結論
ジンジブは、高校生の就職を支える求人媒体「ジョブドラフトNavi」と採用イベントを軸に、企業から広告料や採用支援料を得る会社である。筆者の結論は「やや割高」だ。学校との関係を築き、企業が採用しにくい高卒人材に接点を持つ強みはあるが、10年後の利益を安定して予測できるほどの参入障壁はまだ確認できない。
2026年3月期の売上高は26.9億円、営業利益は1.7億円だった。2025年3月期の最終赤字から回復したものの、売上高の増加が安定した利益率の上昇につながったとは言い切れない。2026年4月には進学支援事業を買収し、高校との接点を就職と進学の両方へ広げた。これは成長の機会であると同時に、従業員や運営費を抱える事業を取り込んだという意味でもある。
中期経営計画は2029年3月期の売上高56.0億円、営業利益7.5億円を掲げる。学校網の拡大と業務効率化が実現すれば十分に届き得るが、採用広告の制作、訪問代行、人事業務支援、研修にはAIエージェントによる代替圧力がある。中立の2036年3月期売上高は44.2億円、営業利益は5.1億円と見込む。計画達成後も同じ勢いで成長し続けるとは考えない。
5つの筋書きから求めた現在の本質価値は約21.0億円で、基準時価総額25.6億円を約18%下回る。悲観側では基準期の純現金約12.6億円に換金可能資産を加えた床を認め、営業赤字に低い倍率を掛けるだけの評価は避けた。ただし現預金には顧客からの前受金が含まれ、その全額を直ちに株主へ配れるわけではない。学校との関係が持続的な値上げ力と高い再投資収益率に変わるまでは、成長余地の大きさだけを理由に高い価値を認めにくい。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、ジンジブを単なる求人サイトとして見るのは適切ではない。高校を訪問し、教員が生徒を安心して送り出せる企業情報を届ける活動には、地域ごとの経験と人間関係が要る。進学支援事業の買収も、学校との接点を広げるためなら合理的な投資になり得る。採用媒体だけでは入れなかった学校と関係を作れることは、十年後にも残るかもしれない資産である。
しかし、学校との関係が競争相手には奪えない強みなのかは別問題だ。企業の支払う料金が上がっても契約が続く証拠、営業担当者が増えなくても契約が増える証拠、同じ学校で複数の有料サービスを販売できる証拠が必要になる。現状では、学校網を維持するために人件費や訪問費がかかり、収益の多くを自由に配分できる段階には達していない。
オーナー利益を考えると、営業利益から法人税だけを引けば済むわけではない。学校向けシステムの開発、地方拠点の維持、営業人員の採用、イベントの運営、買収後の統合作業に現金が要る。新リース会計基準で事務所の賃借に対応する使用権資産と負債が計上されても、家賃の現金支出が消えるわけではない。帳簿上の利益より、事業を維持した後に残る現金を重視すべきだ。
仮に経営陣が中期計画を達成しても、その後に収益性を保てなければ長期株主の価値は増えない。筆者が評価したいのは、学校網が広がったという事実だけでなく、そこへ投じた追加資本が資本コストを超える利益を生んだという実績である。今の株価でその証拠が十分かと問われれば、まだ慎重な答えになる。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心は、企業が高校生に自社を知ってもらうための費用である。ジョブドラフトNaviに採用情報を掲載し、ジョブドラフトFesなどの対面イベントで高校生と企業をつなぐ。高校生に直接働きかけにくい採用慣行の中で、学校や教員を通じて情報を届けられることが事業上の役割となっている。2026年3月期の採用領域の売上構成比は51.6%だった。
企業の求人票や採用パンフレット、紹介動画、採用サイトを制作する企画制作が18.7%を占める。高校訪問や求人票発送、応募受付、人事業務を代行する支援事業は18.2%である。残る11.5%には、若手社員の育成を支援するルーキーズクラブや、第二新卒向けのジョブドラフトNextなどが含まれる。会社の正式な報告セグメントと、AI代替の経済性を見るための事業区分は必ずしも一致しない。
顧客企業には製造業、建設業、サービス業など、高卒採用を継続する中小企業が含まれる。2026年3月期のジョブドラフトNavi掲載社数は、有料1,026社、無料1,483社の合計2,509社だった。無料掲載企業は学校への情報提供と将来の有料転換の母集団であり、そのすべてから直接売上が生じるわけではない。
2026年4月に子会社化したジンジブキャリアは、高校内の進路ガイダンスや大学・専門学校の進学情報提供を担う。買収前の事業は約60人の体制で年間約1,700回の進学イベントやガイダンスを開催していた。費用を負担するのは主として進学先を探す大学や専門学校などであり、採用広告とは顧客の予算源が異なる。2027年3月期第1四半期には、就職支援事業の営業損失に対して進学支援事業が利益を生み、連結利益を下支えした。
就職支援と進学支援が同じ学校を訪問できれば、営業活動の重複を減らせる。しかし、学校との関係があっても、企業や進学先が広告費を出さなければ利益は生まれない。学生の登録者数だけでなく、有料企業の継続、イベントの開催件数、顧客当たりの売上高を追う必要がある。
優良さと弱いところ
最大の強みは、学校との関係を現場で築いてきたことである。高校生の進路選択には教員の関与が大きく、求人情報の掲載数だけでは採用支援の価値が決まらない。ジョブドラフトTeacherの導入校は2026年3月期末で1,220校、ジョブドラフトCareerは804校だった。進学支援事業の買収によって、就職希望者の少ない学校にも接点を増やせる可能性がある。
ただし、これを独占的な堀と呼ぶには証拠が足りない。学校向けシステムが企業の法定記録の正本になっているわけではなく、競合サービスへの移行に年単位の負担がかかるという開示もない。年5%未満の解約率や、価格改定を繰り返し通した実績も確認できない。教員との信頼関係は価値があるが、その価値がそのまま株主の利益になるとは限らない。
利益率にも安定性の課題がある。2024年3月期には営業利益率が13%を超えたものの、翌期は3%を下回り、2026年3月期も6%程度にとどまった。学校網と営業人員の拡張には先行費用がかかり、増分売上の多くが継続的な営業利益になる構造は実証途上である。顧客の採用予算が増えれば収益は伸びるが、採用停止や契約縮小への耐性は高くない。
純現金は財務上の支えである。ただし2026年6月末には顧客へのサービス提供前に受け取った契約負債が約10.6億円あり、現預金の全額を余剰資金とは扱えない。長期保有に値する品質へ近づく条件は、学校接点を失わずに営業費用を抑え、有料顧客の定着と利益率の安定を数字で示すことである。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
高卒採用の市場には、少子化と人手不足が同時に作用する。就職する高校生の人数は減少しやすいが、採用したい企業にとっては一人を確保する難しさが増す。そのため、就職者数が減ることと企業の採用支援費が減ることは同義ではない。学校との接点を持つ事業者が顧客企業の採用成功に貢献できれば、限られた採用予算の中で一定の地位を保てる。
会社資料は2025年3月卒の高卒就職者数20万3,762人を示し、大卒採用支援費の一人当たり33.3万円を当てはめると、潜在的な高卒採用支援市場は約679億円になると説明している。ただし、これは高卒採用に既に支払われている広告費の実測値ではない。ジンジブの2026年3月期売上高は、この仮想市場の約4%に相当するものの、実際の市場シェアが4%と確認されたわけではない。価格と数量を考える際には、その違いを守る必要がある。
競合はハローワークの求人紹介、地域の求人冊子や採用イベントを展開するCOURSE、ハリケンナビなどの高卒求人媒体、企業の直接採用活動に広がる。進学側にも、学校向け進路ガイダンスを手がける既存事業者がいる。公表情報から各社の有料契約件数を同じ基準で把握することは難しく、正確な売上シェアは推定できない。大手求人サービスの検索技術や広告営業力も、潜在的な競争要因である。
2036年までには、企業と学校の間で必要な作業が変わる。AIエージェントが求人票を作成し、媒体を横断して候補を探し、応募対応を進めれば、制作や事務代行の仕事量は減る。一方、実際に高校を訪問し、進路ガイダンスを開催し、教員との信頼を維持する活動は、そのままソフトウェアだけに置き換わりにくい。価格競争の強まるデジタル業務と、現場の接点を持つ活動を分けて評価すべきである。
中立では採用媒体の有料契約社数が1,026社から1,500社へ増えるとみる。全国への営業拡大で顧客企業を獲得する筋だが、会社の2029年3月期計画である1,950社には届かない想定だ。企画制作、代行、研修ではAIによる必要工数の減少を織り込み、進学イベントの開催回数も買収前実績より縮む。売上高が名目で増えても、すべての事業が実質数量を増やすわけではない。
資本政策と M&A
2026年5月公表の中期経営計画は、2029年3月期の売上高56.04億円、営業利益7.50億円、営業利益率13.4%を目指す。ジョブドラフトNaviの有料掲載企業は1,026社から1,950社、無料掲載企業は1,483社から4,650社へ増やす計画である。就職支援イベントの開催数も74回から150回へ拡大する。売上と利益の数字には明確な約束があるが、ROEの定量目標や配当性向、DOE、総還元性向、自社株買い金額については数字の約束がない。
資本配分の転換点は2026年4月の進学支援事業の買収だった。既存の高校ネットワークを広げ、企業の採用広告以外の収益源を取り込む狙いは理解できる。しかし、買収後の連結貸借対照表にはのれんが計上されており、期待した相乗効果が出なければ減損の危険がある。今後の買収は件数や売上規模ではなく、買収対価に対する追加の現金利益で評価したい。
2026年3月期までの配当実績はなく、2027年3月期の公表配当予想もゼロである。発行済株式数の大幅な減少につながる自社株買いも確認できない。創業者の保有比率は45.77%、上位10株主の合計は78.22%だった。長年還元しなかった余剰現金が今後確実に株主へ戻るとは扱わず、価値計算では戻り方を慎重に評価する。
ストックオプションの潜在株式は2026年3月期末時点で最大22万2,800株に相当する。事業が好調な筋書きほど権利行使による既存株主の希薄化を考える必要がある。なお、基準日までに同社を対象とする確定的なTOB、MBO、上場廃止予定は確認していない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
高校生の就職支援は、大学生向けの巨大な求人市場とは構造が違う。学校と教員の役割が大きく、企業も生徒と接するための手続きを自力で整えにくい。ジンジブはこの分野に長く取り組み、ジョブドラフトNavi、就職イベント、学校向け支援システムを組み合わせてきた。無料掲載企業を有料契約へ転換する余地もあり、現在の契約数だけで成長の上限を決めるべきではない。
進学支援事業の買収で学校との接点はさらに広がる。進学希望者が大多数を占める学校でも、少数の就職希望者にサービスを提供できるようになる。進学イベントの参加者、学校の教員、就職先の企業という異なる顧客との関係がつながれば、学校訪問一回当たりの経済価値は上がる。子会社が初年度の第1四半期から利益に貢献したことも、買収した事業に現実の収益基盤がある証拠だ。
中期計画の利益率13.4%は、単に人を増やすのではなく、社員一人当たり売上高を高める方針と結び付いている。会社は採用媒体、イベント、学校向けシステムを一体化しており、営業拠点が広がった後に固定費の負担が軽くなる可能性がある。AIによる制作の効率化も、顧客に価格低下を求められる前に自社が利益改善へ生かせれば追い風となる。ただし、その利益が既に金額として開示されたとまでは言えない。
採用媒体の有料顧客をさらに獲得し、学校イベントも拡充できれば、現在の小さな利益から大幅な増益が起こる。純現金があるため、利益率の改善まで事業を維持する余力もある。将来の株主還元が始まれば、会社の成長に加えて資本配分の評価も上向くだろう。
慎重な見方
ジンジブの学校網は、必ずしも利用者を閉じ込める仕組みではない。学校は複数の求人情報源を使え、企業もハローワークや地域媒体、直接採用を併用できる。就職支援を学校が必要としていることと、ジンジブの有料サービスが不可欠であることは違う。競合が同じ学校に足を運ぶ余地も残る。
売上構成の相当部分は、求人票や動画の制作、訪問や事務の代行、研修である。AIエージェントが求人原稿を作り、応募窓口を管理し、研修資料を作成するようになれば、従来の人手を前提とした単価は維持しにくい。採用媒体にも、企業と学校がAIで直接情報をやり取りする中抜きの危険がある。学校との接点が残っても、そこから受け取れる金額は細り得る。
中期計画は売上高を短期間で倍増させる意欲的なものだが、2025年3月期には最終赤字があり、利益率は年度ごとに大きく変わっている。2026年3月期の最終利益には繰延税金資産に関係する税負担の軽減も含まれ、すべてを恒常的な稼ぐ力とは見なせない。買収による売上増加を既存事業の成長と混同すると、増分の収益性を過大評価する。
現預金は帳簿上多いが、前受金を履行するための費用や顧客へのサービス提供義務が残る。進学支援事業の買収で生じたのれんにも処分価値を認めにくい。さらに、新株予約権の行使による希薄化があり、事業が成長してもそのすべてが現在の株主に帰属するとは限らない。純粋な事業利益が安定する前に高い成長価値を認めることは危険である。
どちらに重みを置いたか
学校との接点を拡張できる点では強気の見方に説得力がある。しかし、有料契約の継続率や値上げ力、買収後の増分利益率に十分な実績がなく、慎重な見方が優勢だ。中立の数量には既にAI代替による制作・代行業務の縮小を織り込んだため、その危険だけを理由に確率まで重ねて下げてはいない。一方、赤字期の存在、収益性の変動、買収の統合負担、株主への現金還元実績の欠如を踏まえ、やや悲観と悲観を合計41%とした。純現金を悲観の資産価値の床として反映しても、計算上の本質価値は市場価値を約18%下回り、安全域は十分でない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 1,460 円42 億円(+ 還元の換算額還元の合計 92 円3 億円)。 今の値に割り戻すと 723 円21 億円、今との差 −15.0%、 期待の年率 +6.4%(資本コスト 8.3%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 9% | 3,803 円110 億円 | 320 円9 億円 | +385.0% | +18.2% | 371 円11 億円 |
| やや楽観 | 20% | 2,486 円72 億円 | 160 円5 億円 | +211.3% | +12.6% | 529 円15 億円 |
| 中立 | 30% | 1,443 円42 億円 | 96 円3 億円 | +81.0% | +6.3% | 462 円13 億円 |
| やや悲観 | 27% | 461 円13 億円 | 10 円0 億円 | −44.5% | −5.8% | 127 円4 億円 |
| 悲観 | 14% | 447 円13 億円 | 0 円0 億円 | −47.4% | −6.2% | 63 円2 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,460 円42 億円 | 92 円3 億円 | +82.6% | +6.4% | 1,552 円45 億円 |
今の株価時価総額 850 円25 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 9% 高校網の全国展開が定着し、採用と進学を一体で収益化 利益 9 億円 · PER 12.9 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 3,803 円110 億円
就職支援と進学支援の組み合わせが、全国の高校で定着する。教員は進路指導に必要な情報を集めやすくなり、企業は学校への訪問機会を広げられる。ジンジブはその接点を生かし、有料掲載企業を2,150社まで増やす。これは2026年3月期の約2.1倍であり、学校との関係が採用支援の販売力に結び付く最も良い展開である。
採用イベントは都市部だけでなく地方にも広がり、採用媒体を単なるWeb広告から、対面の機会を含む総合サービスへ進化させる。進学支援事業は買収前の開催規模を維持し、大学や専門学校から安定した出展料や情報提供費を得る。採用と進学の営業活動を共通化できるため、売上が増えても費用は比例して増えない。
制作、事務代行、研修ではAIエージェントによる必要工数の減少が続くため、数量が際限なく増えるとは考えない。それでも学校との接点を握る採用媒体の伸びと全社の生産性向上が勝ち、営業利益率が大きく改善する。経営陣は買収を小規模な補完投資にとどめ、2020年代後半から2030年代にかけて収益基盤を強める。余剰現金は積み上がり、一部で株主還元も始まる。
- 高卒採用媒体・就職イベント:数量 2,150(有料掲載企業数(社、年度末契約社数を年間収益の近似数量に使用))× 価格 0.02(有料企業1社当たり年間採用媒体・イベント売上高(億円、名目))→ 売上 41 億円・営業利益 9 億円。有料企業2,150社。会社の2029年目標を上回る全国浸透と、イベントを含む契約単価の改善。
- 求人広告・採用広報の企画制作:数量 700(制作案件数(件、年間推定))× 価格 0.01(1案件当たり平均制作売上高(億円、名目))→ 売上 7 億円・営業利益 1 億円。AI代替を考慮して案件数は2026年の推定水準以下とし、価格は10年の物価上昇以内。
- 高校訪問・採用事務・人事業務代行:数量 180(年間委託契約換算数(契約、推定))× 価格 0.04(1委託契約換算当たり年間売上高(億円、名目))→ 売上 7 億円・営業利益 1 億円。代行工数の増加には依存せず、契約の高度化で利益率を改善。
- 若手社員研修・第二新卒支援その他:数量 500(研修・紹介等の案件換算数(件、年間推定))× 価格 0.01(1案件換算当たり平均売上高(億円、名目))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。研修の対面部分が残り、件数は推定起点と同じ。
- 進学支援ガイダンス・進路情報:数量 1,700(高校内進学イベント・ガイダンス開催回数(回、年間))× 価格 0.01(1回当たり進学支援事業売上高(億円、名目、媒体収益を含む換算))→ 売上 14 億円・営業利益 3 億円。買収前の実施回数を維持。合同営業による単価と運営採算の改善。
倍率:資本コスト8.25%、長期名目成長率0.8%、通常の堀による超過ROE残存割合1/2を使用。余剰現金25億円とその税後受取利息0.35億円を事業の自己資本と利益から外すと、事業ROEは8.25÷24.7=33.4%、増分RONICは約20.8%。正当化PER=(1-0.008÷0.208)÷(0.0825-0.008)=約12.91倍であり、事業純利益8.25億円に12.90倍を適用する。余剰現金は株主への戻り方50%を掛けて12.5億円を加える。
確率:学校との接点の拡大が有料企業の獲得と利益率改善の両方につながり、買収した進学事業も収益性を維持する筋書き。複数の成功が必要なため9%とする。
やや楽観 20% 学校網を広げ、進学事業との相乗効果が着実に現れる 利益 6 億円 · PER 12.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 2,486 円72 億円
ジョブドラフトTeacherなどの学校向けサービスが広がり、高校との関係が安定する。採用企業は中小企業を中心に増え、有料掲載企業数は1,875社となる。求人票の作成や学校訪問支援を利用する企業は残るが、AIによる原稿制作や応募管理の内製化も進むため、これらの仕事の実質数量は減る。
進学支援事業のガイダンスは、買収前の全国開催体制を生かしながら採算の良い学校や地域へ集中する。開催回数はやや減るものの、大学や専門学校との取引は維持できる。就職支援の営業拠点と進学支援の運営組織を統合し、学校訪問の重複や管理業務を削減することで、連結利益率は上向く。
追加の大型買収は行わず、学校網、顧客管理、現場担当者の育成へ再投資する。利益が積み上がれば2020年代末以降に限定的な株主還元が始まるが、経営陣はなお成長投資を優先する。学校との関係は強くなる一方、法令で守られた独占的な情報基盤にはならず、2036年以降の高成長まで保証するものではない。
- 高卒採用媒体・就職イベント:数量 1,875(有料掲載企業数(社、年度末契約社数を年間収益の近似数量に使用))× 価格 0.02(有料企業1社当たり年間採用媒体・イベント売上高(億円、名目))→ 売上 34 億円・営業利益 6 億円。有料企業1,875社。中期計画に近い顧客基盤を維持し、契約当たり売上が増える。
- 求人広告・採用広報の企画制作:数量 630(制作案件数(件、年間推定))× 価格 0.01(1案件当たり平均制作売上高(億円、名目))→ 売上 6 億円・営業利益 1 億円。案件数は現在推定の90%。制作のAI化と単価抑制を含む。
- 高校訪問・採用事務・人事業務代行:数量 155(年間委託契約換算数(契約、推定))× 価格 0.03(1委託契約換算当たり年間売上高(億円、名目))→ 売上 5 億円・営業利益 1 億円。事務代行の契約換算数量は86%。効率化で採算を確保。
- 若手社員研修・第二新卒支援その他:数量 450(研修・紹介等の案件換算数(件、年間推定))× 価格 0.01(1案件換算当たり平均売上高(億円、名目))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。研修案件換算は90%。対面研修の需要が一定程度残る。
- 進学支援ガイダンス・進路情報:数量 1,530(高校内進学イベント・ガイダンス開催回数(回、年間))× 価格 0.01(1回当たり進学支援事業売上高(億円、名目、媒体収益を含む換算))→ 売上 12 億円・営業利益 2 億円。買収前の開催数から10%減り、進路相談会を採算重視で運営。
倍率:資本コスト8.25%、g_long0.8%、堀の超過利益残存割合1/2。余剰現金18億円の税後受取利息0.252億円を除いた事業純利益5.368億円と、事業自己資本19.8億円から事業ROE27.1%、増分RONIC約17.7%を得る。正当化PERの上限は約12.82倍であり、12.81倍を採用する。余剰現金は18億円の50%に当たる9億円を加える。
確率:学校向けツールの導入拡大と進学事業の営業連携には現実の出発点がある。ただし、中期計画の実行と収益性の維持が必要であり、20%とした。
中立 30% 採用媒体は育つが、人的サービスの縮小が相殺する 利益 3 億円 · PER 12.6 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,443 円42 億円
学校と企業を結ぶ採用支援は2036年にも必要とされる。高卒採用を自力で進める人員のいない中小企業は多く、ジンジブは学校との関係を維持しながら有料掲載企業を1,500社まで増やす。採用媒体と対面イベントは残るが、契約単価は競合の存在を考えると物価上昇ほど強くは引き上げられない。
求人原稿や採用サイトの制作はAIエージェントが大幅に省力化する。高校訪問や応募受付の代行、人事研修も企業の内製化が進み、従来の工数をそのまま販売できなくなる。進学ガイダンスは高校での対面需要が残るが、買収前の約1,700回から1,190回へ減る。進学先が学生獲得に支出する予算は続くものの、イベント運営の省力化による単価競争も起こる。
会社は採用媒体に経営資源を寄せ、採算の低い制作や代行案件を整理する。2029年の会社計画に比べると2036年の売上高は小さくなるが、収益を残す分野に集中することで営業利益率は改善する。追加の大型買収はなく、利益の多くは自己資本に積み上がる。学校網には価値があるものの、強い値上げ力や独占的な情報基盤は得られず、成熟した中堅の人材支援企業として存続する。
- 高卒採用媒体・就職イベント:数量 1,500(有料掲載企業数(社、年度末契約社数を年間収益の近似数量に使用))× 価格 0.02(有料企業1社当たり年間採用媒体・イベント売上高(億円、名目))→ 売上 24 億円・営業利益 4 億円。有料掲載1,500社。無料企業からの転換と地域拡大は進むが、2029年の会社目標を下回る。
- 求人広告・採用広報の企画制作:数量 455(制作案件数(件、年間推定))× 価格 0.01(1案件当たり平均制作売上高(億円、名目))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。AIエージェント代替の人月型。数量は現在推定の65%、価格は約1.20倍。
- 高校訪問・採用事務・人事業務代行:数量 120(年間委託契約換算数(契約、推定))× 価格 0.03(1委託契約換算当たり年間売上高(億円、名目))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。AIエージェント代替の人月型。数量は約0.67倍、価格は約1.20倍。
- 若手社員研修・第二新卒支援その他:数量 340(研修・紹介等の案件換算数(件、年間推定))× 価格 0.01(1案件換算当たり平均売上高(億円、名目))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。AIエージェント代替の研修型。数量は0.68倍、価格は約1.23倍。
- 進学支援ガイダンス・進路情報:数量 1,190(高校内進学イベント・ガイダンス開催回数(回、年間))× 価格 0.01(1回当たり進学支援事業売上高(億円、名目、媒体収益を含む換算))→ 売上 10 億円・営業利益 2 億円。買収前の年間1,700回から0.70倍。単価は2027年計画の換算価格から約1.33倍で、10年の物価上昇以内。
倍率:資本コスト8.25%、g_long0.8%、通常の堀で残る割合1/2。余剰現金12億円の税後利息0.168億円を除いた事業純利益3.102億円と事業自己資本16.8億円から事業ROE18.46%を得る。増分RONICは約13.36%となり、正当化PERの上限は約12.62倍。事業純利益に12.61倍を掛け、余剰現金12億円の50%である6億円を加える。将来のAI代替による低成長はg_longに反映済みで、倍率をさらに手で割り引かない。
確率:高卒採用における学校との関係は残るものの、2029年計画の全面達成後に同じ成長率が続くとは限らない。採用媒体の契約増加と周辺工数の減少を合わせた中心見込みとして30%とした。
やや悲観 27% 学校網は残るが、単価競争で稼ぐ力が弱まる 利益 0 億円 · PBR 2.4 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 461 円13 億円
学校の進路指導そのものはなくならないが、企業の採用予算は厳しくなる。採用媒体に掲載する有料企業は950社まで減り、AIが求人情報を自動で比較することで、企業は特定の媒体へ支払う理由を見直す。対面イベントは一定数残るものの、運営費を十分に回収できない地域では開催を縮小する。
採用広告の制作と事務代行は、単純な仕事ほど企業自身で処理できるようになる。顧客企業からの値下げ要求が強まり、制作や代行の実質案件数も大きく減る。進学ガイダンスは年間850回へ縮小し、大学や専門学校との関係が残る地域だけを維持する。買収によって増えた従業員や管理体制の固定費が利益を圧迫する。
会社は早期に事業を選別し、人員配置を見直して営業赤字を避ける。積み上げてきた現金の一部は事業維持に使うが、新たな大型買収は控え、流動性の高い資産を可能な限り守る。配当を出せる年は限られ、事業利益だけでは高い価値を認めにくい。それでも純現金と回収可能な資産が下値を支え、会社は規模を縮めながら存続する。
- 高卒採用媒体・就職イベント:数量 950(有料掲載企業数(社、年度末契約社数を年間収益の近似数量に使用))× 価格 0.01(有料企業1社当たり年間採用媒体・イベント売上高(億円、名目))→ 売上 13 億円・営業利益 1 億円。有料企業は950社へ縮小。契約単価の引き上げは限定的。
- 求人広告・採用広報の企画制作:数量 350(制作案件数(件、年間推定))× 価格 0.01(1案件当たり平均制作売上高(億円、名目))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。AI制作の普及で案件は半減。単価競争で採算が薄くなる。
- 高校訪問・採用事務・人事業務代行:数量 95.0(年間委託契約換算数(契約、推定))× 価格 0.03(1委託契約換算当たり年間売上高(億円、名目))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。代行案件は約53%に減り、固定人員の負担が重くなる。
- 若手社員研修・第二新卒支援その他:数量 250(研修・紹介等の案件換算数(件、年間推定))× 価格 0.01(1案件換算当たり平均売上高(億円、名目))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。研修の標準化で案件数と実質価格が低下。
- 進学支援ガイダンス・進路情報:数量 850(高校内進学イベント・ガイダンス開催回数(回、年間))× 価格 0.01(1回当たり進学支援事業売上高(億円、名目、媒体収益を含む換算))→ 売上 6 億円・営業利益 1 億円。進学イベントは買収前の半分。開催網を縮小して利益を残す。
倍率:営業利益0.54億円、純利益0.31億円に対し、余剰現金3億円の税後受取利息0.042億円を除いた事業純利益は0.268億円にとどまる。ROEが資本コスト8.25%を下回るため、稼ぐ力と株主に戻る余剰現金の合計では約4.8億円が上限となる。一方、基準期の純現金12.6億円と換金可能な営業資産0.8億円から資産の床13.4億円を認める。表示上のPBR2.35倍は床13.4億円を基準期2026年3月期の自己資本5.7億円で割った値であり、2036年の自己資本13.4億円に掛けた倍率ではない。将来の自己資本は資本の流れとROEの検算にのみ使い、現金3億円も床へ重ねて足さない。
確率:2025年3月期の最終赤字と直近の利益率の変動は、売上が増えても利益を守り切れない事実を示す。買収後の固定費と資本配分の不確実性もあり、27%を割り当てる。
悲観 14% AIと競争に中抜きされ、買収した事業の価値も失う 利益 −2 億円 · PBR 2.3 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 447 円13 億円
当初の数年間は既存の求人媒体契約と買収した進学事業が一定の利益を生み、還元しなかった利益を社内に蓄える。しかし2030年代に入ると、企業と学校がAIエージェントで求人情報を直接やり取りできるようになり、ジンジブの媒体を経由する必然性が弱まる。企業は無料掲載やハローワーク、地域媒体、直接採用を組み合わせ、有料掲載企業は550社まで減る。
求人広告の制作、応募受付、学校訪問に関わる事務作業は企業の内製化や自動化が進む。研修も標準的な内容は企業が自ら作成するようになり、不採算案件が残る。進学ガイダンスは学校や大学の直接開催が増え、買収前の3割まで減少する。会社は費用削減を急ぐものの、経営基盤の縮小に固定費の調整が追いつかず、2036年3月期には営業赤字と最終赤字に陥る。
経営は大型投資を停止し、赤字部門の整理やのれんの減損を進める。学校との関係に以前ほどの収益価値は認められず、利益成長による評価は失われる。一方、初期の内部留保と資産保全策により会社そのものは存続し、現金と回収可能な営業資産の一部が残る。この筋書きでは事業を高い倍率で評価せず、純現金を起点とした処分可能資産の床を株主価値の中心とする。
- 高卒採用媒体・就職イベント:数量 550(有料掲載企業数(社、年度末契約社数を年間収益の近似数量に使用))× 価格 0.01(有料企業1社当たり年間採用媒体・イベント売上高(億円、名目))→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。有料企業が大幅に減少し、採用広告の仲介価値が薄れる。
- 求人広告・採用広報の企画制作:数量 250(制作案件数(件、年間推定))× 価格 0.01(1案件当たり平均制作売上高(億円、名目))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。AIによる制作業務の代替が進み、不採算案件が残る。
- 高校訪問・採用事務・人事業務代行:数量 65.0(年間委託契約換算数(契約、推定))× 価格 0.02(1委託契約換算当たり年間売上高(億円、名目))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。委託の内製化が進み、縮小した売上では人員の固定費を吸収できない。
- 若手社員研修・第二新卒支援その他:数量 170(研修・紹介等の案件換算数(件、年間推定))× 価格 0.00(1案件換算当たり平均売上高(億円、名目))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。汎用的な研修の需要が失われ、固定費の負担が大きい。
- 進学支援ガイダンス・進路情報:数量 510(高校内進学イベント・ガイダンス開催回数(回、年間))× 価格 0.01(1回当たり進学支援事業売上高(億円、名目、媒体収益を含む換算))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。進学イベントは買収前の30%。事業単体の利益を確保できない。
倍率:2036年3月期は営業赤字約1.81億円、純損失1.6億円となるため、利益倍率では価値を測らない。基準期2026年3月期の純現金12.6億円に換金可能な営業資産0.4億円を加え、のれんや繰延税金資産を除いた処分可能資産の床13.0億円を採用する。PBR2.28倍はこの床を基準期の自己資本5.7億円で割った換算倍率であり、2036年の自己資本10.0億円へ掛けるものではない。2036年時点の自己資本10.0億円は初期の利益留保と後期の損失・減損を反映した資本の流れの結果である。同時点の価値と自己資本の比率は1.30倍だが、床の計算にその将来自己資本を使っていない。
確率:単なる景気の谷ではなく、広告と人的支援の両方で競争力を失い、買収のれんも毀損する複合的な構造変化とする。存続可能性はあるため破綻を既定とせず、14%とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
高卒採用媒体・就職イベント
ジョブドラフトNaviの有料掲載、ジョブドラフトFesなどの対面イベント、自社の高校生向け採用媒体に関する収益。
| 数量有料掲載企業数(社、年度末契約社数を年間収益の近似数量に使用) | 価格有料企業1社当たり年間採用媒体・イベント売上高(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,026 | 0.01 | 14 | 1 |
| 10 年後 中立 | 1,500 | 0.02 | 24 | 4 |
取り方:会社の決算説明資料で有料掲載企業1,026社、採用領域売上比率51.6%を確認した。26.87952億円×51.6%=13.86983億円を1,026社で割った単価であり、純粋な掲載料ではなくイベントやオプションを含む混合単価である。企業数は年度末の値で、年間平均契約社数との差は未開示。2026年の事業別営業利益は開示されないため、部門利益1.30億円は全社利益に整合する推定配賦である。市場占有率は会社公表の潜在高卒採用支援市場679億円と、採用企業数の統計を補助的に用いるが、679億円は実際の広告支出の実測値ではない。AIエージェント代替は制作部分と分け、学校への接点を持つ自社媒体型として扱う。
求人広告・採用広報の企画制作
求人原稿、採用パンフレット、企業紹介動画、イベント装飾、採用ホームページの制作。
| 数量制作案件数(件、年間推定) | 価格1案件当たり平均制作売上高(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 700 | 0.01 | 5 | 1 |
| 10 年後 中立 | 455 | 0.01 | 4 | 0 |
取り方:企画制作の売上構成比18.7%から26.87952億円×18.7%=5.02647億円と算定した。制作案件数と平均単価の会社開示がないため、有料掲載企業1,026社の約7割に相当する年間700件を仮の実質数量とし、平均単価を約71.8万円と逆算した。複数制作を一案件として数える近似であり、実際の受注件数を示すものではない。競合する地域の採用広報サービスには冊子、Web、動画の単品料金が存在するが、サービス範囲が異なるため直接の値付け根拠には用いない。営業利益は推定配賦。AIエージェント代替の型は人月・工数型とする。
高校訪問・採用事務・人事業務代行
高校訪問、求人票発送、応募受付、人事業務BPOと、人事部パック等の人的支援。
| 数量年間委託契約換算数(契約、推定) | 価格1委託契約換算当たり年間売上高(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 180 | 0.03 | 5 | 0 |
| 10 年後 中立 | 120 | 0.03 | 4 | 0 |
取り方:代行支援の売上構成比18.2%から26.87952億円×18.2%=4.89207億円と算定した。会社は委託先の実数と単価を公表していないため、有料掲載企業の約18%に相当する180契約換算を仮定し、単価約271.8万円を導いた。高額案件と小口案件の混合値であり、実契約件数ではない。人事部パックなどの拡大計画は参考にしたが、既存収益の正確な内訳は不明である。営業利益は推定配賦。AIエージェント代替は人月・工数型とする。
若手社員研修・第二新卒支援その他
ルーキーズクラブ、ジョブドラフトNext、若手社員の定着・育成支援など。
| 数量研修・紹介等の案件換算数(件、年間推定) | 価格1案件換算当たり平均売上高(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 500 | 0.01 | 3 | 0 |
| 10 年後 中立 | 340 | 0.01 | 3 | 0 |
取り方:その他売上比率11.5%から26.87952億円×11.5%=3.09114億円と算定した。商品別の売上・受講人数・紹介件数は公開資料だけでは分離できないため、研修や支援の複合案件500件換算、平均61.8万円という仮説で数量と単価を分けた。これはサービス価格の開示値ではなく、研修と人材紹介を束ねた経済的な近似である。営業利益は推定配賦。AIエージェント代替は研修を中心に人月・工数型とする。
進学支援ガイダンス・進路情報
2026年4月に連結子会社化したジンジブキャリアによる高校内進学ガイダンス、進路媒体、進学先の広告支援。
| 数量高校内進学イベント・ガイダンス開催回数(回、年間) | 価格1回当たり進学支援事業売上高(億円、名目、媒体収益を含む換算) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.0 | 0.01 | 0 | 0 |
| 10 年後 中立 | 1,190 | 0.01 | 10 | 2 |
取り方:2026年3月期は連結対象外なのでジンジブの実績売上・利益はゼロ。買収前の事業は同年度に約60人で約1,700回の進学イベント・ガイダンスを実施したと会社が開示している。2027年3月期の中期計画上の進学支援事業売上10.25億円を1,700回で割り、約60.3万円を初期の換算単価にした。この単価には進路媒体等も含むため、単発のイベント出展料金ではない。学校内の現場開催を要するが、企画と運営は人的工数に依存するため、AIエージェント代替の人月・研修型として中立数量に制約をかける。
リスクと懸念
AIエージェント代替による制作・代行・研修の縮小
採用広報の制作、求人票発送や応募受付の代行、若手社員の研修は、人が作業する時間や案件ごとに料金を得る性質が強い。AIエージェントが企業の代わりに情報を作成し手続きを進めれば、必要工数と外注単価が下がる。中立では各事業の数量を10年間で現在の約65〜70%へ縮小させたが、企業の内製化がさらに進めば利益は一段と減る。
学校との関係が独占的な収益基盤でない
学校向けシステムの導入校数は増えているものの、企業が料金を上げられても契約を続ける証拠とは異なる。法令上の記録を独占しているわけではなく、学校は複数の求人情報源を利用できる。学校網を広げるために営業人員やイベント開催費が増え続ければ、見かけの規模は大きくなっても株主が受け取る利益は増えない。
進学事業の買収とのれんの減損
2026年4月の買収で進学支援事業が連結され、学校との接点と売上が増えた。しかし、買収前から事業が持っていた開催実績を、ジンジブ自身が創出した有機的成長と混同してはならない。高校網の相互利用や本社費の削減が進まず、大学や専門学校の広告予算も細れば、買収のれんの減損が自己資本に及ぶ。
前受金を含む現預金と薄い自己資本
2026年3月期末の純現金は約12.6億円あるが、その全額が株主へ自由に配れるわけではない。2026年6月末には契約負債約10.6億円があり、顧客からの前受金にはサービス提供義務が対応する。悲観の価値には純現金を起点とする資産の床を認めたが、契約履行や事業整理の支出が予想を超えれば実際の回収額は下回り得る。自己資本が薄いことも資金流出への耐性を弱める。
利益率の変動と計画の達成難度
2024年3月期から2026年3月期にかけて営業利益率は大きく変わり、2025年3月期には最終赤字となった。2029年3月期の営業利益率13.4%という目標には、販売増加だけでなく人件費や管理費の抑制が必要である。営業人員、学校イベント、情報システムへの投資が増え続ければ、売上成長が利益成長に変わらない可能性がある。
希薄化と少数株主への現金還元
2026年3月期末の新株予約権には最大22万2,800株の潜在株式があり、事業が成功した場合に既存株主の取り分が減る。創業者の持分も大きく、上位10株主の保有比率は高い一方、明確な数値付きの株主還元方針はない。利益が積み上がっても、追加買収や事業投資に使われ、少数株主に還元されない可能性を織り込む必要がある。
高卒就職者数の減少と採用制度の変更
少子化で高校卒業時に就職する人数の母集団は長期的に減りやすい。採用困難さが増せば企業の支援需要は保たれるが、求人企業の負担できる採用費には限度がある。また、高卒採用は学校や教員が重要な役割を担う制度であり、応募方法や学校訪問の慣行が変われば、同社が提供する仲介サービスの役割も変わる。
今後の分かれ目
- 有料掲載企業数が2029年3月期の1,950社計画に達し、同時に採用領域の顧客当たり売上も改善したら
- 学校網が実際の値決め力と販売力へ変わりつつある証拠になる。中立の採用媒体数量と営業利益率を上方修正し、楽観側の確率を高める。
- 進学支援事業の年間開催件数が買収前の約1,700回を維持しながら、連結の営業利益率が継続的に改善したら
- 買収による学校網の共有や管理費削減が機能している可能性が高まる。買収事業の収益価値を高め、のれん減損の懸念を弱める。
- 求人原稿制作や応募受付のAI化が進み、企画制作と代行支援の受注件数が中立の縮小前提をさらに下回ったら
- 売上の減少に見合う費用削減が行われているかを先に確認する。費用が固定化していれば、やや悲観と悲観の利益率へ下方修正する。
- 学校向けシステムの利用校数だけ増え、有料掲載企業の継続率や契約単価が改善しなかったら
- 学校接点の拡大が株主価値の拡大を意味していないと判断する。自社媒体部分の堀と長期成長率を見直し、成長投資の採算を厳しく評価する。
- 契約負債の増加を上回る営業キャッシュフローが継続し、余剰資金による配当または自社株買いの具体的な数値方針が示されたら
- 現在は50%しか認めていない将来余剰現金の株主帰属価値を見直せる。現金が顧客からの前受金ではなく、事業から生まれた自由資金であることが条件となる。
- 買収事業に関連してのれん減損が生じ、就職支援事業も営業赤字になったら
- 成長投資の追加利回りが資本コストを下回った証拠として扱う。悲観側の確率を高め、帳簿の自己資本ではなく換金可能な資産と残存する収益力から再評価する。
- 新株予約権が大量に行使され、会社が払込資金を高収益の成長投資に使えなかったら
- 既存株主の取り分が希薄化する一方、追加の会社価値が十分に生まれないため、適正価値を引き下げる。発行済株式数と潜在株式数を継続的に確認する。
見ておくもの
- ジョブドラフトNaviの有料掲載企業数、無料掲載企業数、有料転換と継続契約の推移
- ジョブドラフトFesの開催回数と、イベント開催当たりの売上・利益
- ジョブドラフトTeacherとジョブドラフトCareerの導入校数と実際の利用状況
- 採用領域、企画制作、代行支援、その他の売上構成比の変化
- ジンジブキャリアの進学ガイダンス開催回数、部門営業利益と連結調整費用
- 2029年3月期計画の売上高56.04億円、営業利益7.50億円に対する進捗
- 営業キャッシュフロー、契約負債、純現金、のれん、繰延税金資産の推移
- 採用・人事支援へのAIエージェント導入後の契約件数、実質工数、顧客単価
- ストックオプションの行使状況、発行済株式数、配当・自己株式取得方針
倍率と資本コストの決め方
数量は有料掲載企業数、制作案件換算数、代行契約換算数、研修案件換算数、進学イベント開催回数で定義し、物価と競争による名目価格の変化を別に計算した。制作・代行・研修・進学ガイダンスの中立数量はAIエージェント代替の型の範囲内に収めた。楽観から中立の倍率は市場の過去PERやPBRではなく、資本コスト8.25%、超過ROEの残存割合、長期名目成長率0.8%から算出した。余剰現金の税後利息と帳簿価値の二重計上を避け、戻り方50%と新株予約権による希薄化を反映した。やや悲観と悲観は事業の稼ぐ力が弱くなるため、純現金12.6億円を起点とした処分可能資産の床が優先する。悲観の時価総額13.0億円は純現金を下回らず、やや悲観の13.4億円以下である。床にはのれんや繰延税金資産を含めず、契約負債に伴う役務履行と費用のリスクも考慮した。新リース会計基準で貸借対照表の表示が変わっても家賃の実質負担が消えたとは扱わない。現在の時価総額を倍率設定の根拠にはしていない。悲観側のPBR表示値は基準期自己資本5.7億円を分母として算定し、やや悲観2.35倍、悲観2.28倍とした。いずれも将来の自己資本ではなく、純現金と換金可能資産から得た床に対応する。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本資本コスト7.5%に、利益変動+0.5%、値決め力+0.5%、純現金による負債調整-0.25%、寿命0%を加え、8.25%とする。規模と株価βによる上乗せは用いない。