結論
リンクアンドモチベーションは、会社の「やる気」を数字で測り、変える手伝いをする会社だ。看板は、診断と改善の仕組みを月額で売る「モチベーションクラウド」。ほかに、公立校へ外国人の英語講師を送る ALT 配置、人材紹介、スクールを持つ。
結論から言う。筆者は、10 年後の本質価値は今の時価総額 615 億円を大きく下回ると見る。売上の約 6 割は、画面で使う月額課金や人の工数で売る仕事で、AI エージェントが置き換える側にあるからだ。
診断は、AI なら安く作れる。人材紹介のマッチングも、知識を教えるスクールも同じだ。筆者は、中立で組織開発の社数が 3 割余り減ると置いた。値上げも物価に届かない。
救いは、売上の 3 割強を占める ALT だ。自治体の入札で、現場に人が立つ仕事だから、AI の影響は小さい。ただ利益率は低く、全体を支えるには足りない。AI エージェントを売り物にして出た売上の金額は、開示されていない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、見るべきは三つだ。堀、資本の使い方、払う値段である。
堀は中くらいだ。モチベーションクラウドのデータと顧客関係は確かな資産だが、10 年後も同じ優位が続くと言い切れる強さではない。診断は AI で安く作れるようになるからだ。
資本の使い方は良い。事業が資本を食わず、稼いだ利益を返している。のれんの減損も、全額を落として傷を残さなかった。
払う値段の安全域は、あるとは言えない。10 年の中立の姿は、今の時価総額とほぼ同じだ。強気が当たれば数倍、弱気が当たれば半分を割る。値幅の大きい会社を、安全域なしに持ちたいとは思わない。
筆者は、この会社を「持ち続けたい会社」とまでは見ない。ただ、計画どおり組織開発のストックが 3 倍になるなら、評価は一段上がる。その確認は、年ごとの経常収益(ARR)の開示でできる。
見直し(AI エージェント代替):「10 年の中立の姿は今の時価総額とほぼ同じ」という上の見方は、筆者は改める。診断・紹介・スクールは AI エージェントが置き換える側にあり、中立でも 10 年後の時価総額は今の 3 分の 1 ほどに下がる。持ち続けたい会社とは見ない。
何で稼ぐ会社か
事業は三つに分かれる。組織開発、マッチング、個人開発だ。2025 年 12 月期の売上は約 415 億円。構成比はマッチングが 46%、組織開発が 40%、個人開発が 14% である。売上総利益では組織開発が約半分を占め、実質の稼ぎ頭になっている。
組織開発の中心がモチベーションクラウドだ。社員アンケートで会社の状態を測り、コンサルタントが改善を支える。会費が月額で積み上がるので、景気の波を和らげる収益になる。支援先は約 1,700 社。ストック型の売上の比率は 50% を超えた。2025 年には、感謝にポイントを付けるピアボーナスのユニポスを完全子会社にした。2026 年 10 月には、企業向け AI サービスのSELFも傘下に入る。
マッチングの主力は ALT 配置だ。全国の小中高校へ外国人の英語指導助手を送る。2014 年に買ったインタラックが土台で、会社は民間で圧倒的な 1 位と説明している。自治体の入札で決まるため、売上は大きいが利益率は低い。もう一つの人材紹介は、企業の口コミサイト OpenWork を運営し、そこに集まる求職者を企業につなぐ。
個人開発は、パソコンのアビバ、資格の大栄、中学受験の個別指導などだ。校舎を減らしてオンラインへ移している最中で、規模は縮んでいる。
優良さと弱いところ
強みは、データと顧客の関係だ。モチベーションクラウドは延べ約 1 万 4 千社の組織データを持つ。多くの競合が診断だけを売る中で、改善の支援まで人が付き添う。エンゲージメントの領域で 9 年連続の首位と、会社は説明している。ただし堀は広くない。診断の道具は安い競合が多い。生成 AI で作る側の敷居も下がる。
ALT 配置は民間で最大手だが、入札で決まる事業だ。値段を自分で決められない。人材紹介は OpenWork という入口が強みでも、景気で採用が止まれば手数料も止まる。
資本の使い方は評価できる。資本をあまり食わない事業で、利益の多くを配当と自社株買いで返している。一方、買収には当たり外れがある。スクール事業は、のれんを全額落とすことになった。
筆者は、経営の資本配分は誠実だと見る。ただ、強い堀を持つ会社とは言えない。人の質に頼る事業が多い。投資家との質疑では、担当者の休職が重なり、提案の質にばらつきが出ているとの指摘も出た。ここは弱点として残るだろう。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
組織の状態を測る市場は、小さいが速く伸びている。調査会社 ITR は、従業員エンゲージメントの市場を 2024 年度で約 161 億円とみて、2029 年度まで年 16% の成長を予想する。人手不足で、社員が辞めない会社づくりが経営課題になったからだ。競合はカオナビや Wevox などで、人事の道具に診断を組み込む動きが強い。リンクアンドモチベーションは、診断から改善の支援までを一体で売って差をつけている。
生成 AI は両刃だ。診断の分析や改善の提案を AI が肩代わりすれば、値段は下がる。会社自身、検索経由の商談が一時減ったと話している。一方で、AI で改善の実行まで支える形は付加価値になりうる。SELFの買収はその布石だ。
ALT は、少子化で学校の数が減る逆風がある。小学校の英語は定着した。公立校の ALT は約 1 万 8 千人で、民間派遣が 34%、国の JET が 28% を占める。自治体が民間委託を増やせば追い風だが、入札で価格は抑えられる。
人材紹介は、労働力不足で市場そのものは伸びる。ただ、求人と求職者が AI で直接つながれば、仲介の手数料は削られる。人材領域に共通する論点である。
見直し(AI エージェント代替):AI が診断を置き換える懸念は、上の段落よりずっと大きいと筆者は見る。10 年の中立でも、組織開発の社数は今より 3 割余り減ると置いた。
資本政策と M&A
還元は積極的だ。2026 年は、上限 60 億円、発行済株式の約 11% にあたる自社株買いを決めた。過去最大である。配当は増やす方針で、株主優待もある。純利益を大きく上回る額を一度に返すため、自己資本は薄くなる。
買収は、組織開発のストックを厚くするものが中心だ。ユニポスもSELFも株式交換で、現金は使っていない。SELFの対価は会社が持つ自己株式で、新しい株は出さない。会社は、ストック化に役立つ案件を常に探していると説明している。
創業者の小笹芳央会長が大株主で、大量保有報告書では保有比率が 3 割台後半とされる。資産管理会社を含むとみられる。創業者側が議決権の多くを握るので、第三者の買収提案は通りにくい。一方で、買収や還元の判断も会長に集まる。少数株主にとっては、その判断が価値を左右する。
10 年の還元は、配当の増額と 2026 年の自社株買い(上限 60 億円)の方針に沿う。このうち取得ずみの約 59 億円は株数に反映ずみなので、還元の合計から除いた。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
組織開発は、診断と改善の仕組みを月額で積み上げるストック型に変わりつつある。支援先は約 1,700 社で、会社は 2030 年に営業利益 150 億円を掲げる。診断のデータと顧客との関係は、確かな資産だ。
AI が変革を迫る時代に、会社の「やる気」を測って変える需要は高まる。AI を入れても、人が動かなければ成果が出ない。会社は AI を使った変革の支援へ寄せ、診断の先の需要を取り込める。
ALT の配置は、自治体の入札に支えられた安定した事業だ。現場に人が立つ仕事で、AI に置き換わりにくい。人材紹介の OpenWork は、口コミのデータという独自の資産を持つ。自社株買いなど還元も積極的で、創業者が大株主として方針を支える。診断に AI を取り込めれば、価値は今を保つ。診断の先にある組織変革の支援は、人の関わりが要る領域として残る。診断を AI で安く作れても、結果を現場に根づかせる仕事は代わりにくく、そこに会社の価値が残るという見方である。
慎重な見方
売上の約 6 割は、画面で使う月額課金と人の工数で売る仕事だ。AI エージェントは、診断も改善提案も自動で出す。大手の人事システムが AI を標準で組み込めば、診断を別に買う理由が薄れる。
人材紹介は、AI がマッチングを担う世界で手数料を保てない。スクールも、知識を教える講座は AI に聞けば済む。2025 年にはスクールののれんを全額減損しており、この領域の苦戦は既に現実だ。
ALT は利益率が低く、入札で自治体が直接雇用に戻せば縮む。自治体の予算にも左右される。創業者が議決権の多くを握り、買収や還元の判断が集中する。会社計画の営業利益 150 億円は、AI エージェントの影響を織り込んでいない。AI を売り物にして出た売上の金額も、開示されていない。診断を安く出す競合が増えれば、ストックの更新率も下がる。月額課金の強みである解約の少なさも、AI の安い代替の前では守れない。しかも株主還元で自己資本が薄く、減損が出れば財務の余裕も小さい。
どちらに重みを置いたか
組織開発のデータと ALT の下支えは、強気の見方が正しい。ただ筆者は、AI エージェントが診断・紹介・知識講座を置き換える流れが、10 年の価値を決めると見る。会社計画は、その流れを織り込んでいない。
楽観にも数量 1.0 倍以上は置かない。やや悲観と悲観を合わせて 40% を置いた。置き換えの影響は中立の数量と価格に入れたので、確率では重ねて引かない。悲観では売れる事業の税後から純負債を引いた価値しか残らない。期待は今の値段を大きく下回る。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/12 期)
確率で加重した株価時価総額 239 円242 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 209 円212 億円)。 今の値に割り戻すと 253 円256 億円、今との差 −56.3%、 期待の年率 −2.5%(資本コスト 8.0%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 5% | 572 円579 億円 | 330 円335 億円 | +55.6% | +4.5% | 45 円46 億円 |
| やや楽観 | 17% | 437 円443 億円 | 281 円285 億円 | +23.9% | +2.2% | 122 円124 億円 |
| 中立 | 38% | 255 円259 億円 | 218 円221 億円 | −18.4% | −2.0% | 180 円182 億円 |
| やや悲観 | 25% | 132 円133 億円 | 179 円181 億円 | −46.5% | −6.1% | 78 円79 億円 |
| 悲観 | 15% | 40 円40 億円 | 118 円119 億円 | −72.9% | −12.2% | 24 円24 億円 |
| 加重平均 | 100% | 239 円242 億円 | 209 円212 億円 | −22.7% | −2.5% | 448 円454 億円 |
今の株価時価総額 580 円587 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 5% 診断の需要が続き、規模は今の水準を守る 利益 46 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 572 円579 億円
組織開発の支援社数は今の 1,700 社の水準を守り、診断と改善の月額課金も値上げされて、売上は物価並みに伸びる。AI エージェントは診断の作業を安くするが、会社は AI を使った変革の支援へ寄せ、顧客を逃さない。ALT の配置人数も、人材紹介の成約件数も、今と同じ水準を保つ。全社の売上は約 550 億円と今を 3 割余り上回り、営業利益は約 76 億円になる。会社が掲げる 2030 年の営業利益 150 億円の計画には届かない。数量の伸びは戻らず、減らないことが楽観になる、厳しい前提の筋書きである。純利益の 85% を返す方針は変わらない。
- 組織開発(モチベーションクラウド・IR 支援):数量 1,700(年間支援社数(社))× 価格 1,307(1 社当たり年間売上(万円))→ 売上 222 億円・営業利益 58 億円。数量 1.00 倍・価格 1.34 倍・営業利益率 26%
- ALT 配置(小中高の外国人英語指導助手):数量 2,465(配置している ALT の人数(人、推定))× 価格 750(ALT 1 人当たり年間売上(万円))→ 売上 185 億円・営業利益 16 億円。数量 1.00 倍・価格 1.34 倍・営業利益率 8%
- 人材紹介・OpenWork:数量 3,470(紹介の年間成約件数(件、推定))× 価格 201(1 件当たり売上(万円))→ 売上 70 億円・営業利益 10 億円。数量 1.00 倍・価格 1.34 倍・営業利益率 14%
- 個人開発(キャリアスクール・学習塾):数量 6.0(年間の受講生の数(万人、推定))× 価格 12(1 人当たり年間売上(万円))→ 売上 72 億円・営業利益 3 億円。数量 1.00 倍・価格 1.20 倍・営業利益率 4%
倍率:事業の純利益 46 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 37.3% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 22.7%、10 年より先の名目の伸び g 0.0% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.5 倍、時価総額 571 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:AI エージェントを売り物にして出た売上・受注の金額開示が無く、楽観でも数量は 1.0 倍までと決めた。組織開発の更新、ALT の入札、人材紹介の成約がそろって守られる筋書きなので 5% に絞った。
やや楽観 17% 組織開発は 15% 減るが、ALT が守る 利益 34 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 437 円443 億円
AI エージェントが診断と改善提案の一部を引き受け、組織開発の支援社数は今より 15% 減る。値段は物価に近い 1.30 倍まで上がるが、診断の月額は AI の安い競合に押される。ALT の配置人数はほぼ今の水準を保ち、会社の利益を下支えする。人材紹介は 15% 減り、スクールも同じ割合で減る。全社の売上は約 470 億円と今を 14% ほど上回る。賃金が年 3% で上がる中、営業利益は約 57 億円と今を少し下回る。大型の買収は控え、返せる額は今より小さくなる。診断のデータの蓄積は残るので、既存の顧客との関係を深めることで売上を守る。
- 組織開発(モチベーションクラウド・IR 支援):数量 1,445(年間支援社数(社))× 価格 1,268(1 社当たり年間売上(万円))→ 売上 183 億円・営業利益 44 億円。数量 0.85 倍・価格 1.30 倍・営業利益率 24%
- ALT 配置(小中高の外国人英語指導助手):数量 2,391(配置している ALT の人数(人、推定))× 価格 728(ALT 1 人当たり年間売上(万円))→ 売上 174 億円・営業利益 14 億円。数量 0.97 倍・価格 1.30 倍・営業利益率 8%
- 人材紹介・OpenWork:数量 2,950(紹介の年間成約件数(件、推定))× 価格 195(1 件当たり売上(万円))→ 売上 58 億円・営業利益 7 億円。数量 0.85 倍・価格 1.30 倍・営業利益率 12%
- 個人開発(キャリアスクール・学習塾):数量 5.1(年間の受講生の数(万人、推定))× 価格 12(1 人当たり年間売上(万円))→ 売上 58 億円・営業利益 2 億円。数量 0.85 倍・価格 1.15 倍・営業利益率 3%
倍率:事業の純利益 34 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 34.8% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 21.4%、10 年より先の名目の伸び g 0.0% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.5 倍、時価総額 425 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:AI エージェントが診断の作業を引き受け、組織開発の社数が減る筋書きの中で良い側。ALT の入札が下支えする前提で、17% を置いた。
中立 38% 組織開発が 3 割減り、利益が半分になる 利益 19 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 255 円259 億円
AI エージェントが診断と改善提案の大半を自動化し、組織開発の支援社数は今より 3 割余り減る。大手の人事システムが AI を標準で組み込み、診断の月額は 1.15 倍にとどまる。人材紹介の成約は 3 割余り減り、スクールの受講生も同じ割合で減る。ALT は今より 1 割減にとどまり、会社の利益を支える。全社の売上は約 360 億円と今を 1 割余り下回り、営業利益は約 32 億円と、今の水準の半分ほどになる。借金は小さく財務は崩れないが、のれんの減損の再発にも注意が要る。会社は ALT と組織開発の顧客基盤を軸に、不採算の事業を整理する。返す額は今より小さい。
- 組織開発(モチベーションクラウド・IR 支援):数量 1,156(年間支援社数(社))× 価格 1,121(1 社当たり年間売上(万円))→ 売上 130 億円・営業利益 26 億円。数量 0.68 倍・価格 1.15 倍・営業利益率 20%
- ALT 配置(小中高の外国人英語指導助手):数量 2,218(配置している ALT の人数(人、推定))× 価格 672(ALT 1 人当たり年間売上(万円))→ 売上 149 億円・営業利益 10 億円。数量 0.90 倍・価格 1.20 倍・営業利益率 7%
- 人材紹介・OpenWork:数量 2,360(紹介の年間成約件数(件、推定))× 価格 180(1 件当たり売上(万円))→ 売上 43 億円・営業利益 4 億円。数量 0.68 倍・価格 1.20 倍・営業利益率 10%
- 個人開発(キャリアスクール・学習塾):数量 4.2(年間の受講生の数(万人、推定))× 価格 10(1 人当たり年間売上(万円))→ 売上 42 億円・営業利益 0 億円。数量 0.70 倍・価格 1.00 倍・営業利益率 0%
倍率:事業の純利益 19 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 23.8% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 15.9%、10 年より先の名目の伸び g 0.0% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.5 倍、時価総額 236 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:AI エージェントが診断・紹介・知識講座を置き換える流れの中心の筋書き。人月・席の型は数量 0.68〜0.70 倍、現場の体の ALT は 0.90 倍と、決まりの範囲で置いた。数量と価格に入れた分を、確率と g で重ねて引いていない。
やや悲観 25% 組織開発が半分近くに減り、人材紹介も縮む 利益 10 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 132 円133 億円
AI エージェントが診断から改善まで一貫して引き受け、組織開発の支援社数は今の 55% ほどになる。値段も 1.05 倍と、物価に大きく届かない。人材紹介の成約は 45% 減り、スクールの受講生も同じ割合で減る。ALT は入札で 2 割減るが、事業として残る。全社の売上は約 280 億円と今の 7 割弱に縮み、営業利益は約 16 億円。固定の人件費と家賃が重く、利益は薄い。買収で積み上げたのれんの減損が再び出る。創業者の判断で、会社は小さく再編される。会社は不採算のスクールを閉じ、ALT と組織開発の核に人を寄せる。それでも成長の物語は終わる。
- 組織開発(モチベーションクラウド・IR 支援):数量 935(年間支援社数(社))× 価格 1,024(1 社当たり年間売上(万円))→ 売上 96 億円・営業利益 14 億円。数量 0.55 倍・価格 1.05 倍・営業利益率 15%
- ALT 配置(小中高の外国人英語指導助手):数量 1,972(配置している ALT の人数(人、推定))× 価格 616(ALT 1 人当たり年間売上(万円))→ 売上 122 億円・営業利益 7 億円。数量 0.80 倍・価格 1.10 倍・営業利益率 6%
- 人材紹介・OpenWork:数量 1,909(紹介の年間成約件数(件、推定))× 価格 162(1 件当たり売上(万円))→ 売上 31 億円・営業利益 2 億円。数量 0.55 倍・価格 1.08 倍・営業利益率 7%
- 個人開発(キャリアスクール・学習塾):数量 3.3(年間の受講生の数(万人、推定))× 価格 9.50(1 人当たり年間売上(万円))→ 売上 31 億円・営業利益 −1 億円。数量 0.55 倍・価格 0.95 倍・営業利益率 -3%
倍率:ROE 8.8%。RONIC = k 8% + 残る割合 1/2 ×(ROE − k)= 8.8%、g は名目 0.0% として、PER =(1 − g ÷ RONIC)÷(k − g)= 12.46 倍。人月・席の型で寿命は短く、g は名目 0%(横ばい)まで。堀は普通。
確率:AI エージェントが診断と紹介の大半を置き換え、顧客が値下げを求める筋書き。ALT 以外の事業は人月・席の型で、起こりやすい形のため、25% を置いた。
悲観 15% AI エージェントが診断と紹介を置き換え、赤字に沈む 利益 −3 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 40 円40 億円
組織開発の診断は AI エージェントが無料に近い価格で出す世界になり、支援社数は今の 4 割ほどに減る。人材紹介もスクールも 6 割近く縮み、赤字に沈む。ALT だけは入札で 35% 減ってもなお残るが、利益は薄い。全社の売上は約 200 億円と今の半分前後に縮み、営業利益は赤字になる。もはや優良会社ではなく、事業の一部を売って整理する会社である。株主の手元に残るのは、売れる事業の税後の価値から、自社株買いで増えた純負債を引いた額だけになる。創業者の判断で、残る事業は小さく再編される。10 年後の会社は、ALT を中心にした小さな会社になっている。
- 組織開発(モチベーションクラウド・IR 支援):数量 714(年間支援社数(社))× 価格 926(1 社当たり年間売上(万円))→ 売上 66 億円・営業利益 0 億円。数量 0.42 倍・価格 0.95 倍・営業利益率 0%
- ALT 配置(小中高の外国人英語指導助手):数量 1,602(配置している ALT の人数(人、推定))× 価格 560(ALT 1 人当たり年間売上(万円))→ 売上 90 億円・営業利益 3 億円。数量 0.65 倍・価格 1.00 倍・営業利益率 3%
- 人材紹介・OpenWork:数量 1,388(紹介の年間成約件数(件、推定))× 価格 143(1 件当たり売上(万円))→ 売上 20 億円・営業利益 0 億円。数量 0.40 倍・価格 0.95 倍・営業利益率 -2%
- 個人開発(キャリアスクール・学習塾):数量 2.4(年間の受講生の数(万人、推定))× 価格 8.50(1 人当たり年間売上(万円))→ 売上 20 億円・営業利益 −2 億円。数量 0.40 倍・価格 0.85 倍・営業利益率 -8%
倍率:稼ぐ力が崩れた姿。事業の稼ぎは床に使わず、売れる事業の税後から純負債を引いた約 40 億円を、今の自己資本 136 億円に対する PBR で表す。
確率:AI エージェントが診断・紹介・スクールを構造的に置き換え、売上が 10 年で半分前後になる筋書き。稼ぐ力そのものが崩れる形で、15% を置いた。やや悲観と合わせて 40%。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
組織開発(モチベーションクラウド・IR 支援)
社員アンケートで組織の状態を測り、改善まで支える月額課金の事業。IR 支援も含む。
| 数量年間支援社数(社) | 価格1 社当たり年間売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 1,700 | 975 | 166 | 42 |
| 10 年後 中立 | 1,156 | 1,121 | 130 | 26 |
取り方:コンサル・クラウド事業の支援社数は約 1,700 社(統合報告書)。組織開発の売上は 2025 年 12 月期の売上構成比 39.9% から約 166 億円なので、1 社当たり約 975 万円とした。IR 支援とユニポスの売上も含む粗い割り算で、営業利益(約 42 億円)は筆者の推定(減損を除く)。 AI エージェント代替の型:売上の約 40%。モチベーションクラウド(診断と改善の月額課金)は画面で使う席・社課金の型、IR 支援やコンサルは人月型が混じる。AI エージェントが診断と改善提案を自動化し、値下げ圧力が強い。AI エージェントを売り物にして出た売上の金額は開示されていない。数量は 10 年中立で 0.68 倍、価格は 1.15 倍(物価を下回る)とした。
ALT 配置(小中高の外国人英語指導助手)
自治体の入札で委託を受け、全国の公立校へ外国人の英語指導助手を送る事業。
| 数量配置している ALT の人数(人、推定) | 価格ALT 1 人当たり年間売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 2,465 | 560 | 138 | 12 |
| 10 年後 中立 | 2,218 | 672 | 149 | 10 |
取り方:ALT 配置の売上は 2024 年 12 月期に 128.7 億円。2025 年はマッチング部門全体の構成比 45.7% から約 138 億円と推定した。民間派遣の ALT は全国で約 6,200 人(文科省 2023 年度の 18,127 人×34%)で、そのうち 4 割、約 2,465 人を担うと置き、1 人当たり約 560 万円とした。営業利益約 12 億円は推定。 AI エージェント代替の型:売上の約 33%。公立校へ外国人の英語指導助手を送る「現場の体」の型。自治体の入札で、AI の影響は事務部分に限る。今の置き方を基本に、数量 0.90 倍、価格 1.20 倍とした。
人材紹介・OpenWork
口コミサイト OpenWork を入口にした求職者集めと、新卒・中途の人材紹介。
| 数量紹介の年間成約件数(件、推定) | 価格1 件当たり売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 3,470 | 150 | 52 | 7 |
| 10 年後 中立 | 2,360 | 180 | 43 | 4 |
取り方:人材紹介(OpenWork 含む)は 2024 年 12 月期に 39.7 億円。2025 年は伸びが速く約 52 億円と推定した。紹介手数料の相場(年収の 3 割、約 150 万円)から成約件数を約 3,470 件と逆算した。営業利益約 7 億円は推定。 AI エージェント代替の型:売上の約 13%。人材紹介は事務系の人の工数と成果報酬の型で、AI エージェントがマッチングを置き換える側にある。数量は中立 0.68 倍、価格は 1.20 倍とした。
個人開発(キャリアスクール・学習塾)
パソコンのアビバ、資格の大栄、英語、中学受験の個別指導などのスクール。
| 数量年間の受講生の数(万人、推定) | 価格1 人当たり年間売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 6.0 | 10 | 60 | 1 |
| 10 年後 中立 | 4.2 | 10 | 42 | 0 |
取り方:キャリアスクールと学習塾の売上は 2024 年 12 月期に 64.3 億円、2025 年は構成比 14.4% から約 60 億円。受講生の数は開示がないので、1 人当たり約 10 万円(講座単価)から約 6 万人と推定した。営業利益約 1 億円も推定。 AI エージェント代替の型:売上の約 14%。キャリアスクールと学習塾。知識を教える講座は AI に置き換えられやすい。2025 年にはのれんを全額減損している。数量は中立 0.70 倍、価格は 1.0 倍(値上げなし)とした。
リスクと懸念
AI エージェントによる診断・紹介・スクールの置き換え(AI エージェント代替)
売上の約 6 割は、月額課金や人の工数で売る型だ。AI エージェントが診断と改善提案、紹介のマッチング、知識講座を肩代わりすれば、顧客の発注は減る。10 年の中立で組織開発は 3 割余り減り、値上げも物価に届かない。悲観では売上が半分前後に縮み、稼ぐ力が崩れる。ALT だけが下支えとなる。
会社計画の達成の重さ
ARR を 2025 年の 75 億円から 2030 年に 240 億円へ 3 倍超にする計画は、年 26% の成長に当たる。診断の先の採用支援・マネジメント支援・海外・中小向けの廉価版がいずれも当たる前提だ。どれか一つでも遅れれば、2030 年の営業利益 150 億円は遠のく。
ALT 配置の入札と自治体の方針
ALT 配置は自治体の入札で決まり、売上の約 3 分の 1 を占める。値段を自分で決められず、最低賃金の上昇を委託料に転嫁できなければ利益率が削られる。自治体が直接雇用や JET に戻す動きが広がれば、人数も減る。
景気で採用と販促が止まる
人材紹介と、採用・教育に関わる組織開発の一部は、不況の年に企業が真っ先に絞る費用だ。営業利益率は 2020 年に 0.7% まで落ちた。ストック型の収益が増えたとはいえ、全社が景気から切り離されたわけではない。
買収の実行と減損
キャリアスクールののれんは全額が減損された。ユニポスと SELF の取り込みも、狙いどおり売上と利益に結びつかなければ、のれんが次の減損の種になる。2026 年上期は、買収の影響で営業利益の伸びが 2% にとどまった。
人の質に頼る提案力
組織開発はコンサルタントの提案の質が価値を決める。投資家との質疑では、担当者の休職が重なり、提案の質にばらつきが出ているとの指摘が出た。人が増えた分だけ質を保てるか、ストックの解約率に表れる。
創業者の持株と少数株主
創業者の小笹会長が、資産管理会社を含め議決権の多くを持つとみられる。買収や還元の判断が会長に集まる。判断が少数株主の利益に沿わない場合、外から正す力は弱い。
今後の分かれ目
- AI エージェントを売り物にした売上・受注の金額が決算で開示される
- 開示が診断の減りを補う規模なら、楽観側の数量を引き上げる。開示が無い間は、数量 1.0 倍を超える筋書きは置かない。
- 年間経常収益(ARR)が計画どおり 2028 年に 150 億円に届く
- 組織開発のストック化が計画どおり進んだことになり、やや楽観・楽観の筋書きに近づく。
- モチベーションクラウドの新規と更新の値段が AI の競合で下がる
- ストック型の収益の積み上がりが鈍り、やや悲観の筋書きに近づく。
- 自治体が ALT を直接雇用や JET に戻す動きが広がる
- ALT 配置の人数が減り、人材紹介とあわせて全社の利益率が下がる。
- 景気が後退し、企業が採用と教育の費用を削る
- 人材紹介と組織開発の一部が落ち込み、営業利益率は 2020 年のような低さになりうる。
- 自社株買いが終わり、還元の水準が下がる
- 自己資本の伸びと ROE の見かけが変わり、評価は純利益の伸びだけに頼ることになる。
見ておくもの
- 年間経常収益(ARR)の開示(2025 年末 75 億円、2028 年 150 億円の目標)
- モチベーションクラウドの支援社数と解約・更新の動き
- ALT 配置の人数と自治体の入札結果、直接雇用や JET との比率
- SELF 取り込み後のクロスセルと営業利益率(2026 年上期は営業利益 +2%)
- 自社株買いと配当の水準、キャリアスクールの赤字の縮小
倍率と資本コストの決め方
倍率は式だけで置いた。人月・席の型なので長期の g(10 年より先の名目の伸び)は 0% とし、PER は 1÷k = 11.4 倍になる。k は AI エージェント代替の寿命で決まりの下限の +1.0% を上乗せして 8.75%。AI エージェント代替の理由は、主に中立の数量と価格に入れ、k は下限寄り、確率は 40%、g は 0% と、重ねすぎないようにした。今の PER や同業・過去の倍率は使っていない。悲観は稼ぐ力でなく、売れる事業の税後から純負債を引いた床で置いた。自己資本は「自社株買い後の 77 億円+期間の純利益−還元」で積んだ(前の版は買い戻し前の 136 億円から流していた誤りを直した)。家賃を営業費用に入れた今の形でそろえ、新リース会計で数字の形が変わる点は入れていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.43→12.5 倍・やや楽観 PER 11.43→12.5 倍・中立 PER 11.43→12.5 倍・やや悲観 PER 11.43→12.46 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。