結論
DNホールディングスは、大日本ダイヤコンサルタントを中核にする建設コンサルタントと地質調査の持株会社だ。橋や道路、河川、地盤防災の設計を、国や自治体から請け負う。受注の大半が官公庁で、景気に左右されにくい。
結論から言う。筆者は、10年後の本質価値は今の時価総額140億円を2割5分ほど上回ると見る。直近の利益の落ち込みは、設計の誤りによる補償の繰入が主因で、本業の需要が崩れたわけではない。
2026年6月期は営業利益が15億円と前期の約半分に落ちた。3月には中核子会社の前代表取締役が社内調査の情報を漏らして辞任した。信頼の傷は軽くない。
それでも、株価は純利益の8倍ほどで、純現金は21億円ある。公共の仕事が10年後も残る以上、この値段には安全域があると見る。
数字で言えば、会社が計画する2027年6月期の純利益18億円に対し、今の時価総額は8倍にも届かない。信頼の回復が確かめられれば、この差は縮まる。逆に、処分が出れば、下値は純現金と土地建物の周辺まで下がる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は不祥事の後で売られた堅い公共の会社だ。事業は10年後も残る。国と自治体が橋や河川を維持する限り、設計の需要は消えない。
株主に残る利益は、2025年6月期で純利益19億円だった。直近は9億円まで落ちたが、補償引当金の繰入が一時的に効いた分を除けば、14億円前後が実力と見る。資本コストを7.5%とみれば、10年後の価値は今の時価総額を上回る。
安全域は、純利益の8倍ほどという値段そのものと、21億円の純現金にある。信頼の回復が遅れても、悲観の筋書きの価値は純現金に近づく。
ただ、経営の質は確かめきれていない。前代表取締役の行為が組織的だったのか、個人のものか。筆者は、再発防止策が働くかを見たうえで、確信度を決めたい。
配当性向は3割台から6割台と動いており、会社に一貫した還元方針があるとは言いにくい。自社株買いを機動的にやるなら、今の安い値段で買い戻す選択もある。
何で稼ぐ会社か
事業の中心は、大日本ダイヤコンサルタントの建設コンサルタントと地質調査だ。2021年に大日本コンサルタントとダイヤコンサルタントが共同で持株会社を作り、2023年に事業会社を合併した。
建設コンサルは、橋の点検と補強、道路や交通、まちづくり、河川と砂防、港湾、地盤防災、エネルギー施設の設計を扱う。地質調査は、ボーリングで地盤の強さを調べる仕事で、子会社のエーシーイー試錐工業が現場を担う。ほかに、発注者を支援する施工管理のウエルアップ、ベトナムの子会社、小水力や太陽光の発電の子会社がある。
顧客の大半は官公庁だ。2026年6月期第2四半期の国内受注は201億円で、中央省庁が68億円、地方自治体が70億円、高速道路会社が9億円、電力が25億円、民間が26億円だった。
売上は2026年6月期で381億円。ただ営業利益は15億円にとどまり、会社が25億円と見ていた予想を大きく下回った。
収益の形は、年度契約の受託と、数年にわたる大型の設計の積み上げだ。受注は秋から冬に集まり、売上と利益は年度末の3月ではなく、6月の決算期末に向けて計上される。受注残が潤沢なので、翌期の売上はある程度見通せるが、利益は人件費と品質の費用で動く。
優良さと弱いところ
強みは、国や自治体との取引の厚みと、橋梁の点検・補強と地質調査を両方持つ点だ。橋の補強の設計には地盤の知識が要り、両方を社内で束ねられる会社は多くない。
ただ、堀、つまり他社がまねできない強みは普通の水準と見る。入札で決まる仕事が多く、技術者が動けば知見も動く。
資本効率は並だ。ROEは過去4年で12〜15%だったが、2026年6月期は5.5%に落ちた。営業利益率は6〜7%台で、2026年6月期は3.9%と大きく下がった。
経営には傷がある。前代表取締役が従業員のコンプライアンス違反の調査情報を、調査の対象者に漏らした。会社は2026年6月に調査結果と再発防止策を開示した。加えて、橋の耐震補強の設計で誤りが見つかり、補償の引当金を積んだ。品質とガバナンスの両面で、信頼の回復が課題になる。
財務は堅い。自己資本比率は62%、純現金は21億円。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
公共の建設コンサルは、国の予算に支えられる。国土強靱化の実施中期計画が2026年度から続き、橋、道路、河川、上下水道の老朽化対策が設計の仕事を生む。会社は自衛隊施設の耐震化と老朽化対策も成長分野に挙げ、人を重点的に振り向ける方針だ。
数量は技術者の数が天井になり、実質では横ばいに近い。単価は予定価格で縛られ、人件費の上昇を転嫁するのに時間がかかる。
変化の中心は、AIによる設計の自動化だ。作図、数量の計算、積算は工数型の仕事で、AIが得意とする。ただ、橋や河川の設計は技術士の署名と許認可が要り、人の責任の型が残る。発注側が工数の減った分を値下げとして求める動きは出るだろう。
同業は、日本工営、建設技術研究所、オオバ、パシフィックコンサルタンツなどだ。業界の分かれ目は、技術者を採れるか、そして品質事故を起こさず信用を保てるかにある。
道路や橋の老朽化は、点検の義務化で数字としても見えるようになった。国と自治体は点検のあとの補修設計を発注する。この流れは10年先も続く。
一方で、官公庁は発注者支援や施工管理も外部に委ね始めている。会社はウエルアップを通じてそこにも手を出しており、設計だけに頼らない収入の源になりうる。
資本政策と M&A
配当は連結配当性向30%以上を当面の目標とし、自己株式の取得は機動的に行うとしている。2026年6月期の配当は前期から小幅に減ったが、2027年6月期も同額の予定で、利益が回復すれば性向は下がる。
純現金は2023年6月期の32億円から、2024年6月期に1億円まで減り、2026年6月期は21億円。自社株買いと配当、子会社の再編で動いている。
買収は目立たず、事業会社の合併による効率化が中心だ。TOBの可能性は、大株主の構成を確かめていないが、不祥事の後で買い手が付くかは見えない。筆者は、配当性向が4割に届かない現状は、還元余力がまだあると見る。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
設計の誤りと不祥事は、業績の底にあたる一過性の出来事だ。会社は2027年6月期に営業利益26億円、純利益18億円への回復を見込み、受注も前年を上回っている。第2四半期の国内受注は201億円で前年比5%増、受注残は潤沢だ。公共の予算は国土強靱化の中期計画で5年間続く。ガバナンスの問題は経営陣の刷新で対処でき、再発防止策も開示された。株価は純利益の8倍で、純現金も厚く、PBRも1倍を割っている。本業の稼ぐ力が戻れば、価値は今の値段を大きく上回る。配当も安定している。自衛隊施設の耐震化のような新しい需要も、会社の成長を後押しする。技術者の賃上げは費用に見えるが、採用難の業界では人を確保する投資だ。人員が増えれば、売上は同じ単価でも伸びる。調査の結果、問題は特定の個人と案件に限られ、全社の品質が崩れた証拠はない。公共の発注者は、橋の点検と補修を止められず、実績のある会社に仕事を出し続ける。会社は持株会社の下で事業会社を合併し、管理の重複を減らした。統合の効果が出れば、利益率はさらに上がる余地がある。
慎重な見方
今回の問題は、一過性ではなく構造的な品質の弱さの表れかもしれない。橋の耐震補強の設計という、人の命に関わる仕事で誤りが出た。補償引当金は10億円近くに膨らんだ。前代表取締役が社内調査を妨げたことは、内部統制が機能していなかった証拠だ。官公庁は評価の点数で入札を決めるため、処分や評価の低下が起きれば受注を失う。2026年6月期の営業利益は会社予想を4割下回り、予想を立てる力も疑わしい。AIによる作図の自動化は発注側の値下げ要求につながる。人員の天井もあり、利益が回復する根拠は計画の数字だけだ。株価が純利益の8倍にとどまる理由は、市場が先行きの処分や追加の補償を織り込んでいるからだ。調査結果の開示が最終結論とは限らない。人員を増やす賃上げ投資も、単価を上げられなければ利益率を押し下げ続ける。純現金が厚くても、補償の支払いと運転資金で薄くなりうる。統合で事業会社が大きくなったぶん、一つの品質事故が全社に及ぶ構造にもなった。ベトナムの子会社や発電の子会社も、収益への貢献はまだ小さい。
どちらに重みを置いたか
公共の需要は堅く、問題の中心は品質とガバナンスで、事業の需要ではない。ただ処分や受注への影響は確かめられていないので、悲観側の確率を3割強に厚くした。それでも、期待値は今の値段を上回る。期待値が今の値段を上回るのは、悪い材料をかなり織り込んだ値段だからだ。ただ、この会社の質を決める要素は経営の透明性で、そこは数字からは見えにくい。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/06 期)
確率で加重した株価時価総額 3,372 円276 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 885 円72 億円)。 今の値に割り戻すと 2,253 円184 億円、今との差 +31.8%、 期待の年率 +9.6%(資本コスト 7.5%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 4,918 円403 億円 | 1,050 円86 億円 | +249.3% | +13.3% | 418 円34 億円 |
| やや楽観 | 22% | 4,334 円355 億円 | 1,002 円82 億円 | +212.2% | +12.1% | 1,174 円96 億円 |
| 中立 | 38% | 4,016 円329 億円 | 953 円78 億円 | +190.7% | +11.3% | 1,888 円155 億円 |
| やや悲観 | 23% | 2,199 円180 億円 | 757 円62 億円 | +73.0% | +5.6% | 680 円56 億円 |
| 悲観 | 10% | 424 円35 億円 | 550 円45 億円 | −43.0% | −5.5% | 97 円8 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,372 円276 億円 | 885 円72 億円 | +149.1% | +9.6% | 4,257 円349 億円 |
今の株価時価総額 1,709 円140 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 7% 公共の更新需要を取り込み、ガバナンスの傷も癒えて利益率が山に戻る 利益 28 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 4,918 円403 億円
国土強靱化と老朽化対策の予算が予定どおり進み、橋梁、河川、地盤防災の設計が増える。自衛隊施設の耐震化も、会社が成長分野と位置づけた柱として売上に乗る。建設コンサルの技術者は1割増え、単価は物価並みの1.34倍まで上がる。設計の誤りの再発を防ぐ品質管理が機能し、補償引当金の繰入は平時の水準に戻る。営業利益率は過去5年の山の7.3%に並び、売上は約550億円になる。AIによる作図の自動化は事務部分に効くが、技術士の署名が要る設計の価値は変わらない。自衛隊施設や電力の更新でも設計の受注を増やし、民間比率が少し上がる。配当は性向4割を保ち、自己株の取得も加わる。
- 建設コンサルタント:数量 2,090(技術者・稼働人員(人、推定))× 価格 2,362(1人あたり年間売上(万円))→ 売上 494 億円・営業利益 38 億円。人員 1.10 倍・単価 1.34 倍・営業利益率 7.7%
- 地質調査:数量 350(技術者・稼働人員(人、推定))× 価格 1,723(1人あたり年間売上(万円))→ 売上 60 億円・営業利益 5 億円。人員 1.00 倍・単価 1.34 倍・営業利益率 9.0%
倍率:ROE 9.4%。RONIC = k 7.5% + 1/2 ×(ROE − k)= 8.6%、g は名目 2.0% として PER =(1 − g ÷ RONIC)÷(k − g)= 13.3 倍。
確率:強靱化と老朽化対策の予算に加え、自衛隊施設の耐震化という新しい柱が育つ筋書き。ただ営業利益率は過去5年の山7.3%を超えず、不祥事の後の信頼回復が条件なので、確率は7%にとどめた。
やや楽観 22% 品質管理を立て直し、利益率が会社計画の水準に戻る 利益 25 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 4,334 円355 億円
設計の誤りは再発せず、引当金の繰入は特別なものとして終わる。官公庁の受注は堅く、人員は4%増える。単価は物価に少し届かず1.32倍。営業利益率は6.7%で、会社の2027年6月期の計画水準に近い。ガバナンスの強化にかかる費用は、物価で増える本社費の中に収まる。配当は性向4割ほどを保ち、自己資本は着実に積み上がる。賃上げの効果で人員が安定して増え、受注残も積み上がる。配当と自己株買いが続き、純現金は維持される。設計の品質問題が収まれば、官公庁からの評価も戻る。AIによる作図の自動化は、事務部分の工数を減らし、案件の数を増やす余裕を作る。
- 建設コンサルタント:数量 1,976(技術者・稼働人員(人、推定))× 価格 2,327(1人あたり年間売上(万円))→ 売上 460 億円・営業利益 33 億円。人員 1.04 倍・単価 1.32 倍・営業利益率 7.2%
- 地質調査:数量 350(技術者・稼働人員(人、推定))× 価格 1,698(1人あたり年間売上(万円))→ 売上 59 億円・営業利益 5 億円。人員 1.00 倍・単価 1.32 倍・営業利益率 8.5%
倍率:事業の純利益 24 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.7% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.6%、10 年より先の名目の伸び g 0.0% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍。全体の PER 13.33 倍、時価総額 327 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社は2027年6月期に営業利益26億円を計画し、受注も増えている。補償引当金の繰入が一過性で終われば、計画に近い姿に戻る。ただ不祥事の後で、処分や受注の目減りが無いか見えないため22%。
中立 38% 公共の仕事は堅く、利益率は過去の中央に戻る。物価並みに伸びるだけ 利益 22 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 4,016 円329 億円
国や自治体の橋梁、河川、地盤防災の仕事は堅く、建設コンサルの人員は横ばい。地質調査は採用難で、人員は5%減る。単価は人件費の上昇を転嫁しきれず1.30倍。営業利益率は6.5%で、直近の7.3%を下回る。品質管理とガバナンスの強化費用が本社費に残るためだ。AIは作図と積算の工数を減らすが、発注側が予定価格を下げる動きが出て、利益率の改善にはつながらない。売上は約490億円、営業利益は32億円になる。品質管理の強化に費用がかかり、利益率は直近の山を下回る。ただ、補償の繰入は平時の水準に戻り、利益は物価に沿ってじわりと伸びる。配当は4割ほどを保ち、残りは自己資本に積み上がる。国の予算が続くかぎり、橋梁点検後の補修設計や河川の更新が着実に積み上がる。
- 建設コンサルタント:数量 1,900(技術者・稼働人員(人、推定))× 価格 2,292(1人あたり年間売上(万円))→ 売上 436 億円・営業利益 31 億円。人員 1.00 倍・単価 1.30 倍・営業利益率 7.0%
- 地質調査:数量 333(技術者・稼働人員(人、推定))× 価格 1,672(1人あたり年間売上(万円))→ 売上 56 億円・営業利益 4 億円。人員 0.95 倍・単価 1.30 倍・営業利益率 8.0%
倍率:事業の純利益 22 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.2% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.4%、10 年より先の名目の伸び g 0.0% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍。全体の PER 13.33 倍、時価総額 297 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:数量は技術者の数で横ばい、単価は物価に少し届かない1.30倍。利益率は、直近の落ち込みを除いた過去の平均に近い6.5%に置いた。
やや悲観 23% 設計の誤りと不祥事で受注と信用を失い、利益率が下がる 利益 13 億円 · PER 11.9 倍 · 株価時価総額 2,199 円180 億円
設計の誤りが別の案件でも見つかり、補償の繰入が続く。官公庁の評価点が下がり、入札で受注を取りにくくなる。建設コンサルの人員は8%減り、単価は物価に届かず1.25倍。営業利益率は4.4%に下がる。AIによる設計の自動化も、発注側の値下げ要求につながる。配当は性向を保つが、利益が減る分、額は下がる。補償が続く間は純現金が減り、配当の増額は止まる。官公庁の評価が戻るまで数年かかり、その間は競合に案件を取られる。発注者の評価点の低下は、入札での受注の不利に直結する。補償の費用で利益が減り、時価総額も純現金に近づく。
- 建設コンサルタント:数量 1,748(技術者・稼働人員(人、推定))× 価格 2,204(1人あたり年間売上(万円))→ 売上 385 億円・営業利益 19 億円。人員 0.92 倍・単価 1.25 倍・営業利益率 5.0%
- 地質調査:数量 298(技術者・稼働人員(人、推定))× 価格 1,569(1人あたり年間売上(万円))→ 売上 47 億円・営業利益 3 億円。人員 0.85 倍・単価 1.22 倍・営業利益率 5.5%
倍率:ROE 5.1%。ROE が k 7.5% を下回る稼ぎで、1÷k = 12.9 倍の下に置いた。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PER 11.88 倍・時価総額 157 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:前代表取締役による調査情報の漏洩と、設計の誤りによる補償が同じ年に重なった。発注者から処分や評価の低下を受ける筋書きの確率は、一般の同業より厚くした。
悲観 10% 品質問題と処分が重なり、公共の受注が構造的に細る 利益 3 億円 · PER 12.4 倍 · 株価時価総額 424 円35 億円
設計の誤りが続けて見つかり、発注者から指名停止などの処分を受ける。受注が細り、建設コンサルの人員は35%減る。AIが作図と積算を自動化し、単価は物価に届かず1.12倍にとどまる。地質調査も採用難と競争で縮む。営業利益率は2%台に落ち、会社は拠点と人員を絞る。純現金と土地建物が残り、床を作る。設計の誤りが連鎖すると、発注者は取引を縮める。会社は人員の削減に追い込まれ、優秀な技術者が先に離れる。それでも、公共の更新需要自体は残るため、事業が消えることはない。AIが設計を自動化し、発注側が内製に動く圧力も強まる。値下げの要求が重なり、利益は小さくなる。
- 建設コンサルタント:数量 1,235(技術者・稼働人員(人、推定))× 価格 1,975(1人あたり年間売上(万円))→ 売上 244 億円・営業利益 6 億円。人員 0.65 倍・単価 1.12 倍・営業利益率 2.5%
- 地質調査:数量 210(技術者・稼働人員(人、推定))× 価格 1,415(1人あたり年間売上(万円))→ 売上 30 億円・営業利益 1 億円。人員 0.60 倍・単価 1.10 倍・営業利益率 3.0%
倍率:稼ぎが小さくなった事業の純利益に 1÷k 近い倍率を置いた。減損で自己資本を減らした。
確率:発注者からの処分と、設計の誤りの連鎖、AIによる作図の自動化が重なる構造的な負け。公共の建設コンサルは落ち込みが浅いので、悲観の確率は10%にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
建設コンサルタント
橋梁・道路・河川・砂防・港湾・地盤防災・エネルギー施設の計画と設計。発注者支援、海外を含む。
| 数量技術者・稼働人員(人、推定) | 価格1人あたり年間売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 1,900 | 1,763 | 335 | 13 |
| 10 年後 中立 | 1,900 | 2,292 | 436 | 31 |
取り方:2026年6月期第2四半期の受注高201.8億円のうち建設コンサルが178.6億円(88%)、地質調査が23.2億円。売上381億円をこの比で割って建設コンサル335億円とした。人員は推定(従業員数は資料に記載なし)。営業利益は補償引当金の繰入を含む実績の推定。許認可の型で AI エージェント代替は事務部分に限り、中立は人員1.0倍・単価1.30倍。
地質調査
ボーリングによる地盤調査と解析(エーシーイー試錐工業など)。
| 数量技術者・稼働人員(人、推定) | 価格1人あたり年間売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 350 | 1,286 | 45 | 4 |
| 10 年後 中立 | 333 | 1,672 | 56 | 4 |
取り方:売上の約12%を45億円と推定。人員は推定。現場の体の仕事で AI の影響は小さいが、ボーリングの採用難があり、中立の人員は0.95倍、単価は1.30倍。
リスクと懸念
設計の誤りの再発と補償
橋梁の耐震補強設計で誤りが見つかり、完成業務補償引当金は約10億円に膨らんだ。別の案件でも誤りが見つかれば、補償と信用の両方が傷つく。
ガバナンスと発注者からの処分
中核子会社の前代表取締役が調査情報を漏らして辞任した。官公庁の評価点が下がれば、入札の受注に響く。
利益予想の信頼
2026年6月期の営業利益は、会社予想の25億円を約4割下回った。2027年6月期の26億円の回復計画が達成できるか、不確かさが残る。
設計・積算の自動化(AI エージェント代替)
作図、数量計算、積算は工数型の仕事で、AI が得意とする。発注側が工数の減った分を値下げとして求めれば、単価が物価に届かない。
技術者の採用難
数量の天井は技術者の数だ。賃上げの人的投資が先に費用になり、2026年6月期は利益を押し下げた。
公共予算の抑制
受注の大半が官公庁に依存する。強靱化の予算が縮めば数量が減り、入札の競争も強まる。
今後の分かれ目
- 2027年6月期に営業利益が計画の26億円に届く
- 一過性の見立てが確認でき、やや楽観の筋書きに近づく。
- 設計の誤りが別の案件でも見つかる
- 品質の構造的な問題が疑われ、やや悲観の確率が上がる。
- 発注者から指名停止などの処分が出る
- 受注が細る筋書きに近づき、悲観の確率が上がる。
- 自衛隊施設の耐震化の受注が開示される
- 新しい柱が育つ証拠で、楽観の確率が上がる。
- 自社株買いが実施される
- 純現金を株主に戻す姿勢が確認でき、戻り方を引き上げる根拠になる。
見ておくもの
- 通期の受注高と受注残
- 営業利益率(6%台に戻るか)
- 完成業務補償引当金の残高
- 官公庁の評価点・処分の有無
- 技術者の人数と離職率
- 配当性向と自社株買い
倍率と資本コストの決め方
倍率は正当化 PER の式から出した。ROE が資本コストとほぼ等しい中立は 1÷k を上限に置いた。今の株価や過去の PER、同業の値付けは使っていない。2026年6月期の純利益は補償引当金の繰入で落ちたため、実力の純利益を起点にした。AI エージェント代替は、数量・単価と k の寿命に入れ、確率や g には重ねていない。償却は取得額のままとし、人件費を物価で増やした。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:やや楽観 PER 12.9→13.33 倍・中立 PER 12.5→13.33 倍・やや悲観 PER 11.5→11.88 倍・悲観 PER 12→12.4 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。