが代理店業務を奪い、海外は撤退する 利益 −30 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 223 円800 億円
AIエージェントが企画・制作・運用の大部分を肩代わりし、広告主が代理店に頼む業務の量は国内で半分、海外で4割まで縮む。手数料率はほとんど上がらず、海外は撤退の途中で赤字になる。減損と構造改革の費用が重なり、純損失の年が出る。配当は大きく減らし、純現金と政策保有株の売却で払う。純現金と国内の取引は残るので会社は消えないが、事業の値打ちは大きく目減りする。 内訳は国内=数量0.50倍・価格1.05倍・利益率6.0%、海外=数量0.38倍・価格1.00倍・利益率-4.0%。この筋書きの確率は14%。結果は、売上が今の0.50倍の2,033億円、営業利益-34億円、純利益-30億円、自己資本3,979億円、10年の還元600億円、時価総額800億円(PBR0.21倍)。
- 国内(マーケティング・成長領域):数量 168,988(日本の総広告費(実質・億円)× 博報堂DYの国内シェア(%))× 価格 1.05(値段の指数(今を1とする。物価と手数料率を合わせた動き))→ 売上 1,774 億円・営業利益 107 億円。数量0.50倍・価格1.05倍・営業利益率6.0%(広告の企画・制作・運用(人月型))
- 海外(北米・中華圏・ASEANなど):数量 172(世界の広告費(除く日本・実質・億ドル)× 博報堂DYの海外シェア(%))× 価格 1.00(値段の指数(今を1とする。ドル円150円で固定))→ 売上 258 億円・営業利益 −10 億円。数量0.38倍・価格1.00倍・営業利益率-4.0%(広告の制作・買い付け(人月型))
倍率:純損失の年が出る構造的な負けの筋書き。稼ぐ力はマイナスなので、床は純現金で置く(今の自己資本3,891億円にPBR0.21を掛け、約800億円)。AIエージェント代替は数量・価格に入れ済み。
確率:AIエージェントによる中抜きと海外撤退が重なる筋。やや悲観と合わせて40%で、同じ理由を確率でまで重ねてはいない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
国内(マーケティング・成長領域)
博報堂・大広・読売広告社などによる、国内の広告・マーケティング支援と、コンサルティング・技術・コンテンツなどの成長領域。
| 数量日本の総広告費(実質・億円)× 博報堂DYの国内シェア(%) | 価格値段の指数(今を1とする。物価と手数料率を合わせた動き) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 337,975 | 1.00 | 3,380 | 558 |
| 10 年後 中立 | 256,861 | 1.21 | 3,108 | 466 |
取り方:売上総利益で測る(会社の売上総利益は約4,060億円、うち国内を約3,380億円と推定。国内と海外の絶対額は未確認)。日本の総広告費8兆623億円(2025年)に対し国内シェアを約4.2%と置いた。利益はのれん償却前の営業利益で、国内マーケティングの利益率18.2%と成長領域を合わせ16.5%と推定。 【AIエージェント代替の見直し】国内は売上総利益の大半が広告枠の取扱と、制作・運用・企画の対価で、人の時間で売る仕事。成長領域(コンサル・技術・コンテンツ)も人の企画が中心で、AIエージェントの置き換えを受ける。広告主が頼む業務の量は中立で今の0.76倍、価格は手数料率に物価を乗せられず1.21倍。AIを自社の売り物にして出ている受注の金額は開示されていないので、楽観も数量は1.0倍以下。営業利益率は16.5%から15%へ。
海外(北米・中華圏・ASEANなど)
北米のkyu、中華圏、ASEANなどでの広告・マーケティング支援。立て直しの途上にある。
| 数量世界の広告費(除く日本・実質・億ドル)× 博報堂DYの海外シェア(%) | 価格値段の指数(今を1とする。ドル円150円で固定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 453 | 1.00 | 680 | 19 |
| 10 年後 中立 | 281 | 1.12 | 472 | 12 |
取り方:売上総利益で測る(海外を約680億円と推定)。世界の広告費約1兆ドルから日本分を除いた約9,463億ドルに対し、シェアを約0.048%と置いた。ドル円150円で円に直す(rev_factorは150÷100)。利益はのれん償却前の営業利益率2.8%から約19億円。 【AIエージェント代替の見直し】海外は北米・中華圏・ASEANの代理店業で、規模で大手に劣り、人月型の中でも置き換えと値下げの圧力が強い。業務の量は中立で今の0.62倍、価格は1.12倍。利益率は2.8%から2.5%で、ほぼ出ない。
リスクと懸念
AIエージェント代替(広告の企画・制作・運用)
博報堂DYは人手の比重が高い。AIエージェントが企画・制作・運用を肩代わりすると、広告主から頼まれる業務の量と手数料率の両方が縮む。中立の売上は今の0.88倍、悲観では0.50倍まで縮むと置いた。AIを売り物にして受注が出ている金額の開示があるまでは、伸びを織り込まない。
海外事業の立て直しの遅れ
海外は売上総利益が3年で伸びず、北米と中華圏は前年割れだった。構造改革の特別損失が続けば、のれん償却と合わせて利益と自己資本を削る。オムニコムとIPGの統合で競合が大型化した影響も受ける。海外の売上総利益は、会社の目標が年5%程度なのに、直近は年0%前後だ。
景気後退による広告費の急減
広告は企業が最初に削る費用で、リーマン・ショックでは国内の広告費が大きく落ちた。営業利益率は2009年から2011年にかけて1%前後まで下がった。人件費が固定費の性格を持つため、売上の減少が利益に大きく出る。
Google・Metaなど配信側への価値の移転
ネット広告の価格と配信は海外のプラットフォーム企業が握る。国内のネット広告費は過半に達したが、代理店の取り分は薄い。国内で比率が上がるほど、代理店の手数料を守る難しさが増す。代理店が配信を自動化しても、手数料率は下がる方向に動く。
資本の使い方と純現金の見かけ
純現金は1,076億円だが、媒体社への支払いを待つ資金を含み、すべてが余りではない。賃借の固定費の約束も、有報で確認できていない。配当性向は7割近いのに、自社株買いの枠は進みが遅い。資本効率が改善しないまま続く恐れがある。
新リース会計基準による数字の形の変化
2028年3月期から、賃借中の事業所などが貸借対照表に載り、純負債や自己資本比率の見え方が変わる。価値は変わらないが、純現金の強さを見かけほどと書けなくなる。本分析は今と同じ形(家賃を費用に入れた形)でそろえた。
今後の分かれ目
- 27年3月期にのれん償却前の営業利益600億円と自己資本利益率10%が達成され、売上総利益の伸びも5%に近づく
- 国内の成長領域の伸びが本物と確かめられ、中立より上の筋書きに確率が移る。
- 自社株買いと政策保有株の売却が、純現金の余りの分(数百億円)まで加速する
- 資本効率が改善し、1株当たりの価値が利益以上に伸びる。上の筋書きの確率が上がる。
- 大手広告主が制作と運用の内製化を公表し、代理店手数料の引き下げを求める事例が増える
- 価格が物価に遅れる筋が現実になり、やや悲観と悲観の確率が上がる。
- 北米のkyuで再び大きな構造改革費用や減損が出る
- 海外の立て直しの見通しが後退し、のれん償却と合わせて利益が削られる。悲観寄りの見方が強まる。
- 国内の広告費が景気の後退で2桁の減少に転じる
- 2008年型の落ち込みが現実になり、10年の悲観の筋書きに近づく。純現金が下値を支える。
- 事業会社や海外の広告大手からの経営統合・買収の話が表に出る
- 財団が最大株主で敵対的な買収は起きにくいが、友好的な再編なら資本の使い方が一変する。
見ておくもの
- 国内マーケティング・成長領域・海外の売上総利益の伸びとのれん償却前の営業利益率
- 自社株買いの実施額と政策保有株の売却の進み具合
- 特別損失(構造改革費・のれんの減損)の大きさ
- 日本の総広告費の月次の動きとテレビ・ネット別の増減
- 大手広告主の内製化・手数料の見直しの報道
倍率と資本コストの決め方
今の株価やPERからは出発せず、広告主が代理店に頼む業務の量(実質)と価格指数(手数料率に物価を乗せない)で国内と海外の売上総利益を積んだ。倍率は10年より先の名目の伸びg=0%の式 1÷(k−g) で出し、同業の値付けは使っていない。AIエージェント代替は主に数量・価格に入れ、kは寿命の+1.0%(下限寄り)、確率はやや悲観と悲観の合計を40%にとどめ、gでは重ねて引いていない。純現金は500億円だけ足した。悲観は稼ぐ力がマイナスなので、純現金の約75%の800億円を床にした。今の株価との差を狙って置いたのではない。賃借料などの固定の約束は有報で未確認で、リース会計の形は今と同じ。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.11→13.33 倍・やや楽観 PER 11.11→13.33 倍・中立 PER 11.11→13.33 倍・やや悲観 PER 11.11→13.33 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。