結論
トーカイは、介護用品のレンタルと病院・ホテル向けのリネン、調剤薬局を営む東海地方の会社だ。派手さはないが、高齢社会の「裏方」として地域に根を張っている。筆者の結論は、今の値段はやや割安というものだ。理由は 2 つある。事業の需要が景気に左右されにくいこと。そして純現金が時価総額の 4 分の 1 を占め、会社がそれを株主へ戻す方向に舵を切ったことだ。
稼ぎの柱は健康生活サービスだ。売上の半分、営業利益の 7 割を担う。なかでも介護用品レンタルのシルバー事業は、福祉用具貸与の市場の約 5% を握り、会社は 10% 超を狙う。調剤は売上の 4 割を占めるが、営業利益率は 4% に届かない。薬価と調剤報酬という国の決める価格に縛られ、今年度の改定で減益になる計画だ。
10 年の見立ては地味である。売上は年 3% 台、利益は年 4〜5% で伸びる。福祉用具の貸与価格も薬価も、国が上限や改定で決める。物価が 3% で上がっても、価格はそれに遅れる。人件費は物価どおりに上がるので、利益率は大きくは上がらない。それでも需要は 2040 年代まで細らず、純現金と大きな還元が支えになる。
中立の筋書きでは、10 年後の純利益は 97 億円ほど、ROE は 9% 台に乗る。そこから割り戻した価値は、今の時価総額を 3 割ほど上回る。悲観の確率も含めて重ねると、差は 1 割あまりに縮む。確率をさらに悲観側へ寄せれば、差は数%まで縮み、適正の範囲に入る。買収した会社の統合と、制度改定の行方次第で、上にも下にも振れる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、トーカイは「地味だが続く事業」を持つ会社だ。介護と医療の裏方は、景気が悪くても止まらない。純現金の厚い財務は、安全域として評価できる。
ただし、強い堀はない。公定価格の事業が大半で、売値の主導権は国が握る。介護用品のレンタルは資材を使い回す商売で、資材の回転が稼ぐ力を左右する。調剤は薬価に利益を削られやすく、ここで稼ぐ力を伸ばすのは難しい。オーナー目線では、利益のうち再投資に回る分が多く、株主の手元に残るお金は見かけより少ない。
資本の使い方は、変わり始めた。ROE が資本コストに届かないことを会社が認め、自社株買いに動いた。この流れが続くなら、評価できる。一方、買収は規模が小さいので失敗の傷も浅い。ただし、買った会社を統合して利益に変える力は、これから試される。
安全域は、今の値段より純現金と還元から出てくる。中立の筋書きでは、割り戻した価値は今を 3 割ほど上回る。悲観まで重ねると差は 1 割あまりに縮む。大きな安全域とは言えないが、払う値段に見合う中身はあると筆者は考える。
何で稼ぐ会社か
トーカイの事業は 3 つに分かれる。健康生活サービス、調剤サービス、環境サービスだ。2026 年 3 月期の売上は健康生活が 818 億円、調剤が 629 億円、環境が 148 億円である。
健康生活は、医療機関・介護施設・ホテルに寝具リネンを貸し、洗って届ける仕事が土台だ。病院向けには給食の受託や看護補助、手術用リネンの再利用サービスも提供する。介護用品のレンタル(シルバー事業)は、ベッドや車いすを介護保険で貸し出す。全国に 104 の拠点がある。レンタルは「貸して、戻して、洗い直してまた貸す」ストック型の商売で、資材の回転が利益を決める。
調剤は、岐阜を中心に「たんぽぽ薬局」を 161 店展開する。年間の来局者は 70 万人にのぼる。薬局の店内にシルバー事業の小さな営業所を置く計画もあり、薬と介護用品の入り口を 1 つにしようとしている。
環境は、ビルの清掃と、玄関マットやモップを貸すリースキンだ。売上は小さいが、景気の影響を受けにくい。セグメント利益の約 7 割は、健康生活から出ている。
優良さと弱いところ
強みは、医療と介護の両方の現場に入り込んでいることだ。病院にリネンと給食を納め、同じ地域の介護施設に介護用品を貸し、薬局で処方箋を受ける。顧客基盤が重なるので、営業が 1 度で済む。工場と配送網は地域ごとに密度を持つ。新しく入る会社が同じ網を組むには時間がかかる。
堀は、強いとは言えない。介護用品は全国展開の競合が多く、フランスベッドなどと貸与価格を競う。貸与の価格には上限があり、全国平均に 1 標準偏差を足した水準を超えられない。病院のリネンは、首位のワタキューセイモアの存在が大きい。調剤は、大手チェーンと個人薬局のあいだに挟まれ、シェアは小さい。
資本効率は低い。ROE は 7% 前後で、中計は ROE 8% を最重要目標に置いた。会社自身が「資本コストを下回る」と認めている点は評価できる。財務は純現金で、自己資本比率は 73% と厚い。ただし厚い自己資本は、ROE を押し下げてきた。2026 年 3 月期の総還元性向は 140% を超えた。ここから、資本の使い方は変わり始めたと筆者は見る。
弱みは、公定価格の事業が多いことだ。調剤と介護用品、病院向けの多くは、価格を国や自治体が決める。人件費が上がっても、売値を自由には上げられない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
トーカイの市場は、高齢者の人口に結びついている。65 歳以上の人口は 2043 年ごろまで増え、75 歳以上はさらにその先まで増える。10 年のうちは、介護と医療の需要が細る心配はほぼない。
福祉用具貸与の市場は、費用額で 4,000 億円台、利用者は約 280 万人だ。事業所は約 7,800 ある。大手は少なく、小さな事業者が多い。このため、買収による再編の余地が大きい。一方で、医療・介護費の財源は逼迫しており、給付の範囲が見直される可能性は消えない。数量は増えても、貸与でなく購入や自費に流れる心配がある。
病院向けのリネンは、国内で 4,700 億円規模とされ、首位のワタキューセイモアが長く先頭にいる。病院の数は減る方向だが、介護施設とホテルが数量を補う。ホテル向けは、訪日客の増加で伸びている。電気・ガス代の上昇は、洗濯工場の利益を直接削る。トーカイは今期、全社で 2.3 億円のコスト増を見込む。
調剤は、国全体で 8 兆円を超える市場に 6 万を超える薬局がある。大手でも店舗網の 1〜2% にすぎず、再編が続く。2026 年度の調剤報酬の改定率は 0.08% と小さく、薬価は毎年下がる。薬剤師の人件費が上がるなか、調剤の利益率は 4% 前後に張りつく。10 年先の分かれ目は、国が介護と調剤の価格を物価に合わせて上げるかどうかである。
資本政策と M&A
資本政策は、この 1 年で大きく変わった。2025 年 11 月に自社株買いを実施し、2026 年 3 月期の総還元性向は 140% を超えた。2027 年 3 月期からは、配当性向を 35% から 40% へ上げ、累進配当を導入する。増配の計画で、配当性向は 40% を超える見込みだ。
中計は、3 年間で成長投資 250 億円と、総還元性向 70% 超を並べた。前の中計では、買収に 99 億円を使い、介護用品レンタルの会社を中心に 17 件を手がけた。介護センター花岡の買収は 48 億円、リハビリデイサービスとドラッグストアの mik japan は 24 億円だった。
筆頭株主は小野木興産で、約 16% を持つ。政策保有株は 12 銘柄あり、全部を継続保有すると判断している。時価総額が 800 億円台と小さく、純現金も厚いので、買収される側になる可能性も小さくないと筆者は見る。
還元の点検(P3 2026-10-19):中計の総還元性向70%超・配当性向40%。中立の還元は約65%でその範囲。直さず。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
高齢者の人口は 2040 年代まで増え、介護と医療の裏方である事業の需要は景気に左右されない。介護用品の貸与市場は小さな事業者が多く、買収で再編できる。トーカイは市場の約 5% から 10% 超を狙っており、中計は買収に 100 億円を充てる。薬局の店内に営業所を置くやり方は、出店費用を抑えながら空白地を埋める。
資本政策の転換も大きい。会社は ROE が資本コストを下回ると認め、総還元性向 70% 超を掲げた。2026 年 3 月期の総還元性向は、自社株買いを含めて 140% を超えた。純現金は時価総額の 4 分の 1 あり、還元の余力は十分だ。
病院向けも伸びる。手術用リネンを再利用する「ネクサージ」や、セントラルキッチンを使う完全調理品の給食は、人手不足に悩む病院を助ける高付加価値の受託になる。ホテルのリネンは訪日客の増加で需要が強く、工場の増強で取り込める。営業利益は過去最高を更新し、中計の目標達成も視野に入った。
慎重な見方
価格を決めるのは国だ。福祉用具の貸与価格には上限があり、調剤は薬価が毎年下がる。人件費は物価で上がるのに、売値は追いつかない。調剤は売上の 4 割を占めるのに、営業利益率は 4% に届かず、2027 年 3 月期は改定で減益になる計画だ。
中計の営業利益目標は 95 億円と、今の水準から 1 億円しか増えない。ROE の目標も 8% と低く、資本コストを大きく下回る。買収は小さな案件の積み上げで、統合の成果はまだ見えない。設備投資は今期 58 億円と前年の 5 割近く増え、利益を圧迫する。
電気・ガス代の上昇は洗濯工場を直撃し、ダストコントロール商品の市場も厳しい。軽度者の給付見直しや、貸与から販売への移行が進めば、シルバー事業の成長の前提が崩れる。純現金が厚いのは、使い道を見つけられていない裏返しでもある。
人手不足は、洗濯・配送・清掃・薬剤師のすべてで同時に続く。賃金は物価で上がり、外国人材や清掃ロボットで省人化を進めても、投資が先に出て効果は遅れる。買収の件数を積んでも、介護用品の会社は小さく、全社の利益を動かす力は限られる。ROE が 8% に届いても、資本コストにはまだ届かない。
どちらに重みを置いたか
事業の安定は強気の見方が優勢だが、価格を国が決める弱さを慎重な見方が突いている。中立では、利益は物価に遅れて年 4〜5% で伸び、ROE は 9% 台に乗ると置いた。強気寄りに確率を寄せなかったのは、公定価格の事業が全体の 8 割を占め、人件費の上昇を転嫁しきれない筋書きの重みが大きいからだ。
悲観側の確率は、強気側よりやや厚くした。それでも、純現金と還元の方針が下値を支える。結論は、今の値段はやや割安というものだ。ただし確率を悲観へさらに寄せれば、適正の範囲に入る。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 4,362 円1,348 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,543 円477 億円)。 今の値に割り戻すと 3,254 円1,005 億円、今との差 +16.2%、 期待の年率 +7.7%(資本コスト 7.2%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 8,505 円2,628 億円 | 1,958 円605 億円 | +273.6% | +14.1% | 628 円194 億円 |
| やや楽観 | 19% | 6,586 円2,035 億円 | 1,812 円560 億円 | +199.8% | +11.6% | 1,596 円493 億円 |
| 中立 | 36% | 5,187 円1,603 億円 | 1,670 円516 億円 | +144.8% | +9.4% | 2,468 円763 億円 |
| やや悲観 | 26% | 2,388 円738 億円 | 1,356 円419 億円 | +33.6% | +2.9% | 973 円301 億円 |
| 悲観 | 13% | 865 円267 億円 | 981 円303 億円 | −34.1% | −4.1% | 240 円74 億円 |
| 加重平均 | 100% | 4,362 円1,348 億円 | 1,543 円477 億円 | +110.8% | +7.7% | 5,905 円1,825 億円 |
今の株価時価総額 2,801 円866 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.2% を下回るほど割高。
楽観 6% 高齢者の需要に乗り、シルバーが市場の 1 割を握る 10 年 利益 144 億円 · PER 17.7 倍 · 株価時価総額 8,505 円2,628 億円
シルバー事業は買収と出店で福祉用具貸与の市場の 1 割近くを握り、利用者は 31 万人に届く。貸与価格の上限が実勢の値上がりに沿って見直され、物価並みに単価が上がる。病院・介護施設向けでは、手術用リネンの再利用「ネクサージ」や完全調理品の給食が高付加価値の受託として広がる。ホテルのリネンも工場の増強で取り込む。
調剤は在宅と施設向けが伸び、薬剤師の生産性が上がって利益率が少し戻る。清掃は清掃ロボットで省人化が進む。本社費は物価で増えるが、売上の伸びがそれを上回る。純現金は買収と還元に使われ、ROE は 12% 台に乗る。トーカイが介護と医療の裏方として地域に根づく、最もうまくいく 10 年である。
- シルバー(介護用品レンタル・販売・住宅改修):数量 31.0(福祉用具の利用者数(万人・推定))× 価格 21(1 人あたり年額(万円・推定))→ 売上 665 億円・営業利益 100 億円。利用者 31.0 万人 × 年額 21.4 万円
- 病院・施設・ホテル向けサービス(リネン・給食・看護補助ほか):数量 16.5(契約先の床数相当(万床・推定))× 価格 53(1 床あたり年額(万円・推定))→ 売上 878 億円・営業利益 92 億円。契約先の床数相当 16.5 万床 × 年額 53.2 万円
- 調剤(たんぽぽ薬局・在宅調剤・ドラッグストア):数量 741(処方箋の枚数(万枚・推定))× 価格 1.19(1 枚あたり売上(万円))→ 売上 880 億円・営業利益 37 億円。処方箋 741 万枚 × 1 枚 1.19 万円
- 環境(清掃・リースキン):数量 3.9(契約先の件数(万件・推定))× 価格 54(1 件あたり年額(万円・推定))→ 売上 210 億円・営業利益 19 億円。契約先 3.9 万件 × 年額 53.7 万円
倍率:事業の純利益 143 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.5% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.9%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.7 倍 + 余った現金(戻り方込み)100 億円。全体の PER 17.73 倍、時価総額 2,628 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:シルバー事業が目標の 10% 超に届き、病院・ホテル向けも伸びる姿。介護報酬や調剤報酬が物価を追う前提も要る。公定価格の事業が全体の 8 割を占めるので、条件がそろう確率は低く 6% とした。
やや楽観 19% 介護用品の出店と買収が実り、調剤の逆風を吸収する 10 年 利益 117 億円 · PER 16.7 倍 · 株価時価総額 6,586 円2,035 億円
シルバー事業は計画に近い形で拠点を増やし、利用者は 26 万人台に伸びる。薬局の店内に出す小さな営業所が、出店費用を抑えながら空白地を埋める。
病院向けは価格の適正化が通り、ホテル向けも堅調に推移する。調剤は薬価改定の痛手を在宅で一部取り返し、利益率は横ばいを保つ。
10 年の売上は 2,400 億円ほどになり、営業利益は 170 億円前後。買収で買った会社の統合がおおむね進み、ROE は 11% 近くまで上がる。中計の延長線上にある、無理のない好調だ。
福祉用具の貸与価格は、上限の見直しで物価にやや遅れて上がる。人件費の上昇は、価格の適正化とロボットなどの省人化でほぼ吸収できる。純現金は買収と還元に回り、自己資本は積み上がりすぎない。
- シルバー(介護用品レンタル・販売・住宅改修):数量 26.5(福祉用具の利用者数(万人・推定))× 価格 21(1 人あたり年額(万円・推定))→ 売上 551 億円・営業利益 80 億円。利用者 26.5 万人 × 年額 20.8 万円
- 病院・施設・ホテル向けサービス(リネン・給食・看護補助ほか):数量 16.0(契約先の床数相当(万床・推定))× 価格 52(1 床あたり年額(万円・推定))→ 売上 839 億円・営業利益 81 億円。契約先の床数相当 16.0 万床 × 年額 52.4 万円
- 調剤(たんぽぽ薬局・在宅調剤・ドラッグストア):数量 708(処方箋の枚数(万枚・推定))× 価格 1.14(1 枚あたり売上(万円))→ 売上 807 億円・営業利益 32 億円。処方箋 708 万枚 × 1 枚 1.14 万円
- 環境(清掃・リースキン):数量 3.8(契約先の件数(万件・推定))× 価格 54(1 件あたり年額(万円・推定))→ 売上 204 億円・営業利益 17 億円。契約先 3.8 万件 × 年額 53.7 万円
倍率:事業の純利益 116 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.9% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.1%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.7 倍 + 余った現金(戻り方込み)100 億円。全体の PER 16.74 倍、時価総額 2,035 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:シルバーの買収が計画に近い形で進み、調剤の改定の痛手も和らぐ姿。中計の方向がおおむね実現する筋書きなので、楽観より厚い 19% を置いた。
中立 36% 物価並みの値上げと介護の買収で、利益がゆっくり伸びる 10 年 利益 97 億円 · PER 15.7 倍 · 株価時価総額 5,187 円1,603 億円
福祉用具貸与の市場は 10 年で数量が 1 割ほど増え、単価は公定の上限に引かれて物価より遅れて上がる。トーカイのシルバー事業は買収と出店でシェアを 5% から 7% 台へ伸ばす。
病院・ホテル向けは数量が微増にとどまる。病床は減るが、介護施設とホテルが補う。調剤は処方箋の枚数が買収で少し増え、薬価と技術料は物価ほど上がらない。
本社費も人件費で膨らむため、営業利益率は 5.9% から 6% 台前半へ小幅に上がるだけだ。10 年で営業利益は 140 億円ほどになる。純現金は買収と還元に回り、ROE は 9% 台に乗る。派手さはないが、崩れもしない 10 年である。
- シルバー(介護用品レンタル・販売・住宅改修):数量 22.7(福祉用具の利用者数(万人・推定))× 価格 20(1 人あたり年額(万円・推定))→ 売上 465 億円・営業利益 63 億円。利用者 22.7 万人 × 年額 20.5 万円
- 病院・施設・ホテル向けサービス(リネン・給食・看護補助ほか):数量 15.5(契約先の床数相当(万床・推定))× 価格 52(1 床あたり年額(万円・推定))→ 売上 800 億円・営業利益 72 億円。契約先の床数相当 15.5 万床 × 年額 51.6 万円
- 調剤(たんぽぽ薬局・在宅調剤・ドラッグストア):数量 695(処方箋の枚数(万枚・推定))× 価格 1.09(1 枚あたり売上(万円))→ 売上 759 億円・営業利益 27 億円。処方箋 695 万枚 × 1 枚 1.09 万円
- 環境(清掃・リースキン):数量 3.7(契約先の件数(万件・推定))× 価格 54(1 件あたり年額(万円・推定))→ 売上 199 億円・営業利益 16 億円。契約先 3.7 万件 × 年額 53.7 万円
倍率:事業の純利益 96 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.4% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.3%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.7 倍 + 余った現金(戻り方込み)100 億円。全体の PER 15.72 倍、時価総額 1,603 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:需要は底堅いが、公定価格の天井があり、買収の成果は半分ほど出る姿。最も重みを置く筋書きで 36%。
やや悲観 26% 公定価格の天井に押され、利益が横ばいに終わる 10 年 利益 59 億円 · PER 10.7 倍 · 株価時価総額 2,388 円738 億円
福祉用具の上限価格が 3 年ごとに引き下げ圧力を受け、介護報酬も物価ほど上がらない。シルバー事業はフランスベッドなどとの競争で、シェアが 5% 前後にとどまる。
病院向けは病床の減少と電気・ガス代の上昇で採算が悪化し、給食は不採算の撤退が続く。調剤は薬価の毎年の引き下げと人件費の上昇に挟まれ、利益率が 3% を割る。
本社費の増加を吸収できず、10 年後の営業利益は 90 億円と今とほぼ同じ水準にとどまる。売上は伸びても、物価分は人件費に消える。ROE は 6% 前後で、資本コストに届かない。買収の成果が薄いまま、還元だけが利益を超えて続く姿だ。
- シルバー(介護用品レンタル・販売・住宅改修):数量 15.0(福祉用具の利用者数(万人・推定))× 価格 19(1 人あたり年額(万円・推定))→ 売上 288 億円・営業利益 36 億円。利用者 15.0 万人 × 年額 19.2 万円
- 病院・施設・ホテル向けサービス(リネン・給食・看護補助ほか):数量 14.5(契約先の床数相当(万床・推定))× 価格 48(1 床あたり年額(万円・推定))→ 売上 691 億円・営業利益 55 億円。契約先の床数相当 14.5 万床 × 年額 47.6 万円
- 調剤(たんぽぽ薬局・在宅調剤・ドラッグストア):数量 629(処方箋の枚数(万枚・推定))× 価格 1.05(1 枚あたり売上(万円))→ 売上 657 億円・営業利益 21 億円。処方箋 629 万枚 × 1 枚 1.04 万円
- 環境(清掃・リースキン):数量 3.5(契約先の件数(万件・推定))× 価格 51(1 件あたり年額(万円・推定))→ 売上 180 億円・営業利益 14 億円。契約先 3.5 万件 × 年額 51.3 万円
倍率:事業の ROE 6.2% が k 7.25% 以下なので、正当化 PER の上限は 1÷k = 13.3 倍(ためた利益は額面を下回る価値)。稼ぐ力が資本コストに届かない筋書き。価格を制度に決められ利益が横ばいなので、上限の 8 割に置いた(純利益 59 億円 ÷ k から見ても同じ水準)。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PER 10.67 倍・時価総額 693 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:福祉用具の上限価格と調剤報酬が物価に追いつかず、人件費の上昇を転嫁しきれない姿。公定価格の事業が大半という構造から、強気側より厚い 26% を置いた。
悲観 13% 給付の見直しと薬局の再編で、構造的に稼ぐ力を失う 10 年 利益 24 億円 · PER 9.3 倍 · 株価時価総額 865 円267 億円
軽度者向けの福祉用具の給付が見直され、貸与は購入や自費へ移る。シルバー事業はシェアを失い、貸与単価も上限に押し下げられる。
病院向けは病院の統廃合で数量が減り、価格競争が強まる。調剤は大手とドラッグストアの再編に押され、報酬の引き下げで利益率が 2% まで落ちる。清掃は人手不足で受注を絞る。
10 年後の営業利益は 40 億円まで縮み、純利益は 24 億円にとどまる。配当は維持しようとするが、余力は食われる。稼ぐ力が資本コストをはるかに下回り、事業としての魅力を失う筋書きだ。
売上は物価で膨らんでも、人件費と家賃が先に上がり、利益は残らない。買収した介護用品の会社も、貸与の縮小で重荷になる。この場合、買収される側になる可能性が高まり、会社の価値は純現金と売れる資産に近づく。
- シルバー(介護用品レンタル・販売・住宅改修):数量 12.2(福祉用具の利用者数(万人・推定))× 価格 18(1 人あたり年額(万円・推定))→ 売上 215 億円・営業利益 19 億円。利用者 12.2 万人 × 年額 17.6 万円
- 病院・施設・ホテル向けサービス(リネン・給食・看護補助ほか):数量 13.5(契約先の床数相当(万床・推定))× 価格 44(1 床あたり年額(万円・推定))→ 売上 590 億円・営業利益 35 億円。契約先の床数相当 13.5 万床 × 年額 43.7 万円
- 調剤(たんぽぽ薬局・在宅調剤・ドラッグストア):数量 583(処方箋の枚数(万枚・推定))× 価格 0.95(1 枚あたり売上(万円))→ 売上 554 億円・営業利益 11 億円。処方箋 583 万枚 × 1 枚 0.95 万円
- 環境(清掃・リースキン):数量 3.2(契約先の件数(万件・推定))× 価格 48(1 件あたり年額(万円・推定))→ 売上 154 億円・営業利益 8 億円。契約先 3.2 万件 × 年額 48.1 万円
倍率:事業の ROE 2.7% が k 7.25% 以下なので、正当化 PER の上限は 1÷k = 13.3 倍(ためた利益は額面を下回る価値)。制度と競争で構造的に稼ぐ力が縮む筋書きなので、上限の 7 割に置いた。稼ぐ力(純利益 24 億円 ÷ k)と純現金・売れる資産から値を出し、市場の倍率は使っていない。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PER 9.33 倍・時価総額 267 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:軽度者向けの給付の見直し・薬局の再編・病院数の減少が重なり、稼ぐ力そのものが縮む姿。事業の寿命は 10 年あるが、制度に決められる弱さを織り込んで 13%。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
シルバー(介護用品レンタル・販売・住宅改修)
介護ベッド・車いすなどの貸与と販売、住宅改修。拠点は 104。成長けん引事業と位置づけ、福祉用具貸与の市場の 10% 超を目標にする。
| 数量福祉用具の利用者数(万人・推定) | 価格1 人あたり年額(万円・推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 14.0 | 16 | 224 | 32 |
| 10 年後 中立 | 22.7 | 20 | 465 | 63 |
取り方:福祉用具貸与の費用額(約 4,300 億円)に、会社が開示する当社比率の約 5% を掛けて売上約 224 億円とし、利用者 14 万人 × 年額 16 万円に分けた。営業利益は健康生活の 85.5 億円のうち 32 億円と推定(開示なし)。貸与価格は上限(全国平均 + 1 標準偏差)が実勢に沿って 3 年ごとに見直されるので、物価を追うが遅れ、中立で 10 年 1.28 倍とした。
病院・施設・ホテル向けサービス(リネン・給食・看護補助ほか)
医療機関・介護施設の寝具リネンと給食、看護補助、手術用リネンの再利用、宿泊施設向けリネン。
| 数量契約先の床数相当(万床・推定) | 価格1 床あたり年額(万円・推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 15.0 | 40 | 596 | 54 |
| 10 年後 中立 | 15.5 | 52 | 800 | 72 |
取り方:健康生活の売上 818 億円からシルバーを引いた約 595 億円。病院・介護施設・ホテルの寝具リネン、給食、看護補助などを 15 万床相当 × 年額 39.7 万円に置いた(推定)。病院は公定収入のため価格転嫁が難しく、中立で 10 年 1.30 倍。
調剤(たんぽぽ薬局・在宅調剤・ドラッグストア)
調剤薬局「たんぽぽ薬局」161 店と在宅調剤、ドラッグストア。
| 数量処方箋の枚数(万枚・推定) | 価格1 枚あたり売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 662 | 0.95 | 629 | 24 |
| 10 年後 中立 | 695 | 1.09 | 759 | 27 |
取り方:調剤サービスの売上 629 億円を、処方箋約 662 万枚 × 1 枚約 0.95 万円と推定して分けた(161 店)。薬価は毎年下がり技術料も小幅なので、公定価格の事業は物価に届かず、中立で 10 年 1.15 倍。
環境(清掃・リースキン)
ビルの清掃と、マット・モップなど環境美化用品のレンタル(リースキン)。
| 数量契約先の件数(万件・推定) | 価格1 件あたり年額(万円・推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 3.7 | 40 | 148 | 12 |
| 10 年後 中立 | 3.7 | 54 | 199 | 16 |
取り方:環境サービス(清掃・リースキン)の売上 148 億円を、契約先約 3.7 万件 × 年額約 40 万円と推定した。清掃は人件費の上昇を契約で転嫁できるとして、中立で 10 年 1.34 倍。
リスクと懸念
公定価格に売値を決められる
福祉用具の貸与価格には上限があり、調剤は薬価が毎年下がる。人件費が物価で上がっても、売値は追いつかない。2026 年度の改定では、調剤の減益が計画に織り込まれた。物価が 3% で続く世界では、この差が利益率を削る最大の要因になる。
調剤の収益性の低さ
調剤は売上の約 4 割を占めるが、営業利益率は 4% 弱にとどまる。薬剤師の人件費が上がるなか、処方箋の枚数は長期処方化で小幅に減った。大手チェーンの再編が進めば、小さな店は不利になる。
買収の統合と資本配分
中計は成長投資 250 億円を掲げ、買収を積み上げる。買った介護用品の会社を統合して利益に変えられるかは、まだ試されている最中だ。割高で買うと、ROE を押し下げる。純現金を使う順番を誤れば、還元の約束とぶつかる。
給付の見直しと購入への流れ
介護保険の給付範囲は、財源の逼迫から見直しが続く。軽度者の福祉用具が貸与でなく購入や自費に移れば、シルバー事業の成長の前提が揺らぐ。
洗濯工場のエネルギー・人件費
リネンは洗濯と配送の仕事で、電気・ガス代と人件費が原価の大半を占める。今期は全社で 2.3 億円のコスト増を見込む。病院は公定収入のため、価格転嫁が遅れやすい。工場の更新投資も重い。
病院数の減少
病院の統廃合で、リネンと給食の数量は長期的に減る。介護施設とホテルで補えるが、補えなければ工場の稼働が落ち、固定費が重くなる。給食は不採算の撤退を進めている最中で、収益改善の道のりは長い。
人手不足と現場の確保
洗濯・配送・清掃・介護用品の組み立てと、薬剤師の確保が同時に必要になる。賃金は物価で上がり続ける。外国人材の紹介や清掃ロボットで省人化を進めるが、投資が先に出て、効果は遅れて出る。
今後の分かれ目
- シルバー事業が福祉用具貸与の市場の 10% に届く
- 買収と出店が実を結んだと確認でき、中立から強気の筋書きに寄る。
- 福祉用具の上限価格が物価に沿って引き上げられる
- 価格の遅れが解消され、利益率が上がる。強気側の確率が上がる。
- 調剤報酬と薬価の改定で、調剤の営業利益が 20 億円を割る
- 全社の利益が 1 割以上削られ、慎重な筋書きに寄る。
- 買収した会社の統合に失敗して減損が出る
- 資本配分への信頼が揺らぎ、悲観側の確率が上がる。
- 総還元性向 70% 超の方針が守られ、ROE が 8% に届く
- 資本効率の改善が確認でき、倍率が上限に近づく。
- 軽度者向けの福祉用具の給付が見直される
- シルバー事業の成長の前提が崩れ、悲観に近づく。
- 筆頭株主や第三者による買収提案が出る
- 時価総額の小ささと純現金の厚さから、買収価格が価値の上限の目安になる。
見ておくもの
- 福祉用具貸与の費用額に対するシルバー事業の比率(約 5% → 10% 超の目標)
- 調剤の処方箋枚数と営業利益率(改定後の底打ち)
- 病院・ホテル向けの数量と、電気・ガス代の転嫁(健康生活の営業利益率)
- 総還元性向(3 年累計 70% 超)と ROE(8% 目標)の進み具合
- 買収した会社の売上と利益率の推移
倍率と資本コストの決め方
10 年の売上は、セグメントごとに数量(実質)× 価格(名目)で積んだ。介護用品は貸与の市場規模に会社の比率(約 5%)を掛けて利用者数に分け、公定価格の事業は物価に遅れる価格(調剤 1.15 倍、介護用品 1.28 倍)で置いた。倍率は、正当化 PER = (1 − g÷RONIC)÷(k − g) の上限に対し、中立は 9.3 割を置いた。ROE が k を超えるので、下限 1÷k を割らない。やや悲観・悲観は稼ぐ力(純利益 ÷ k)から、上限の 8 割と 7 割に置き、市場の PER・PBR は使っていない。自己資本は今の値に純利益の合計を足し、還元を引いて流した。余った現金は純現金 204 億円のうち、運転資金・リース・買収の備えを除いた 100 億円を分け、戻している実績から戻り方 1.0 とした。店舗・拠点を借りるため、新リース会計基準(2028 年 3 月期から)で BS が膨らむが、10 年後の数字は今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)でそろえた。今のPER・PBR は使っていない。 2026-10-22 の見直し(R1〜R4)で倍率・時価総額を機械で置き直した(前後は notes/audit/fix_stage2_20261022.csv)。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。