結論
日本動物高度医療センターは、町の動物病院から紹介された犬猫の難しい病気を診る専門病院の運営会社である。筆者の結論は「やや割安」だ。紹介元の広さと診療単価の引き上げ実績には本物の強さがあり、現在の時価総額は慎重に見た長期価値をやや下回る。ただし病院を増やすための資金と専門獣医師の確保が要り、何もしなくても利益が複利で増える事業ではない。
2026年3月期には紹介による延べ診療が約3万8千件へ増え、値上げ後も患者数は減らなかった。画像診断と在宅酸素レンタルを買収で取り込み、病院の外にも治療の接点を持った。全国の小動物診療施設の約37%に相当する紹介元との連携は、新しい専門病院がすぐには複製しにくい。10年後も高齢の動物や高度な外科・がん治療への需要は残るだろう。
半面、土地と建物と高額な医療機器は先に買わなければならない。名古屋病院の大規模移転と福岡への進出には建築費の高騰と開業時期の不確実さがあり、2026年3月期末の純有利子負債は約36億円に増えた。事業の将来像には期待するが、2036年に過大な診療件数や高い利益率を当然視しない。中立では既存の紹介網を深めて慎重に増床が進む姿を考え、開院が遅れ続ける下振れも十分に残した。見込める割安幅は、建設投資の失敗を無視できるほど厚くはない。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主なら、ペットが高齢になっても選ばれる専門医療という仕事の寿命をまず評価する。重い病気になった時、飼い主は少し安いだけの病院より実績ある医師と設備を求めやすい。紹介を受けた難しい症例を無事に治療した経験が次の紹介を呼び、その信用は貸借対照表には載らない。一度築いた地域の専門医療拠点は簡単に複製できない。
だが、その信用を保つには高度な医師の訓練、手術室、MRI、病床を絶えず更新する必要がある。帳簿上の利益が全額自由に分配できるわけではない。2026年3月期には利益が大きく伸びたが、土地と設備への支払いが営業キャッシュフローを超えた。特に福岡は土地の取得がそのまま診療収入につながるわけではなく、採用から紹介網の構築まで時間を要する。増分投資の利回りは、病院が十分に稼働して初めて明らかになる。
価格を上げても診療件数が増えた事実は魅力的だが、物価の上昇を十年先まで上回る値上げを当然視しない。飼育頭数の減少と治療費の負担感は、顧客が離れる見えにくい限界だからだ。紹介元との結びつきは強いが独占契約ではなく、他社にも名医は育つ。ここに高い永続成長率を付けるほどの独占力は認めない。
一方、今の株価に含まれる期待が限定的なら、慎重な病院の増床だけでも価値が積み上がる。大切なのは十年後に何院あるかではなく、追加投資した資本一円から継続して十分な利益が得られるかである。その証拠がそろうまでは安全域を広く求めたい。現状にはやや割安な余地を認めるが、開業延期と借金の膨張でその余地が簡単に失われる点も同時に重視する。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心は、川崎・名古屋・東京・大阪の専門病院が担う完全紹介制の二次診療である。かかりつけの一次診療施設から難しい症例が送られ、専門獣医師による診察、手術、入院、放射線治療などを提供する。2026年3月期は初診が10,953件、再診を含む延べ診療が37,985件、手術が3,404件で、二次診療と少額のその他売上で約45.3億円を稼いだ。診療延べ件数を収入の物差しにすると、治療の重さや入院日数によって単価が大きく違うことが分かる。
2014年に買収したキャミックはMRI・CT検査の専門施設を運営する。グループ全体の画像検査12,145件には専門病院内の検査も含まれ、キャミック単体の検査は5,861件である。したがって画像診断の約6.5億円を全グループの検査件数で割ると、件数を二重に数えて単価を誤る。キャミックには自らの画像装置と紹介経路があり、病院の外でも診断を請け負える。
2022年に買収したテルコムは、犬猫向け酸素ハウスや酸素濃縮器のレンタル・販売を担う。在宅ケア売上は約10.2億円で、新規利用は25,736件だった。月々の利用が続く契約と機器販売が混ざるため、新規利用件数で割った数字は月額料金ではなく年間の混合売上の目安である。病院の治療、画像検査、退院後の在宅ケアという三つの入口は顧客を補い合うが、獣医師や診断装置を要する物理的な事業であり、単なる情報仲介ではない。
優良さと弱いところ
最大の堀、つまり競争相手が容易には真似できない強みは、一次診療施設からの紹介が集まる仕組みである。2026年3月期末の連携病院は4,779施設に達し、専門獣医師が複数診療科の難症例を引き受けた実績がさらに紹介を呼ぶ。2025年6月に二次診療と画像検査を値上げしても、診療件数と検査件数はともに増えた。2026年4~6月も売上は前年同期比11.6%増、営業利益は35.0%増となり、足元の需要は失速していない。在宅酸素も同年10月の値上げ後に新規利用が増加し、価格を自分で決められる力をある程度示している。
もっとも、紹介契約は顧客を独占する権利ではない。獣医師が独立したり、大学附属病院や地域の大型動物病院が専門治療を増やしたりすれば、紹介先は変わる。飼い主も人間の医療保険のような全国一律料金に守られておらず、治療の価格に上限を感じれば受診を諦める。手術の品質と獣医師の評判を維持する費用は堀の維持費でもある。
資本の稼ぎはまだ見極めが要る。大阪病院の開業後は売上が増えても一時的に利益率が落ち、その後に採算が改善した。2026年3月期の営業利益率18.6%は過去の高い水準であり、建物や機器の償却費も背負っている。投資に対する追加の利益率が長く資本コストを超えるには、名古屋・福岡で患者を集める速度が建築費と人員増に勝たねばならない。単年度の高いROEだけを、次の病院も儲かる証拠にはしない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
犬猫の数が増えているから医療市場が伸びるわけではない。2025年の国内飼育頭数は合計約1,567万頭で、長い目では犬を中心に減少傾向にある。他方、長寿化でがん、心臓病、神経疾患などの高度治療が必要になる症例は増えやすい。ペット保険の普及も高額な手術を選べる飼い主を増やすが、保険料の引き上げや補償条件の変更が進むと逆向きに働く。名目のペット関連総市場は2025年度に約1兆9,504億円と推計されるものの、フードや用品を含み、二次診療の市場規模ではない。
総務省・経済産業省の経済センサスで獣医業の把握できた事業所売上は2020年に5,293億円だった。これも一次診療や予防を含む古い下限値で、二次診療だけの全国売上は公表されていない。したがって自社の二次診療売上が広い獣医業の概ね1%に満たない規模だとは言えても、専門医療で何%を独占するとは言えない。農林水産省による2025年の小動物診療施設13,046のうち、紹介元4,779は約36.6%に当たるが、これは紹介網の到達率であり売上シェアではない。
競争相手は、日本小動物医療センター、どうぶつの総合病院専門医療&救急センター、大学附属動物病院などの高度診療機関である。WOLVES HANDやアニコム系の動物病院も専門診療を拡張し得るが、一般診療を含むため患者数や売上をそのまま比較できない。競合ごとの二次診療売上や画像外注件数、在宅酸素レンタル件数は統一した開示がなく、市場シェアの正確な比較はできない。医療機器メーカーが地域病院にMRIやCTを普及させれば、キャミックの外注件数には逆風になる。
10年間は物価年3%、国債金利3%、短期金利2%を共通前提とする。業界全体の飼育頭数は横ばいから減少でも、高度な医療を受ける割合と紹介先を増やすことで同社の診療件数は伸び得る。ただし値上げ余地の大部分は人件費・建築費にも食われ、2026年の好採算をそのまま十年後に持ち込まない。診療・画像撮影・酸素機器の貸与は実体のある医療への対価であり、人月受託や席課金というAIエージェント代替の型には該当しない。
資本政策と M&A
経営陣の資金の使い方は、診療網の拡大と周辺事業の買収が中心だった。2014年のキャミック取得、2022年のテルコム取得は、画像診断と在宅酸素という別の収益経路を作った。2023年開設の大阪病院も診療範囲を広げたが、開業直後は固定費が先に出て、成熟するまで利益率が落ちた。買収の効果は売上の多角化に現れているものの、投下資本の回収まで評価を急ぐべきではない。
2025~2027年3月期の中期計画では、最終年度の連結売上高66億円、営業利益12.7億円、ROE17.0%、二次診療病院の売上49億円を掲げた。株主還元は連結配当性向20%以上が数字の約束であり、DOEや年間の自社株買い金額の数値目標はない。配当は2024年3月期から始まり、その後増配したが、十分に厚い総還元の実績とはまだ言えない。2025年に自己株買いの実績があるため、株主に戻らないと決めつけることもしない。
2026年3月期は設備投資が約24億円となり、営業キャッシュフロー約14億円を上回った。福岡の土地と名古屋の拡張用地を確保するため、純有利子負債は約36億円に増えた。建設費と職人不足で開業時期も見通しに幅があり、借入金を一段と増やしてまで急ぐべきかが次の10年の資本配分の分岐点になる。価格が3%ずつ上がる世界でも、既存の建物・機械の償却費は過去の取得原価のままで、新しい建築と更新投資の現金支出にはその時点の高い工事費がかかる。過去に増資による希薄化もあったため、大規模新設に際しては株主の持分と返済余力を併せて監視する。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
二次診療の成長余地は、犬猫の飼育頭数よりはるかに大きい。現在でも高度な診療を望む紹介数は受入能力を超えていると会社が説明しており、病院が増えれば今まで断っていた症例を受けられる。名古屋の拡張計画は診療能力を約2.5倍にする構想で、福岡は未開拓の九州市場に最初の紹介網を築く機会である。紹介元は全国の小動物診療施設の約37%まで広がったが、まだ六割余りに接点を増やす余地がある。
強い証拠は数量と価格が同時に伸びたことだ。2025年の値上げ後も二次診療の延べ受診とキャミックの検査は増加した。手術やがん治療は機器の保有だけでは提供できず、診療科の専門家を揃えた病院が有利だ。大阪病院が赤字先行期を越えて利益率改善に貢献した経験も、次の拠点を成功させる運営の型として使える。画像診断と酸素レンタルは紹介元や飼い主との関係を深め、単独の病院会社より収益の接点が多い。
名古屋と福岡が開院後に順調に満床に近づき、医師の育成にも成功すれば、延べ診療件数は十年で現在の二倍を超える可能性がある。画像検査の解析を支えるAIは獣医師の業務を補助し、同じ人数で診られる症例を増やし得る。適切な更新投資を続けながら株主への配分を維持できれば、まだ小さい専門医療網の経済性が長期価値を押し上げる。
慎重な見方
売上が増えても株主の取り分が増えない失敗は十分にあり得る。名古屋の建替えと福岡の新設は先に土地を確保し、工事代金と専門人員の給料を支払う。実際、2026年3月期の設備投資は営業活動で得た現金を大きく超え、純借入は約36億円に達した。開院が遅れれば利息と準備費用だけが先に膨らみ、新しい病院が稼ぎ始めても投じた額を回収できない可能性がある。
紹介網は有益だが、契約で囲い込んだ顧客ではない。大学病院や専門医療センター、成長する動物病院チェーンが放射線治療や高度手術に投資すれば、一次診療の紹介先は分散する。獣医師が他院に移れば一度築いた信頼もついていく。医療事故、感染症や品質問題による評判の損失は広告費で回復しにくい。飼い主の負担能力に限度があるため、名目物価が上がっても治療価格を追随させられない地域が出るだろう。
画像診断にはAIによる読影支援と機器の普及という技術的な逆風がある。検査そのものが消えなくても、かかりつけ病院が自分で撮って読影を外注すればキャミックの単価は下がる。酸素レンタルも配送・保守・価格の競争にさらされる。十年で診療量が落ち、建物の稼働率が低下しても減価償却と人員の固定費は残る。中途半端な設備の維持が続けば、帳簿に資産が残っていても稼ぐ力と清算価値は大幅に下がる。
どちらに重みを置いたか
紹介が増え、値上げ後も数量が伸びた事実は将来の投資に前向きな理由を与える。一方で新病院の着工・人材の確保・資本回収をすべて計画どおりと見ることはできない。中立を34%、上側を35%、下側を31%とし、上に少し厚くしたのは既存病院での実行実績があるためだ。建設費の高騰と増えた借入は下側の深さに反映し、単なる不安として倍率に重複して加えない。割安幅はおおむね一~二割台にとどまり、成長投資の規律が崩れれば結論は変わる。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 2,073 円268 億円(+ 還元の換算額還元の合計 191 円25 億円)。 今の値に割り戻すと 1,190 円154 億円、今との差 +25.8%、 期待の年率 +9.6%(資本コスト 7.0%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 4,419 円571 億円 | 338 円44 億円 | +402.9% | +18.6% | 476 円61 億円 |
| やや楽観 | 25% | 3,182 円411 億円 | 255 円33 億円 | +263.3% | +14.6% | 859 円111 億円 |
| 中立 | 34% | 2,007 円259 億円 | 187 円24 億円 | +132.0% | +9.3% | 746 円96 億円 |
| やや悲観 | 21% | 669 円86 億円 | 116 円15 億円 | −17.0% | −2.0% | 165 円21 億円 |
| 悲観 | 10% | 129 円17 億円 | 52 円7 億円 | −80.8% | −16.8% | 18 円2 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,073 円268 億円 | 191 円25 億円 | +139.3% | +9.6% | 2,264 円293 億円 |
今の株価時価総額 946 円122 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 10% 広域の専門病院網が定着 利益 30 億円 · PER 19.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 4,419 円571 億円
名古屋の大幅拡張が計画の価値を発揮し、福岡の新病院も紹介先として定着する。さらに別の地域にも医師を揃えた拠点を開き、全国の一次診療施設との連携は約6,500施設へ広がる。難症例を断る機会が減り、延べ診療件数は8万5千件になる。高度な放射線治療と複雑な手術の割合も増え、実質単価が物価以上に上がる。
キャミックは地域の検査センターとの連携を深め、画像検査が1万件を超える。在宅酸素も退院後の長期ケアを支え、利用件数が大きく伸びる。AIは読影・記録の補助となって獣医師の作業を助けるが、治療そのものを置き換えない。建物と医療機器への追加投資を伴っても診療稼働率が高まり、連結営業利益率は20%を超える。純利益の約2割強を配りながら病院の増設を続けられる最も好ましい10年となる。
- 高度二次診療(少額のその他を含む):数量 85,000(初診・再診を合わせた年間延べ診療件数(件))× 価格 0.00(延べ診療1件当たりの年間売上換算(億円・名目、手術・入院を含む))→ 売上 150 億円・営業利益 34 億円。紹介病院約6500施設。名古屋拡張・福岡以外にも診療能力増強を実現し、症例構成の高度化で料金は物価を上回る。
- キャミック画像診断:数量 10,200(キャミック直営施設の年間MRI・CT検査件数(件))× 価格 0.00(直営画像検査1件当たりの年間売上換算(億円・名目))→ 売上 17 億円・営業利益 4 億円。検査センターの処理能力と紹介関係の拡充。
- 在宅酸素ケア・医療機器:数量 45,500(年間の酸素ハウス新規利用件数(件))× 価格 0.00(新規利用1件起点の年間混合売上換算(億円・名目、継続契約と販売を含む))→ 売上 27 億円・営業利益 6 億円。レンタル配送網の拡大と長期利用の定着。
倍率:2036年全社純利益29.69億円、自己資本195.10億円。過去の投資資本密度を満たした後の余剰留保現金を概算32億円切り離すと事業ROEは約17.9%、k7.0%、通常の堀の残存比率1/2によるRONICは約12.45%。g_long3.0%として正当化PER=(1−3.0%÷12.45%)÷(7.0%−3.0%)=約19.0倍。営業利益には増設設備の償却費を含めた。入力時価総額は純利益×PERで、将来余剰現金は自動集計に任せ二重加算しない。
確率:すでに紹介網と値上げ実績はあるが、複数地域の開院・専門医確保・高稼働が連続して成功する必要があるため10%とする。
やや楽観 25% 名古屋と福岡が順調に育つ 利益 22 億円 · PER 18.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 3,182 円411 億円
名古屋の拡張と福岡開設の双方に時間はかかるが、完成後の紹介元開拓が着実に進む。紹介病院は全国で約6,000施設まで増え、遠方からの難症例も集められる。延べ診療は7万2千件となり、手術・放射線治療の増加で診療収入の構成も改善する。値上げは物価を少し上回り、医師の人件費上昇を吸収できる。
キャミックのMRI・CT設備の稼働率が上がり、検査件数は8,600件に伸びる。テルコムの酸素レンタルも紹介元との営業連携が進み、新規利用約4万件に近づく。一方、病院拡張に要した建物と医療機器の償却が増えるため、診療件数ほど利益率は上がらない。追加の借入金を返済する力が生まれ、増配を続けながら新規投資の採算を確かめる堅実な成長となる。
- 高度二次診療(少額のその他を含む):数量 72,000(初診・再診を合わせた年間延べ診療件数(件))× 価格 0.00(延べ診療1件当たりの年間売上換算(億円・名目、手術・入院を含む))→ 売上 122 億円・営業利益 25 億円。紹介病院約6000施設。稼働率の改善と高度手術の構成上昇で名目単価1.42倍。
- キャミック画像診断:数量 8,600(キャミック直営施設の年間MRI・CT検査件数(件))× 価格 0.00(直営画像検査1件当たりの年間売上換算(億円・名目))→ 売上 14 億円・営業利益 3 億円。外注画像検査のシェア獲得と設備更新。
- 在宅酸素ケア・医療機器:数量 39,500(年間の酸素ハウス新規利用件数(件))× 価格 0.00(新規利用1件起点の年間混合売上換算(億円・名目、継続契約と販売を含む))→ 売上 22 億円・営業利益 4 億円。酸素ハウスの新規利用の増加。
倍率:自己資本165.57億円から設備・借入比率を見て事業に必要な分を残し、概算34億円の余剰留保を除く。事業ROE約16.1%、k7.0%、通常の堀の残存比率1/2によるRONIC約11.55%、g3.0%で正当化PERは約18.5倍。今や過去のPERを参照せず利益の継続性から決める。自動計算される余剰留保は時価総額入力に含めない。
確率:病院の増床が成功し、紹介元の増加と高齢ペット需要が同時に進む可能性は十分あるが、建築費と医師採用に不確実性があるため25%とする。
中立 34% 拡張は遅いが紹介が着実に増える 利益 14 億円 · PER 17.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 2,007 円259 億円
犬猫の飼育頭数そのものは伸びないが、長寿化とペット保険によって専門治療を選ぶ割合が緩やかに増える。新病院は建築費と専門医の採用で予定より遅れ、名古屋と福岡の稼働率が十分に高まるのも段階的である。それでも紹介元は約5,500施設となり、現在は受け切れない診療を一部引き受けられるようになる。延べ診療5万5千件は10年で約45%増で、近年の急成長が続くという想定ではない。
画像診断は7,200件、在宅酸素の新規利用は3万3千件へ伸びる。価格は基本的に10年間の物価上昇に沿い、患者負担の拡大を避けるため実質の大幅な値上げは見込まない。新設棟の償却と採用コストが残り、営業利益率は直近の最高水準より低くなる。長く持つ株主には十分に利益を残すが、増えた自己資本に対するROEは過去の高水準から落ち着く姿である。
- 高度二次診療(少額のその他を含む):数量 55,000(初診・再診を合わせた年間延べ診療件数(件))× 価格 0.00(延べ診療1件当たりの年間売上換算(億円・名目、手術・入院を含む))→ 売上 88 億円・営業利益 16 億円。紹介病院約5500施設。総診療件数は実質1.45倍、単価は物価3%の10年累積1.34倍。
- キャミック画像診断:数量 7,200(キャミック直営施設の年間MRI・CT検査件数(件))× 価格 0.00(直営画像検査1件当たりの年間売上換算(億円・名目))→ 売上 11 億円・営業利益 2 億円。キャミックの直営検査数は実質1.23倍、単価は物価並み。
- 在宅酸素ケア・医療機器:数量 33,000(年間の酸素ハウス新規利用件数(件))× 価格 0.00(新規利用1件起点の年間混合売上換算(億円・名目、継続契約と販売を含む))→ 売上 17 億円・営業利益 3 億円。新規利用件数は実質1.28倍、年の混合単価は物価並み。
倍率:2036年の自己資本134.56億円、純利益13.70億円。設備・運転資本の所要分を差し引いた余剰留保約39億円を事業自己資本から除くと事業ROE約13.8%となる。k7.0%、堀の残存比率1/2、RONIC約10.4%、g3.0%から正当化PERは約17.8倍。長期の実質成長は0%、投資した新病院の償却負担を売上原価に入れている。将来の現金の積み上がりは自動処理し、入力時価総額には手で加えない。
確率:成長の継続と建設の遅れを併せ持つ、現時点で最もありそうな筋書きとして34%を付す。実績の急成長を10年先へ直線的に延ばさない。
やや悲観 21% 開院遅延で採算が伸び悩む 利益 6 億円 · PER 12.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 669 円86 億円
建築費の高騰で名古屋の拡張と福岡病院の開院が予定から大きくずれ込み、先行投資した土地と医療機器に十分な患者が集まらない。専門獣医師の採用も予定を下回り、既存病院の待ち時間は縮まらない。紹介元施設は約4,500に減っても診療の重症化で延べ件数は4万5千件を保つが、十年先の成長は限定される。
大学附属動物病院や地域の専門病院へ症例が分散し、キャミックの検査は6,000件にとどまる。在宅酸素はゆっくり伸びるものの価格競争が強まり、物価上昇の一部を料金に転嫁できない。建物と機械の償却費、人員の固定費、借換金利が利益を圧迫する。利益が減る中では配当総額も抑えられ、設備投資の回収を優先する慎重な経営が続く。
- 高度二次診療(少額のその他を含む):数量 45,000(初診・再診を合わせた年間延べ診療件数(件))× 価格 0.00(延べ診療1件当たりの年間売上換算(億円・名目、手術・入院を含む))→ 売上 65 億円・営業利益 8 億円。紹介病院約4500施設。開設遅延・競争で診療件数と実質料金が伸び悩む。
- キャミック画像診断:数量 6,000(キャミック直営施設の年間MRI・CT検査件数(件))× 価格 0.00(直営画像検査1件当たりの年間売上換算(億円・名目))→ 売上 8 億円・営業利益 1 億円。MRI・CTの外注件数伸びず、実質単価低下。
- 在宅酸素ケア・医療機器:数量 28,500(年間の酸素ハウス新規利用件数(件))× 価格 0.00(新規利用1件起点の年間混合売上換算(億円・名目、継続契約と販売を含む))→ 売上 14 億円・営業利益 2 億円。配送・保守費上昇を価格に転嫁しきれない。
倍率:新病院の低稼働でROEは6.04÷108.80=5.6%とk7.0%を下回る。稼ぐ力の上限は1÷k=14.29倍であり、紹介先の競争と設備更新費用が重いのでPER12倍を採用した。病院の減価償却費は営業利益率低下に、既存純借入の借換金利上昇は税後純利益の減額に含める。余剰留保の自動加算はやや悲観用の減額を適用する。
確率:土地取得後に着工費・採用費が先行する事実があり、紹介市場での競争も避けられないため21%とする。
悲観 10% 紹介が流出し設備投資に失敗 利益 2 億円 · PER 11.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 129 円17 億円
名古屋と福岡への多額の投資が裏目に出る。建設費が膨らんだ病院は開業しても専門医が揃わず、大学病院や民間の専門センターへ紹介が流れる。紹介元は約3,000施設まで減り、延べ診療は3万1,500件へ後退する。値上げの余地も乏しく、利益率の高かった高度手術の件数が減って稼働率の低い固定設備だけが残る。
一次診療施設がMRI・CTを導入し、AIによる読影補助も普及するため、キャミックの外注検査は4,400件へ減る。在宅酸素のレンタルも競争で値段を上げにくくなる。売上は現状を下回り、病院の人件費や古い設備の保守費を減らし切れず、営業利益率は一桁前半に落ちる。減配して返済を優先し、買収や追加増床は停止する。設備を売却しても投下した資本の多くは回収できない、構造的に優良さを失った10年となる。
- 高度二次診療(少額のその他を含む):数量 31,500(初診・再診を合わせた年間延べ診療件数(件))× 価格 0.00(延べ診療1件当たりの年間売上換算(億円・名目、手術・入院を含む))→ 売上 41 億円・営業利益 3 億円。紹介病院約3000施設。紹介の流出と手術構成悪化で数量・実質単価とも低下。
- キャミック画像診断:数量 4,400(キャミック直営施設の年間MRI・CT検査件数(件))× 価格 0.00(直営画像検査1件当たりの年間売上換算(億円・名目))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。大学や地元病院による内製化・AI読影補助で外注減少。
- 在宅酸素ケア・医療機器:数量 21,000(年間の酸素ハウス新規利用件数(件))× 価格 0.00(新規利用1件起点の年間混合売上換算(億円・名目、継続契約と販売を含む))→ 売上 9 億円・営業利益 1 億円。新規利用減とレンタル価格競争。
倍率:構造的な紹介流出でROE1.52÷84.08=1.8%とk7.0%を大きく下回る。正当化PERの上限1÷k=14.29倍より保守的な11倍とし、事業の純利益1.52億円×11倍=16.72億円。過去のPBRの底を使わず、売却可能資産の税後処分価値8.17億円も上回る。建設の失敗と設備の固定費は数量、営業利益率、配当縮小に反映済みで二重には加算しない。
確率:医療事故や医師流出、建設投資の失敗が重なる構造的な後退の可能性を10%とする。清算価値の上に利益の価値がなお残る。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
高度二次診療(少額のその他を含む)
川崎・名古屋・東京・大阪の完全紹介制専門病院。診察、手術、入院、放射線治療などの高度医療と少額のその他。
| 数量初診・再診を合わせた年間延べ診療件数(件) | 価格延べ診療1件当たりの年間売上換算(億円・名目、手術・入院を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 37,985 | 0.00 | 45 | 9 |
| 10 年後 中立 | 55,000 | 0.00 | 88 | 16 |
取り方:2026年3月期の有報で二次診療売上45.14672億円とその他0.12044億円。診療延べ件数37985件(初診10953件、手術3404件)を会社計画原文から取り、総売上45.26716億円÷37985件。その他は全体の約0.2%なので主業務に算入。営業利益8.60億円は会社の事業計画資料の事業別参考値で、調整前・単一開示セグメント内の採算。市場母数は2025年の小動物診療施設13046、紹介元4779施設(カバレッジ36.6%)。専門診療だけの売上市場・競合シェアは未開示。
キャミック画像診断
子会社キャミックがMRI・CTを使い、周辺の一次診療施設から外注で受ける画像検査と診断支援。
| 数量キャミック直営施設の年間MRI・CT検査件数(件) | 価格直営画像検査1件当たりの年間売上換算(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 5,861 | 0.00 | 6 | 1 |
| 10 年後 中立 | 7,200 | 0.00 | 11 | 2 |
取り方:有報の外部顧客向け画像診断売上647923千円÷会社資料のキャミック直営検査5861件。グループ全体のMRI・CT検査12145件には病院内の6284件を含み、画像診断子会社の数量には使わない。画像売上に内部の診断受託分は含めない。事業別参考営業利益1.34億円は内部消去前。キャミック紹介元2641施設は診療施設13046の20.2%だが市場シェアではない。国内の外注画像検査総数は信頼できる統一統計がない。
在宅酸素ケア・医療機器
テルコムによる犬猫向け酸素濃縮器、酸素ハウスのレンタル・販売。配送・保守と新規・継続利用を含む。
| 数量年間の酸素ハウス新規利用件数(件) | 価格新規利用1件起点の年間混合売上換算(億円・名目、継続契約と販売を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 25,736 | 0.00 | 10 | 2 |
| 10 年後 中立 | 33,000 | 0.00 | 17 | 3 |
取り方:有報の在宅ケア売上1017827千円÷会社資料の年間新規利用25736件。既存契約のレンタル月数と医療機器販売も売上に含むため、契約1回の請求額や月額単価を示さない。事業別参考営業利益2.16億円はのれん償却・本社費等の調整前。全国の在宅酸素レンタル全利用件数と競合シェアは公開集計がなく、犬猫飼育総数1567万頭と店舗・代理店網を需要の上限の参考にする。
リスクと懸念
専門獣医師の確保と診療品質
紹介制の高度診療は熟練獣医師と看護師のチームが商品そのものである。採用が遅れると新しい診療棟は完成しても患者を診られない。中核医師の離職や医療事故があれば紹介元が他院に流れ、地道に築いた信用の回復には長い時間がかかる。固定給と設備償却は収入が減ってもすぐには減らない。
名古屋・福岡の建設費と資本効率
新病院の計画では資材価格と建設人員の不足が懸念されている。土地を取得しても開業時期は収益化を保証しない。投下資本が膨らむほど必要な診療件数が増え、専門医の不足と患者の獲得の遅れが重なるとROEは大幅に下がる。2026年3月期の投資額は営業キャッシュフローを超えており、安全余力は無限ではない。
借換金利と財務の膨張
2026年3月期末の純有利子負債は約35.7億円で、直近3期の平均営業利益の4倍を超える。短期金利が2%、国債が3%になる前提では既存負債の借換で税後の利払い負担が増える。新設投資のため借金をさらに積むと、開業の遅延が財務のリスクに直結する。資産は病院特有の用途であり、売却しても簿価で戻るとは限らない。
犬猫頭数減少と治療費の負担限界
動物の高齢化は高度医療の需要を増やすが、犬猫の総数は長期的には増えていない。自由診療であるため値上げは可能でも、飼い主の世帯所得、ペット保険料の上昇、支払限度額に左右される。高額な手術を見送る飼い主が増えれば初診数は維持しても診療収入が減る。紹介元が増えても実際の来院件数を保証しない。
画像診断の内製化とAIの進歩
キャミックのMRI・CT検査には実機が要り、AIエージェントが撮影を直接代替するわけではない。ただしAIの読影支援が一般化すると、地域病院が機器を持って自前で検査する割合が増え、画像外注の件数と単価に下押し圧力が生じる。自社がAIで専門医の負担を下げる可能性もあるが、未収益化のソフト売上を将来価値には含めない。
買収・ガバナンス・株式希薄化
キャミックとテルコムの買収は収益源を広げたが、買収した会社の成長を続けるには専門人材と機材の投資も必要となる。2023年3月期には増資で株数が増えた実績があり、名古屋・福岡の資金調達に再び株式を用いると既存株主の取り分は薄まる。新規拠点の採算が悪い場合、のれん・設備の減損と配当抑制が重なるおそれがある。
今後の分かれ目
- 紹介元施設が2030年までに5,200を超え、延べ診療件数も施設当たりで増えていくなら
- 量と紹介網の堀が同時に強まる。中立の2036年延べ診療5.5万件の達成可能性を高く見て、やや楽観の確率を増やす。
- 名古屋の移転・福岡の新病院の開設が大幅に遅れ、投資予算も想定を超えるなら
- 追加負債と新病院の償却負担を増やし、数量が伸びないやや悲観・悲観側へ確率を動かす。
- 値上げ後も初診数・手術件数・キャミック直営検査件数が継続して前年を上回るなら
- 高度医療への支払い意思と画像診断の競争力を再確認でき、価格を物価並みに引き上げられる中立の前提を補強する。
- 新病院の採用人数が増えず、専門獣医師1人当たりの診療件数と稼働率が低下したら
- 建物だけを増やした状態になるため、二次診療の営業利益率と投下資本利益率を引き下げる。
- 純有利子負債が営業利益の4倍を長く超え、金利負担が増え続けたら
- 追加利払いと配当制約を純利益および10年間の株主還元に反映し、安全域を再評価する。
- 地域の大型病院がMRI・CT検査を内製化し、キャミックの検査件数が減少し始めたら
- 画像診断の実質数量と価格の両方を下方修正する。治療本体の診療需要とは分けて評価する。
見ておくもの
- 二次診療の初診数・延べ総診療数・手術数と診療1件当たり売上の推移
- 一次診療の紹介元施設数と、紹介元1施設当たりの紹介件数
- 名古屋病院の移転工事費・工期・診療能力と福岡病院の着工・開院の正式発表
- 獣医師人数・採用数と各病院の稼働率、医師1人当たり症例数
- キャミック直営MRI・CT検査件数とテルコム酸素ハウス新規利用件数
- 設備投資額と減価償却費、営業キャッシュフロー、純有利子負債・支払利息
- 配当性向20%以上の履行と買戻し・新株発行の有無、建設投資の増分ROIC
倍率と資本コストの決め方
2026年10月22日の株価996と株数12924760から現在時価総額128.73億円を計算したが、これを目標に診療件数や倍率を調節していない。2026年3月期の実在する三つの事業数量から2036年の実質数量を推計し、物価3%の累積上昇は単価だけに加えた。各事業の利益率には医療機器と新病院の償却負担を含め、金利の借換影響は純利益で扱う。倍率は資本コスト7%、長期成長3%と追加投資のRONICから導く。将来の余剰留保現金は規定の自動計算に任せ、手入力時価総額には重複させない。2028年3月期以降の新リース会計の表示変更が起きても、家賃・設備費を同じ経済的負担として比較する。悲観の床は過去の株価やPBRではなく、今売れる資産の税後処分価値で測った。
資本コスト 7.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%に事業の循環−0.5%、価格決定力−0.5%、借金+0.5%、寿命0%を加算した7.0%。