結論
MS&Consulting は、飲食店・小売店・自動車販売店などに客として覆面で入り、接客を採点する会社だ。調査員の目という人の手間を売る商売で、東京の小さな上場会社である。筆者は、今の値段に割安感はなく、むしろ 10 年先の姿は今よりやや見劣りすると見る。いちばんの理由は、利益の天井の低さだ。
稼ぎの源は単純だ。調査 1 回あたり 1 万円ほどの料金で、年に約 19 万回こなす。売上は 26 億円弱で、営業利益率は 1 割に届かない。2016 年から 2019 年は 2 割前後あったが、コロナ禍で外食・小売の調査が止まって崩れ、まだ戻りきっていない。
良い点は財布の中身だ。借金がなく、現金が 9 億円ほど余分にある。自己資本比率は 8 割で、つぶれる心配は小さい。ただし無配が続いており、この現金が株主に戻る保証は薄い。
調査の数量は、外食や小売の店舗数に連動して横ばいか微減だ。価格は物価並みに上げにくい。従業員の満足度を測る調査やコンサルが伸びているが、AI が分析を肩代わりしやすい領域でもある。10 年後は、売上が 3 割ほど増えても営業利益は 4 億円弱にとどまる。時価総額は 30 億円台前半で、今の 25 億円から年 3% 程度しか伸びず、資本コスト 8.5% を稼げない形になる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「持ち続けたい事業」に届かない。事業そのものが悪いのではなく、稼ぐ力に対して値段の安全域が薄いからだ。
オーナー利益を考えると、営業利益のほとんどは調査員の報酬と本社の人件費を払った残りで、設備投資は小さい。この点は良い。しかし、調査という仕事は 10 年後も同じ料金体系である保証がなく、AI による代替や顧客の絞り込みの影響を受けやすい。わかる事業ではあるが、競争優位が見えない。
資本配分は気になる点が多い。現金は厚いのに、配当も自社株買いも実績がない。経営が現金を株主のために使う姿勢を示さない限り、帳簿の現金を満額で評価するのは危うい。
安全域の観点では、悲観でも純現金が床になるため大負けはしにくい。一方、楽観でも利益の伸びが小さく、勝ちの幅が限られる。見合いとしては、守りは堅いが攻めの余地が小さい会社である。
何で稼ぐ会社か
中核は覆面調査(ミステリーショッピングリサーチ)で、売上の 4 分の 3 ほどを占める。調査員が客として店を訪れ、入店から会計までの接客を基準表に沿って採点し、結果を店ごとに報告する。業種別の売上では外食が最大で、小売、自動車販売店が続く。顧客は 700 社前後、年間の調査は 19 万回ほどである。
残りは 2 つだ。ひとつは従業員満足度調査とコンサルティングで、調査結果をもとに職場や店の運営を改善する提案まで売る。もうひとつは外食向けのクラウドサービス(SaaS)だが、一部のサービスを終了したため縮んでいる。2026 年 2 月期は、調査が前の期より 3% 弱、コンサルが 8% 伸び、クラウドは 2 割近く減った。
調査の仕事は、ほぼ「調査員の人数 × 1 回の報酬」と「社内の分析と報告の手間」でできている。調査員は店に行く個人で、会社が抱える固定費は本社の人件費と家賃が中心だ。2015 年から産業技術総合研究所と共同研究をしており、接客と従業員満足の関係をデータで示す点が、競合との違いとして売り込みの核になっている。
コロナ前は、利益の大半を覆面調査で稼ぐ会社だった。今は調査以外の売上が 4 分の 1 まで増え、顧客の悩みにコンサルまで付けて単価を上げる路線へ舵を切っている。
優良さと弱いところ
優良さを一言でいえば、堅実だが堀は浅い。覆面調査の技術そのものは、競合も同じ方法でまねできるからだ。
強みは 3 つある。第 1 に、年に約 19 万回という調査の蓄積が、店ごとの比較データになる。第 2 に、産業技術総合研究所との研究が、採点基準の説得力を支える。第 3 に、外食・自動車・小売の大手を顧客に持ち、毎年の定期調査が積み上がる。解約は少ないが、値上げを通すほどの力は見えない。
弱みは利益率の低さだ。調査員への報酬が最低賃金とともに上がるので、原価は物価に連動して膨らむ。顧客は広告費や販促費の一部として調査費を出すため、景気が悪くなると真っ先に絞られる。コロナ禍で営業利益が赤字に沈んだ事実が、この感度の高さを物語る。
資本効率も平凡だ。過去 10 年の自己資本利益率の中央値は 7% で、資本コストの 7.5% を超える年が少ない。現金を厚く持つぶん、数字が薄まっている面もある。経営の舵取りでは、コンサルへ寄せる方針は筋が通るが、計画の達成実績は安定していない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
覆面調査の市場は、国内ではっきりした統計がない。世界では 2025 年に 23 億ドル前後、翌年に 24 億ドル程度と見積もられ、緩やかに伸びる領域とされる。日本の中心顧客は、店舗網を持つ外食・小売・自動車・美容などの大手だ。
数量は店舗数と調査頻度で決まる。外食と小売の店舗数は、人口減で今後 10 年に横ばいから微減と見るのが自然だ。調査の回数は、同社の例では 2025 年 2 月期の 20 万回超から、2026 年 2 月期の 19 万回へ少し減った。調査先の数も、会社案内の 900 社台(2025 年 2 月末)から 700 社台(2026 年 2 月期)へ減って見える。数え方が同じかは確かめきれていないが、需要が拡大する局面ではない。
価格は人件費に引きずられる。調査員の報酬は最低賃金に連動し、競合との値下げ競争もあるため、料金を物価並みに上げるのは簡単ではない。
技術の変化は両刃だ。調査員の代わりに AI が店の映像や口コミを読み取る動きが広がれば、安い代替手段になる。一方、客として実際に体験した結果を採点する工程は、機械に置き換えにくい。同社はこの人の目を、データとコンサルで包んで売ろうとしている。競合には、調査会社のア・ソリューションなど、専業の中小が多い。
資本政策と M&A
資本の使い方は、いま株主に厳しい。配当は出さず、業績予想も無配の前提だ。会社の方針は「財務の健全性に留意しつつ配当政策に基づき実施する」という一般的な言い回しにとどまり、積み上がった現金の使い道は示されていない。
直近は自己株式の処分で 1.8 億円ほどの収入があった。処分先は確かめていないが、株数が少し増える方向の動きだ。M&A の実績は見当たらない。
筆者は、余った現金を事業の拡大にも還元にも向けていない点を、いちばんの減点材料と見る。過去 10 年の純現金は 4 億円から 9 億円へ増えたが、同じ時期の営業利益は伸びていない。現金は時価総額の 3 分の 1 を占めるが、取り分は戻り方次第で半分ほどの価値しかないと見る。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
覆面調査は景気の底でも店舗が続く限り必要とされる定期の仕事で、コロナ後の回復はまだ途中だ。2026 年 2 月期に営業利益率が 1 割近くまで戻り、会社は 2028 年 2 月期に 13% 台を計画している。調査以外の売上が 4 分の 1 まで増え、コンサルの伸びが 8% あるため、調査員の手間だけに頼らない構造へ変わりつつある。
産業技術総合研究所との共同研究でつくった採点基準は、顧客の現場で使われ続けるほど価値が増す。従業員満足度のデータが累計 280 万件を超えた点も、AI 時代にはデータが資産になる。外食向け SaaS の撤退で重荷が減り、赤字の 1 つが消える。
純現金が時価総額の 3 分の 1 を占め、悲観でも大きく割れない。少しでも株主還元の方針が出れば、評価は上がる。調査という地味な仕事が、データとコンサルを足して値上げを通せるようになれば、2 割あった利益率への道は閉じていない。
慎重な見方
覆面調査は調査員の人件費で売る労働集約の仕事で、最低賃金の上昇を価格に転嫁できていない。過去 10 年の営業利益率は 2 割から赤字まで振れ、安定して稼ぐ構造がなかった。2025 年 2 月期にも赤字に落ちている。
調査先は 900 社台から 700 社台へ、調査の回数も 20 万回超から 19 万回へ縮んで見える(数え方の違いは残る)。店舗の減少と、広告費・販促費の削減が重なれば、数量はさらに細る。AI が店の映像や口コミを読み解けば、調査員を送る必要がなくなる顧客も出る。
現金も、無配のままでは株主の手に届かない。使い道が示されない現金を満額で数えるのは甘い。会社の計画は、過去に何度も未達に終わった。コンサルの伸びが 8% あっても、調査の減りと SaaS の撤退を埋めきれていない。利益率が 1 割に届かない会社に、高い倍率は付けられない。さらに、顧客が AI に仕事を移す最初の一手は、人手のかかる定期調査の見直しになりやすい。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方が優勢だ。調査先の数と調査回数がともに減って見える事実は、強気の見方の「回復途中」を弱める。一方、純現金の厚さと営業黒字の回復は本物で、悲観の筋書きでも床がある。そのため、確率は中立を 4 割に置きつつ、やや悲観を楽観側より重く 25% とした。悲観は、構造的に調査が AI で置き換わる筋書きで 1 割にとどめた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/02 期)
確率で加重した株価時価総額 760 円34 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 27 円1 億円)。 今の値に割り戻すと 354 円16 億円、今との差 −35.2%、 期待の年率 +3.7%(資本コスト 8.5%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 5% | 1,314 円59 億円 | 191 円9 億円 | +175.0% | +10.6% | 75 円3 億円 |
| やや楽観 | 20% | 1,038 円47 億円 | 89 円4 億円 | +105.9% | +7.5% | 225 円10 億円 |
| 中立 | 40% | 927 円42 億円 | 0 円0 億円 | +69.4% | +5.4% | 371 円17 億円 |
| やや悲観 | 25% | 420 円19 億円 | 0 円0 億円 | −23.1% | −2.6% | 105 円5 億円 |
| 悲観 | 10% | 111 円5 億円 | 0 円0 億円 | −79.8% | −14.8% | 11 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 760 円34 億円 | 27 円1 億円 | +44.0% | +3.7% | 787 円36 億円 |
今の株価時価総額 547 円25 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 5% 楽観:コンサルがもう 1 本の柱になる 利益 4 億円 · PER 12.8 倍 · 株価時価総額 1,314 円59 億円
調査員の目で集めた接客データに、AI による分析と改善提案を組み合わせる路線が当たる。従業員満足度調査から店の運営改善までを一括で請け負い、コンサルの稼働は今の 5 割増の水準になる。覆面調査そのものは外食・小売の大手で定期契約が続き、回数は今と同じ 19 万回台を保つ。調査料金は人件費の転嫁に成功し、物価並みに上がる。SaaS は新しい形で作り直されて小さな黒字になる。営業利益率は 15% 近くまで戻り、2016 年から 2019 年の 2 割には届かないが、会社計画の 13% 台を超える。会社は利益の 3 割を配当に回し、現金の使い道が見えるようになる。
- 覆面調査(ミステリーショッピング):数量 19.1(調査の回数(万回))× 価格 1.37(1 回あたりの売上(万円))→ 売上 26 億円・営業利益 4 億円。調査 19.1 万回・1 回 1.36 倍
- 従業員満足度調査・コンサルティング:数量 765(稼働の人月)× 価格 0.01(1 人月あたりの売上(億円))→ 売上 10 億円・営業利益 2 億円。稼働人月 765
- 外食向け SaaS:数量 200(契約社数)× 価格 0.01(1 社あたりの年間売上(億円))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。契約 200 社
倍率:事業の純利益 4 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.3% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)3 億円。全体の PER 12.77 倍、時価総額 55 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:コンサルが 5 割増え、調査の数量が横ばいを保つ筋書きは、顧客数が減っている現状からは遠く、5% にとどめた。
やや楽観 20% やや楽観:計画どおりに利益率が戻る 利益 3 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 1,038 円47 億円
調査の回数はほぼ今の水準を保ち、料金は物価に少し届かない程度で上がる。コンサルは年 2% ほどの実質の伸びで、調査員の報酬上昇を価格に移す力も少しずつ戻る。SaaS は小さな黒字に落ち着く。営業利益率は 13% 台に乗り、会社が掲げる計画と同じ水準で定着する。配当は小さく始まり、利益の 15% 程度が株主に戻る。外食・小売の大手が調査費を絞らず、従業員満足度の調査がコンサルへ広がる中間の姿だ。現金は引き続き厚いが、買収や大型の投資には使われない。調査員の報酬上昇は、料金改定でほぼ吸収できる。景気は普通に循環し、外食・小売の大手との定期契約が下支えになる。
- 覆面調査(ミステリーショッピング):数量 18.7(調査の回数(万回))× 価格 1.34(1 回あたりの売上(万円))→ 売上 25 億円・営業利益 4 億円。調査 18.7 万回
- 従業員満足度調査・コンサルティング:数量 640(稼働の人月)× 価格 0.01(1 人月あたりの売上(億円))→ 売上 9 億円・営業利益 1 億円。稼働人月 640
- 外食向け SaaS:数量 130(契約社数)× 価格 0.01(1 社あたりの年間売上(億円))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。契約 130 社
倍率:事業の純利益 3 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.6% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)3 億円。全体の PER 11.82 倍、時価総額 40 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社計画の 13% 台に近づく筋書きで、実績の安定度を考えると中立より低い 2 割とした。
中立 40% 中立:数量は横ばい、利益率は 12% で止まる 利益 3 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 927 円42 億円
覆面調査は外食・小売の店舗減を、定期契約の維持と新しい業種の開拓で打ち消し、回数は今の 95% に収まる。料金は物価の 1.31 倍にとどまり、調査員の報酬上昇を完全には転嫁できない。コンサルは今と同じ稼働で、価格は物価並みに上がる。SaaS は縮小したまま小さな黒字になる。本社の人件費と家賃は物価で 1.34 倍に増える。営業利益率は 12% 近くで頭打ちとなり、2016 年から 2019 年の 2 割には戻らない。利益の伸びは物価に追いつく程度で、配当は出ないまま現金が積み上がる。顧客数は少しずつ減るが、残った顧客への調査頻度と単価の改善で、売上は名目で 2 割台の伸びにとどまる。AI は分析の補助として使われ、調査員の仕事を大きくは奪わない。
- 覆面調査(ミステリーショッピング):数量 18.2(調査の回数(万回))× 価格 1.32(1 回あたりの売上(万円))→ 売上 24 億円・営業利益 3 億円。調査 18.2 万回(95%)
- 従業員満足度調査・コンサルティング:数量 510(稼働の人月)× 価格 0.01(1 人月あたりの売上(億円))→ 売上 7 億円・営業利益 1 億円。稼働人月 510
- 外食向け SaaS:数量 100(契約社数)× 価格 0.01(1 社あたりの年間売上(億円))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。契約 100 社
倍率:事業の純利益 3 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.3% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)3 億円。全体の PER 11.76 倍、時価総額 33 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:覆面調査の数量は横ばい、コンサルが少し増える筋書きを 4 割に置いた。回復の途上にあり、中心になりやすい。
やや悲観 25% やや悲観:数量が 2 割縮み、料金も伸びない 利益 1 億円 · PER 8.2 倍 · 株価時価総額 420 円19 億円
外食・小売の店舗減と販促費の削減で、覆面調査の回数は今の 8 割に縮む。AI による映像・口コミ分析が一部の顧客で調査員の代わりになり、料金は物価の 1.25 倍にとどまる。コンサルでも分析の一部が AI に置き換わり、稼働が 2 割減る。SaaS は撤退して消える。調査員の報酬と本社の費用は物価で増える一方、売上は名目でほとんど増えないため、営業利益率は 9% 前後に沈む。現金は買収や事業の作り直しに一部が使われる。配当は出ない。顧客は調査の頻度を落とし、競合の安値提案に引きずられる。会社は人員の入れ替えで費用を抑えるが、本社の固定費は残り、利益は薄いまま続く。
- 覆面調査(ミステリーショッピング):数量 15.3(調査の回数(万回))× 価格 1.26(1 回あたりの売上(万円))→ 売上 19 億円・営業利益 2 億円。調査 15.3 万回(8 割)
- 従業員満足度調査・コンサルティング:数量 410(稼働の人月)× 価格 0.01(1 人月あたりの売上(億円))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。稼働人月 410
- 外食向け SaaS:数量 0.0(契約社数)× 価格 0.01(1 社あたりの年間売上(億円))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。契約 0 社
倍率:事業の ROE 2.9%(事業の純利益÷事業の自己資本)、k 8.50%。ROE が k 以下なので PER の上限は 1÷k=11.8 倍。上限の 7.0 割に置いて 8.2 倍。余った現金 3.0 億円は利息分を事業の利益から外し、戻り方 0.50 を掛けて足した。利益の質が落ちる筋書きで、上限の 7 割に置いた。
確率:調査先の数と調査の回数が足元で減って見える事実を重く見て、中立と並ぶ重さの 25% とした。
悲観 10% 悲観:調査が AI と口コミに置き換わる 利益 0 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 111 円5 億円
店の映像・レジのデータ・口コミを AI が読み解き、顧客が接客の質を安く常時測れるようになる。覆面調査の回数は今の半分に縮み、料金も値下げ競争で物価の 1.15 倍にとどまる。コンサルも同じ理由で稼働が半分になる。本社の人件費と家賃は固定費として残り、営業利益はほぼ消える。会社は人員を絞り、現金を使って事業を作り直すが、少数株主には使い道を決められない。時価総額は、事業の稼ぐ力でなく、残った純現金の一部で値が付く。顧客は大手を除いて自前の分析に移り、同社に残るのは一部の定期契約と、コンサルの小さな案件だけになる。
- 覆面調査(ミステリーショッピング):数量 9.6(調査の回数(万回))× 価格 1.16(1 回あたりの売上(万円))→ 売上 11 億円・営業利益 0 億円。調査 9.6 万回(半分)
- 従業員満足度調査・コンサルティング:数量 255(稼働の人月)× 価格 0.01(1 人月あたりの売上(億円))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。稼働人月 255
- 外食向け SaaS:数量 0.0(契約社数)× 価格 0.01(1 社あたりの年間売上(億円))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。契約 0 社
倍率:床の資産(純現金から運転資金と再編の費用を引いた分)に、戻り方 0.5 から 0.75 を掛けて値が付く筋書き。今の自己資本に床の PBR を掛けた。
確率:構造的に調査が置き換わる筋書きで、1 割に置いた。店舗数と調査の回数が減り続けている現状はこの方向だが、客として体験して採点する工程が完全には消えない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
覆面調査(ミステリーショッピング)
客として店を訪れ接客を採点する調査。外食・小売・自動車・レジャー・美容が顧客。
| 数量調査の回数(万回) | 価格1 回あたりの売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 19.1 | 1.01 | 19 | 3 |
| 10 年後 中立 | 18.2 | 1.32 | 24 | 3 |
取り方:2026 年 2 月期の調査 19.1 万回(報道)で売上を割った。売上は 25.85 億円のうち調査以外が 25.5% なので約 19.3 億円と推定。セグメント別の利益は開示が無く、全社 2.52 億円を見て調査 2.6・コンサル 0.6・SaaS −0.3・本社 −0.36 と推定した。
従業員満足度調査・コンサルティング
従業員満足度調査と、その結果を使った職場・店舗の改善提案。
| 数量稼働の人月 | 価格1 人月あたりの売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 510 | 0.01 | 5 | 1 |
| 10 年後 中立 | 510 | 0.01 | 7 | 1 |
取り方:調査以外の売上 6.6 億円のうち、SaaS を 1.5 億円と推定して残りの約 5.1 億円をコンサルと従業員調査とした。1 人月 100 万円の単価で割った推定値(開示なし)。
外食向け SaaS
外食店向けのクラウドサービス。一部サービスを終了して縮小中。
| 数量契約社数 | 価格1 社あたりの年間売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 150 | 0.01 | 2 | 0 |
| 10 年後 中立 | 100 | 0.01 | 1 | 0 |
取り方:前の期比で 2 割近い減収(報道)と、サービス終了の記述から、約 1.5 億円と推定した。契約社数と単価は開示がなく、1 社あたり年 100 万円の置き方(推定)。
リスクと懸念
外食・小売の店舗減
調査の需要は店舗数に連動する。人口減で外食や小売の店が減り、広告費や販促費が絞られると、調査の回数と顧客数が同時に縮む。調査先の数は会社の公表で 900 社台から 700 社台へ減って見える。
人件費の上昇を価格に移せない
調査員の報酬は最低賃金に引きずられ、毎年上がる。顧客は調査費を抑えたがるので、値上げが通らなければ営業利益率は 1 割前後から動かない。
AI による調査の置き換え
店の映像・口コミ・レジのデータを AI が読み解けば、調査員を送らなくても接客の質が測れる顧客が出る。従業員調査の分析も、AI が肩代わりしやすい仕事だ。
計画の未達が続く
営業利益は 2021 年 2 月期と 2025 年 2 月期に赤字だった。会社が示す 13% 台の利益率の計画を、いつ・どこまで達成できるかは未知数だ。
現金が株主に届かない
純現金は時価総額の 3 分の 1 に達するが、無配が続く。使い道が示されない現金は、満額の価値で数えにくい。
今後の分かれ目
- 配当や自社株買いの方針が示され、純現金の戻りが見えたら
- 余った現金の戻り方を 0.5 から上げてよい。中立の価値が数割押し上がる。
- 調査の回数が 2 年続けて前の期を下回ったら
- 中立の数量を下げ、やや悲観の確率を上げる。
- コンサルの売上が調査の 3 割を超えて安定し、利益率が 15% に乗ったら
- やや楽観・楽観の確率を上げる。
- 大手顧客が覆面調査を AI 分析に切り替える事例が出たら
- 悲観の確率を上げ、価格の伸びを物価より低く置く。
- 最低賃金が想定以上に上がり、料金の改定が通らなかったら
- 中立の営業利益率を 1 割前後に下げる。
見ておくもの
- 調査の回数と顧客数(決算説明資料)
- コンサル売上の伸びと営業利益率
- 配当・自社株買いの方針
- 調査員の報酬と料金改定の動き
倍率と資本コストの決め方
倍率は ROE と k から式で出した。ROE が資本コストを超えにくい会社なので PER の上限は 1÷k で、中立は上限の 8.5 割に置いた。今の株価や同業の倍率は使っていない。10 年の数量は店舗数の微減、価格は物価より少し低く置いた。余った現金は戻り方 0.5 で割り引いた。新リース会計基準は 2028 年 2 月期から効くが、家賃を営業費用に入れた今の形でそろえて置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.4→12.77 倍・やや楽観 PER 10.6→11.82 倍・中立 PER 10→11.76 倍)。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。