結論
ポピンズは、保育所と学童の運営、ナニーやベビーシッターの派遣を手がける会社だ。筆者の結論は「やや割高」である。事業は良い。ただ、利益の多くは公費に支えられ、少子化は止まらない。今の値段は、それをやや軽く見ている。
2025年12月期の売上は344億円、営業利益は18億円だった。売上の7割強は保育所と学童の運営で、2割強はベビーシッターなどの在宅サービスだ。在宅は前期比2割増と、よく伸びている。
会社は2026年8月に、今期の営業利益を19億円から24億円へ上げた。在宅の利用者と働き手が、想定を超えて増えたためだ。2030年12月期に営業利益30億円以上、ROE 15%を掲げる。
財務は堅い。純現金は52億円と、時価総額の4分の1を超える。ただ社長一族が6割を持ち、現金が株主に戻る道は細い。
中立の10年後は営業利益29億円、時価総額258億円。確率で重みをつけた本質価値は、今より2割ほど低い。
バリュー投資の観点から
この会社を、長く持ちたいか。筆者の答えは「事業は持ちたい。ただし値段と制度に注文がある」だ。
事業は必需だ。子育て支援は、少子化の中でも、共働きの世帯が増える限り続く。保育者の質で差をつけるブランドは、時間をかけて築いたものだ。設備が軽く、資本の効率も高い。
注文は2つある。1つは、公費の事業であること。価格を自分で決められず、制度が変われば利益が動く。もう1つは、少子化だ。保育所の児童数は減り、強い事業者でも需要は先細る。
お金の使い方は堅実だ。借入は少なく、配当は厚くなる方向にある。ただ現金は積み上がり、社長一族が6割を持つため、株主に戻る道は細い。筆者は帳簿の半分しか数えない。
安全域はあるのか。悲観の床は、戻る分の現金と保証金で約30億円。今の時価総額の16%だ。倒産は遠いが、今の値段に厚い安全域はない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎ方は2本ある。保育所などの施設を運営する「エデュケア」と、家庭に人を送る「ファミリーケア」だ。2025年12月期の売上は、エデュケアが253億円(73%)、ファミリーケアが82億円(24%)だった。
エデュケアは、認可保育所86、認証保育所29、企業の事業所内保育所69、学童・児童館94など、325の施設を運営する。収入の大半は公費、つまり国と自治体が決める公定価格や委託費だ。保護者から直接受け取る額は小さい。このため価格は制度で決まり、売上は児童数と人件費の改定で動く。
ファミリーケアは、ナニー(住み込みに近い保育者)、ベビーシッター、家事支援、シルバーケアを家庭に送る。企業の福利厚生として使われる例も多く、前期比2割増と最も伸びている。収入は利用者の支払いと企業の契約から来て、利益率は高い。
研修、人材派遣などは売上の2%足らずで、小さな付け足しだ。
従業員は3,222人で、うち2,486人が臨時雇用者だ。人件費が費用の大半を占め、保育士の確保が事業の中心にある。保育所の多くは賃借で、賃料は児童数に関係なく払う固定費である。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねしにくい強みは、保育者の確保力とブランドにある。ただし深くはない。
都心の保育では、ポピンズの名前は信頼の目印だ。ナニーの教育と選抜の仕組みを持ち、家庭に送る人の質で他社と差をつける。保育士不足の中で働き手を確保できること自体が、競争力になる。
一方、保育所は制度の事業で、価格を自分で決められない。認可保育所は自治体の枠で決まり、公定価格は国が決める。人件費が上がっても、収入が同じ早さで上がる保証はない。
資本の効率は高い。ROEは12%台で、持つ資産の少ない事業だ。ただ純現金が厚く、事業そのもののROEはさらに高い。
弱点は3つある。第1は、少子化で児童数が減ること。第2は、公費への依存で利益率の上限が見えること。第3は、賃借料が固定費として残ることだ。社長一族が6割を持つ点も、少数株主には注意が要る。
筆者は事業の質を「良いが、制度と人口に縛られる」と見る。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
保育の需要は、子どもの数と共働きの世帯で決まる。出生数は2025年に67万人と過去最少で、合計特殊出生率は1.14に下がった。保育所を使う児童数は2025年がピークとの見方がある。
一方で、待機児童は大都市でほぼ解消し、保育所は量から質へ移った。定員割れの園が増え、閉園する事業者も出てきた。強い事業者が、閉まる園を引き継げる局面だ。
共働きの世帯は増え続ける。女性の就業率が上がり、在宅のナニー、ベビーシッター、家事支援の需要が伸びている。企業が福利厚生で使う例も増えた。ここは、少子化の逆風を受けにくい。
競争は多い。保育所ではJPホールディングス、大手の社会福祉法人や小規模事業者が並ぶ。人材の奪い合いで、保育士の賃金は国の処遇改善で上がり続けている。
制度は、公定価格が人事院勧告に沿って改定される。人件費の上昇を追えるかが最大の論点だ。国の「こども誰でも通園」など、新しい制度も広がる。
ポピンズが得意な都心は、共働きの世帯が多く、保育の需要が長く残る地域だ。地方の少子化の影響は小さい。ただ賃料が高く、保育所の採算は賃料の水準に左右される。
資本政策と M&A
資本の使い方は、堅実で、株主還元は拡大の途上にある。
配当はDOE(純資産配当率)4.5%以上を当面の目標にし、2030年までに6.0%を目指す。2025年12月期の期末配当の性向は38%だった。自社株買いは大きくやっていない。
現金は厚い。純現金は52億円で、時価総額の27%に当たる。借入も少ない。投資は保育所の新設と運営の受託が中心で、1施設あたりの金額は小さい。
子会社のウィッシュを、2026年5月に売る契約を結んだ。事業の整理は進んでいる。大型のM&Aは目につかない。
社長とその親族・資産管理会社が60.9%を持つ。市場の圧力は弱く、TOBの可能性は低い(kabufuの試算で10年以内に19%)。中計2030はROE 15%を掲げ、現金の使い方がROEの鍵になる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
成長はこれからだ。ファミリーケアの売上は前期比2割増で、2026年8月には利用者と働き手の双方が想定を超えて伸びたとして、営業利益の予想を19億円から24億円に上げた。共働きの世帯と企業の福利厚生に支えられる需要は、少子化と別の動きをする。
保育所の事業も強い。待機児童が解消した今、定員割れで閉まる園を引き継げる事業者は少ない。ポピンズは都心のブランドと人材の確保力を持ち、シェアを広げる側に立つ。
収益性も上がる。会社は2030年12月期に営業利益30億円以上、ROE 15%を掲げ、DOE 6%まで還元を増やす。純現金52億円は時価総額の27%で、使い方しだいで株主に戻る。
人件費の上昇は国の処遇改善と公定価格の改定で支えられる。人手不足は他社の参入障壁にもなる。AIで置き換わる仕事ではなく、人の体と信頼が価値の事業だ。
配当もDOE 6%に向けて増える。自社株買いも、現金が厚くなれば進む余地がある。
慎重な見方
利益率は山に近い。会社の予想では来期の営業利益率は7%に達し、過去の山(6.5%)を超える。人件費の上昇を公定価格が追えなければ、すぐ削られる。2023年12月期の営業利益率は4.0%まで落ちた。
少子化は止まらない。出生数は2025年に67万人と過去最少で、保育の利用児童数は2025年がピークとの見方がある。定員割れで閉まる園が増え、強い事業者でも需要は先細る。
賃借料は固定費だ。児童数が減っても家賃は減らない。新リース会計の導入(2028年12月期)で、賃借の約束は貸借対照表に載り、見かけの純現金は減る。
現金は株主に戻りにくい。社長一族が6割を持ち、純現金52億円はたまり続ける。DOEの目標は4.5%と低く、増配が現金の積み上がりに追いつかない。
上場から6年で、計画の達成実績は短い。2026年の上方修正も、在宅の一時的な需要かもしれない。
人件費の上昇は、保育士の処遇改善で止まらない。働き手の取り合いが、ファミリーケアの高い利益率を削る。
どちらに重みを置いたか
数字の勝負では、慎重な見方がやや強い。利益率は山に近く、少子化は構造的で、賃料は固定費として残る。一方で、在宅の成長と保育所の質の高さは事実で、強気の見方にも根拠がある。そこで、中立に4割弱を置き、やや悲観に2割強を寄せた。楽観は7%、悲観は11%にとどめた。確率は、慎重な側の合計(3割強)が強気の側(3割弱)をやや上回る形だ。強気の見方で最も強い、在宅の成長は、やや楽観に反映した。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 3,170 円310 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 562 円55 億円)。 今の値に割り戻すと 1,970 円192 億円、今との差 +6.0%、 期待の年率 +7.2%(資本コスト 7.2%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 6,522 円637 億円 | 788 円77 億円 | +293.2% | +14.7% | 512 円50 億円 |
| やや楽観 | 21% | 5,030 円491 億円 | 717 円70 億円 | +209.1% | +11.9% | 1,207 円118 億円 |
| 中立 | 38% | 3,679 円359 億円 | 614 円60 億円 | +130.9% | +8.7% | 1,631 円159 億円 |
| やや悲観 | 23% | 981 円96 億円 | 461 円45 億円 | −22.5% | −2.5% | 332 円32 億円 |
| 悲観 | 11% | 307 円30 億円 | 154 円15 億円 | −75.2% | −13.0% | 51 円5 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,170 円310 億円 | 562 円55 億円 | +100.8% | +7.2% | 3,732 円365 億円 |
今の株価時価総額 1,859 円182 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.2% を下回るほど割高。
楽観 7% 在宅の保育が育ち、保育所も黒字を積み上げる 利益 29 億円 · PER 21.2 倍 · 株価時価総額 6,522 円637 億円
ファミリーケアは、共働きの世帯と企業の福利厚生に支えられ、利用時間が10年で1.8倍になる。働き手の確保に成功し、価格は物価を上回る1.40倍だ。利益率は12%に上がる。
エデュケアは、閉園する他社の施設を引き継ぎ、新設も続けて活動量が1.1倍になる。公定価格が人件費を上回って改定され、利益率は6%に上がる。
全社の営業利益は45億円、純利益は29億円。営業利益率は7.4%で、過去の山(6.5%)を超える。会社の予想(来期7.1%)の延長線上だ。
還元はDOE 6%に向けて増え、余った現金は75億円までたまる。
- ファミリーケア(ナニー・ベビーシッター・家事支援・シルバーケア):数量 180(利用時間(2025/12 を 100 とした指数))× 価格 1.40(利用時間 100 あたりの売上の指数(今を 1.0))→ 売上 207 億円・営業利益 25 億円。活動量 180(今 100)× 価格 1.40 倍、利益率 12.0%
- エデュケア(保育所・学童・児童館の運営):数量 110(在籍児童数 × 開所日数の活動量(2025/12 を 100 とした指数))× 価格 1.40(活動量 100 あたりの売上の指数(今を 1.0)。公定価格・委託費の改定を含む)→ 売上 390 億円・営業利益 23 億円。活動量 110(今 100)× 価格 1.40 倍、利益率 6.0%
- プロフェッショナル・その他(保育士研修・人材派遣ほか):数量 120(活動量(2025/12 を 100 とした指数))× 価格 1.40(活動量 100 あたりの売上の指数(今を 1.0))→ 売上 15 億円・営業利益 2 億円。活動量 120(今 100)× 価格 1.40 倍、利益率 10.0%
倍率:事業の純利益 28 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 21.6% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 14.4%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 21.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 21.2 倍 + 余った現金(戻り方込み)38 億円。全体の PER 21.15 倍、時価総額 637 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:ファミリーケアの高成長が10年続き、保育所の利益率も会社の中計(営業利益30億円以上)を超えて上がる形。出生数が減り続ける事実があり、7%にとどめる。
やや楽観 21% 会社の計画どおりに、ファミリーケアが利益を押し上げる 利益 24 億円 · PER 20.1 倍 · 株価時価総額 5,030 円491 億円
ファミリーケアは利用時間が1.55倍になる。働き手の確保は進み、価格は1.37倍。利益率は11%に上がる。
エデュケアは児童数が減る中でも、新設と運営受託の増加で活動量が1.05倍になる。公定価格の改定が人件費を追い、利益率は5.6%を保つ。
営業利益は37億円、純利益は24億円。営業利益率は6.6%で、過去の山(6.5%)に並ぶ。
還元はDOEが5%台に上がる。余った現金は65億円ほどになる。会社が掲げるROE 15%に近い水準だ。
ただ、10年のあいだに公定価格の改定が一度も人件費に遅れない前提は強い。強気の見方に近いが、中立と大きく離れない形だ。
- ファミリーケア(ナニー・ベビーシッター・家事支援・シルバーケア):数量 155(利用時間(2025/12 を 100 とした指数))× 価格 1.37(利用時間 100 あたりの売上の指数(今を 1.0))→ 売上 174 億円・営業利益 19 億円。活動量 155(今 100)× 価格 1.37 倍、利益率 11.0%
- エデュケア(保育所・学童・児童館の運営):数量 105(在籍児童数 × 開所日数の活動量(2025/12 を 100 とした指数))× 価格 1.37(活動量 100 あたりの売上の指数(今を 1.0)。公定価格・委託費の改定を含む)→ 売上 364 億円・営業利益 20 億円。活動量 105(今 100)× 価格 1.37 倍、利益率 5.6%
- プロフェッショナル・その他(保育士研修・人材派遣ほか):数量 110(活動量(2025/12 を 100 とした指数))× 価格 1.37(活動量 100 あたりの売上の指数(今を 1.0))→ 売上 14 億円・営業利益 1 億円。活動量 110(今 100)× 価格 1.37 倍、利益率 9.0%
倍率:事業の純利益 23 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 17.9% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 12.6%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 20.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 20.0 倍 + 余った現金(戻り方込み)32 億円。全体の PER 20.05 倍、時価総額 491 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2026年8月の上方修正と、中計2030(営業利益30億円以上)に近い形が、物価の分だけ伸びる。上場から6年と短く、計画の達成実績は少ないので、中立の半分ほどに置く。
中立 38% 少子化で児童数は減るが、単価と在宅の伸びで補う 利益 19 億円 · PER 18.7 倍 · 株価時価総額 3,679 円359 億円
子どもの数は減るが、保育所は人手と公費で動く事業で、急には縮まない。エデュケアは活動量が横ばいで、公定価格の改定が人件費に追いつき、価格は物価並みの1.34倍になる。利益率は5.2%と、今より少し良い。
ファミリーケアは、働き手の確保が追いつく範囲で1.35倍に伸びる。価格は1.34倍で、利益率は10%を保つ。
営業利益は29億円、純利益は18.5億円。営業利益率は5.9%で、過去の山(6.5%)の手前だ。ROEは10%ほどになる。
還元はDOE 4.5〜6%で、純利益の4割ほど。余った現金は60億円までたまる。
- ファミリーケア(ナニー・ベビーシッター・家事支援・シルバーケア):数量 135(利用時間(2025/12 を 100 とした指数))× 価格 1.34(利用時間 100 あたりの売上の指数(今を 1.0))→ 売上 148 億円・営業利益 15 億円。活動量 135(今 100)× 価格 1.34 倍、利益率 10.0%
- エデュケア(保育所・学童・児童館の運営):数量 100(在籍児童数 × 開所日数の活動量(2025/12 を 100 とした指数))× 価格 1.34(活動量 100 あたりの売上の指数(今を 1.0)。公定価格・委託費の改定を含む)→ 売上 339 億円・営業利益 18 億円。活動量 100(今 100)× 価格 1.34 倍、利益率 5.2%
- プロフェッショナル・その他(保育士研修・人材派遣ほか):数量 100(活動量(2025/12 を 100 とした指数))× 価格 1.34(活動量 100 あたりの売上の指数(今を 1.0))→ 売上 12 億円・営業利益 1 億円。活動量 100(今 100)× 価格 1.34 倍、利益率 8.0%
倍率:事業の純利益 18 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 14.4% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.8%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.7 倍 + 余った現金(戻り方込み)30 億円。全体の PER 18.65 倍、時価総額 359 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:今期の会社予想(営業利益24億円)と中計2030(30億円以上)を、過去の山を超えない形に置く。最も厚く置く。
やや悲観 23% 出生数の減少が進み、公定価格が人件費に追いつかない 利益 10 億円 · PER 9.5 倍 · 株価時価総額 981 円96 億円
児童数が減り、定員割れの園が増える。エデュケアの活動量は12%減り、公定価格の改定は人件費に追いつかず、価格は1.25倍にとどまる。利益率は3.5%に下がる。
ファミリーケアは1.15倍まで伸びるが、働き手の取り合いで人件費がかさみ、利益率は7.5%に下がる。
営業利益は15億円、純利益は9.5億円。営業利益率は3.7%と、2023年12月期の4.0%を下回る。
賃借料は固定費として残り、稼働が下がると利益を直撃する。配当はDOEの下限を守る。
閉園した施設の原状回復費や、賃貸の解約費用が出る年もある。現金は取り崩されず、財務は保たれるが、成長の投資に回す余力は細る。
- ファミリーケア(ナニー・ベビーシッター・家事支援・シルバーケア):数量 115(利用時間(2025/12 を 100 とした指数))× 価格 1.25(利用時間 100 あたりの売上の指数(今を 1.0))→ 売上 118 億円・営業利益 9 億円。活動量 115(今 100)× 価格 1.25 倍、利益率 7.5%
- エデュケア(保育所・学童・児童館の運営):数量 88.0(在籍児童数 × 開所日数の活動量(2025/12 を 100 とした指数))× 価格 1.25(活動量 100 あたりの売上の指数(今を 1.0)。公定価格・委託費の改定を含む)→ 売上 278 億円・営業利益 10 億円。活動量 88(今 100)× 価格 1.25 倍、利益率 3.5%
- プロフェッショナル・その他(保育士研修・人材派遣ほか):数量 90.0(活動量(2025/12 を 100 とした指数))× 価格 1.25(活動量 100 あたりの売上の指数(今を 1.0))→ 売上 10 億円・営業利益 0 億円。活動量 90(今 100)× 価格 1.25 倍、利益率 4.0%
倍率:事業の純利益 9.3 億円(全社の純利益から余った現金の利息 0.2 億円を除く)、事業の自己資本 128 億円で、事業の ROE 7.3%。k 7.25%、残る割合 1/2 から RONIC 7.6%。正当化 PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)、g 4.0% で上限 11.9 倍。利益の質が落ちる筋書きなので、上限の 8 割(9.51 倍)に置く(やや悲観は稼ぐ力から置き、7 割へ引き上げない)。余った現金は今の 20 億円の 0.75 倍の 15 億円に、戻り方 0.5 を掛けて足す。
確率:出生数は2025年に過去最少の67万人。保育の利用児童数は2025年がピークとする見方がある。公費の事業で、人件費の上昇を転嫁できない年が続くと、利益は削られる。中立に次ぐ厚さで置く。
悲観 11% 公定価格の据え置きと賃料の固定費で、保育所が赤字になる 利益 −4 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 307 円30 億円
構造的な負けになる。エデュケアの活動量は25%減り、公定価格は人件費に追いつかず、価格は1.12倍にとどまる。賃借料は児童数に連動せず、利益率は−1%の赤字になる。減損も出る。
ファミリーケアは、働き手の奪い合いで人件費がかさみ、利益率は3%に落ちる。
営業損益は3億円の赤字になる。配当は大きく削り、閉園と整理を進める。
それでも現金は残る。事業は小さくなるが、財務は傷まない。株主が手にするのは、売れる資産と現金の一部だけになる。
ファミリーケアの高い利益率も、人件費の上昇で薄まる。事業の質は落ち、値打ちは資産で決まる。
- ファミリーケア(ナニー・ベビーシッター・家事支援・シルバーケア):数量 90.0(利用時間(2025/12 を 100 とした指数))× 価格 1.12(利用時間 100 あたりの売上の指数(今を 1.0))→ 売上 83 億円・営業利益 3 億円。活動量 90(今 100)× 価格 1.12 倍、利益率 3.0%
- エデュケア(保育所・学童・児童館の運営):数量 75.0(在籍児童数 × 開所日数の活動量(2025/12 を 100 とした指数))× 価格 1.12(活動量 100 あたりの売上の指数(今を 1.0)。公定価格・委託費の改定を含む)→ 売上 213 億円・営業利益 −2 億円。活動量 75(今 100)× 価格 1.12 倍、利益率 -1.0%
- プロフェッショナル・その他(保育士研修・人材派遣ほか):数量 80.0(活動量(2025/12 を 100 とした指数))× 価格 1.10(活動量 100 あたりの売上の指数(今を 1.0))→ 売上 8 億円・営業利益 0 億円。活動量 80(今 100)× 価格 1.10 倍、利益率 0.0%
倍率:赤字の筋書きなので PBR で置く。床は純現金のうち戻る分で、現金 52 億円のうち預り金と閉園の整理費を除いた約 30 億円。今の自己資本 93 億円に対して 0.32 倍とし、PBR を 78 億円に対して 0.385 とした。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PBR 0.385 倍・時価総額 30 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:出生数の急減、公定価格の据え置き、保育士の人件費の上昇が重なる形。賃借料が固定費として残り、減損が出る。国の制度が下支えするため倒産は遠いが、事業の質は大きく落ちる。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
ファミリーケア(ナニー・ベビーシッター・家事支援・シルバーケア)
家庭に保育者や家事の担い手を送る。企業の福利厚生として使う利用者も多い。売上は2割強で、最も伸びている。
| 数量利用時間(2025/12 を 100 とした指数) | 価格利用時間 100 あたりの売上の指数(今を 1.0) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 100 | 1.00 | 82 | 8 |
| 10 年後 中立 | 135 | 1.34 | 148 | 15 |
取り方:ファミリーケアの売上 82.0 億円(前期比 +21.9%)。利用時間の開示が無く指数で置く。セグメント利益は開示を確認できず、利益率を約 10% と推定した(全社の営業利益 18.4 億円に合わせて配分)。
エデュケア(保育所・学童・児童館の運営)
認可保育所、認証保育所、企業の事業所内保育所、学童・児童館を運営する。売上の7割強で、公費(公定価格・委託費)が収入の大半を占める。
| 数量在籍児童数 × 開所日数の活動量(2025/12 を 100 とした指数) | 価格活動量 100 あたりの売上の指数(今を 1.0)。公定価格・委託費の改定を含む | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 100 | 1.00 | 253 | 13 |
| 10 年後 中立 | 100 | 1.34 | 339 | 18 |
取り方:エデュケアの売上 253.0 億円(前期比 +5.4%)。施設は 325(認可 86・認証 29・事業所内 69・学童 94 ほか)。児童数の開示が無く指数で置く。利益は推定で、利益率は約 5%。
プロフェッショナル・その他(保育士研修・人材派遣ほか)
保育士向けの研修と調査、人材派遣・紹介、ペットケアなど。小さな付け足し。
| 数量活動量(2025/12 を 100 とした指数) | 価格活動量 100 あたりの売上の指数(今を 1.0) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 100 | 1.00 | 9 | 1 |
| 10 年後 中立 | 100 | 1.34 | 12 | 1 |
取り方:研修 7.2 億円、その他 3.9 億円の合計 11.1 億円から、セグメント間の相殺 約 2 億円を引いた 9.1 億円。利益は推定。
リスクと懸念
少子化と児童数の減少
出生数は2025年に67.1万人と過去最少で、合計特殊出生率は1.14。保育の利用児童数は2025年がピークとの見方がある。定員割れの園が増えれば、固定費の重い保育所の利益率が下がる。閉園は減損にもつながる。
公定価格が人件費に追いつかない
エデュケアの収入の大半は公定価格と委託費で、価格を自分で決められない。保育士の賃金は処遇改善で上がり続けている。改定が追いつかなければ、利益率が直接削られる。
保育士・ナニーの確保
人件費が費用の大半を占め、働き手の確保が事業の土台だ。人手不足の中で賃金を引き上げれば利益を圧迫し、確保に失敗すれば受け入れを断ることになる。従業員の7割以上が臨時雇用だ。
賃借料と新リース会計
保育所の多くは賃借で、賃料は児童数に連動しない固定費。新リース会計(2028年12月期から)で賃借の約束が貸借対照表に載り、純現金や自己資本比率が見かけほど強くないことが明らかになる。
支配株主と現金の戻り
社長とその親族・資産管理会社が60.9%を持つ。意思決定は速いが、少数株主への配当は経営者の判断しだい。純現金は積み上がり、戻る確証が薄い。
事故・不祥事
保育の事故や不祥事は、ブランドと自治体からの信頼に直結する。ナニーやベビーシッターを家庭に送るため、個人の行動に会社の評価が左右される。
在宅サービスの成長の持続
ファミリーケアは前期比2割増と伸びているが、2026年の上方修正は一時的な需要かもしれない。利用者の定着と働き手の確保が続かなければ、成長が止まり、利益率の高い部分が細る。
今後の分かれ目
- 2026年12月期の営業利益が24億円以上で着地し、2027年12月期も増益になったら
- やや楽観の確率を上げる。在宅の成長と保育所の利益率の改善が裏づけられる。
- 公定価格の改定が人件費の上昇を下回る年が続いたら
- やや悲観・悲観の確率を上げる。エデュケアの利益率が削られる。
- 保育所の閉園や減損が増え、定員割れの園が全体の2割を超えたら
- エデュケアの活動量を下に直す。固定費の重さが前面に出る。
- 中計2030に基づき、DOEの引き上げや自社株買いが発表されたら
- 余った現金の戻り方を見直す。1.0に近づけば本質価値が上がる。
- 新リース会計の導入で、賃借の約束が貸借対照表に載り、リース負債が大きく出たら
- 純現金と自己資本比率が見かけほど強くないと確認できる。余った現金の額を見直す。
- ファミリーケアの利用時間と働き手が伸び続け、年率15%を超える成長が3年続いたら
- 在宅の数量を上に直す。楽観の確率を上げる。
見ておくもの
- ファミリーケアの売上成長率と利用者数・働き手の数
- 保育所の利用児童数・稼働率と、閉園・新設の数
- 公定価格の改定と保育士の賃金の動き
- 純現金の残高と、配当・DOEの水準
- リース負債の大きさ(新リース会計)
倍率と資本コストの決め方
今の株価から逆算せず、先にエデュケアの活動量 × 公定価格の指数、ファミリーケアの利用時間 × 価格でセグメントを積み、全社費用を引いた。セグメント利益は開示を確認できず、推定で配分し、全社の営業利益に合わせた。倍率は事業の ROE(中立で14%)から式で出し、中立は上限の8割に置いた。余った現金は20億円で、運転資金・預り金・賃借の保証金を引いた。リースは SCHEMA §1-9に従い、保育所の賃料は営業費用に入れた形で10年を置き、2028年12月期から貸借対照表に載る形の変化は、今と同じ家賃を費用に入れた形でそろえた。悲観では家賃が固定費として残る。AI エージェントの代替は、ナニー・保育士・学童の指導員が現場の体に当たるため、今の置き方を基本にし、事務の部分は小さいので別に引かなかった。今の時価総額と比べたのは最後で、市場のPERに寄せていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 15.51→21.15 倍・やや楽観 PER 14.16→20.05 倍・中立 PER 12.84→18.65 倍)。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。