結論
キュービーネットHDは、10分・シャンプーなしの理容店『QB HOUSE』を運営する。国内587店、海外155店。売上は272億円、営業利益は15億円だ。筆者の結論は、ブランドは強いが、価値は今の時価総額の6割ほどにとどまる、というものだ。
強みは、他社が取りにくい立地と型にある。駅や商業施設の小さな区画に出店し、短時間で安く切る。客数は国内で前期比3.8%増えた。
弱みは、人に頼る商売であることだ。カットを担う人材の採用と育成に費用がかかり、研修中の離職も増えた。2026年6月期は増収なのに、営業利益は11%減った。
出店の勢いは強い。国内で37店を新設し、中期計画は5年で店舗を約970に増やす。ただし、新店は最初の数年は利益を食い、海外は計画より約1年遅れる見通しだ。
筆者は、出店で規模は伸びても、利益率が過去の9%台に戻るのは難しいと見る。
見るべきは、店の数ではなく、1店あたりの利益の動きだ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、キュービーネットは『良い商品を持つが、人に頼る会社』と見る。
事業は10年後も残る。10分で安く切る型は、時間のない人に支持される。堀、つまり他社がまねできない強みは、ブランドと立地の確保にある。ただし、技術者の確保という最大の資源は、他社と奪い合いだ。
株主が自由に使える利益は小さい。純利益8億円のうち、配当で7割を払い、残りは出店に回る。出店は利益を生む前に費用が出るので、余りはほぼ無い。
資本の使い方は、出店と借入の返済に二分している。出店の採算が見えるまでは、この配分が正しいかを判断しにくい。
安全域は薄い。中立の10年後の価値でも、今の時価総額に届かない。悲観になっても、国内587店の稼ぐ力は残るので、下値は深くない。
長く持つ株主にとって、1店あたりの利益が伸びるかが判断の軸になる。
何で稼ぐ会社か
キュービーネットHDは、『QB HOUSE』の運営会社だ。1店あたりの区画が小さく、カットだけを短時間で行う。料金は安く、駅や商業施設の中に出店する。
2026年6月末の店舗は、国内587店、海外155店。海外は香港65、台湾42、シンガポール30、米国7、マレーシア4、ベトナム4、カナダ3だ。
売上272億円のうち、国内が217億円、海外が55億円。営業利益は国内14億円に対し、海外は0.6億円と薄い。海外は新しい国への先行投資が続く。
稼ぎ方は単純だ。客1人あたりの料金を積み上げ、そこから人件費、家賃、本部の費用を引く。人件費はカットをする人材の給与が中心である。
会計はIFRSで、家賃の大部分は使用権資産の減価償却と利息になっている。営業利益は、家賃を費用にした場合より高く出る。リース負債は約79億円ある。
2027年6月期の計画は、52店を出し9店を閉じる。売上290億円、営業利益17億円を見込む。
カットを担う人材は、採用してから店に配属するまでに研修が要る。新店の人員を先に確保するため、利益が出る前に人件費が出る。
優良さと弱いところ
優良さの核は、QB HOUSEというブランドと、立地を押さえた出店力にある。ただし、人の確保が最大の弱点だ。
強みは三つ。第一に、10分で終わるという分かりやすい価値。第二に、全国で587店という規模と知名度。第三に、新規の出店を続けられる実行力だ。
ただし弱みも三つある。第一に、利益の源が人で、採用と育成の費用が先に出る。第二に、海外は価格改定のあとに客が減る例が出た。香港では約20店で想定以上の失客があった。第三に、借入が重く、LBOローンの返済を続けている。
資本効率は並だ。過去10年のROEの中央値は8.3%で、直近は5.2%まで下がった。営業利益率は2019年6月期に9.4%、2026年6月期は5.5%だ。
筆者は、ブランドは本物でも、人を増やすほど利益率が下がる構造に注意が要ると見る。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
理容・美容の市場は、人口減の逆風と、人手不足の追い風が混ざっている。
国内の客数は、日本人の人口が減るので、実質では伸びにくい。ただしQB HOUSEは、安さと短時間で、他店から客を取っている。筆者は、国内の1店あたりの客数は10年で横ばいと見る。
値段は上がる。物価が年3%上がれば、料金は名目で伸びる。ただし海外では、値上げで客が離れる例が出た。値上げは、客が離れない範囲に限られる。
費用は人件費が中心で、物価以上に上がる。理容・美容の技術者は不足しており、採用の費用も上がる。家賃も、駅や商業施設では上がりやすい。
競争相手は、同じく低価格の専門店、地域の理容店、美容室だ。低価格店の出店が増えれば、客の奪い合いになる。
海外は、香港と台湾が柱で、台湾は2026年1月に料金を350台湾ドルから400台湾ドルへ上げた。新しい国は、まだ利益が出ていない。
駅や商業施設の区画は数が限られ、良い立地は取り合いになる。出店の余地は、家賃を払える立地がどれだけ残るかで決まる。
この市場では、安さと時間の節約が、新しい客を呼び込む武器になる。
資本政策と M&A
資本政策は、出店への投資と、借入の返済の二つが柱だ。
2018年の上場時は、ファンドの出資が7割を超えた。そのときのLBOローンが今も残り、82.5億円から56.5億円へ5年で減らす方針だ。2026年3月の有利子負債は83億円、リース負債は79億円だった。
配当は、連結配当性向40%を目安にする。2026年6月期の配当は年5億円ほどで、純利益の約7割にあたる。2027年6月期も同額の見込みだ。
中期経営計画は、2029年6月期に売上355億円、営業利益34億円を目指す。店舗は約970に増やす。2027年6月期の営業利益は17億円の計画で、目標までの道のりは長い。
筆頭株主は海外のファンドで、保有は約11%。親会社は無く、特定の株主が支配していない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
QB HOUSEは、時間のない客に支持される分かりやすい商品だ。国内の客数は前期比3.8%増え、出店余地はまだ大きい。中期計画は、5年で店舗を約970に増やし、営業利益を34億円にする。
新店は最初の数年は利益を食うが、育てば利益に変わる。今期の減益は、新店と採用の先行費用によるもので、一時的だ。2019年6月期も2023年6月期も、営業利益率は9.4%だった。この水準に戻る。
海外は、香港と台湾に店が集まり、新しい国も立ち上がっている。台湾は値上げ後も客が想定の範囲で推移した。
借入は返済が進み、金利負担は軽くなる。配当は純利益の7割を払っており、株主への還元も厚い。
出店の余地は国内でも大きく、新店の育て方の蓄積も増えている。型が決まった商売ほど、数が利益に変わりやすい。
配当を続けながら出店できていること自体、本業の稼ぐ力が強い証拠だ。
人件費の上昇も、料金の改定と客数の増加で吸収できる。国内の料金は、まだ上げる余地がある。
慎重な見方
利益率は2023年6月期の9.4%から、2026年6月期の5.5%に下がった。この間、店は増えたが、1店あたりの利益は減っている。出店は利益を食い続ける構造だ。
採用が好調でも、育成と配属に時間がかかり、研修中の離職が増えた。人件費はこれからも上がる。
海外は計画より1年遅れる見通しだ。香港では価格改定のあと、約20店で想定以上の失客が出た。新しい国への出店は、赤字の先行投資を増やす。
借入は83億円、リース負債は79億円ある。金利が上がれば、利払いが重くなる。配当は純利益の約7割で、これ以上は増やせない。
中期計画の営業利益34億円は、今の2倍を超える。2027年6月期の計画は17億円で、達成の見通しは立っていない。
低価格の競合が増えれば、立地の優位も崩れる。型が決まった商売は、まねもされやすい。
配当を続けながら出店と返済も行うため、資金の余裕は小さい。
客数が伸びても、料金を上げれば客が離れる。海外の失客は、その警告だ。人件費の上昇を料金に乗せきれない構造は、国内でも同じだ。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方がやや強い。利益率が3年で9.4%から5.5%に下がり、2026年6月期は増収で減益だった事実が重い。強気の見方の核は、新店が育てば利益率が戻るという点だが、その証拠はまだ見えない。一方で、客数が伸びていること、国内の稼ぐ力が残ることは確かだ。中立の利益率は6%台にとどめ、悲観側を35%、楽観側を27%にした。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/06 期)
確率で加重した株価時価総額 1,541 円209 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 353 円48 億円)。 今の値に割り戻すと 993 円134 億円、今との差 −21.7%、 期待の年率 +4.1%(資本コスト 7.5%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 3,167 円429 億円 | 517 円70 億円 | +190.3% | +11.2% | 258 円35 億円 |
| やや楽観 | 20% | 2,349 円318 億円 | 458 円62 億円 | +121.2% | +8.3% | 561 円76 億円 |
| 中立 | 38% | 1,644 円223 億円 | 399 円54 億円 | +61.0% | +4.9% | 776 円105 億円 |
| やや悲観 | 24% | 725 円98 億円 | 266 円36 億円 | −21.9% | −2.4% | 238 円32 億円 |
| 悲観 | 11% | 458 円62 億円 | 89 円12 億円 | −56.9% | −8.1% | 60 円8 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,541 円209 億円 | 353 円48 億円 | +49.2% | +4.1% | 1,894 円256 億円 |
今の株価時価総額 1,269 円172 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 7% 新店が育ち、営業利益率が8%台に戻る 利益 27 億円 · PER 15.8 倍 · 株価時価総額 3,167 円429 億円
新店が計画どおり育ち、国内は800店、海外は300店に広がる。採用した人材の育成が進み、離職が減る。1店あたりの売上は物価並みに伸び、国内の営業利益率は9%に戻る。
海外は香港と台湾が柱になり、新しい国も黒字になる。営業利益率は6%だ。連結の営業利益は44億円ほどで、会社の中期計画の34億円を上回る。
ブランドと立地を押さえた出店力が、はじめて利益に変わる形だ。ROEは10%を超える。
新店の黒字化までの期間が短くなり、先行費用の山が小さくなる。借入の返済も進み、財務の余裕が戻る。
国内の客数は増え続け、新しい区画の確保も進む。
- 国内(QB HOUSE):数量 800(期末の店舗数)× 価格 0.50(1店あたり年売上(億円・名目))→ 売上 396 億円・営業利益 36 億円。国内800店、利益率9%
- 海外:数量 300(期末の店舗数)× 価格 0.48(1店あたり年売上(億円・名目))→ 売上 143 億円・営業利益 9 億円。海外300店、新しい国も黒字化
倍率:事業の純利益 27 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.4% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.8 倍。全体の PER 15.82 倍、時価総額 429 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:利益率は3年で9.4%から5.5%に下がり、戻る証拠はまだ無い。新店と採用の先行費用が一巡する筋書きだが、実行の確認が要るので、楽観は7%にとどめた。
やや楽観 20% 出店が計画に近く進み、営業利益率が7%台になる 利益 22 億円 · PER 14.7 倍 · 株価時価総額 2,349 円318 億円
国内は750店、海外は280店に広がる。採用と育成が進み、離職は減るが、人件費の上昇で利益率の改善は小幅になる。国内の営業利益率は8%、海外は5%に上がる。
連結の営業利益は36億円ほどで、会社の計画に近い。1店あたりの売上は物価並みに伸びる。
借入は返済が進み、金利負担は軽くなる。配当は純利益の4割ほどに下がっても、金額は増える。
新店の黒字化は一部で遅れるが、国内の客数は増え続ける。海外は香港と台湾が利益の柱になり、新しい国の赤字は縮む。
人件費の上昇は料金で一部しか転嫁できず、利益率の回復は途中で止まる。
- 国内(QB HOUSE):数量 750(期末の店舗数)× 価格 0.50(1店あたり年売上(億円・名目))→ 売上 371 億円・営業利益 30 億円。国内750店、利益率8%
- 海外:数量 280(期末の店舗数)× 価格 0.48(1店あたり年売上(億円・名目))→ 売上 133 億円・営業利益 7 億円。海外280店、利益率5%
倍率:事業の純利益 22 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.0% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.7 倍。全体の PER 14.72 倍、時価総額 318 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:出店と採用は一定の進展が確認できており、会社の計画に近い筋書きだ。利益率の回復は一部にとどまるとして、20%とした。
中立 38% 出店で規模は伸びるが、利益率は6%台にとどまる 利益 17 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 1,644 円223 億円
国内は700店、海外は260店に広がる。1店あたりの客数は横ばいで、料金は物価並みに上がる。売上は470億円ほどになる。
人件費と家賃は物価以上に上がる。国内の営業利益率は7%、海外は4%にとどまる。連結の営業利益は29億円ほどで、会社の中期計画の34億円には届かない。
借入は返済が進むが、リース負債は新店で増える。純利益は17億円ほどで、ROEは7%台。資本コストにわずかに届かない。
新店は毎年のように出るが、その費用が既存店の利益を打ち消す。株主にとっては、配当が続く静かな姿だ。
出店の余地は国内でも残るが、良い区画は減り、家賃は上がる。
- 国内(QB HOUSE):数量 700(期末の店舗数)× 価格 0.50(1店あたり年売上(億円・名目))→ 売上 347 億円・営業利益 24 億円。国内700店、利益率7%
- 海外:数量 260(期末の店舗数)× 価格 0.48(1店あたり年売上(億円・名目))→ 売上 124 億円・営業利益 5 億円。海外260店、利益率4%
倍率:事業の純利益 17 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.5% が k 7.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍。全体の PER 13.33 倍、時価総額 223 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:利益率が3年で下がった事実が最も強い証拠だ。出店と客数の伸びは続くが、人件費の上昇が利益率の回復を妨げるとして、最大の38%とした。
やや悲観 24% 人件費と値上げの限界で、営業利益率が4%台に下がる 利益 8 億円 · PBR 0.6 倍 · 株価時価総額 725 円98 億円
出店は続くが、新店の立ち上がりが遅く、国内は640店、海外は190店にとどまる。人件費の上昇に料金が追いつかず、料金の伸びは物価を下回る。
国内の営業利益率は5%、海外は1.5%に下がる。連結の営業利益は17億円ほどだ。
海外は新しい国の整理が進む。配当は純利益の4割台を保つが、増やす余地はない。
新店の閉鎖も出て、減損が積み上がる。店の更新を絞り、客離れの悪い循環に入る恐れもある。
本部の費用は固定的で、店の数が増えない分、1店あたりの負担が重くなる。研修中の離職は高止まりする。
海外は新しい国への出店を止め、既存の国の立て直しに回る。
- 国内(QB HOUSE):数量 640(期末の店舗数)× 価格 0.48(1店あたり年売上(億円・名目))→ 売上 304 億円・営業利益 15 億円。国内640店、利益率5%
- 海外:数量 190(期末の店舗数)× 価格 0.45(1店あたり年売上(億円・名目))→ 売上 86 億円・営業利益 1 億円。海外190店、利益率1.5%
倍率:ROE4%台は資本コスト7.5%を大きく下回る。稼ぎの力(純利益÷k)は約98億円で、今の自己資本154億円に0.635倍を掛けた額と近い。PBRは今の自己資本に0.635倍を掛けた。
確率:2026年6月期の増収減益の型が続く筋書きだ。人件費が物価以上に上がり、値上げは客を失う。営業利益率が2020年6月期のように下がる可能性も踏まえ、24%とした。
悲観 11% 技術者不足と値下げ競争で店が縮み、利益が消える 利益 −2 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 458 円62 億円
技術者の確保が追いつかず、店の運営が回らなくなる。国内は520店まで減り、海外は110店に縮む。料金の伸びは物価を大きく下回る。
国内の営業利益率は1.5%、海外は赤字になる。連結の営業利益は3億円ほどで、利払いを引くと赤字になる。
借入の返済が重く、配当は出せない。新しい国は撤退し、国内の不採算店を閉じる。
本部は店の整理に追われ、新しい投資に回す資金がなくなる。残る店の利益も、人手不足で細る。
大手の低価格店が同じ区画に出店し、客を奪う。QB HOUSEの値段の優位も薄れる。さらに家賃の更新時に条件が悪くなる。
- 国内(QB HOUSE):数量 520(期末の店舗数)× 価格 0.45(1店あたり年売上(億円・名目))→ 売上 231 億円・営業利益 4 億円。国内520店、利益率1.5%
- 海外:数量 110(期末の店舗数)× 価格 0.43(1店あたり年売上(億円・名目))→ 売上 47 億円・営業利益 −1 億円。海外110店、赤字
倍率:赤字なのでPERは当てない。今の自己資本154億円に0.4倍を掛けた。借入83億円とリース負債79億円の返済が先に来る。今の純有利子負債35億円を足したEVは営業利益の37倍と高く、利益の倍率では測れない。EVでも見て、床の資産で値を付けた。
確率:技術者不足、低価格店との値下げ競争、海外の失敗、金利の上昇が重なる構造的な負けの筋書きだ。国内の店舗網と客数は残るので、11%とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
国内(QB HOUSE)
駅や商業施設に出店する10分のカット専門の理容店。国内587店。
| 数量期末の店舗数 | 価格1店あたり年売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 587 | 0.37 | 217 | 14 |
| 10 年後 中立 | 700 | 0.50 | 347 | 24 |
取り方:売上217億円を期末の国内店舗587店で割り、1店あたり0.369億円と置いた。期の途中で開いた新店も1店として数えるので、実際の1店あたりより少し低めに出る。営業利益は国内14.4億円。国内の客数は前期比で3.8%増えた。
海外
香港・台湾・シンガポールを中心に7か国で運営。海外155店。
| 数量期末の店舗数 | 価格1店あたり年売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 155 | 0.35 | 55 | 1 |
| 10 年後 中立 | 260 | 0.48 | 124 | 5 |
取り方:売上55億円を期末の海外店舗155店(香港65・台湾42・シンガポール30・米国7・マレーシア4・ベトナム4・カナダ3)で割り、1店あたり0.354億円と置いた。営業利益は0.6億円。
リスクと懸念
技術者の確保と人件費
利益の源はカットをする人材だ。採用と育成に費用がかかり、研修中の離職も増えた。人件費は物価以上に上がる恐れがあり、新店の利益率を押し下げる。
出店の失敗
新店は最初の数年は利益を食う。出店が計画どおり進んでも、利益が出るまでの期間が延びれば、費用だけが積み上がる。海外の新しい国は特に先行投資が重い。
値上げによる失客
香港では価格改定のあと、約20店で想定以上の失客が出た。値上げが通らなければ、物価の上昇に料金が追いつかない。国内でも同じことが起きうる。
借入と家賃の固定費
LBOローン83億円とリース負債79億円がある。店の家賃は売上が落ちても払う約束で、2020年6月期のような需要の急減では利益が消える。金利が上がれば利払いも増える。
低価格店との競争
同じ低価格の専門店や、地域の理容店との客の奪い合いがある。駅や商業施設の良い区画は取り合いになり、家賃が上がりやすい。
今後の分かれ目
- 国内の営業利益率が8%を超えて定着する
- 新店が育ち、人件費の先行費用が一巡した形で、中立の筋書きを上回る。10年後の価値は大きく上がる。
- 出店を続けても国内の営業利益が増えない
- 新店が利益を生まず、費用だけが積み上がっている。やや悲観の筋書きに近づく。
- 海外の営業利益が3年続けて赤字になる
- 海外の新しい国への投資が回収できていない。海外の筋書きを悲観寄りに見直す必要がある。
- 技術者の離職率が下がる
- 育成の費用が減り、新店の立ち上がりが早くなる。利益率の改善につながる。
- 金利が想定より上がり、借り換えが3.5%を超える
- 利払いが増え、純利益が削られる。配当の余地も小さくなる。
見ておくもの
- 国内の営業利益率と1店あたりの売上
- 新店の黒字化までの期間
- 技術者の離職率と採用数
- 海外の営業利益(香港・台湾・新しい国)
- LBOローンの残高とリース負債
- 中期計画(2029年6月期 営業利益34億円)の進捗
倍率と資本コストの決め方
倍率は、10年後の中立のROE(約7.5%)が資本コスト7.5%に届かない点から、式の上限(約12倍)の7.5割にあたる9.0倍と置いた。今の株価や過去のPERは見ていない。IFRSの会社なので、10年後の数字も今と同じIFRSの形(家賃が減価償却と利息に分かれる形)でそろえた。新リース会計基準による形の変化は、すでに織り込まれている。減価償却のうち、今ある店の使用権資産は契約した時の家賃のままで、新店と更新の分だけ今の家賃水準で足される。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12→15.82 倍・やや楽観 PER 10.6→14.72 倍・中立 PER 9→13.33 倍・やや悲観 PBR 0.6→0.635 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%にqualityを足して決めた。事業が傾いているわけではないので上乗せ(extra)は置かない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.00% → 7.50%。