結論
セコムは警備業界で売上・シェアともに首位(ALSOKとの2社で業界の約4割)を握り、特に家庭用セキュリティでは8割規模のシェアを持つ。ただし祖業のセキュリティサービス事業の売上構成比は2025年3月期で55%まで下がり、防災(15%)・BPO-ICT(11%)・メディカル(8%)・保険(5%)という新事業が全社の4割近くを占めるまでに成長した。中期計画と長期ビジョンは、警備・防災・メディカル・保険・BPOを束ねた「あんしんプラットフォーム」を広げる方向を示す。海外ではマレーシア・シンガポール・香港、2025年のシンガポールAVTEL社(データセンター警備)買収などで、海外売上比率を現状の2倍(10%目途)に引き上げる方針を掲げる。
2026年5月には創業以来最大となる上限1000億円の自社株買いと6期連続の増配を発表し、2028年度のROE10%目標に向けた資本効率改善を進めている。本モデルでは、セキュリティ事業(警備契約件数×委託料)、フロンティア事業、海外セキュリティ事業の3つで、件数(実質)×単価(物価3%が乗る名目)を積み上げ、純現金の受取利息の増加も純利益に入れ、自己資本は今の値に期間の純利益を足して還元を引いて流し、その時点のROEのうち資本コスト7.0%(基本の7.5%に優良度の調整−0.5%を足した値)を超える分は先で薄れる(警備の契約網と切り替えの難しさという強い堀を認めて残る割合は 2/3)とした。最後は利益で測り、今の利益はそのまま残り先で薄れるのは新しく投じるお金の稼ぎだけとする正当化PER(中立で10年後15.8倍)の9割(14.3倍)に置いた。
中立では10年後に営業利益約2,480億円・純利益約1,800億円、純現金が積み上がって自己資本は約2.2兆円になりROEは約8%、PERは約14.3倍で時価総額は約2.6兆円、今の時価総額(約2.6兆円)とほぼ同じになる。資本コスト7.0%で割り戻すと10年の価値は約1.7兆円で、今の時価総額を約35%下回り(期待の年率は+1.9%)、総合では割高と判断する。強気(確率7%)でも時価総額は約5.9兆円で、安い値段とはいえない。新事業・海外M&Aが計画どおり育つかどうかが、上下どちらに振れるかの分かれ目になる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、警備業界で首位(ALSOKとの2社で業界の約4割)という規模の堀と、家庭用セキュリティでシェア8割という価格決定力は高く評価できる。警備契約というストック型収入は予測可能性が高く、オーナー利益を見積もりやすい事業である。自己資本比率58.9%・ネットキャッシュという健全な財務から、新事業・海外M&Aへの投資を無理な借入に頼らず進められる体力があることも評価点である。
ただし、ROE8.6%という水準は警備・ストック型事業としては控えめで、再投資の多くがフロンティア事業・海外M&Aという、祖業の堀の広さには直接関係しない分野に向かっている点には注意が必要になる。これらの新事業がセキュリティ事業と同等の資本効率を生むかどうかは、まだ実証段階にある。2016年の経営陣解職劇に見られた同族の影響力の大きさも、資本配分の規律という観点では完全に払拭されたとは言い切れない。
安全域については、今のPER23倍・PBR2.0倍は、警備首位の質の高さをすでに織り込んでいる。本モデルの中立(PER 14倍、時価総額は今とほぼ同じ)でも、資本コスト7.0%で割り戻した価値は今を約35%下回り、安全域はない。悲観の水準も稼ぐ力(純利益÷k)から置いており、割高という判断になる。
何で稼ぐ会社か
事業はセキュリティ事業、フロンティア事業、海外セキュリティ事業の3つに大きく分かれる。セキュリティ事業は機械警備・システム警備・常駐警備など祖業の警備サービスで、法人・家庭向けに警備契約件数×年間委託料で稼ぐストック型のビジネスである。家庭用セキュリティでは業界シェア8割を握り、法人向けでもALSOKと並ぶ二強の一角を占める。
フロンティア事業は防災(火災報知・ビル管理等)、メディカル(在宅医療・調剤薬局・配送、セコム医療システムの画像診断支援「ホスピネット」・地域連携「リンクス」等、全国2,800拠点)、保険(セコム損害保険)、BPO-ICT(情報処理・システム構築受託)の4領域を束ねたもので、2025年3月期の売上構成比は防災15%・BPO-ICT11%・メディカル8%・保険5%の合計39%に達し、セキュリティ事業(55%)と並び立つ規模まで育っている。セコム損保は2024年度にコンバインドレシオを95.4%から91.0%へ改善させるなど、収益性も上向いている。
海外セキュリティ事業は2020〜2021年にマレーシア・シンガポール・香港の警備会社を買収したのに続き、2025年にデータセンター警備大手のシンガポールAVTEL社を完全子会社化、2023年には米国のクラウド型監視カメラ事業者Eagle Eye NetworksとBrivoへ出資するなど、M&Aを軸に海外売上比率を現状の2倍(10%目途)に引き上げる方針で拡大を進めている段階である。
優良さと弱いところ
堀の中心は、警備業界で首位(ALSOKとの2社で業界の約4割を占める寡占)という規模と、長年の実績で築いたブランド・信頼である。家庭用セキュリティのシェア8割は価格決定力の裏付けで、セキュリティサービス事業の利益率はALSOKの約2倍とされ、資本効率でも優位に立つ。警備契約はストック型の収入で解約率が低く、安定したキャッシュフローを生む。
資本効率はROE8.6%と、警備・ストック型事業としては控えめな水準にとどまっており、会社自身も2028年度までにROE10%への引き上げを目標に掲げている。2026年5月の創業以来最大の自社株買い(上限1000億円)と6期連続の増配はその取り組みの表れである。財務は純有利子負債がマイナス3,659億円(ネットキャッシュ、時価総額比14%弱)・自己資本比率58.9%と極めて健全で、新事業・M&Aを自己資本中心で進められる体力がある。
弱点は、2016年に当時の会長・社長を創業者・飯田亮最高顧問の一声で解職した「クーデター」的な経緯があり、同族の影響力の大きさがガバナンス上の論点として株主からも指摘された歴史を持つことである。その後、創業家の娘婿ではない吉田保幸氏が社長に就き脱・同族化は進んだが、新事業・海外M&Aの規模が大きくなるほど、資本配分の巧拙を測る材料がまだ蓄積段階にある点も弱点として残る。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
警備業は2024年末時点で市場規模約3兆4,478億円(10,811業者)、機械警備の契約件数は342万件(前年比+6.4%)で5年間で7.8%拡大しており、人手不足を背景にしたストック型需要の拡大が続いている。セコムとALSOKの2社で業界シェアの約4割を占める寡占構造は当面大きくは崩れないと見られる。
10年後は、警備・フロンティア事業は高齢化社会での需要拡大(見守り・医療連携の非連続な伸び)が追い風になる一方、国内人口減少による新規契約の頭打ちという逆風も強まる。楽観は「データセンター警備・防災投資・医療連携需要が非連続に伸び、海外M&Aで売上比率10%を実現する」、悲観は「人口減少で警備契約が頭打ちになり、新事業・海外M&Aが計画どおり育たず、セキュリティ事業への依存から抜け出せない」という構図になる。ALSOKは法人・金融機関向けに強みを持ち、現金輸送・金融セキュリティの分野で競争が続く。
中立の見方では、警備契約件数は人口減と省人化で伸びが緩み、委託料の物価並みの上昇と新事業・海外の拡大が利益を支える。需要は景気に左右されにくいが、国内の新規契約は頭打ちになりやすく、10 年の成長は会社の計画ほど非連続には伸びないと置いた。
資本政策と M&A
資本政策は、2026年5月に発表した創業以来最大となる上限1000億円(発行済み株式の5.69%)の自社株買いと6期連続の増配が軸で、2028年度のROE10%目標に向けた資本効率改善を進めている。2023年の株主提案(上限1800億円の自社株買い)は会社側が中長期の成長を損なうとして否決したが、その後自ら大型の買いに転換した経緯がある。
M&Aは、国内ではフロンティア事業(防災・メディカル・保険・BPO-ICT)の拡充、海外ではマレーシア・シンガポール・香港の警備会社買収や2025年のシンガポールAVTEL社(データセンター警備)の完全子会社化など、海外売上比率を現状の2倍(10%目途)に引き上げる方針のもとで積極的に進めている。時価総額の大きさとネットキャッシュの厚さから、買収される側(TOB対象)になる可能性は小さい。
2026 年 5 月決議の自社株買いのうち 8 月末までに実行した約 530 億円(株数減から推定)は株数と自己資本の起点に反映した。10 年の還元は配当中心で置いており、この実行済み分は還元に入れていない(未取得の残りは含めてよい範囲)。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
警備業界で首位(ALSOKとの2社で業界の約4割)という規模と、家庭用セキュリティでシェア8割という価格決定力は、人手不足が続くほど強みが増す構造である。警備契約件数は5年間で7.8%拡大しており、高齢化に伴う見守り・医療連携需要の拡大はこの流れをさらに加速させる。2026年5月の創業以来最大の自社株買い(上限1000億円)と6期連続の増配は、2028年度のROE10%目標に向けた本気度を示しており、資本効率の改善余地はまだ大きい。
フロンティア事業(防災・メディカル・保険・BPO-ICT)は売上構成比で合計39%まで育ち、セキュリティ事業と並ぶ規模に達した。セコム損保のコンバインドレシオ改善(95.4%→91.0%)のように、新事業の収益性も着実に上向いている。海外では2025年のシンガポールAVTEL社(データセンター警備)完全子会社化、米Eagle Eye Networks・Brivoへの出資のように、データセンター需要・クラウド型セキュリティという成長市場を取り込むM&Aを積極化しており、海外売上比率を現状の2倍(10%目途)に引き上げる計画が実現すれば、警備一本足から多角化した安定成長企業への転換が完成する。長期ビジョン「Vision 2040」が掲げる「予兆への安心」という方向性も、既存の警備網を活かした高付加価値サービスへの展開余地を示している。
慎重な見方
収益性の面では、ROE8.6%は警備というストック型・高シェア事業としては見劣りする水準で、会社自身も2028年度までの10%目標を掲げざるを得ない状況にある。フロンティア事業(防災・メディカル・保険・BPO-ICT)は売上構成比で4割近くまで拡大したが、これは裏を返せば祖業のセキュリティ事業だけでは成長が鈍っていることの表れでもある。国内人口減少が進めば、警備契約・施設管理需要の新規開拓は徐々に頭打ちになり、ストック収入という堀だけでは成長を維持できなくなる。
海外M&A(マレーシア・シンガポール・香港・AVTEL等)は、海外売上比率を2倍(10%目途)に引き上げる方針のもとで続いているが、文化・規制の異なる海外市場での統合リスクは軽視できず、計画どおりの収益化が進む保証はない。2016年に当時の会長・社長を創業者・飯田亮最高顧問の一声で解職した経緯は、同族の影響力が強く資本配分の規律が乱れるリスクが完全には消えていないことを示す前例である。2023年の株主提案を一度否決してから大型自社株買いに転換した経緯も、資本政策の一貫性に疑問を残す。警備需要そのものも、人手不足を背景にした省人化・AI監視カメラ等の技術進展が、長期的には人件費中心の警備委託料の伸びを圧迫するリスクをはらんでいる。
どちらに重みを置いたか
事業の質(警備業界での規模の堀、家庭用セキュリティでの価格決定力、健全な財務)では強気の見方が優勢だが、ROEの低さと新事業・海外M&Aの実証段階という弱気の指摘も軽視できない。M&Aの実行リスクは資本コストに足さず、やや悲観・悲観の確率を厚くして表した。人件費の上昇を委託料に転嫁できる前提の名目で積み、強い堀を認めて資本コストを超える ROE の 2/3 が残るとしても、自己資本を流れで置くと ROE は 8% 台にとどまり、今の利益はそのまま残るとして利益で測っても正当化PERは26倍前後で、その9割に置いた中立の筋書きは、優良度の調整を −0.5%(k 7.0%)にとどめて割り戻すと今の値段を約35%下回り、割高という結論になった。10年の悲観側には国内人口減少という構造的な逆風を踏まえた確率を置いた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 7,581 円3.01 兆円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,412 円5,596 億円)。 今の値に割り戻すと 4,860 円1.93 兆円、今との差 −27.8%、 期待の年率 +2.9%(資本コスト 7.0%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 15,888 円6.30 兆円 | 2,418 円9,587 億円 | +171.9% | +10.5% | 1,281 円5,081 億円 |
| やや楽観 | 21% | 10,822 円4.29 兆円 | 1,897 円7,522 億円 | +88.9% | +6.6% | 2,671 円1.06 兆円 |
| 中立 | 35% | 8,070 円3.20 兆円 | 1,522 円6,033 億円 | +42.5% | +3.6% | 3,357 円1.33 兆円 |
| やや悲観 | 24% | 4,737 円1.88 兆円 | 924 円3,663 億円 | −15.9% | −1.7% | 1,359 円5,386 億円 |
| 悲観 | 13% | 1,803 円7,148 億円 | 688 円2,729 億円 | −63.0% | −9.5% | 324 円1,284 億円 |
| 加重平均 | 100% | 7,581 円3.01 兆円 | 1,412 円5,596 億円 | +33.6% | +2.9% | 8,992 円3.57 兆円 |
今の株価時価総額 6,733 円2.67 兆円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.0% を下回るほど割高。
楽観 7% データセンター警備・高齢化見守りと海外M&Aの成功で3本目の柱が確立する10年 利益 3,232 億円 · PER 19.5 倍 · 株価時価総額 15,888 円6.30 兆円
高齢化社会での見守り・医療連携需要が非連続に伸び、警備契約件数は400万件、委託料も高付加価値化で28万円まで伸びる。フロンティア事業は防災・メディカル・BPO-ICTが社会インフラとして定着し売上9,500億円まで拡大する。海外セキュリティ事業はデータセンター警備・クラウド型セキュリティ需要を取り込み、売上比率10%目途を実現し売上3,000億円まで育つ。長期ビジョン「Vision 2040」が掲げる「予兆への安心」のサービス展開が軌道に乗り、警備一本足から多角化した成長企業への転換が完成する、同社にとって最も理想的な10年になる。
- セキュリティ事業(警備・システム警備):数量 400(警備契約件数(万件、推定))× 価格 34(1件当たり年間委託料(万円))→ 売上 13,601 億円・営業利益 2,584 億円。契約件数400万件×委託料28万円、高付加価値化で利幅も改善
- フロンティア事業(防災・メディカル・保険・BPO-ICT):数量 500(フロンティア事業の契約・施設数(万件、推定))× 価格 22(1件当たり年間フィー(万円、推定))→ 売上 10,801 億円・営業利益 1,404 億円。契約・施設数500.0万件×年間フィー19.0万円。防災・メディカル・BPO-ICTが社会インフラとして定着し売上9,500億円
- 海外セキュリティ事業:数量 85.7(海外セキュリティ事業の契約件数(万件、推定))× 価格 38(1件当たり年間委託料(万円、推定))→ 売上 3,275 億円・営業利益 590 億円。契約件数85.7万件×年間委託料35.0万円。データセンター警備等で海外売上比率10%を実現し売上3,000億円
倍率:事業の純利益 3,232 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.0% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.67(moat=strong)で RONIC 11.0%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 19.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 19.5 倍。全体の PER 19.49 倍、時価総額 62,992 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:10年の間に警備契約の非連続な拡大、新事業の収益化、海外M&Aの成功という複数の成長ドライバーを同時に実現させる必要があり、実現すれば非常に強いが連続成功の確度は高くない。
やや楽観 21% 新事業・海外M&Aが着実に育つが、成長ペースはやや緩やかな10年 利益 2,397 億円 · PER 17.9 倍 · 株価時価総額 10,822 円4.29 兆円
警備契約件数は370万件まで緩やかに伸び、委託料は26.5万円まで上がる。フロンティア事業は防災・メディカル需要の定着とセコム損保の収益改善で売上7,800億円まで拡大し、海外セキュリティ事業もAVTEL以降の統合が進み、データセンター警備需要の取り込みで売上2,000億円まで育つ。国内人口減少の影響は出始めるが、高齢化関連の見守り・医療連携需要がこれを一定程度相殺し、セキュリティ単独に依存しない分散された成長モデルが機能する。自社株買い・増配は継続し、ROEは2028年度目標の10%に近づくが完全には届かない。ALSOKとの競争は続くが、寡占市場でのシェア首位は保つ、着実だが理想形には一歩届かない10年になる。
- セキュリティ事業(警備・システム警備):数量 370(警備契約件数(万件、推定))× 価格 32(1件当たり年間委託料(万円))→ 売上 11,907 億円・営業利益 2,084 億円。契約件数370万件×委託料26.5万円
- フロンティア事業(防災・メディカル・保険・BPO-ICT):数量 446(フロンティア事業の契約・施設数(万件、推定))× 価格 20(1件当たり年間フィー(万円、推定))→ 売上 8,868 億円・営業利益 975 億円。契約・施設数445.7万件×年間フィー17.5万円。防災・メディカル需要の定着で売上7,800億円
- 海外セキュリティ事業:数量 64.5(海外セキュリティ事業の契約件数(万件、推定))× 価格 34(1件当たり年間委託料(万円、推定))→ 売上 2,183 億円・営業利益 327 億円。契約件数64.5万件×年間委託料31.0万円。AVTEL以降の統合が進み売上2,000億円
倍率:事業の純利益 2,397 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.6% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.67(moat=strong)で RONIC 9.4%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.9 倍。全体の PER 17.9 倍、時価総額 42,906 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:新事業・海外M&Aの追い風は続くが、国内人口減少の影響も徐々に出始め、会社の中心シナリオよりやや緩やかな成長になる想定。
中立 35% 新事業の拡大と国内人口減少が相殺し合う10年 利益 1,799 億円 · PER 16.9 倍 · 株価時価総額 8,070 円3.20 兆円
国内人口減少の影響で警備契約件数は330万件程度にとどまるが、高齢化関連の見守り需要と値上げで委託料は25万円まで伸びる。フロンティア事業は防災・BPO-ICT需要の拡大で売上6,500億円まで拡大し、海外セキュリティ事業もAVTEL統合の定着で売上1,400億円まで育つ。ALSOKとの寡占構造は大きくは崩れず、警備一本足からの多角化は進むが、人口減少という逆風も確実に効いてくる。セコム損保の収益性改善も緩やかに続くが、新事業全体としての成長はこの10年で会社が期待したほどには非連続にはならない。自社株買い・増配は続くが、ROE10%目標には届かない水準で安定する、平凡だが崩れない10年になる。
- セキュリティ事業(警備・システム警備):数量 330(警備契約件数(万件、推定))× 価格 30(1件当たり年間委託料(万円))→ 売上 10,019 億円・営業利益 1,653 億円。契約件数330万件×委託料25万円
- フロンティア事業(防災・メディカル・保険・BPO-ICT):数量 394(フロンティア事業の契約・施設数(万件、推定))× 価格 19(1件当たり年間フィー(万円、推定))→ 売上 7,390 億円・営業利益 703 億円。契約・施設数393.9万件×年間フィー16.5万円。防災・BPO-ICT需要の拡大で売上6,500億円
- 海外セキュリティ事業:数量 51.9(海外セキュリティ事業の契約件数(万件、推定))× 価格 29(1件当たり年間委託料(万円、推定))→ 売上 1,530 億円・営業利益 199 億円。契約件数51.9万件×年間委託料27.0万円。AVTEL統合の定着で売上1,400億円
倍率:事業の純利益 1,799 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.3% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.67(moat=strong)で RONIC 8.5%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.9 倍。全体の PER 16.85 倍、時価総額 30,313 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:警備契約の頭打ちと新事業・海外M&Aの拡大が相殺し合い、10年後も現在の事業構造が大きくは崩れずに緩やかな成長を続ける、最も重みを置く筋書き。
やや悲観 24% 人口減少と値上げ疲れで契約拡大が止まり、新事業も頭打ちになる10年 利益 1,303 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 4,737 円1.88 兆円
国内人口減少の影響が強まり、警備契約件数は300万件で頭打ちとなる。値上げの余地も狭まり委託料は24万円にとどまる。フロンティア事業は防災・メディカル需要の拡大が緩やかにとどまり、保険・BPO-ICTも伸びが鈍化して売上5,600億円、海外セキュリティ事業もAVTEL統合に苦戦し売上1,000億円程度の拡大にとどまる。ALSOKとの競争も激化し、寡占市場でのシェアもやや侵食される。新事業・海外M&Aという成長の柱が十分に育たず、会社が掲げてきた多角化戦略の実行力そのものに疑問が残る展開になる。自社株買いの規模も縮小を検討する、成長エンジンが弱まる厳しい10年になる。
- セキュリティ事業(警備・システム警備):数量 300(警備契約件数(万件、推定))× 価格 29(1件当たり年間委託料(万円))→ 売上 8,744 億円・営業利益 1,312 億円。契約件数300万件で頭打ち、委託料24万円
- フロンティア事業(防災・メディカル・保険・BPO-ICT):数量 361(フロンティア事業の契約・施設数(万件、推定))× 価格 18(1件当たり年間フィー(万円、推定))→ 売上 6,367 億円・営業利益 446 億円。契約・施設数361.3万件×年間フィー15.5万円。防災・メディカル需要の拡大が緩やかにとどまり売上5,600億円
- 海外セキュリティ事業:数量 41.7(海外セキュリティ事業の契約件数(万件、推定))× 価格 26(1件当たり年間委託料(万円、推定))→ 売上 1,093 億円・営業利益 109 億円。契約件数41.7万件×年間委託料24.0万円。AVTEL統合に苦戦し売上1,000億円
倍率:ROE 6.0% は k 7% 以下なので、正当化 PER は 1÷k = 14.3 倍が上限(伸びても価値は増えない)。契約件数が頭打ちで新事業・海外が育たない筋書きなので、上限の約 8.5 割(12.1 倍)に置いた。市場の PER は使わず、稼ぐ力(純利益 1,303 億円 ÷ k 7% = 約 1.86 兆円)から置いた。
確率:国内人口減少のペースが想定より速く、新事業・海外M&Aの非連続な成長も実現しない構造変化を念頭にある。
悲観 13% 警備需要が構造的に頭打ちになり、新事業・海外M&Aも実を結ばない10年 利益 627 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 1,803 円7,148 億円
国内人口減少が構造的な重荷となり、省人化・AI監視カメラ等の技術代替も進んで、警備契約件数は280万件まで縮小する。値上げの余地も尽き委託料は22万円で伸びなくなる。フロンティア事業は新事業の統合が実を結ばず売上4,200億円まで縮小し、海外セキュリティ事業はM&Aの統合に失敗して一部撤退し売上500億円まで落ち込み損失が出る。ALSOKに一部シェアを奪われ、寡占の一角としての地位も揺らぎ始める。警備業界首位という堀自体は保たれるが、同社はもはや成長企業ではなく、倍率も底値圏にとどまる厳しい10年になる。
- セキュリティ事業(警備・システム警備):数量 280(警備契約件数(万件、推定))× 価格 27(1件当たり年間委託料(万円))→ 売上 7,481 億円・営業利益 823 億円。契約件数280万件・委託料22万円、営業利益率11%まで圧縮
- フロンティア事業(防災・メディカル・保険・BPO-ICT):数量 323(フロンティア事業の契約・施設数(万件、推定))× 価格 15(1件当たり年間フィー(万円、推定))→ 売上 4,776 億円・営業利益 143 億円。契約・施設数323.1万件×年間フィー13.0万円。新事業の統合が実を結ばず売上4,200億円・利益率3%
- 海外セキュリティ事業:数量 27.8(海外セキュリティ事業の契約件数(万件、推定))× 価格 20(1件当たり年間委託料(万円、推定))→ 売上 546 億円・営業利益 −44 億円。契約件数27.8万件×年間委託料18.0万円。M&Aの統合に失敗し一部撤退、売上500億円・損失40億円
倍率:ROE 3.3% は k 7% 以下なので、正当化 PER の上限は 1÷k = 14.3 倍。警備の契約網という堀は残るが、人口減と技術代替で利益が構造的に縮む筋書きなので、稼ぐ力(純利益 627 億円 ÷ k 7% = 約 9,000 億円)の約 8 割(11.4 倍)に置いた。市場の PER・PBR は使っていない。
確率:警備契約という祖業の収益モデルが人口減少・技術代替で構造的に頭打ちになり、新事業・海外M&Aへの投資も実を結ばない構造変化が必要で、不確実性は高いが起これば構造的な打撃になる。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
セキュリティ事業(警備・システム警備)
機械警備・システム警備・常駐警備など祖業の警備サービス。法人・家庭向けに警備契約件数×年間委託料で稼ぐ。
| 数量警備契約件数(万件、推定) | 価格1件当たり年間委託料(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 300 | 23 | 6,900 | 1,100 |
| 10 年後 中立 | 330 | 30 | 10,019 | 1,653 |
取り方:セキュリティサービス事業の売上構成比55%(2025年3月期)を全社売上に掛けて逆算し、契約件数×年間委託料に分解した。先の1件当たり委託料は、警備員の人件費(物価3%)を契約更新で転嫁するが、長期契約で改定が遅れる分を引いて、中立で10年1.32倍に置いた。件数(量)は高齢化と共働きで家庭向けが緩やかに増える。
フロンティア事業(防災・メディカル・保険・BPO-ICT)
防災(火災報知・ビル管理)、メディカル(在宅医療・調剤薬局)、保険(セコム損保)、BPO-ICT(情報処理受託)の合算。
| 数量フロンティア事業の契約・施設数(万件、推定) | 価格1件当たり年間フィー(万円、推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 350 | 14 | 4,900 | 390 |
| 10 年後 中立 | 394 | 19 | 7,390 | 703 |
取り方:防災15%・BPO-ICT11%・メディカル8%・保険5%の合計39%(2025年3月期の売上構成比)を全社売上に掛けて算出し、契約・施設数×年間フィーに分解した。1件当たりフィーは物価並みに上がるとして中立で10年1.34倍。
海外セキュリティ事業
マレーシア・シンガポール・香港の警備会社、2025年買収のシンガポールAVTEL社(データセンター警備)等。
| 数量海外セキュリティ事業の契約件数(万件、推定) | 価格1件当たり年間委託料(万円、推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 35.0 | 22 | 770 | 100 |
| 10 年後 中立 | 51.9 | 29 | 1,530 | 199 |
取り方:海外売上比率を現状の2倍の10%目途に引き上げる方針から、現状の比率を約6%と見て全社売上に掛け、契約件数×年間委託料に分解した。海外の1件当たり委託料は現地の物価が乗る(ドル円150円で固定)として中立で10年1.34倍。 数量は実物(契約件数)で、名目の市場の伸びからは置いていない。
リスクと懸念
国内人口減少と警備需要の頭打ち
長期的な国内人口減少により、新規の警備契約開拓は徐々に難しくなる。これまでは人手不足を背景にしたストック型需要の拡大で補われてきたが、人口減少のペースが速まれば、警備契約件数の伸びそのものが鈍化するリスクがある。
新事業(フロンティア事業)の実証途上
防災・メディカル・保険・BPO-ICTを束ねたフロンティア事業は売上構成比で4割近くまで拡大したが、セキュリティ事業と同等の資本効率を生むかどうかはまだ実証段階にあり、投資負担が利益成長を圧迫する可能性がある。
海外M&Aの統合リスク
マレーシア・シンガポール・香港・シンガポールAVTEL社など海外M&Aを積み重ねているが、文化・規制の異なる海外市場での統合がうまく進む保証はなく、海外売上比率10%目途の実現には時間と追加コストがかかる可能性がある。
省人化・技術代替による警備委託料への圧迫
人手不足を背景にした省人化・AI監視カメラ等の技術進展は、人を配置する警備サービスの需要を当面は支える一方、長期的には人件費中心の警備委託料の伸び方そのものを変える可能性がある。遠隔監視・無人化の技術が進むほど、委託料単価の上昇ペースが鈍化するリスクが積み上がる。
同族の影響力とガバナンス
2016年に当時の会長・社長を創業者・飯田亮最高顧問の一声で解職した経緯があり、同族の影響力の大きさがガバナンス上の論点として株主からも指摘された歴史を持つ。脱・同族化は進んだが、大型M&Aでの資本配分の規律という点では完全に払拭されたとは言い切れない。
世界的な景気後退
フロンティア事業・海外セキュリティ事業は企業の裁量的な投資・契約に依存する部分があり、2008年のリーマンショックのような世界的な景気後退が起きれば、法人向け契約の解約や新規投資の凍結が重なる可能性がある。
ALSOKとの競争激化
ALSOKは法人・金融機関向け警備や現金輸送で定評があり、寡占市場の一方が攻勢を強めることで、警備契約のシェア争いが激しくなる可能性がある。価格競争が強まれば、セコムが優位を保つ利益率そのものが圧迫される方向に働く。
今後の分かれ目
- 2028年度までにROE10%目標を実現する
- 資本効率の改善が確認され、10年のやや楽観・楽観の筋書きに近づく。
- フロンティア事業の売上構成比がさらに拡大し収益性も改善する
- 新事業がセキュリティ事業と並ぶ稼ぐ力を持つことが確認され、10年の楽観・やや楽観の確度が上がる。
- 海外売上比率が10%目途に向けて計画どおり拡大する
- 海外M&A戦略の成功が確認され、10年の楽観側の筋書きが現実味を帯びる。
- 海外M&Aの統合に失敗し追加損失が発生する
- 資本配分の巧拙への懸念が強まり、10年の悲観・やや悲観の筋書きに近づく。
- 国内の警備契約件数の伸びが明確に頭打ちになる
- 祖業の成長鈍化が確認され、10年の悲観側の筋書きが現実味を帯びる。
- 世界的な景気後退(リーマン級)が起きる
- 法人向け契約の解約・新規投資の凍結が重なり、悲観シナリオが現実味を帯びる。
- 創業家・同族の影響力をめぐる新たなガバナンス問題が表面化する
- 資本配分の規律への不安が強まり、倍率が圧縮される方向に働く。
見ておくもの
- 警備契約件数(機械警備)の四半期毎の増減と委託料の伸び率
- フロンティア事業(防災・メディカル・保険・BPO-ICT)の売上構成比と利益率の推移
- 海外売上比率の推移(10%目途への進捗)とAVTEL等の統合状況
- 自社株買い・増配の継続状況とROEの推移(2028年度10%目標への進捗)
- ALSOKとの契約件数・利益率の比較
倍率と資本コストの決め方
自己資本は今の値+期間の純利益−還元で流し(ROEは結果)、各筋書きのROEのうち資本コスト7.0%(基本の7.5%に優良度の調整−0.5%を足した値。強い堀の下げの下限。確率はこの調整を理由に動かしていない)を超える分は先で薄れる(強い堀として残る割合 2/3)として、長期g(k−g≥2.5%のため2.5%が上限)で利益ベースの正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)を出し(RONICはk 7.0%を超える分の2/3が残る値。中立で15.8倍前後)、上限すれすれにはせず利益の振れの小ささを見て中立はその9割、やや楽観は9.2割、楽観は9.5割に置いた。純現金は現金護送の業務用の現金と保険の運用資産を含むので、余った現金としては分けなかった。今のPER23倍・PBR2.0倍は使っていない。悲観側(ROEが k 以下)は市場の倍率でなく稼ぐ力で測り、やや悲観は上限の8.5割(PER12.1倍)、悲観は8割(PER11.4倍)に置いた。前の版は k を 5% に下げて PER 23〜24 倍・やや割安だったが、k を 5% まで下げるのは堀の強さを二重に見ており、強い堀の下げは −0.5%(k 7.0%)が上限なので、PER は 14 倍前後になり割高に動いた。計算に従った結果で、今の株価に寄せてはいない。 2026-10-22 の見直し(R1〜R4)で倍率・時価総額を機械で置き直した(前後は notes/audit/fix_stage2_20261022.csv)。
資本コスト 7.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。
同じ業種(サービス業)の AI 分析
読んだ資料
- 新事業が祖業を逆転したセコム流M&A、今後の勝算は?(Biz/Zine)
- セコムの企業研究(警備業界シェア・ALSOK比較)
- 大手警備会社の売上ランキング【2026】セコム・ALSOK・CSP解説(警備ラボ)
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