結論
ALSOKは、セコムと並ぶ警備の二番手だ。売上の7割を警備で稼ぎ、残りをビル管理・防災、介護、海外が占める。筆者の結論は、今の値段は事業の稼ぐ力にほぼ見合っている、というものだ。10年の本質価値は今の時価総額を 9% ほど下回る程度で、適正と見る。
利益はすでに上向いている。2026年3月期の純利益は2割以上増え、直近の四半期も経常利益が2割増えた。会社は2029年3月期に営業利益650〜720億円を狙う。筆者はそこまでは届かず、600億円ほどと慎重に見る。それでも10年後の中立の純利益は、今の7割増になる。ただ、資本コストは 7%(基本 7.5% に、契約網の安定で −0.25%)で測っており、利益の伸びは今の値段に織り込まれている。
強みは、契約の積み上げと全国の駆けつけ網だ。一度入れた警備は乗り換えにくく、毎年の収入が読みやすい。人手不足で機械警備への切り替えが進む追い風もある。
弱みは稼ぎの質だ。営業利益率は8%前後で、12%台のセコムに届かない。売上の厚い常駐警備と現金輸送は、賃金の上昇を料金に移せるかが勝負になる。
次の柱になるか重荷になるかの分かれ目は、防災大手の買収と介護だ。買収額は約836億円で、年間の純利益の2.5倍にあたる。
下振れも厚く見た。人口減少と無人化で利益率が落ちれば、10年後の利益は今より小さくなりうる。悲観の確率は10年で14%を置いた。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、持ち続けたい事業と、そうでない部分が混ざった会社だ。
持ち続けたいのは、警備の契約網だ。一度結んだ契約は更新され続け、毎年の現金収入が読みやすい。10年後も、人の命と財産を守る需要は無くならない。この部分は、価格が妥当なら株主として安心して持てる。
持ちたくないのは、人手に頼る薄利の部分と、買収で厚みを足す部分だ。常駐警備と介護は、賃金の上昇に料金が追いつかなければ利益が消える。日本ドライケミカルのような買収も、値段を払い過ぎれば株主の取り分を削る。
オーナー利益、つまり事業を保つために要る投資を引いた後に株主のものになる利益は、筆者の推定では純利益の7割ほどだ。残りは、人の確保と設備、システムへの投資で消える。
安全域は、薄い。利益で測った本質価値は、今の時価総額を 9% ほど下回る。事業の守りは固いが、稼ぎの質は平凡で、買収や介護が外れた時の傷が浅いとは言い切れない。
何で稼ぐ会社か
ALSOKの稼ぎの大黒柱は警備だ。売上の7割を占める。ビルや工場に機械警備を入れ、異常があれば隊員が駆けつける。人を配置する常駐警備、現金を運ぶ警備輸送、ATMの管理もここに入る。家庭向けの「HOME ALSOK」は、契約が約59万件ある。
FM事業は、ビルの設備管理と防災だ。売上の16%を占め、警備の顧客に管理や消防設備を重ねて売る。2026年5月には、防災設備大手の日本ドライケミカルを、米投資会社のカーライルと組んで買いにいくと発表した。もとから持分法の関連会社で、買付総額は約836億円だった。防災を第二の柱に育てる手だ。
介護は売上の9%で、有料老人ホームやグループホームを運営する。警備会社が介護を持つのは奇妙に見えるが、見守り機器と施設運営を組み合わせれば、高齢者の暮らしを丸ごと請け負える。入居率が採算を決める商売だ。
海外は売上の5%。インドネシアやベトナムなどアジアで警備の体制を整えている。日本向けの人材派遣も始める。
どの事業も、中身は人手の商売だ。社員は約6.7万人。賃金が上がれば費用は膨らみ、それを料金に移せるかどうかが利益を決める。
優良さと弱いところ
堀はある。ただし幅はセコムより狭い。筆者はそう見る。
強みは契約の積み上げと全国の駆けつけ網だ。警備は一度入れると乗り換えにくい。家庭向けの契約維持率は毎年95%以上を目標にする。2つの大手で業界の過半を握る寡占でもあり、無理な値下げ競争は起きにくい。
弱みは稼ぎの質だ。営業利益率は8%前後で、12%台のセコムには届かない。売上の中に、利益の薄い常駐警備や警備輸送が厚く入っているためだ。常駐警備は人件費を料金に移す交渉の連続で、強い価格決定力を持つ事業ではない。現金輸送は、キャッシュレス化で長い目では細る。
資本の効率は、ROE9%台とまずまずだ。会社は2029年3月期に10%を目指す。財務は堅く、自己資本比率は5割台後半で、純有利子負債はほぼゼロだ。その分、借金で無理をする心配は小さい。
気になるのは、利益の厚みを買う手が買収と介護に偏ることだ。介護は入居率と人手が命で、警備の堀は効かない。買収の巧拙は、これから数年かけて見えてくる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
警備は、景気に左右されにくい成熟市場だ。国内の市場は約3.4兆円で、機械警備の契約件数は342万件。5年で8%ほど増えた。人手不足で、人を置く警備を機械警備や遠隔監視に替える需要が続く。
3年先は、この流れが続く。家庭の防犯と高齢者の見守りが伸びる一方、常駐警備は人を確保しにくく、省人化を進めた運営への切り替えが要る。賃金の上昇を料金に移せるかが、利益率を決める。警備輸送は、キャッシュレス化に合わせて業務を組み替える段階にある。
10年先は、人口減少が効く。新しい契約の取り合いは激しくなり、数量の伸びは鈍る。それでも、見守りや防災、介護といった高齢社会向けの需要が下支えする。楽観の絵は、これらの新しい分野が柱に育つ姿だ。悲観の絵は、AIカメラや無人化で人を置く警備の単価が伸びなくなり、介護や買収が重荷になる姿である。
競争の相手は、まずセコムだ。家庭向けの顧客基盤と利益率で先を行く。法人向けの警備や現金輸送では、ALSOKが厚みを持つ。防災では、ホーチキなど設備を専業とする会社が相手になる。
ホームセキュリティの普及率は3%台にとどまり、伸びしろはまだある。ただ、その市場の中心は戸建てで、人口の減る地方では広がりにくい。
資本政策と M&A
資本の使い道は、買収と介護への投資が中心だ。中期経営計画では、3年間で成長投資とM&Aに900〜1,000億円、配当と自社株買いに550億円を充てる。営業キャッシュフローは1,900〜2,000億円を見込む。つまり稼いだ現金の半分近くを、新しい事業に回す計画だ。
防災大手の買収は、その最初の大きな一手になる。買付総額は約836億円。ALSOKの年間の純利益の2.5倍にあたる。買う値段は、会社の稼ぐ力から見て安くない。防災で警備の顧客に売り足せるかが、投資の成否を決める。
株主への還元は、配当性向40〜50%が目安だ。自社株買いは「機動的に検討する」にとどまる。還元の約束は、セコムの大型の自社株買いに比べて控えめだ。
株主の顔ぶれには特徴がある。信託銀行の名義を除くと、綜合商事、埼玉機器、きずな商事といった会社名義の株主が上位に並ぶ。経営の継続性は高いが、少数株主に目が向くかは、還元の姿勢で測ることになる。
買われる側になる可能性は小さい。株主の持ち分が厚く、ほかの会社が手を出しにくい構造だからだ。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
ALSOKは、警備の網の上に新しい稼ぎを重ねる段階に入った。人手不足で人を置く警備は機械警備や遠隔監視に替わり、その受け皿は寡占の2社が握る。家庭の防犯は普及率がまだ3%台で、会社は契約の獲得で毎年12%台の目標を掲げる。積み上がった契約は解約されにくく、利益は読みやすい。
会社は今期から利益の伸びを見込み、2029年3月期に経常利益680〜750億円、ROE10%を狙う。足元でも、直近の四半期は経常利益が2割増えた。計画どおりなら、この数字は夢ではない。
防災への一手も効く。買収する防災大手は、消火設備の設計から点検までを持つ。警備とビル管理の顧客に防災を足せば、1つの顧客から取れる金額が増える。買収額は大きいが、もとから持分を持つ会社で、中身を知った上での買い物だ。
介護も、高齢化で需要が続く。入居率が9割台なら採算に乗り、見守り機器との組み合わせで他社と差がつく。海外はアジアで体制ができつつあり、日本向けの人材派遣が新しい稼ぎになる。
還元も強まる余地がある。利益が計画に乗れば、配当性向40〜50%に自社株買いが乗り、ROEは10%を超えていく。
慎重な見方
ALSOKの利益は薄い。営業利益率は8%前後で、セコムの12%台に遠く及ばない。この差は一朝一夕には縮まらない。理由は、売上の厚い部分が人を置く警備と現金輸送だからだ。
人を置く警備は、賃金が上がれば費用がそのまま増える。最低賃金の上昇が続けば、料金に移せない分が利益を削る。警備員を増やす計画は、それだけ人件費の重荷を抱え込むことでもある。現金輸送は、キャッシュレス化で先細りになる。
防災の買収も安心できない。836億円という値段は、年間の純利益の2.5倍に当たる。防災設備は景気や建設の動きに左右され、警備のような安定した契約収入ではない。警備の顧客に売り足せるという話は、買収のたびに聞く言い分だ。
介護は、人手不足と入居率に左右される。人が集まらなければ施設は回らず、警備の堀は効かない。海外も、売上の5%にすぎず、利益はほとんど出ていない。
長い目で見れば、人口は減り、AIカメラや無人化は警備の単価を押し下げる。10年後の利益が今の延長で増えるとは限らない。会社が掲げるROE10%も、買収の失敗や賃金の上昇で簡単に崩れる。
どちらに重みを置いたか
事業の守りは固いが、稼ぎの質は平凡だ。そのため、確率は慎重な側に少し寄せた。強気の言い分である契約網の積み上がりと防災・介護の広がりは、計画どおりなら利益を押し上げる。一方、慎重な側が突く薄い利益率と人件費の重さは、構造の問題で、簡単には消えない。人口減少と無人化の影響を厚く見て、悲観の確率を少し上げた。結論は計算が決めた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,715 円8,182 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 517 円2,466 億円)。 今の値に割り戻すと 1,240 円5,917 億円、今との差 +1.3%、 期待の年率 +6.2%(資本コスト 7.0%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 3,290 円1.57 兆円 | 653 円3,115 億円 | +221.9% | +12.4% | 237 円1,129 億円 |
| やや楽観 | 20% | 2,556 円1.22 兆円 | 583 円2,781 億円 | +156.3% | +9.9% | 628 円2,995 億円 |
| 中立 | 36% | 2,009 円9,584 億円 | 539 円2,570 億円 | +108.0% | +7.6% | 917 円4,375 億円 |
| やや悲観 | 24% | 870 円4,149 億円 | 461 円2,198 億円 | +8.6% | +0.8% | 319 円1,523 億円 |
| 悲観 | 14% | 532 円2,537 億円 | 404 円1,928 億円 | −23.6% | −2.7% | 131 円625 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,715 円8,182 億円 | 517 円2,466 億円 | +82.2% | +6.2% | 2,232 円1.06 兆円 |
今の株価時価総額 1,225 円5,844 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.0% を下回るほど割高。
楽観 6% 防災・介護・海外が柱に育ち、利益率が10%台に乗る10年 利益 860 億円 · PER 18.3 倍 · 株価時価総額 3,290 円1.57 兆円
警備の網はさらに厚くなり、家庭の防犯は普及率が大きく上がる。見守りと介護、防災を一つの窓口で売り、1つの顧客から取れる金額が増える。防災の買収が成功し、FM事業の売上は3倍ほどになる。ビルの管理から消火設備の点検までを持つため、顧客は乗り換えにくい。海外はアジアの警備に日本向けの人材派遣が加わり、売上は3倍を超える。賃金の上昇は料金に移せ、全体の営業利益率は10%台に乗る。純利益は800億円台、ROEは12%を超え、還元も厚く続く。もっとも、複数の事業が同時にうまくいく必要があり、10年先の話としては高めの絵だ。競合のセコムとの差も縮まる。ただし、セコムの家庭向けの強さは簡単には崩れない。ALSOKは法人と防災で厚みを出し、別の土俵で並ぶ形になる。
- セキュリティ事業(機械警備・常駐警備・警備輸送):数量 340(警備サービスの提供単位(万件相当、推定))× 価格 21(1 単位あたり年間売上(万円、名目))→ 売上 7,052 億円・営業利益 790 億円。警備 340×20.7414、利益率 11.2%
- FM・防災事業:数量 330(管理・防災の受託量(万件相当、推定))× 価格 8.56(1 単位あたり年間売上(万円、名目))→ 売上 2,823 億円・営業利益 288 億円。FM・防災 330×8.556、利益率 10.2%
- 介護事業:数量 6.2(入居者・利用者の数(万人相当、推定))× 価格 166(1 人あたり年間売上(万円、名目))→ 売上 1,027 億円・営業利益 100 億円。介護 6.2×165.6、利益率 9.7%
- 海外事業:数量 7.0(海外の契約・配置の人員相当(万人相当、推定))× 価格 138(1 人あたり年間売上(万円、名目))→ 売上 966 億円・営業利益 79 億円。海外 7×138、利益率 8.2%
倍率:事業の純利益 860 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.4% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.7%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.2 倍。全体の PER 18.25 倍、時価総額 15,695 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:防災・介護・海外が同時に柱へ育ち、利益率が10%台へ上がる筋書き。実現すれば強いが、複数の成功が重なる必要があり、確率は低く置く。
やや楽観 20% 警備の値上げが通り、新分野が緩やかに育つ10年 利益 700 億円 · PER 17.4 倍 · 株価時価総額 2,556 円1.22 兆円
人口が減る中でも、機械警備と家庭の防犯の契約は緩やかに増える。値上げは物価並みに通り、営業利益率は9%台に乗る。防災はグループの柱の一つに育ち、FMの売上は2倍半になる。介護は入居率を保ち、海外は黒字が定着する。セコムとの利益率の差は縮むが、埋まりはしない。純利益は700億円ほどまで伸び、ROEは10%台に乗る。配当と自社株買いは続き、利益の伸びがそのまま株主の取り分に回る。会社の掲げる多角化が、おおむね計画どおりに実を結んだ姿だ。競合はセコムが最大の相手のまま、大きな変化はない。人手の確保は厳しいが、省人化の投資で吸収し、警備員1人あたりの売上を伸ばせる。
- セキュリティ事業(機械警備・常駐警備・警備輸送):数量 320(警備サービスの提供単位(万件相当、推定))× 価格 20(1 単位あたり年間売上(万円、名目))→ 売上 6,541 億円・営業利益 667 億円。警備 320×20.4408、利益率 10.2%
- FM・防災事業:数量 280(管理・防災の受託量(万件相当、推定))× 価格 8.43(1 単位あたり年間売上(万円、名目))→ 売上 2,361 億円・営業利益 217 億円。FM・防災 280×8.432、利益率 9.2%
- 介護事業:数量 5.7(入居者・利用者の数(万人相当、推定))× 価格 163(1 人あたり年間売上(万円、名目))→ 売上 930 億円・営業利益 82 億円。介護 5.7×163.2、利益率 8.8%
- 海外事業:数量 5.5(海外の契約・配置の人員相当(万人相当、推定))× 価格 136(1 人あたり年間売上(万円、名目))→ 売上 748 億円・営業利益 52 億円。海外 5.5×136、利益率 7.0%
倍率:事業の純利益 700 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.9% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.0%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.4 倍。全体の PER 17.42 倍、時価総額 12,194 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:警備の値上げが通り、新しい分野が緩やかに育って利益率が9%台に乗る筋書き。
中立 36% 人口減少と省人化の逆風を、値上げと新分野で打ち返す10年 利益 577 億円 · PER 16.6 倍 · 株価時価総額 2,009 円9,584 億円
国内の人口は減り、新しい契約の取り合いは厳しくなる。それでも、見守りと防災の需要、機械警備への切り替えが数量を支える。値上げは物価並みに通り、営業利益率は8%台後半まで上がる。FMは防災の買収が効いて、売上が2倍ほどになる。介護と海外も伸びるが、利益の規模はまだ小さい。純利益は600億円に迫り、ROEは9%台後半で安定する。配当と自社株買いも続くが、突出した資本効率にはならない。セコムが先を走り、ALSOKは堅実に追う構図が続く、平凡だが崩れない10年になる。人手の確保は難しさを増すが、省人化の投資で売上の伸びを保てる。警備輸送は現金の減少で細り、その分を周辺業務で補う。
- セキュリティ事業(機械警備・常駐警備・警備輸送):数量 300(警備サービスの提供単位(万件相当、推定))× 価格 20(1 単位あたり年間売上(万円、名目))→ 売上 6,042 億円・営業利益 568 億円。警備 300×20.1402、利益率 9.4%
- FM・防災事業:数量 235(管理・防災の受託量(万件相当、推定))× 価格 8.31(1 単位あたり年間売上(万円、名目))→ 売上 1,952 億円・営業利益 164 億円。FM・防災 235×8.308、利益率 8.4%
- 介護事業:数量 5.2(入居者・利用者の数(万人相当、推定))× 価格 161(1 人あたり年間売上(万円、名目))→ 売上 836 億円・営業利益 67 億円。介護 5.2×160.8、利益率 8.0%
- 海外事業:数量 4.5(海外の契約・配置の人員相当(万人相当、推定))× 価格 134(1 人あたり年間売上(万円、名目))→ 売上 603 億円・営業利益 36 億円。海外 4.5×134、利益率 6.0%
倍率:事業の純利益 577 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.7% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.4%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.6 倍。全体の PER 16.61 倍、時価総額 9,584 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:人口減少と省人化の逆風を、値上げと新しい分野の伸びで打ち返す、最も重みを置く筋書き。
やや悲観 24% 人口減少と賃金上昇で、料金転嫁が追いつかない10年 利益 417 億円 · PER 10.0 倍 · 株価時価総額 870 円4,149 億円
人口の減少で新しい契約は頭打ちになり、数量の伸びは小さい。賃金は物価を上回って上がり、料金を上げても営業利益率は7%台まで落ちる。防災の買収は期待ほど広がらず、介護は人手の確保が重荷になる。海外は黒字化が先送りされる。警備輸送は現金の利用減で細り、組み替えの費用がかさむ。純利益は400億円台にとどまり、ROEは8%を切る。還元は続けるが、成長の物語を失い、倍率は縮んでいく。優良とまでは言えないが、崩れもしない、地味な会社に落ち着く姿だ。同業との競争も続き、値上げの余地が限られる。人を増やす計画は人件費の重荷となって跳ね返り、投資の効率が落ちる。
- セキュリティ事業(機械警備・常駐警備・警備輸送):数量 280(警備サービスの提供単位(万件相当、推定))× 価格 20(1 単位あたり年間売上(万円、名目))→ 売上 5,471 億円・営業利益 438 億円。警備 280×19.539、利益率 8.0%
- FM・防災事業:数量 190(管理・防災の受託量(万件相当、推定))× 価格 8.06(1 単位あたり年間売上(万円、名目))→ 売上 1,531 億円・営業利益 100 億円。FM・防災 190×8.06、利益率 6.5%
- 介護事業:数量 4.6(入居者・利用者の数(万人相当、推定))× 価格 156(1 人あたり年間売上(万円、名目))→ 売上 718 億円・営業利益 47 億円。介護 4.6×156、利益率 6.5%
- 海外事業:数量 3.4(海外の契約・配置の人員相当(万人相当、推定))× 価格 130(1 人あたり年間売上(万円、名目))→ 売上 442 億円・営業利益 18 億円。海外 3.4×130、利益率 4.0%
倍率:ROE 7.7%。RONIC = k 7% + 残る割合 1/2 ×(7.7% − 7.25%)= 7.5%、長期の g 3.7% から正当化 PER = (1 − 3.7÷7.5)÷(7.25 − 3.7) = 14.2 倍。利益の足踏みと成長への信頼の低下で倍率が縮む筋書きなので、やや悲観は上限の約 7 割(9.9 倍)に置いた。
確率:人口減少と賃金の上昇で、料金転嫁が追いつかず、新しい分野も伸びきらない筋書き。薄い利益率の会社なので、セコムより悲観側をやや厚くした。
悲観 14% 無人化で警備の単価が頭打ちになり、新事業が重荷になる10年 利益 267 億円 · PER 9.5 倍 · 株価時価総額 532 円2,537 億円
AIカメラと遠隔監視が広がり、人を置く警備の需要と単価が伸びなくなる。賃金は上がり続け、営業利益率は6%を割る。防災と介護への投資は期待ほど利益を生まず、のれんの減損も出る。海外は不採算で縮小し、警備輸送は現金の減少で細る。純利益は270億円ほどで、今期より小さくなる。ROEは5%台まで落ち、もはや優良企業とは見られない。配当は維持しても、増える見込みはなくなる。寡占の一角という地位は残るが、その地位が利益に結びつかなくなった姿である。同業の中にも省人化に成功する会社が出て、料金の競争が強まる。ALSOKは対応が遅れ、利益を削って契約を守ることになる。
- セキュリティ事業(機械警備・常駐警備・警備輸送):数量 255(警備サービスの提供単位(万件相当、推定))× 価格 18(1 単位あたり年間売上(万円、名目))→ 売上 4,676 億円・営業利益 304 億円。警備 255×18.3366、利益率 6.5%
- FM・防災事業:数量 165(管理・防災の受託量(万件相当、推定))× 価格 7.56(1 単位あたり年間売上(万円、名目))→ 売上 1,248 億円・営業利益 56 億円。FM・防災 165×7.564、利益率 4.5%
- 介護事業:数量 4.0(入居者・利用者の数(万人相当、推定))× 価格 146(1 人あたり年間売上(万円、名目))→ 売上 586 億円・営業利益 23 億円。介護 4×146.4、利益率 4.0%
- 海外事業:数量 2.2(海外の契約・配置の人員相当(万人相当、推定))× 価格 122(1 人あたり年間売上(万円、名目))→ 売上 268 億円・営業利益 3 億円。海外 2.2×122、利益率 1.0%
倍率:構造的に負けた会社。ROE は 5.5% で k 7% を下回り、成長しても価値は増えないので、正当化 PER は 1÷k = 13.8 倍が上限。契約網は残るがもう優良とは見られないので、上限の約 7 割(9.5 倍)を純利益 267 億円に掛けた。自己資本の倍率で床を置いていない。
確率:無人化とAI監視で警備の単価が頭打ちになり、買収や介護が重荷になる構造的な負けの筋書き。利益率が薄い分、崩れる時の幅が大きい。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
セキュリティ事業(機械警備・常駐警備・警備輸送)
機械警備・常駐警備・警備輸送・ATM 管理など警備の本体。法人と家庭(HOME ALSOK)向け。売上の約 7 割。
| 数量警備サービスの提供単位(万件相当、推定) | 価格1 単位あたり年間売上(万円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 280 | 15 | 4,208 | 355 |
| 10 年後 中立 | 300 | 20 | 6,042 | 568 |
取り方:2026/03 期のセキュリティ事業の売上 4,208 億円(有報ベースの集計)を、機械警備(家庭向け 約 59 万件を含む)・常駐警備・輸送の提供量を件数に換算した 280 万件相当で割って単価を逆算した。件数の中身は開示が無い推定。営業利益 355 億円は、全社 469 億円からセグメント別の開示が無い分を、売上と利益率の感覚(警備 8% 台)で割り振った推定。
FM・防災事業
ビル設備管理・防災・消防設備など。警備の顧客に管理と防災を重ねて売る。防災大手の買収で厚くなる。売上の約 16%。
| 数量管理・防災の受託量(万件相当、推定) | 価格1 単位あたり年間売上(万円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 150 | 6.20 | 930 | 70 |
| 10 年後 中立 | 235 | 8.31 | 1,952 | 164 |
取り方:FM 事業等の売上 930 億円を、受託棟数・設備の保守件数に換算した 150 万件相当で割った推定。営業利益は 7.5% 程度と置いた推定。買収する防災大手の分は先の筋書きで数量に足した。 数量は実物(受託件数相当)で、名目の市場の伸びからは置いていない。
介護事業
有料老人ホーム・グループホームの運営など。入居率が採算を決める。売上の約 9%。
| 数量入居者・利用者の数(万人相当、推定) | 価格1 人あたり年間売上(万円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 4.6 | 120 | 552 | 40 |
| 10 年後 中立 | 5.2 | 161 | 836 | 67 |
取り方:介護事業の売上 552 億円を、入居・利用者 4.6 万人相当で割って 1 人あたり年 120 万円(月 10 万円)を逆算した推定。入居者数そのものは確かめていない。利益率は 7% 台と置いた推定。
海外事業
アジア(インドネシア・ベトナムなど)の警備と、日本向けの人材派遣。売上の約 5%。
| 数量海外の契約・配置の人員相当(万人相当、推定) | 価格1 人あたり年間売上(万円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2.8 | 100 | 280 | 10 |
| 10 年後 中立 | 4.5 | 134 | 603 | 36 |
取り方:海外事業の売上 280 億円を、人員換算 2.8 万人相当で割った推定(人員数は開示が無い)。現地の物価は名目で乗り、ドル円は 150 円で固定とした。利益率は 3〜4% と置いた推定。 数量は実物(人員相当)で、名目の市場の伸びからは置いていない。
リスクと懸念
賃金の上昇を料金に移せない
警備は人手の商売で、最低賃金の上昇は費用にそのまま響く。常駐警備は顧客との料金交渉が毎回の勝負で、移せない分は利益率を削る。売上の7割を占める警備の採算が、全体の利益を決める。最近は人手不足で料金交渉が通りやすいが、景気が悪くなれば顧客は値引きを求める。賃金は下がらない。
防災の買収が高い買い物になる
防災大手の買収は総額約836億円で、年間の純利益の2.5倍に当たる。警備の顧客への売り足しが想定ほど進まなければ、投資の回収は遅れ、減損の恐れも出る。のれんが大きくなれば、利益が伸びない年に減損が出て、決算を傷つける可能性もある。
介護の入居率と人手不足
介護は入居率が採算を決め、人の確保が運営の限界を決める。警備の堀が効かない分野で、利益の振れは大きい。施設数が増えるほど、固定費の重さも増える。介護は売上の1割弱だが、失敗した時の損は利益の大きな部分を消すことになる。
警備輸送のキャッシュレス化
現金の利用が減れば、現金輸送とATM管理の量は細る。会社は業務の組み替えを進めるが、売上の規模を保てるかは不透明だ。ATM管理や入出金機などの周辺業務へ広げているが、現金輸送の落ち込みを補えるかは見えない。
人口減少と省人化
人口が減れば新しい契約の取り合いは激しくなる。AIカメラや遠隔監視が進めば、人を置く警備の単価の伸びは鈍る。一方で、省人化を進められない会社は競争に負ける。数量の伸びを値上げだけで補うのは限りがあり、新しい分野の育ちが遅れれば成長は止まる。
セコムとの利益率の差
営業利益率は8%前後で、セコムの12%台に及ばない。差の理由が構造的であれば、料金の力で追いつくことは難しい。値上げ競争が起きれば、2社とも傷つく。その分、同じ株価の水準でも、ALSOKは稼ぐ力を割り引いて見る必要がある。
会社名義の大株主
上位株主に会社名義の株主が並び、経営の継続性が高い一方、少数株主の意見が通りにくい構図になりうる。還元や買収の判断が、資本効率に厳しく向き合う形になるかが問われる。この点は、資本政策を見るうえで常に頭に置いておく。
今後の分かれ目
- 2029年3月期に営業利益650億円・ROE10%の会社目標が実現する
- 10年の、やや楽観・楽観の筋書きに近づく。
- 防災大手の買収が計画どおり利益に乗り、警備の顧客への売り足しが進む
- FM事業の利益率が上がり、10年の楽観側の確度が高まる。
- 賃金の上昇に料金が追いつかず、警備の利益率が低下する
- やや悲観・悲観の筋書きに近づき、倍率も縮む。
- 自社株買いを含む還元が配当性向の目安を大きく上回って続く
- 資本効率の改善が確認され、ROEの上振れ余地が広がる。
- 介護や海外で減損・撤退が出る
- 資本配分への信頼が下がり、10年の悲観側の確率が上がる。
- 急な不況(リーマン級)が来る
- 警備契約は粘るが、新規案件は止まり、10年の悲観の筋書きが現実になる。
見ておくもの
- 家庭向け(HOME ALSOK)の契約件数と契約維持率(毎年95%以上の目標)
- 警備事業の営業利益率と、料金の改定状況
- 防災大手の買収後の売上・利益と、のれんの減損の有無
- 介護の入居率(目標93.5%)
- 自社株買いの有無と、配当性向(40〜50%の目安)
倍率と資本コストの決め方
倍率は、利益ベースの正当化 PER の上限に対し、中立 8.5 割・やや楽観 8.8 割・楽観 9 割に置いた。堀は「普通」(残る割合 1/2)とした。セコムは強い堀としたが、ALSOK は利益率の低い常駐警備・輸送が厚く、価格決定力が弱いと見たため、中立 PER はセコムより低い 13.6 倍になる。やや悲観は上限の 7 割、悲観は純利益に 1÷k の約 7 割を掛けた。今の PER・PBR は使っていない。k は 7%(基本 7.5% に 4 つの目安 −0.25%)。純現金は時価総額の 2.4% と小さく、現金輸送用の現金も含むため、余った現金は分けなかった。防災の買収(約 836 億円)は純有利子負債を増やす方向だが、利払いの変化は小さく見た。2028/03 期からの新リース会計で営業利益と負債の形が変わるが、数字は家賃を費用に入れた今の形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 15.89→18.25 倍・やや楽観 PER 14.77→17.42 倍・中立 PER 13.55→16.61 倍)。
資本コスト 7.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。